特許第6891173号(P6891173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6891173BTK阻害活性を有するピリミジン及びピリジン化合物を用いたMSの治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891173
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】BTK阻害活性を有するピリミジン及びピリジン化合物を用いたMSの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20210607BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   A61K31/506
   A61P25/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】4
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2018-525702(P2018-525702)
(86)(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公表番号】特表2018-538264(P2018-538264A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】US2016062154
(87)【国際公開番号】WO2017087445
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】62/256,199
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】タミー デロベイド
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−517016(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/210255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/068527(WO,A1)
【文献】 J. Allergy Clin. Immunol.,2014年,134(2),p.420-428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 31/506
A61P 25/00
A61P 43/00
・DB
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症を治療又は予防するための医薬組成物であって、治療有効量のN-[(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)メチル]-5-(4-フェノキシフェニル)ピリミジン-4,6-ジアミン、及び1-(4-(((6-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)ピリミジン-4-イル)アミノ)メチル)-4-フルオロピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン、並びにそれらの医薬的に使用可能な塩、互変異性体若しくは立体異性体から選ばれる化合物、或いはそれらの全ての比率における混合物を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が、N-[(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)メチル]-5-(4-フェノキシフェニル)ピリミジン-4,6-ジアミン、又はその医薬的に使用可能な塩、互変異性体若しくは立体異性体であり、又はそれらの全ての比率における混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化合物が、1-(4-(((6-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)ピリミジン-4-イル)アミノ)メチル)-4-フルオロピペリジン-1-イル)プロ-2-エン-1-オン、又はその医薬的に使用可能な塩、互変異性体若しくは立体異性体であり、又はそれらの全ての比率における混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記多発性硬化症(MSが、再発型多発性硬化症(RMS)、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、進行型多発性硬化症(PMS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、及び進行再発型多発性硬化症(PRMS) から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容を参照により本明細書に援用される2015年11月17日に出願された米国特許仮出願第62/256,199号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、哺乳類での多発性硬化症(MS)の治療における治療薬として有用な、一連のピリミジン及びピリジン化合物に関する。より詳細には、本発明の実施形態には、非可逆性キナーゼ阻害薬が記載されており、限定されないが、ブルトン型チロシンキナーゼ(以下「BTK」という)の阻害薬等が挙げられる。上述の化合物の調製方法は、これらの化合物を含む医薬組成物同様に開示されている。
【背景技術】
【0003】
プロテインキナーゼは、細胞内での様々なシグナル伝達プロセスのコントロールを担う構造的に関連性のある酵素の大きなファミリーを構成する(Hardie, G. and Hanks, S.(1995)The Protein Kinase Facts Book. I and II, Academic Press, San Diego, CA)。前記キナーゼは、リン酸化する基質(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質等)によりいくつかのファミリーに分類されてもよい。通常これらのキナーゼファミリーのそれぞれに対応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks、S.K.、Hunter、T.、FASEB J.、9:576−596(1995);Knighton、et al.、Science、253:407−414(1991);Hiles、et al.、Cell、70:419−429(1992);Kunz、et al.、Cell、73:585−596(1993);Garcia−Bustos、et al.、EMBO J.、13:2352−2361(1994)).
【0004】
プロテインキナーゼは、制御メカニズムにより特徴付けられてもよい。これらのメカニズムとして、例えば、自動リン酸化、他のキナーゼによるトランスリン酸化、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−脂質相互作用、及びタンパク質−ポリヌクレオチド相互作用が挙げられる。個々のタンパク質キナーゼは、一つ以上のメカニズムで制御されていてもよい。
【0005】
キナーゼは、リン酸基を標的タンパク質へ添加することにより多くの異なる細胞プロセスを制御し、増殖、分化、アポトーシス、運動性、転写、翻訳及びその他のシグナリングプロセス挙げられるがこれらに限定されない。これらのリン酸化イベントは、前記標的タンパク質の生物学的機能を調整又は制御可能な分子オン・オフスイッチとしての役割を果たす。標的タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長及び分化因子等)、細胞周期イベント、環境又は栄養ストレス等に反応して生じる。適切なタンパク質キナーゼは、シグナリング経路において機能し、例えば、代謝酵素、制御タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャンネル又はポンプ又は転写因子を活性化又は非活性化(直接的又は間接的に)する。タンパク質リン酸化の調節不良によるシグナリングのコントロール不良は、多くの疾患に関与しており、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患及び病態、中枢神経系の疾患及び病態、及び血管形成が挙げられる。
【0006】
非受容体チロシンキナーゼのTecファミリーの一員であるBTKは、Tリンパ球及びナチュラルキラー細胞以外の全ての造血細胞型で発現されるシグナリング酵素である。BTKは、下流細胞内応答に対して細胞表面B細胞受容体刺激を関連付けるB−細胞シグナリング経路において確立された役割を果たす。BTKは、B細胞発達、活性化、シグナリング、及び生存における調節因子でもある(Kurosaki、Curr Op Imm、2000、276−281;Schaeffer及びSchwartzberg、Curr Op Imm 2000、282−288)。また、BTKは、他の造血細胞シグナリング経路、例えば、マクロファージにおけるToll様受容体(TLR)及びサイトカイン受容体介在性TNF−a産生、肥満細胞におけるIgE受容体(FcepsilonRl)シグナリング、B細胞系リンパ細胞におけるFas/A経口−1アポトーシスシグナリングの阻害、及びコラーゲン刺激血小板凝集を通して生理的効果を発揮する。BTKは、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)及びLynといったSrcファミリーキナーゼに対して高い類似性を持つATP結合ポケットを有する。BTKを他のキナーゼと比較すると、保存システイン残基であるCys−481が、491個のキナーゼ中11個、特に前記Tec及びEGFR(上皮増殖因子受容体)キナーゼファミリーのメンバーに認められる。
【0007】
BTKは、B細胞の発達、分化、活性化及び増殖やそれらの抗体及びサイトカイン産生において、重要な役割を果たす。また、Btkは、好中球、肥満細胞及び単球によるサイトカイン産生、好中球及び肥満細胞の脱顆粒や破骨細胞の分化/活性化といったその他の免疫学的プロセスにおいて中心的役割を果たす。一方ではB細胞活性化、免疫寛容の崩壊及び自己抗体産生、他方では単球、好中球及び肥満細胞の増悪した活性化に由来する炎症性環境は、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデス(これらに限定されない)といった自己免疫性疾患の病因とって重大である。
【0008】
可逆性キナーゼ阻害薬は、治療用化合物として開発されてきた。しかしながらこれらの可逆性阻害薬は、決定的な欠点がある。多くのキナーゼ可逆性阻害薬は、ATP結合部位と相互作用する。ATP−結合部位の構造がキナーゼにおいて高度に保存されていることを考慮すると、望ましい(いわゆる標的)キナーゼを選択的に阻害する可逆性阻害薬を開発することは困難であった。さらに、多くの可逆性キナーゼ阻害薬が、それらの標的ポリペプチドから簡単に解離することをふまえると、長時間の阻害を維持することは難しいと考えられる。したがって、可逆性キナーゼ阻害薬を治療薬として使用する場合、しばしば毒性容量付近の用量及び/又は頻回の投与が、目的とする生物学的効果を得るために必要となる。
【0009】
したがって、非標的ポリペプチドに(実質的に)結合しないことにより望ましくない非標的効果を発揮することなく標的ポリペプチドに共有結合する非可逆性キナーゼ阻害薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防のための本明細書に記載の複数の式の化合物を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a図1は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける、(a)発症の遅延及び疾患重症度の低下を示す。
図1b図1は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける、(b)ピーク時の最大クリニカルスコアを示す。
図1c図1は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける、(c)疾患の発症を示す。
図1d図1は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける、(d)累積クリニカルスコアを示す。
図2a図2は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、(a)初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図2b図2は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、(a)初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図2c図2は、(1)を用いた予防薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、(a)初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図3a図3は、(1)を用いた治療薬治療による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図3b図3は、(1)を用いた治療薬治療による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図4a図4は、(1)を用いた治療薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図4b図4は、(1)を用いた治療薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図4c図4は、(1)を用いた治療薬治療によるSJL−EAEにおける再発活性の低下を示し、初回再発までの期間、(b)総再発回数、(c)要約である。
図5図5は、化合物(1)のクリニカルスコアデータの要約表を示す。
図6a図6は、(1)を用いた予防薬治療後のBTK占有率(治療後24時間)を示し、(a)初回投与量、(b)最終投与量である。
図6b図6は、(1)を用いた予防薬治療後のBTK占有率(治療後24時間)を示し、(a)初回投与量、(b)最終投与量である。
図7a図7は、(a)(1)の初回投与後のBTK占有率(治療用試験)、(b)(1)の初回投与後のBTK血中濃度(治療用試験)を示す。
図7b図7は、(a)(1)の初回投与後のBTK占有率(治療用試験)、(b)(1)の初回投与後のBTK血中濃度(治療用試験)を示す。
図8図8は、(1)を用いた治療薬治療後のBTK占有率(治療後24時間)を示す。
図9a図9は、(a)予防的に化合物(2)を投与した際の疾患重症度の有意な低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図9b図9は、(a)予防的に化合物(2)を投与した際の疾患重症度の有意な低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図10a図10は、(a)EAEモデルにおける化合物(2)による疾患罹患率及び再発、(b)要約を示す。
図10b図10は、(a)EAEモデルにおける化合物(2)による疾患罹患率及び再発、(b)要約を示す。
図11図11は、化合物(2)のPK/PD実験デザインを示す。
図12a図12は、(a)化合物(2)投与後2時間のBTK占有率及び(b)化合物(2)投与後24時間のBTK占有率(どちらもストレプトアビジン捕捉MSDアッセイにより測定)を示す。
図12b図12は、(a)化合物(2)投与後2時間のBTK占有率及び(b)化合物(2)投与後24時間のBTK占有率(どちらもストレプトアビジン捕捉MSDアッセイにより測定)を示す。
図13図13は、投与後2時間及び24時間の化合物(2)の遊離血漿濃度(乾燥血液スポット検査により測定)を示す。
図14a図14は、化合物(2)の治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図14b図14は、化合物(2)の治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積EAEスコアを示す。
図15a図15は、化合物(2)の治療的投与による、(a)初回再発までの期間延長及び再発低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
図15b図15は、化合物(2)の治療的投与による、(a)初回再発までの期間延長及び再発低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
図15c図15は、化合物(2)の治療的投与による、(a)初回再発までの期間延長及び再発低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
図16図16は、化合物(2)の実験デザインを示す。
図17a図17は、(a)化合物(2)投与後2時間のBTK占有率及び(b)化合物(2)投与後24時間のBTK占有率(ストレプトアビジン捕捉MSDアッセイにより測定)を示す。
図17b図17は、(a)化合物(2)投与後2時間のBTK占有率及び(b)化合物(2)投与後24時間のBTK占有率(ストレプトアビジン捕捉MSDアッセイにより測定)を示す。
図18a図18は、化合物(2)の治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積スコアを示す。
図18b図18は、化合物(2)の治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積スコアを示す。
図19a図19は、化合物(2)の治療的投与による、(a)再発回数の低下、(b)要約を示す。
図19b図19は、化合物(2)の治療的投与による、(a)再発回数の低下、(b)要約を示す。
図20a図20は、化合物(2)の半治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積スコアを示す。
図20b図20は、化合物(2)の半治療的投与による、(a)SJL−EAEにおける疾患重症度の低下、(b)累積スコアを示す。
図21a図21は、化合物(2)の治療的投与による、(a)再発回数の低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
図21b図21は、化合物(2)の治療的投与による、(a)再発回数の低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
図21c図21は、化合物(2)の治療的投与による、(a)再発回数の低下、(b)再発回数、(c)要約を示す。
【0012】
前記記載及び図面全体において、用語「化合物(1)」及び「化合物(A250)」は交換可能に用いられる。前記記載及び図面全体において、用語「化合物(2)」及び「化合物(A225)」は交換可能に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一連の新規ピリミジン及びピリジンキナーゼ阻害薬を提供する。いくつかの実施形態において、前記キナーゼ阻害薬は、チロシンキナーゼの非可逆性阻害薬である。好ましい実施形態において、前記非可逆性キナーゼ阻害薬はBTKを阻害する。本発明において記載される前記化合物はいかなる特定の作用メカニズムに限定されることを意図したものではないが、いくつかの実施形態において、前記非可逆性キナーゼ阻害薬は、BTKのCys481と共有結合を形成することにより生理的効果を発揮する。特に、このBTKのCys481は他のキナーゼのホモログを認識する。本発明の実施形態では、前記非可逆性阻害薬を合成する方法、前記非可逆性阻害薬を前記疾患(神経変性疾患を含む)の治療に使用する方法についても記載される。キナーゼ阻害薬であり上記記載の疾患の治療に有用な医薬的に許容可能な塩、それらの溶媒和物又はプロドラッグを含む非可逆性キナーゼ阻害薬が製剤処方に含まれることがさらに記載されている。
【0014】
一つの態様では、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、式(I)の化合物、及びその医薬的に使用可能な塩、互変異性体及び立体異性体とそれらの全ての比率における混合物を対象に投与することを含む前記方法を提供する:
【0015】
【化1】
【0016】
XはCH又はNを表し、
1は、NH2、CONH2又はHを表し、
2は、Hal、Ar1又はHet1を表し、
3は、NR5[C(R52nHet2、NR5[C(R52nCyc、Het2、O[C(R52nAr2、NR5[C(R52nAr2、O[C(R52nHet2、NR5(CH2pNR56、O(CH2pNR56又はNR5(CH2pCR78NR56を表し、
4は、H、CH3又はNH2を表し、
5は、1、2、3又は4個のC原子を有するH又はアルキルを表し、
6は、N(R52CH2CH=CHCONH、Het3CH2CH=CHCONH、CH2=CHCONH(CH2n、Het4(CH2nCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、HC≡CCO、CH3C≡CCO、CH2=CH−CO、CH2=C(CH3)CONH、CH3CH=CHCONH(CH2n、N≡CCR78CONH(CH2n、Het4NH(CH2)pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Het4(CH2pCONH(CH2CH2O)p(CH2pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、CH2=CHSO2、ACH=CHCO、CH3CH=CHCO、Het4(CH2pCONH(CH2pHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Ar3CH=CHSO2、CH2=CHSO2NH又はN(R5)CH2CH=CHCOを表し、
7、R8は共に、2、3、4,又は5個のC原子を有するアルキレンを表し、
Ar1は、それぞれ非置換又はR6、Hal、(CH2nNH2、CONHAr3、(CH2nNHCOA、O(CH2nAr3、OCyc、A、COHet3、OA及び/又はOHet3(CH2)により一、二又は三置換されている、フェニル又はナフチルを表し、
Ar2は、それぞれ非置換又はR6、Hal、OAr3、(CH2nNH2、(CH2nNHCOA及び/又はHet3により一、二又は三置換されている、フェニル、ナフチル又はピリジルを表し、
Ar3は、非置換又はOH、OA、Hal、CN及び/又はAにより一、二又は三置換されている、フェニルを表し、
Het1は、非置換又はR6、O(CH2nAr3及び/又は(CH2nAr3により一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式又は二環式飽和、非飽和又は芳香族複素環を表し、
Het2は、非置換又はR6、Het3、CycSO2、OH、Hal、COOH、OA、COA、COHet3、CycCO、SO2及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式又は二環式飽和複素環表し、
Het3は、非置換又はHal、A及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式非飽和、飽和又は芳香族複素環を表し、
Het4は、非置換又はA、NO2、Hal及び/又は=Oにより一、二、三又は四置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する二環式又は三環式非飽和、飽和又は芳香族複素環を表し、
Cycは、非置換、R6及び/又はOHにより一置換又は二置換され、二重結合を含んでいてもよい、3、4、5又は6個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Aは、1〜7個のH原子がF及び/又はClによって置換されていてもよい及び/又は一つ又は二つの非隣接CH2及び/又はCH−基がO、NH及び/又はNによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐状又は分岐状アルキルを表し、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、
nは、0、1、2、3又は4を表し、
pは、1、2、3、4、5又は6を表す。
【0017】
通常、一回以上生じる全ての残基は、同一又は異なっていてもよく、すなわち互いに独立していてもよい。他の実施形態において、残基及びパラメーターは、特別に指示がない限り、式(I)に適応される意味を有する。
【0018】
特定の実施形態において、Het1は、それぞれ非置換又はR6、O(CH2nAr3及び/又は(CH2nAr3により一、二又は三置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリーアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、アザビシクロ[3.2.1]オクチル、アザビシクロ[2.2.2]オクチル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロピロリル、テトラヒドロイミダゾリル、ジヒドロピラゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジル、ジヒドロピリジル又はジヒドロベンゾヂオキシニルを表す。
【0019】
特定の実施形態において、Het1は、それぞれ非置換又はR6、O(CH2nAr3及び/又は(CH2)nAr3により一、二又は三置換されている、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ジヒドロピリジル又はジヒドロベンゾヂオキシニルを表す。
【0020】
特定の実施形態において、Het2は、それぞれ非置換又はR6、Het3、CycSO2、OH、OA、COA、COHet3、CycCO、SO2及び/又は=Oにより一、二又は三置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、アザビシクロ[3.2.1]オクチル、アザビシクロ[2.2.2]オクチル、2,7−ジアザスピロ[3.5]ノニル、2,8−ジアザスピロ[4.5]デシル、2,7−ジアザスピロ[4.4]ノニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキシル、2−アザスピロ[3.3]ヘプチル、6−アザスピロ[3.4]オクチル、7−アザスピロ[3.5]ノニル、5−アザスピロ[3.5]ノニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロイミダゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジルを表す。
【0021】
特定の実施形態において、Het3は、それぞれ非置換又はHal、A及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリーアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロピロリル、テトラヒドロイミダゾリル、ジヒドロピラゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジル又はジヒドロピリジルを表す。
【0022】
特定の実施形態において、Het3は、それぞれ非置換又はHal、A及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラゾリル又はジヒドロピリジルを表す。
【0023】
特定の実施形態において、Het4は、それぞれ非置換又はA、NO2、Hal及び/又は=Oにより一、二、三又は四置換されていてもよい、ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾリル又は5H−ジピロロ[1,2−c:2’,1’−f][1,3,2]ジアザボリニン−4−イウム−ウイジルを表す。
特定の実施形態において,
XはCH又はNを表し、
1は、NH2、CONH2又はHを表し、
2は、Hal、Ar1又はHet1を表し、
3は、NR5[C(R52nHet2、NR5[C(R52nCyc、Het2、O[C(R52nAr2、NR5[C(R52nAr2、O[C(R52nHet2、NR5(CH2pNR56、O(CH2pNR56又はNR5(CH2pCR78NR56を表し、
4は、Hを表し、
5は、1、2、3又は4個のC原子を有するH又はアルキルを表し、
6は、N(R52CH2CH=CHCONH、Het3CH2CH=CHCONH、CH2=CHCONH(CH2n、Het4(CH2nCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、HC≡CCO、CH3C≡CCO、CH2=CH−CO、CH2=C(CH3)CONH、CH3CH=CHCONH(CH2n、N≡CCR78CONH(CH2n、Het4NH(CH2)pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Het4(CH2pCONH(CH2CH2O)p(CH2pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、CH2=CHSO2、ACH=CHCO、CH3CH=CHCO、Het4(CH2pCONH(CH2pHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Ar3CH=CHSO2、CH2=CHSO2NH又はN(R5)CH2CH=CHCOを表し、
7、R8は共に、2、3、4,又は5個のC原子を有するアルキレンを表し、
Ar1は、それぞれ非置換又はR6、Hal、(CH2nNH2、CONHAr3、(CH2nNHCOA、O(CH2nAr3、OCyc、A、COHet3、OA及び/又はOHet3(CH2)により一、二又は三置換されている、フェニル又はナフチルを表し、
Ar2は、それぞれ非置換又はR6、Hal、OAr3、(CH2nNH2、(CH2nNHCOA及び/又はHet3によって一、二又は三置換されている、フェニル又はナフチルを表し、
Ar3は、非置換又はOH、OA、Hal、CN及び/又はAにより一、二又は三置換されている、フェニルを表し、
Het1は、それぞれ非置換又はR6、O(CH2nAr3及び/又は(CH2nAr3により一、二又は三置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリーアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル、アザビシクロ[3.2.1]オクチル、アザビシクロ[2.2.2]オクチル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、ベンゾ−2,1,3−チアジアゾリル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロピロリル、テトラヒドロイミダゾリル、ジヒドロピラゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジル、ジヒドロピリジル又はジヒドロベンゾヂオキシニルを表し、
Het2は、それぞれ非置換又はR6、Het3、CycSO2、OH、OA、COA、COHet3、CycCO、SO2及び/又は=Oにより一、二又は三置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、アザビシクロ[3.2.1]オクチル、アザビシクロ[2.2.2]オクチル、2,7−ジアザスピロ[3.5]ノニル、2,8−ジアザスピロ[4.5]デシル、2,7−ジアザスピロ[4.4]ノニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキシル、2−アザスピロ[3.3]ヘプチル、6−アザスピロ[3.4]オクチル、7−アザスピロ[3.5]ノニル、5−アザスピロ[3.5]ノニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロイミダゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジルを表し、
Het3は、それぞれ非置換又はHal、A及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリーアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、テトラーヒドロフリル、ジオキソラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロピロリル、テトラヒドロイミダゾリル、ジヒドロピラゾリル、テトラヒドロピラーゾリル、テトラーヒドロピリジル又はジヒドロピリジルを表し、
Het4は、それぞれ非置換又はA、NO2、Hal及び/又は=Oにより一、二、三又は四置換されていてもよい、ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾリル又は5H−ジピロロ[1,2−c:2’,1’−f][1,3,2]ジアザボリニン−4−イウム−ウイジルを表し、
Cycは、非置換又はR6により一置換されている、二重結合を含んでいてもよい、3、4、5又は6個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Aは、1〜7個のH原子がF及び/又はClによって置換されていてもよい及び/又は一つ又は二つの非隣接CH2及び/又はCH−基がO、NH及び/又はNによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐状又は分岐状アルキルを表し、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、
nは、0、1、2、3又は4を表し、
pは、1、2、3、4、5又は6を表す。
【0024】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、式(II)の化合物、及び医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、又はそれらのプロドラッグを対象に投与することを含む前記方法を提供する。
【0025】
【化2】
【0026】
式中、
Xは、H又はCH3又はNH2であり、
Yは、H、Hal又は存在せず、
Bは、N又はCHであり、
Eは、NH2又はHであり、
Wは、NR、O又は環状アミンであり、
Zは、独立して、CH2、CH3、CH2−CH2、CH−CH2、H、NH又は存在せず、
「リンカー」は、(CH2nであり、式中、nはフェニル環、アリール環、ヘテロアリール環、分岐状又は非分岐状アルキル基、窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員単環式ヘテロアリール環、窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する4〜7員飽和又は部分的非飽和複素環、窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する7〜10員二環式飽和又は部分的非飽和複素環式環、又は複素飽和環に結合した1〜5個のヘテロ原子を有する7〜10員二環式飽和又は部分的非飽和複素環式環から選択される、一、二又は三置換若しくは任意に置換された基であり、リンカーは、ヘテロ原子(窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される)により任意に置換されたシクロアルカン、−NH又はOHにより任意に置換されたシクロアルカン、融合又は架橋環又は任意に置換された任意にヘテロ原子を含有するスピロ環状環であってもよく、
Aは、非置換又は互いに独立してHal、OH又はORにより一、二又は三置換されていてもよい、0、1、2、3又は4個のN及び/又はO原子及び5、6、7、8、9,又は10個の骨格C原子を有する一環式又は二環式芳香族単組環又は複素環であり、
Halは、F、Cl、Br又はIであり、
Rは、独立して水素、酸素、又は任意に置換された基であり、前記基は、C1-6直鎖状又は環状脂肪族、ベンジル、フェニル、1、2又は3個のO原子により任意に置換されたフェニル基、窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する4〜7員複素環式環、窒素又は酸素からそれぞれ独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員単環式ヘテロアリール環、又は0、1、2、3又は4個のN、O原子及び5、6、7、又は8個のC骨格原子を有する一環式又は二環式芳香族単組環又は複素環から選択され、非置換又は互いに独立して、Hal、A、OH、NH2、ニトリル、及び/又はCH(Hal)3により一、二又は三置換されていてもよく、若しくはRは、1、2、3、4、5、6、7又は8個のC原子を有する非分岐状又は分岐状直鎖状アルキルであり、一つ又は二つの CH2基は、O原子及び/又は-NH−、−CO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CONH−、−NHCO−又は-CH=CH-基により置換されていてもよく、1〜3個のH原子は、Halにより置換されていてもよく、
qは、−−R、−−A、ハロゲン、−−OR、−−O(CH2rOR、−−R(NH)、−−NO2、−−C(O)R、−−CO2R、−−C(O)N(R)2、−−NRC(O)R、−−NRC(O)NR2、−−NRSO2R又は−−N(R)2から選択され、
rは、1〜4であり、
nは、0〜4であり、
Qは、表1に挙げられるような求電子基であり、当該求電子基はさらに弾頭(warhead)を含んでいてもよい。
【0027】
本明細書において使用される用語「弾頭」は、本発明の化合物の一部分、官能基又は置換基を意味し、当該部分、官能基又は置換基は、存在するアミノ酸(共有結合を形成可能な天然又は修飾されたシステイン、リジン又は任意の他のアミノ酸等)と共有結合し、例えば、特定のリガンド内の結合領域において、弾頭が当該リガンドに結合し、弾頭と標的タンパク質の結合領域との共有結合が、当該タンパク質の生理学的機能が不可逆的に阻害される条件下で生じる。
【0028】
本発明は、上記式(II)に示すような特定の置換基Qに限定されることを意図するものではないが、特定の実施形態において、置換基Qは表1に示す基より選択される。表1における枠内の化合物は全て上記に定義される「弾頭」ではない。
表1
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
式中、
【化6】
は、式(II)におけるQ〜Zの結合ポイントを表す。
【0032】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、式(III)の化合物、及び医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、又はそれらのプロドラッグを対象に投与することを含む前記方法を提供する。
【0033】
【化7】
【0034】
式中、
Xは、O又はNHを表し、
Yは、N又はCHを表し、
Wは、H,NH2又はCONH2を表し、
Qは、H又はNH2を表し、
1は、L1-R4-L2-R5を表し、
2は、M1−S4−M2−S5を表し、
1は、N又はNH2により一又は二置換されていてもよい、単結合、メチレン又は環状Aを表し、
4は、N、-O-又はHalにより一又は二置換されていてもよいAr、A又は環状Aを表し、
5は、N、-O-又はHal一又は二置換されていてもよい又は存在しないAr、A又は環状Aを表す。好ましい実施形態において、R5は、2−フルオロピリジン、1−メチルピリジン−2(1H)−オン及び2−クロロピリジンからなる群より選択され、
2は、H、-O-、置換又は非置換C1−C4アルキル、置換又は非置換C1−C4ヘテロアルキル、C1−C6アルコキシアルキル、C1−C8アルキルアミノアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、C1−C4アルキル(アリール)、C1−C4アルキル(ヘテロアリール)、C1−C4アルキル(C3−C8シクロアルキル)、又はC1−C4アルキル(C2−C8ヘテロシクロアルキル)を表す。いくつかの実施形態において、L2は、−−CH2−−O−−(C1−C3アルキル)、−−CH2−−N(C1−C3アルキル)2、C1−C4アルキル(フェニル)、又はC1−C4アルキル(5−又は6−員ヘテロアリール)を表す。いくつかの実施形態において、L2は-A-を表す。いくつかの実施形態において、L2は存在しない。本発明の好ましい実施形態において、L2は、ブト−3−エン−2−オン、プロパン−2−オン、(E)−5−(ジメチルアミノ)ペント−3−エン−2−オン、(E)−ペント−3−エン−2−オン、ペント−3−イン−2−オン、1−クロロプロパン−2−オン、(メチルスルホニル)エタン、(E)−5−((2−メトキシエチル)(メチル)アミノ)ペント−3−エン−2−オン又は(Z)−ペント−3−エン−2−オンからなる群より選択される。
1は、単結合を表す。
4は、N、-O-又はHalにより一又は二置換されていてもよいAr、A又は環状Aを表し、本発明の好ましい実施形態において、S4は複素環式5〜6員環を表し、
2は、O、NH、CH2を表すか又は存在せず、
5は、N、-O-又はHalにより一又は二置換されていてもよいAr、A又は環状Aを表す。本発明の特定の実施形態において、S5は、ブト−3−エン−2−オン、ベンゼン、(E)−5−(ジメチルアミノ)ペント−3−エン−2−オン、エチルベンゼン、1−エチル−2−メトキシベンゼン、アニリン及び(E)−5−モルホリノペント−3−エン−2−オンからなる群より選択される。本発明のいくつかの実施形態において、S5は存在せず、
Arは、非置換又は互いに独立してHal、A、OH、OA、NH2、NHA、NA2、NO2、CN、OCN、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2、NHCOA、NHCONHA、NHCONH、CHO及び/又はCOAにより一、二又は三置換されていてもよい、0、1、2、3又は4個のN及び/又はO原子及び5、6、7、8、9,又は10個の骨格原子を有する一環式又は二環式芳香族単組環又は複素環であり、環のN原子は、O原子により置換されてN−オキシド基を形成していてもよく、二環式芳香族環の場合、二つの環が部分的に飽和されていてもよく、
Aは、1、2、3、4、5、6、7又は8個のC原子を有する非分岐状又は分岐状、直鎖状又は環状アルキルを表し、一つ又は二つのCH2基がO原子及び/又は-NH−、−CO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−N(LA)−、−CONH−、−NHCO−又は-CH=CH-基によって置換されていてもよく、
LAは、1、2、3又は4個のC原子を有する非分岐状又は分岐状、直鎖状アルキルを表し、1、2又は3個のH原子がHalによって置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br又はIを表す。
【0035】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、式(IV)の化合物、及び医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、又はそれらのプロドラッグを対象に投与することを含む前記方法を提供する。
【0036】
【化8】
【0037】
式中、
Zは、N又はCHを表し、
Xは、O又はNHを表し、及び
3は、下記構造からなる群より選択される:
【化9】
式中「R」は、式IVにおけるZの結合部位を表す。
【0038】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、式(V)の化合物を対象に投与することを含む前記方法を提供する。
【0039】
【化10】
【0040】
式中、
Xは、CH又はNを表し、
1は、NR5[C(R52nHet2を表し、
2は、Hal、Ar1又はHet1を表し、
3は、NH2を表し、
4は、H、CH3又はNH2を表し、
5は、1、2、3又は4個のC原子を有するH又はアルキルを表し、
6は、N(R52CH2CH=CHCONH、Het3CH2CH=CHCONH、CH2=CHCONH(CH2n、Het4(CH2nCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、HC≡CCO、CH3C≡CCO、CH2=CH−CO、CH2=C(CH3)CONH、CH3CH=CHCONH(CH2n、N≡CCR78CONH(CH2n、Het4NH(CH2)pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Het4(CH2pCONH(CH2CH2O)p(CH2pCOHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、CH2=CHSO2、ACH=CHCO、CH3CH=CHCO、Het4(CH2pCONH(CH2pHet3−diyl−CH2CH=CHCONH、Ar3CH=CHSO2、CH2=CHSO2NH又はN(R5)CH2CH=CHCOを表し、
7、R8は共に、2、3、4,又は5個のC原子を有するアルキレンを表し、
Ar1は、それぞれ非置換又はR6、Hal、(CH2nNH2、CONHAr3、(CH2nNHCOA、O(CH2nAr3、OCyc、A、COHet3、OA及び/又はOHet3(CH2)により一、二又は三置換されている、フェニル又はナフチルを表し、
Ar2は、それぞれ非置換又はR6、Hal、OAr3、(CH2nNH2、(CH2nNHCOA及び/又はHet3により一、二又は三置換されている、フェニル、ナフチル又はピリジルを表し、
Ar3は、非置換又はOH、OA、Hal、CN及び/又はAにより一、二又は三置換されている、フェニルを表し、
Het1は、非置換又はR6、O(CH2nAr3及び/又は(CH2nAr3により一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式又は二環式飽和、非飽和又は芳香族複素環を表し、
Het2は、非置換又はR6、Het3、CycSO2、OH、Hal、COOH、OA、COA、COHet3、CycCO、SO2及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式又は二環式飽和複素環表し、
Het3は、非置換又はHal、A及び/又は=Oにより一、二又は三置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式非飽和、飽和又は芳香族複素環を表し、
Het4は、非置換又はA、NO2、Hal及び/又は=Oにより一、二、三又は四置換されていてもよい、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する二環式又は三環式非飽和、飽和又は芳香族複素環を表し、
Cycは、非置換、R6及び/又はOHにより一置換又は二置換され、二重結合を含んでいてもよい、3、4、5又は6個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Aは、1〜7個のH原子がF及び/又はClによって置換されていてもよい及び/又は一つ又は二つの非隣接CH2及び/又はCH−基がO、NH及び/又はNによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐状又は分岐状アルキルを表し、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、
nは、0、1、2、3又は4を表し、
pは、1、2、3、4、5又は6を表す。
【0041】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、表2から選択される化合物、及び医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、又はそれらのプロドラッグを対象に投与することを含む前記方法を提供する。
【0042】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法であって、下記より選択される化合物を対象に投与することを含む前記方法を提供する。
N−[(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)メチル]−5−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−4,6−ジアミン(1);及び
1−(4−(((6−アミノ−5−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−4−イル)アミノ)メチル)−4−フルオロピペリジン−1−イル)プロプ−2−エン−1−オン(2)。
【0044】
特定の実施形態において、本発明は、前記化合物がN−[(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)メチル]−5−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−4,6−ジアミン(1)である上記方法を提供する。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、前記化合物が1−(4−(((6−アミノ−5−(4−フェノキシフェニル)ピリミジン−4−イル)アミノ)メチル)−4−フルオロピペリジン−1−イル)プロプ−2−エン−1−オン(2)である上記方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、多発性硬化症(MS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、再発型MS(RMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、再発型MS(RMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0048】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、再発寛解型MS(RRMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、再発寛解型MS(RRMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、進行型MS(PMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、進行型MS(PMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、二次性進行型MS(SPMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、二次性進行型MS(SPMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0052】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、一次性進行型MS(PPMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0053】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、一次性進行型MS(PPMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0054】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(1)を投与することを含む、進行再発型MS(PRMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0055】
特定の実施形態において、本発明は、対象に化合物(2)を投与することを含む、進行再発型MS(PRMS)の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0056】
通常、一回以上生じる全ての残基は、同一又は異なっていてもよく、すなわち互いに独立していてもよい。上記及び下記において、前記残基及びパラメーターは、特別に指示がない限り式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)に適応される意味を有する。それにより、本発明は特に、残基の少なくとも一つが以下の好ましい意味の一つを有する、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の前記化合物に関する。
【0057】
好ましくは用語「置換」は、特に指示がない限り、複数の異なる置換度が可能となる上述の置換基による前記置換に関する。
【0058】
全ての生理的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、塩の溶媒和物、及びこれらの化合物の立体異性体やそれらの全ての比率における混合物もまた本発明によるものである。
【0059】
前記式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物は、一つ又はそれ以上のキラリティーの中心を有していてもよい。よって前記化合物は、様々な鏡像異性体及びラセミ体又は光学活性体として生じてもよい。したがって本発明は、前記光学活性体(立体異性体)、前記鏡像体、前記ラセミ酸塩、前記ジアステレオマー及びこれらの化合物の水和物及び溶媒和物にも関する。
【0060】
本発明における前記化合物のラセミ酸塩又は立体異性体の医薬活性は異なっていてもよいため、前記鏡像体を使用することが望ましいといえる。これらの場合、前記最終産物又は前記中間体でさえも、当業者に周知の化学的又は生理的手段又はそうした合成に使用される手段により鏡像体化合物に分離可能である。
【0061】
ラセミアミンの場合、光学活性分割剤との反応によりジアステレオマーが前記混合物から形成される。適切な分割剤として、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸のR及びS体等の光学活性酸が挙げられ、適切にはNー保護アミノ酸(例えばN−ベンゾイルプロリン又はNーベンゼンスルホニルプロリン)又は前記様々な光学活性カンファースルホン酸である。光学活性分割剤(例えばジニトロベンゾイルフェニルグリシン、三酢酸セルロース又は炭水化物又はシリカゲル上に固定化したキラルに誘導体化されたメタクリレートポリマーのその他の誘導体)を用いたクロマトグラフィーによる鏡像体分離もまた有用である。この目的において適切な溶離液は、例えば82:15:3の比率のヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリル等の水性又はアルコール性溶媒混合物である。的確なエステル基(例えばアセチルエステル)含有ラセミ酸塩の分離方法は、酵素、特にエステラーゼの使用である。
【0062】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物には、同位体で標識したものが含まれることも考えられる。同位体標識した式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物は、通常天然に存在する原子の原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数の一つ又は複数の原子によって化合物の一つ又はそれ以上の原子が置換されているという事実を除いて元の化合物と同一である。入手容易な市販の同位体及び周知の方法で前記式Iの化合物に組み込み可能な同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36CIが挙げられる。一つ又はそれ以上の上述の同位体及び/又は他の原子のその他の同位体を含有する、前記式Iの化合物、そのプロドラッグ又は医薬的に許容可能な塩が本発明の実施形態であることも考慮される。式Iの同位体標識化合物を、多くの有利な方法で使用可能である。例えば、3H又は14C等の放射性同位体が組み込まれた式Iの同位体標識化合物は、薬剤及び/又は基質組織分布アッセイに適している。これらの放射性同位体である三重水素(3H)及び炭素−14(14C)は、調製し易さ及び優れた検出性という点で特に好ましい。例えば重水素(2H)等のより重い同位体を前記式Iの化合物に組み込むことは、当該同位体標識化合物のより高い代謝安定性という点で治療上有利となり得る。より高い代謝安定性は、生体内の半減期の上昇又は用量の低下を直接招き、状況によっては本発明の好ましい実施形態として示される。前記式Iの同位体標識化合物は、合成スキーム及び関連記載に開示される手順に採用することが可能であり、本明細書の実施例の記載及び調製の記載では非同位体標識反応物質を入手が容易な同位体標識反応物質に置換する。
【0063】
他の実施形態において、重水素(2H)は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物に組み込まれてもよい事が考慮される。そのような重水素化化合物は、基本的な速度論的同位体効果により当該重水素化化合物の酸化的代謝を修飾可能である。基本的な速度論的同位体効果とは、同位体交換後の共有結合形成に必要な基底状態エネルギーの変化により起こる同位体核の交換に起因する、化学反応速度の変化を意味する。より重い同位体の交換は、通常前記化学結合のための基底状態エネルギーの低下を引き起こし、律速結合切断の速度低下を招く。多重生成物反応の座標に沿った鞍点領域内又は近傍において結合切断が生じた場合、生成物分布比が実質的に変化する。説明として、重水素が炭素原子に非交換性の位置で結合した場合、速度差は典型的には、kM/kD=2−7である。この速度差が、酸化の影響を受けやすい式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物のいずれにおいても認められる場合、当該化合物のプロファイルは、生体内では大幅に修飾され、結果として薬物動態特性を向上することが可能である。
【0064】
治療剤を創薬及び開発する際、当業者は、望ましい体外での特性を維持するとともに薬物動態パラメーターを最適化することを試みる。多くの薬物動態プロファイルが貧弱な化合物は、酸化的代謝の影響を受けやすいと仮定することは妥当である。当該技術分野にて既知の肝ミクロゾームアッセイは、この種類の酸化的代謝の経過について価値のある情報を提供し得るものであり、酸化的代謝に対する耐性を通して改善された安定性を持つ式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の重水素化化合物の妥当性のあるデザインが可能となる。よって前記式Iの化合物の薬物動態プロファイルの顕著な改善を達成可能であり、生体内の半減期(t/2)、最大治療効果濃度(Cmax)、用量反応曲線下面積(AUC)及びF値の上昇という点、及びクリアランス、投与量及び原料費の低下という点において定量的に示すことが可能である。
【0065】
本発明をいかなる重水素化モチーフに限定することを意図するものではないが、下記に一例を示す。酸化的代謝に対抗するための複数の可能性のある部分、例えばベンジル型水素原子及び窒素原子に結合した水素原子、を有する式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物は、いくつかの、ほとんどの又は全ての水素原子が重水素原子によって置換されるように、様々な水素原子の組み合わせが重水素原子によって置換されている一連のアナログとして作成される。半減期の決定は、酸化的代謝に対する抵抗性の改善度が改善した程度を、好ましくかつ正確に決定可能とする。この方法では、ハーフは、親化合物の半減期は、この種類の重水素−水素交換の結果として、最大で100%に拡張され得る。
【0066】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)の化合物における重水素−水素交換は、望ましくない毒性代謝物を低減又は除去するために出発化合物の代謝物スペクトルの好ましい変更を達成する目的で利用可能である。例えば、毒性代謝物が酸化的炭素−水素(C−H)結合切断の際に生じた場合、特定の酸化が律速段階ではないとしても、前記重水素化アナログが、当該望ましくない代謝物の産生を大いに低減又は阻止するとある程度仮定可能である。重水素−水素交換に関する最新の更なる情報は、例えばHanzlik et al.、J. Org. Chem. 55、3992−3997、1990、Reider et al.、J. Org. Chem. 52、3326−3334、1987、Foster、Adv. Drug Res. 14、1−40、1985、Gillette et al、Biochemistry 33(10)2927−2937、1994、及びJarman et al. Carcinogenesis 16(4)、683−688、1993に記載されている。
【0067】
本発明の化合物は、プロドラッグ化合物の形態とすることが可能である。用語「プロドラッグ化合物」は、本発明において生理学的条件下で生体内で、酵素により又は酵素の介在なしに、例えば酸化、還元、加水分解又は同種のものによって、生物学的に活性のある化合物に変換される誘導体である。プロドラッグの例として、本発明の化合物において、アミノ基がアシル化、アルキル化又はリン酸化された化合物、例えばエイコサノイルアミノ、アラニルアミノ、ピバロイルオキシメチルアミノ等、ヒドロキシル基がアシル化、アルキル化、リン酸化された又はホウ酸塩に変換された化合物、例えばアセチルオキシ、パルミトイルオキシ、ピバロイルオキシ、スクシニルオキシ、フマリルオキシ、アラニルオキシ等、カルボキシル基がエステル化又はアミド化された化合物、スルフヒドリル基が担体分子とジスルフィド架橋を形成した化合物、例えば標的及び/又は細胞の細胞質ゾルに選択的に薬剤と送達するペプチド等が挙げられる。これらの化合物は、周知の方法により本発明の化合物から製造可能である。その他のプロドラッグの例として、本発明の化合物におけるカルボン酸塩が、例えばアルキル−、アリール−、コリン−、アミノ、アシルオキシメチルエステル、リノレノイル−エステルに変換されている化合物が挙げられる。
【0068】
本発明の化合物の代謝物も、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
本発明の化合物又はそれらのプロドラッグの互変異性、例えば、ケト・エノール互変異性が生じ得る場合、個々の形態、例えばケト又はエノール体、は別々の化合物又は任意の比率の混合物とされる。例えば、鏡像体、シス・トランス異性体、配座異性体及び同種のものといった立体異性体についても同様である。
【0070】
望ましくは、異性体は、当該技術分野において周知の方法、例えば液体クロマトグラフィーによって分離可能である。例えばキラル固定層を用いた鏡像体についても同様である。また、鏡像体は、ジアステレオマーに変換することで単離してもよく、すなわち、鏡像異性的に純粋な補助化合物とカップリングした後、得られるジアステレオマーを分離し、補助残基を切断する。若しくは、光学的に純粋な出発物質を用いた立体選択的な合成により本発明の化合物の任意の鏡像体を得てもよい。
【0071】
本発明の化合物は、医薬的に許容可能な塩又は溶媒和物の形態とすることが可能である。用語「医薬的に許容可能な塩」とは、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から調整される塩を意味する。本発明の化合物が一つ又はそれ以上の酸性又は塩基性基を含有する場合、医薬的に又は毒物学的に許容可能な塩、特に当該化合物の医薬的に利用可能な塩、に対応する化合物も、本発明に含まれる。よって、酸性基を含有する本発明の化合物は塩の形態として存在可能であり、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩として本発明において使用可能である。そのような塩のより詳細な例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩又は例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン又はアミノ酸等のアンモニア又は有機アミンとの塩が挙げられる。一つ又はそれ以上の塩基性基すなわちプロトン化可能な基を含有する本発明の化合物は、塩の形態とすることが可能であり、無機又は有機酸を付加した塩の形態として本発明において使用可能である。適切な酸の例として、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、pートルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、蟻酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸 及び当業者に周知のその他の酸が挙げられる。本発明の化合物が酸性及び塩基性基を同時に分子内に含有する場合、上述の塩の形態に加えて、内塩又はベタイン(両性イオン)の形態も本発明に含まれる。前記塩はそれぞれ当業者に既知の通常の方法、例えば溶媒又は分散剤中の有機又は無機酸又は塩基との接触又はその他の塩のアニオン交換又はカチオン交換、によって得られる。前記本発明の化合物の全ての塩も、生理学的適合性が低いために、医薬品に直接利用することに適しているだけではなく、例えば化学反応又は医薬的に許容可能な塩の調製のための中間体として使用可能であることから、本発明に含まれる。
【0072】
さらに、本発明は、本発明の化合物又はプロドラッグ化合物又は医薬的に許容可能な担体と共に供される有効成分としての医薬的に許容可能な塩又は溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
【0073】
用語「医薬組成物」は、一つ又はそれ以上の有効成分、及び一つ又はそれ以上の前記担体を構成する不活性成分、加えて任意の二つ又はそれ以上の前記成分の組合せ、錯体形成又は凝集、一つ又はそれ以上の前記成分の解離、又は他の種類の反応又は一つ又はそれ以上の前記成分の相互作用の結果、直接的又は間接的に得られる任意の生成物、を意味する。それにより、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び医薬的に許容可能な担体を混合することにより生成される任意の組成物を包含する。
【0074】
本発明の医薬組成物は、さらに有効成分として、一つ又はそれ以上の本発明の追加的化合物、プロドラッグ化合物又は他のBTK阻害薬等の一つ又はそれ以上の他の化合物を含んでいてもよい。
【0075】
医薬組成物は、経口、直腸内、局所的、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、目の(眼の)、肺(鼻もしくは頬側吸入)、又は経鼻投与に適している組成物を含むが、任意の所定の場合における最適な経路は、処置される状態の性質及び重篤度、ならびに有効成分の性質に依存する。それらは、単位投与形態において簡便に提示され、薬学の分野において周知の方法のいずれによっても調製され得る。
【0076】
一実施形態において、前記化合物及び医薬組成物又は医薬的に許容可能な塩、それらのプロドラッグ又は水和物、及び医薬的に許容可能な担体は、多発性硬化症(MS)、including 再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)の治療を目的としている。
【0077】
本発明はまた、再発型MS(RMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行型MS(PMS)、二次性進行型MS(SPMS)、一次性進行型MS(PPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)を含む多発性硬化症(MS)の治療のための薬剤の調整のための本発明における化合物の使用に関する。
【0078】
実用化において、従来の医薬配合手法に従って、本発明の化合物を医薬担体と共に密な混合物中の有効成分と組み合わせることが可能である。前記担体は、経口又は非経口投与(経静脈投与を含む)等の投与に望ましい調整形態に従って様々な形態としてもよい。前記組成物を経口投薬形態として調製する場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール類、調味剤、防腐剤、着色剤及び同種のものといった任意の通常の医薬媒体を使用してもよい。経口液体製剤の場合、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液;又は担体、例えばデンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤及び同種のものといった任意の通常の医薬媒体を使用してもよい。経口固体製剤の場合において、組成物は例えば散剤、硬質及び軟質カプセルならびに錠剤の形態を採ってもよく、固体経口製剤が液体製剤よりも優れて好ましい。
【0079】
それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口投薬単位形態を表し、この場合において固体の医薬担体を使用することは明らかである。所望により、錠剤を標準的な水性の、又は非水性の手法によって被覆してもよい。かかる組成物及び製剤は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含まなければならない。活性化合物のこれらの組成物中の百分率を当然変化させてもよく、簡便には当該単位の重量の約2パーセント〜約60パーセントであってもよい。活性化合物のかかる治療的に有用な組成物中の量は、有効用量が得られる程度である。活性化合物をまた、鼻腔内に例えば液体ドロップ又はスプレーとして投与することができる。
【0080】
錠剤、丸剤、カプセル及び同種のものはまた、結合剤、例えばトラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチン;賦形剤、例えば第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、ラクトース又はサッカリンを含んでもよい。投薬単位形態がカプセルである場合には、それは、上記種類の材料に加えて液体の担体、例えば脂肪油を含んでもよい。
【0081】
様々な他の材料は、コーティングとして、又は投薬単位の物理的な形態を修正するために存在し得る。例えば、錠剤をセラック、糖又は両方で被覆してもよい。シロップ又はエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素及び風味剤、例えばサクランボ又はオレンジ風味を含んでもよい。
【0082】
本発明の化合物をまた、非経口的に投与してもよい。これらの活性化合物の溶液又は懸濁液を、界面活性剤、例えばヒドロキシ-プロピルセルロースと好適に混合した水中で調製することが可能である。分散体をまた、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物中で調製することができる。保存及び使用の通常の条件の下で、これらの製剤は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含む。
【0083】
注射可能な使用に適している医薬形態は、無菌の注射可能な溶液又は分散体の即座の調製のための無菌の水溶液又は分散体及び無菌の散剤を含む。すべての場合において、当該形態は無菌でなければならなず、容易なシリンジ通過性(syringability)が存在する程度に流動性を有しなければならない。それは製造及び保存の条件の下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌及び菌類の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、その好適な混合物、ならびに植物油を含む溶媒又は分散媒体であり得る。
【0084】
任意の好適な投与の経路を、哺乳動物、特にヒトに有効な投与量の本発明の化合物を供給するために使用してもよい。例えば、経口、直腸内、局所的、非経口、眼内、肺内、鼻腔内及び同種のものを、使用してもよい。投薬形態は、錠剤、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアゾール及び同種のものを含む。好ましくは、本発明の化合物を経口的に投与する。
【0085】
使用する有効成分の有効な用量は、使用する特定の化合物、投与の方式、処置される状態及び処置される状態の重篤度に依存して変化し得る。かかる投与量は、当業者によって容易に確認され得る。
本発明はまた、
a)有効量の本発明における化合物又はその生理学的に許容可能な塩、それらの溶媒和物又はプロドラッグ、及び
b)有効量のさらなる医薬活性成分の個別のパックからなるセット(キット)に関する。
【0086】
前記セットは、好適な容器、例えば箱、個別のビン、袋又はアンプルを含む。例によって、前記セットは、例えば、各々が有効量の本発明における化合物を含む個別のアンプル前記及び/又はそれらの医薬的に使用可能な誘導体、溶媒和物及び立体異性体とそれらの全ての比率における混合物、及び有効な量の溶解又は凍結乾燥した形態におけるさらなる医薬活性成分を含む。
実験セクション
【0087】
SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対する(1)の有効性(再発寛解型MSモデルマウス)
雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して化合物(1)を予防的に投与した。誘導後0日目に治療を開始した:ビヒクルを0.3mg/kg、1.0mg/kg、及び3mg/kg、及びFTY−720を3mg/kg初回投与時及び試験終了時のPK/PD(受容体占有率)を求めた。図1及び図2に結果を示す。
【0088】
動物:Jaxより75匹の雌SJLマウス(到着時10週令)を入手し、到着時に少なくとも18gであった。
【0089】
【表2】
【0090】
溶液調製:
CFAの調製:合計必要量:10mL;2mg/mLのMTをIFAに添加し、CFA中総濃度2mg/mLのMTとする(100mgのMTを50mLのIFAに添加)。
【0091】
PLP139−151の調製:100μgのPLP139−151:濃度:1mg/mL;25mLのPBS中25mgのPLPホモジナイザー方法による1:1比の乳化PLP/CFA
【0092】
PTX調製:原液:1mLのPBSを50μgのバイアル(冷蔵)へ添加した;60ng/マウス(0.2mL/マウス)=0.3μg/mL(希釈原液 1:167、35mLのPBS中210μL)。
【0093】
SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対する(1)の有効性(再発寛解型MSモデルマウスにおけるBTKiー治療薬投与)
予防薬(誘導時に治療開始)及び治療薬(寛解時に治療開始)双方の投薬計画により、雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して化合物(1)を投与した。試験は、用量反応試験を行った:予防的投与として0.3、1及び3mg/kg及び治療的投与として1、3及び10mg/kgまた、初回及び最終投与後のPK/PDを求め、有効性対受容体占有率のモデル化を行った。図3図5を参照。
【0094】
動物:Jaxより145匹の雌SJLマウス(到着時10週令)を入手し、到着時に少なくとも18gであった。
【0095】
【表3】
【0096】
SJLマウスにおけるEAEの誘導:
PLP139−15をPBSに溶解し、等容量の2mg/mLヒト結核菌(MT)添加CFAで乳化した(CFAには1mg/mLのMTが含まれるためさらに1mg/mLで添加し終濃度を2mg/mLとする)。マウスの側腹部に、0.2mLのペプチド乳剤を皮下注射した(各側0.1mL)。同日及び48時間後に、マウスの腹腔内に、200μL(60ng)の百日咳菌(Bordetella Pertussis)毒素を含む生理食塩水を注入した。
【0097】
溶液調製:
CFA調製:合計必要量:10mL;2mg/mLのMTをIFAに添加し、CFA中のMTの総濃度を2mg/mLとする(100mgのMTを50mLのIFAへ添加)。
PLP139−151調製:100μgのPLP139-151:濃度:1mg/mL;25mLのPBS中25mgのPLP;PLP/CFAをホモジナイザー方法による1:1比で乳化した。
PTX調製:原液:1mLのPBSを50μgのバイアル(冷蔵)へ添加した;60ng/マウス(0.2mL/マウス)=0.3μg/mL(希釈原液 1:167、35mLのPBS中210μL)。
【0098】
マウスの血中BTK占有率(化合物1及び化合物2)
Btk阻害薬投与後に達成されたBtk占有率の量を計算するために、試料をビヒクル投与マウスから採取した。ビヒクル群の試料を0%占有率と仮定し、Btk阻害薬投与マウスの%占有率を0%の値の相対値として求めた。血液を採取し、抗凝固剤被覆チューブに分注した。EDTA又はヘパリンはいずれも抗凝固剤として許容可能であった。採取血液は処理するまで室温で(20〜24℃)保持した。血液(80μL)を1.5mL容積のエッペンドルフスナップキャップチューブへピペットを用いて移した。800μLの緩衝液に溶解した室温の赤血球添加し、チューブにキャップをして上下に3回振って混合した。前記混合物を室温で5分間インキュベートした。600xgで5分間室温で遠心分離を行い、細胞をペレット状にした後、細胞ペレットを乱すことなく吸引した。前記細胞を、400μLの赤血球(RBC)溶解緩衝液にピペットを用いて再懸濁することにより洗浄し、600xg(室温)で5分間遠心分離を行い、液体を慎重に吸引した。培養培地のストック液は、RPMI1640及び前記Btk占有率プローブ化合物を組み合わせることにより作製した。培地には、FBS又はペニシリン(Pen)/ストレプトマイシン(Strep)等何も添加しなかった。前記プローブ化合物を事前にDMSOに溶解して濃度を10mMとし、アリコート中で−80℃で保存する。10mLのRPMI1640あたり1μLの10mMプローブ化合物を加えて、最終濃度1μMでプローブを含有する培養培地ストック液を作製した。ペレット状の細胞を1mLのプローブ含有培養培地に再懸濁した。細胞をプローブと共に、CO2を調節した組織培養インキュベーターで、チューブの蓋を開けた状態で37℃で1時間インキュベートした。1時間培養する間に溶解緩衝液を準備した(MPER溶解緩衝液1mLあたり10μLのHALTプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬カクテルを添加し、使用まで混合緩衝液を少なくとも10分間氷冷する)。1時間培養後、細胞を室温で600xgで5分間遠心分離することによりペレット状にした。前記媒体を吸引し、120μLの冷やしたMPER溶解緩衝液に細胞を再懸濁した。溶解緩衝液添加後氷上でインキュベートした後、試料を−80℃でMSD占有率アッセイに使用するまで保存する。
前記プローブ:
【0099】
【化11】
【0100】
プローブ処理細胞溶解液を解凍し、ビオチン化BtkをMSDプラットフォームでのストレプトアビジン捕捉アッセイを用いた定量した。ストレプトアビジンで被覆したMSDマイクロタイタープレートを、Pierce社のカゼイン含有ブロッキング緩衝液を200μL/ウェルで培養することにより1時間ブロッキングした。前記アッセイにおける本培養及びその他全ての培養を、室温、200rpmでマイクロタイタープレートシェーカー上で緩やかに振盪しながら行い、プレートをプラスチック接着シーラーフィルムを用いて被覆した。ブロッキング後、前記プレートを、1x200μL/ウェル(PBS/0.05%Tween20)で洗浄した。100μL/ウェルで標準物質を添加。添加前に、細胞溶解液を、個々の希釈プレート上でブロッキング緩衝液で希釈(10μL+200μL)した。50μLの希釈した細胞溶解液を、1ウェル当たり50μLのブロッキング緩衝液に加えて最終容量を100μL/ウェルとした。1.5〜2時間室温でインキュベートした。標準物質を、未知の試料と同様に2連でアッセイを行った。プレートを洗浄し(3x200μL/ウェル(PBS/0.05%Tween20))、ラビット抗Btk抗体を添加し(100μL/well)、ブロッキング緩衝液で1μg/mL(1:1,000)に希釈した。溶液を室温で振盪しながら1.5〜2時間インキュベートした。プレートを洗浄し(3x200μL/ウェル(PBS/0.05%Tween20))、ヤギ抗ラビットSULFOタグ付抗体を加え(100μL/ウェル)、ブロッキング緩衝液で1μg/mL(1:500)に希釈した。溶液を室温で振盪しながら1.5〜2時間インキュベートした。プレートを洗浄し(3x200μL/ウェル)(PBS/0.05%Tween20)、水で希釈して2倍濃度とし(4XMSD Read Buffer)、150μL/ウェルとなるように添加した。MSD Sector Imager 600を用いてプレートを直ちに読み取った。得られたデータをMSD Discovery Workbenchソフトウェアプログラムで処理した。
【0101】
ビオチン化プローブで生体内で事前に処理した組換えBtkを用いた標準曲線を定量に使用した。前記標準原液を作製するために、組換えBtkを、1Mの前記プローブと共に1mg/mLのBSAを含有する2ng/μLのPBS中で37℃で1時間体外処理し、アリコート中で−80℃で凍結した。
【0102】
前記標準曲線を作製するため、前記組換えBtk標準物質のストック液のアリコートを、5μL+245μLのブロッキング緩衝液で希釈した。前記希釈原液をさらにブロッキング緩衝液で希釈し1:2段階希釈(70μL+140μLのブロッキング緩衝液)とした。前記試料と同様に、前記標準物質を96ウェル希釈プレート上に作製した。Btk−ビオチンの標準曲線の値は、40〜0.02ng/mLの範囲である。カーブフィッティングを、MSD Discovery Workbenchソフトウェアプログラムに合う4つのパラメーターを用いて行った。
【0103】
上述のアッセイは、阻害薬が活性部位に共有結合していない場所でBtkに結合しているプローブを測定することにより、非占有Btkを検出する。よって、ビヒクル投与マウスから採取された試料は、完全な非占有Btkを有する細胞を含有し、これら試料中に検出されるBtk−ビオチンの量を0%占有率とした。プローブ処理前に1Mの(1)と共に10分間生体外でインキュベートした白血球の試料に由来する細胞を、占有率100%とした。全ての試料のパーセント占有率を、占有率0%としたビヒクル群の値に対して計算した。図6図8図12図13、及び図17を参照。
【0104】
SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対する(2)の有効性(再発寛解型MSモデルマウスにおけるBTKi)
化合物2を、雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して、RAモデルにおいて有効性があることが文献に示されているように、3mg/kgで予防的に経口投与した(誘導の開始日)。誘導後0日目に治療を開始した:ビヒクル、0.3mg/kg、1.0mg/kg、及び3mg/kgを経口で1日1回。エンドポイントには、クリニカルスコア、体重、受容体占有率、及び試験終了時のCD69発現(投与後2時間及び24時間)を含めた。(図9図11
【0105】
動物:Jaxより90匹の雌SJLマウス(到着時10週令)を入手し、到着時に少なくとも18gであった。
【0106】
【表4】
【0107】
SJLマウスにおけるEAEの誘導
PLP139-15をPBSに溶解し、等容量の2mg/mLヒト結核菌(MT)添加CFAで乳化した(CFAには1mg/mLのMTが含まれるためさらに1mg/mLで添加し終濃度を2mg/mLとする)。マウスの側腹部に、0.2mLのペプチド乳剤を皮下注射した(各側0.1mL)。同日及び48時間後に、マウスの腹腔内に、200μL(60ng)の百日咳菌(Bordetella Pertussis)毒素を含む生理食塩水を注入した。
【0108】
溶液調製:
CFA調製:合計必要量:10mL;2mg/mLのMTをIFAに添加し、CFA中総濃度2mg/mLのMTとする(100mgのMTを50mLのIFAに添加)。
PLP139−151調製:100μgのPLP139-151:濃度:1mg/mL;15mLのPBS中15mgのPLPホモジナイザー方法により1:1比でPLP/CFAを乳化した。
PTX調製:原液:1mLのPBSを50μgのバイアル(冷蔵)へ添加
60ng/マウス(0.2mL/マウス)=0.3μg/mL(希釈原液 1:100、25mLのPBS中150μL)
【0109】
SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対するBTKiによる治療薬治療の有効性
雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して化合物(2)を治療的に投与した。誘導後9日目に投与を開始した:ビヒクル、1.0mg/kg、3mg/kg、10mg/kgを経口で1日1回.エンドポイントには、クリニカルスコア、受容体占有率、及び試験終了時のCD69発現(投与後2時間及び24時間)を含めた。(図14図16)B細胞枯渇抗体を参照として用いた(抗CD20)。
【0110】
動物:Jaxより100匹の雌SJLマウス(到着時10週令)を入手し、到着時に少なくとも18gであった。
【0111】
【表5】
【0112】
SJLマウスにおけるEAEの誘導
PLP139-15をPBSに溶解し、等容量の2mg/mLヒト結核菌(MT)添加CFAで乳化した(CFAには1mg/mLのMTが含まれるためさらに1mg/mLで添加し終濃度を2mg/mLとする)。マウスの側腹部に、0.2mLのペプチド乳剤を皮下注射した(各側0.1mL)。同日及び48時間後に、マウスの腹腔内に、200μL(60ng)の百日咳菌(Bordetella Pertussis)毒素を含む生理食塩水を注入した。
【0113】
溶液調製:
CFA調製:合計必要量:10mL;2mg/mLのMTをIFAに添加し、CFA中のMTの総濃度を2mg/mLとする(100mgのMTを50mLのIFAへ添加)。
PLP139−151調製:100μgのPLP139-151:濃度:1mg/mL;20mLのPBS中20mgのPLP;PLP/CFAをホモジナイザー方法で1:1の比で乳化させた。
PTX調製:原液:1mLのPBSを50μgのバイアル(冷蔵)へ添加
60ng/マウス(0.2mL/マウス)=0.3μg/mL(希釈原液 1:100、25mLのPBS中150μL)
【0114】
SJLマウスにおけるPLP誘導EAE
EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)は、多発性硬化症(MS)の動物モデルである。本モデルは、炎症及び脱髄を含むMSに認められる病理のある種の面を反映している。雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して化合物(2)を治療的に投与した。誘導後17日目に投与を開始した:ビヒクル、1.0mg/kg及び10mg/kgを経口で1日1回。エンドポイントにはクリニカルスコアを含めた。(図18図19)雌SJLマウスにおけるPLP139−151誘導EAEに対して化合物(2)を治療的に投与した。誘導後7日目に投与を開始した(EAE発症前):ビヒクル、1.0mg/kg及び10mg/kgを経口で1日1回。エンドポイントにはクリニカルスコアを含めた。(図20図21
【0115】
動物:マウスは、雌SJLマウスをジャクソン研究所(Jackson Laboratory)から入手した。SJLマウスを8〜10週令で注文し9〜11週令で使用した。実験期間中、動物を集合畜舎で飼育した。
【0116】
手順
1)PLP139-151の調製:PLP139-151ペプチド溶液を、PBS中で濃度1〜2mg/mLとなるように作製した。
2)IFA+MTの調製:結核菌H37RA株を添加したOFAを以下の通り作製した:IFA(10mL/アンプル)を50mL容積Falconチューブに注いだ(乾燥TM H37RAの100mgアンプルそれぞれに対して50mL)。100mgのTM H37RAを前記50mLのCFAに加え、短時間均質化した(〜1分間)。
3)乳剤の調製:等量のIFA/TM及びPLP139-151を乳剤に用いた。IFA/TMを滅菌ビーカーに添加した。低速で均質化する間に、トランスファーピペットでPLP139-151溶液を滴下することにより内容物を乳化した。数分おきに氷冷して乳剤の加熱を防止した後(加熱によりペプチドが変性するおそれがある)、PLP139-151溶液を添加し、乳剤が滑らかになるまで前記手順を繰り返した。数秒間(15〜30秒間)高速で乳剤を均質化して確実に均質な乳剤を得た。リザーバー又は100mLビーカー内で50mLのPBS表面に液滴を押し出すことにより、乳剤の安定性をテストした。乳剤の液滴は分散することなく維持された。乳剤を使用前に氷上で保存した。
4)PLP139-151の注入:1mLのLuerLokシリンジに乳剤を充填した。15ゲージの動物給餌用針を追加し、給餌針を乳剤に浸して針を乳剤で満たした。針を乳剤で満たし、空気をシリンジから押し出した。27ゲージ針を用いて0.2mLのPLP139-151乳剤を各マウスの側腹部に注入した(リンパ節に近い2か所に0.1mL)。
5)PTXの調製:1mLの無菌PBSを50μgのPTX(1バイアル)に添加し、緩やかに混合した。ストック液を4℃で保存し、48時間時点の注入用に新鮮な溶液をストック液から作製した。使用前にPTXをPBSで望ましい濃度(0.25〜1μg/mL又は50〜100ng/マウス)に希釈した。
6)PTXの注入:SJLマウスに25ゲージ針で200μLを腹腔内注入した。
一回の注入をMOG35−55注入と同日に行い、48時間後に再度注入した。
7)体重及びクリニカルスコア測定:SJLマウスの重さを計り、クリニカルスコアをスコアリングシステムにより少なくとも週3回評価した。疾患のピーク時(10〜15日目前後)、スコア測定を毎日行った。試験期間は最長で10週とした。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12a
図12b
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図15c
図16
図17a
図17b
図18a
図18b
図19a
図19b
図20a
図20b
図21a
図21b
図21c