(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡介在物の発泡成形時における前記樹脂組成物と前記発泡用マスターバッチの混合割合は、前記樹脂組成物100質量部に対して前記発泡用マスターバッチ中の発泡剤が1質量部以下となる割合であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気ケーブルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この電気ケーブルによれば、発泡介在物の成形温度で吸着した水を放出する含水充填材、あるいは発泡介在物の成形温度で結晶水を放出する結晶水含有充填材を用いて発泡介在物を製造するための吸着水量あるいは結晶水量の調整が困難であることから、発泡介在物の発泡度の制御が困難になっている。
【0008】
一方、本発明者らは、水以外の発泡剤として、安価で発泡効率の良いアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いたところ、ADCAは分解してアンモニア臭を発生するという知見を得た。
【0009】
そこで、本発明の目的は、発泡介在物の発泡度の制御が容易であり、かつ、発泡剤として安価で発泡効率の良いADCAを用いたとしてもアンモニア臭を発生しない電気ケーブル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の電気ケーブル及びその製造方法を提供する。
【0011】
[
1]
導体、及び前記導体を被覆する絶縁体を含む複数のケーブル線心と、前記複数のケーブル線心の間隙に介在する発泡介在物と、前記複数のケーブル線心、及び前記発泡介在物を一括被覆するシースと、を備えた電気ケーブルの製造方法であって、前記発泡介在物は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を40質量%以上含有する樹脂組成物と、ベースポリマとしてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン及びポリスチレンから選ばれる1種以上を含む発泡用マスターバッチとを使用して発泡成形されたものであって、発泡度が35%以上であ
り、直径250μm以上の大径泡及び直径200μm以下の小径泡を有することを特徴とする電気ケーブルの製造方法。
[
2]前記樹脂組成物は、前記EVAの他に、EVA以外の1種以上のポリマを含有することを特徴とする前記[
1]に記載の電気ケーブルの製造方法。
[
3]前記発泡用マスターバッチは、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を含有することを特徴とする前記[
1]又は[
2]に記載の電気ケーブルの製造方法。
[
4]前記発泡介在物は、前記発泡用マスターバッチを2種以上使用して発泡成形されたものであることを特徴とする前記[
1]〜[
3]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
[
5]前記1種以上のポリマは、融点100℃以上のポリマであることを特徴とする前記[
2]に記載の電気ケーブルの製造方法。
[
6]前記樹脂組成物に含有される前記EVAは、2種以上のEVAの混合物であることを特徴とする前記[
1]〜[
5]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
[
7]前記樹脂組成物に含有される前記EVAは、酢酸ビニル含量が5質量%以上50質量%未満であることを特徴とする前記[
1]〜[
6]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
[
8]前記発泡介在物の発泡成形時における前記樹脂組成物と前記発泡用マスターバッチの混合割合は、前記樹脂組成物100質量部に対して前記発泡用マスターバッチ中の発泡剤が1質量部以下となる割合であることを特徴とする前記[
1]〜[
7]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
[9]前記大径泡及び/又は前記小径泡は、泡同士が合一した連続泡と、泡同士が合一していない独立泡とからなり、横断面積比率で連続泡:独立泡=70%〜10%:30%〜90%であることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
[10]前記絶縁体は、架橋ポリエチレンからなることを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれか1つに記載の電気ケーブルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡介在物の発泡度の制御が容易であり、かつ、発泡剤として安価で発泡効率の良いADCAを用いたとしてもアンモニア臭を発生しない電気ケーブル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る電気ケーブルの一例を示す横断面図であり、
図2は
図1における発泡介在物の部分拡大図である。以下、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の実施の形態に係る電気ケーブルの製造方法は、導体1及び導体1を被覆する絶縁体2を含む複数のケーブル線心3と、複数のケーブル線心3の間隙に介在する発泡介在物5と、複数のケーブル線心3及び発泡介在物5を一括被覆するシース6と、を備えた電気ケーブル10の製造方法であって、発泡介在物5は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を40質量%以上含有する樹脂組成物と、ベースポリマとしてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン及びポリスチレンから選ばれる1種以上を含む発泡用マスターバッチとを使用して発泡成形されたものであって、発泡度が20%以上であることを特徴とする。
【0016】
図1に示す本発明の実施の形態に係る電気ケーブル10は、三心CVケーブルであり、導体1の周囲に架橋ポリエチレンからなる絶縁体2が被覆されたケーブル線心3を3本撚り合せた撚り合せコア4と断面円形のシース6との間隙に、発泡した押出介在物からなる発泡介在物5が充填されている。
【0017】
導体1の材料は特に限定されず、既知の材料を用いて形成することができる。導体1は、1本である場合に限られず、複数本の素線を撚合せたものであってもよい。絶縁体2の材料は、特に限定されず、種々の材料を用いて形成することができるが、架橋ポリエチレンであることが好ましい。
【0018】
図1に示す撚り合せた撚り合せコア4は、3本のケーブル線心3を撚り合せた実施形態であるが、ケーブル線心3は3本以外の複数本(2本又は4本以上)であってもよく、また、撚り合せたものに限られない。
【0019】
シース6の材料は特に限定されず、既知の材料を用いて形成することができる。塩化ビニル(PVC)やハロゲンフリー難燃性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
発泡介在物5は、EVAを主体とするポリマ構成の発泡体からなっているので屈曲性と伸縮性に富み、かつ耐寒性が優れている。従って、この発泡介在物5が形成された電気ケーブル10は、屈曲性に優れるだけでなく、低温取扱い時の外部からの衝撃に対する緩衝性も高くなっている。
【0021】
発泡介在物5は、EVAを40質量%以上含有する樹脂組成物(以下、「介在用ポリマ」と言うことがある)と、ベースポリマとしてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)及びポリスチレン(PS)から選ばれる1種以上を含む発泡用マスターバッチとを使用して発泡成形されたものであって、発泡度が35%以上である。発泡度は40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましい。また、発泡度は70%以下であることが望ましい。
【0022】
上記樹脂組成物(介在用ポリマ)は、EVAを45質量%以上100質量%以下含有していることが好ましく、50質量%以上100質量%以下含有していることがより好ましく、55質量%以上100質量%以下含有していることがさらに好ましい。
【0023】
ここで使用するEVAは、酢酸ビニル含量(VA量)が5質量%以上50質量%未満となるものが、耐寒性及び屈曲性の観点から好ましい。成形時の粘着性を考慮するならば、VA量を10質量%以上45質量%以下に調整したほうが良い。EVAは、1種であっても、2種以上のEVAの混合物であってもよい。
【0024】
上記樹脂組成物(介在用ポリマ)は、EVAの他に、EVA以外の1種以上のポリマを含有することが好ましい。短時間冷却による発泡EVAの形状安定化やEVAとの融点差異効果がもたらす、コア−介在物間の剥離性付与の観点から、EVAと他の1種以上のポリマをブレンドすることが望ましい。具体的にはポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、ポリプロピレン(PP)或いはその他のポリオレフィン類などが挙げられる。その融点は100℃以上であることが好ましい。PEを例にするならば、EVA60質量〜99質量%、PE1質量〜40質量%のブレンド割合とすることが屈曲性や耐寒性の観点から好ましい。
【0025】
上記樹脂組成物(介在用ポリマ)は、上記のEVAや、EVA以外の1種以上のポリマの他に、添加剤を含有していてもよい。添加剤はケーブルのコアの露出作業性を改良できる点で好ましいが、本発明の効果である屈曲性や耐寒性に悪影響を及ぼさない範囲内で添加する。具体的な添加剤としては、一般に流通している無機系充填剤が挙げられる。より具体的には、炭酸カルシウムや焼成クレー、タルクなど安価なものが良い。
【0026】
上記発泡用マスターバッチは、アゾジカルボンアミド(ADCA)やp,p'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)などの発泡剤がベースポリマに高濃度添加されているものをいう。ベースポリマとしては、PE、PP、PVC、PS、ABS、PS、EVAがあるが、このうちEVA、PE、PSのいずれか1種以上で構成されていることが好ましい。
【0027】
発泡剤は、ADCA又はOBSHであることが好ましく、また、これらを併用することも好ましい。ADCAやOBSHと、その他の発泡剤を併用してもよい。
【0028】
発泡用マスターバッチ中の発泡剤の濃度が10〜50質量%の範囲内にあるものが取扱いの観点からよく、20〜40質量%としたものがさらに取扱いやすい。
【0029】
発泡用マスターバッチ中の発泡剤、ポリマ以外の副成分として、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩やクエン酸などを発泡核剤として用いても良い。また、必要に応じて、脱臭剤としてゼオライト系化合物を添加しても良い。更にはシリカやシリコーン系化合物、アクリレート系化合物などの分散性を向上させる添加剤が処方されていても良い。
【0030】
発泡介在物5は、上記発泡用マスターバッチを2種以上使用して発泡成形されたものであることが好ましい。
【0031】
発泡介在物5の発泡成形時における上記樹脂組成物と上記発泡用マスターバッチの混合割合は、上記樹脂組成物100質量部に対して上記発泡用マスターバッチ中の発泡剤が1質量部以下となる割合であることが好ましく、0.1質量部以上0.9質量部以下となる割合であることがより好ましい。
【0032】
〔発泡用マスターバッチの設計〕
上記樹脂組成物(介在用ポリマ)のベースポリマがEVAのみ又はEVAを主体としたポリマ構成で35%以上の発泡度とする場合、発泡用マスターバッチのポリマや発泡剤は以下の観点から自由に設計できる。
【0033】
(大径泡を発生させる場合)
発泡用マスターバッチのポリマは介在用ポリマのベースポリマと同様のEVAを選択したほうが良く、発泡剤はADCA、OBSHのどちらを用いても良い。発泡用マスターバッチ中のポリマにEVAを推奨する理由は介在用ポリマに用いたEVAと親和させ、発泡の起点となる核の数を減少させるためである。発泡核が少なくなることで大径発泡が形成される。発泡剤のADCAとOBSHを比較すると、発泡する成分の組成差から、OBSHの方が若干大きめの発泡を形成する。ここでいう大径とは250μmφ以上で構成されるものをいう。
【0034】
(小径泡を発生させる場合)
発泡用マスターバッチのポリマは介在用ポリマのベースポリマとグレードの異なるポリマを選択したほうが良く、発泡剤はADCAを選定した方が良い。グレードの異なるポリマがEVAを主体とするマトリックス中で、細径分散し、そこを核に発泡するからである。ここでいう小径とは200μmφ以下で構成されるものをいう。
【0035】
本発明の実施の形態においては、大径泡及び小径泡の両方を発生させた形態が好ましい。このとき、大径泡と小径泡の中間の大きさである中径泡(泡の最大直径部分が200μmφを超えて250μmφ未満)は存在してもしなくても良いが、存在する場合には泡全体の4〜6%程度(泡の横断面積における割合)であることが好ましい。
【0036】
なお、本発明の実施の形態において、平均気泡径は、製作した電気ケーブルの発泡介在物からブロック状の試料を切出し、その試料断面の写真を倍率100〜400倍の光学顕微鏡で撮影し、200個以上の独立気泡の気泡直径(長径)を測定し、大径泡(250μmφ以上)と小径泡(200μmφ以下)に分けた後、算術平均値として表した(後述の実施例においても同様)。
【0037】
〔電気ケーブル成形時のアンモニア臭の抑制手法〕
上記「発泡用マスターバッチの設計」とも関連するが、本発明者らは、発泡用マスターバッチ種により下記表1の特徴を示すことを確認した。介在用ポリマのベースポリマをEVAのみあるいはEVAを主体としたポリマとし、発泡剤としてADCAを用いた場合、ケーブル成形時にアンモニア臭を発生するという問題が生じた。そこで、本発明者らは
図2に示す通り、樹脂組成物51中に大径泡52及び小径泡53を有する発泡体を考えた。この発泡形態を成しうる手段が複数の発泡用マスターバッチをブレンドする方法である。すなわち、大径泡を生じさせる発泡用マスターバッチ(例えば、品名:EV306G、EE188E)と小径泡を生じさせる発泡用マスターバッチ(例えば、品名:ES405、EE405F)とをブレンドして使用する。20%以上35%未満の発泡度を狙う場合は、下記の表1に示した4種の発泡用マスターバッチ(品名:EV306G、EE188E、ES405、EE405F)の濃度が単独で1質量部でも電気ケーブル成形時にアンモニア臭は発生しないが、発泡度35%以上を狙う系ではこの複数の発泡用マスターバッチをブレンドする方法が有効となる。
【0038】
また、大径泡52及び小径泡53(中径泡が存在する場合には中径泡も含む)は、図に示されるように、泡同士に合一がみられるもの(例えば、略球状を成した一つの泡と略球状を成したもう一つの泡の内部空間がつながっているもの)(以下、連続泡という。
図2の連続泡54)と、泡同士に合一がみられないもの(例えば、隣り合った泡間に界面が存在し(泡が独立して存在し)各泡が略球状を成しているもの)(以下、独立泡という)とが混在した実施形態であることが望ましい。発泡体中に混在した連続泡と独立泡の横断面積比率は、連続泡:独立泡=70%〜10%:30%〜90%であることが好ましい。
【0040】
以上より、本発明の実施の形態に係る電気ケーブル10は、
図1〜2に示されるように、導体1及び架橋ポリエチレンからなる絶縁体2を備えたケーブル線心3と、シース6と、ケーブル線心3とシース6との間に設けられた発泡介在物5とを備えた電気ケーブルであって、発泡介在物5は、発泡度が35%以上であり、直径250μm以上の大径泡52及び直径200μm以下の小径泡53を有する発泡体からなるものであることがアンモニア臭の抑制効果の観点で好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
〔電気ケーブル作製〕
(実施例1〜8、参考例1〜4、比較例2〜5の電気ケーブル)
円形圧縮導体1(3mmφ)(品番5.5SQ)に絶縁体2としてシラン架橋ポリエチレンを肉厚が1.0mmtとなるように被覆してケーブル線心3を作製した。その後、3本のケーブル線心3をピッチ180mmでS撚り(右撚り)し、撚り合せコア4を得た。得られた撚り合せコア4の周囲に2層ヘッド付押出機を用いて発泡介在物5(内層)及びPVCシース6(外層)を設け、
図1の構造の電気ケーブル10を得た。発泡介在物5は、表2に示す介在用ポリマ(P1〜P18)に表3に示す発泡用マスターバッチ(M1〜M10)を表4に示す組み合わせにしたがって混合した樹脂組成物(試料No.1〜16)を押出機に供給し、充実押出法で撚り合せコア4の周囲に被覆した。PVCシース6の材料は既存の材料を用い、厚さは1.5mmtで固定し、仕上がり外径12.5mmφとした。発泡介在物5及びPVCシース6の押出条件は、表5の通り固定条件で行った。
【0043】
(比較例1の電気ケーブル)
上記実施例と同様にして得た撚り合せコア4にPPヤーンを挿入しながらピッチ180mmでS撚り(右撚り)し、PETテープ巻を施した。その後、PVCシースを押出成形し、従来の電気ケーブルを得た。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
作製した各電気ケーブルについて、下記方法で耐寒性、屈曲性及びアンモニア臭の抑制効果を評価した。また、発泡介在物5の発泡度を算出した。評価結果及び算出結果を表6〜7に示す。
【0049】
〔耐寒性〕
PVCシース6を剥いで、発泡介在物5を撚り合せコア4から分離させた後、発泡介在物5をJISK6723準拠の型枠(幅6mm、長さ38mm)を用いて打ち抜き、試験片を作製した。この試験片を用いて耐寒性試験(JISK6723準拠)を実施した。試験結果が−20℃以下のものを◎(合格:優良)、−20℃未満−15℃以下のものを○(合格:良)、−15℃未満のものを×(不合格)とした。
【0050】
〔屈曲性〕
電気ケーブルを300mm長に切断し、150mmを固定、150mmをフリーとした状態で、フリーとなる先端に紐で500gの錘を装着し、たわみ度合を求めた。たわみ量が70mm以上のものを◎(合格:優良)、70mm未満30mm以上のものを○(合格:良)、30mm未満のものを×(不合格)とした。
【0051】
〔アンモニア臭の抑制効果〕
電気ケーブル成形時、ダイス周辺でアンモニア臭がないものを○(合格)、アンモニア臭があるものを×(不合格)とした。
【0052】
〔発泡介在物の発泡度〕
電気ケーブルを100mm長に切断し、PVCシース6を剥いで、発泡介在物5を取出し、その発泡度を比重法により算出した。具体的には、発泡度(%)=100−(発泡後の比重/発泡前の比重)×100という式により求めた。
【0053】
〔連続泡:独立泡の横断積比率〕
電気ケーブルの横断面写真を撮影し、横断面における発泡介在物5中の連続泡と独立泡の面積比率から連続泡:独立泡の横断積比率を算出した。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
・参考例1〜2は、介在用ポリマとしてEVA1種を用いた系である。
・参考例3及び実施例1は、介在用ポリマとしてEVA2種を用いた系である。実施例1は、発泡用マスターバッチ2種をブレンドした系である。
・参考例4は、介在用ポリマとしてEVA3種を用いた系である。
・実施例2〜6は、介在用ポリマとしてEVAにLDPE又はPPをブレンドした系であり、発泡用マスターバッチ2種以上をブレンドした系である。
・実施例7〜8は、介在用ポリマとしてEVAにLDPEをブレンドし、かつ、炭酸カルシウム又は焼成クレーをブレンドした系であり、発泡用マスターバッチ2種以上をブレンドした系である。
・実施例1〜8及び参考例1〜4では、発泡度の制御が容易であり、かつ耐寒性、屈曲性、アンモニア臭抑制のいずれも良好な結果を得ることができた。なお、実施例7〜8では、耐寒性及び屈曲性に若干性能低下が見られた。
・実施例1〜8及び参考例1〜4では、発泡介在物5の発泡度を20%以上とすることができたため、比較例1の電気ケーブルの質量を100とした場合における質量を105以下に抑えることができた。
・実施例1〜8は、発泡介在物5の発泡度が35%以上となった。また、実施例1〜8の発泡介在物5は、
図2に示す大径泡52及び小径泡53を有する発泡体構造となっていた。これは発泡用マスターバッチとして、表1における発泡径が「大」のものと「小」のものとの組み合わせとなる2種以上の発泡用マスターバッチを用いたことによるものと考える。
【0057】
・比較例1の従来の電気ケーブルの介在は、PPヤーンとPETテープで構成されているため、耐寒性の試験は行わず、屈曲性試験のみ実施したが、ケーブルがたわまず良好な結果を得られなかった。
・比較例2〜5は、介在用ポリマとしてPP又はLDPEを用いた系である。比較例2〜3では耐寒性及び屈曲性が悪く、比較例4〜5では加えてアンモニア臭が発生した。一方、比較例4,5と発泡剤量が同濃度である実施例7、11では良好な結果が得られており、本発明の効果といえる。
【0058】
以上述べた本発明を実施するための形態による電気ケーブル及びその製造方法によれば、前述した〔発明の効果〕を含んだ以下の効果を奏することができる。
(1)発泡介在物を発泡させるために水を用いることを条件としないために、水以外の発泡剤を用いることにより発泡介在物の発泡度を容易に制御することができる。
(2)安価で発泡効率の良い発泡剤であるADCAを用いたとしても、発泡介在物が大径泡と小径泡を有しているので、アンモニア臭の発生を抑制することができる。発泡介在物が前記した大小の泡を有する構成にすると、どうして前記アンモニア臭の発生が抑制できるかは、いまのところ不明である。
(3)発泡介在物を、一般的に耐寒性が低いポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマーに代えて、一般的に耐寒性に優れたコポリマーであるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)としたため、耐寒性を向上することができる。
(4)発泡介在物を35%以上の適切な発泡度にしたため、電気ケーブルの屈曲性を所望のものにすることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記本発明の実施の形態及び実施例に限定されない。例えば、請求項1の発明では、「複数のケーブル線心」としたが、「複数のケーブル線心」は、例えば、「一本のケーブル線心」と「導波管」等の長尺部材の組み合わせであっても良い。