【実施例】
【0022】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
[製造例1(豆乳の製造)]
(1)洗浄した100質量部の大豆を水に浸漬し、吸水して膨潤した浸漬大豆230質量部を得た。
(2)浸漬大豆100質量部に水200重量を加え、湿式粉砕、次いで均質化して生呉を得た。
(3)生呉を98℃で10分間加熱した後、圧搾ろ過によりオカラを除去して豆乳を得た。
なお得られた豆乳は、使用するまで冷蔵保管した。
【0024】
[製造例2 豆腐様食品]
表1の配合に従って、豆腐及びクリーム状豆腐を製造した。
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に重曹0.05質量部を混合し、分散機(スリーワンモータ TYPE HEIDOn 3000H)を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)塩凝固剤である塩化マグネシウム0.1質量部及び酸凝固剤である乳酸0.1質量部を重曹含有豆乳に添加し、更に20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に投入し、92℃で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒間攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
(5)評価例1及び2に従ってクリーム状豆腐を評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
[評価例1 粘度測定]
豆腐様流動性食品の粘度は、品温を15℃に保ち、ローターNo.3を装着したC型粘度計(TOKI SANGYO社製のVISCOMETER、MODEL TVC−7)を用いて回転速度20rpmで測定した。
なお、製造例2で使用した豆乳の粘度は、ローターNo.2を装着したC型粘度計で同様に測定したところ、44cpであった。豆乳のBrixにもよるが、豆乳の粘度は概ね20〜50cp程度である。
【0027】
[評価例2 官能評価]
豆腐の食感につき、官能評価を実施10名の熟練パネラーにより下記表2の評価基準に基づいて評価を行った。なお、市販の充填豆腐(ジョイアス・フーズ社製の「やわらかきぬ」)を製造例2の工程(4)に従ってペースト状にしたものを3点とした。
<評価基準>
【0028】
【表2】
【0029】
[試験1 重曹(炭酸水素ナトリウム)の検討]
豆乳に、塩基性物質として表3記載の重曹を混合して均質化した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を製造した。凝固剤としては、豆乳100質量部に対し塩凝固剤として塩化マグネシウム0.1質量部、酸凝固剤として乳酸0.1質量部を使用した。
【0030】
【表3】
【0031】
比較例2の重曹不含豆乳に凝固剤を添加して加熱凝固させると、十分に凝固し、絹ごし豆腐に近い豆腐が得られた。ミキサーで撹拌混合して得られた豆腐ペーストは、粘度が高く、ザラつきがあり、滑らかさに劣るものであった。比較例1では、重曹の添加量が多すぎ、豆乳の凝固がほとんど起こらず豆乳と大差ない状態であり、加熱時に発泡が生じて作業性が悪化したため、官能評価を実施しなかった。
実施例1〜5では、重曹含有豆乳に凝固剤を添加して加熱凝固させると、凝固が緩和された豆腐様食品が得られ、比較例2の豆腐よりも柔らかく滑らかなものであった。ミキサーで撹拌混合して得られた豆腐様流動性食品は、重曹の添加量の増加に依存して粘度が低下し、それらの食感はザラつきがなく滑らかな良好なものであった。重曹の添加量によって粘度を調節できる本発明の豆腐様流動性食品は、各種の料理に使用される牛乳等の流動性食品あるいはクリーム等の半固形食品の代用食品に利用することができる。
【0032】
[試験2 塩化ナトリウム添加の検討]
製造例2の工程(1)において、豆乳に重曹と共に表4記載の塩化ナトリウムを混合して均質化した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を製造した。凝固剤としては、豆乳100質量部に対し塩凝固剤として塩化マグネシウム0.1質量部、酸凝固剤として乳酸0.1質量部、塩基性物質としては重曹0.05質量部を使用した。
【0033】
【表4】
【0034】
豆乳100質量部に対して塩化ナトリウム0.5質量部以下の場合、塩化ナトリウムの添加量の増加に伴って豆腐様流動性食品の粘度は上昇し、それ以上添加すると粘度は低下した。これらを官能評価したところ、何れも実施例3と同等もしくはやや良好なものであった。
本発明では、塩化ナトリウムは食感をやや向上させるのみならず、実施例3の様に粘度がもともと低い場合には粘度を増加させる粘度調節機能を有していることがわかった。
【0035】
[製造例3 豆腐様食品]
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に、重曹0.01質量部及び食塩0.5質量部を混合し、分散機を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)表5記載の凝固剤を液中に分散し20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に流し込み、92℃の温度下で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
(5)評価例1及び2に従って豆腐様流動性食品を評価した。
【0036】
[試験3 凝固剤の検討]
凝固剤を表4記載の凝固剤を使用して製造例3に従って豆腐様流動性食品を製造した。本試験では、豆腐様流動性食品の粘度を高めるために重曹の添加量を0.01質量部、食塩の添加量を0.5質量部にした。
【0037】
【表5】
【0038】
塩化マグネシウムと乳酸の当重量混合物、塩化マグネシウム及びグルコノデルタラクトンでは、その添加量の増加に伴って豆腐様流動性食品の粘度は高くなった。塩化マグネシウムの様に強い豆乳の凝固作用を示す凝固剤を使用することで、高粘度でありながら食感良好な豆腐様流動性食品が得られた。なお、凝固剤を0.5質量部超添加しても豆乳の凝固に差は見られなかったので、本試験では0.5質量部超を添加した試験は実施しなかった。
【0039】
乳酸等の有機酸は、塩化マグネシウム等の2価カチオン塩及びデルタグルコノラクトンよりも豆乳の凝固力が弱いことは良く知られている。乳酸では0.3質量部以上加えることで粘度が低下したが、それらの食感は十分に許容されるものであった。
なお、実施例16は、実施例5に食塩を0.5質量添加したものである。実施例5の様に粘度が高い場合には、食塩はザラつきをなくしつつ、粘度を下げる方向への調節に使用できると考えられる。
各比較例では、凝固剤の添加量が低いために豆乳の凝固がほとんど起こらず、豆乳と大差ない状態であったので、官能評価を実施しなかった。
【0040】
[試験4 塩基性物質の種類の検討]
重曹(炭酸水素ナトリウム)に代えて、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムを0.05質量部添加した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を得た。結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
何れの塩基性物質を使用しても、粘度が適正に低く、ザラつきのない滑らかな食感であった。
【0043】
[試験5 豆腐様流動性食品の離水試験]
比較例1(120cp)、比較例2(豆腐)、実施例1(320cp)、実施例5(3000cp)、実施例8(2320cp)、実施例18(3360cp)、実施例28(300cp)について、離水試験を行った。
(1)静置保存試験
各100mlを100ml容メスシリンダーに充填し、冷蔵庫で5時間静置した。比較例1、3では、メスシリンダー上部に液体の層ができると共にガラス壁の各所で液体が浮き出ていた。それに対して実施例5、8、13、18、31では、水が浮き出すことはなく、均質な豆腐様流動性食品を維持していた。
【0044】
(2)加熱加工及び冷凍解凍試験
小麦粉8質量部とバター8質量部とを加熱混合してルーを調製し、ルーを加熱しながら各豆腐様流動性食品100質量部を徐々に添加混合してベシャメル様ソースを製造した。
得られた各ベシャメル様ソース100gを樹脂製容器に充填して密封し、−50℃で急速冷凍した後、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室で2週間保存した。冷凍保存後、室温で解凍して冷凍解凍ベシャメル様ソースを得た。
豆腐様流動性食品の代わりに牛乳を添加混合した一般的なベシャメルソースの点数を5点として、ベシャメル様ソース(加熱加工)及び冷凍解凍ベシャメル様ソース(冷凍解凍)を下記表6の評価基準に基づいて熟練のパネラー10名により評価し、結果を表7に示した。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
実施例1、5、8、18及び28の豆腐様流動性食品を使用したベシャメル様ソースでは、加熱加工に伴う水分蒸発があってもボソつきが生じ難く、滑らかな食感であった。更に、冷凍解凍しても離水による食感劣化が起こり難く、牛乳及びクリーム等の牛乳加工品の代用として十分に使用可能であった。比較例1では、ボソつきが生じ難いものの加熱加工により粘度上昇が少なく、ソースとして不適であった。更に、冷凍解凍すると大豆タンパク質の冷凍変性及び大豆タンパク質凝固物の離水により食感が著しく劣化した。比較例2では、加熱加工及び冷凍解凍の双方で食感劣化が著しく、「す」が入った状態に近いボソついた食感になった。
【0048】
(3)加熱調理試験
小麦粉8質量部、サラダ油8質量部、食塩0.5質量部を加熱混合してルーを調製し、ルーを加熱しながら各豆腐様流動性食品100質量部を徐々に添加混合し、更に1分30秒間加熱混合してベシャメル様ソースを得た。茹でマカロニ100gが入ったココット型にベシャメル様ソース50gを満遍なく広げ、その上に粉チーズ3gを均等に振りかけ、1000wのトースターで15分加熱しマカロニグラタン様食品を得た。−50℃で急速冷凍して家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室で2週間保存した。これを電子レンジ500w1分半の条件で再加熱した。
豆腐様流動性食品の代わりに牛乳を使用して得た一般的なマカロニグラタンの点数を5点として、マカロニグラタン様食品(加熱加工)及び冷凍解凍マカロニグラタン様食品(冷凍解凍)を上記評価基準に基づいて熟練のパネラー10名により評価し、結果を表5に示した。
【0049】
【表9】
【0050】
比較例1、2では、ベシャメル様ソースと同様に評価が悪かった。実施例1、5、8、18、28では離水がなく、官能評価によりボソつきがなく滑らかな食感が維持されていることが認められた。
なお、市販充填豆腐(ジョイアス・フーズ社製の「やわらかきぬ」)のペースト(官能評価基準の3点に設定した対象例)を使用して(1)〜(3)の試験を実施したところ、比較例2と同様の結果であった。