特許第6891442号(P6891442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891442
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】新規キノフタロン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 25/00 20060101AFI20210607BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20210607BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C09B25/00 DCSP
   C09B67/20 F
   C09B67/20 A
   G02B5/20 101
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-201725(P2016-201725)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-62578(P2018-62578A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】重廣 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】近藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】安井 健悟
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−209435(JP,A)
【文献】 特開平05−197176(JP,A)
【文献】 特公昭48−032765(JP,B1)
【文献】 色材,1971年,Vol.44,No.7,p.316−324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 − 69/10
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1’)
【化1】
(式(1’)中、Xは水素原子又はハロゲン原子であり、Yは水素原子又はハロゲン原子であり、Zは直接結合又は低級アルキレン基である)で表されるキノフタロン化合物。
【請求項2】
Zが直接結合又はメチレン基である、請求項1に記載のキノフタロン化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキノフタロン化合物を含有する着色剤。
【請求項4】
請求項3に記載の着色剤を含有する着色組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キノフタロン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一定の構造を有するビスキノフタロン化合物が開示されている。また、特許文献2には、一定の構造を有するキノフタロン化合物が開示されている。しかしながら、特許文献1及び2には、下記式(1)で表される本発明の化合物は開示されていない。
【0003】
【特許文献1】特公昭48−32765号公報
【特許文献2】特開2013−61622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、着色組成物は様々な分野に用いられており、具体的な用途としては印刷インキ、塗料、樹脂用着色剤、繊維用着色剤、情報記録用色材(カラーフィルタ、トナー、インクジェットなどに用いる色材)などが挙げられる。着色組成物に用いられる色素は主に顔料と染料に大別され、それらに求められる性能としては、色特性(着色力、鮮明性)、耐性(耐候性、耐光性、耐熱性、耐溶剤性)などがある。通常、分子状態で発色する染料とは異なり、顔料は粒子状態(一次粒子の凝集体)からの発色となる。そのため、顔料は染料に比べ、一般的に耐性においては優位であるものの、着色力や鮮明性では劣っているものが多い。このような背景から高着色力・高彩度な顔料が求められている。その中でも、着色力の点において優勢とされている有機顔料にとりわけ注目が集まっている。
【0005】
それら有機顔料において、黄色顔料はカラーインデックスの登録数が赤色顔料に次いで多いなど、これまで多くの新規顔料が積極的に開発されてきた。実際に用いられている黄色有機顔料として、例えば、印刷インキ用途ではC.I.ピグメント イエロー3、同12、同74等が、塗料用途では同74、同83、同109、同110等が、カラーフィルタ用途では、同129、同138、同150、同185等が使用されている。しかし、それらの基本構造は主にアゾ、アゾメチン、イソインドリン、イソインドリノンなどに限られている。よって、黄色有機顔料における構造バリエーションは要求される様々な用途に対応するのに未だ十分ではない。
【0006】
特に、液晶ディスプレイ用カラーフィルタ、あるいは、それらカラーフィルタに用いられる顔料には、従来の汎用用途とは異なる特性が求められている。具体的には、バックライトの消費電力を低減できる「高輝度」、さらに、カラーフィルタの薄膜化及び高色再現を可能とする「高着色力」等の要求がある。しかしながら、現行のカラーフィルタ用黄色顔料では、これら全ての要求に応える顔料が無いのが現状である。
ここで、カラーフィルタは、赤色画素部(R)、緑色画素部(G)及び青色画素部(B)からなり、黄色顔料は、緑色画素部の調色用として用いられる場合が多い。黄色顔料の中で、最も使用量が多いのはC.I.ピグメント イエロー138であるが、この同138は着色力に乏しく、高色再現性が求められる色規格では実用性がない。よって、高色再現性の色規格においては、C.I.ピグメント イエロー150が現行の黄色顔料として用いられているが、同150も輝度・着色力ともに十分であるとはいえない。そこで、優れた輝度と着色力を兼備する新規黄色顔料の創出が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。即ち本発明は、下記式(1):
【0008】
【化1】
(式(1)中、Xは水素原子又はハロゲン原子であり、Yは水素原子又はハロゲン原子であり、Zは直接結合又は低級アルキレン基である)で表されるキノフタロン化合物(以下、「本発明化合物」と表記する場合がある)に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明化合物は、優れた輝度と着色力を有する。特に、カラーフィルタ用途における高色再現用色規格において、本発明化合物は、現行の黄色顔料(C.I.ピグメント イエロー150)と比べて同等以上の輝度を有し、かつ、これを超える優れた着色力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記式(1)中のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の各原子が挙げられ、なかでも、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0011】
上記式(1)中の低級アルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレンなどのC1〜3のものなどが挙げられ、メチレンである場合がより好ましい。
【0012】
なお、上記式(1)で表されるキノフタロン化合物は、下記一般式(1−1)及び一般式(1−2)等の構造の互変異性体が存在するが、これらについても本発明に包含されるものである。
【0013】
【化2】
【0014】
式(1−1)及び式(1−2)中、X、Y及びZは上述の通りである。
【0015】
このような本発明化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。以下、本発明化合物の製造方法の一態様を記載する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明化合物は、例えば以下の工程I及び工程IIを含む方法により得ることができる。
<工程I>
まず、国際公開2013/098837公報(WO2013/098837)に記載の方法などにより、ビスアニリンを1当量に対し、クロトンアルデヒドを2〜4当量加え、酸化剤存在下、強酸中において反応させ、後記する式(2)の化合物を合成する。
【0017】
【0018】
式(2)中、X、Y及びZは上述の通りである。
【0019】
ここで、ビスアニリンとしては、2,2’−ジクロロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)などが挙げられる。
強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
酸化剤としては、ヨウ化ナトリウム、p−クロラニル、ニトロベンゼンなどが挙げられる。
工程Iに関し、反応温度は、80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜48時間、好ましくは20時間〜48時間で行うことができる。
【0020】
<工程II>
さらに、特開2013−61622号公報に記載の方法などにより、得られた式(2)の化合物を1当量に対し、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物2〜6当量を酸触媒存在下において反応させることで、式(1)の化合物を得ることができる。
ここで、酸触媒としては、安息香酸、塩化亜鉛などが挙げられる。
工程IIに関し、反応温度は、180℃〜250℃、好ましくは210℃〜250℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜8時間で行うことができる。
【0021】
本発明化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択し併用してもよい。
【0022】
本発明化合物は、多様な用途に適用可能と考えられる。例えば、印刷インキ、塗料、着色プラスチック、トナー、インクジェット用インキ、ディスプレイ用遮光性部材、種子着色などの広範囲な用途の着色剤として用いることができる。
【0023】
本発明化合物は、有機顔料としての性質を示すものであり、ソルトミリング処理などにより、顔料粒子の微細化を施すことで、より好適に使用できる場合がある。このような処理は、公知慣用の方法で行えばよい。
【0024】
本発明化合物は、本発明化合物以外の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体などの色材を、調色などの目的で併用してもよい。これらは、上述のような用途にあわせて適宜選択されるべきものであり、用途によっては、本発明化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜併用してもよい。
【0025】
併用可能な色材としては、公知の顔料、染料等いずれのものでも構わない。
用途によって、アゾ系、ジスアゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ペリレン系顔料、およびキサンテン系、アゾ系、ジスアゾ、アンラキノン系、キノフタロン系、トリアリールメタン系、メチン系、フタロシアニン系、ローダミン系染料などが挙げられる。
【0026】
本発明化合物と併用可能な黄色顔料としては、インキ用途ではC.I.ピグメント イエロー3、同12、同74等が、塗料用途では同74、同83、同109、同110等が、カラーフィルタ用途では、同83、同129、同138、同139、同150、同185、同231などを例示することができる。
【0027】
特にカラーフィルタ用途における緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合には、例えば、C.I.ピグメント・グリーン1、同2、同4、同7、同8、同10、同13、同14、同15、同17、同18、同19、同26、同36、同45、同48、同50、同51、同54、同55、同58、同59のような緑色顔料などと併用することができるが、これらに限定されない。カラーフィルタ用途における緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合、緑色顔料と、本発明の黄色顔料との併用割合は、例えば、緑色顔料100質量部当たり、黄色顔料が10〜100質量部である。
【0028】
また、緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合には、本発明化合物と青色顔料を併用することもできる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、アルミニウムフタロシアニン誘導体などが挙げられる。
ここで、上記のアルミニウムフタロシアニン誘導体とは、例えば、下記一般式(3−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
(式(3−1)中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、又は下記一般式(3−2)で表される基である。)
【0031】
【化4】
【0032】
(式(3−2)中、Xは直接結合又は酸素原子である。Arはフェニル基又はナフチル基である。式中、アスタリスクは結合部位を示す。)
【0033】
上記した式(3−1)中のRにおける前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。中でも、Rにおける前記ハロゲン原子としては、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましい。
【0034】
式(3−1)中、Rは、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又は上記一般式(3−2)で表される基であることが好ましい。
【0035】
式(3−2)中、Xは酸素原子であることが好ましい。
【0036】
式(3−1)の中でも好ましいものとしては、例えば、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、ブロモアルミニウムフタロシアニン、下記式(3−1−1)で表される化合物、下記式(3−1−2)で表される化合物、下記式(3−1−3)で表される化合物などが挙げられる。
【0037】
【化5】


【0038】
さらに、本発明化合物は、カラーフィルタ用途における赤色画素部形成用として、赤色顔料と併用することもできる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同254などが挙げられる。
【0039】
本発明をカラーフィルタの緑色画素部のパターンの形成に用いる際には、公知の方法を採用することができる。典型的には、本発明の化合物と、感光性樹脂とを必須成分として含むカラーフィルタ用感光性組成物を得ることができる。
【0040】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、本発明化合物を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して緑色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。本発明をカラーフィルタの赤色画素部のパターンの形成に用いる場合も同様である。
【0041】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0042】
カラーフィルタ用感光性組成物を調製するには、例えば、顔料と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、顔料と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0043】
ここでの顔料として、緑色画素部を得る場合には、本発明化合物を顔料化したものと、上記した緑色顔料や青色顔料を用いることができる。同様に、赤色画素部を得る場合には、本発明化合物を顔料化したものと、上記した赤色顔料を用いることができる。
【0044】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のDISPERBYK(登録商標名)130、同161、同162、同163、同170、同LPN−6919、同LPN−21116、BASF社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0045】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0046】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて100質量部以下の分散剤及び/又は20質量部以下のキノフタロン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、分散液100質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0047】
上記のカラーフィルタ用顔料組成物とは、緑色画素用途の場合、本発明のキノフタロン顔料組成物10質量部当たり、緑色画素用途の場合、緑色顔料200質量部以下または/及び青色顔料200質量部以下を適宜設定し混合したもの、また、赤色画素用途の場合、赤色顔料200質量部以下を混合したものである。なお、他の黄色顔料を必要に応じ、混合しても良い。
【0048】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス( アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0049】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0050】
こうして調製されたカラーフィルタ画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタを作製することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において特に断りがない場合は、「部」及び「%」は質量基準である。
【0052】
[合成例]
合成例1−1
フラスコ中に2,2’−ジクロロベンジジン塩酸塩25g(76.7mmol)を量りとり、70%(w/w)硫酸125gを添加して50℃で1時間攪拌した。この混合物に、ヨウ化ナトリウム1.3gを水8mLに溶解した水溶液を添加して、100℃で1時間攪拌した後、クロトンアルデヒド16.1g(230mmol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに100℃で7時間攪拌した。放冷後、反応液を400gの氷水に注ぎ、攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム15g/水50mL)を添加し、不溶物をろ過して除いた後、ろ液に水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム55g/水150mL)を添加してpH12に調整した。生成した沈殿物をろ過、水洗して粗生成物を得た。得られた粗生成物を6N塩酸水100mLに溶解し、激しく攪拌しながら塩化亜鉛20.9gを加え、室温で0.5時間攪拌し、次いで氷冷下で0.5時間攪拌した。生成した沈殿物をろ別し、3N塩酸水で洗浄した。得られた固形物に2−プロパノール150mLを加えて室温で1時間攪拌した後、不溶物をろ過し、2−プロパノールで洗浄した。得られた固形物を水150mLに加えて攪拌しながら28%アンモニア水50mLを添加し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過してエバポレーターでクロロホルムを留去した。残渣をクロロベンゼンより再結晶して中間体(A−1)9.50g(27.0mmol)を得た。(収率:35%)
【0053】
1H-NMR (CDCl3) δppm: 2.85 (s, 6H), 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 1.9 Hz, 2H), 8.13 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.16 (d, J = 1.9 Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δppm: 25.8, 123.6, 124.7, 127.9, 128.7, 133.6, 136.5, 136.8, 143.6, 160.7
FT-IR cm-1: 2952(芳香族orメチル基C-H伸縮), 1602(芳香族C=C伸縮), 1488, 1468
【0054】
【化6】
【0055】
合成例1−2
窒素雰囲気下、フラスコ中にモノクロロベンゼン7mL、安息香酸13.8g(113mmol)、及び2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物2.80g(14.1mmol)を量りとり、150℃にて溶融させた。そこに、合成例1−1で得た中間体(A−1) 2.00g(5.66mmol)をモノクロロベンゼン10mLに懸濁して添加した。モノクロロベンゼンを留去しながら1.5時間で210℃まで加熱攪拌し、同温度にてさらに4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にクロロベンゼン140mLを加え、1時間攪拌した後、ろ過して固形物を得た。得られた固形物をアセトン80mL中に懸濁してろ過・アセトン洗浄にて黄色粉末である目的物(B−1)を2.70g(3.78mmol)得た。(収率:67%)
【0056】
FT-IR cm-1: 3052(芳香族C-H伸縮)、1789, 1675, 1631(カルボニルC=O伸縮),1600, 1573, 1538(芳香族C=C伸縮), 1401
FD-MS: 712 M+
【0057】
【化7】
【0058】
合成例2−1
フラスコ中に2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン38.0g(118mmol)を量りとり、70wt%硫酸129mLを加え、50℃で1時間攪拌した。その後、系中に8Mのヨウ化ナトリウム水溶液1.90mLを加え、100℃で1時間攪拌した後、系中にクロトンアルデヒド29.0mL(353mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、温度を100℃でキープし、18時間攪拌した。放冷後、反応溶液に水酸化カリウム170g(3.03mol)を氷浴中において添加し、反応溶液を塩基性とした後、クロロホルムで抽出作業を行った。得られたクロロホルム溶液を減圧蒸留にて濃縮し、シリカゲルカラムによって精製を行った(展開溶媒:クロロホルム)。最後にデシケーターで乾燥させ、淡黄色粉末である中間体(A−2)を4.67g(11.1mmol)得た。(収率:9%)
【0059】
1H-NMR (CDCl3) δppm: 2.88 (s, 6H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.78 (s, 2H), 8.58 (d, J = 8.8 Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δppm: 25.7, 124.2, 126.0, 129.3, 130.8, 132.0, 134.1, 134.5, 144.3, 161.5
FT-IR cm-1: 3029, 2995, 2952(芳香族orメチル基C-H伸縮), 1190(塩化アリールC-Cl伸縮)
【0060】
【化8】
【0061】
合成例2−2
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸7.11g(58.2mmol)を量りとり、150℃にて溶融させた。そこに、合成例2−1で得た中間体(A−2) 1.14g(2.70mmol)と2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物1.43g(7.22mmol)を加え、220℃にて4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン400mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(B−2)を1.80g(2.30mmol)得た。(収率:85%)
【0062】
FT-IR cm-1: 3051(芳香族C-H伸縮)、1796, 1676(カルボニルC=O伸縮)、1183, 1138(塩化アリールC-Cl伸縮)
FD-MS: 782 M+
【0063】
【化9】
【0064】
合成例3−1
フラスコ中に4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)20.1g(75.2mmol)を量りとり、70wt%硫酸82.3mLを加え、50℃で1時間攪拌した。その後、系中に8Mのヨウ化ナトリウム水溶液1.21mLを加え、100℃で1時間攪拌した後、系中にクロトンアルデヒド18.5mL(225mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、温度を100℃でキープし、18時間攪拌した。放冷後、反応溶液に水酸化カリウム103g(1.83mol)を氷浴中において添加し、反応溶液を塩基性とした後、クロロホルムで抽出作業を行った。得られたクロロホルム溶液を減圧蒸留にて濃縮し、シリカゲルカラムによって精製を行った(展開溶媒:クロロホルム)。最後にデシケーターで乾燥させ、淡黄色粉末である中間体(A−3)を14.2g(38.7mmol)得た。(収率:51%)
【0065】
1H-NMR (CDCl3) δppm: 2.81 (s, 6H), 4.24 (s, 2H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.49 (s, 2H), 7.67 (s, 2H), 7.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δppm: 25.8, 41.1, 123.2, 126.2, 127.8, 130.9, 133.1, 136.3, 137.6, 143.1, 160.0
FT-IR cm-1: 3435, 3055, 3031, 2915(芳香族orメチル基C-H伸縮), 1603, 1487, 1206(塩化アリールC-Cl伸縮)
FD-MS: 366 M+
【0066】
【化10】
【0067】
合成例3−2
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸15.1g(124mmol)を量りとり、150℃にて溶融させた。そこに、合成例2−1で得た中間体(A−3)2.11g(5.75mmol)と2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物1.43g(7.22mmol)を加え、220℃にて4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン400mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(B−3)を3.67g(5.04mmol)得た。(収率:88%)
【0068】
FT-IR cm-1: 3055(芳香族C-H伸縮)、1685(カルボニルC=O伸縮)、1228, 1197, 1184(塩化アリールC-Cl伸縮)
FD-MS: 726 M+
【0069】
【化11】
【0070】
顔料化
前記合成例で得たキノフタロン化合物 0.50質量部を塩化ナトリウム1.50質量部、ジエチレングリコール0.75質量部とともに磨砕した。その後、この混合物を600質量部の温水に投じ、1時間攪拌した。水不溶分をろ過分離して温水でよく洗浄した後、90℃で送風乾燥して顔料化を行った。顔料の粒子系は、100nm以下、粒子の平均長さ/幅比は3.00未満であった。得られたキノフタロン化合物の黄色顔料を用いて以下の分散試験及びカラーフィルタ評価試験を行った。
【0071】
実施例1
(スピンコート塗液の作製)
キノフタロン化合物(B−1)0.660質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.8質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−6919(ビックケミー株式会社社製)0.467質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.700質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体2.00質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.490質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.110質量部をガラス瓶に入れ、スピンコート塗液を作製した。
【0072】
(黄色カラーフィルタの作製)
得られたスピンコート塗液をスピンコーターによりガラス基板上に塗布した。スピンコーターの回転数は600、800、1000、1200rpmとし、組成物の塗布膜厚の異なる4種のカラーフィルタ基板を作製した。こうして得られた各カラーフィルタ基板を90℃で3分間加熱し、黄色カラーフィルタを得た。
【0073】
実施例2
キノフタロン化合物(B−1)に代えて、キノフタロン化合物(B−2)を使用した以外は実施例1と同様の方法でスピンコート塗液を得、黄色カラーフィルタを得た。
【0074】
実施例3
キノフタロン化合物(B−1)に代えて、キノフタロン化合物(B−3)を使用した以外は実施例1と同様の方法でスピンコート塗液を得、黄色カラーフィルタを得た。
【0075】
比較例1
実施例1において、キノフタロン化合物(B−1)に代えてC.I.ピグメント イエロー138(BASF社製)を、また、分散前に加えるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを6.42重量部用いた以外は、同様の方法でスピンコート塗液を得、黄色カラーフィルタを得た。
【0076】
比較例2
C.I.ピグメント イエロー150(山陽色素社製)1.14質量部をポリ瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.0質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−21116(ビックケミー株式会社社製)2.84質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ38.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体2.00質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.490質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.110質量部をガラス瓶に入れ、スピンコート塗液を得、前記実施例1の「黄色カラーフィルタの作製」工程と同様にして黄色カラーフィルタを得た。
【0077】
カラーフィルタ試験例
・カラーフィルタ特性試験
当該顔料を用いた分散液からカラーフィルタを作製し、分光光度計(HITACHI社製U3900/3900H形)によって色度ならびに透過スペクトルを、膜厚計(HITACHI社製 VS1000 走査型白色干渉顕微鏡)によって膜厚を、それぞれ測定した。それらの結果を基に緑色色度に合わせた際の推定輝度ならびに推定膜厚(膜厚は薄いほど高着色力)より、カラーフィルタ特性を評価した。
【0078】
実施例、比較例で作製した黄色カラーフィルタのポストベーク(230℃、1時間焼成)後におけるカラーフィルタ特性を評価した(使用機器などの詳細は上述の通り)。黄色カラーフィルタの評価結果をもとに、高色再現性の色規格DCI−P3における緑色色度の推定輝度ならびに推定膜厚により、カラーフィルタ性能を評価した。それらの値をまとめた表を以下に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜3は、現行の黄色顔料(C.I.ピグメント イエロー150)を用いた比較例2と比べ、同等以上の良好な輝度を示し、膜厚が顕著に薄くなった。これは、本発明の黄色顔料が高着色力であり、カラーフィルタ用黄色顔料として好適であることを示している。なお、比較例1(C.I.ピグメント イエロー138)は良好な輝度値を示すものの、従来技術の説明でも述べたとおり、膜厚が非常に厚く、実用レベルにない。これは同138の着色力の乏しさに起因している。このように、本発明化合物は、現行の代表的な黄色顔料、特に、本発明化合物に近い構造であるキノフタロン構造を有するC.I.ピグメント イエロー138をも超える顕著な効果を有するものである。