(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、まず、本実施形態の積層体の積層構成について説明する。
【0016】
本発明に係る積層体は、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)と、前記トレンチに積層された金属粒子層(B)と、前記トレンチ内かつ前記金属粒子層(B)上に積層された金属めっき層(C)とを有する。
【0017】
本明細書において、トレンチとは、一方の面側に形成され、他方の面まで貫通していないライン状の溝のことをいう。本明細書において、一方の面側から他方の面まで貫通している貫通孔(例えば、ビアホール)は、トレンチに相当しない。すなわち、前記貫通孔を有していても、前記トレンチを有さない積層体は、本発明に係る積層体に相当しない。なお、本発明に係る積層体は、トレンチ以外に、前記貫通孔等を備えていてもよい。
【0018】
本発明に係る積層体は、少なくとも、一部のトレンチに金属めっき層(C)が形成されていればよく、すべてのトレンチに金属めっき層(C)が形成されていなくてもよい。また、本発明に係る積層体は、すべてのトレンチに金属めっき層(C)が形成されていてもよい。
【0019】
本明細書において、金属めっき層(C)の上面は、絶縁層(A)の上面と面一となっていてもよく、絶縁層(A)の上面よりも高くなっていてもよく、絶縁層(A)の上面よりも下側であってもよい。つまり、金属めっき層(C)は、トレンチ内全体に形成されていてもよく、トレンチ内の一部にのみ形成されていてもよい。ただし、配線として利用する観点から、金属めっき層(C)の上面は、絶縁層(A)の面と面一となっていることが好ましい(例えば、
図1参照)。また、本発明に係る積層体は、トレンチが複数本存在し、複数本のトレンチが平行に配置されている箇所が存在していてもよい(例えば、
図1参照)。以下、具体例につき説明する。
【0020】
なお、以下に説明する実施形態では、積層体が、基材と、絶縁層(A)と、プライマー層(D)と、金属粒子層(B)と、バリアメタルめっき層(E)と、金属めっき層(C)とを備える場合について説明するが、本発明に係る積層体は、少なくとも、絶縁層(A)と、金属粒子層(B)と、金属めっき層(C)とを有すればよい。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面模式図である。
図1に示すように、積層体10は、基材12と、絶縁層14と、プライマー層16と、金属粒子層18と、バリアメタルめっき層20と、金属めっき層22とを有する。基材12としては特に限定されないが、絶縁層14を形成する際の支持体となるものが好ましく、例えば、シリコンウエハやチップ等が挙げられる。また、基材12は、可撓性を有していてもよい。
【0022】
絶縁層14の上面14aには、トレンチ15が形成されている。トレンチ15の底面15a上及びトレンチ15の側壁15b上には、プライマー層16が形成されている。底面15a上のプライマー層16の厚さと、側壁15b上のプライマー層16の厚さは、同程度となっている。
【0023】
プライマー層16上には、プライマー層16に沿うように金属粒子層18が形成されている。底面15a上の金属粒子層18の厚さと、側壁15b上の金属粒子層18の厚さは、同程度となっている。
【0024】
金属粒子層18上には、金属粒子層18に沿うようにバリアメタルめっき層20が形成されている。底面15a上のバリアメタルめっき層20の厚さと、側壁15b上のバリアメタルめっき層20の厚さは、同程度となっている。
【0025】
バリアメタルめっき層20上には、トレンチ15内を充填するように金属めっき層22が形成されている。本実施形態では、金属めっき層22の上面は、絶縁層14の上面14aと面一となっている。
【0026】
絶縁層14は、本発明の絶縁層(A)に相当する。プライマー層16は、本発明のプライマー層(D)に相当する。金属粒子層18は、本発明の金属粒子層(B)に相当する。バリアメタルめっき層20は、本発明のバリアメタルめっき層(E)に相当する。金属めっき層22は、本発明の金属めっき層(C)に相当する。
【0027】
トレンチ15のサイズは、積層体の用途に応じて適宜設定できる。例えば、複数のトレンチ15(金属めっき層22)を高集積化する観点からは、配線として使用できる範囲内で小さいことが好ましい。一方、高電圧、高電流に耐え得ることが要求される場合には、ある程度の大きさのサイズが必要となる。
以上の観点から、トレンチ15の深さdは、0.5μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下がさらに好ましい。また、トレンチ15の幅wは0.5μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下がさらに好ましい。
【0028】
積層体10のように、トレンチ15が複数本存在する場合、複数のトレンチ15間の距離aは特に限定されないが、0.5μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下がさらに好ましい。特に、本実施形態のように、バリアメタルめっき層20を有する場合、バリアメタルめっき層20は、金属めっき層22の金属が絶縁層14に拡散するのを防止することができる。このことは、実施例からも明らかである。従って、トレンチ15間の距離aを狭くしても絶縁が破壊されず、トレンチ15間で短絡することを防止できる。以上の観点から、複数のトレンチ15間の距離aは、0.5μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下がさらに好ましい。また、トレンチ15の幅wは0.5μm以上1000μm以下が好ましく、0.5μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、トレンチ15間の距離aとは、一方のトレンチ15の側壁15aから最も近い他方のトレンチ15の側壁15aまでの距離をいう。
【0029】
積層体10の用途は、特に限定されないが、例えば、金属めっき層22を配線とする配線層として利用できる。
【0030】
積層体10は、後述するように、絶縁層(A)に形成されたトレンチに、金属粒子を含有する分散液(b)を塗布して金属粒子層(B)を形成し、その後、めっき処理を行い、前記金属粒子層(B)上に金属めっき層(C)を形成することにより得ることができる。つまり、積層体10は、トレンチに金属層(金属めっき層(C))を形成するために大がかりな真空設備を必要としない。また、金属層を形成する前に逆スパッタ処理をする必要もない。また、バリアメタルめっき層20を有するため、トレンチ15間の金属拡散を防止でき、距離aを狭くしてもトレンチ15間の短絡を防止できる。このことは、実施例からも明らかである。
【0031】
以上、本実施形態の積層体の積層構成の一例について説明した。
【0032】
次に、本実施形態の積層体が備える各層について説明する。
【0033】
[絶縁層(A)]
絶縁層(A)は、絶縁樹脂により形成されており、トレンチが形成された面を有する。前記絶縁樹脂としては、電気絶縁性を有していれば、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂、セルロースナノファイバー等が挙げられる。
また、前記絶縁樹脂は、感光性樹脂であってもよく、例えば、ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂等が挙げられる。これらの感光性樹脂は、ポジ型であってもネガ型であってもよい。また、感光性樹脂にパターン光を照射することにより、パターン化した前記絶縁層(A)が形成できる。さらに、前記絶縁層(A)をより強靱にできることから、パターン化後に熱硬化させることが好ましい。
【0034】
前記絶縁層(A)としては、当該積層体を用いて得られる最終製品の軽量化及び薄型化を実現する観点から、1μm以上200μm以下程度の厚さのものを使用することが好ましい。
【0035】
[プライマー層(D)]
前記トレンチの底面上及び前記トレンチの側壁上には、プライマー層(D)が設けられていてもよい。前記プライマー層(D)は、前記絶縁層(A)と金属粒子層(B)との密着性を高めることを目的として設けられている層である。
【0036】
前記プライマー層(D)を構成する材料としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
前記プライマー層(D)は、前記プライマー層(D)を形成するためのプライマー組成物(d)を塗布、乾燥等することによって形成することができる。
【0038】
前記プライマー組成物(d)としては、前記材料と溶媒とを含有するものを使用することができる。
【0039】
前記溶媒としては、各種有機溶剤、水性媒体を使用することができる。
【0040】
前記プライマー層(D)は、当該積層体を使用する用途等によって異なるが、例えば、0.01μm以上300μm以下の厚さであることが好ましく、0.01μm以上20μm以下の厚さであることがより好ましい。
【0041】
[金属粒子層(B)]
金属粒子層(B)は、前記絶縁層(A)上に直接に、又は、前記プライマー層(D)を介して前記絶縁層(A)上に積層されている。前記金属粒子層(B)を構成する金属としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、粒子表面が酸化されにくいこと、無電解めっき触媒としての活性が高いこと、導電性が高い金属であること、金属めっき層(C)を形成しやすいことから、銀が好ましい。
【0042】
[バリアメタルめっき層(E)]
前記金属粒子層(B)上には、バリアメタルめっき層(E)が設けられていてもよい。前記バリアメタルめっき層(E)は、金属めっき層(C)の金属が拡散するのを防止することを目的として設けられる層である。前記バリアメタルめっき層(E)を構成する金属としては、ニッケル、ニッケル−モリブデン、ニッケル−モリブデン−ホウ素、ニッケル−モリブデン−リン、クロム、コバルト、コバルト−リン、モリブデン、コバルト−タングステン−リン、コバルト−タングステン−ホウ素等が挙げられる。
【0043】
[金属めっき層(C)]
金属めっき層(C)は、前記金属粒子層(B)上に直接に、又は、前記バリアメタルめっき層(E)を介して前記金属粒子層(B)上に積層されている。前記金属めっき層(C)を構成する金属としては、銅、金、銀、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、前記金属めっき層(C)を配線用途として用いる場合は、比較的低コストで、導電性が高いことから、銅が好ましい。
【0044】
[金属粒子層(B)とプライマー層(D)との組み合わせ]
プライマー層(D)を有する構成とする場合、金属粒子層(B)とプライマー層(D)との組み合わせとしては、金属粒子層(B)として、塩基性窒素原子含有基を有する化合物(b1)及び金属粒子(b2)を含有する層を採用し、プライマー層(D)として、官能基[X]を有する化合物(d1)を含有する層を採用することが好ましい。このような構成とすることにより、金属粒子層(B)に含まれる前記化合物(b1)が有する塩基性窒素原子含有基と、前記プライマー層(D)に含まれる前記化合物(d1)が有する官能基[X]とが反応して結合を生成し、絶縁層(A)と金属めっき層(C)との間の密着性をより高めることができる。
【0045】
前記化合物(b1)が有する塩基性窒素原子含有基としては、例えばイミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
【0046】
前記化合物(b1)として複数の塩基性窒素原子含有基を分子中に有するものを使用する場合、前記塩基性窒素原子含有基の一方は、前記金属粒子層(B)を形成した際に、プライマー層(D)に含まれる化合物(d1)の官能基[X]との結合に関与し、他方は、金属粒子層(B)中の銀等の金属粒子(b2)との相互作用に寄与することが、前記金属粒子層(B)と前記プライマー層(D)との密着性を向上するうえで好ましい。
【0047】
前記金属粒子(b2)としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。また、これらの中でも、銅、銀及び金は、導電性が高いことから好ましく、さらに銀は、比較的安価であること、粒子表面が酸化されにくいこと、無電解めっき触媒としての活性が高いことからより好ましい。
【0048】
前記官能基[X]としては、ケト基、エポキシ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、アルキルハライド基、アクリロイル基、シアナマイド基、尿素結合、アシルハライド基等が挙げられる。前記ケト基は、ケトン由来のカルボニル基を指す。前記イソシアネート基は、常温下での反応を防止する観点から、ブロック化剤によって封止されていてもよい。
【0049】
なかでも、官能基[X]としては、前記化合物(b1)の塩基性窒素原子含有基と反応した際に、ハロゲン、酸、アミン等の副生成物の生成を防止する観点から、ケト基、エポキシ基、酸基、アルキロールアミド基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0050】
前記官能基[X]を有する化合物(d1)としては、例えば前記官能基[X]を有する樹脂を使用することができる。前記官能基[X]を有する樹脂としては、具体的には、前記官能基[X]を有するウレタン樹脂、前記官能基[X]を有するビニル樹脂、前記官能基[X]を有するウレタン−ビニル複合樹脂、前記官能基[X]を有するエポキシ樹脂、前記官能基[X]を有するイミド樹脂、前記官能基[X]を有するアミド樹脂、前記官能基[X]を有するメラミン樹脂、前記官能基[X]を有するフェノール樹脂、前記官能基[X]を有するポリビニルアルコール、前記官能基[X]を有するポリビニルピロリドン等を使用することができる。なかでも、前記官能基[X]を有するウレタン樹脂、前記官能基[X]を有するビニル樹脂、及び、前記官能基[X]を有するウレタン−ビニル複合樹脂からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0051】
前記プライマー層(D)は、支持体の表面に、官能基[X]を有する化合物(d1)を含有するプライマー組成物(d)を塗布、乾燥等することによって形成された塗膜中に存在する前記化合物(d1)の官能基[X]が、前記金属粒子層(B)に含まれる前記化合物(b1)の塩基性窒素原子含有基と反応することによって結合を形成する。
【0052】
前記プライマー層(D)は、その表面に、前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物(b1)及び金属粒子(b2)等を含有する分散液(b)が接触した際、乾燥、加熱等の工程を経ることで、前記化合物(b1)が有する塩基性窒素原子含有基と、前記塗膜に含まれる前記化合物(d1)が有する官能基[X]とを反応させて結合を形成することによって、前記金属粒子層(B)とプライマー層(D)とからなる積層構造を形成する。
【0053】
これにより、前記金属粒子層(B)とプライマー層(D)との界面で優れた密着性を備えた積層体を得ることができる。
【0054】
前記プライマー層(D)は、官能基[X]を有する化合物(d1)を含有するプライマー組成物(d)を塗布し、乾燥等することによって形成されたものである。前記塗膜に含まれる化合物(d1)は、前記金属粒子層(B)に含まれる前記化合物(b1)の塩基性窒素原子含有基と反応する官能基[X]を有する。
【0055】
金属粒子層(B)とプライマー層(D)との組み合わせは、より詳細には、例えば、国際公開第2013/146195号等に開示されている。
【0056】
次に、本実施形態に係る積層体10(
図1参照)の製造方法について、説明する。
図2〜
図5は、本実施形態に係る積層体の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0057】
[積層体の製造方法]
本実施形態に係る積層体の製造方法においては、
図2に示すように、まず、トレンチ15が形成された面14aを有する絶縁層14を準備する(工程(1))。準備する絶縁層14は、トレンチ15以外に貫通孔等が形成されていてもよい。なお、絶縁層14は、
図2に示す基材12上に形成されていてもよく、絶縁層14単体であってもよい。
【0058】
トレンチ15が形成された絶縁層14は、トレンチが形成されていない絶縁層を準備し、この絶縁層にトレンチを形成することにより得ることができる。トレンチが形成されていない絶縁層へのトレンチの形成方法としては、例えば、ナノインプリント法(「型押し加工法」ともいう。)やスクリーン印刷法を採用することができる。また、絶縁層(A)の材料として感光性樹脂を用いる場合には、前記トレンチは、例えば、感光性樹脂を硬化させる前の未硬化層に、所望のパターンマスクを通して露光、現像することにより、トレンチが形成された未硬化層とし、さらに、前記未硬化層を熱硬化させることにより得ることができる。なお、前記感光性樹脂は、ポジ型感光性であっても、ネガ型感光性であってもよい。
【0059】
次に、必要に応じて、絶縁層14に、プライマー組成物(d)を塗布し、プライマー組成物(d)に含まれる溶媒を乾燥等により除去することによって、プライマー層16(
図3参照)を形成する(工程(1−1))。具体的には、トレンチ15の底面15a及び側壁15bに沿うように絶縁層14を形成する。
なお、金属粒子層18及びプライマー層16として上記で説明した特定の組み合わせを採用する場合、プライマー層16は、絶縁層14に、プライマー組成物(d)を塗布し、必要に応じて乾燥等することによって、プライマー層16を設け、前記塗膜の表面に、前記塩基性窒素原子含有基を有する化合物(b1)及び前記金属粒子(b2)を含有する分散液(b)を塗布した後、焼成等の加熱工程を経ることによって製造することができる。
【0060】
前記プライマー組成物(d)を絶縁層14の表面に塗布する方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、反転印刷法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等の方法が挙げられる。
【0061】
次に、トレンチ15に、金属粒子を含有する分散液(b)を塗布し、金属粒子層18(
図4参照)を形成する(工程(2))。プライマー層16を形成している場合は、プライマー層16に沿うように金属粒子層18を形成する。プライマー層16を形成していない場合は、絶縁層14(トレンチ15の底面15a及び側壁15b)に沿うように金属粒子層18を形成する。
【0062】
金属粒子層18の形成に用いる前記金属粒子の形状は、粒子状又は繊維状のものが好ましい。また、前記金属粒子の大きさはナノサイズのものが好ましい。具体的には、前記金属粒子の形状は、粒子状の場合は、微細なパターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、平均粒子径が1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記金属粒子を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA−150」を用いることができる。
【0063】
一方、前記金属粒子の形状が繊維状の場合も、微細なパターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、繊維の直径は、5nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.1μm以上30μm以下がより好ましい。
【0064】
前記分散液(b)中の前記金属粒子の含有率は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、1質量%以上60質量%以下がより好ましく、さらに1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0065】
前記分散液(b)に配合される成分としては、前記金属粒子を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0066】
前記金属粒子を溶媒中に分散させるため、低分子量又は高分子量の分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1−オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記金属粒子層(B)と前記金属めっき層(C)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0067】
前記金属粒子を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記金属粒子100質量部に対し、0.01質量部以上50質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0068】
前記分散液(b)に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0069】
前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0070】
また、前記分散液(b)には、前記金属粒子、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
【0071】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0072】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0073】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0074】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0075】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0076】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0077】
前記分散液(b)の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、0.2mPa・s以上10,000mPa・s以下がより好ましい。また、前記分散液(b)を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗布する場合には、その粘度は5mPa・s以上20mPa・s以下が好ましい。
【0078】
プライマー層16の上に前記分散液(b)を塗布する方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、反転印刷法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等の方法が挙げられる。
【0079】
これらの塗布方法の中でも、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる0.01以上100μm以下程度の細線状でパターン化された金属粒子層18を形成する場合には、インクジェット法、反転印刷法を用いることが好ましい。
【0080】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを用いることができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
また、反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記分散液(b)を塗工し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する分散液(b)を前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記支持体(A)の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
【0082】
金属粒子層18の単位面積当たりの質量は、1mg/m
2以上30,000mg/m
2以下が好ましく、1mg/m
2以上5,000mg/m
2以下が好ましい。金属粒子層18の厚さは、金属めっき層22の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0083】
前記工程(2)の後、必要に応じて、金属粒子層18にバリアメタルめっき処理を行い、バリアメタルめっき層20(
図5参照)を形成する(工程(2−1))。具体的には、金属粒子層18の底面及び側壁1に沿うようにバリアメタルめっき層20を形成する。
【0084】
バリアメタルめっき層20は、無電解めっき処理、もしくは電解めっき処理により形成することができる。無電解めっき処理は、例えば、金属粒子層18に、ニッケル、クロム、コバルト等の無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる金属を析出させ、バリアメタル金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である
。
【0085】
バリアメタルめっき処理の還元剤として、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウムやアミンボランを還元剤として用いることで、前記ニッケル、クロム、コバルト等の金属にリン、ホウ素を含む合金膜を得ることができる。また、前記金属の無電解めっき液に、さらに、タングステン、モリブデン、レニウム、ルテニウム等の塩を添加した無電解めっき液を用いることで、これらの金属が共析したバリアメタルめっき層20を形成することができる。
【0086】
バリアメタルめっき処理は、上記の通り、電解めっき処理であっても良い。電解めっき処理には、ニッケル、クロム、コバルト等の電解めっきを用いることができる。
【0087】
次に、めっき処理を行い、トレンチ15内を充填するように、トレンチ15内かつ金属粒子層18上に金属めっき層22(
図1参照)を形成する(工程(3))。バリアメタルめっき層20を形成した場合には、バリアメタルめっき層20上にめっき処理を行い、金属めっき層22を形成する。また、バリアメタルめっき層20を形成しなかった場合には、金属粒子層18上にめっき処理を行い、金属めっき層22を形成する。
【0088】
金属めっき層22の形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、簡便に金属めっき層22を形成できる電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられる。また、これらのめっき法を組み合わせてもよい。例えば、無電解めっきを施した後、電解めっきを施して、金属めっき層22を形成してもよい。
【0089】
上記の無電解めっき法は、例えば、金属粒子層18、又は、バリアメタルめっき層20に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0090】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。また、金属めっき層20を導電層として用いる場合には、前記無電解めっき液の金属種としては、導電性の高い金属である銀、銅、金が好ましく、比較的安価な銅がより好ましい。
【0091】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0092】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0093】
前記無電解めっき液は、20℃以上98℃以下で用いることが好ましい。
【0094】
前記電解めっき法は、例えば、金属粒子層18、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)、又は、バリアメタルめっき層20の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した層(金属粒子層18、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)、又は、バリアメタルめっき層20)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0095】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の電解めっき液が挙げられる。また、金属めっき層22を導電層として用いる場合には、前記電解めっき液の金属種としては、導電性の高い金属である銀、銅、金が好ましく、比較的安価な銅がより好ましい。また、金属めっき層22を導電層として用いる場合には、めっき金属は、共析物の無い、純度の高いものが好ましい。
【0096】
前記電解めっき液は、20℃以上98℃以下で用いることが好ましい。
【0097】
金属めっき層22の形成方法としては、トレンチ15内に好適に金属めっき層22を形成するために、無電解めっき法及び電解めっき法を適宜選択又は組み合わせることができる。特に、前記トレンチ内全体に金属めっき層(C)を充填する場合は、無電解めっきを施した後、電解めっきを施す方法が好ましい。なお、金属めっき層22を形成すると、絶縁層(A)の表面全面に、金属めっき層が形成されることになる。この場合、必要に応じて、トレンチが形成されている部分以外の表面に形成された金属めっき層を除去して、絶縁層(A)を表出させてもよい。金属めっき層の除去方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、化学的機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)が挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[金属粒子の分散液(b)の調製]
エチレングリコール30質量部と、イオン交換水70質量部との混合溶媒に、分散剤としてポリエチレンイミンにポリオキシエチレンが付加した化合物を用いて平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによって、金属粒子と、反応性官能基として塩基性窒素原子含有基を有する高分子分散剤とを含有する金属粒子分散液を調製した。次いで、得られた金属粒子分散液に、イオン交換水、エタノール及び界面活性剤を添加して、その粘度を10mPa・sに調整することによって、金属粒子の分散液(b)を調製した。
【0100】
[プライマー層(D)用樹脂の製造]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ポリカーボネートポリオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸エステルとを反応させて得られる酸基当量1,000g/当量のポリカーボネートジオール)100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸9.7質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5質量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート51.4質量部を、メチルエチルケトン111質量部の混合溶剤中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0101】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にトリエチルアミンを7.3質量部加えることで、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部また又は全部を中和し、さらに水355質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタンプレポリマーの水性分散液を得た。
【0102】
次いで、前記水性分散液に、25質量%のエチレンジアミン水溶液を4.3質量部加え、攪拌することによって、粒子状のウレタンプレポリマーを鎖伸長させ、次いでエージング・脱溶剤することによって、固形分濃度30質量%のウレタン樹脂の水性分散液を得た。
【0103】
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、前記で得たウレタン樹脂の水分散液100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n−ブチル10質量部、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド30質量部を含有する単量体混合物と、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:0.5質量%)20質量部を別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら120分間かけて滴下し重合した。
【0104】
滴下終了後、同温度にて60分間攪拌し、その後、前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、ついで、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水を添加した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、反応性官能基としてカルボキシル基とN−n−ブトキシメチルアクリルアミド基を含有するプライマー層(D)用樹脂を得た。
【0105】
[プライマー層(D)用樹脂を含有するプライマー組成物(d)の調製]
前記プライマー層(D)用樹脂の製造で得られたプライマー層(D)用樹脂10質量部に、エタノール90質量部を攪拌混合し、プライマー層(D)用樹脂を含有する流動体(プライマー組成物(d))得た。
【0106】
[積層体の作製]
(実施例1)
非感光性のポリイミド前駆体樹脂(東レ株式会社製「セミコファイン SP−341」)をシリコンウエハ上にスピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)を用いて塗布した後、ホットプレートにて95℃で1分30秒間、125℃で1分30秒間の順で加熱し、膜厚5μmの絶縁層を得た。
ポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂(東レ株式会社製「フォトニース LT6300」)を、前記絶縁層上にスピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)を用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で3分間乾燥し、膜厚7μmの塗膜を得た。 次いで、線幅5μm、線間隔5μm、線長1000μmのパターンフォトマスクを通して露光した。なお、線間隔とは、トレンチ間の距離aのことをいい、一方の線と他方の線との間の絶縁層部分の長さをいう。
次いで、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液の現像液を180秒間スプレーし、次いで純水で30秒間洗浄した後、クリーンオーブンを用い、窒素雰囲気下で、50℃で30分間、110℃で30分間、200℃で60分間の順で加熱、硬化させることにより、深さ5μmのトレンチが形成された面を有する絶縁層(A)を得た。
【0107】
得られたトレンチを有する絶縁層(A)上に、上記で調整した金属粒子の分散液(b)を、スピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)で、金属粒子層としての乾燥後の平均膜厚が30nmになるように塗布した。すなわち、金属粒子の分散液(b)を、絶縁層(A)の底面、及び、側壁に金属粒子層としての乾燥後の平均膜厚が30nmになるように塗布した。80℃で30分間加熱し、前記絶縁層(A)表面全面に金属粒子層(B)を形成した。
【0108】
前記で形成した金属粒子層(B)を無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製「OICカッパー」、pH12.5)中に45℃で12分間浸漬し、無電解銅めっきを行い、前記絶縁層(A)表面全面に無電解めっきによる銅めっき層(膜厚0.2μm)を形成した。この無電解めっきによる銅めっき層は、金属めっき層(C)に相当する。
【0109】
前記銅めっき層をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度1.5A/dm
2で10分間電解めっきを行うことによって、前記絶縁層(A)表面全面に銅めっき膜を形成し、トレンチ内に銅を充填させた。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業株式会社製「トップルチナSF−M」)5ml/Lを用いた。この銅めっき層(電解めっき層)もまた、金属めっき層(C)に相当する。
【0110】
前記金属めっき層(C)の表層を化学的機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)することによって、トレンチ内に充填された以外の銅層を除去した。CMPは、研磨機(スピードファム株式会社製「18GPAW」)を用いて、ポリウレタン独立発泡タイプの研磨パッドで研磨圧力30kPa、定盤回転数50rpm、コロイダルシリカ溶液の研磨剤を使用して行った。
【0111】
以上の方法によって、絶縁層(A)に形成されたトレンチ内に金属粒子層(B)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0112】
(実施例2)
実施例1と同様にして、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)を得た。
【0113】
前記絶縁層(A)上に、プライマー層(D)用樹脂を含有するプライマー組成物(d)を、スピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)で、プライマー層としての乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布した。その後80℃で30分間加熱し、前記絶縁層(A)表面全面にプライマー層(D)を形成した。
【0114】
前記プライマー層(D)の表面に、実施例1と同様にして、金属粒子層(B)と金属めっき層(C)とを形成した後、実施例1と同様にして、CMPにてトレンチ内に充填した銅以外の銅層を除去した。
【0115】
以上の方法によって、絶縁層(A))に形成されたトレンチ内にプライマー層(D)、金属粒子層(B)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0116】
(実施例3)
実施例1で用いた無電解銅めっき液の代わりに、無電解ニッケル−ホウ素めっき液を用いて、無電解ニッケル−ホウ素めっき層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法によって、積層体を得た。この無電解ニッケル−ホウ素めっき層は、バリアメタルめっき層(E)に相当する。すなわち、実施例3では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。前記無電解ニッケル−ホウ素めっき液としては、奥野製薬工業株式会社製「トップケミアロイ66−LF」を用い、65℃で2分間浸漬して、膜厚0.2μmのニッケル−ホウ素めっき層を形成した。
【0117】
(実施例4)
実施例2で用いた無電解銅めっき液の代わりに、前記無電解ニッケル−ホウ素めっき液を用いて、ニッケル−ホウ素めっき層を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法によって、積層体を得た。このニッケルーホウ素めっき層は、バリアメタルめっき層(E)に相当する。すなわち、実施例4では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0118】
(実施例5)
実施例4で用いた無電解ニッケル−ホウ素めっき液の代わりに、金属粒子層(B)の銀の一部をパラジウム置換した後に無電解ニッケル−リンめっき液を用いて、ニッケル−リンめっき層を形成したこと以外は、実施例4と同様の方法によって、積層体を得た。このニッケルーリンめっき層は、バリアメタルめっき層(E)に相当する。すなわち、実施例5では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0119】
前記パラジウム置換の方法としては、イオン交換水80質量部に、塩化パラジウム3質量部と36質量%の塩酸17質量部とを溶解して、パラジウムイオン及び酸を含有する水溶液を調製して、45℃に設定し、絶縁層(A)、プライマー層(D)、及び、金属粒子層(B)の積層物を、このパラジウムイオン水溶液に浸漬し、金属粒子層(B)の銀の一部をパラジウムに置換させた。
【0120】
前記無電解ニッケル−リンめっき液としては、株式会社JCU製「エルフシード ES−500」を用い、40℃で10分間浸漬して、膜厚0.2μmのニッケルーリンめっき層を形成した。
【0121】
(実施例6)
実施例5で用いた無電解ニッケル−リン素めっき液の代わりに、無電解コバルトめっき液を用いて、コバルトめっき層を形成したこと以外は、実施例5と同様の方法によって、積層体を得た。このコバルトめっき層は、バリアメタルめっき層(E)に相当する。すなわち、実施例6では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0122】
前記無電解コバルトめっき液としては、硫酸コバルト2質量部、クエン酸6質量部、タングステン酸5質量部、ジメチルアミンボラン0.3質量部を含有し、水酸化テトラメチルアンモニウムでpH値を9.5に調整した液を用い、60℃で35分間浸漬して、膜厚0.2μmのコバルトめっき層を形成した。
【0123】
(実施例7)
実施例2で用いたポリイミド前駆体樹脂及びポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂の代わりに、線幅5μm、線間隔5μm、線長1,000μm、深さ5μmのトレンチが形成された面を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂基材を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法によって、積層体を得た。脂肪族ポリカーボネート樹脂基材は、ポリプロピレンカーボネートのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液をシリコンウエハ上にスピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)を用いて塗布して、ホットプレートにて150℃で30分間乾燥して膜厚5μmの絶縁層を得た後、150℃で凹凸を備えた型を5MPaの圧力を加えて押圧することにより得たものである。すなわち、実施例7では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0124】
(実施例8)
実施例4で用いたポリイミド前駆体樹脂及びポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂の代わりに、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂基材を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法によって、積層体を得た。すなわち、実施例8では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0125】
(実施例9)
実施例6で用いたポリイミド前駆体樹脂及びポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂の代わりに、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂基材を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法によって、積層体を得た。すなわち、実施例9では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0126】
(実施例10)
ポリイミド前駆体樹脂(東レ株式会社製「セミコファイン、SP−341」)を乾燥後の膜厚が10μmとなるようにシリコンウエハ上にスピンコート装置(ミカサ株式会社製「MS−A150」)を用いて塗布、乾燥した。得られた塗膜を、ナノインプリント装置(SCIVAX株式会社製「X300」)の下面ステージにセットした。パターン表面がフッ素系処理された、石英を材質とするモールドを、上記装置の上面ステージにセットした。装置内を真空とした後、1.5気圧の圧力でモールドを前記塗膜に圧着させ、95℃ で1分30秒間、125℃で1分30秒間の順で加熱硬化した。次いで、モールドを剥離して、線幅5μm、線間隔5μm、線長1000μm、深さ5μmのトレンチが形成された面を有する絶縁層(A)を得た。
【0127】
実施例4で用いたポリイミド前駆体樹脂及びポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂の代わりに、前記絶縁層(A)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法によって、積層体を得た。すなわち、実施例10では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0128】
(実施例11)
厚さ1mmのポリカーボネートフィルム(旭硝子社製レキサン)を、ナノインプリント装置(SCIVAX株式会社製「X300」)の下面ステージにセットした。パターン表面がフッ素系処理された、石英を材質とするモールドを、上記装置の上面ステージにセットした。装置内を真空とした後、170℃で30秒間、2.5気圧の圧力でモールドを前記ポリカーボネートフィルムに圧着させた。次いで、モールドを剥離して、線幅5μm、線間隔5μm、線長1000μm、深さ5μmのトレンチが形成された面を有する絶縁層(A)を得た。
【0129】
実施例4で用いたポリイミド前駆体樹脂及びポジ型感光性のポリイミド前駆体樹脂の代わりに、前記絶縁層(A)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法によって、積層体を得た。すなわち、実施例11では、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、プライマー層(D)、金属粒子層(B)、バリアメタルめっき層(E)及び金属めっき層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0130】
(比較例1)
実施例1と同様に作製したトレンチが形成された面を有する絶縁層(A)の表面に、徳田製作所製、RFスパッタリング装置を用いて逆スパッタの処理を、出力300Wで5分、スパッタ圧力は0.5Pa、アルゴンガス流量は40sccmで行った。次に同装置を用いて、到達圧力5×10
−4Pa、スパッタ圧力0.2Pa、アルゴンガス流量20sccmの条件によるスパッタ法で、絶縁層(A)上に0.2μmのチタン膜と0.6μmの銅膜をこの順で形成した。このチタン膜はバリア層に相当する。銅膜は、電解めっきのためのシード層である。次いで、実施例1と同様の方法で電解めっきを行ってトレンチ内に銅を充填した後、CMPにてトレンチ内に充填した銅以外の銅層を除去した。この銅めっき層は金属めっき層に相当する。
以上の方法によって、トレンチが形成された面を有する絶縁層(A)上に、バリアメタル層及び金属めっき層が順次積層された積層体を得た。
【0131】
<金属めっき層の欠陥評価>
実施例1〜11及び比較例1で得られた積層体について、走査型電子顕微鏡(SEM)
(日本電子株式会社製「JSM−7800F」)を用いて、断面観察を行い、金属めっき層の欠陥の有無を確認した。断面観察は、倍率50000倍にて行い、ランダムに10箇所を観測した。下記の基準に従って金属めっき層の欠陥を評価した。
〇:10箇所を観測して、欠陥が1箇所もない。
×:10箇所を観測して、欠陥が1箇所以上ある。
【0132】
<金属めっき層の拡散評価>
実施例1〜11及び比較例1で得られた積層体について、150℃に設定した恒温槽内に168時間保管した後、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7800F」)を用いて、断面観察を行い、エネルギー分散型X線(EDS)分析によって、トレンチ内に積層した金属めっき層の金属が絶縁層に拡散した距離を観測した。下記の基準に従って金属めっき層の拡散を評価した。
〇:銅の拡散距離が0.05μm未満
△:銅の拡散距離が0.05μm以上0.10μm未満
×:銅の拡散距離が0.1μm以上
【0133】
【表1】
【0134】
表1に示した結果から、実施例1〜10の積層体は、金属めっき層が好適に形成されていることが確認できた。また、金属めっき層の拡散が抑えられていることを確認した。
一方、比較例1の積層体は、金属粒子層を形成せず、代わりに、スパッタリングによってバリア層およびシード層を形成し、このシード層上に金属めっき層を形成した例であるが、金属めっき層に欠陥があり、金属めっき層の金属が絶縁層に拡散することを確認した。スパッタリングの場合、トレンチの底面と側壁のバリア層およびシード層の厚さが不均一となるため、特にトレンチ側壁の膜厚が薄いところで、金属めっき層の欠陥ができ、その欠陥から金属めっき層の金属が絶縁層に拡散すると考えられる。