(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空気吸込渦抑制板は、前記ポンプケーシングの吐出し側の口径をdとしたとき、前記吸込ベルマウスの下端から下方に向かって0.2d〜0.5dだけ延びていることを特徴とする請求項5に記載のポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は立軸ポンプに関するものであるが、本発明はこれらの実施形態に限らず、横軸ポンプにも使用することができる。さらに本発明は、コラムパイプ式の水中ポンプにも使用することができる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る渦防止装置を備えたポンプを示す模式図である。
図1に示すように、ポンプ20は、ポンプケーシング27と、ポンプケーシング27の上端に接続される揚水管28と、揚水管28の上端に接続される吐出曲管30と、ポンプケーシング27内に収容される羽根車31と、羽根車31が固定される主軸32とを備えている。ポンプケーシング27は、揚水管28によって吸込水槽1内に吊り下げられている。ポンプケーシング27は、吸込ベルマウス22と、インペラケーシング21と、吐出ボウル24とを備え、吐出ボウル24の上端は、揚水管28の下端に接続されている。吸込ベルマウス22は下方に開口しており、その下端に吸込口22aを有している。吸込ベルマウス22の上端はインペラケーシング21の下端に接続されている。
【0023】
揚水管28は、吸込水槽1の上壁を構成するポンプ据付床2に形成された開口5を通して下方に延びている。揚水管28の上端には吊り下げ管33が設けられている。吊り下げ管33は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。揚水管28は、吊り下げ管33およびポンプベース35を介してポンプ据付床2に固定されている。主軸32は、吐出曲管30、揚水管28、およびポンプケーシング27を通って鉛直方向に延びており、その下端は、吐出ボウル24および羽根車31の下方に位置している。
【0024】
主軸32は、外軸受45および水中軸受41によって回転可能に支持されている。外軸受45は、吐出曲管30の上部に固定され、主軸32の上部を支持している。水中軸受41は、吐出ボウル24および羽根車31の下方に配置され、主軸32の下端を支持している。水中軸受41は、水中軸受ケース42内に収容されている。水中軸受ケース42は、複数の水中渦抑制板49を介して吸込ベルマウス22の内周面に固定されており、主軸32の軸心と同心状に配置されている。
【0025】
羽根車31は主軸32に固定されており、この羽根車31の上方(吐出側)には複数のガイドベーン37が配置されている。吐出ボウル24の内部には内側ボウル25が配置されており、内側ボウル25は、複数のガイドベーン37によって吐出ボウル24に連結されている。吐出ボウル24の内面と内側ボウル25の外面との間には水の流路が形成されている。
【0026】
主軸32は吐出曲管30から上方に突出して、図示しない原動機(例えばモータ)に連結されている。この原動機により主軸32および羽根車31が回転するように構成されている。羽根車31が回転すると、吸込水槽1内の水が吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれる。水は、羽根車31の回転により、吐出ボウル24、揚水管28、吐出曲管30を通って図示しない吐出配管に移送される。
【0027】
ポンプ20は、ポンプケーシング27の外側に配置された、空気吸込渦を抑制する空気吸込渦防止装置60を備えている。空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
【0028】
図2は、
図1に示す空気吸込渦防止装置60を示す部分拡大図であり、
図3は、
図2に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図2および
図3に示すように、空気吸込渦防止装置60は、空気吸込渦抑制板61と、複数のリブ62とを備えている。本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は、半円環状である。リブ62は1つであってもよい。
【0029】
空気吸込渦抑制板61は、吸込ベルマウス22の外周面に沿って湾曲した半円筒形状を有しており、空気吸込渦抑制板61の下端61aは上方に向かって反り返っている。空気吸込渦抑制板61は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して吸込ベルマウス22の下流側に配置されており、吸込ベルマウス22の外周面の一部を囲むように配置されている。本実施形態では、空気吸込渦抑制板61の両側縁と主軸32(
図1参照)の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。空気吸込渦抑制板61は、主軸32の軸方向から見たときに、その最も外側の縁部が、開口5の内側に位置している。さらに、主軸32の軸方向から見たときに、空気吸込渦抑制板61は、その最も外側の縁部が、吸込ベルマウス22の下端の径方向外側に位置している。一実施形態では、主軸32の軸方向から見たときに、空気吸込渦抑制板61は、その最も外側の縁部が、吸込ベルマウス22の下端の径方向内側に位置してもよい。
【0030】
空気吸込渦抑制板61は、複数のリブ62を介して吸込ベルマウス22の外周面に固定されている。複数のリブ62は、吸込ベルマウス22の外周面に沿って等間隔で配列されている。一実施形態では、リブ62は1つであってもよい。空気吸込渦抑制板61と吸込ベルマウス22の外周面との間には、半円筒状の分流路65が形成されている。空気吸込渦抑制板61は、分流路65の入口幅A1よりも出口幅A2のほうが狭くなるように配置されている。分流路65の幅はほぼ一定であるが、分流路65の出口幅A2は、ポンプ口径(本実施形態ではポンプケーシング27の吐出し側の口径)をdとすると、ポンプ口径dの10%〜20%の大きさであり、分流路65の入口幅A1は、出口幅A2の1.1倍〜5倍の大きさとされる。また、空気吸込渦抑制板61の上端は、ポンプ20が運転可能な吸込水槽1の最低水位LWL(
図1参照)よりも低い位置に配置されている。本実施形態では、空気吸込渦抑制板61の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吸込ベルマウス22の上端よりも低い位置にある。吸込水槽1の水面から空気吸込渦抑制板61の上端までの距離は、ポンプ口径dの20%〜65%の範囲とされる。
【0031】
図4は、空気吸込渦抑制板61の下端61aが下方に延びている空気吸込渦防止装置60の一実施形態を示す断面図である。
図5は、
図4に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図4および
図5に示す実施形態では、空気吸込渦抑制板61の下端61aは、鉛直方向に下方に延びている。この場合、空気吸込渦抑制板61は、その下端61aが吸込ベルマウス22の下端と同程度の高さに位置してもよい。
【0032】
図6に示すように、空気吸込渦は、自由表面を形成する水の流れが揚水管28または吐出ボウル24によって分流されるときに生じるカルマン渦7が発達して生じる。したがって、カルマン渦7は、揚水管28の下流側に発生する。また、カルマン渦7は、水の流れによって下流側に流される。したがって、空気吸込渦防止装置60は、揚水管28に対して少なくとも下流側に配置される。
【0033】
図7は、空気吸込渦防止装置60が空気吸込渦を抑制する様子を示す図である。吸込水槽1内の水が吸込ベルマウス22から吸い込まれるとき、水面側から吸込ベルマウス22の下端へ向かう水流(以下、主流という)と、分流路65の入口から出口へ流れる水流(以下、分流という)の2つの水流が発生する。空気吸込渦抑制板61の下端61aを上方に向けることにより、分流路65の出口から流れ出た分流を水面側に向けることができ、流れが比較的弱い水面に近い位置で主流を乱すことができる。本実施形態によれば、主流を分流で乱すことにより空気吸込渦を抑制することができる。さらに、分流路65の出口幅A2を入口幅A1より狭くすることにより分流の流速を高め、より効果的に主流を乱すことができる。
【0034】
上述のように、空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。したがって、空気吸込渦防止装置60を取り外すことなく、揚水管28およびポンプケーシング27を吸込水槽1から引き上げることができる。これにより、空気吸込渦防止装置60を備えていないポンプと同様のメンテナンスを可能とすることができる。
【0035】
図1に戻り、ポンプ20は、羽根車31の下方に、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制する水中渦防止装置40を備えている。水中渦防止装置40は、ポンプケーシング27と吸込水槽1の底面との間に配置されており、複数の水中渦抑制板49を備えている。水中渦抑制板49は平板状の部材である。
【0036】
図8は、
図1に示す水中渦防止装置40を示す部分拡大図であり、
図9は、
図8に示す水中渦防止装置40を下から見た図である。
図8および
図9に示すように、複数の水中渦抑制板49は、水中軸受ケース42の長手方向に沿って配置され、かつ水中軸受ケース42から放射状に延び、水中軸受ケース42の円周方向に等間隔で配列されている。
図9に示すように、本実施形態では、4つの水中渦抑制板49が、水中軸受ケース42の周りに90°の角度で等間隔に配列されており、そのうち2つは吸込水槽1内の水の流れ方向と平行に配置され、他の2つは吸込水槽1内の水の流れに垂直に配置されている。
【0037】
水中渦抑制板49の一端は水中軸受ケース42に固定されており、他端は吸込ベルマウス22の内周面に固定されている。水中渦抑制板49の水平方向の長さL1は、水中軸受ケース42の外周面から吸込ベルマウス22の下端の外周面までの長さに等しい。水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22の下端から下方に向かって鉛直方向に突出している。水中渦抑制板49の吸込ベルマウス22の下端からの突出量は、h1で表されている。水中渦抑制板49の上端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にあり、かつ羽根車31よりも低い位置にある。
【0038】
このような水中渦抑制板49を備えた水中渦防止装置40によれば、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制することができる。この水中渦は、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間の旋回流が発達して形成されるものであり、吸込ベルマウス22が吸込水槽1の底面の近くに位置しているときに発生しやすい。本実施形態の水中渦防止装置40は、水中渦の原因となる旋回流を水中渦抑制板49で消滅させることにより、水中渦の発生を効果的に防止することができる。したがって、従来の構造よりも吸込ベルマウス22を低い位置に配置することができ、低水位での揚水が可能となる。また、本実施形態の水中渦防止装置40は、土木躯体である吸込水槽1への固定は不要であり、ポンプ20に取り付けることができるので、低コストかつ信頼性の高いポンプを提供することができる。
【0039】
水中渦を抑制する観点からは、水中渦抑制板49はある程度の高さを有する必要がある。具体的には、水中渦抑制板49の吸込ベルマウス22の下端からの突出量h1は、ポンプ口径をdとしたとき、0.1d以上とされる。具体的には、h1は、0.1d〜0.4dの範囲内とされる。さらに、水中に介在する塵芥(特に、ひも状のゴミ)が絡みつかないようにするためには、水中渦抑制板49の突出量h1は30cm以上とすることが好ましい。一実施形態では、複数の水中渦抑制板49の突出量h1を互いに異ならせてもよい。さらに一実施形態では、水中渦抑制板49は、その最も外側の縁部が開口5の内側に位置する範囲内で、吸込ベルマウス22の下端から径方向外側に張り出していてもよい。
【0040】
水中軸受ケース42は、水中軸受41を交換可能とするための蓋42aを備えている。本実施形態によれば、水中軸受ケース42の蓋42aと、水中渦抑制板49は、互いに独立して構成されている。さらに上述のように、水中軸受41は、吐出ボウル24および羽根車31の下方に配置されている。その結果、ポンプ20を吸込水槽1から引き上げることなく水中軸受41を点検、交換することが可能となる。
【0041】
本実施形態によれば、吸込ベルマウス22の吸込口22aには流れを阻害するものは実質的に無く、ポンプ20の吸い込み損失がほぼ無いため、本実施形態に係る空気吸込渦防止装置60および水中渦防止装置40を備えたポンプ20は、揚水能力を低下させることなく、空気吸込渦および水中渦を抑制することができる。さらに、ポンプ20を吸込水槽1から引き上げることなく水中軸受41を点検、交換することが可能であるため、ポンプ20の運転を長期間停止することなく運用することができる。したがって、運用面、維持管理面においても優れたポンプを提供することができる。
【0042】
本実施形態に係る水中渦防止装置40および空気吸込渦防止装置60は、羽根車の下方に水中軸受を持たないポンプにも使用することができる。
【0043】
図10は、ポンプ口径に関連付けられた各寸法の例を示す図であり、
図11は、
図10に示すポンプ20と吸込水槽1を上から見た図である。
図10に示すように、ポンプ口径をdとすると、吸込ベルマウス22の下端から吸込水槽1の底面までの距離は、0.5d以上であり、一例として0.75d〜1.0dの範囲内である。ポンプケーシング27の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離は1.5d以下である。開口5は、ポンプ口径dによって概ね決まる値であるが、目安として1.6d〜2.1dの範囲内である。
図11に示すように、吸込水槽1の水路幅は3.0d程度である。これらの寸法に設定した場合、ポンプ20が運転可能な吸込水槽1の最低水位LWLは、従来のポンプに比べて、0.5d〜0.9d程度低くすることができる。
【0044】
図12は、本発明の空気吸込渦防止装置60の他の実施形態を示す正面図であり、
図13は、
図12に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図12および
図13に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、固定板67と、複数の円柱状の渦抑制ポール68と、半円環状のハーフパイプ69とを備えている。固定板67は、半円環状の形状を有し、円弧状の外側縁部を有する平板状の部材である。渦抑制ポール68は、主軸32と平行に延びる棒状の部材である。ハーフパイプ69は、吸込ベルマウス22の外周面に沿って湾曲しており、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側に配置されている。
【0045】
揚水管28はその下端に、吐出ボウル24と接続するためのフランジ28aを有している。同様に、吐出ボウル24はその上端にフランジ24bを有している。固定板67は揚水管28または吐出ボウル24に固定されている。本実施形態では、固定板67は揚水管28のフランジ28aに固定されている。一実施形態では、固定板67は吐出ボウル24のフランジ24bに固定されてもよく、あるいはインペラケーシング21のフランジ21bに固定されてもよい。また、固定板67が固定される位置はフランジ28a,24b,21bの側面としてもよい。固定板67が固定される位置は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して揚水管28の下流側である。固定板67は、上述の固定位置から径方向外側に向かって略水平に延びている。
【0046】
固定板67およびハーフパイプ69の外周面は、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は、全体として半円環状である。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態では、固定板67の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。
【0047】
複数の渦抑制ポール68は、固定板67から吊り下げられており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように等間隔で配列されている。渦抑制ポール68の下端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置に配置されている。ハーフパイプ69は、複数の渦抑制ポール68の下端に固定されている。複数の渦抑制ポール68、およびハーフパイプ69は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。本実施形態では、ハーフパイプ69の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は下向きの主流を乱すことができる。
【0048】
本実施形態では、渦抑制ポール68は円柱状の形状を有しているが、本発明はこの形状に限定されない。例えば、中空状のパイプ、角材としてもよい。
図13に示すように、本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は5つの渦抑制ポール68を備えているが、一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は6つ以上の渦抑制ポール68を備えてもよい。さらに一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は4つ以下の渦抑制ポール68を備えてもよい。
【0049】
図14は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す断面図であり、
図15は、
図14に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図14および
図15に示すように、本実施形態に係る空気吸込渦防止装置60は、空気吸込渦抑制板61および複数のリブ62と、吸込ベルマウス22に固定された傾斜板72とを備えている。
図14および
図15に示す空気吸込渦抑制板61は、
図2および
図3に示す空気吸込渦抑制板61と基本的な構成は同じであるが、吸込ベルマウス22の半径よりも小さな半径を有する点で異なっている。すなわち、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、
図14および
図15に示す空気吸込渦抑制板61は、その最も外側の縁部が、吸込ベルマウス22の下端の径方向内側に位置している。
図14および
図15に示す複数のリブ62は、
図2および
図3に示す複数のリブ62と同じ構成を有している。一実施形態では、リブ62は1つであってもよい。
【0050】
傾斜板72は、吸込ベルマウス22の下端に沿って湾曲した形状を有しており、円弧状の外側縁部を有する半円環状の部材である。傾斜板72は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して吸込ベルマウス22の下流側に配置されている。具体的には、傾斜板72は吸込ベルマウス22の下端に設けられており、空気吸込渦抑制板61と同じ角度で吸込ベルマウス22の一部を囲んでいる。傾斜板72は、水平方向に対して上方に傾けて設けられており、傾斜板72の上端は、主軸32の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。傾斜板72の傾斜角は、水平方向に対して上方に30°〜60°とすることが好ましい。傾斜板72の外側縁部は、吸込ベルマウス22の下端よりも外側に位置している。一実施形態では、傾斜板72は吸込ベルマウス22の径方向外側に向かって水平方向に延びていてもよい。
【0051】
空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態に係る空気吸込渦防止装置60は、分流路65の出口から流れ出る分流を、さらに水面側に向けることができる。その結果、より効果的に主流を乱すことができる。本実施形態の傾斜板72は円弧状の外側縁部を有しているが、本発明はこの形状に限定されない。例えば、
図16(a)乃至
図16(c)に示すように、傾斜板72の外側縁部の形状を波形(
図16(a))、凹凸形(
図16(b))、山形(
図16(c))としてもよい。
【0052】
一実施形態では、
図16(d)に示すように、傾斜板72の任意の位置(規則的、または不規則的な位置)に複数の貫通孔73を設けてもよい。貫通孔73を設けることによって、土砂や水中に介在するゴミ等が傾斜板72上に溜まることを防ぐことができる。また、貫通孔73を抜けて下方に流れる水流が発生し、これにより、主流の下向きの流れを乱すこともできる。
図16(d)では、貫通孔73の形状は円形であるが、貫通孔73の形状は円形に限定されず、楕円形、四角形、三角形としてもよい。さらに一実施形態では、
図16(a)乃至
図16(c)を参照して説明した実施形態に係る傾斜板72に、複数の貫通孔73を設けてもよい。
【0053】
図17は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す断面図であり、
図18は、
図17に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図17および
図18に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、半円筒状の空気吸込渦抑制板75と、空気吸込渦抑制板75に固定された張り出し板77とを備えている。張り出し板77は、全体として半円環状を有し、円弧状の外側縁部を有する平板状の部材である。
【0054】
本実施形態の空気吸込渦抑制板75の上端は、吸込ベルマウス22の下端に固定されており、空気吸込渦抑制板75は、吸込ベルマウス22の下端から下方に向かって鉛直方向に高さh2だけ延びている。空気吸込渦抑制板75は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して吸込ベルマウス22の下流側に配置されており、吸込ベルマウス22の下端に沿って湾曲している。空気吸込渦抑制板75の下端には、張り出し板77が固定されている。張り出し板77は、空気吸込渦抑制板75の下端の外周面から径方向外側に向かって略水平に延びている。張り出し板77の外周面は、吸込ベルマウス22の下端よりも外側に位置しており、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
【0055】
本実施形態では、空気吸込渦抑制板75の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。本実施形態においても主流の下向きの流れを乱すことができる。
【0056】
空気吸込渦を抑制する観点からは、空気吸込渦抑制板75はある程度の高さを有する必要がある。具体的には、空気吸込渦抑制板75の高さh2は、ポンプ口径をdとしたとき、0.2d〜0.5dの範囲内とされる。
【0057】
一実施形態では、張り出し板77に、
図16(a)乃至
図16(c)を参照して説明した外側縁部の形状を適用してもよい。さらに一実施形態では、張り出し板77に、
図16(d)を参照して説明した貫通孔73を設けてもよい。貫通孔73を設けることによって、土砂や水中に介在するゴミ等が張り出し板77上に溜まることを防ぐことができる。また、貫通孔73を抜けて下方に流れる水流が発生し、これにより、主流の下向きの流れを乱すこともできる。
【0058】
図19は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図20は、
図19に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図19および
図20に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、空気吸込渦抑制板79を備えている。空気吸込渦抑制板79は、全体として半円環状を有し、円弧状の外側縁部を有する平板状の部材である。
【0059】
吸込ベルマウス22はその上端に、インペラケーシング21と接続するためのフランジ22bを有している。同様に、吐出ボウル24はその下端にフランジ24aを有している。空気吸込渦抑制板79はポンプケーシング27に固定されている。本実施形態では、空気吸込渦抑制板79は吐出ボウル24のフランジ24aに固定されているが、空気吸込渦抑制板79はインペラケーシング21のフランジ21bに固定されてもよく、吸込ベルマウス22のフランジ22bに固定されてもよい。また、空気吸込渦抑制板79が固定される位置はフランジ24a,21b,22bの側面としてもよい。空気吸込渦抑制板79は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側に配置されている。空気吸込渦抑制板79は、上述の固定位置から径方向外側に向かって略水平に延びている。空気吸込渦抑制板79の外周面は、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
【0060】
本実施形態では、空気吸込渦抑制板79の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。
【0061】
本実施形態では、空気吸込渦抑制板79は、略水平に設けられているが、一実施形態では、空気吸込渦抑制板79の外側縁部を水平方向に対して上方または下方に傾けてもよい。この場合、空気吸込渦抑制板79の水平方向に対する傾斜角は、30°〜60°の範囲内で選択される。これにより、吐出ボウル24の外周付近の下向きの主流を乱すことができる。
【0062】
一実施形態では、空気吸込渦抑制板79に、
図16(a)乃至
図16(c)を参照して説明した外側縁部の形状を適用してもよい。さらに一実施形態では、空気吸込渦抑制板79に、
図16(d)を参照して説明した貫通孔73を設けてもよい。貫通孔73を設けることによって、土砂や水中に介在するゴミ等が空気吸込渦抑制板79上に溜まることを防ぐことができる。また、貫通孔73を抜けて下方に流れる水流が発生し、これにより、主流の下向きの流れを乱すこともできる。
【0063】
図21は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図22は、
図21に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図21および
図22に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、
図19および
図20を参照して説明した空気吸込渦抑制板79と、
図12および
図13を参照して説明した複数の渦抑制ポール68および固定板67とを備えている。本実施形態では、ハーフパイプ69に代えて、空気吸込渦抑制板79の上面が複数の渦抑制ポール68の下端に固定されている。その他、特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図12、
図13、
図19および
図20を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態においても主流の下向きの流れを乱すことができる。
【0064】
図23は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図24は、
図23に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図23および
図24に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、吐出ボウル24の周囲に配置された複数の空気吸込渦抑制板80を備えている。本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は8つの空気吸込渦抑制板80を備えているが、一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は9つ以上の空気吸込渦抑制板80を備えてもよい。さらに一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は7つ以下の空気吸込渦抑制板80を備えてもよい。
【0065】
複数の空気吸込渦抑制板80の長手方向は、主軸32と平行である。
図24に示すように、主軸32の軸方向から見たときに、複数の空気吸込渦抑制板80は、ポンプケーシング27の径方向に延び、ポンプケーシング27の周りに等間隔で配列されている。空気吸込渦抑制板80の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にある。本実施形態では、空気吸込渦抑制板80の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吐出ボウル24の上端よりも低い位置にある。空気吸込渦抑制板80の下端は、吸込ベルマウス22の上端よりも低く、かつ吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にある。空気吸込渦抑制板80の外側縁部は、主軸32の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態によれば、空気吸込渦抑制板80は、揚水管28または吐出ボウル24によって分流された水の流れを乱すことができる。本実施形態では、空気吸込渦抑制板80は、ポンプケーシング27の全周を囲むように配置されているが、一実施形態では、空気吸込渦抑制板80を、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側だけに配置してもよい。
【0066】
さらに一実施形態では、
図25および
図26に示すように、空気吸込渦抑制板80は、任意の位置(規則的、または不規則的な位置)に開口部80aを有していてもよい。上流側から下流側に流れる水の一部は開口部80aを通り、上流側から下流側に流れる水を乱すことができる。
図25は、開口部80aを有する空気吸込渦抑制板80を備えた空気吸込渦防止装置60を示す正面図であり、
図26は、
図25に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。本実施形態では、開口部80aは主軸32と平行に延びる長穴であるが、開口部80aの形状はこの実施形態に限定されない。例えば、開口部80aの形状は四角形としてもよい。さらに一実施形態では、各空気吸込渦抑制板80は2つ以上の開口部80aを有していてもよい。
【0067】
図27は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図28は、
図27に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図27および
図28に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、吐出ボウル24の外側に配置された半円筒状の空気吸込渦抑制板81と、空気吸込渦抑制板81をポンプケーシング27に固定する複数のブラケット82とを備えている。空気吸込渦抑制板81は、複数の開口部81aを有している。空気吸込渦抑制板81は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側に配置されている。空気吸込渦抑制板81は、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。空気吸込渦抑制板81の外周面は、主軸32の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態では、空気吸込渦抑制板81の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。
【0068】
空気吸込渦抑制板81は、複数のブラケット82を介してポンプケーシング27の外周面に固定されている。本実施形態では、2つのブラケット82が主軸32と平行に延びている。2つのブラケット82の一側面はポンプケーシング27の外周面に固定されており、2つのブラケット82の他側面は空気吸込渦抑制板81の両側縁部に固定されている。空気吸込渦抑制板81の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にある。本実施形態では、空気吸込渦抑制板81の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吐出ボウル24の上端よりも低い位置にある。空気吸込渦抑制板81の下端は吸込ベルマウス22の上端よりも低く、かつ吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にある。本実施形態によれば、上流側から下流側に流れる水の一部が、空気吸込渦抑制板81の内側から開口部81aを通って空気吸込渦抑制板81の外側に流れる。これにより、主流の下向きの流れを乱すことができる。
【0069】
本実施形態では、空気吸込渦抑制板81は、5つの開口部81aを有している。開口部81aは主軸32と平行に延びる長穴であるが、開口部81aの形状および数は本実施形態に限定されない。例えば、開口部81aの形状は四角形としてもよく、各空気吸込渦抑制板81は6つ以上または4つ以下の開口部81aを有していてもよい。
【0070】
一実施形態では、
図29に示すように、空気吸込渦抑制板81は、複数の平板84を溶接して構成してもよい。
図29は、複数の平板84を溶接して構成した空気吸込渦抑制板81を示す上面図である。
【0071】
さらに一実施形態では、
図30および
図31に示すように、
図27および
図28を参照して説明した空気吸込渦防止装置60に、複数の攪乱板85を設けてもよい。
図30は、複数の攪乱板85を備えた空気吸込渦防止装置60を示す正面図であり、
図31は、
図30に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は2つの攪乱板85を備えているが、一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は3つ以上の攪乱板85を備えてもよい。
【0072】
複数の攪乱板85の長手方向は、主軸32と平行である。
図31に示すように、主軸32の軸方向から見たときに、複数の攪乱板85は、ポンプケーシング27の径方向に延び、ポンプケーシング27の上流側の外周面に等間隔で配列されている。攪乱板85の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にある。本実施形態では、攪乱板85の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吐出ボウル24の上端よりも低い位置にある。攪乱板85の下端は、吸込ベルマウス22の上端よりも低く、かつ吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にある。攪乱板85の外側縁部は、主軸32の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態によれば、揚水管28または吐出ボウル24によって分流された水の流れを乱すことができる。
【0073】
さらに一実施形態では、
図32および
図33に示すように、攪乱板85の任意の位置(規則的、または不規則的な位置)に開口部85aを設けてもよい。
図32は、攪乱板85に開口部85aが設けられた空気吸込渦防止装置60を示す正面図であり、
図33は、
図32に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。開口部85aを設けることによって、上流側から下流側に流れる水の一部が開口部85aを通り、上流側から下流側に流れる水を乱すことができる。本実施形態では、開口部85aは主軸32と平行に延びる長穴であるが、開口部85aの形状はこれに限定されない。例えば、開口部85aの形状は四角形としてもよい。さらに一実施形態では、攪乱板85は2つ以上の開口部85aを有していてもよい。
【0074】
図34は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図35は、
図34に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図34および
図35に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、複数の環状傾斜板87を備えている。
【0075】
環状傾斜板87は、一部を欠く環状の円板であり、ポンプケーシング27の外周面の少なくとも一部を囲む形状を有している。複数の環状傾斜板87は、上述の欠かれた部分が吸込水槽1内の水の流れ方向に関して上流側に向けられて配置されており、ポンプケーシング27の外周面に固定されている。本実施形態では、複数の環状傾斜板87は、吐出ボウル24の外周面に固定されている。
【0076】
複数の環状傾斜板87は、上述の固定位置から径方向外側に向かって延びている。複数の環状傾斜板87の外周面は、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。複数の環状傾斜板87は、それぞれ一定の間隔を空けて縦方向に沿って配列されている。本実施形態では、環状傾斜板87の両側縁と主軸32の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは270°であるが、上述の角度θは270°に限定されず、180°〜270°の範囲内で選択してもよい。一実施形態では、環状傾斜板87は、上述の欠かれた部分を有さない環状の円板としてもよい。
【0077】
各環状傾斜板87は、環状傾斜板87の下流側が上流側よりも低くなるように傾いて配置されている。環状傾斜板87の水平方向に対する傾斜角は、0°〜45°の範囲内から選択される。一実施形態では、環状傾斜板87を、下流側が上流側よりも低くなるように傾けて配置し、かつ上述の欠かれた部分を吸込水槽1内の水の流れ方向に関して下流側に向けて配置してもよい。さらに一実施形態では、環状傾斜板87の下流側が上流側よりも高くなるように、各環状傾斜板87を傾けてもよい。
【0078】
環状傾斜板87の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にある。本実施形態では、環状傾斜板87の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吐出ボウル24の上端よりも低い位置にある。環状傾斜板87の下端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置に配置されている。
【0079】
環状傾斜板87は、上流側から下流側に流れる水の一部を下方(または上方)に向けることができる。これにより、主流の下向きの流れを乱すことができる。本実施形態では、空気吸込渦防止装置60は2つの環状傾斜板87を備えているが、一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は3つ以上の環状傾斜板87を備えてもよい。さらに一実施形態では、空気吸込渦防止装置60は1つの環状傾斜板87のみを備えてもよい。さらに一実施形態では、螺旋状の環状傾斜板87を配置してもよい。
【0080】
図36は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図37は、
図36に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図36および
図37に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、半円筒体90と、複数の板状のリブ91とを備えている。半円筒体90は、吸込ベルマウス22の外周面に沿って湾曲した半円錐台形状を有している。半円筒体90は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関して吸込ベルマウス22の下流側に配置されており、吸込ベルマウス22の外周面の一部を囲むように配置されている。本実施形態では、半円筒体90の両側縁と主軸32(
図1参照)の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは120°であるが、上述の角度θは120°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。
【0081】
半円筒体90は、複数のリブ91を介して吸込ベルマウス22の外周面に固定されている。複数のリブ91は、吸込ベルマウス22の外周面に沿って等間隔で配列されている。半円筒体90と吸込ベルマウス22の外周面との間には分流路92が形成されている。リブ91は、吸込水槽1の上流側から下流側に流れる水の一部を分流路92内に流入させるための開口部91aを有していてもよい。分流路92に流入した水は、分流路92の下方に流れ出ることによって、主流の下向きの流れを乱すことができる。半円筒体90の上端は吸込水槽1の最低水位LWL(
図1参照)よりも低い位置にある。本実施形態では、半円筒体90の上端は、吸込水槽1の最低水位LWLよりも低い位置にあり、かつ吸込ベルマウス22の上端よりも低い位置にある。半円筒体90の下端は吸込ベルマウス22の下端と同じ高さに配置されている。半円筒体90の最も外側の縁、すなわち下端は、主軸32の軸方向から見たときに、吸込ベルマウス22の外側かつ、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
【0082】
一実施形態では、
図38および
図39に示すように、半円筒体90の上端に水平板94を設けてもよい。
図38は、半円筒体90に水平板94が設けられたときの空気吸込渦防止装置60を示す正面図であり、
図39は、
図38に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。水平板94は、全体として半円環状を有し、円弧状の外側縁部を有する平板状の部材である。水平板94は、半円筒体90の上端から径方向外側に向かって略水平に延びている。水平板94の外周面は、主軸32(
図1参照)の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
【0083】
図40は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す正面図であり、
図41は、
図40に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図40および
図41に示すように、本実施形態の空気吸込渦防止装置60は、
図34および
図35を参照して説明した複数の環状傾斜板87と、
図36および
図37を参照して説明した半円筒体90および複数のリブ91とを備えている。その他、特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図34乃至
図37を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態によれば、2種類の空気吸込渦防止対策を組み合わせることによって、さらに効果的に主流を乱すことができる。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。
図40では、環状傾斜板87の欠かれた部分が吸込水槽1内の水の流れ方向に関して上流側に向けられて配置されているが、一実施形態では、環状傾斜板87は、上述の欠かれた部分を有さない環状の円板としてもよい。さらに一実施形態では、環状傾斜板87を、下流側が上流側よりも低くなるように傾けて配置し、かつ上述の欠かれた部分を吸込水槽1内の水の流れ方向に関して下流側に向けて配置してもよい。さらに一実施形態では、環状傾斜板87の下流側が上流側よりも高くなるように、各環状傾斜板87を傾けてもよい。
【0084】
一実施形態では、半円筒体90の上端に
図38および
図39を参照して説明した水平板94を設けてもよい。さらに一実施形態では、
図36および
図37に示す空気吸込渦防止装置60に代えて、
図2および
図3に示す空気吸込渦防止装置60、または
図14および
図15に示す空気吸込渦防止装置60を設けてもよい。
【0085】
図42は、本発明の空気吸込渦防止装置60のさらに他の実施形態を示す模式図であり、
図43は、
図42に示す空気吸込渦防止装置60を上から見た図である。
図42および
図43に示すように、本実施形態に係る空気吸込渦防止装置60は、
図4および
図5に示す空気吸込渦抑制板61および複数のリブ62と、案内板95と、複数のリブ97とを備えている。
【0086】
案内板95は、半円筒形状を有しており、その上端の半径は、その下端の半径よりも大きい。案内板95は、吸込水槽1内の水の流れ方向に関してポンプケーシング27の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。本実施形態では、案内板95の両側縁と主軸32(
図1参照)の軸心Oとを結ぶ2つの線がなす角度θは180°であるが、上述の角度θは180°に限定されず、120°〜180°の範囲内で選択してもよい。
【0087】
案内板95は、複数のリブ97を介してポンプケーシング27の外周面に固定されている。複数のリブ97は、ポンプケーシング27の外周面に沿って等間隔で配列されている。案内板95の内面とポンプケーシング27の外周面との間には案内流路99が形成されている。リブ97は、吸込水槽1内を上流側から下流側に流れる水の一部を案内流路99の側面から流入させるための開口部97aを有している。案内板95の上端は吸込水槽1の最低水位LWLよりも高い位置で、かつ吸込水槽1の最低水位LWLの近傍に配置される。案内板95の下端は、空気吸込渦抑制板61の上端よりも高い位置に配置されている。本実施形態では、案内板95の下端は、空気吸込渦抑制板61の上端よりも高い位置で、かつ空気吸込渦抑制板61の上端の近傍に配置されている。案内板95の最も外側の縁部は、主軸32の軸方向から見たときに、開口5の内側に位置している。本実施形態においても空気吸込渦防止装置60は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体が開口5の内側に位置している。本実施形態によれば、揚水管28または吐出ボウル24によって分流された水流が、
図42の矢印で示すように、案内流路99の側面から案内流路99に流入し、案内流路99の下方に流れ出る。さらに、案内流路99を出た水流は、分流路65を下方に流れ出ることにより、効果的に主流を乱すことができる。一実施形態では、
図4および
図5に示す空気吸込渦抑制板61に代えて、
図2および
図3に示す空気吸込渦抑制板61を設けてもよい。
【0088】
図44は、本発明の水中渦防止装置40の他の実施形態を示す断面図であり、
図45は、
図44に示す水中渦防止装置40を下から見た図である。特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図8および
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図44および
図45に示すように、本実施形態に係る水中渦防止装置40は、3つの水中渦抑制板49を備えている。本実施形態では、3つの水中渦抑制板49が、水中軸受ケース42の周りに120°の角度で等間隔に配列されている。3つの水中渦抑制板49のうちの1つは吸込水槽1内の水の流れ方向に関して水中軸受ケース42の上流側に配置されており、水の流れ方向と平行に配置されている。他の2つの水中渦抑制板49は、水中軸受ケース42の下流側に配置されている。
【0089】
一実施形態では、
図46および
図47に示すように、2つの水中渦抑制板49を水中軸受ケース42の上流側に配置し、他の1つの水中渦抑制板49を水中軸受ケース42の下流側に配置してもよい。
図46は2つの水中渦抑制板49を上流側に配置したときの水中渦防止装置40を示す断面図であり、
図47は、
図46に示す水中渦防止装置40を下から見た図である。下流側に配置されている水中渦抑制板49は、水の流れ方向と平行に配置されている。
【0090】
図8、
図9、
図44乃至
図47を参照して説明した水中渦抑制板49は、平板状の部材であるが、本発明はこの形状に限定されない。例えば、水中渦抑制板49は波形状としてもよいし、水中渦抑制板49に複数の貫通孔を設けてもよい。さらに一実施形態では、水中渦抑制板49の下側縁部の形状は直線でなくてもよい。例えば、
図16(a)乃至
図16(c)に示すような、波形(
図16(a))、凹凸形(
図16(b))、山形(
図16(c))としてもよい。さらに一実施形態では、水中渦抑制板49の下側縁部は水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0091】
一実施形態では、複数の水中渦抑制板49のうちの少なくとも1つは、吸込水槽1内の水の流れ方向に垂直な方向に対して、0°〜90°の範囲内の角度で配置される。さらに一実施形態では、5つ以上の水中渦抑制板49を設けてもよい。水中軸受41の位置を固定する観点からは、3つ以上の水中渦抑制板49を設けることが好ましい。さらに一実施形態では、水中渦抑制板49は、取り外し可能な構造としてもよい。例えば、吸込ベルマウス22および水中軸受ケース42に、水中渦抑制板49を取り付けるための台座を設け、水中渦抑制板49と、上述の台座とをボルト等で固定する構造としてもよい。
【0092】
図48は、本発明の水中渦防止装置40のさらに他の実施形態を示す断面図であり、
図49は、
図48に示す水中渦防止装置40を下から見た図である。特に説明しない本実施形態に関する構成は、
図8および
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図48および
図49に示すように、本実施形態に係る水中渦防止装置40は、複数の水中渦抑制板49と、内側ベルマウス50とを備えている。内側ベルマウス50は、吸込ベルマウス22と略相似形状を有し、吸込ベルマウス22の内周面に沿った形状の外周面を有している。内側ベルマウス50は、吸込ベルマウス22の内側に配置され、吸込ベルマウス22と同心状に配置されている。水中渦抑制板49の一端は、内側ベルマウス50の外周面に固定されている。
【0093】
本実施形態によれば、吸込水槽1内の水が吸込ベルマウス22から吸い込まれるとき、吸込ベルマウス22から吸い込まれる水流を、内側ベルマウス50の内側を通過する水流と、内側ベルマウス50の外側を通過する水流とに分流することができる。その結果、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する旋回流を抑制することができる。一実施形態では、
図48および
図49を参照して説明した水中渦防止装置40は、
図44乃至
図47を参照して説明した水中渦抑制板49を備えていてもよい。
【0094】
図50および
図51に示すように、一実施形態では、内側ベルマウス50に代えて、下方に開口するコーン部材55を設けてもよい。
図50は、水中軸受ケース42に固定されたコーン部材55を有する水中渦防止装置40を示す断面図であり、
図51は、
図50に示す水中渦防止装置40を下から見た図である。コーン部材55は、円錐台形状を有しており、その内側に下方に開口する窪み部53を有している。コーン部材55の上端は水中軸受ケース42の外周面に固定されており、水中軸受ケース42から下方に広がっている。吸込ベルマウス22とコーン部材55との間に環状の吸込み流路が形成される。
【0095】
本実施形態によれば、
図50の矢印で示すように、窪み部53内に流入した水流は、コーン部材55の内面に沿って窪み部53から外側に流出する。この水流は、吸込ベルマウス22の吸込口22aの近傍で水中渦が成長することを防止することができる。一実施形態では、
図50および
図51を参照して説明した水中渦防止装置40は、
図44乃至
図47を参照して説明した水中渦抑制板49を備えていてもよい。
【0096】
上述した複数の実施形態は適宜組み合わせることができる。例えば、
図12乃至
図43を参照して説明した各実施形態は、
図8および
図9を参照して説明した実施形態、または
図44乃至
図51を参照して説明した実施形態と組み合わせることが可能である。
【0097】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。