(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エピハロヒドリン単量体単位およびエチレンオキシド単量体単位を含有し、前記エチレンオキシド単量体単位の含有割合が、全単量体単位中、50〜80モル%であるポリエーテルゴムを製造する方法であって、
溶剤中で、エピハロヒドリンおよびエチレンオキシドを含む単量体混合物を共重合し、重合体溶液を得る工程と、
スチームストリッピングにより、前記重合体溶液から、重合体を凝固させ、クラム状の重合体を含むクラムスラリーを得る工程と、
前記クラムスラリーを冷却させる工程と、
前記クラムスラリーが60℃以下まで冷却された時点で、前記クラムスラリーから重合体を取り出す工程と、
を備えるポリエーテルゴムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム架橋物は、エピハロヒドリン単量体単位およびエチレンオキシド単量体単位を含有し、エチレンオキシド単量体単位の含有割合が、全単量体単位中、50〜80モル%であるポリエーテルゴムと、架橋剤とを含有するポリエーテルゴム組成物を架橋してなり、
23℃、72時間の条件でアセトンに浸漬した際のアセトン抽出量が、3.5重量%以下とされたものである。
【0016】
<ポリエーテルゴム>
まず、本発明のゴム架橋物を形成するためのポリエーテルゴム組成物に含まれるポリエーテルゴムについて説明する。
本発明で用いるポリエーテルゴムは、エピハロヒドリン単量体単位およびエチレンオキシド単量体単位を含有し、エチレンオキシド単量体単位の含有割合が、全単量体単位中、50〜80モル%であるゴムである。
【0017】
エピハロヒドリン単量体単位を形成するエピハロヒドリン単量体としては、たとえば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンなどが挙げられる。エピハロヒドリン単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。エピハロヒドリン単量体のなかでも、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0018】
本発明で用いるポリエーテルゴム中における、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは49〜19モル%であり、より好ましくは48〜23モル%、さらに好ましくは43〜23モル%である。エピハロヒドリン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、電気抵抗値が低く、機械特性に優れたものとすることができる。
【0019】
エチレンオキシド単量体単位は、エチレンオキシドにより形成される単位である。本発明で用いるポリエーテルゴム中における、エチレンオキシド単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、50〜80モル%であり、好ましくは50〜75モル%、より好ましくは55〜75モル%である。エチレンオキシド単量体単位の含有割合が低すぎると、感光体汚染の問題が低減する傾向はあるものの、電気抵抗値が高くなってしまう。一方、エチレンオキシド単量体単位の含有割合が多すぎると、機械特性が低下してしまう。
【0020】
また、本発明で用いるポリエーテルゴムは、エピハロヒドリン単量体単位、およびエチレンオキシド単量体単位に加えて、ビニル基含有オキシラン単量体単位を含有していることが好ましい。
【0021】
ビニル基含有オキシラン単量体単位を形成するビニル基含有オキシラン単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル類;ブタジエンモノエポキシドなどのジエンモノエポキシド類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。ビニル基含有オキシラン単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でもエチレン性不飽和グリシジルエーテル類が好ましく、アリルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0022】
本発明で用いるポリエーテルゴム中における、ビニル基含有オキシラン単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、15〜1モル%であり、好ましくは12〜2モル%、より好ましくは10〜2モル%である。ビニル基含有オキシラン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ポリエーテルゴムとしての成形加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物を、耐オゾン性に優れたものとすることができる。
【0023】
また、本発明で用いるポリエーテルゴムは、エピハロヒドリン単量体単位、エチレンオキシド単量体単位、および必要に応じて用いられるビニル基含有オキシラン単量体単位に加えて、これらと共重合可能な単量体の単位をさらに含有していてもよい。
【0024】
共重合可能な単量体としては、たとえば、エチレンオキシド以外のアルキレンオキシドなどを用いることもできる。
【0025】
エチレンオキシド以外のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−イソブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサンなどの鎖状アルキレンオキシド;1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカンなどの環状アルキレンオキシド;などが挙げられる。
【0026】
共重合可能な単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。共重合可能な単量体の単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
【0027】
本発明で用いるポリエーテルゴムは、たとえば、溶剤中で、エピハロヒドリンおよびエチレンオキシドを含む単量体混合物を共重合(開環共重合)することにより得ることができる。重合法としては、特に限定されないが、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などが好適に用いられる。
【0028】
重合に用いる重合触媒としては、一般のポリエーテル重合用触媒であれば、特に限定されない。重合触媒としては、たとえば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンを反応させた触媒(特公昭35−15797号公報);トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒(特公昭46−27534号公報);トリイソブチルアルミニウムにジアザビシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた触媒(特公昭56−51171号公報);アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とを反応させた触媒(特公昭43−2945号公報);有機亜鉛化合物と多価アルコールとを反応させた触媒(特公昭45−7751号公報);ジアルキル亜鉛と水とを反応させた触媒(特公昭36−3394号公報);トリブチル錫クロライドとトリブチルホスフェートとを反応させた触媒(特許第3223978号公報);などが挙げられる。
【0029】
重合に用いる溶剤としては、不活性溶媒であれば、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−へキサンなどの直鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状飽和炭化水素類;などが用いられる。これらのなかでも、溶液重合法により重合する場合は、ポリエーテルゴムの溶解性の観点から、芳香族炭化水素類を用いることが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0030】
重合反応温度は、20〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましい。重合様式は、回分式、半回分式、連続式などの任意の方法で行うことができる。
【0031】
本発明で用いるポリエーテルゴムは、ブロック共重合、ランダム共重合のいずれの共重合タイプでも構わないが、ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させ、ゴム弾性を損ないにくいために好ましい。
【0032】
そして、本発明においては、溶剤中において、エピハロヒドリンおよびエチレンオキシドを含む単量体混合物を共重合することにより得られた重合体溶液から、固体状のポリエーテルゴムを得る際には、ゴム架橋物とした際のアセトン抽出量を上述した範囲とするという観点より、次の方法を採用することが好ましい。
すなわち、本発明においては、ゴム架橋物とした際のアセトン抽出量を上述した範囲とするという観点より、スチームストリッピングにより、重合体溶液から、重合体を凝固させ、クラム状の重合体を含むクラムスラリーを得て、得られたクラムスラリーを冷却し、クラムスラリーが60℃以下まで冷却された時点で、クラムスラリーから固体状のポリエーテルゴムを取り出すことが好ましい。
このような方法を採用することにより、得られるポリエーテルゴム中における、未反応成分や低分子量成分を適切かつ簡便に除去することができ、これにより、得られるポリエーテルゴムを、未反応成分や低分子量成分の含有量が極めて低く抑えられたものとすることができる。そして、結果として、ゴム架橋物とした際のアセトン抽出量を低く抑えることができるものである。
【0033】
本発明で用いるスチームストリッピングは、重合体溶液から、重合体と溶剤を分離する方法として常法であり、スチームストリッピングの方法としては、特に限定されず、たとえば、重合体の溶液をスチームを加えた熱水中に注入し、溶剤を水蒸気とともに蒸留し、温水中に重合体をクラム状に析出させて、クラム状の重合体が温水中に分散してなるクラムスラリーとする方法などが挙げられる。また、このような作業は、減圧下において行うことが好ましい。なお、スチームストリッピングを実施する前に、所望により、公知の老化防止剤、凝固クラム安定剤、スケール防止剤などを、重合体溶液に添加してもよい。
【0034】
スチームストリッピングを行う際の重合体溶液中の重合体濃度は、特に限定されないが、1〜30重量%に調整することが好ましく、2〜20重量%に調整することがより好ましく、3〜15重量%に調整することが特に好ましい。重合体溶液中の重合体濃度が低すぎると、溶剤除去効率が悪く、一方、重合体溶液中の重合体濃度が高すぎると、析出したクラム粒径が大きくなりすぎ、その後の工程に支障をきたすおそれがある。
【0035】
また、スチームストリッピング時の温度は、重合時に用いた溶剤の沸点または該溶剤と水とが共沸する場合はその共沸温度以上が好ましく、具体的には、85℃以上とすることが好ましく、90℃以上とすることがより好ましい。スチームストリッピング時の温度が低すぎると、溶剤除去効率が悪化してしまうこととなる。
【0036】
そして、スチームストリッピングにより得られた、クラム状の重合体が温水中に分散してなるクラムスラリーを冷却し、クラムスラリーが60℃以下まで冷却された時点で、クラムスラリーからポリエーテルゴムを取り出し、必要に応じて乾燥させることで、ポリエーテルゴムを得ることができる。
【0037】
本発明者等の知見によると、スチームストリッピングにより、ポリエーテルゴム中に含まれる、未反応成分や低分子量成分を除去できるものの、スチームストリッピングのみでは、未反応成分や低分子量成分が十分に除去できないものであり、これに対して、スチームストリッピングを行った後、上記温度以下となるまで冷却することで、未反応成分や低分子量成分を、クラムスラリー中の温水中に、十分に溶出させることができ、これにより、未反応成分や低分子量成分の除去を十分なものとすることができるものである。特に、スチームストリッピングにより、重合体溶液から重合体を凝固させる方法においては、スチームストリッピングを終了した後、冷却させることなく、すぐに、クラムスラリーから固体状のポリエーテルゴムを取り出すことが通常であった。これに対し、本発明によれば、スチームストリッピングを終了した後、冷却を行い、クラムスラリーが60℃以下まで冷却された時点で、クラムスラリーからポリエーテルゴムを取り出すことにより、未反応成分や低分子量成分の除去を十分なものとすることができるものである。クラムスラリーからポリエーテルゴムを取り出す際には、60℃以下まで冷却された段階とすればよいが、好ましくは20〜60℃まで冷却された段階、より好ましくは20〜50℃まで冷却された段階、さらに好ましくは30〜50℃まで冷却された段階とすることが好ましい。
【0038】
また、クラムスラリーを冷却する際の冷却方法としては、特に限定されないが、ポリエーテルゴム中に含まれる、未反応成分や低分子量成分をより適切に除去するという観点より、室温(23℃)で静置する方法が好ましい。
【0039】
なお、クラムスラリーからポリエーテルゴムを取り出す方法としては、特に限定されないが、たとえば、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いてろ別する方法などが挙げられる。
【0040】
また、本発明においては、ポリエーテルゴム中に含まれる、未反応成分や低分子量成分をより低減するという観点より、クラムスラリーから取り出したポリエーテルゴムを、乾燥する前あるいは乾燥した後に、アセトンで洗浄してもよい。アセトンで洗浄する方法としては、特に限定されないが、ポリエーテルゴムをアセトン中に浸漬させる方法や、さらにこれを撹拌する方法などが挙げられる。アセトンで洗浄する際の浸漬時間あるいは攪拌時間は、好ましくは5〜24時間、より好ましくは12〜24時間であり、温度は、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜35℃である。
【0041】
なお、上記においては、スチームストリッピングにより凝固を行い、得られたクラムスラリーからポリエーテルゴムを取り出す際の温度を60℃以下とすることにより、ポリエーテルゴム中に含まれる未反応成分や低分子量成分を除去し、これにより、ゴム架橋物とした場合における、アセトン抽出量を3.5重量%以下とする方法を例示したが、このような方法に特に限定されるものではなく、ゴム架橋物とした場合における、アセトン抽出量を3.5重量%以下とすることのできる方法であれば、何でもよい。
【0042】
本発明で用いるポリエーテルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、10〜120であることが好ましく、20〜90であることがより好ましく、30〜70であることが特に好ましい。ムーニー粘度が高すぎると成形加工性に劣り、スウェル(押し出し成形時にダイの径より押出物の径が大きくなること)が発生し、寸法安定性が低下する場合がある。ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械的強度が低下する場合がある。
【0043】
<ポリエーテルゴム組成物>
本発明で用いるポリエーテルゴム組成物は、上述したポリエーテルゴムと、架橋剤とを含有するものである。
【0044】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;ジクミルペルオキシド、ジターシャリブチルペルオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基を持つアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらのなかでも、硫黄または含硫黄化合物が好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合割合は、特に限定されないが、ポリエーテルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.2〜7重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋速度が遅くなり、ゴム架橋物の生産性が低下するおそれがある。一方、架橋剤の配合量が多すぎると、得られるゴム架橋物の硬度が高くなるおそれがある。
【0045】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋助剤および架橋促進剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸などが挙げられる。架橋促進剤としては、特に限定されないが、例えば、グアニジン系;アルデヒド−アミン系;アルデヒド−アンモニア系;チアゾール系;スルフェンアミド系;チオ尿素系;チウラム系;などの各架橋促進剤を用いることができる。架橋助剤および架橋促進剤は、それぞれ2種以上併用して用いてもよい。
【0046】
架橋助剤および架橋促進剤の使用量としては、特に限定されないが、ポリエーテルゴム100重量部に対して、好ましくは0.01〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部である。
【0047】
さらに、本発明で用いるポリエーテルゴム組成物には、公知の重合体に通常配合される添加剤を含有させてもよい。このような添加剤としては、たとえば、受酸剤、補強剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、耐光安定剤、粘着付与剤、界面活性剤、導電性付与剤、電解質物質、着色剤(染料・顔料)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0048】
本発明で用いるポリエーテルゴム組成物は、ポリエーテルゴム、架橋剤、および必要に応じて用いられる各配合剤を、所望の方法により調合、混練することにより調製することができる。調合、混練に際しては、たとえば、ニーダー、バンバリー、オープンロール、カレンダーロール、押出機など任意の混練成形機を一つあるいは複数組み合わせて用いて混練成形してもよいし、溶媒に溶解してから混合した後、溶媒を除去することによって成形してもよい。
【0049】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述したポリエーテルゴム組成物を架橋してなるものである。
【0050】
ポリエーテルゴム組成物を架橋する方法は、特に限定されないが、成形と架橋を同時に行っても、成形後に架橋してもよい。成形時の温度は、20〜200℃が好ましく、40〜180℃がより好ましい。架橋時の加熱温度は、130〜200℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。架橋時の温度が低すぎると、架橋時間が長時間必要となったり、得られるゴム架橋物の架橋密度が低くなったりするおそれがある。一方、架橋時の温度が高すぎると、成形不良となるおそれがある。架橋時間は、架橋方法、架橋温度、形状などにより異なるが、1分以上、5時間以下の範囲が架橋密度と生産効率の面から好ましい。加熱方法としては、プレス加熱、オーブン加熱、蒸気加熱、熱風加熱、およびマイクロ波加熱などの方法を適宜選択すればよい。
【0051】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、100〜220℃が好ましく、130〜210℃がより好ましい。加熱時間は、30分〜5時間が好ましい。
【0052】
本発明のゴム架橋物は、23℃、72時間の条件でアセトンに浸漬した際のアセトン抽出量が、3.5重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下である。本発明によれば、ゴム架橋物をアセトンに浸漬した際のアセトン抽出量を上記範囲とするものであり、これにより、本発明のゴム架橋物を導電性ロールなどとして用いた場合における、感光体汚染の発生を有効に抑制できるものであり、特に、使用開始後のある程度の期間だけなく、長期間使用した場合においても、感光体汚染の発生を有効に防止できるものである。
【0053】
そのため、本発明のゴム架橋物は、複写機や印刷機等に使用される、導電性ロールや導電性ブレードなどの導電性材料用途、特に導電性ロール用途として特に好適である。また、本発明のゴム架橋物は、このような導電性材料用途以外にも、靴底やホース用材料;コンベアーベルトやエスカレータのハンドレール等のベルト用材料;シール、パッキン用材料;などとして用いることもできる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0055】
[ゴム架橋物のアセトン抽出量]
ポリエーテルゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、縦15cm、横8cm、厚さ2mmのシート状の架橋物を得た。そして、得られたシート状の架橋物を、縦10mm 横10mm 厚さ2mmに切断することで、約50gの架橋物試料を準備した。次いで、予め重量を測定したガラス瓶に、アセトン180gと、準備した約50gの架橋物試料とを投入し、23℃で72時間浸漬させた。次いで、浸漬後の架橋物試料を150メッシュの金網でろ過し、ろ液を真空乾燥機で40℃ 48時間乾燥することで、アセトン抽出物を得た。そして、乾燥後のガラス瓶の重量と使用前のガラス瓶の重量の差からアセトン抽出物の重量を計算し、求めたアセトン抽出物の重量から、下記式にしたがって、アセトン抽出量(単位は、重量%)を求めた。
アセトン抽出量(重量%)=アセトン抽出物の重量(g)/試験に用いた架橋物試料の重量(g)×100
【0056】
[感光体汚染(室温条件)]
ポリエーテルゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、縦15cm、横8cm、厚さ2mmのシート状の架橋物を得た。そして、得られたシート状の架橋物を、縦2cm、横2cmに切断し、次いで、市販のプリンタの感光体(同プリンタにて、事前にハーフトーン印字を200回繰り返した後の感光体)に貼り付け固定し、温度23℃、湿度50%雰囲気下で72時間保管した。その後、感光体からシート状の架橋物を剥し、同プリンタにてハーフトーン印字をして、印刷物の汚れ有無を目視にて確認し、以下の三段階の基準にて評価した。
A:画像欠陥は見られない。実用できるレベル。
B:よく見ると若干画像欠陥がみられる。実用可能なレベル。
C:著しく画像欠陥を生じる。実用できないレベル。
なお、本実施例では、感光体として、事前にハーフトーン印字を200回繰り返した後の感光体を使用して行っているが、このように事前に使用した感光体を用いた場合には、未使用の感光体を用いた場合と比較して、感光体汚染が起こりやすく、そのため、未使用の感光体を用いた場合と比較して、厳しい条件での試験であると言える(後述する、高温、高湿条件下における感光体汚染の評価でも同様。)。
【0057】
[感光体汚染(高温、高湿条件)]
上記と同様にして得られたシート状の架橋物を、市販のプリンタの感光体(同プリンタにて、事前にハーフトーン印字を200回繰り返した後の感光体)に貼り付け固定し、温度45℃、湿度95%雰囲気下で72時間保管後、次いで温度23℃、湿度50%の雰囲気下で24時間保管した。その後、感光体からシート状の架橋物を剥し、同プリンタにてハーフトーン印字をして、印刷物の汚れ有無を目視にて確認し、以下の三段階の基準にて評価した。なお、高温、高湿条件における、感光体汚染が抑制できている場合には、長期間使用した場合でも、感光体汚染が抑制できるものと評価できる。
A:画像欠陥は見られない。実用できるレベル。
B:よく見ると若干画像欠陥がみられる。実用可能なレベル。
C:著しく画像欠陥を生じる。実用できないレベル。
【0058】
(実施例1)
重合触媒の調製
密栓した耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン184.8部およびトリイソブチルアルミニウム55.2部を仕込み、ガラスボトルを氷水に浸漬することにより冷却させた後、ジエチルエーテル103.1部をガラスボトルに添加し、攪拌した。次いで、氷水で冷却を継続しながら、ガラスボトルに、リン酸8.18部を添加し、さらに攪拌した。この際、トリイソブチルアルミニウムとリン酸との反応により、ガラスボトルの内圧が上昇するので、適時脱圧を実施した。次いで、ガラスボトルに1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩8.27部を添加し、最後に、60℃の温水浴内で1時間熟成反応させることにより触媒溶液を得た。
【0059】
ポリエーテルゴムの製造
上記とは別に、オートクレーブに、エピクロロヒドリン196.9部、アリルグリシジルエーテル27.0部、エチレンオキシド20.3部、およびトルエン1947.3部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら内溶液を70℃に昇温し、上記にて調製した触媒溶液を10部添加して、反応を開始した。次いで、反応開始直後から、エチレンオキシド135.8部をトルエン287.0部に溶解した溶液を、5時間かけて等速度で連続添加した。同時に、上記にて調製した触媒溶液を、30分毎に7部ずつ、5時間にわたり添加した。そして、反応系に水15部を添加し、攪拌することにより反応を終了させ、さらに老化防止剤としての4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)5重量%トルエン溶液を38部添加し攪拌した。次いで、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のNa塩(デモールT45、花王社製;有効成分45%)を25.3部添加し攪拌することで、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液のうち一部から重合体を回収し、
1H−NMRにより単量体組成の測定を行ったところ、エチレンオキシド単位60モル%、エピクロロヒドリン単位36モル%、アリルグリシジルエーテル単位4モル%を含有するものであることが確認できた。
【0060】
次いで、得られた重合体溶液に対し、97℃にてスチームストリッピングを行うことで、クラム状の重合体が温水中に分散してなるクラムスラリーを得た。次いで、得られたクラムスラリーを室温で静置することで冷却し、クラムスラリーの温度が40℃まで下がった段階で、重合体をろ別することで、重合体を取り出し、60℃で15時間真空乾燥することで、380部の重合体を得た。
【0061】
そして、得られた重合体を、重量で2倍量のアセトンに、23℃にて、24時間浸漬させることでアセトン洗浄を行い、その後、上澄みのアセトンと重合体とをろ別し、得られた重合体を風乾した後、60℃で真空乾燥を12時間行うことで、ポリエーテルゴム(A−1)を得た。得られたポリエーテルゴム(A−1)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は50であった。
【0062】
ポリエーテルゴム組成物の調製
オープンロールに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−1)100部、充填剤としてカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製)10部、架橋助剤としての酸化亜鉛(商品名「酸化亜鉛2種」、正同化学工業社製)5部、架橋助剤としてのステアリン酸1部を投入し、ロール温度50℃にて混練することで、混練物を得た。次いで、50℃のオープンロールに、得られた混練物と、架橋剤としての硫黄(商品名「サルファックスPMC」、鶴見化学工業社製)0.5部、および架橋促進剤としてのテトラエチルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTET」、大内新興化学工業社製)1部を投入し、混練した後、シート状のポリエーテルゴム組成物を取り出した。
そして、得られたポリエーテルゴム組成物を用いて、上記方法にてゴム架橋物とすることで、アセトン抽出量、感光体汚染(室温条件)、および感光体汚染(高温、高湿条件)の各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
ポリエーテルゴムの製造
アセトン洗浄を行う際の浸漬時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム(A−2)を得た。
【0064】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
ポリエーテルゴムの製造
アセトン洗浄を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム(A−3)を得た。
【0066】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
ポリエーテルゴムの製造
スチームストリッピングを行った後に、クラムスラリーから重合体を取り出す際の温度を40℃から60℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、ポリエーテルゴム(A−4)を得た。
【0068】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
ポリエーテルゴムの製造
スチームストリッピングを行った後に、クラムスラリーから重合体を取り出す際の温度を40℃から90℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、ポリエーテルゴム(A−5)を得た。
【0070】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
ポリエーテルゴムの製造
スチームストリッピングに代えて、エバボレータを用いて、トルエンを除去することで、重合体を凝固させた以外は、実施例3と同様にして、ポリエーテルゴム(A−6)を得た。
【0072】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
ポリエーテルゴムの製造
エバボレータを用いて、トルエンを除去することで、重合体を凝固させた後、重合体を純水で洗浄を行った以外は、比較例2と同様にして、ポリエーテルゴム(A−7)を得た。
すなわち、比較例3においては、エバボレータを用いて、トルエンを除去することで、重合体を凝固させた後、重合体を60℃で15時間真空乾燥させることにより得られた重合体を、重量で2倍量の純水に、23℃にて、12時間浸漬させることで水洗を行った。そして、その後、上澄みの水と重合体とをろ別し、得られた重合体を風乾した後、60℃で真空乾燥を12時間行うことで、ポリエーテルゴム(A−7)を得た。
【0074】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例4)
ポリエーテルゴムの製造
エバボレータを用いて、トルエンを除去することで、重合体を凝固させた後、重合体を純水による洗浄に代えて、エタノールによる洗浄を行った以外は、比較例3と同様にして、ポリエーテルゴム(A−8)を得た。
【0076】
ポリエーテルゴム組成物の調製
ポリエーテルゴム(A−1)の代わりに、上記にて得られたポリエーテルゴム(A−8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリエーテルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、エピハロヒドリン単量体単位およびエチレンオキシド単量体単位を含有し、エチレンオキシド単量体単位の含有割合が、全単量体単位中、50〜80モル%であるポリエーテルゴムと、架橋剤とを含有するポリエーテルゴム組成物を架橋してなり、アセトン抽出量が3.5重量%以下であるゴム架橋物は、室温条件のみならず、高温、高湿条件においても、感光体汚染が有効に抑制されており、そのため、長期間使用した場合でも、感光体汚染が抑制できると評価できるものであった(実施例1〜4)。
また、実施例1〜4のゴム架橋物について、体積固有抵抗値(23℃、50%RH、印加電圧1000V)を測定したところ、log10(体積固有抵抗値)は、いずれも8.3以下であり、体積固有抵抗値も低減されたものであった。
【0079】
一方、アセトン抽出量が3.5重量超であるゴム架橋物は、いずれも、高温、高湿条件において、感光体汚染が発生してしまい、長期間使用した場合には、感光体汚染が顕著になると評価できるものであった(比較例1〜4)。