特許第6893104号(P6893104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893104
(24)【登録日】2021年6月2日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ホール素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/04 20060101AFI20210614BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   H01L43/04
   H01L29/44 L
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-58195(P2017-58195)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-160632(P2018-160632A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】小路 智也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 洋次
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−291644(JP,A)
【文献】 特開昭59−018690(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001667(WO,A1)
【文献】 特開昭60−175471(JP,A)
【文献】 特開平03−108384(JP,A)
【文献】 特開2015−035482(JP,A)
【文献】 特開2016−058421(JP,A)
【文献】 特開2016−103533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/04
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
当該基板上に形成された感磁部と、
当該感磁部上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜を貫通して前記感磁部と電気的に接続された複数の導電部と、
を備え、
前記複数の導電部は互いに離間して配置され、
前記導電部はそれぞれ、
前記絶縁膜上に前記導電部同士が互いに近づく方向に延長して形成された電極部と、
前記絶縁膜を貫通して前記電極部と前記感磁部とを電気的に接続するコンタクト部と、
を有し、
前記複数の電極部それぞれの外周は、上面視で、前記感磁部の外周で囲まれる領域の内側に位置し、
前記複数の導電部それぞれが有する前記コンタクト部のうち少なくとも一つのコンタクト部は、前記感磁部の縁部の上面及び側面の両方に接するホール素子。
【請求項2】
前記感磁部は順テーパー状の断面を有する請求項1に記載のホール素子。
【請求項3】
前記コンタクト部が、前記感磁部の縁部の上面及び側面と前記基板の上面とに接する請求項1又は請求項2に記載のホール素子。
【請求項4】
前記感磁部が四角形状を有する請求項1から請求項のいずれか一項に記載のホール素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感磁部と電極パッドとを接続するためのコンタクトを有するホール素子が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−175471号公報
【特許文献2】特開昭62−12974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホール素子にあっては、コンタクトの下端において電流が集中する。そのため、コンタクトの下端近傍において電流集中に起因する微小な抵抗変動等が生じ、特に、コンタクトと感磁部との接触面積が小さい場合には、電流集中に起因してノイズが生じる可能性がある。
そこで、本発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、電流集中に起因するノイズの発生を抑制することの可能なホール素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るホール素子は、基板と、当該基板上に形成された感磁部と、当該感磁部上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜を貫通して前記感磁部と電気的に接続された複数の導電部と、を備え、前記複数の導電部は互いに離間して配置され、前記導電部はそれぞれ、前記絶縁膜上に前記導電部同士が互いに近づく方向に延長して形成された電極部と、前記絶縁膜を貫通して前記電極部と前記感磁部とを電気的に接続するコンタクト部と、を有し、前記複数の電極部それぞれの外周は、上面視で、前記感磁部の外周で囲まれる領域の内側に位置し、前記複数の導電部それぞれが有する前記コンタクト部のうち少なくとも一つのコンタクト部は、前記感磁部の縁部の上面及び側面の両方に接することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、電流集中に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明の一実施形態に係るホール素子の一例を示す上面図である。
図1B図1AのA−A′断面図の一例である。
図1C図1Bのコンタクト部部分の拡大図である。
図1D図1AのB−B′断面図の一例である。
図2A】ホールセンサの一例を示す上面図である。
図2B】ホールセンサの断面の一例を示す概略図である。
図3A】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図3B】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図3C】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図3D】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図3E】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図3F】ホール素子の製造工程を説明するための断面図の一例である。
図4A】ホール素子のその他の例を示すコンタクト部部分の拡大図である。
図4B】ホール素子のその他の例を示すコンタクト部部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0009】
[実施形態]
図1Aは、本発明の一実施形態に係るホール素子100の一例を示す上面図である。図1Bは、図1AのA−A′断面の断面図を示す。図1Cは、図1Bのコンタクト部52部分の拡大図を示す。図1Dは、図1AのB−B′断面の断面図を示す。
本発明の一実施形態に係るホール素子100は、基板10、感磁部20、電極部31〜電極部34、絶縁膜40、及びコンタクト部51〜コンタクト部54を備える。感磁部20は、導電層21及び表面層22を備える。電極部31〜電極部34及びコンタクト部51〜コンタクト部54は、導電部を構成する。
【0010】
基板10は、Siや化合物半導体等の半導体基板である。本発明の一実施形態に係る基板10は、例えばGaAs基板である。基板(GaAs基板)10の抵抗率は1.0×10Ω・cm以上である。基板10の抵抗率の上限は1.0×10Ω・cm以下であってよい。基板10は、例えば略正方形の平面形状を有する。なお、基板10の平面形状は略正方形に限るものではなく任意の設定可能であり、例えば、感磁部20の平面形状と相似した、感磁部20よりも大きい平面形状を有していてもよい。
感磁部20は、基板10上に形成される。感磁部20は、基板10上であり一部が基板10に埋まって形成されていてもよい。感磁部20は、略正方形の平面形状を有する。感磁部20の側面は順テーパー状の断面を有している。
【0011】
感磁部20は、基板10よりも低抵抗の層である。感磁部20は、例えばGaAs、InSb及びInAs等の化合物半導体で形成される。本発明の一実施形態に係る感磁部20は、GaAsで形成される。また、感磁部20は、基板10にSi、Sn、S、Se、Te、Ge及びC等の不純物を注入し、加熱することにより活性化されてもよい。また、感磁部20は、少なくとも1つの角が丸みを帯びた平面形状を有していてもよい。感磁部20の端部では、ホール素子100に流れる電流が集中する場合がある。感磁部20の平面形状が丸みを有することにより、感磁部20の端部における電流集中が緩和される。なお、感磁部20を基板10上に段差状(メサ状)に形成する際にこの効果は顕著となる。特に感磁部20の角部が感磁部20の厚みに対して10%以上の曲率半径を有することにより、感磁部20の端部での電流集中を緩和することができる点で好ましい。また、感磁部20の厚みに対して10000%以下の曲率半径を有することにより、ホール素子100の出力電圧の揺らぎを抑制できる点で好ましい。これは、感磁部20の側面ではダングリングボンドの一番小さな面(例えば、(100)面)以外の面の露出を減らすことができ、キャリアの表面再結合が生じにくくなることによると推測される。
【0012】
感磁部20は、略正方形に限るものではない。四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域全てが感磁部20に含まれていればよい。四つのコンタクト部に囲まれた領域全てが感磁部20に含まれていれば、感磁部20はこの四つのコンタクト部に囲まれた領域の外側に広がっていてもよい。例えば、感磁部20の縁部は直線でなくともよく、また、感磁部20の縁部に切欠き等が形成されていてもよい。
【0013】
四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域は、次のように決めることができる。まず、感磁部20の上面視における重心を、感磁部20の中心とする。次に、感磁部20の中心と各コンタクト部51〜コンタクト部54との間の距離が最小となる点を各コンタクト部51〜コンタクト部54に描く。そして、これらの点間を結んで形成される領域を四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域とする。なお、感磁部20の中心との間の距離が最小となる点が各コンタクト部に複数ある場合には、これら全ての点を結んだ領域を四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域とする。
【0014】
導電層21は、基板10上に形成される。本発明の一実施形態に係る導電層21は、n型GaAsである。導電層21の膜厚は特に限定されない。本発明の一実施形態に係る導電層21の膜厚は、50nm以上2000nm以下である。導電層21の膜厚は、100nm以上1000nm以下であってもよい。
表面層22は、導電層21上に導電性の材料で形成される。表面層22は、導電層21よりも導電性の低いGaAs層、AlGaAs又はAlAs等の高抵抗な結晶からなる。本発明の一実施形態に係る表面層22の膜厚は、150nm以上である。表面層22の膜厚は、200nm以上であってもよい。表面層22の膜厚の上限は、800nm以下であっても、600nm以下であってもよい。なお、感磁部20には、表面層22が形成されなくてもよい。
【0015】
絶縁膜40は、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面及び側面と、感磁部20とを覆うように、基板10の上面に接して形成される。
絶縁膜40には、コンタクト用の開口部40aが設けられている。絶縁膜40の厚みは、例えば100nm以上であるがこれに限るものではない。絶縁膜40は、例えば、シリコン窒化膜(Si膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、アルミナ膜(Al)、ポリイミド膜及びこれらの膜の少なくとも1つを積層した多層膜である。なお、図1Aに示す上面図では、簡略化のため絶縁膜40を省略している。
【0016】
電極部31〜電極部34は、絶縁膜40上に形成される。例えば、電極部31及び電極部32は、感磁部20に電流を流すための入力用の電極部であり、電極部33及び電極部34は、感磁部20のホール電圧を検出するための出力用の電極部である。ここでは、電極部31及び電極部32を入力用の電極部として説明し、電極部33及び電極部34を出力用の電極部として説明するが、入力用の電極部と出力用の電極部とを入れ替えてもよい。また、入力用の電極部と出力用の電極部とを逐次入れ替えることにより、ホール素子100をスピニングカレント動作させるようにしてもよい。なお、ホール素子100は電極部31〜電極部34の他に電極部を備えていてもよい。
【0017】
電極部31〜電極部34は、絶縁膜40に設けられた開口部40aを通じてコンタクト部51〜コンタクト部54を介して感磁部20と電気的に接続される。電極部31〜電極部34は、金属、ポリシリコン等の導電性材料により形成される。本発明の一実施形態に係る電極部31〜電極部34は、金を主成分として含有する。
電極部31〜電極部34は、それぞれ対応するコンタクト部51〜コンタクト部54上に形成される。後述のようにコンタクト部51〜コンタクト部54は略正方形の頂点となる位置に配置されるため、コンタクト部51〜コンタクト部54上に配置される電極部31〜電極部34も、略正方形の頂点となる位置に配置されることになる。
【0018】
また、電極部31〜電極部34は、それぞれ対応するコンタクト部51〜コンタクト部54を基点として見た場合に対角線上の対向する電極部に近づく方向及び両隣の電極部のそれぞれに近づく方向に延出して形成される。本発明の一実施形態に係る電極部31〜電極部34は、例えば略正方形の平面形状を有し、電極部31〜電極部34の角部と感磁部20の角部とがそれぞれ相似な形状を有している。さらに電極部31〜電極部34の各辺と感磁部20の各辺とが平行となるように配置される。また、電極部31〜電極部34それぞれの外周は、上面視で、感磁部20の外周で囲まれる領域の内側に位置する。電極部31〜電極部34は、コンタクト部51〜コンタクト部54に電気的に接続することができ、且つ、外部接続用のボンディングワイヤ等を電極部31〜電極部34に電気的に接続することが可能な大きさである。なお、電極部31〜電極部34は上記の条件を満たす大きさである限りできるだけ小さい面積となるように形成されることが好ましい。
【0019】
ここで、感磁部20の上部に電極部31〜電極部34が形成される場合、感磁部20は、少なくとも1つの角が丸みを帯びていることで、チッピングの影響を抑制することができる。
すなわち、基板10を個片化する際にダイシングを行うが、基板10の外周部と感磁部20の外周部の間に電極部31〜電極部34が配置されていない場合、チッピングにより感磁部20が欠け、当該欠けを原因とした電流集中を生じる場合がある。特に、感磁部20の角が丸みを帯びていない場合、絶縁膜40からの応力やダイシング時の応力が感磁部の角へ集中し、亀裂の起点となる場合がある。感磁部20の少なくとも1つの角が丸みを帯びている場合、上記応力等を緩和し、チッピングによる感磁部20の端の欠けを抑制することで、電流集中を緩和することができる。
【0020】
なお、本発明の一実施形態に係る電極部31〜電極部34は、同一の平面形状を有しているが、異なる平面形状を有していてもよい。例えば、入力用の電極部の形状と出力用の電極部の形状とをそれぞれ異なる平面形状としてもよい。
また、本発明の一実施形態に係る電極部31〜電極部34は上面視で感磁部20の領域内に形成されているが、これらの電極部の少なくとも一部が上面視で感磁部20の領域の外側まで延出していてもよい。なお、上面視で感磁部20の領域内に電極部31〜電極部34が形成されていると、ホール素子100の出力電圧の揺らぎを小さくできる点で好ましい。これは、感磁部20と電極部31〜電極部34との熱膨張係数の差による応力が感磁部20にかかりにくくなるためである。
【0021】
コンタクト部51〜コンタクト部54は、感磁部20の平面形状に応じた平面形状を有し、感磁部20と電極部31〜電極部34のそれぞれとを電気的に接続可能な大きさに形成される。コンタクト部51〜コンタクト部54の平面形状は、例えば、感磁部20の角部部分と相似な略三角形状を有し、コンタクト部51〜コンタクト部54は、三つの頂点が感磁部20の頂点の外側の領域と上下方向で対向し、三辺のうちの二辺が感磁部20の二辺と平行となるように形成される。
【0022】
また、コンタクト部51〜コンタクト部54の平面形状は、感磁部20の外周側に対応する外側領域の少なくとも一部に丸みを有していてもよい。また、コンタクト部51〜コンタクト部54の平面形状は、感磁部20の中心側の内側領域に丸みを有していてもよく、例えば全体として扇形を有していてもよい。これにより、コンタクト部51〜コンタクト部54の端部における電流集中が緩和される。コンタクト部51〜コンタクト部54の平面形状は、コンタクト部51〜コンタクト部54の端部における電流集中を緩和できるものであれば、扇形に限らず他の形状であってもよい。なお、ここでいう外側領域とは、コンタクト部51〜コンタクト部54の外側であって、感磁部20の外周と対向する領域を示す。一方、内側領域とは、外側領域以外の感磁部20の中心側の領域を指す。また、四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域全てが感磁部20に含まれている場合、特にコンタクト部51〜コンタクト部54の端部に流れる電流量が多くなるので、顕著に電流集中緩和効果が得られる。
【0023】
以上の平面形状を有するコンタクト部51〜コンタクト部54は、感磁部20上に形成され、感磁部20(具体的には表面層22)上の縁部、感磁部20の側面(つまり、表面層22及び導電層21の側面)及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成される。本発明の一実施形態に係るコンタクト部51〜コンタクト部54は、絶縁膜40を貫通して、電極部31〜電極部34と感磁部20とを電気的に接続する。本発明の一実施形態では、コンタクト部51〜コンタクト部54は略正方形の頂点となる位置に形成される。また、コンタクト部51〜コンタクト部54の上には電極部31〜電極部34が形成される。なお、コンタクト部51〜コンタクト部54の配置位置は略正方形の頂点となる位置に限るものではなく、四角形の頂点となる位置であればよい。
【0024】
コンタクト部51〜コンタクト部54の上には電極部31〜電極部34が形成される。
本発明の一実施形態に係るコンタクト部51〜コンタクト部54は、例えば、電極部31〜電極部34と同一の材料で形成される。電極部31〜電極部34及びコンタクト部51〜コンタクト部54は、導電部として同一のプロセスにより同時に一体に形成されてもよい。なお、コンタクト部51〜コンタクト部54は、電極部31〜電極部34とは異なる材料で形成されていてもよい。
【0025】
図2Aは、本発明の一実施形態に係るホール素子100を用いたホールセンサ200の一例を示す上面図である。図2Bは、ホールセンサ200の断面の一例を示す概略図である。
ホールセンサ200は、ホール素子100、リード端子211〜リード端子214、保護層220、モールド部材230、外装めっき層240及びボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254を備える。なお、ホールセンサ200の構成は一例であり、これに限るものではない。
【0026】
ホール素子100は、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254によりリード端子211〜リード端子214に接続される。電極部31は、ボンディングワイヤ251により、リード端子211と電気的に接続される。電極部32は、ボンディングワイヤ252により、リード端子212と電気的に接続される。電極部33は、ボンディングワイヤ253により、リード端子213と電気的に接続される。電極部34は、ボンディングワイヤ254により、リード端子214と電気的に接続される。
【0027】
ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254は、導電性の材料で形成される。ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254は、例えば金ワイヤを適用することができるが、これに限るものではない。ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254は、モールド部材230により覆われている。これにより、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254が固定される。
【0028】
なお、電極部31〜電極部34と、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254とのそれぞれの間にボール部が設けられていてもよい。ボール部は、導電性の材料で形成される。ボール部は、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254と同一の材料で形成されてよい。ボール部は、例えば金ボール、またははんだボールである。一例において、ボール部は、上面視で10μm以上、100μm以下の直径を有し、例えば、60μmの直径を有する。なお、ボール部が上面視で真円でない場合には、上面視したボール部と同じ面積を有する楕円に近似し、当該楕円の長径を直径としてもよい。また、ボール部の厚みは応力緩和の観点から5μm以上であることが好ましい。また、製造容易性の観点からボール部の厚みは100μm以下であることが好ましい。なお、ボール部の厚みとは、ボール部の一番高い部分とボール部が配置された電極部31〜電極部34との距離である。
【0029】
ここで、ホールセンサ200のX線撮影にて得られた断面透過図を観察した際に、ボンディングワイヤ252をリード端子212側からホール素子100側にたどった場合にボンディングワイヤの太さよりも幅が大きくなった部分をボール部と定義してもよい。
リード端子211〜リード端子214は、外装めっき層240を介して外部と電気的に接続される。リード端子211〜リード端子214は、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254と接続された面と反対側の面とに外装めっき層240が形成される。これにより、ホール素子100は、ホールセンサ200の外部と電気的に接続される。なお、外装めっき層240は、例えばスズ(Sn)で形成されているが、これに限るものではない。
【0030】
保護層220は、ホール素子100のボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254と接続された面とは反対側の面を覆う。保護層220は、例えば基板10を保護可能な材料であれば限定されない。保護層220は、導体、絶縁体、又は半導体の何れか1つからなる膜であってもよく、これらのうち2つ以上を含む膜であってもよい。導体の場合、保護層220は、銀ペースト等の導電性樹脂であってよい。絶縁体の場合、保護層220は、エポキシ系の熱硬化型樹脂とシリカ(SiO)とを含む絶縁ペースト、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素等であってよい。半導体の場合、保護層220は、Si基板やGe基板等の貼り合わせであってよい。
【0031】
モールド部材230は、ホール素子100と、ボンディングワイヤ251〜ボンディングワイヤ254と、リード端子211〜リード端子214とをモールドする。モールド部材230は、リフロー時の高熱に耐えられる材料で形成される。例えば、モールド部材230は、エポキシ系の熱硬化型樹脂で形成される。
【0032】
ここで、ホール素子100は、図1Cに示すように、コンタクト部51〜コンタクト部54が、感磁部20の上面、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成されている。そのため、コンタクト部51〜コンタクト部54が感磁部20の上面のみに形成されている場合に比較して、コンタクト部51〜コンタクト部54と感磁部20との接触面積がより大きい。その結果、コンタクト部51〜コンタクト部54の下端近傍における電流集中が抑制されることになり、結果的に、電流集中に起因する微小な抵抗変動を生じにくくすることができる。つまり、電流集中により生じる1/fノイズを抑制することができる。特に、四つのコンタクト部51〜コンタクト部54に囲まれた領域全てが感磁部20に含まれている場合、コンタクト部51〜54の端部に流れる電流量が多くなるため、顕著に1/fノイズ抑制効果が得られる。
【0033】
また、コンタクト部51〜コンタクト部54を、感磁部20の上面及び感磁部20の側面だけでなく、基板10の上面にまで形成しているため、電極部31〜電極部34と基板10との間、及び、感磁部20と基板10との間において生じる電位差それぞれを小さくすることができる。これにより感磁部20の背面における寄生容量の電荷蓄積が抑制され、ホール出力の変動が抑制される。また、電極部31〜電極部34同士が互いに近づく方向に延出して形成されている場合には、電極部31〜電極部34と基板10との間の電位差が大きくなるためその効果が大きい。
また、上述のように、ホール素子100は、感磁部20の電流集中を緩和することができる。これにより、感磁部20の電流集中に起因する微小な抵抗変動が生じにくくなる。したがって、ホール素子100は、電流集中により生じる1/fノイズを抑制できる。
【0034】
[製造方法]
図3A図3Fは、ホール素子100の製造工程の一例を示す断面図である。なお、ホール素子100の製造方法は、これに限るものではない。なお、ここでは、コンタクト部51〜コンタクト部54をコンタクト部50として説明する。
まず、後に複数個に個片化されて基板10となる大きな基板を用意する(図3A)。個片化された基板10の平面形状は、例えば略正方形である。
【0035】
次に、基板10上に感磁部20を形成する(図3B)。具体的には、基板10上に導電層21を形成し、導電層21上に表面層22を形成する。感磁部20の成膜段階では、導電層21及び表面層22の平面形状は、基板10の平面形状と同一であってよい。例えば、感磁部20は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法を用いて、基板10上に化合物半導体をエピタキシャル成長することにより形成される。
【0036】
次に、図3Cにおいて、感磁部20を予め定められた平面形状のパターンにエッチングする。これにより、感磁部20の平面形状が略正方形に形成される。また、感磁部20の平面形状の角部は、当該エッチング工程により丸められてよい。
次に、図3Dにおいて、感磁部20上にコンタクト部50を形成する。コンタクト部50は、蒸着やスパッタ等の任意の半導体製造工程を用いて形成される。コンタクト部50は、感磁部20の角部近傍に形成され、さらに、感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成される。
【0037】
次に、図3Eにおいて、基板10、コンタクト部50、及び感磁部20を覆うように、絶縁膜40を形成する。例えば絶縁膜40として、厚みが300nmのSiN膜が形成される。また、絶縁膜40には、コンタクト部50と電極部31〜電極部34とが電気的に接続されるための開口部40aが形成される。開口部40aはエッチングプロセスにより形成されてもよい。
【0038】
次に、図3Fにおいて、絶縁膜40上に電極部31〜電極部34が形成される。また、電極部31〜電極部34は、絶縁膜40に形成された開口部40aを通じて、コンタクト部50と電気的に接続される。一例において、電極部31〜電極部34の厚みは、0.5μmであるがこれに限るものではない。以上により、ホール素子100が形成される。
なお、上記実施形態においては、コンタクト部51〜コンタクト部54それぞれを、感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接するように連続した形状に形成した場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、いずれか一つ又は入力用のコンタクト部として動作する二つのコンタクト部のみを感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、感磁部20の角部にコンタクト部51〜コンタクト部54を配置した場合について説明したが、これに限るものではない。四つのコンタクト部51〜コンタクト部54で囲まれる領域全面が感磁部20に含まれるように配置され、且つ、コンタクト部51〜コンタクト部54を、感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する形状に形成することができれば、どのような位置関係に配置されていてもよい。また、コンタクト部51〜コンタクト部54のうちの少なくとも一つが、感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成されていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、図1Cに示すように、コンタクト部51〜コンタクト部54を、感磁部20上の縁部、感磁部20の側面及び基板10の上面のそれぞれに接する連続した形状に形成した場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、図4Aに示すように、コンタクト部51〜コンタクト部54を、感磁部20上の縁部と感磁部20の側面との両方のみに接する連続した形状に形成してもよい。また、その際、図4Aに示すように、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面及び側面、また感磁部20の上面を覆うように絶縁膜40を形成した後、コンタクト部51〜コンタクト部54の上部と対向する位置にコンタクト用の開口部40aを設け、電極部31〜電極部34を、上面視で、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面全面及び基板10の縁側に位置する側面と基板10の上面と重なるように形成するようにしてもよい。また、この際、電極部31〜電極部34を、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面全面ではなく上面の一部のみと重なるように形成してもよい。
【0041】
また、図4Bに示すように、コンタクト部51〜コンタクト部54を、感磁部20上の縁部と感磁部20の側面との両方のみに接するように連続した形状に形成し、さらに、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面及び側面、また感磁部20の上面を覆うように絶縁膜40を形成した後、コンタクト部51〜コンタクト部54の上部と対向する位置にコンタクト用の開口部40aを設ける。そして、電極部31〜電極部34を、上面視で、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面全面及び基板10の縁側とは逆側に位置する側面と感磁部20の上面と重なるように形成するようにしてもよい。また、この際、電極部31〜電極部34を、コンタクト部51〜コンタクト部54の上面全面ではなく上面の一部のみと重なるように形成してもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 基板
20 感磁部
21 導電層
22 表面層
31〜34 電極部
40 絶縁膜
51〜54 コンタクト部
100 ホール素子
200 ホールセンサ
211〜214 リード端子
251〜254 ボンディングワイヤ
230 モールド部材
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B