(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属層がアルミニウム、鉄、マグネシウム合金、銅、チタンから選ばれる少なくとも一種類、またはこれらを組み合わせてなる複合金属層である、請求項1または2に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の積層体は、金属層と、プラスチック層と、中間層とを有する積層体であって、中間層が下記式(1)で表される構造Aを有するものであることを特徴とする。
【0023】
(式(1)において、環Arは芳香環を表し、nは1〜3の整数を表し、Rは下記式(2)で表される構造を表す。
【0025】
(前記式(2)において、Xは直接結合、または2価の炭化水素基、酸素原子、アミド基、カルボニル基、エステル基、イミド基、アゾ基、スルフィド基、スルホン基、及びこれらを組み合わせてなる2価の連結基を表し、*は環Arとの結合点を表す。))
【0026】
<金属層>
航空機や自動車産業、電子材料分野に限らず、様々な分野において、その合成や耐久性、加工性等に優れることから、金属は必須の部品である。
本発明における金属層は、金属であれば特に限定は無いが、例えば、アルミ、アルミ合金、アルミダイカスト、純銅、銅合金、リン青銅、黄銅(真鍮)、鉄、冷間圧延鋼板、ステンレス鋼、アルミメッキ鋼板、チタン合金、マグネシウム合金等が挙げられ、アルミニウム、鉄、マグネシウム合金、銅、チタンから選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。これらの金属は産業上の使用範囲が広いため、プラスチック層との複合要求性が高いこと、また、本発明の中間層がこれら金属に協力に接着をすることからである。
金属層の形態は特に限定は無く、平面であっても立体であっても曲面を有していても良く、表面に微細加工が施されていてもかまわない。金属線や金属線を集束してなる金属ワイヤーでも良いし、金属線を集合した織布あるいは不職布状であってもかまわない。
好ましくは、金属層とプラスチック層の接合面の凹凸が一致するかあるいはお互いに平面であり、接合したときに隙間が生じない形状であると接着性が向上する。
【0027】
金属層は一種類の金属からなる層でもかまわないが、複数種の金属を組み合わせてなる複合金属層であってもかまわない。複合金属層はどのような方法で形成されていてもよく、たとえば複数種の金属製部品を組み合わせてなってもよいし、金属の一部分がメッキや蒸着、コーティングや吹き付けのような方法で別の金属に覆われていてもかまわない。
【0028】
さらには、金属層が金属以外の素材と複合した、異種複合金属層であってもかまわない。例えば金属以外の素材としては、木、紙、プラスチック、繊維、不織布、石英、サファイア、ガラス、シリコン等が挙げられる。これらはシート状やその他特殊形状であってもよく、絶縁性や断熱性、放熱性の材料等であっても良い。
【0029】
<プラスチック層>
本発明のプラスチック層は、プラスチックであれば特に限定は無い。プラスチックとしては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがある。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、などが挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6T、ナイロン11、ナイロン12、ノーメックス(デュポン社商標)等)、ポリフタルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、特に好ましくは、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0033】
プラスチック層の形態は特に限定は無く、平面であっても立体であっても曲面を有していても良く、表面に微細加工が施されていてもかまわない。好ましくは、金属層とプラスチック層の接合面の凹凸が一致するかあるいはお互いに平面であり、接合したときに隙間が生じない形状であると接着性が向上する。
【0034】
プラスチック層は一種類のプラスチックからなる層でもかまわないが、複数種のプラスチックを組み合わせてなる複合プラスチック層であってもかまわない。複合金属層はどのような方法で形成されていてもよく、たとえば複数種のプラスチックを混合した組成物を成形してなる成形体であっても良いし、複数種のプラスチック製部品を組み合わせてなってもよい。プラスチックの一部分がコーティングや吹き付けのような方法で別のプラスチックに覆われていてもかまわない。
【0035】
さらには、プラスチック層がプラスチック以外の素材と複合した、異種複合プラスチック層であってもかまわない。例えばプラスチック以外の素材としては、木、紙、金属、不織布、無機フィラー、石英、サファイア、ガラス、シリコン等が挙げられる。
【0036】
また、プラスチック層は繊維強化樹脂であってもかまわない。繊維強化樹脂とは、繊維質基質を含有する樹脂である。繊維質基質と樹脂の複合化の方法は、本発明の効果を損なわない範囲であればとくに限定はなく、混練、塗布、含浸、注入、圧着、等の方法が挙げられ、繊維質基質の形態及び本発明の積層体の用途によって適時選択することができる。
繊維質基質の種類としては、特に限定はないが、例えば無機繊維や有機繊維が挙げられる。
【0037】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0038】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0039】
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、一種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0040】
本発明の繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
【0041】
<中間層>
本発明の積層体は、中間層を介して金属層とプラスチック層を接着して得ることができる。本発明の中間層は、下記式(1)で表される構造Aを有するものである。
【0043】
(式(1)において、環Arは芳香環を表し、nは1〜3の整数を表し、Rは下記式(2)で表される構造を表す。
【0045】
(前記式(2)において、Xは直接結合、または2価の炭化水素基、酸素原子、アミド基、カルボニル基、エステル基、イミド基、アゾ基、スルフィド基、スルホン基、及びこれらを組み合わせてなる2価の連結基を表し、*は環Arとの結合点を表す。))
【0046】
前記式(1)において、環Arは芳香環を表す。好ましくはベンゼン環、ナフタレン環であり、金属層との接着性に優れるため好ましい。このとき、二つの水酸基は隣接する炭素原子に結合している。Rの結合部位は特に限定は無く、Rは構造Aに対し1つから3つ含有される。
【0047】
Rは前記式(2)で表される構造である。このとき、SH基は、隣接する別のSH基と反応してS−S結合を形成しても良い。
【0048】
式(2)におけるXは、好ましくは、直接結合、炭素数1〜3の炭化水素基、エステル基、または炭化水素基とエステル基を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。
【0049】
(金属層およびプラスチック層との界面)
本発明の中間層は、構造Aを介して金属層とプラスチック層を接着する。
金属層には、環Arの含有する水酸基が配位結合ないしはキレート結合で結合すると考えられる。
プラスチック層とは、式(2)の末端炭素原子より先で接着する。このとき、炭素原子より先は、プラスチック層と直接結合しても良いし、(メタ)アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等のポリマーを介して接着しても良い。
【0050】
構造Aとしては、下記式(3−1)から(3−3)で表される構造が好ましい。
【0054】
(式(3−1)〜(3−3)において、nは1〜3の整数を表し、Rはそれぞれ独立して前記式(2)で表される構造を表し、n1+n2≦3かつn1およびn2はそれぞれ0〜3の整数を表す。)
【0055】
その中でも、特に好ましい構造は上記(3−1)で表される構造である。
【0056】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法には特に限定は無いが、特定の製造方法を用いることで、さらに接着性を向上させることができる。
【0057】
好ましい製造方法としては、金属層に下記式(4)で表される化合物またはその塩を含有する組成物を塗布する工程1と、
プラスチック層に下記式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物を塗布する工程2と、
金属層とプラスチック層の塗布面同士を張り合わせて中間層を形成する工程3を有することを特徴とする、積層体の製造方法が挙げられる。
【0059】
(前記式(4)中、X
1は直接結合または2価の炭化水素基、酸素原子、アミド基、カルボニル基、エステル基、イミド基、アゾ基、スルフィド基、スルホン基、及びこれらを組み合わせてなる2価の連結基を表す)
【0061】
式(4)の末端のアミノ基と、式(5)の5員環ジチオカーボナート構造とが反応することで、本発明の中間層に構造Aが形成される。
式(4)で表される化合物またはその塩を含有する組成物と、式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物とを先に反応させ、構造Aがあらかじめ形成された状態で中間層を作成するよりも、本製造方法のほうが接着性に優れる。
それは、式(4)で表される化合物またはその塩と、式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物との溶剤親和性が異なることから均一混合が難しいこと、構造Aがあらかじめ形成されたポリマー化された状態であると、環Arの保有する水酸基が金属層に結合する効率が低くなるからではと考えられる。
本発明の製造方法では、それは、式(4)で表される化合物またはその塩と、式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物とはそれぞれ別溶媒に溶解させた上で、親和性の高い基板と接触させる為、まず基板密着性が高くなること、さらには、式(4)の末端のアミノ基と式(5)の5員環ジチオカーボナート構造が特異的に反応することから結合効率が高くなることにより、本発明の積層体のより高い接着強度を具現化できる。
【0062】
(工程1)
工程1は、金属層に対し、前記式(4)で表される化合物またはその塩を含有する組成物を塗布する工程である。
組成物の塗布方法は特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0063】
前記式(4)で表される化合物としては、具体的には、以下に表される構造が挙げられる。
【0067】
中でも、好ましくは(4−1)で表される化合物またはその塩である。
【0068】
上記式(4)で表される化合物またはその塩を含有する組成物としては、水溶液であると好ましい。化合物またはその塩の濃度は特に限定は無いが、例えば水溶液としディップ法で塗工する場合、0.1wt%以上の濃度であれば十分に接着可能である。
【0069】
式(4)で表される化合物かその塩かは、特に限定は無く、塗布後の処理や化合物の安定性によって適宜選択すればよい。例えば塩である場合、ジチオカーボナート構造と反応させるためには、アミン処理により塩を外せばよい。
アミン処理としては、三級アミン水溶液を接触させることが好ましく、特に好ましくはトリメチルアミンやトリエチルアミンが挙げられる。アミン水溶液とする場合は、5wt%以上であると好ましい。
【0070】
本発明の工程1においてアミン処理を併用する場合は、
(1−1)金属層に対し、前記式(4)で表される化合物の塩を含有する組成物を塗布する
(1−2)塗布面にアミン水溶液を接触させる
という2つの工程を含有する。
このとき工程(1−1)にて塩処理をした金属層は、ウエットのまま工程(1−2)に供しても良いし、一旦乾燥してから工程(1−2)に供しても良い。
【0071】
組成物中の式(4)で表される化合物またはその塩の濃度は特に限定は無いが、例えば水溶液としディップ法で塗工する場合、0.1wt%以上の濃度であれば十分に接着が可能である。
【0072】
(工程2)
工程2は、プラスチック層に対し、前記式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物を塗布する工程である。
組成物の塗布方法は特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0073】
前記式(5)で表される構造を含有する化合物としては、低分子化合物であってもモノマーであってもポリマーであっても構わない。低分子化合物としては、末端炭素に反応性基を有していると、ポリマー化やプラスチック層との反応が可能である為好ましい。好ましい反応性基としては、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基等が挙げられ、より好ましいのは(メタ)アクリル基である。
【0074】
前記式(5)で表される構造を含有する化合物を有する組成物としては、さらに有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類等が挙げられる。中でも好ましくはTHF、MEK、酢酸エチルである。
【0075】
組成物中における式(5)で表される構造を含有する化合物の濃度は特に限定は無いが、好ましくは5wt%以上であり、より好ましくは10wt%以上である。
【0076】
(工程3)
工程3は、金属層とプラスチック層の塗布面同士を張り合わせて中間層を形成する工程である。金属層とプラスチック層の塗布面は、塗工後に乾燥させてから貼り合せても良いし、ウェットな状態で貼り合せてもかまわない。
式(4)の末端のアミノ基と、式(5)の5員環ジチオカーボナート構造は、通常常温であっても十分に反応が行われるため、張り合わせた状態で固定しておけば積層体が製造できる。もちろん、加熱や脱水、脱溶剤と言った工程と組み合わせても問題ない。
【0077】
<積層体>
本発明の積層体は金属とプラスチックという異種素材を強固に接着した積層体であるため、様々な分野、例えば航空機や自動車、鉄道等の車両産業、風力発電ブレード、電子部材、建築・土木部材、輸送梱包部材、スポーツ・レジャー等に好適に使用可能である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。なお、単位は特段の記述が無い場合は質量基準である。
【0079】
(合成例1)化合物1(5−(Methacryloyloxy)methyl−1,3−oxathiolane−2−thione)の合成
アルゴン導入管、滴下ロート、温度計、磁気攪拌子を装着した200mLフラスコに臭化リチウム0.27gを仕込み、系内をアルゴン置換した。無水テトラハイドロフラン(THF)25mLを加えて攪拌を開始し、無色透明の溶液にした後、グリシジルメタクリレート11.17gを加えた。フラスコを氷浴で冷却し、内温を2〜3℃に保持しながら、二硫化炭素7.45gをTHF50mLに溶解した溶液を80分かけて滴下した。室温で4時間反応を継続後、エバポレートし、大部分のTHFを留去した。残渣に酢酸エチル50mLを加え溶液とした後、2度水洗し、引き続き飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。液をエバポレートし、目的物である化合物1を14.92gを得た。
【0080】
(合成例2)化合物2(N−(3−amino−2,2−dimethylpropyl)−3,4−dihydroxybenzamide)の合成
100mLガラス製フラスコに、プロトカテク酸エチル1.82g、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン5.14gを仕込み、アルゴン置換後130℃で24時間攪拌・加熱した。室温に冷却の後、生じた固体を濾取し、トルエンで3回洗浄した。乾燥後、目的物である化合物2の粉末が1.95g得られた。この粉末の水溶液の70℃における飽和濃度を測定したところ、0.44wt%であった。
【0081】
(合成例3)化合物3(メチルメタクリレートー合成ラウリルメタクリレートー化合物1共重合樹脂)の合成
アルゴン導入管、滴下ロート、磁気攪拌子を装着した200mLフラスコにトルエン50mLを仕込み、アルゴンガスを吹き込んで系内をアルゴン置換した。攪拌しながら系内を90℃に加熱し、(1)メチルメタクリレート23.92g、(2)合成ラウリルメタクリレート23.91g、(3)化合物1を7.27g、(4)N,N’−アゾビスイソブチロニトリル121mgを5mLのトルエンに溶解した溶液を混合した液を1時間かけて滴下した。90℃で3時間反応を継続させた後、浴温を140℃に上昇し、さらに5時間反応させた。室温に冷却後、約1Lのメタノールから再沈し、引き続きメタノールで3回洗浄後、40℃で減圧乾燥し、目的物である化合物3を46.84g得た。
【0082】
(合成例4)化合物4(メチルメタクリレートー合成ラウリルメタクリレート共重合樹脂)の合成
化合物1を含有しないこと以外は、合成例3と同様の操作を行い、目的物である化合物4を36.30g得た。
【0083】
(合成例5)化合物5(ヘキシルメタクリレートーメタクリル酸共重合樹脂)の合成
アルゴン導入管、滴下ロート、磁気攪拌子を装着した200mLフラスコにトルエン50mLを仕込み、アルゴンガスを吹き込んで系内をアルゴン置換した。攪拌しながら系内を110℃に加熱し、(1)ヘキシルメタクリレート34.07g、(2)メタクリル酸1.92g、(3)N,N‘−アゾビスイソブチロニトリル73mgを5mLのトルエンに溶解した溶液を混合した液を1時間かけて滴下し、そのまま110℃で6時間反応させた。室温に冷却後、約800mLのメタノールから再沈し、引き続きメタノールで3回洗浄後、40℃で減圧乾燥し、目的物である化合物5を20.05g得た。
【0084】
(合成例6)化合物6(ヘキシルメタクリレートードパミンメタクリルアミド共重合樹脂)の合成
30mLサンプル瓶に化合物5を2.141g投入し、乾燥したN,N−ジメチルホルムアミド10mLを加え、磁気攪拌子を用いて攪拌して無色透明の均一な溶液を得た。ついで(1)3−ヒドロキシチラミン塩酸塩0.383g、(2)トリエチルアミン0.206g、(3)ジイソプロピルカルボジイミド0.256gを、この順序で加えた。室温にて5時間攪拌を継続後、100mLのメタノールから再沈し、引き続きメタノールで3回洗浄・乾燥後、目的物である化合物6を1.85g得た。
【0085】
(1)金属試験片(アルミニウム板、幅25mm×長さ100mm×厚み2.0mm、JISH4000 A5052P)を、A液として1wt%の3−ヒドロキシチラミン塩酸塩水溶液に、貼り合わせ部分となる範囲を1時間浸漬した後に、5wt%のトリエチルアミン水溶液で洗浄し、処理済金属試験片とした。
(2)プラスチック試験片(ポリエチレンテレフタレート板、幅25mm×長さ100mm×厚み2.0mm)の長さ方向の先端部分に、中央に直径4mm(12.56cm
2)の大きさの円形の穴が空いたテフロン(登録商標)テープ10(厚み80μm×幅25mm×長さ25mm)を接着剤厚さ制御のために貼った。当該穴に、B液として10wt%の化合物3のTHF溶液を厚み80μmとなるように供給した後、当該穴を覆うように処理済金属試験片の貼りあわせ部分を密着させた。そして、貼り合わせ部分を両側から目玉クリップで圧着固定し、接着し積層体を得た。得られた積層体を25℃60%RHにて12時間静置後に、水平方向へと引っ張って引っ張りせん断接着強さを測定した。引っ張りせん断接着強さ(単位:MPa)は、温度25℃、湿度60%の環境下で引張速度5mm/分で測定した。
【0086】
A液とB液を表1に記載の材料に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2および比較例1を行った。
【0087】
比較例2に関しては、プラスチック試験片に10wt%の化合物6のTHF溶液を供給する一方、金属試験片についてはA液処理もアミン処理も行わず、水洗を実施するのみでプラスチック試験片と貼り合わせ、圧着させた。その後、実施例1と同様に引っ張りせん断接着強さを測定した。
【0088】
【表1】