(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用積層体は、機能層を非水系電池用基材上に転写させ、機能層を備える非水系二次電池部材を製造する用途に用いられるものである。
なお、機能層は、例えば、セパレータや電極等の二次電池部材の耐熱性および強度を向上させるための多孔膜層であってもよいし、二次電池部材同士を接着させるための接着層であってもよいし、多孔膜層と接着層との双方の機能を発揮する層であってもよい。
【0016】
(非水系二次電池用積層体)
非水系二次電池用積層体は、離型基材および機能層を備える。この機能層は、離型基材に隣接するように配置され、少なくとも非導電性粒子および結着材を含む。そして、離型基材の水に対する接触角が特定の範囲内であり、機能層中に非導電性粒子および結着材が並存している。
そして、本発明の非水系二次電池用積層体を用いれば、機能層を好適に二次電池用基材上に転写することができ、当該転写後の機能層は、電解液中での接着性に優れる上、二次電池に優れた電気的特性を発揮させることができる。加えて、本発明の非水系二次電池用積層体を用いれば、機能層用組成物を塗布するための装置を有さない場合でも、機能層を備える二次電池部材の製造が可能である。また、本発明の非水系二次電池用積層体を用いれば、機能層用組成物の塗布が困難な二次電池用基材(例えば、不織布などの孔径が大きい基材)上にも容易に機能層を設けることが可能となる。
【0017】
<機能層>
二次電池用積層体を構成する機能層は、上述のように非導電性粒子および結着材を含み、任意にその他の成分を含み得る。そして機能層は、二次電池用基材上へと転写され、セパレータや電極などの二次電池部材の少なくとも一部を構成する。
【0018】
<<非導電性粒子>>
機能層に含まれる非導電性粒子は、電解液中で二次電池部材同士、例えばセパレータと電極とを強固に接着させる接着剤としての機能を担う。また、非導電性である粒子を用いることと、離型基材の水に対する接触角が所定範囲内であることとにより、転写性と電極およびセパレータの接着性とを高度にバランスさせることができる。なお、「非導電性粒子」には、後述する結着材は含まれない。
非導電性粒子としては、特に限定されることなく、非水系二次電池に用いられる既知の非導電性の粒子を挙げることができる。具体的には、非導電性粒子としては、無機粒子および有機粒子の双方を用いることができる。無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、水和アルミニウム酸化物(ベーマイト)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO
3、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。また、これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。一方、有機粒子としては、非導電性であれば特に限定されることなく、非水系二次電池の機能層に用いられる既知の非導電性の有機粒子を用いることができる。なお、上述した非導電性粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、非導電性粒子として、有機粒子と無機粒子とを併用してもよい。
これらの中でも、非導電性粒子としては、有機粒子が好ましい。非導電性粒子として有機粒子を用いることで、機能層が電解液中で二次電池部材同士をより強固に接着させることができる。
【0019】
ここで、有機粒子は、任意の単量体を重合または共重合することにより調製することができる。そして、有機粒子を調製するために用いる単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体等の酸基含有単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロ」は、アクリロおよび/またはメタクリロを意味する。
【0020】
前記の単量体の中でも、有機粒子の調製に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、有機粒子としての重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
なお、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0021】
また、有機粒子としての重合体は、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0022】
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、有機粒子としての重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。
【0025】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、非導電性粒子としての有機粒子は、ガラス転移温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは70℃以下である。有機粒子のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。加えて、機能層のブロッキングを抑制することもできる。また、有機粒子のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の電解液中での接着性をより高め、二次電池の高温サイクル特性を更に向上させることができる。
有機粒子のガラス転移温度は、例えば、有機粒子の調製に用いる単量体の種類および/または割合を変更することなどにより、適宜調整することができる。
【0027】
なお、有機粒子が、例えば後述するコアシェル構造を有するなどによって複数のガラス転移温度を有する場合には、当該複数のガラス転移温度の少なくとも一つが上述の範囲内であることが好ましく、これにより、上述した効果を得ることができる。但し、有機粒子が複数のガラス転移温度を有する場合には、所望の効果を十分に得る観点から、当該複数のガラス温度のうち最も低いものが上述の範囲内であることがより好ましく、当該複数のガラス転移温度の全てが上述の範囲内であることが更に好ましい。
【0028】
また、有機粒子をはじめとする非導電性粒子は、体積平均粒子径D50が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上、一層好ましくは0.4μm以上、特に好ましくは0.45μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。非導電性粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の内部抵抗の上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、非導電性粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中での非導電性粒子の接着性を高め、高温サイクル特性を更に向上させることができる。
【0029】
ここで、非導電性粒子として用い得る有機粒子は、特に制限されず、例えば、コア部と、コア部の外表面を(好ましくは部分的に)覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しているものであってもよい。コアシェル構造を有する有機粒子は、電解液中においてより優れた接着性を発揮し、機能層を備える非水系二次電池の電気的特性を良好に向上させることができる。更に、電極基材やセパレータ基材上に機能層を形成してなる二次電池部材(電極、セパレータ)は、巻き重ねられた状態で保存および運搬されることがあるが、上記機能層が形成された二次電池用基材は、巻き重ねられた場合でもブロッキング(機能層を介した二次電池部材同士の膠着)を生じ難く、ハンドリング性に優れている。
なお、上述のコアシェル構造において、コア部とは、重合体からなり、有機粒子においてシェル部よりも内側にある部分である。また、シェル部とは、重合体からなり、コア部の外表面を覆う部分であり、通常は有機粒子において最も外側にある部分である。そして、シェル部は、コア部の外表面の全体または一部分を覆っているものである。
【0030】
有機粒子がコアシェル構造を有する場合、コア部の重合体の調製に用いる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、コア部の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
一方、シェル部の重合体の調製に用いられる単量体としては、芳香族ビニル単量体が好ましい。即ち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレンおよびスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。これにより、有機粒子の接着性を一層高めることができる。
【0031】
また、有機粒子がコアシェル構造を有する場合、コア部の重合体および/またはシェル部の重合体は、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられ、その具体例および好ましい酸基含有単量体単位としては、上述したものと同様である。
【0032】
コア部の重合体は、ガラス転移温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは70℃以下である。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。加えて、機能層のブロッキングを抑制することもできる。また、コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の電解液中での接着性をより高め、二次電池の高温サイクル特性を更に向上させることができる。
【0033】
また、シェル部の重合体は、ガラス転移温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは70℃以下である。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。加えて、機能層のブロッキングを抑制することもできる。また、シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の電解液中での接着性をより高め、二次電池の高温サイクル特性を更に向上させることができる。
コア部の重合体およびシェル部の重合体のガラス転移温度は、例えば、各重合体の調製に用いる単量体の種類および/または割合を変更することなどにより、適宜調整することができる。
【0034】
上述したコアシェル構造を有する有機粒子は、例えば、コア部の重合体の単量体と、シェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、有機粒子は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0035】
そして、有機粒子としての重合体(有機粒子がコアシェル構造を有する場合における、コア部の重合体およびシェル部の重合体を含む)の重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0036】
<<結着材>>
機能層に含まれる結着材は、電解液への浸漬前に機能層に含まれる成分が機能層から脱落するのを抑制し、かつ離型基材上への機能層の形成および当該機能層の二次電池用基材上への転写を好適に行う観点から用いられるものである。そして、結着材は、離型基材および非導電性粒子、或いは非導電性粒子同士の結着を維持し、離型基材からの機能層の剥離を抑制するため、その体積平均粒子径D50が、上述した非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも小さいことを要する。ここで、結着材としては、電解液に膨潤していない温度25℃の環境下において非導電性粒子よりも高い接着性を発揮し得る、粒子状重合体を機能層に含ませることが好ましい。結着材として粒子状重合体を用いることにより、機能層を構成する成分が機能層から脱落するのを更に抑制することができる。加えて、離型基材および二次電池用基材双方への機能層の乾燥状態での接着性を確保することができるため、二次電池用積層体の製造を確実に行うことができ、しかも当該二次電池用積層体を用いて、機能層を備える二次電池部材を容易に製造することができる。
【0037】
そして、上記非導電性粒子と併用する粒子状重合体としては、非水溶性で、水中に分散可能な既知の粒子状重合体、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。そして、熱可塑性エラストマーとしては、共役ジエン系重合体およびアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
ここで、共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体を指し、共役ジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル単量体単位および脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体が挙げられる。また、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体を指す。
なお、これらの粒子状重合体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
更に、粒子状重合体としてのアクリル系重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが更に好ましい。これにより、機能層の強度を高めることができる。
【0039】
ここで、粒子状重合体としてのアクリル系重合体において、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリロニトリル単量体単位の量の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。前記割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状重合体としてのアクリル系重合体の強度を高め、当該アクリル系重合体を用いた機能層の強度をより高くすることができる。また、前記割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子状重合体としてのアクリル系重合体が電解液に対して適度に膨潤するため、機能層のイオン伝導性の低下および二次電池の低温出力特性の低下を抑制することができる。
【0040】
また、結着材は、ガラス転移温度が、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−48℃以上であり、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−10℃以下である。結着材のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、結着材のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池用積層体を用いて二次電池用基材上に機能層を形成する際の、機能層の転写性を更に高めることができる。
【0041】
更に、結着材の体積平均粒子径D50は、非導電性粒子の体積平均粒子D50よりも小さければ特に制限されないが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.45μm未満、更に好ましくは0.4μm未満である。結着材の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、結着材の分散性を高めることができる。また、結着材の体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下または未満にすることにより、結着材の接着性を高めることができ、機能層の転写性を更に高めることができる。
【0042】
そして、機能層における結着材の含有量は、非導電性粒子100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、28質量部以下であることがより好ましく、26質量部以下であることが更に好ましい。結着材としての粒子状重合体の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液中での機能層の接着性をより高めることができる。一方、結着材としての粒子状重合体の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、離型基材からの機能層の剥離が容易となり、機能層の転写性を更に高めることができる。加えて機能層のイオン拡散性が低下するのを抑制し、二次電池の低温出力特性を確保することができる。
【0043】
結着材、とりわけ粒子状重合体の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、粒子状重合体を含む水分散液をそのまま機能層用組成物の材料として好適に使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、粒子状重合体としての重合体を製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。粒子状重合体は、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0044】
<<その他の成分>>
機能層は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分としては、例えば、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい
【0045】
ここで後述するように、機能層は、通常、機能層用組成物を離型基材上に塗布および乾燥して形成される。そこで、機能層用組成物の離型基材上における塗布ムラを改善する等の観点から、濡れ剤を用いることが好ましい。
機能層中(および機能層用組成物)中の濡れ剤の配合量は、有機粒子100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。濡れ剤の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用組成物の塗布ムラを抑制することができ、得られる機能層の離型基材への接着性を確保することができる。一方、濡れ剤の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池用積層体を用いて二次電池用基材上に機能層を形成する際の機能層の転写性を更に高め、また、電解液中での機能層の接着性を確保することができる。
【0046】
<離型基材>
二次電池用積層体を構成する離型基材は、その上に隣接して上述の機能層が配置されるものであり、また当該機能層を二次電池用基材上に転写する際には、機能層から容易に剥離し得る基材である。なお、離型基材の形状(フィルムなど)、材質は特に限定されず、公知のものを採用することができる。
ここで、離型基材の水に対する接触角は70°以上であることが必要であり、80°以上であることが好ましく、90°以上であることがより好ましく、一方、130°以下であることが必要であり、110°以下であることがより好ましく、100°以下であることが更に好ましい。離型基材の水に対する接触角が70°未満であると、水系の機能層用組成物から形成される機能層が離型基材に過度に接着することとなり、機能層の転写性を確保することができない。一方、水に対する接触角が130°超であると、機能層用組成物を離型基材上へ塗布する際の塗布ムラが頻発し、これにより、転写後における機能層の電解液中での接着性が悪化する。
なお、離型基材の水に対する接触角は、例えば、任意の基材の表面をアルキド樹脂等の適切な樹脂でコーティングする、基材表面に対してコロナ放電処理等の活性化処理を施すなどにより、適宜調整することができる。或いは、水に対する接触角が70°以上130°以下である市販の基材を適宜選択し、離型基材として用いることもできる。
【0047】
<非水系二次電池用積層体の製造>
離型基材上に機能層を形成して、二次電池用積層体を製造する方法は、特に限定されないが、通常は、非水系二次電池機能層用組成物を離型基材上に塗布し、乾燥する方法を採用することができる。
なお、機能層用組成物中に含まれる各成分は、上述した機能層に含まれるものに対応させて選択することができ、それら各成分の機能層用組成物中の好適な存在比は、機能層中の各成分の好適な存在比と同じとする。
【0048】
<<非水系二次電池機能層用組成物>>
ここで、機能層用組成物の調製方法としては、特に限定はされないが、通常は、非導電性粒子と、結着材と、分散媒としての水と、必要に応じて用いられる濡れ剤などのその他の成分とを混合して機能層用組成物を調製することができる。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
【0049】
得られる機能層用組成物の粘度は、特に限定されないが、1mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることが更に好ましく、15mPa・s以上であることが特に好ましく、100mPa・s以下であることが好ましく、90mPa・s以下であることがより好ましい。機能層用組成物の粘度が前記範囲内であれば、機能層用組成物中で非導電性粒子などの各成分を良好に分散させつつ、機能層用組成物の離型基材上への塗布性を確保することができる。なお、本発明において「粘度」とは、B型粘度計を用いて、温度25℃、回転速度60rpmで測定される値を指す。
【0050】
<<離型基材上に機能層を形成する方法>>
上述の機能層用組成物を用いて、離型基材上に機能層を形成する方法としては、以下1)、2)の方法:
1)機能層用組成物を離型基材の表面に塗布し、次いで乾燥する方法
2)機能層用組成物に離型基材を浸漬後、これを乾燥する方法
が挙げられる。
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。該1)の方法は、詳細には、機能層用組成物を離型基材上に塗布する工程(塗布工程)、離型基材上に塗布された機能層用組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(機能層形成工程)を備える。
【0051】
塗布工程において、機能層用組成物を離型基材上に塗布する方法は、特に制限は無く、例えば、スプレーコート法、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。なかでも、薄い機能層を形成する点から、グラビア法、スプレーコート法が好ましい。
また機能層形成工程において、離型基材上の機能層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは30〜80℃で、乾燥時間は好ましくは30秒〜10分である。
【0052】
ここで、離型基材上に形成された機能層の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。機能層の厚みが前記範囲の下限値以上であることで、機能層の強度を十分に確保することができ、前記範囲の上限値以下であることで、機能層のイオン拡散性を確保し二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
【0053】
<非水系二次電池部材の製造>
上述のようにして得られる本発明の非水系二次電池用積層体を用いて、非水系二次電池用基材(電極基材、セパレータ基材)上に機能層を形成し、機能層を備える非水系二次電池部材(電極、セパレータ)を製造することができる。具体的には、非水系二次電池用積層体を、機能層が非水系二次電池用基材と隣接するように配置し、機能層を非水系二次電池用基材に接着させる工程(接着工程)と、離型基材を機能層から剥離する工程(剥離工程)とを含む。なお、上述の接着工程と剥離工程とを合わせて、転写工程と称することもできる。
このようにして製造される非水系二次電池部材は、二次電池に優れた電気的特性(低温出力特性、高温サイクル特性)を発揮させることができる。
【0054】
<<接着工程>>
接着工程において、二次電池用積層体を構成する機能層と二次電池用基材とを接着させる方法としては、特に限定されないが、金型プレスやロールプレスなどを用いた加圧接着が好ましい。なお、加圧接着の条件(圧力、温度、時間など)は、用いる結着材のガラス転移温度等に応じて適宜変更し得るが、ロールプレスを用いた加圧接着を例に挙げると、例えばロールの温度を50〜200℃の範囲で適宜設定し得る。
【0055】
また、接着工程において機能層を接着する二次電池用基材は、特に限定されない。二次電池部材としてのセパレータを製造する場合は、二次電池用基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、二次電池部材としての電極を製造する場合は、二次電池用基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。
なお、機能層が主として接着剤層として機能するものである場合には、表面に多孔膜層を設けたセパレータ基材または電極基材の上に機能層を形成してもよい。
【0056】
[セパレータ基材]
セパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0057】
[電極基材]
電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
ここで、集電体、電極合材層中の成分(例えば、電極活物質(正極活物質、負極活物質)および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)など)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
【0058】
<<剥離工程>>
剥離工程において、離型基材を機能層から剥離して、二次電池用基材上に機能層を備える二次電池部材を得る方法としては、特に限定されず、ロールを用いる等の既知の方法を採用することができる。
【0059】
<非水系二次電池>
本発明の非水系二次電池用積層体を用いて非水系二次電池用基材上に機能層が転写された非水系二次電池部材を用いることで、高温サイクル特性や低温出力特性などの電気的特性に優れる非水系二次電池を製造することができる。ここで、非水系二次電池は、通常、正極、負極、セパレータおよび電解液を備える。
【0060】
<<正極、負極およびセパレータ>>
ここで、二次電池においては、少なくとも一つの二次電池部材を、本発明の非水系二次電池用積層体を用いて転写された機能層を備える二次電池部材とすることができる。すなわち、二次電池に用いる正極、負極およびセパレータは、少なくとも一つが機能層を有している。具体的には、機能層を有する正極および負極としては、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に機能層を設けてなる電極を用いることができる。また、機能層を有するセパレータとしては、セパレータ基材の上に機能層を設けてなるセパレータや、機能層よりなるセパレータを用いることができる。なお、電極基材およびセパレータ基材としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
また、機能層を有さない正極、負極およびセパレータとしては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極および上述したセパレータ基材よりなるセパレータを用いることができる。
【0061】
<<電解液>>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0062】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0063】
<<非水系二次電池の製造>>
非水系二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造し得る。なお、正極、負極、セパレータのうち、少なくとも一つの二次電池部材を、本発明の非水系二次電池用積層体を用いて転写された機能層を備える二次電池部材とすることができる。ここで、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
また、非導電性粒子、結着材および任意のその他の成分を含む機能層用組成物を用いて得られる機能層において、少なくとも非導電性粒子と結着材との比は、別に断らない限り、通常は、機能層用組成物の調製に用いられる非導電性粒子および結着材の配合比率(仕込み比)と一致する。
そして、実施例および比較例において、非導電性粒子および結着材としての粒子状重合体の体積平均粒子径D50、各重合体(非導電性粒子としての有機粒子のコア部の重合体、当該有機粒子のシェル部の重合体、および、結着材としての粒子状重合体)のガラス転移温度、機能層の電解液中での接着性(機能層と電極基材の間の電解液浸漬後の接着強度)、機能層の転写性、離型基材の水に対する接触角、並びに、二次電池の低温出力特性および高温サイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0065】
<非導電性粒子および結着材の体積平均粒子径D50>
非導電性粒子および結着材としての粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、それぞれ固形分濃度15質量%に調整した水分散溶液の、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−3100」)により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
【0066】
<各重合体のガラス転移温度(Tg)>
非導電性粒子としての有機粒子のコア部の重合体およびシェル部の重合体のガラス転移温度の測定には、それぞれ、当該重合体の調製に使用した単量体組成物を使用し、当該重合体の重合条件と同様の重合条件で、測定試料となる重合体を含む水分散液をそれぞれ作製し、当該水分散液を乾固させて得られる測定試料を使用した。
結着材としての粒子状重合体のガラス転移温度の測定には、得られた粒子状重合体を含む水分散液を乾固させて得られる測定試料を使用した。
次に、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、製品名「EXSTAR DSC6220」)を用い、上述の測定試料10mgをアルミパンに計量し、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/分、常温常湿下で、DSC曲線を測定した。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点から、ガラス転移温度を求めた。
【0067】
<離型基材の水に対する接触角>
接触角計(協和界面化学社製、「DM−701」)を用いて、離型基材表面に蒸留水を3μL滴下し、滴下から10秒後の接触角(°)を測定した。
【0068】
<機能層の転写性>
離型基材と機能層とを備える二次電池用積層体を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とした(なお、長さ100mm、幅10mmの長方形状の離型基材単独の質量M0を別途測定した)。当該試験片および電極基材を、試験片の機能層側が電極基材の電極合材層側と対向するように配置し、100℃、200Kgf/cmの線圧、1m/minの速度にてプレスした。得られた、離型基材と、機能層と、電極基材とをこの順に備えてなる複合体の離型基材の一端を、垂直方向に引張速度50mm/分で引っ張り、離型基材を剥がすことで転写を完了した。そして、転写後の離型基材の質量M1を測定した。離型基材単独の質量M0を、転写後の離型基材の質量M1で除した値に100を乗じた数値(M0/M1比率、単位:質量%)を用いて、以下の基準で評価した。M0/M1比率の値が大きいほど、転写後の離型基材に残存した機能層の質量が小さく、機能層が転写性に優れることを示す。
A:M0/M1比率が90質量%以上
B:M0/M1比率が80質量%以上90質量%未満
C:M0/M1比率が60質量%以上80質量%未満
D:M0/M1比率が60質量%未満
【0069】
<機能層の電解液中での接着性(機能層と電極基材の間の電解液浸漬後の接着強度)>
機能層を電極基材上に備えてなる電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5(体積混合比)、電解質:濃度1mol/LのLiPF
6)に60℃で3日間浸漬した。電解液から試験片を取り出し、機能層の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、電解液を拭き取った機能層の表面を下にして、機能層の表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、電極基材の集電体の一端を鉛直上方に引っ張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した(なお、セロハンテープは水平な試験台に固定した)。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とし、以下の基準で評価した。測定されたピール強度が大きいほど、機能層の電解液中での接着性が優れることを示す。
A:ピール強度が10N/m以上
B:ピール強度が8N/m以上10N/m未満
C:ピール強度が5N/m以上8N/m未満
D:ピール強度が5N/m未満
【0070】
<二次電池の高温サイクル特性>
製造した放電容量900mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、4.35V、0.1Cの定電圧・定電流充電、2.75V、0.1Cの定電流放電にて充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。その後、更に、60℃の環境下で、充放電を繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。そして、サイクル前後での容量維持率ΔC(%)=(C1/C0)×100を算出し、下記の基準で評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、高温サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが75%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%未満
【0071】
<二次電池の低温出力特性>
製造した放電容量900mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、4.2V、0.1C、5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。そして、ΔV=V0−V1で示す電圧変化を求め、下記の基準で評価した。この電圧変化が小さいほど、低温出力特性に優れていることを示す。
A:電圧変化ΔVが500mV以下
B:電圧変化ΔVが500mV超700mV以下
C:電圧変化ΔVが700mV超900mV以下
D:電圧変化ΔVが900mV超
【0072】
(実施例1)
<非導電性粒子の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、非導電性粒子としての有機粒子のコア部形成用として、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのメタクリル酸メチル42部、ブチルアクリレート24.5部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸2.8部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート0.7部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を添加し、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、続いて、非導電性粒子としての有機粒子のシェル部形成用として、芳香族ビニル単量体としてのスチレン29部と、酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部との混合物を連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。添加した全単量体の重合転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液を得た。
得られた非導電性粒子としての有機粒子の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.5μmであった。また、得られた有機粒子を構成するコア部の重合体およびシェル部の重合体のガラス転移温度を測定した。そして、この測定により、シェル部の重合体のガラス転移温度よりも、コア部の重合体のガラス転移温度の方が低いことが分かった。コア部の重合体のガラス転移温度の測定結果を表1に示す。
【0073】
<結着材の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過硫酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部およびアリルグリシジルエーテル1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で3時間撹拌して反応を終了し、結着材としての粒子状重合体を含む水分散液を得た。
得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.36μmであった。また、この結着材としての粒子状重合体のガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
<機能層用組成物の調製>
非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液を固形分相当で100部、結着材としての粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で21部、濡れ剤(サンノプコ社製、「SN366」)1部を配合して混合し、更にイオン交換水を固形分濃度が39%になるように添加して、機能層用組成物を得た。
【0075】
<非水系二次電池用積層体の製造>
機能層用組成物を、離型基材a(リンテック社製、「PET38AL−5」)上に塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、厚みが1μmの機能層を離型基材a上に備える二次電池用積層体を得た。得られた二次電池用積層体を用いて、機能層の転写性、および機能層の電解液中での接着性(機能層と電極基材の間の電解液浸漬後の接着強度)を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<負極基材の製造>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極合材層用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を混合して固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水で調整し、更に25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、前述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、前述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理してプレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚さが80μmのプレス後の負極基材を得た。
【0077】
<機能層を備える負極の製造(負極基材への機能層の転写)>
離型基材と機能層とを備える二次電池用積層体を、機能層が負極合材層に接するように負極基材上に配置して、温度100℃のロールプレスを通し貼り合わせた後、更に機能層から離型基材をロールにて剥離し、機能層を負極基材上へ転写することで、機能層を備える負極を得た。
【0078】
<正極の製造>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、「HS−100」)を2部、正極合材層用の粒子状結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、「#7208」)を固形分相当で2部と、N−メチルピロリドンとを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を得た。
得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚さが80μmのプレス後の正極を得た。
【0079】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極を49cm×5cmに切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その上に55cm×5.5cmに切り出したセパレータ(セルガード社製、「2500」、厚み25μm)を配置した。更に、上記で得られた機能層を備える負極を、50cm×5.2cmに切り出し、これをセパレータ上に、機能層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機により、捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とし、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入した。更に、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、非水系二次電池として放電容量900mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池を用いて、高温サイクル特性および低温出力特性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用のメタクリル酸メチルの添加量を42部から50部に変え、ブチルアクリレートの添加量を24.5部から16.5部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。なお、有機粒子を構成するコア部およびシェル部の各重合体のガラス転移温度の測定により、シェル部の重合体のガラス転移温度よりも、コア部の重合体のガラス転移温度の方が低いことが分かった。また、得られた非導電性粒子としての有機粒子の体積平均粒子径D50は、0.52μmであった。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用のメタクリル酸メチルの添加量を42部から60部に変え、ブチルアクリレートの添加量を24.5部から6.5部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。なお、なお、有機粒子を構成するコア部およびシェル部の各重合体のガラス転移温度の測定により、シェル部の重合体のガラス転移温度よりも、コア部の重合体のガラス転移温度の方が低いことが分かった。また、得られた非導電性粒子としての有機粒子の体積平均粒子径D50は、0.52μmであった。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用のメタクリル酸メチルの添加量を42部から20部に変え、ブチルアクリレートの添加量を24.5部から46.5部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。なお、なお、有機粒子を構成するコア部およびシェル部の各重合体のガラス転移温度の測定により、シェル部の重合体のガラス転移温度よりも、コア部の重合体のガラス転移温度の方が低いことが分かった。また、得られた非導電性粒子としての有機粒子の体積平均粒子径D50は、0.55μmであった。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例5)
結着材としての粒子状重合体を含む水分散液の調製時に、ブチルアクリレートの添加量を94部から54部に変え、アクリロニトリルの添加量を2部から42部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。なお、得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、0.37μmであった。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例6)
結着材としての粒子状重合体を含む水分散液の調製時に、ブチルアクリレートの添加量を94部から49部に変え、アクリロニトリルの添加量を2部から47部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。なお、得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.36μmであった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例7)
結着材としての粒子状重合体を含む水分散液の調製時に、ブチルアクリレートの添加量を94部から98部に変え、アクリロニトリルの添加量を2部から0部に変え、N−メチロールアクリルアミドの添加量を1部から0部に変え、アリルグリシジルエーテルの添加量を1部から0部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。なお、得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.34μmであった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例8〜10)
機能層用組成物の調製時に、結着材としての粒子状重合体の配合量(粒子状重合体を含む水分散液の固形分相当の配合量)を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例11)
非水系二次電池用積層体の製造時に、離型基材aに代えて、離型基材b(日本写真印刷社製、「Nissha Techsol RX101」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例12)
非水系二次電池用積層体の製造時に、離型基材aに代えて、離型基材c(ダイセルバリューコーティング社製、「T788」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
非水系二次電池用積層体の製造時に、離型基材aに代えて、ポリエチレン製の離型基材dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
非水系二次電池用積層体の製造時に、離型基材aに代えて、セルロース不織布製の離型基材e(ニッポン高度紙工業社製、「TF−40」、厚み40μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、粒子状重合体、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
非導電性粒子の調製時に、(1)有機粒子のコア部形成用として添加したドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を1部から2部に変えたこと、(2)重合を開始する際の加温温度を60℃から80℃に変えたこと、および(3)有機粒子のシェル部形成用の混合物を連続添加して重合を継続する際、70℃に加温したことに代えて80℃に維持することとしたこと以外は、実施例1と同様にして、非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液を得た。
得られた非導電性粒子としての有機粒子の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.35μmであった。また、得られた有機粒子を構成するコア部の重合体およびシェル部の重合体のガラス転移温度を測定した。そして、この測定により、シェル部の重合体のガラス転移温度よりも、コア部の重合体のガラス転移温度の方が低いことが分かった。コア部の重合体のガラス転移温度の測定結果を表1に示す。
また、結着材の調製時に、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、結着材としての粒子状重合体を含む水分散液を得た。
得られた粒子状重合体の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.5μmであった。また、この結着材としての粒子状重合体のガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
そして、上述の非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液および結着材としての粒子状重合体を含む水分散液を用い、実施例1と同様にして、機能層用組成物、二次電池用積層体、機能層を備える負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
上述の表1より、非導電性粒子および当該非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも小さい体積平均粒子径D50を有する結着材を含む機能層を、水に対する接触角が70°以上130°以下である離型基材上に設けてなる二次電池用積層体を使用した実施例1〜12では、機能層の転写性に優れ、且つ、機能層が電解液中において良好な接着性を発揮できていることが分かる。これに対し、離型基材の水に対する接触角が過度に高い比較例1では、離型基材に塗布された機能層のコーティング性が悪化し(はじきの発生)、その結果、機能層の転写性が不良となるとともに、電解液中での機能層の接着性も著しく悪化することが分かった。また、離型基材の水に対する接触角が低い比較例2では、機能層が離型基材に過度に接着し、少なくとも機能層の転写性が悪化することが分かった。更に、非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも結着材の体積平均粒子径D50の方が大きい比較例3では、離型基材および非導電性粒子、或いは非導電性粒子同士の結着が維持できず、離型基材や機能層表面から非導電性微粒子が剥離しやすくなり、機能層の転写性が不良となるとともに、電解液中での機能層の接着性も著しく悪化することが分かった。
【0094】
また、上述の表1の実施例1〜4より、非導電性粒子としての有機粒子の単量体組成を変えるなどしてそのガラス転移温度を調整することで、接着層の電解液中での接着性、並びに二次電池の低温出力特性および高温サイクル特性を更に高め得ることが分かる。
更に、上述の表1の実施例1、5〜7より、結着材の単量体組成を変えるなどしてそのガラス転移温度を調整することで、接着層の転写性および二次電池の低温出力特性を更に向上させ得ることが分かる。
また、上述の表1の実施例1、8〜10より、機能層における結着材の含有量を調整することで、機能層の転写性および電解液中での接着性、ならびに二次電池の低温出力特性を更に向上させ得ることが分かる。
そして、上述の表1の実施例1、11、12より、離型基材の水に対する接触角を調整することで、機能層の転写性および電解液中での接着性、ならびに二次電池の高温サイクル特性および低温出力特性を更に向上させ得ることが分かる。