特許第6891875号(P6891875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6891875ポリエーテル系重合体組成物およびシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891875
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ポリエーテル系重合体組成物およびシート
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20210607BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20210607BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210607BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20210607BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20210607BHJP
   C09K 5/12 20060101ALI20210607BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08K3/08
   C08K3/22
   C08K3/28
   C08G65/333
   C09K5/12 E
   H01B1/22 A
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-507970(P2018-507970)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2017012335
(87)【国際公開番号】WO2017170366
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-73475(P2016-73475)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホアン テ バン
(72)【発明者】
【氏名】早野 重孝
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−248257(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125636(WO,A1)
【文献】 特開2001−302936(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145411(WO,A1)
【文献】 特開2014−049380(JP,A)
【文献】 特開昭59−024750(JP,A)
【文献】 特開2016−117860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100重量部に対し、金属含有粉末を200重量部以上含有してなり、前記ポリエーテル系重合体に含まれる前記オキシラン単量体単位の少なくとも一部が、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位であるポリエーテル系重合体組成物。
【請求項2】
前記金属含有粉末が、金属粉末、金属酸化物粉末、および金属窒化物粉末から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテル系重合体が、下記一般式(1)で表される単量体単位からなる請求項1または2に記載のポリエーテル系重合体組成物。
【化3】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Xは、任意の対アニオンを表し、Rは非イオン性基を表し、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。)
【請求項4】
前記カチオン性基が、カチオン性の窒素原子を含有する複素環を含んでなる基である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテル系重合体中に含まれるオキシラン単量体単位数が、200個超、200000個以下である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項6】
前記金属含有粉末の平均粒径が、0.01μm以上、50μm未満である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項7】
放熱用の重合体組成物である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項8】
導電用の重合体組成物である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル系重合体組成物を用いてなるシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期安定性に優れたポリエーテル系重合体組成物、およびこのようなポリエーテル系重合体組成物を用いてなるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の発熱性電子部品の小型化、高出力化に伴い、電子部品から発生する単位面積当たりの熱量は非常に大きくなってきている。その一方で、半導体素子等の発熱性電子部品の温度上昇は性能の低下を招くため、冷却が必要とされている。発熱性電子部品の冷却は、たとえば、このような発熱性電子部品の近傍に金属製のヒートシンクなどの冷却部材を設置することで行われている。しかしながら、このような発熱性電子部品と、ヒートシンクなどの冷却部材との間の接触が悪いと、接触部分に空気が介在してしまうため、冷却効率が低下してしまうという課題がある。これに対し、従来より、発熱性電子部品からの熱を、ヒートシンクなどの冷却部材に効率的に伝えるために、熱伝導性物質を介して、これらを接触させる方法が採用されている。熱伝導性ポリマー材料を用いることにより、接触部分の界面に存在する空気の代わりに、熱伝導性ポリマー材料が介在することで、効率よく熱を伝えることができ、これにより冷却効率を向上させることが可能となる。
【0003】
このような熱伝導性ポリマー材料としては、シリコーンゴムなどに熱伝導性充填剤を充填した硬化物からなる熱伝導性シートの他、流動性を有するシリコーン系化合物に、熱伝導性充填剤を充填してなり、柔軟性を有し架橋硬化が可能な熱伝導性接着剤、さらには、液状シリコーンなどの液状材料に熱伝導性充填剤が充填された流動性のある熱伝導性グリースなどが用いられている(たとえば、特許文献1参照)。これらは、いずれも、マトリックスとなるゴム状の材料や、液状の材料に対し、熱伝導性充填剤を充填してなるものである。
【0004】
その一方で、近年、スーパーコンピュータやサーバーなどの高集積機種に用いられる、半導体においては、高機能化の進展に伴い、動作時の発熱量がますます増大している。そのため、これに用いられる熱伝導性シートや熱伝導性グリースにも、その放熱性能により優れていることが求められている。熱伝導性シートや熱伝導性グリースの放熱性能を高める方法としては、これらの熱伝導率を高める方法が一般的であるが、熱伝導率を高めるために、ポリマーに対して、多量の熱伝導性充填剤を充填すると、熱伝導性シートや熱伝導性グリース中における、熱伝導性充填剤の分散性が悪化したり、使用開始時には、熱伝導性充填剤の分散性が良好であっても、長期間使用すると、熱伝導性充填剤同士が凝集してしまい、十分な伝熱性能を発揮できなくなるという課題があった。
【0005】
また、上記とは別に、電子材料分野においては、電気配線や電気回路にも微細化およびフレキシブル化が求められており、このような微細化およびフレキシブル化に対応するために、電気回路をインクジェット方式などによりプリンティングする技術が検討されている。特に、導電性ペーストや導電性インクをインクジェット方式などで目的の材料の表面に印刷できれば、ファインパターンを形成する高細線連続印刷が可能となる。このようなファインパターンを形成する手法によって、エッチング工程、およびフォトリソグラフィー工程を経る必要のある従来の方法に比べて、生産コストを大きく低減することが可能となる。
【0006】
このようなインクジェット方式への適用が期待されている、導電性ペーストや導電性インクとしては、通常、エポキシ樹脂などのポリマーと、銀粉などの導電性充填剤とを含む組成物が用いられている(たとえば、特許文献2参照)。また、印刷後にエポキシ部位を熱硬化させて電気回路の形を固定したり、熱硬化させる際に金属粒子が溶融する場合には自己組織化して金属接合部分を形成しその周囲を熱硬化樹脂が強化する場合もある。
【0007】
そして、このような導電性ペーストや導電性インクにおいては、インクジェット方式への適用等により、さらなる微細化が進んだ場合でも、高い電気伝導性を達成することが求められている。これに対し、電気伝導性を高めるために、ポリマーに対して、多量の導電性充填剤を充填すると、導電性ペーストや導電性インク中における、導電性充填剤の分散性が悪化したり、使用開始時には、導電性充填剤の分散性が良好であっても、長期間使用すると、導電性充填剤同士が凝集してしまい、十分な導電性能を発揮できなくなるという課題があった。そして、このような課題は、各種導電用途において用いられている導電性シートにおいても、同様に発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5434795号公報
【特許文献2】特許第5839573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期安定性に優れたポリエーテル系重合体組成物およびこのようなポリエーテル系重合体組成物を用いてなるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体に、金属含有粉末を特定量配合してなる組成物によれば、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期間経過した後においても、金属含有粉末同士の凝集を有効に抑制することができ、長期安定性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100重量部に対し、金属含有粉末を200重量部以上含有してなるポリエーテル系重合体組成物が提供される。
【0012】
本発明のポリエーテル系重合体組成物において、前記金属含有粉末が、金属粉末、金属酸化物粉末、および金属窒化物粉末から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のポリエーテル系重合体組成物において、前記ポリエーテル系重合体に含まれる前記オキシラン単量体単位の少なくとも一部が、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位であることが好ましく、前記ポリエーテル系重合体が、下記一般式(1)で表される単量体単位からなることがより好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Xは、任意の対アニオンを表し、Rは非イオン性基を表し、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。)
本発明のポリエーテル系重合体組成物において、前記カチオン性基が、カチオン性の窒素原子を含有する複素環を含んでなる基であることが好ましい。
本発明のポリエーテル系重合体組成物において、前記ポリエーテル系重合体中に含まれるオキシラン単量体単位数が、200個超、200000個以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリエーテル系重合体組成物は、放熱用の重合体組成物であることが好ましい。
あるいは、本発明のポリエーテル系重合体組成物は、導電用の重合体組成物であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記本発明のポリエーテル系重合体組成物を用いてなるシートが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期安定性にも優れ、しかも、シートに良好に加工することができるポリエーテル系重合体組成物、さらには、このようなポリエーテル系重合体組成物を用いてなるシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリエーテル系重合体組成物は、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100重量部に対し、金属含有粉末を200重量部以上含有してなる組成物である。
【0016】
<ポリエーテル系重合体>
本発明のポリエーテル系重合体組成物を構成するポリエーテル系重合体は、オキシラン構造を含有する化合物のオキシラン構造部分が開環重合することにより得られる単位である、オキシラン単量体単位を含有してなる重合体である。
【0017】
オキシラン単量体単位の具体例としては、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位などのアルキレンオキシド単位;エピクロロヒドリン単位、エピブロモヒドリン単位、エピヨードヒドリン単位などのエピハロヒドリン単位;アリルグリシジルエーテル単位などのアルケニル基含有オキシラン単量体単位;フェニルグリシジルエーテル単位などの芳香族エーテル基含有オキシラン単量体単位;グリシジルアクリレート単位、グリシジルメタクリレート単位などの(メタ)アクリロイル基含有オキシラン単量体単位;などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明で用いるポリエーテル系重合体は、2種以上のオキシラン単量体単位を含有するものであってもよく、この場合においては、それら複数の繰り返し単位の分布様式は特に限定されないが、ランダムな分布を有していることが好ましい。
【0019】
また、本発明で用いるポリエーテル系重合体は、オキシラン単量体単位のうち少なくとも一部として、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位を含有するカチオン性基含有ポリエーテル系重合体であってもよく、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位を含有することにより、長期間経過した後における、金属含有粉末同士の凝集をより適切に抑制することができ、そのため、本発明のポリエーテル系重合体組成物を、長期安定性により優れたものとすることができる。
【0020】
ポリエーテル系重合体に含有させることのできるカチオン性基としては、特に限定されないが、ポリエーテル系重合体組成物中における、金属含有粉末の分散性の向上効果、および、長期間経過した後における、金属含有粉末同士の凝集の抑制効果をより適切に高めることができるという観点から、周期表第15族または第16族の原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることが好ましく、窒素原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることがより好ましく、窒素原子含有芳香族複素環中の窒素原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることがさらに好ましく、イミダソリウム環中の窒素原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることが特に好ましい。
【0021】
カチオン性基の具体例としては、アンモニウム基、メチルアンモニウム基、ブチルアンモニウム基、シクロヘキシルアンモニウム基、アニリニウム基、ベンジルアンモニウム基、エタノールアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、ジブチルアンモニウム基、ノニルフェニルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、n−ブチルジメチルアンモニウム基、n−オクチルジメチルアンモニウム基、n−ステアリルジメチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリビニルアンモニウム基、トリエタノールアンモニウム基、N,N−ジメチルエタノールアンモニウム基、トリ(2−エトキシエチル)アンモニウム基等のアンモニウム基;ピペリジニウム基、1−ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、1−メチルイミダゾリウム基、1−エチルイミダゾリウム基、ベンズイミダゾリウム基、ピロリウム基、1−メチルピロリウム基、オキサゾリウム基、ベンズオキサゾリウム基、ベンズイソオキサゾリウム基、ピラゾリウム基、イソオキサゾリウム基、ピリジニウム基、2,6−ジメチルピリジニウム基、ピラジニウム基、ピリミジニウム基、ピリダジニウム基、トリアジニウム基、N,N−ジメチルアニリニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、インドリニウム基、イソインドリウム基、キノキサリウム基、イソキノキサリウム基、チアゾリウム基等のカチオン性の窒素原子を含有する複素環を含んでなる基;トリフェニルホスホニウム塩、トリブチルホスホニウム基等のカチオン性のリン原子を含んでなる基;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、イミダゾリウム基、1−メチルイミダゾリウム基、1−エチルイミダゾリウム基、ベンズイミダゾリウム基等のカチオン性の窒素原子を含有する複素環を含んでなる基が好ましい。
【0022】
また、カチオン性基は、通常対アニオンを有するものであるが、その対アニオンとしては特に限定されないが、たとえば、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンや(FSO、(CFSO、(CFCFSOなどのスルホニルイミド化物イオン、さらには、OH、SCN、BF、PF、ClO、CHSO、CFSO、CFCOO、PhCOOなどを挙げることができる。これら対アニオンは、得ようとするポリエーテル系重合体組成物の特性に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
本発明で用いるポリエーテル系重合体が、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体である場合には、ポリエーテル系重合体を構成するオキシラン単量体単位のうち、その少なくとも一部がカチオン性基を有するオキシラン単量体単位であればよく、たとえば、ポリエーテル系重合体を構成するオキシラン単量体単位の全てがカチオン性基を有するものであってもよく、あるいは、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位およびカチオン性基を有しないオキシラン単量体単位が混在するものであってもよい。本発明で用いるポリエーテル系重合体が、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体である場合における、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位が占める割合は、特に限定されず、ポリエーテル系重合体のオキシラン単量体単位全体に対して、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、10モル%以上が特に好ましい。なお、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位が占める割合の上限は特に限定されない。
【0024】
本発明で用いるポリエーテル系重合体が、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体である場合における、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の構造としては特に限定されないが、下記一般式(1)で表される単量体単位からなるものであることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Xは、任意の対アニオンを表し、Rは非イオン性基を表し、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。)
【0025】
上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、カチオン性基の具体例としては、上述したものが挙げられ、また、カチオン性基含有基としては、上述したカチオン性基を含有する基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)中、Xは、任意の対アニオンを表し、たとえば、対アニオンの具体例としては、上述したものが挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)中、Rは、非イオン性基であり、非イオン性の基であれば特に限定されない。たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜10のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、および炭素数6〜20のアリール基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。
置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等の炭素数2〜6のアルケニルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の炭素数1〜6のアルキルカルボニル基;アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の(メタ)アクリロイルオキシ基;等が挙げられる。
【0028】
また、上記一般式(1)中、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数であればよいが、nは、10〜100000の整数であることが好ましく、201〜50000の整数であることがより好ましく、mは、0〜100000の整数であることが好ましく、0〜50000の整数であることがより好ましい。また、n+mは、201〜200000の整数であることが好ましく、201〜150000の整数であることがより好ましく、201〜100000の整数であることがさらに好ましい。
【0029】
なお、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の構造が、上記一般式(1)で表される単量体単位からなるものである時、重合体鎖末端は、特に限定されず、任意の基とすることができる。重合体鎖末端基としては、例えば、上述したカチオン性基、水酸基、または水素原子などが挙げられる。
【0030】
本発明で用いるポリエーテル系重合体が、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体である場合においても、2種以上のオキシラン単量体単位を含有するものであってもよく、この場合においては、それら複数の繰り返し単位の分布様式は特に限定されないが、ランダムな分布を有していることが好ましい。たとえば、2種以上のカチオン性基を有するオキシラン単量体単位を含有するものであってよく、さらに、1種または2種以上のカチオン性基を有するオキシラン単量体単位と、1種または2種以上のカチオン性基を有しないオキシラン単量体単位とを含有するものであってもよい。
【0031】
本発明で用いるポリエーテル系重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、500〜5,000,000であることが好ましく、50,000〜4,500,000であることがより好ましく、100,000〜4,000,000であることが特に好ましい。数平均分子量が上記範囲であれば、得られる組成物を成形加工性に優れたものとしながら、得られる組成物中における、金属含有粉末の分散性をより良好なものとすることができ、これにより、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性をより適切に発揮させることができる。また、本発明で用いるポリエーテル系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.0である。なお、ポリエーテル系重合体の数平均分子量、および分子量分布は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0032】
本発明で用いるポリエーテル系重合体は、オキシラン単量体単位を含有するものであり、オキシラン単量体単位のみからなるものが好ましい。ポリエーテル系重合体中に含まれるオキシラン単量体単位数は、好ましくは200個超、200000個以下であり、より好ましくは201〜150000個、さらに好ましくは201〜100000個である。特に、オキシラン単量体単位数を、好ましくは200個超とすることにより、得られる組成物をシート状に適切に成形可能なものとすることができ、これにより、シート状で用いられる用途に適切に適用することが可能となる。なお、ポリエーテル系重合体のオキシラン単量体単位数は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0033】
また、本発明で用いるポリエーテル系重合体の鎖構造も特に限定されず、直鎖状のものであってもよいし、グラフト状、放射状などの分岐を有する鎖構造のものであってもよい。
【0034】
本発明で用いるポリエーテル系重合体の合成方法は、特に限定されず、目的のポリエーテル系重合体を得られるものである限りにおいて、任意の合成方法を採用することができる。たとえば、(A)オキシラン単量体を含む単量体を、触媒として、特開2010−53217号公報に開示されている、周期表第15族または第16族の原子を含有する化合物のオニウム塩と、含有されるアルキル基が全て直鎖状アルキル基であるトリアルキルアルミニウムとを含んでなる触媒との存在下で開環重合することにより、ポリエーテル系重合体を得る方法、(B)オキシラン単量体を含む単量体混合物を、特公昭46−27534号公報に開示されている、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒の存在下で開環重合することにより、ポリエーテル系重合体を得る方法などが挙げられる。
【0035】
また、本発明で用いるポリエーテル系重合体が、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体である場合、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の合成方法としては、たとえば、上記(A)または(B)の方法において、単量体として、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリンを少なくとも用いて、カチオン性基を有さないポリエーテル系重合体を得て、得られたカチオン性基を有さないポリエーテル系重合体に、イミダゾール化合物などのアミン化合物を反応させることにより、ポリエーテル系重合体のエピハロヒドリン単量体単位を構成するハロゲン基をオニウムハライド基に変換して、さらに必要に応じて、オニウムハライド基を構成するハロゲン化物イオンを、アニオン交換反応を行うことにより、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体を得る方法などが挙げられる。
【0036】
<金属含有粉末>
本発明のポリエーテル系重合体組成物は、上述したポリエーテル系重合体と、金属含有粉末とを含有するものである。
【0037】
本発明で用いる、金属含有粉末としては、単体の金属、合金、あるいは、金属原子を含有する化合物の粉末であればよいが、金属粉末(単体の金属の粉末、あるいは合金粉末)、金属酸化物粉末、および金属窒化物粉末が好ましい。
【0038】
金属粉末としては、たとえば、アルミニウム粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末、金属ケイ素粉末などが挙げられ、これらのなかでも、銀粉末、銅粉末が好ましい。
金属酸化物粉末としては、酸化亜鉛粉末、シリカ粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末、酸化銀粉末、酸化ジルコニウム粉末、酸化マグネシウム粉末などが挙げられ、これらのなかでも、酸化亜鉛粉末が好ましい。
また、金属窒化物粉末としては、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末などが挙げられ、これらのなかでも、窒化ホウ素粉末が好ましい。
【0039】
本発明においては、得ようとするポリエーテル系重合体組成物の特性に応じて、上述した金属含有粉末のなかから、適宜選択して用いればよく、これらは1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
たとえば、本発明のポリエーテル系重合体組成物を、熱伝導性の要求される用途に用いる場合には、ポリエーテル系重合体100重量部に対して、金属含有粉末として、金属酸化物粉末および金属窒化物粉末を、これらの合計で50〜2000重量部の割合で含有するものを用いることが好ましく、100〜1750重量部の割合で含有するものを用いることがより好ましく、200〜1500重量部の割合で含有するものを用いることがさらに好ましく、また、金属粉末を0〜1950重量部の割合で含有するものを用いることが好ましく、10〜1500重量部の割合で含有するものを用いることがより好ましく、50〜1000重量部の割合で含有するものを用いることがさらに好ましい。金属酸化物粉末および金属窒化物粉末と、金属粉末との割合を上記範囲とすることにより、本発明のポリエーテル系重合体組成物を、熱伝導性に特に優れたものとすることができる。
【0041】
あるいは、本発明のポリエーテル系重合体組成物を、導電性の要求される用途に用いる場合には、ポリエーテル系重合体100重量部に対して、金属含有粉末として、金属粉末を200〜2000重量部の割合で含有するものを用いることが好ましく、300〜1750重量部の割合で含有するものを用いることがより好ましく、500〜1500重量部の割合で含有するものを用いることがさらに好ましい。一方、金属酸化物粉末および金属窒化物粉末は、本発明のポリエーテル系重合体組成物に含有していてもよいが、実質的に含まないことが好ましい。金属粉末の割合を上記範囲とすることにより、本発明のポリエーテル系重合体組成物を、電気伝導性に特に優れたものとすることができる。
【0042】
本発明で用いる金属含有粉末は、その形状は特に限定されるものではなく、鱗片状、涙滴状、球状、針状、不規則形状のほか、不定形なものであってもよい。また、金属含有粉末としては、予め表面処理が施されたものであってもよい。
【0043】
本発明で用いる金属含有粉末のサイズは、特に限定されず、平均粒径が0.01μm以上、50μm未満であること好ましく0.02μm以上、40μm未満であることが好ましい。平均粒径が大きすぎると、本発明のポリエーテル系重合体組成物からなるシート表面の平坦性が低くなってしまう場合があり、これにより、接触抵抗(熱抵抗、電気抵抗)が高くなってしまう場合があり、一方、平均粒径が小さすぎると、ポリエーテル系重合体組成物中における、金属含有粉末同士の接触点が少なくなり、熱伝導性や電気伝導性が低下してしまう場合がある。
【0044】
本発明のポリエーテル系重合体組成物中における、金属含有粉末の含有量は、ポリエーテル系重合体100重量部に対し、200重量部以上であり、好ましくは300重量部以上、より好ましくは400重量部以上、さらに好ましくは500重量部以上である。また、その上限は、特に限定されないが、通常、2000重量部以下である。本発明のポリエーテル系重合体組成物によれば、金属含有粉末を、上記のように比較的多量に含有させた場合でも、ポリエーテル系重合体中に、金属含有粉末を良好に分散させることができるため、これにより、金属含有粉末同士の接触点を良好に確保することができるため、高い熱伝導率や高い電気伝導性などの金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができるものである。加えて、本発明のポリエーテル系重合体組成物によれば、金属含有粉末を、上記のように比較的多く含有させた場合でも、長期間経過した後においても、金属含有粉末同士の凝集を有効に抑制することができ、長期安定性に優れたものである。一方で、金属含有粉末の含有量が少なすぎると、高い熱伝導率や高い電気伝導性などの金属含有粉末の備える特性が十分に得られなくなってしまうものであり、特に、シート状に成形した場合に、顕著となる傾向にある。
【0045】
特に、従来においては、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末が備える特性を適切に発揮させるために、各種ポリマー中に、金属含有粉末を上記のように比較的多量に含有させても、金属含有粉末を良好に分散させることは一般的に困難であり、そのため、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末が備える特性を十分に発揮させることができなかったり、あるいは、そもそも所望の形状に成形することすら困難であるのが実状であった。また、金属含有粉末を良好に分散させることができても、長期間使用すると、金属含有粉末同士が凝集してしまい、結果として、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末が備える特性を十分に発揮させることができないものであった。これに対し、本発明によれば、マトリックスポリマーとして、上述した特定のポリエーテル系重合体を用いることにより、このような問題を有効に解決するものである。
【0046】
<ポリエーテル系重合体組成物の製造方法>
本発明のポリエーテル系重合体組成物は、上述したポリエーテル系重合体と、上述した金属含有粉末とを混合することにより製造することができる。ポリエーテル系重合体と、金属含有粉末とを混合する方法としては、特に限定されないが、ミルや自動乳鉢、混練機によりせん断力を加えて混合する方法や、超音波により混合する方法などの公知の混合方法を採用することができる。
【0047】
また、ポリエーテル系重合体と、金属含有粉末とを混合する際には、溶媒中で混合を行ってもよい。溶媒中で混合を行う場合において、用いる溶媒としては、特に限定されないが、ポリエーテル系重合体中に、金属含有粉末をより良好に分散させることができるという観点から、極性溶媒が好適に用いられる。極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アニソールなどのエーテル;酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル;アセトン、2−ブタノン、アセトフェノンなどのケトン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒;エタノール、メタノール、水などのプロトン性極性溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒の使用量は、特に限定されないが、溶媒中における、ポリエーテル系重合体と、金属含有粉末との合計の含有割合が0.1〜80重量%となる範囲とすればよい。
【0048】
ポリエーテル系重合体と、金属含有粉末とを溶媒中で混合させる方法としては、特に限定されず、金属含有粉末を溶媒中に懸濁させてなる懸濁液に、ポリエーテル系重合体を加えて混合を行う方法を採用してもよいし、あるいは、ポリエーテル系重合体を溶媒に溶解させてなる溶液に、金属含有粉末を加えて混合を行う方法を採用してもよい。混合は、一般的に使用される攪拌器を用いて攪拌することによって行ってもよいし、あるいは、超音波分散器を用いて混合してもよい。混合により得られる溶液は、そのまま本発明のポリエーテル系重合体組成物として使用することもできるが、溶媒を除去して用いることが好ましい。溶媒を除去する方法は特に限定されず、たとえば、蒸発除去させてもよいし、あるいは、凝固乾燥してもよい。
【0049】
あるいは、ポリエーテル系重合体と、金属含有粉末とを、溶媒を用いずに混合させる場合には、たとえば、金属含有粉末に対して、ポリエーテル系重合体を加えて混合を行う方法を採用してもよいし、あるいは、ポリエーテル系重合体に対して、金属含有粉末を加えて混合を行う方法を採用してもよい。この場合においては、混合は、一般的に使用される混練機や攪拌器を用いて行ってもよいし、あるいは、ミルや自動乳鉢を用いて行ってもよい。
【0050】
<その他成分>
また、本発明のポリエーテル系重合体組成物には、ポリエーテル系重合体、および金属含有粉末に加えて、その他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、上述した特定のポリエーテル系重合体以外のポリマー材料;ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維;有機溶媒;イオン液体;などを挙げることができる。また、ポリエーテル系重合体が架橋性の単量体単位を有する場合には、架橋剤を含有させることで、架橋可能な組成物としてもよく、この場合には、必要に応じて架橋助剤や架橋促進剤を含有させてもよい。特に、本発明のポリエーテル系重合体組成物を架橋可能な組成物とし、これを架橋して架橋物とすることにより、本発明の作用効果、具体的には、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期安定性に優れたものとすることができるという効果を適切に維持しながら、構造材料としての機械強度を向上させることができる。架橋剤としては、用いる架橋性の単量体単位の構造などに応じて選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0051】
また、上述した特定のポリエーテル系重合体以外のポリマー材料としては、特に限定されず、たとえば、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムなどのゴム材料;スチレンイソプレンスチレン、スチレンブタジエンスチレン、スチレンエチレンブタジエンスチレンなどの熱可塑性エラストマー材料;PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABS、塩化ビニル、PETなどの樹脂材料;エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、熱・光硬化性明アクリレート樹脂などの光または熱硬化樹脂;などを挙げることができる。
【0052】
以上のような本発明のポリエーテル系重合体組成物によれば、上述した特定のポリエーテル系重合体100重量部に対し、200重量部以上の金属含有粉末を配合してなるものであり、本発明のポリエーテル系重合体組成物によれば、ポリエーテル系重合体中に、金属含有粉末を良好に分散させることができるものであることから、高い熱伝導率や高い電気伝導性など金属含有粉末の備える各種特性を適切に発揮させることができ、しかも、長期間経過した後においても、金属含有粉末同士の凝集を有効に抑制することができ、長期安定性に優れたものである。特に、本発明のポリエーテル系重合体組成物は、シートに良好に加工することができることができるものであり、そのため、シート状に成形して用いることで、高い熱伝導率を有し、長期安定性に優れた放熱用のシートや、高い電気伝導性を有し、長期安定性に優れた導電性のシートなどの各種シートなどとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0054】
(1)ポリエーテル系重合体の繰り返し単位数、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
カチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン換算値として、ポリエーテル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、測定器としてはHLC−8320(東ソー社製)を用い、カラムはTSKgelα−M(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。また、得られた数平均分子量を、ポリエーテル系重合体を構成する繰り返し単位の分子量で除すことにより、繰り返し単位数を算出した。
なお、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の数平均分子量は、次のように求めた。すなわち、まず、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の繰り返し単位の平均分子量と、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の平均分子量、および下記(2)により求めたカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率とから、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量を求めた。そして、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の繰り返し単位数と、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量とを乗じることにより得られた値を、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の数平均分子量とした。
また、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体の分子量分布は、カチオン性基を導入する前のカチオン性基を含有しないポリエーテル系重合体の分子量分布から変化していないものとして、そのまま用いた。
【0055】
(2)ポリエーテル系重合体の構造およびカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率
ポリエーテル系重合体の構造、およびカチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、以下のように測定した。すなわち、まず、試料となるポリエーテル系重合体30mgを、1.0mLの重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに加え、1時間振蕩することにより均一に溶解させた。そして、得られた溶液についてNMR測定を行って、H−NMRスペクトルを得て、定法に従いポリエーテル系重合体の構造を帰属した。
また、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、次の方法により算出した。すなわち、まず、主鎖のオキシラン単量体単位に由来するプロトンの積分値から全オキシラン単量体単位のモル数B1を算出した。次に、カチオン性基に由来するプロトンの積分値から、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位のモル数B2を算出した。そして、B1に対するB2の割合(百分率)を、カチオン性基含有ポリエーテル系重合体中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率として求めた。
【0056】
(3)熱伝導率
各重合体組成物の熱伝導率を、各重合体組成物を製造してから5日経過した後のものを用いて、熱伝導率測定装置(「MentorGraphics DynTIM Tester」、メンター・グラフィックス・ジャパン社製)により、次の方法により測定した。すなわち、まず、試料となる各重合体組成物を、φ12.8mmのサイズの円板状試験片として、サンプル厚さが0.1mm〜1.0mmの範囲となるように、ハンドプレスにて厚さを調整することで、厚みの異なる複数の測定サンプルを得た。そして、得られた測定サンプルを、熱伝導率測定装置の加熱部と測定部との間に挟み込み、加熱部と測定部の間の測定温度差を10℃とし、大気下25℃の測定環境にて、厚み方向について熱抵抗を測定し、そして、この熱抵抗測定を、厚みの異なる複数の測定サンプルに対して行い、得られた測定結果を一次の近似式にてプロットすることにより、熱伝導率を算出した。
また、上記熱伝導率の測定を、各重合体組成物を作製して5日経過した後に加え、2か月間経過後においても行い、これらを比較することで、長期安定性についても確認した。
【0057】
(4)電気伝導性
各重合体組成物の電気伝導性は、各重合体組成物を製造してから5日経過した後のものを用いて、低抵抗率計(「ロレスタ−GP」、三菱化学アナリテック社製、四探針プローブとしてPSPプローブを使用)により、JIS K 7194に準拠して、次の方法により測定した。まず、試料となる各重合体組成物1.0gを、温度100℃〜150℃、圧力0.1〜1.0MPaの範囲でプレス成形し、厚さ100〜500μmの薄膜状にした後、10×10mmの正方形状に切り出し、これを測定サンプルとした。そして、得られた測定サンプルを、低抵抗率計の絶縁ボード上に固定し、測定サンプルの一方の面(A面)の中心にプローブを押し当てた後、10Vの電圧をかけて測定サンプルの抵抗値を測定した。そして、測定により得られた抵抗値、測定サンプル寸法、および測定位置に基づき、低抵抗率計に内蔵されている演算式を利用して、表面抵抗(単位:Ω/□)を求めた。本測定においては、この測定を、測定サンプルのもう一方の面(B面)についても同様に行い、A面およびB面について測定された表面抵抗の平均値を算出し、得られた平均値を、測定サンプルの表面抵抗とした。
また、上記表面抵抗の測定を、各重合体組成物を作製して5日経過した後に加え、2か月間経過後においても行い、これらを比較することで、長期安定性についても確認した。
【0058】
(5)長期保存後の分散性
各重合体組成物について、分散状態の維持性を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)による形態観察を行うことで、長期安定性の評価を行った。具体的には、上記形態観察により、以下の基準で、長期保存後の分散性を評価した。長期保存後の分散性に優れるほど、長期安定性に優れるものと判断できる。
◎:重合体組成物を作製してから、2か月間経過しても、マトリックスポリマーと金属含有粉末とが良好な分散状態を保持していた。
○:重合体組成物を作製してから、1週間は良好な分散状態を示したものの、2か月間経過後には、わずかではあるが、マトリックスポリマーと金属含有粉末との分散状態が低下していた。
×:重合体組成物を作製した際に、シート化させることができず、粉末状の形態となった。あるいは、重合体組成物を作製した際に、シート化することは可能であったが、作製してから5日後には、金属含有粉末の凝集が認められた。
【0059】
〔製造例1〕
(ポリエーテル系重合体Aの合成)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.161gとトルエン100mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.086g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して1.5当量)をノルマルヘキサン10mlに溶解したものを添加して、15分間反応させて、触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン35.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。12時間反応後、重合反応液に少量の水を注いで反応を停止した。得られた重合反応液を0.1Nの塩酸水溶液で洗浄することにより触媒残渣の脱灰処理を行い、さらにイオン交換水で洗浄した後に、有機相を50℃で12時間減圧乾燥した。これにより得られた水あめ状物質の収量は34.5gであった。また、得られた水あめ状物質のGPCによる数平均分子量(Mn)は70,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約760であった。以上より、得られた水あめ状物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位により構成されたポリエーテル系重合体Aであると同定された。
【0060】
〔製造例2〕
(イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bの合成)
製造例1で得られたポリエーテル系重合体A 5.0gと、1−メチルイミダゾール12.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体6.8gが得られた。この固体について、H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル系重合体A(ポリエピクロロヒドリン)の、繰り返し単位におけるクロロ基の一部が対アニオンとして塩化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が対アニオンとして臭化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、それぞれ置換された、対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’であると同定された。また、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、40モル%であった。
【0061】
そして、上記にて得られた対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’ 2.5gと、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、ゴム状物質3.8gが得られた。得られたゴム状物質についてH−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B’の、塩化物イオンと臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bであると同定された。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Bの数平均分子量(Mn)は175,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約760であった。また、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、40モル%であった。
【0062】
〔製造例3〕
(イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの合成)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.161gとトルエン100mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.086g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して1.5当量)をノルマルヘキサン10mlに溶解したものを添加して、15分間反応させて、触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン23.0g、およびグリシジルメタクリレート2.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。12時間反応後、重合反応液に少量の水を注いで反応を停止した。得られた重合反応液を0.1Nの塩酸水溶液で洗浄することにより触媒残渣の脱灰処理を行い、さらにイオン交換水で洗浄した後に、有機相を50℃で12時間減圧乾燥した。これにより得られた水あめ状の物質の収量は24.9gであった。また、得られた水あめ状の物質のGPCによる数平均分子量(Mn)は39,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約370であった。以上より、得られた水あめ状の物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位およびグリシジルメタクリレート単位により構成されたポリエーテル系重合体C’’であると同定された。なお、ポリエーテル系重合体C’’の単量体組成比は、エピクロロヒドリン単量体単位93.5モル%、およびグリシジルメタクリレート単量体単位6.5モル%であった。
【0063】
次いで、上記にて得られたポリエーテル系重合体C’’ 5.0gと、1−メチルイミダゾール12.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体8.8gが得られた。この固体について、H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル系重合体C’’の、繰り返し単位中に含まれるクロロ基全てが対アニオンとして塩化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が対アニオンとして臭化物イオンを有する1−メチルイミダゾリウム基に、それぞれ置換された、対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’であると同定された。
【0064】
そして、上記にて得られた対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’ 2.5gと、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、ゴム状物質5.4gが得られた。得られたゴム状物質についてH−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である対アニオンとしてハロゲン化物イオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C’の、塩化物イオンと臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cであると同定された。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの数平均分子量(Mn)は150,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は約370であった。また、イミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体Cの単量体組成比は、イミダゾリウム構造含有単量体単位93.5モル%、およびグリシジルメタクリレート単量体単位6.5モル%であり、上記方法にしたがって、カチオン性基としての1−メチルイミダゾリウム基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ、93モル%であった。
【0065】
〔実施例1〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体A 100部、金属含有粉末として、酸化亜鉛粉末(関東化学社製、平均粒子径5〜10μm)407部、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部、溶剤として、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)714部を自動乳鉢に投入し、室温で30分間混合を行った。そして、得られた組成物を加熱しながら、さらに混合を行った後、真空乾燥機に入れて0.01MPa以下、60℃、12時間以上の条件下でさらに乾燥させることで、ゴム状の重合体組成物を得た。次いで、得られたゴム状の重合体組成物を30×30×0.5mmの金型に入れて、120℃、5MPaでプレスすることでシート状の放熱用重合体組成物を得た。そして、得られたシート状の放熱用重合体組成物を用いて、上記方法にしたがって、熱伝導率、および長期保存後の分散性の各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例2〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例2で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体B 100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
〔実施例3〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)207部を使用した以外は、実施例2と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例4〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C 100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例5〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)207部を使用した以外は、実施例4と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
〔実施例6〕
製造例1にて得られたポリエーテル系重合体Aの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル系重合体C 100部を使用するとともに、酸化亜鉛粉末および銅粉末の代わりに、窒化ホウ素粉末(デンカ社製、平均粒子径10〜18μm)300部を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例1〕
酸化亜鉛粉末の使用量を407部から52部に、銀粉末の使用量を207部から48部に、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして、シート状の放熱用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
〔比較例2〕
製造例2にて得られたポリエーテル系重合体Bの代わりに、液状ブタジエンゴム(Aldrich社製、数平均分子量:3,000、分子量分布:1.5)100部を使用するとともに、溶剤として、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)の代わりに、トルエン714部を使用した以外は、実施例3と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例2で得られた放熱用重合体組成物は、グリース状であり、そのため、シート状に成形することはできなかった。なお、比較例2で得られた放熱用重合体組成物は、製造直後はグリース状であったが、時間経過とともに酸化亜鉛粉末および銀粉末が凝集してしまい、5日後には粉末状に変化してしまった。そして、このような粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例2においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0073】
〔比較例3〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、液状シリコーンゴム(Gelest社製、数平均分子量:6,000、分子量分布:2.1)100部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例3で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例3においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0074】
〔比較例4〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、高分子量スチレンブタジエンゴム(数平均分子量250,000、分子量分布:2.6)100部を使用するとともに、銀粉末の代わりに、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例4で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例4においては、2ヶ月経過後の円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0075】
〔比較例5〕
液状ブタジエンゴムの代わりに、高分子量シリコーンゴム(数平均分子量:63,000、分子量分布:2.3)100部を使用するとともに、銀粉末の代わりに、銅粉末(Aldrich社製、平均粒子径14〜25μm)207部を使用した以外は、比較例2と同様にして、放熱用重合体組成物を得た。なお、比較例5で得られた放熱用重合体組成物は、粉末状に凝集してしまい、そのため、シート状に成形することはできなかった。そして、得られた粉末状の放熱用重合体組成物について、上記方法にしたがって、各測定・評価を行った。なお、比較例5においては、作製5日後および2ヶ月経過後のいずれにおいても円板状試験片を用いて、熱伝導率の測定を試みたが、形状維持が困難であり測定することができなかった。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
〔放熱用重合体組成物としての評価(実施例1〜6、比較例1〜5)〕
表1、表2に示すように、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100部に対し、金属含有粉末を200部以上含有してなるポリエーテル系重合体組成物によれば、シート状に良好に加工することが可能であり、しかも、製造後5日後の熱伝導率が高く、熱伝導率に優れるものであり、さらには、2ヶ月後においても熱伝導率を良好に保つことができるとともに、長期保存後の分散性も良好であり、長期保存安定性にも優れるものであり、そのため、放熱用のシート用途に好適に用いることのできるものであった(実施例1〜6)。
【0079】
一方、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体を使用したものの、金属含有粉末の配合量が200部未満である場合には、得られるシート状の組成物は、熱伝導率に極めて劣るものであった(比較例1)。
また、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体の代わりに、それぞれ、液状ブタジエンゴム、液状シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、およびシリコーンゴムを使用した場合には、各重合体と金属含有粉末との分散性が悪く、いずれもシート状に成形することができず、さらには、熱伝導率および長期保存安定性にも劣るものであった(比較例2〜5)。
【0080】
〔実施例7〕
銅粉末の使用量を207部から900部に変更し、かつ、酸化亜鉛粉末を配合しなかった以外は、実施例2と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得た。そして、得られたシート状の導電用重合体組成物を用いて、上記方法にしたがって、電気伝導率、および長期保存後の分散性の各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
〔実施例8〕
銅粉末の代わりに、銀粉末(Aldrich社製、平均粒子径5〜8μm)900部を使用した以外は、実施例7と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
〔実施例9〕
製造例2にて得られたポリエーテル系重合体Bの代わりに、製造例3で得られたイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 100部を使用した以外は、実施例8と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0083】
〔比較例6〕
銀粉末の使用量を900部から100部に変更した以外は、実施例8と同様にして、シート状の導電用重合体組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
〔導電用重合体組成物としての評価(実施例7〜9、比較例6)〕
表3に示すように、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体100部に対し、金属含有粉末200部以上を含有してなるポリエーテル系重合体組成物によれば、シート状に良好に加工することが可能であり、しかも、製造後5日後の表面抵抗が低く、電気伝導性に優れるものであり、さらには、2ヶ月後においても表面抵抗を低く保つことができるとともに、長期保存後の分散性も良好であり、長期保存安定性にも優れるものであり、そのため、電気伝導性のシート用途に好適に用いることのできるものであった(実施例7〜9)。
【0086】
一方、オキシラン単量体単位を含有するポリエーテル系重合体を使用したものの、金属含有粉末の配合量が200部未満である場合には、得られるシート状の組成物は、表面抵抗が極めて高くなり、導電性が極めて低いものであった(比較例6)。