【実施例】
【0053】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0054】
(1)ポリエーテル系重合体の繰り返し単位数、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
カチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン換算値として、ポリエーテル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、測定器としてはHLC−8320(東ソー社製)を用い、カラムはTSKgelα−M(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。また、得られた数平均分子量を、ポリエーテル系重合体を構成する繰り返し単位の分子量で除すことにより、繰り返し単位数を算出した。
なお、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の数平均分子量は、次のように求めた。すなわち、まず、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の繰り返し単位の平均分子量と、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の平均分子量、および下記(2)により求めたカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率とから、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量を求めた。そして、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の繰り返し単位数と、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量とを乗じることにより得られた値を、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の数平均分子量とした。
また、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の分子量分布は、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の分子量分布から変化していないものとして、そのまま用いた。
【0055】
(2)ポリエーテル系重合体の構造およびカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率
ポリエーテル系重合体の構造、およびカチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、以下のように測定した。すなわち、まず、試料となるポリエーテル系重合体30mgを、1.0mLの重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに加え、1時間振蕩することにより均一に溶解させた。そして、得られた溶液についてNMR測定を行って、
1H−NMRスペクトルを得て、定法に従いポリエーテル系重合体の構造を帰属した。
また、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、次の方法により算出した。すなわち、まず、主鎖のオキシラン単量体単位に由来するプロトンの積分値から全オキシラン単量体単位のモル数B1を算出した。次に、カチオン性基に由来するプロトンの積分値から、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位のモル数B2を算出した。そして、B1に対するB2の割合(百分率)を、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率として求めた。
【0056】
(3)熱伝導率
各重合体組成物の熱伝導率を、各重合体組成物を製造してから5日経過した後のものを用いて、熱伝導率測定装置(「MentorGraphics DynTIM Tester」、メンター・グラフィックス・ジャパン社製)により、次の方法により測定した。すなわち、まず、試料となる各重合体組成物を、φ12.8mmのサイズの円板状試験片として、サンプル厚さが0.1mm〜1.0mmの範囲となるように、ハンドプレスにて厚さを調整することで、厚みの異なる複数の測定サンプルを得た。そして、得られた測定サンプルを、熱伝導率測定装置の加熱部と測定部との間に挟み込み、加熱部と測定部の間の測定温度差を10℃とし、大気下25℃の測定環境にて、厚み方向について熱抵抗を測定し、そして、この熱抵抗測定を、厚みの異なる複数の測定サンプルに対して行い、得られた測定結果を一次の近似式にてプロットすることにより、熱伝導率を算出した。
また、上記熱伝導率の測定を、各重合体組成物を作製して5日経過した後に加え、2か月間経過後においても行い、これらを比較することで、長期安定性についても確認した。
【0057】
(4)電気伝導性
各重合体組成物の電気伝導性は、各重合体組成物を製造してから5日経過した後のものを用いて、低抵抗率計(「ロレスタ−GP」、三菱化学アナリテック社製、四探針プローブとしてPSPプローブを使用)により、JIS K 7194に準拠して、次の方法により測定した。まず、試料となる各重合体組成物1.0gを、温度100℃〜150℃、圧力0.1〜1.0MPaの範囲でプレス成形し、厚さ100〜500μmの薄膜状にした後、10×10mmの正方形状に切り出し、これを測定サンプルとした。そして、得られた測定サンプルを、低抵抗率計の絶縁ボード上に固定し、測定サンプルの一方の面(A面)の中心にプローブを押し当てた後、10Vの電圧をかけて測定サンプルの抵抗値を測定した。そして、測定により得られた抵抗値、測定サンプル寸法、および測定位置に基づき、低抵抗率計に内蔵されている演算式を利用して、表面抵抗(単位:Ω/□)を求めた。本測定においては、この測定を、測定サンプルのもう一方の面(B面)についても同様に行い、A面およびB面について測定された表面抵抗の平均値を算出し、得られた平均値を、測定サンプルの表面抵抗とした。
また、上記表面抵抗の測定を、各重合体組成物を作製して5日経過した後に加え、2か月間経過後においても行い、これらを比較することで、長期安定性についても確認した。
【0058】
(5)長期保存後の分散性
各重合体組成物について、分散状態の維持性を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)による形態観察を行うことで、長期安定性の評価を行った。具体的には、上記形態観察により、以下の基準で、長期保存後の分散性を評価した。長期保存後の分散性に優れるほど、長期安定性に優れるものと判断できる。
◎:重合体組成物を作製してから、2か月間経過しても、マトリックスポリマーと金属含有粉末とが良好な分散状態を保持していた。
○:重合体組成物を作製してから、1週間は良好な分散状態を示したものの、2か月間経過後には、わずかではあるが、マトリックスポリマーと金属含有粉末との分散状態が低下していた。
×:重合体組成物を作製した際に、シート化させることができず、粉末状の形態となった。あるいは、重合体組成物を作製した際に、シート化することは可能であったが、作製してから5日後には、金属含有粉末の凝集が認められた。
【0059】
〔製造例1〕
(ポリエーテル系重合体Aの合成)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.161gとトルエン100mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.086g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して1.5当量)をノルマルヘキサン10mlに溶解したものを添加して、15分間反応させて、触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン35.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。12時間反応後、重合反応液に少量の水を注いで反応を停止した。得られた重合反応液を0.1Nの塩酸水溶液で洗浄することにより触媒残渣の脱灰処理を行い、さらにイオン交換水で洗浄した後に、有機相を50℃で12時間減圧乾燥した。これにより得られた水あめ状物質の収量は34.5gであった。また、得られた水あめ状物質のGPCによる数平均分子量(Mn)は70,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約760であった。以上より、得られた水あめ状物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位により構成されたポリエーテル系重合体Aであると同定された。
【0060】
〔製造例2〕
(イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bの合成)
製造例1で得られたポリエーテル系重合体A 5.0gと、1−メチルイミダゾール12.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体6.8gが得られた。この固体について、
1H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル系重合体A(ポリエピクロロヒドリン)の、繰り返し単位におけるクロロ基の一部が対アニオンとして塩化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が対アニオンとして臭化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、それぞれ置換された、対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’であると同定された。また、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、40モル%であった。
【0061】
そして、上記にて得られた対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’ 2.5gと、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、ゴム状物質3.8gが得られた。得られたゴム状物質について
1H−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’の、塩化物イオンと臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bであると同定された。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bの数平均分子量(Mn)は175,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約760であった。また、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、40モル%であった。
【0062】
〔製造例3〕
(イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの合成)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.161gとトルエン100mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.086g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して1.5当量)をノルマルヘキサン10mlに溶解したものを添加して、15分間反応させて、触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン23.0g、およびグリシジルメタクリレート2.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。12時間反応後、重合反応液に少量の水を注いで反応を停止した。得られた重合反応液を0.1Nの塩酸水溶液で洗浄することにより触媒残渣の脱灰処理を行い、さらにイオン交換水で洗浄した後に、有機相を50℃で12時間減圧乾燥した。これにより得られた水あめ状の物質の収量は24.9gであった。また、得られた水あめ状の物質のGPCによる数平均分子量(Mn)は39,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約370であった。以上より、得られた水あめ状の物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位およびグリシジルメタクリレート単位により構成されたポリエーテル系重合体C’’であると同定された。なお、ポリエーテル系重合体C’’の単量体組成比は、エピクロロヒドリン単量体単位93.5モル%、およびグリシジルメタクリレート単量体単位6.5モル%であった。
【0063】
次いで、上記にて得られたポリエーテル系重合体C’’ 5.0gと、1−メチルイミダゾール12.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体8.8gが得られた。この固体について、
1H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル系重合体C’’の、繰り返し単位中に含まれるクロロ基全てが対アニオンとして塩化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が対アニオンとして臭化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、それぞれ置換された、対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’であると同定された。
【0064】
そして、上記にて得られた対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’ 2.5gと、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、ゴム状物質5.4gが得られた。得られたゴム状物質について
1H−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’の、塩化物イオンと臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cであると同定された。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの数平均分子量(Mn)は150,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約370であった。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの単量体組成比は、イミダゾリウム構造含有単量体単位93.5モル%、およびグリシジルメタクリレート単量体単位6.5モル%であり、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、93モル%であった。
【0065】
〔実施例1〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体A 100部、金属含有粉末として、酸化亜鉛粉末(関東化学社製、平均粒子径5〜10μm)407部、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部、溶剤として、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)714部を自動乳鉢に投入し、室温で30分間混合を行った。そして、得られた組成物を加熱しながら、さらに混合を行った後、真空乾燥機に入れて0.01MPa以下、60℃、12時間以上の条件下でさらに乾燥させることで、ゴム状の重合体組成物を得た。次いで、得られたゴム状の重合体組成物を30×30×0.5mmの金型に入れて、120℃、5MPaでプレスすることでシート状の放熱用重合体組成物を得た。そして、得られたシート状の放熱用重合体組成物を用いて、上記方法にしたがって、熱伝導率、および長期保存後の分散性の各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例2〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例2で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B 100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
〔実施例3〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)207部を使用した以外は、実施例2と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例4〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C 100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例5〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)207部を使用した以外は、実施例4と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
〔実施例6〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C 100部を使用するとともに、酸化亜鉛粉末および銅粉末の代わりに、窒化ホウ素粉末(デンカ社製、平均粒子径10〜18μm)300部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例1〕
酸化亜鉛粉末の使用量を407部から52部に、銀粉末の使用量を207部から48部に、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
〔比較例2〕
製造例2にて得られたポリエーテル系重合体Bの代わりに、液状ブタジエンゴム(Aldrich社製、数平均分子量:3,000、分子量分布:1.5)100部を使用するとともに、溶剤として、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)の代わりに、トルエン714部を使用した以外は、実施例3と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例2で得られた放熱用重合体組成物は、グリース状であり、そのため、シート状に成形することはできなかった。なお、比較例2で得られた放熱用重合体組成物は、製造直後はグリース状であったが、時間経過とともに酸化亜鉛粉末および銀粉末が凝集してしまい、5日後には粉末状に変化してしまった。そして、このような粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例2においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0073】
〔比較例3〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、液状シリコーンゴム(Gelest社製、数平均分子量:6,000、分子量分布:2.1)100部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例3で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例3においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0074】
〔比較例4〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、高分子量スチレンブタジエンゴム(数平均分子量250,000、分子量分布:2.6)100部を使用するとともに、銀粉末の代わりに、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例4で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例4においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0075】
〔比較例5〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、高分子量シリコーンゴム(数平均分子量:63,000、分子量分布:2.3)100部を使用するとともに、銀粉末の代わりに、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例5で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例5においては、作製5日後および2ヶ月経過後のいずれにおいても円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
〔放熱用重合体組成物としての評価(実施例1〜6、比較例1〜5)〕
表1、表2に示すように、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100部に対し、金属含有粉末を200部以上含有してなるポリエーテル系重合体組成物によれば、シート状に良好に加工することが可能であり、しかも、製造後5日後の熱伝導率が高く、熱伝導率に優れるものであり、さらには、2ヶ月後においても熱伝導率を良好に保つことができるとともに、長期保存後の分散性も良好であり、長期保存安定性にも優れるものであり、そのため、放熱用のシート用途に好適に用いることのできるものであった(実施例1〜6)。
【0079】
一方、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体を使用したものの、金属含有粉末の配合量が200部未満である場合には、得られるシート状の組成物は、熱伝導率に極めて劣るものであった(比較例1)。
また、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体の代わりに、それぞれ、液状ブタジエンゴム、液状シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、およびシリコーンゴムを使用した場合には、各重合体と金属含有粉末との分散性が悪く、いずれもシート状に成形することができず、さらには、熱伝導率および長期保存安定性にも劣るものであった(比較例2〜5)。
【0080】
〔実施例7〕
銅粉末の使用量を207部から900部に変更し、かつ、酸化亜鉛粉末を配合しなかった以外は、実施例2と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得た。そして、得られたシート状の導電用重合体組成物を用いて、上記方法にしたがって、電気伝導率、および長期保存後の分散性の各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
〔実施例8〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)900部を使用した以外は、実施例7と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
〔実施例9〕
製造例2にて得られたポリエーテル系重合体Bの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 100部を使用した以外は、実施例8と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0083】
〔比較例6〕
銀粉末の使用量を900部から100部に変更した以外は、実施例8と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
〔導電用重合体組成物としての評価(実施例7〜9、比較例6)〕
表3に示すように、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100部に対し、金属含有粉末200部以上を含有してなるポリエーテル系重合体組成物によれば、シート状に良好に加工することが可能であり、しかも、製造後5日後の表面抵抗が低く、電気伝導性に優れるものであり、さらには、2ヶ月後においても表面抵抗を低く保つことができるとともに、長期保存後の分散性も良好であり、長期保存安定性にも優れるものであり、そのため、電気伝導性のシート用途に好適に用いることのできるものであった(実施例7〜9)。
【0086】
一方、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体を使用したものの、金属含有粉末の配合量が200部未満である場合には、得られるシート状の組成物は、表面抵抗が極めて高くなり、導電性が極めて低いものであった(比較例6)。