特許第6893312号(P6893312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893312
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ブレード製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20210614BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20210614BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210614BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20210614BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20210614BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   B24D3/00 340
   B24D5/12 Z
   H01L21/78 F
   B24C1/00 Z
   B23B1/00 Z
   B23P15/28 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-46582(P2017-46582)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-149616(P2018-149616A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−087282(JP,A)
【文献】 特開昭63−318269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 5/12
B23B 1/00
B23P 15/28
B24C 1/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金と、前記台金の外周部に形成された切刃部とを有するブレードの製造方法において、
前記台金の前記外周部を粗面化する粗面化工程と、
前記粗面化工程によって粗面化された前記外周部にエッチング処理を行うエッチング工程と、
前記エッチング工程によってエッチング処理された前記外周部の粗面化領域に、前記切刃部を電着により形成する電着工程と、
前記外周部の一部を除去することにより、前記粗面化領域に接していた前記切刃部の面の一部を露出させるエッジング工程と、
を有し、
前記粗面化工程では、前記エッチング工程でのエッチング処理の粗面化よりも大きな粗さで前記外周部を粗面化する、ブレード製造方法。
【請求項2】
前記粗面化工程は、旋盤加工によって前記台金の外周部を粗面化する、請求項1に記載のブレード製造方法。
【請求項3】
前記粗面化工程は、ブラスト加工によって前記台金の外周部を粗面化する、請求項1に記載のブレード製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード製造方法に係り、特に、半導体ウェーハ等のワークに対して切削加工を行うブレードを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイシング装置は、半導体装置又は電子部品が形成されたウェーハ等のワークに対して切断又は溝入れ等の切削加工を行う。ダイシング装置は、スピンドルユニットの回転軸に装着されて高速で回転するブレードを有しており、回転するブレードの切刃部をワークに接触させて切削加工を行う。
【0003】
ダイシング装置に使用されるブレードとしては、特許文献1の如く、切刃部と台金であるハブとが一体となったハブブレードが知られている。また、このようなブレードの製造方法としては、例えば、特許文献2に開示された製造方法が知られている。
【0004】
特許文献2のブレード製造方法は、電鋳によりブレードを製造する方法である。具体的には、めっき液中に、導電部を有するダイヤモンド砥粒とダイヤモンドフィラーとを分散させ、めっき液中に陽極と陰極とを配置して電解めっきする。これにより、陰極とされた台金(ハブに相当)上に、ダイヤモンド砥粒及びダイヤモンドフィラーがめっき相とともに析出された切刃部が形成される。
【0005】
このように製造されたブレードの切刃部は、ハブとは反対側の一方面とハブ側に面する他方面とを有し、これらの一方面と他方面とで加工部を切削加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−343746号公報
【特許文献2】特開2017−24105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のブレードでは、切刃部の一方面で切削される加工部と他方面で切削される加工部の品質にばらつきが発生するという問題があった。このような問題は、特にDAF(Die Attach Film)等のフィルム状接着材に貼付されたワークを切削する際に発生した。すなわち、DAFは、切刃部の一方面と他方面とで切断されるが、一方面と他方面で切断されるDAFの切断面のバリ状態(品質)にばらつきが発生した。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、切刃部の一方面で切削される加工部と他方面で切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができるブレード製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブレード製造方法は、本発明の目的を達成するために、台金と、台金の外周部に形成された切刃部とを有するブレードの製造方法において、台金の外周部を粗面化する粗面化工程と、粗面化工程によって粗面化された外周部の粗面化領域に、切刃部を電着により形成する電着工程と、外周部の一部を除去することにより、粗面化領域に接していた切刃部の面の一部を露出させるエッジング工程と、を有する。
【0010】
本発明のブレード製造方法によれば、切刃部の一方面で切削される加工部と他方面で切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができる。
【0011】
本発明の一態様は、粗面化工程は、旋盤加工によって台金の外周部を粗面化することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様によれば、旋盤加工によって台金の外周部を粗面化することができる。
【0013】
本発明の一態様は、粗面化工程は、ブラスト加工によって台金の外周部を粗面化することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様によれば、ブラスト加工によって台金の外周部を粗面化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切刃部の一方面で切削される加工部と他方面で切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るダイシング装置の斜視図
図2】ダイシング装置の加工部の構造を示した拡大斜視図
図3】スピンドルユニットの回転軸に固定されたブレードの断面図
図4】実施形態のブレード製造方法のフローチャート
図5】実施形態のブレード製造方法の製造工程図
図6】旋盤加工によって外周部が粗面化されたハブの平面図
図7】従来の製造方法にて製造された切刃部の拡大断面図
図8】ブラスト加工によって外周部が粗面化されたハブの平面図
図9】放射状の溝によって外周部が粗面化されたハブの平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明に係るブレード製造方法の好ましい実施形態について詳説する。
【0018】
図1は、ブレード10を備えたダイシング装置12の外観を示す斜視図である。このブレード10は、実施形態のブレード製造方法によって製造されたものであり。ブレード製造方法については後述する。以下、ダイシング装置12について概説する。
【0019】
ダイシング装置12は、加工部18を備える。加工部18は、先端にブレード10が取り付けられた一対の高周波モータ内蔵型のスピンドルユニット14、14と、ワークWを吸着保持するワークテーブル16とを有する。また、ダイシング装置12は、加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部20と、多数枚のワークWを収納したカセットが載置されるロードポート22と、ワークWを搬送する搬送装置24等を備える。
【0020】
図2は、加工部18の構造を示した拡大斜視図である。
【0021】
図2に示す加工部18は、Xベース25の一対のXガイド26、26にガイドされたXテーブル28であって、リニアモータ30によってX方向に駆動されるXテーブル28を有する。このXテーブル28には、θ方向に回転する回転テーブル32を介してワークテーブル16が設けられている。
【0022】
Xベース25の上方には、Xベース25を跨ぐようにYベース34が設けられる。Yベース34の正面には、一対のYガイド36、36にガイドされた一対のYテーブル38、38であって、図示しない送り装置によってY方向に駆動される一対のYテーブル38、38が設けられる。
【0023】
また、一対のYテーブル38、38には、図示しない送り装置によってZ方向に駆動されるZテーブル40、40が設けられている。Zテーブル40、40には高周波モータ内蔵型のスピンドルユニット14、14が対向した状態で固定され、スピンドルユニット14の回転軸14A(図3)にブレード10、10が対向した状態で固定されている。
【0024】
このように構成された加工部18によれば、スピンドルユニット14、14はY方向にインデックス送りされるとともにZ方向に切り込み送りされ、また、ワークテーブル16はX方向に切削送りされる。
【0025】
図3は、スピンドルユニット14の回転軸14Aに固定されたブレード10の断面図である。
【0026】
スピンドルユニット14の回転軸14Aは、先細のテーパ状に形成され、この回転軸14Aにフランジ42の内周テーパ面42Aが嵌入されてフランジ42が取り付けられる。また、フランジ42は、回転軸14Aに螺合されたナット44を締結することによって回転軸14Aに固定される。フランジ42には、円盤状に形成されたアルミニウム製のハブ(台金)46が嵌入されており、このハブ46の外周部に切刃部48が形成され、切刃部48はフランジ42の支持面42Bに当接されている。ハブ46は、フランジ42に螺合されたナット50を締結することによってフランジ42に固定され、これによって、切刃部48がハブ46とフランジ42の支持面42Bとの間で挟持されて固定される。
【0027】
実施形態で例示するブレード10は、ハブ46と切刃部48とからなるハブブレードである。切刃部48は、一方面48Aと一方面48Aに対向する他方面48Bを有する。一方面48Aは、ハブ46とは反対側の面を指し、他方面48Bはハブ46側の面を指す。切刃部48は、電着によりハブ46の外周部に形成される。
【0028】
次に、図4に示す実施形態のブレード製造方法のフローチャート、及び図5に示す実施形態のブレード製造方法の製造工程図を参照して、実施形態のブレード製造方法について説明する。
【0029】
まず、図4のステップ10の粗面化工程にて、図5(A)の如く、切刃部48が電着される前のハブ46の外周部46Aを、図5(B)の如く粗面化する。この粗面化工程では、ハブ46の外周部46Aを、旋盤を使用した旋盤加工によって形成することが好ましい。旋盤加工によって、図6のハブ46の平面図の如く、ハブ46の外周部46Aには、旋盤のバイトによって切削加工された螺旋状の細かい溝52が形成される。これにより、ハブ46の外周部46Aに粗面化領域が形成される。
【0030】
次に、図4のステップS20の電着工程にて、図5(C)の如く、ハブ46の外周部46Aの粗面化領域に切刃部48を電着により形成する。電着工程の一例としては、めっき液中に、導電部を有するダイヤモンド砥粒とダイヤモンドフィラーとを分散させ、めっき液中に陽極と陰極とを配置して電解めっきする。これにより、陰極とされたハブ46の外周部46Aに、ダイヤモンド砥粒及びダイヤモンドフィラーがめっき相とともに析出された切刃部48が形成される。なお、この電着工程は周知であるので、電着工程の詳細については省略する。
【0031】
なお、電着工程の前に、周知の処理であるエッチング処理が外周部46Aに施されるが、このエッチング処理と本発明の粗面化とは目的が異なる。エッチング処理は、切刃部48を外周部46に強固に電着するために行われる処理である。これに対して、本発明の粗面化は、その粗面化した外周部46Aを切刃部48の他方面48Bに転写して、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を他方面48Bから突出させることを目的としている。すなわち、本発明の粗面化工程は、エッチング処理の粗面化よりも、大きな粗さで外周部46Aを粗面化するものである。
【0032】
次に、図4のステップS30のエッジング工程にて、図5(D)の如く、ハブ46の外周部46Aの一部(破線で示す部分46B)を溶解して除去し、外周部46Aの螺旋状の細かい溝52の粗面が転写した他方面48Bの一部を露出させる。
【0033】
このような工程を経て製造されたブレード10は、図5(D)で示す切刃部48の拡大断面図の如く、切刃部48の一方面48Aの性状に他方面48Bの性状を近づけることができる。すなわち、他方面48Bに散りばめられて存在するダイヤモンド砥粒等の砥粒54の突出量を、一方面48Aに散りばめられて存在するダイヤモンド砥粒等の砥粒54の突出量に近づけることができる。
【0034】
これにより、実施形態の切刃部48によれば、一方面48Aの品質(切れ味及び保水性)に、他方面48Bの品質を近づけることができる。よって、一方面48Aと他方面48Bの品質を略等しくすることも可能となるので、一方面48Aで切削される加工部と他方面48Bで切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができる。
【0035】
ここで、従来例と比較する。図7は、従来の製造方法にて製造された切刃部1の拡大断面図である。
【0036】
切刃部1の面のうち、電着工程でハブ2の外周面2Aに接していた他方面1Bは、外周面2Aの平坦な面が転写される。これにより、他方面1Bに散りばめられて存在するダイヤモンド砥粒等の砥粒3は、他方面2Bから突出せず、切刃部1に埋もれた状態となる。この他方面1Aに対して一方面1Aは、ハブ2の制約を受けないため、ダイヤモンド砥粒等の砥粒3は突出した状態となる。
【0037】
このような切刃部1にてワークを切削加工した場合には、一方面1Aと他方面1Bの性状が異なるため、一方面1Aで切削される加工部と他方面1Bで切削される加工部の品質にばらつきが発生した。特にDAFを切刃部1で切断した場合には、一方面1Aで切断された切断面にはバリが少なかったが、他方面1Bで切断された切断面にはバリが多発した。
【0038】
上記の従来例に対して、本実施形態のブレード10の切刃部48は、その製造工程に図4の粗面化工程(S10)を備えたので、一方面48Aの品質に他方面48Bの品質を近づけることができる。これにより、本実施形態のブレートの製造方法によれば、一方面48Aと他方面48Bの品質を略等しくすることも可能となるので、一方面48Aで切削される加工部と他方面48Bで切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができる。
【0039】
実施形態の粗面化工程では、図6に示したように、ハブ46の外周部46Aに旋盤加工によって螺旋状の細かい溝52を形成することにより粗面化領域を形成したが、粗面の形態はこれに限定されるものではない。例えば、図8に示すハブ46の平面図の如く、外周部46Aの粗面化領域を、サンドブラスト又はスポンジブラスト等のブラスト加工によって梨地に粗面化してもよい。また、図9に示すハブ46の平面図の如く、ハブ46の中心46Bを中心とする放射状の細かい溝56を外周部46Aの粗面化領域に形成することにより、粗面化領域を粗面化してもよい。これにより、ハブに対して粗面化工程を行わない切削刃と比較して、切刃部48の他方面48Bの品質を一方面48Aに近づけることができる。よって、一方面48Aと他方面48Bの品質を略等しくすることも可能となるので、一方面48Aで切削される加工部と他方面48Bで切削される加工部の品質のばらつきを抑えることができる。
【符号の説明】
【0040】
10…ブレード、12…ダイシング装置、14…スピンドルユニット、14A…回転軸、15…台座、16…ワークテーブル、18…加工部、20…洗浄部、22…ロードポート、24…搬送装置、25…Xベース、26…Xガイド、28…Xテーブル、30…リニアモータ、32…回転テーブル、34…Yベース、36…Yガイド、38…Yテーブル、40…Zテーブル、42…フランジ、44…ナット、46…ハブ、48…切刃部、48A…一方面、48B…他方面、50…ナット、52…溝、54…溝
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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