【文献】
足立廣正,長谷川照夫,“一方向強化CFRP積層板における振動減衰能の周波数,温度特性の評価”,日本複合材料学会誌,1998年11月15日,24巻6号,p.230−237
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸長手方向直角断面がU字状に形成された長尺状構造部材を、長手方向に延びる両端部同士で接合した閉断面形状をもつ構造部材で形成されたエネルギー吸収部材であって、吸収部材の外面が下記(A)層からなり、吸収部材の内面が下記(B)層からなり、前記(A)層を構成するマトリクス樹脂と前記(B)層を構成するマトリクス樹脂が異なる樹脂であり、U字形状の内側に熱可塑性樹脂組成物からなる交差リブを有するエネルギー吸収部材。
(A)層:強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体。
(B)層:熱可塑性樹脂組成物からなる層。
軸長手方向直角断面がU字状に形成された前記長尺状構造部材が、U字状に形成された長尺状構造部材の長手方向に延びる両端部に、長手方向に延びる一対のフランジが形成されて構成されるハットチャンネル型構造部材であって、前記閉断面形状をもつ構造部材が、ハットチャンネル型構造部材の2つをフランジ部同士で接合した閉断面形状をもつ構造部材である、請求項1から3のいずれか1項に記載のエネルギー吸収部材。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるエネルギー吸収部材とは、衝撃荷重を与えた際に自己破壊によりその衝撃を吸収し、さらにその破壊の進行が制御できる部材のことであり、バンパービームとフロントフレームの間に配置されるクラッシュボックス等が挙げられる。
本発明のエネルギー吸収部材は、
図1に示すように、軸長手方向直角断面がU字状に形成された長尺状構造部材を、長手方向に延びる両端部同士で接合した閉断面形状をもつ構造部材で形成されたエネルギー吸収部材であって、吸収部材の外面が下記(A)層からなり、吸収部材の内面が下記(B)層からなり、U字形状の内側に熱可塑性樹脂組成物 からなる交差リブを有する。
(A)層:強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体。
(B)層:熱可塑性樹脂組成物からなるシート。
【0017】
本発明において、高いレベルのエネルギー吸収を実現可能にするための観点から、上記長尺構造部材は、上記(A)層と上記(B)層の積層体を成形したものであることが好ましい。
また、一体成形のし易さの観点から、上記積層体が、(A)層に(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物を射出成形したものであることが好ましい。
製造のし易さの観点から、上記軸長手方向直角断面は、
図2に示すように、U字状に形成された前記長尺状構造部材が、U字状に形成された長尺状構造部材の長手方向に延びる両端部に、長手方向に延びる一対のフランジが形成されて構成されるハットチャンネル型構造部材であって、前記閉断面形状をもつ構造部材が、ハットチャンネル型構造部材の2つをフランジ部同士で接合した閉断面形状をもつ構造部材であることが好ましい。
また、所定方向から逐次破壊を生じさせるため、また、座屈防止の観点から、本発明のエネルギー吸収部材は、
図3示すように、長手方向先端に破壊の起点となるトリガを有することが好ましい。破壊の起点となるトリガとは、部材の中で強度を意図的に下げている箇所であり、具体的には肉厚を薄くする等が挙げられ、好ましくは切欠きを付けることである。
【0018】
本発明のエネルギー吸収部材は、樹脂組成物を補強するため、吸収部材の外面が前記(A)層からなることを必須とする。また、複雑なリブ形状でも賦形可能とするため、吸収部材の内面が前(B)層からなることを必須とする。
【0019】
<(A)層>
本発明における(A)層は、強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体である。具体的には、強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグや、強化繊維を織物としたクロスプリプレグ、不連続な強化繊維であるSMC等が挙げられる。コスト、賦形性の観点から、以下の(a−1)〜(a−4)の繊維強化プラスチックが好ましい。また、(a−1)〜(a−4)の特徴の複数を組み合わせた繊維強化プラスチックも好ましい。
(a−1):平均繊維長が1〜100mmの強化繊維とマトリックス樹脂を含有する繊維強化プラスチックであって、直径0.091mの芯材に巻取りトルク40N・mで長さ10m巻き取ったときの巻取り径D(m)が下式(a1)の条件を満たす繊維強化プラスチック。
【数2】
ただし、前記式(a1)中の記号は以下の意味を示す。
d:芯材の直径(m)、
W:強化繊維プラスチックの目付(g/m
2)、
ρ:強化繊維プラスチックの真密度(g/m
3)、
L:強化繊維プラスチックの巻取り長さ(m)。
(a−2):前記(A)層が、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化プラスチックであって、前記強化繊維の平均繊維長が1〜100mmであり、T−30(℃)〜T−10(℃)の温度範囲(ただし、Tは前記マトリックス樹脂の融点、又は融点を有しないときはガラス転移温度である。)での繊維強化プラスチックの下式(b1)で表される粘弾性特性tanδの平均値をtanδ(ave)、T−10(℃)〜T+10(℃)の温度範囲での前記粘弾性特性tanδの最大値をtanδ(max)としたとき、tanδ(ave)が0.01〜0.25であり、tanδ(max)−tanδ(ave)が0.15以上である繊維強化プラスチック。
tanδ=G’’/G’ ・・・(b1)
ただし、前記式(b1)中の記号は以下の意味を示す。
G’’:損失弾性率、
G’:貯蔵弾性率。
(a−3): 前記(A)層が、強化繊維とマトリックス樹脂を含有する繊維強化プラスチックであって、前記強化繊維と前記マトリックス樹脂の両方を含む繊維含有樹脂層と、前記強化繊維を含まず、前記マトリックス樹脂を含む繊維不含樹脂層とが厚み方向に層構造を形成し、前記繊維含有樹脂層のボイド率が4%未満であり、前記繊維不含樹脂層のボイド率が4%以上40%未満である繊維強化プラスチック。
(a−4):前記(A)層が、前記強化繊維として平均繊維長5〜100mmの炭素繊維がランダムに配された繊維強化プラスチックであって、前記炭素繊維が、引張弾性率が350GPa以上である炭素繊維(X)と、引張弾性率が200GPa以上350GPa未満である炭素繊維(Y)を含み、前記炭素繊維が表層に偏在している、記(a−1)〜(a−3)のいずれかの繊維強化プラスチック。
【0020】
<<強化繊維>>
(A)層に用いる強化繊維としては、特に限定されず、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる。強化繊維は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、最終成形物である構造材の強度等の機械物性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。
【0022】
炭素繊維としては、特に限定されず、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、PITCH系炭素繊維等が挙げられる。好ましい炭素繊維は、JIS R7601(1986)に準じて測定したストランド引張強度が1.0GPa以上9.0GPa以下で、かつストランド引張弾性率が150GPa以上1000GPa以下の炭素繊維である。
より好ましい炭素繊維は、JIS R7601(1986)に準じて測定したストランド引張強度が1.5GPa以上9.0GPa以下で、かつストランド引張弾性率が200GPa以上1000GPa以下の炭素繊維である。
【0023】
プリプレグ基材中の強化繊維の平均繊維長は、1〜100mmが好ましく、3〜70mmがより好ましく、5〜50mmがさらに好ましく、10〜50mmが特に好ましく、10〜35mmが最も好ましい。
一般に強化繊維が長いほど機械物性に優れた構造材が得られるが、特にスタンピング成形時において、流動性が低下するために複雑な3次元形状の構造材が得られにくくなる。強化繊維の平均繊維長が上限値以下であれば、賦形時に優れた流動性が得られ、強化繊維とマトリックス樹脂が流動しやすい。そのため、リブやボス等の複雑な3次元形状の構造材を得ることが容易である。また、強化繊維の平均繊維長が下限値以上であれば、機械物性に優れた構造材を製造できる。
強化繊維の平均繊維直径は、1〜50μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0024】
<<樹脂>>
(A)層のマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は一般的に熱硬化性樹脂よりも靱性値が高いため、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いることで、強度、特に耐衝撃性に優れた構造材が得られやすくなる。また、熱可塑性樹脂は化学反応を伴うことなく冷却固化により形状が定まる。そのため、熱可塑性樹脂を用いる場合は短時間成形が可能となり、繊維強化プラスチックや構造材の生産性に優れる。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ポリアミド樹脂(ナイロン6(融点:220℃)、ナイロン66(融点:260℃)、ナイロン12(融点:175℃)、ナイロンMXD6(融点:237℃)等)、ポリオレフィン樹脂(低密度ポリエチレン(融点:95〜130℃)、高密度ポリエチレン(融点:120〜140℃)、ポリプロピレン(融点:165℃)等)、変性ポリオレフィン樹脂(変性ポリプロピレン樹脂(融点:160〜165℃)等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート樹脂(ガラス転移温度:145℃)、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、アクリロニトリルとスチレンの共重合体、ナイロン6とナイロン66の共重合体等が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、マレイン酸等の酸によりポリオレフィン樹脂を変性した樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上をポリマーアロイとして使用とてもよい。
熱可塑性樹脂としては、強化繊維との接着性、強化繊維への含浸性及び熱可塑性樹脂の原料コストの各々のバランスの点から、ポリオレフィン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、尿素性樹脂、メラミン樹脂、イミド系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂を硬化させた後の繊維強化プラスチックの機械物性の発現性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、イミド系樹脂が好ましく、プリプレグ基材の製造の容易さの観点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0027】
プリプレグ基材には、目的の構造材の要求特性に応じて添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、非繊維状フィラー、導電性フィラー、離型剤、界面活性剤等が挙げられ、また熱可塑性樹脂を添加剤として用いても良い。
【0028】
<<<強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグの製造方法>>>
(A)層のプリプレグは、例えば、下記工程(i)〜(iii)を有する繊維強化プラスチックの製造方法で製造することができる。
(i)下記プリプレグ基材を含む材料(A)を得る工程。
(ii)前記材料(A)の走行方向に対する直交方向に略均一に加圧する加圧装置を用い、前記直交方向に対して全ての強化繊維の繊維軸方向がなす角度を−20°〜20°として前記材料(A)を一方向に走行させつつ、マトリックス樹脂の融点以上、又は融点を有しないときはガラス転移温度以上の温度Tに加熱した状態で加圧する工程。
(iii)前記加圧装置で加圧された前記材料(A)を冷却して繊維強化プラスチックを得る工程。
【0029】
(プリプレグ基材)
一方向に引き揃えられた強化繊維にマトリックス樹脂が含浸され、かつ前記強化繊維の繊維軸に交差するように切込みが形成されたプリプレグ基材であって、
平面視で前記強化繊維の繊維軸に対して反時計回りを正としたとき、前記強化繊維の繊維軸と切込みとがなす角度θが0°<θ<90°となる切込みが前記強化繊維の繊維軸方向に複数形成された領域と、前記角度θが−90°<θ<0°となる切込みが前記強化繊維の繊維軸方向に複数形成された領域とが、前記強化繊維の繊維軸に直交する方向に交互に形成されているプリプレグ基材。
【0030】
<<繊維強化プラスチック>>
(A)層の好ましい形態の1つである上記(a−1)の繊維強化プラスチックは、強化繊維とマトリックス樹脂を含有し、直径0.091mの芯材に巻取りトルク40N・mで長さ10m巻き取ったときの巻取り径D(m)が下式(a1)の条件を満たす。
【数3】
ただし、前記式(a1)中の記号は以下の意味を示す。
d:芯材の直径(m)、
W:強化繊維プラスチックの目付(g/m
2)、
ρ:強化繊維プラスチックの真密度(g/m
3)、
L:強化繊維プラスチックの巻取り長さ(m)。
巻取り径D(m)とは、芯材に繊維強化プラスチックを巻き取った巻取物の外径を意味し、芯材の直径と前記巻取物における繊維強化プラスチックが巻かれた部分の厚みとの合計である。
以下、{(4LW/πρ)+d
2}
1/2をKと記す。
第1の発明の強化繊維プラスチックにおける巻取り径Dは、1.0<D/K<1.5であり、1.0<D/K≦1.35が好ましく、1.0<D/K≦1.2がより好ましい。巻取り径Dが前記範囲内において小さいほど、うねりや反りが小さい繊維強化プラスチックである。
強化繊維の平均繊維長は、1〜100mmであり、3〜70mmが好ましく、5〜50mmがより好ましく、10〜50mmがさらに好ましく、10〜35mmが特に好ましい。強化繊維の平均繊維長が下限値以上であれば、必要な機械特性が得られやすい。強化繊維の平均繊維長が上限値以下であれば、賦形時に必要な流動性が得られやすい。
【0031】
(平均繊維長の測定方法)
繊維強化プラスチック中の樹脂を焼き飛ばして、強化繊維のみを取り出し、前記強化繊維の繊維長をノギス等で測定する。測定は無作為に選択した100本の強化繊維について行い、平均繊維長はそれらの質量平均として算出する。
繊維強化プラスチック中の強化繊維の繊維体積含有率(Vf)は、5〜70体積%が好ましく、10〜60体積%がより好ましく、15〜50体積%がさらに好ましい。強化繊維のVfが上限値以下であれば、靭性低下による界面強度の低下が生じにくく、また賦型時の流動性も低下しにくい。強化繊維のVfが下限値以上であれば、繊維強化プラスチックとして必要とされる機械特性が得られやすい。
なお、繊維強化プラスチックのVf値は、繊維強化プラスチックにおける強化繊維、マトリックス樹脂、及びボイド(気体)を除く添加剤等のその他の成分の合計体積に対する強化繊維の割合を意味する。JIS K7075に基づいて測定されたVf値は繊維強化プラスチック中のボイドの存在量により変動する値であるため、本発明においてはボイドの存在量に依存しない繊維体積含有率を採用する。
【0032】
(a−1)の繊維強化プラスチックには、発明の目的を損なわない範囲で、非繊維状フィラー、難燃剤、顔料、離型剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を配合してもよい。
(A)層の好ましい形態の1つである上記(a−2)の繊維強化プラスチックは、平均繊維長が1〜100mmの強化繊維と、マトリックス樹脂とを含む繊維強化プラスチックである。
強化繊維の平均繊維長は、1〜100mmであり、3〜70mmが好ましく、5〜50mmがより好ましく、10〜50mmがさらに好ましく、10〜35mmが特に好ましい。
強化繊維の平均繊維直径は、1〜50μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
(a−2)の繊維強化プラスチックには、目的の構造材の要求特性に応じて、
(a−1)で挙げたものと同様の添加剤が配合されていてもよい。
【0033】
(粘弾性特性tanδ)
(a−2)の繊維強化プラスチックは、tanδ(ave)が0.01〜0.25であり、tanδ(max)−tanδ(ave)が0.15以上である。tanδ(ave)とtanδ(max)−tanδ(ave)がそれぞれ前記範囲を満たすことで、賦形時の優れた流動性と賦形後に得られる構造材の優れた機械物性とを両立することができる。
「tanδ(ave)」とは、T−30(℃)〜T−10(℃)の温度範囲(ただし、Tはマトリックス樹脂の融点、又は融点を有しないときはガラス転移温度である。)での繊維強化プラスチックの粘弾性特性tanδの平均値である。
「tanδ(max)」とは、T−10(℃)〜T+10(℃)の温度範囲での粘弾性特性tanδの最大値である。
粘弾性特性tanδは、下式(b1)で表される。
tanδ=G’’/G’ ・・・(b1)
(ただし、G’’は損失弾性率(Pa)であり、G’は貯蔵弾性率(Pa)である。)
【0034】
(a−2)の繊維強化プラスチックのtanδ(ave)は、0.01〜0.25であり、0.02〜0.20が好ましく、0.03〜0.15がより好ましい。tanδ(ave)が極端に低い(ゼロに近い)場合は完全弾性体に近く、その性質はプラスチック材料からはかけ離れていることを意味し、プラスチック材料としての機械特性や流動性は期待できない。しかしtanδ(ave)が下限値以上であれば、機械特性及び流動特性のバランスのよい繊維強化プラスチックが得られる。tanδ(ave)が上限値以下であれば、優れた機械物性を有する構造材を製造できる。
(a−2)の繊維強化プラスチックのtanδ(max)−tanδ(ave)は、0.15以上であり、0.25以上が好ましく、0.35以上がより好ましい。tanδ(max)−tanδ(ave)が下限値以上であれば、賦形時に優れた流動性が得られるため、賦形時に強化繊維が切断されて構造材の機械物性が低下することを抑制できる。
tanδ(max)−tanδ(ave)が極端に大きい、つまりtanδ(max)が極端に大きい場合は、賦型時にマトリックス樹脂のみが流動して、マトリックス樹脂の流動に強化繊維が追随しない。この観点から、(a−2)の繊維強化プラスチックのtanδ(max)−tanδ(ave)は、1.5以下が好ましく、0.9がより好ましい。
【0035】
繊維強化プラスチックのtanδは、強化繊維の分散性が高いほど小さくなる。繊維強化プラスチックのtanδは、例えば、後述する繊維強化プラスチックの製造方法における加圧時のベルト間のクリアランスを調節することで調節できる。前記クリアランスを狭くするほど繊維強化プラスチック中の強化繊維の分散性が向上して、tanδが小さくなる傾向がある。また、例えば繊維強化プラスチックにおける強化繊維の繊維体積含有率(Vf)を調節することで、tanδ(max)−tanδ(ave)の値を調節できる。繊維強化プラスチックのVfが高いほど、tanδ(max)が小さくなる傾向がある。
また加えて、繊維強化プラスチックにおける強化繊維同士の絡まり合いや強化繊維同士の摩擦もtanδ(max)に影響を及ぼし、これら絡まり合いや摩擦が大きい程、tanδ(max)が小さくなる傾向がある。
(a−2)の繊維強化プラスチック中の強化繊維の繊維体積含有率(Vf)は、5〜70体積%が好ましく、10〜60体積%がより好ましく、15〜50体積%がさらに好ましい。強化繊維のVfが上限値以下であれば、靭性低下による界面強度の低下が生じにくく、また賦型時の流動性も低下しにくい。強化繊維のVfが下限値以上であれば、繊維強化プラスチックとして必要とされる機械物性が得られやすい。
【0036】
本発明の繊維強化プラスチックの厚みは、0.1〜10.0mmが好ましく、0.25〜6.0mmがより好ましく、0.4〜4.0mmがさらに好ましい。厚みが上限値以下であれば、繊維強化プラスチックの製造における加圧時にマトリックス樹脂がはみ出しにくく、厚み制御が容易である。厚みが下限値以上であれば、繊維強化プラスチックの製造における加圧時にせん断応力が掛かりやすく、強化繊維をランダム化させて機械物性の等方性や異方性をコントロールすることが容易になる。
【0037】
(a−2)の繊維強化プラスチックにおいては、tanδ(ave)及びtanδ(max)−tanδ(ave)が特定の範囲に制御されているため、賦形時の優れた流動性と賦形後に得られる構造材の優れた機械物性とが両立される。
【0038】
(a−3)の繊維強化プラスチックにおいては、強化繊維とマトリックス樹脂の両方を含む繊維含有樹脂層と、強化繊維を含まず、マトリックス樹脂を含む繊維不含樹脂層とが厚み方向に層構造を形成している。なお、繊維強化プラスチックを厚さ方向に切断した断面において、厚さ方向に隣り合う強化繊維間の距離、又は強化繊維から繊維強化プラスチック表面までの距離が0.015mm(15μm)以上である、強化繊維が実質的に存在しない層を繊維不含樹脂層とする。
(a−3)の繊維強化プラスチックを厚み方向に切断した断面における、繊維含有樹脂層のボイド率は、4%未満であり、2%未満が好ましく、1%未満がより好ましい。繊維含有樹脂層のボイド率が4%未満であれば、機械物性に優れた構造材が得られる。
(a−3)の繊維強化プラスチックを厚み方向に切断した断面における、繊維不含樹脂層のボイド率は、4%以上40%未満であり、4〜30%が好ましく、4〜20%がより好ましい。繊維不含樹脂層のボイド率が下限値以上であれば、スタンピング成形時に強化繊維やマトリックス樹脂の流動性に優れるため、3次元形状等の複雑な形状の構造材を容易に製造できる。繊維不含樹脂層のボイド率が上限値以下であれば、機械物性に優れた構造材が得られる。
【0039】
なお、繊維強化プラスチックにおける各層のボイド率は、以下の方法で測定される。繊維強化プラスチックを厚み方向に切断し、その切断面を光学顕微鏡で観察し、該切断面における繊維含有樹脂層又は繊維不含樹脂層の断面積に対する当該層中のボイドが占める面積の割合をボイド率として算出する。また、繊維含有樹脂層又は繊維不含樹脂層のボイド率は、5回の測定の平均値とする。
強化繊維の平均繊維長は、上述と同様に1〜100mmであり、3〜70mmが好ましく、5〜50mmがより好ましく、10〜50mmがさらに好ましく、10〜35mmが特に好ましい。
【0040】
繊維強化プラスチック中の強化繊維の繊維体積含有率(Vf)は、(a−1)と同様の理由で、5〜70体積%が好ましく、10〜60体積%がより好ましく、15〜50体積%がさらに好ましい。
【0041】
(a−3)の繊維強化プラスチックには、本発明の目的を損なわない範囲で、(a−1)で挙げたものと同様の添加剤を配合してもよい。
(a−3)の繊維強化プラスチックの厚みは、(a−1)と同様の理由で、0.25〜6.0mmが好ましく、0.4〜6.0mmがより好ましく、0.5〜4.0mmがさらに好ましい。
(a−3)の繊維強化プラスチックは、機械特性に優れ、またその等方性にも優れており、簡便かつ低コストに製造できる。
また、従来の強化繊維プラスチックでは、通常ボイドの多くは強化繊維が存在する部分に存在している。しかし、(a−3)の繊維強化プラスチックでは、樹脂溜まりである繊維不含樹脂層にボイドの多くが存在している。これにより、ボイドの多くが繊維不含樹脂層にあることで、スタンピング成形時のマトリックス樹脂や強化繊維の流動性がより優れたものとなる。そのため、(a−3)の繊維強化プラスチックは、3次元形状等の複雑な形状の構造材の製造に好適に利用できる。
【0042】
(a−4)の繊維強化プラスチックは、ランダムに配された炭素繊維と、マトリックス樹脂とを含む。炭素繊維としては、引張弾性率が350GPa以上である炭素繊維(X)と、引張弾性率が200GPa以上350GPa未満である炭素繊維(Y)を用いる。
【0043】
(引張弾性率)
炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7608:2007(ISO16018:2004)のB法により測定される炭素繊維の引張弾性率である。
【0044】
(炭素繊維(X))
炭素繊維(X)の引張弾性率は、350GPa以上であり、400GPa以上が好ましく、600GPa以上がより好ましい。該引張弾性率の上限は実質的に規定されるものではなく、例えば900GPa以下が好ましい。
炭素繊維(X)は、ピッチ系炭素繊維が好ましい。ピッチ系炭素繊維とは「メソフェーズピッチすなわち石油タール、石炭タール等を処理して生じた部分的に液晶構造を示す樹脂、又は、人工的に合成されたメソフェーズピッチを紡糸して、不融化して、さらに炭化させて生成した、黒鉛結晶構造が繊維軸方向に高度に発達した実質的に炭素のみからなるフィラメント繊維(p)」を主たる成分として構成される繊維の集合体であることを意味する。ピッチ系炭素繊維は、弾性率が高く熱膨張が少ないといった利点がある。
炭素繊維(X)は、実質的に前記フィラメント繊維(p)のみから構成される繊維の集合体であることが好ましい。
炭素繊維(X)の比重は1.9〜2.26が好ましく、2.05〜2.20がより好ましい。該比重が上記範囲の下限値以上であるとグラファイト構造の存在比率が充分に高く、優れた強度・弾性率が得られやすく、上限値以下であると優れた強度が得られやすい。
炭素繊維(X)として好適な市販品としては、ダイアリード(登録商標)K1352U、K1392U、K13C2U、K13D2U、K13312、K63712、K63A12(以上、商品名、三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0045】
[炭素繊維(Y)]
炭素繊維(Y)の引張弾性率は、200GPa以上、350GPa未満であり、220〜300GPaが好ましい。
炭素繊維(Y)は、ポリアクリロニトリル系(以下、PAN系ともいう。)炭素繊維が好ましい。ポリアクリロニトリル系炭素繊維とは、「アクリロニトリルを主成分として重合させたポリアクリロニトリル系樹脂からなる繊維を、不融化させて、さらに炭化させて生成した実質的に炭素のみからなるフィラメント繊維(an)」を主たる成分として構成される繊維の集合体であることを意味する。ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、低密度及び高比強度といった利点がある。
炭素繊維(Y)は、実質的に前記フィラメント繊維(an)のみから構成される繊維の集合体であることが好ましい。
炭素繊維(Y)の比重は1.7〜1.9が好ましく、1.75〜1.85がより好ましい。該比重が上記範囲の下限値以上であるとグラファイト構造の存在比率が充分に高く、優れた強度・弾性率が得られやすく、上限値以下であると焼成温度が高すぎずコスト面で好ましい。
炭素繊維(Y)として好適な市販品としては、パイロフィル(登録商標)TR30S 3L、TR50S 6L、TRH50 12L、TRH50 18M、TR50S 12L、TR50S 15L、MR40 12M、MR60H 24P、MS40 12M、TRH50 60M、TRW40 50L(以上、製品名、三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0046】
コストを抑えやすい点で、炭素繊維(X)がピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
強度発現性がより良好である点で、炭素繊維(Y)がポリアクリロニトリル系炭素繊維であることが好ましい。
特に炭素繊維(X)がピッチ系炭素繊維であり、かつ炭素繊維(Y)がポリアクリロニトリル系炭素繊維であると、コストと機械特性のバランスの点で好ましい。
【0047】
(a−4)の繊維強化プラスチック中の炭素繊維の平均繊維長は、1〜100mmであり、3〜70mmが好ましく、5〜50mmがより好ましく、10〜50mmがさらに好ましい。炭素繊維の平均繊維長が前記下限値以上であれば、必要な機械特性が得られやすい。炭素繊維の繊維長が前記上限値以下であれば、賦形時に必要な流動性が得られやすい。
(a−4)のマトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。マトリックス樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
マトリックス樹脂としては、(a−1)と同じ理由から、熱可塑性樹脂が好ましい。
(a−4)の繊維強化プラスチックは、炭素繊維(X)と炭素繊維(Y)とマトリックス樹脂を含み、炭素繊維(X)が表層に偏在している。
炭素繊維(X)が表層に偏在しているとは、繊維強化プラスチック中において炭素繊維(X)の分布が厚さ方向において均一ではなく、表層に最も多く存在することを意味する。
【0048】
繊維強化プラスチックは、表層が炭素繊維として炭素繊維(X)のみを含む層であり、表層以外の層として、炭素繊維(X)及び炭素繊維(Y)を含む層、及び/又は炭素繊維として炭素繊維(Y)のみを含む層を有することが好ましい。さらに炭素繊維を含まないマトリックス樹脂層が存在してもよい。
このように、炭素繊維(Y)よりも引張弾性率が高い炭素繊維(X)を表層に偏在させることにより、繊維強化プラスチックの曲げ弾性率を効率良く向上させることができる。
表層として存在する、炭素繊維として炭素繊維(X)のみを含む層の厚みは、繊維強化プラスチックの厚みに対して3〜30%が好ましく、6〜20%が好ましい。上記範囲の下限値以上であると弾性率に優れ、上限値以下であると強度に優れる。
炭素繊維が偏在した表層は、繊維強化プラスチックの表裏両面のうちの片面のみに存在してもよいが、両面に存在することが好ましい。両面に存在する場合、それぞれの炭素繊維が偏在した表層の厚みが、繊維強化プラスチックの厚みに対して3〜30%が好ましく、6〜20%が好ましい。
【0049】
<(B)層>
本発明における(B)層は、熱可塑性樹脂組成物で、長尺状構造部材の形状を成すものである。
(B)層には、目的の構造材の要求特性に応じて添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、繊維状フィラー、非繊維状フィラー、導電性フィラー、離型剤、界面活性剤等が挙げられ、また熱可塑性樹脂を添加剤として用いても良い。
前記(A)層を構成するマトリクス樹脂と前記(B)層を構成するマトリクス樹脂は、同一の樹脂であっても、異なる樹脂であってもよいが、高いエネルギー吸収量を実現することから、異なる樹脂であることが好ましい。具体的には、(B)層を汎用性が広く耐衝撃性に優れるPA6で構成し、(A)層を高温多湿環境下でも耐性のあるPC/PBTの組合せが考えられる。
【0050】
<U字形状の内側の可塑性樹脂組成物 からなる交差リブ>
本発明のエネルギー吸収部材は、U字形状の内側の可塑性樹脂組成物からなる交差リブを有するが、当該直行リブを形成する熱可塑性樹脂組成物は、(B)層で挙げられた熱可塑性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。また、(B)層と同じく、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、(B)層で挙げられたものと同様のものが挙げられる。
リブはエネルギー吸収体の強度や剛性を構造面から補強する役割を持ち、荷重が加わる方向に効率よくエネルギー吸収を可能とするため、設けている。
図3にU字形状の長手方向に対し、斜めに交差したリブの一例を示す。U字形状の長手方向に対し、斜めの交差リブとすることで面外変形を抑制し、エネルギー吸収部材の破壊強度を向上させ、種々の方向からの衝突荷重に対するエネルギー吸収効果を高めることができる。
図4に長手方向と幅方向で交差したリブの一例を示す。所定高さを有する板状のリブを格子状に立設することにより構成され、リブが互いに格子状に連結し、長手方向先端からの衝撃荷重に対しU字形状断面の補強が成されている。局所的な吸収特性のばらつきを回避するため、リブは、U字形状断面の幅方向中心から対称に立設していることが好ましい。
図4に示したリブの場合、長手方向、幅方向それぞれのリブ間隔を調整することで高密度にリブを立設することも可能である。また、U字面に対しリブを直立させていることから、U字面とのリブの交点においてリブの肉厚を厚くし、リブの先端に向かって薄くすることで加工時の抜勾配を設けることも可能である。
また、図示してはいないが、リブは板状以外にも波状、凹凸、曲面など諸々を選択することが可能である。
【0051】
<(A)層と前記(B)層の積層体>
本発明における長尺構造部材は、前記(A)層と前記(B)層の積層体であることが好ましいが、(A)層と(B)層の積層体は、(A)層に(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物を射出成形したものであることが好ましい。(A)層に(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物を射出成形した積層体は、強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体をインサートした金型内に、熱可塑性樹脂組成物を射出することにより得られる。具体的には、下記の製造方法の工程(1)で製造できる。
【0052】
<エネルギー吸収部材の製造方法>
製造方法1:下記(1)および(2)の工程を有するエネルギー吸収部材の製造方法。
(1)強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体をインサートした金型内に、熱可塑性樹脂組成物を射出し、金型内で一体に成形して軸長手方向直角断面がU字状に形成され、U字形状の内側に熱可塑性樹脂組成物からなる交差リブを有する長尺構造部材を製造する工程、
(2)前記長尺構造部材の2つを、当該構造部材の長手方向に延びる両端部同士で接合する工程。
【0053】
製造方法2:下記(1)および(2)の工程を有するエネルギー吸収部材の製造方法。
(1)強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体をインサートした金型内に、熱可塑性樹脂組成物を射出し、金型内で一体に成形して軸長手方向直角断面がU字状に形成され、長手方向に延びる両端部に長手方向に延びる一対のフランジが形成され、U字形状の内側に熱可塑性樹脂組成物からなる交差リブを有するハットチャンネル型構造部材を製造する工程、
(2)前記ハットチャンネル型構造部材の2つを、2つのフランジ同士で接合する工程。
本発明のeネルギー吸収部材の製造方法では、強化繊維に樹脂を含浸したプリプレグからなる積層体を、型開き状態の金型内にインサートした後に、IRヒーターにより前記積層体を加熱してもよい。その場合の積層体の表面温度は,積層体の軟化点より10℃以上高い温度が好ましく、樹脂の分解を防ぐためには、表面温度は積層体の軟化点より100℃以下が好ましい。このように加熱された積層体は、型締めの際に容易に金型表面に沿うように表面性状の優れた成形品を得ることができる。次いで型締めを行い、溶融樹脂を金型内に射出するが、その際の射出成形機のシリンダー温度は、射出樹脂の融点もしくはガラス転移点よりも10℃以上高く、100℃以下であることが好ましい。樹脂の流動性の向上と熱分解の抑制のためには30℃以上、80℃以下がさらに好ましい。射出速度は特に制限が無いが、10mm/s以上、300mm/s以下が好ましい。
本発明においては、射出成形でエネルギー吸収部材を製造することにより、高生産性を実現している。
【実施例】
【0054】
以下本発明を実施例によってより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物をガラス繊維強化ナイロン6、(A)層を構成するプリプレグのマトリックス樹脂をナイロン6とする。リブは
図3に示すような長手方向に対し斜めの交差リブ(以下、クロスリブとよぶ)を有したフランジ部が形成されるU字形状の長尺構造部材で、フランジ部を振動溶着することで
図2に示すようなハットチャンネル型構造部材を製作する。
ハットチャンネル型構造部材の長手方向長さは195mm、幅方向断面における矩形形状の底面は外寸で38mm、高さが外寸で30mmであり、フランジ部の幅は13mmである。また、成形後の肉厚は、フランジ部を除いて1.5mmである。リブはU字面に対し直立しており、リブ高さは4mm、リブの肉厚は1.8mmである。また、幅と長手方向で□35mmを構成した際の対角線上に立設しており、U字形状の長手方向に連続して配される。
ハットチャンネルの両側フランジ部の長手方向先端に幅10mm、長手方向に5mmの切欠きを付け、トリガ部を付けた。
エネルギー吸収量の測定は、500kN万能試験機(島津製作所(株)製、UH-500kNIR)を使用し、製作したハットチャンネルを長手方向に100mm圧潰させて行った。圧潰速度は30mm/minである。
試験を行った結果、エネルギー吸収量は11.8J/gであった。
【0055】
[実施例2]
実施例1と同様の(A)層と(B)層の材料構成で、トリガ部も付けたハットチャンネルにおいて、リブを
図4に示すような長手方向と幅方向で交差したリブで製作した。リブの高さ、肉厚は実施例1と同様である。長手方向全長に立設したリブは、U字形状の各側面から8mmの位置で2本あり、幅方向全長に立設したリブは先端から14mmの位置とリブ間は22mm間隔で、8本配されている。
実施例1と同様に試験を行った結果、エネルギー吸収量は9.8J/gであった。
【0056】
[実施例3]
(A)層を構成するプリプレグのマトリックス樹脂をPC/PBT(ポリカーボネード/ポリブチレンテレフタレート)とした以外は実施例1と同様にハットチャンネルを製作した。
実施例1と同様に試験を行った結果、エネルギー吸収量は16.9J/gであった。
【0057】
[実施例4]
(A)層を構成するプリプレグのマトリックス樹脂をPC/PBTとした以外は実施例2と同様にハットチャンネルを製作した。
実施例1と同様に試験を行った結果、エネルギー吸収量は13.3J/gであった。
【0058】
[実施例5]
(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物をガラス繊維強化ポリプロピレン、(A)層を構成するプリプレグのマトリックス樹脂をポリプロピレンとした以外は実施例1と同様にハットチャンネルを製作した。
実施例1と同様に試験を行った結果、エネルギー吸収量は15.9J/gであった。
【0059】
[比較例1]
(B)層を構成する熱可塑性樹脂組成物をガラス繊維強化ポリプロピレンとし、(A)層とリブが存在しない以外は実施例1と同様にハットチャンネルを製作した。
実施例1と同様に試験を行った結果、エネルギー吸収量は8.2J/gであった。
比較例1に対し、実施例1〜5は全て値が向上しており、(A)層とリブの効果が確認された。また、実施例1、3、5の同じクロスリブの構成で比較した場合、(A)層と(B)層が同じ樹脂組成物で構成されるより、異なる樹脂組成物で構成された方が大きなエネルギー吸収値を示している。