特許第6893338号(P6893338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893338ポリシロキサン構造含有化合物の製造方法及び高分子組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893338
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ポリシロキサン構造含有化合物の製造方法及び高分子組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20210614BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20210614BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   C08G77/08
   C08K5/29
   C08L83/04
【請求項の数】4
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-539618(P2018-539618)
(86)(22)【出願日】2017年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2017031204
(87)【国際公開番号】WO2018051792
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-179618(P2016-179618)
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渕瀬 啓太
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】 吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−073476(JP,A)
【文献】 特開2003−252996(JP,A)
【文献】 特開2000−204162(JP,A)
【文献】 特表2016−524637(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/031085(WO,A1)
【文献】 特開平10−279682(JP,A)
【文献】 特開平10−279683(JP,A)
【文献】 特開平10−279686(JP,A)
【文献】 特開2000−103856(JP,A)
【文献】 特開2000−103857(JP,A)
【文献】 特開2000−109559(JP,A)
【文献】 Bas G. G. Lohmeijer et al.,Organocatalytic Living Ring-Opening Polymerization of Cyclic Carbosiloxanes,Org. Lett.,2006年,8(21),p.4683-4686
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(b)で表される繰り返し構造を形成する開環重合工程を含むポリシロキサン構造含有化合物の製造方法であって、
前記開環重合工程が、有機塩基の存在下で反応が行われ、かつ水及び下記式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種によって反応を開始させる工程であり、
前記有機塩基が、下記式(1)で表されるアミジン構造を有する化合物、又は下記式(2)で表されるグアニジン構造を有する化合物(ただし、二環式グアニジン化合物を除く。)であり、かつ、その共役酸の酸解離定数pKが、アセトニトリル溶媒における数値として20〜34であることを特徴とする、分子量分布(M/M)が1.00〜1.20のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化1】

(式(A)及び(b)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
【化2】

(式(C−1)及び(C−2)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、ヒドロキシル基、又は水素原子を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を表す。)
【化3】
【請求項2】
前記開環重合工程が、下記式(D)で表される化合物によって反応を終了させる工程をさらに含む、請求項1に記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化4】

(式(D)中、Xは下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を表す。)
【化5】

(式(d−4)〜(d−10)中、R’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R’’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はシリル基(−SiR’’’)を、R’’’は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
【請求項3】
前記ポリシロキサン構造含有化合物が、下記式(E−1)〜(E−7)の何れか1つで表されるポリシロキサン構造含有化合物で分子量が異なる2種以上の分子からなる高分子組成物である、請求項2に記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化6】

(式(E−1)〜(E−7)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表さ
れる構造を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を、iはそれぞれ独立して1〜3000を表す。)
【化7】

(式(d−4)〜(d−10)中、R’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R’’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はシリル基(−SiR’’’)を、R’’’は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
【請求項4】
前記高分子組成物の数平均分子量(M)が300〜2000000である、請求項3に記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン構造含有化合物の製造方法及び高分子組成物に関し、より詳しくは環状シロキサンの開環重合によってポリシロキサン構造を形成するポリシロキサン構造含有化合物の製造方法、及び前記製造方法を利用して製造することができる高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサン結合(Si−O−Si)は、有機化合物の基本骨格である炭素−炭素結合(C−C結合)や炭素−酸素結合(C−O結合)よりも結合エネルギーが大きく、シロキサン結合が連なったポリシロキサンは、耐熱性、耐擦傷性、耐候性に優れ、様々な用途に利用されている有用な化合物である。
ポリシロキサン構造を形成する方法としては、ハロゲン化シランやアルコキシシランを加水分解・脱水縮合する方法が一般的に知られているが、近年、直鎖状のポリシロキサン構造を形成する方法として、塩基触媒下で環状シロキサンを開環重合する利用する方法が提案されている。具体的には、N−ヘテロサイクリックカルベンを触媒として利用する方法(特許文献1及び非特許文献1、2参照)、フォスファゼン塩基を触媒として利用する方法(特許文献2、3及び非特許文献3、4、5参照)、グアニジン塩基を触媒として利用する方法(特許文献4参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0097064号明細書
【特許文献2】米国特許第6353075号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0982345号明細書
【特許文献4】米国特許第8367796号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Baceiredo et al.,J.Organomet.Chem.2007,692,705.
【非特許文献2】Waymouth et al.,Org.Lett.2006,8,4683.
【非特許文献3】Taylor et al.,J.Inorg.Organomet.Polym.1999,9,17.
【非特許文献4】Clarson et al.,J.Inorg.Organomet.Polym.1998,8,111.
【非特許文献5】Moller et al.,Macromol.Rapid Commun.1995,16,449.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリシロキサン構造における「繰り返し構造」や「末端構造」が明確で、かつ分子量分散度を小さく抑えることができるポリシロキサン構造含有化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機塩基を触媒とし、水や特定の化合物を開始剤として、環状シロキサン三量体を開環重合させることにより、「繰り返し構造」や「末端構造」が明確で、かつ分子量分散度を小さく抑えたポリシロキサン構造が形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記式(A)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(b)で表される繰り返し構造を形成する開環重合工程を含むポリシロキサン構造含有化合物の製造方法であって、
前記開環重合工程が、有機塩基の存在下で反応が行われ、かつ水及び下記式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種によって反応を開始させる工程であることを特徴とする、ポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化1】
(式(A)及び(b)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
【化2】
(式(C−1)及び(C−2)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、ヒドロキシル基、又は水素原子を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を表す。)
<2> 前記有機塩基の共役酸の酸解離定数pKが、アセトニトリル溶媒における数値として20〜34である、<1>に記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
<3> 前記有機塩基が、下記式(1)で表されるアミジン構造、下記式(2)で表されるグアニジン構造、(3)で表されるフォスファゼン構造、及び下記式(4)で表されるプロアザフォスファトラン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する化合物である、<2>に記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化3】
<4> 前記開環重合工程が、下記式(D)で表される化合物によって反応を終了させる工程である、<1>〜<3>の何れかに記載のポリシロキサン構造含有化合物の製造方法。
【化4】
(式(D)中、Xは下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を表す。)
【化5】
(式(d−4)〜(d−10)中、R’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R’’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はシリル基(−SiR’’’)を、R’’’は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
<5> 下記式(E−1)〜(E−7)の何れか1つで表されるポリシロキサン構造含有化合物で分子量が異なる2種以上の分子からなる高分子組成物であって、
分子量分布(M/M)が1.00〜1.20である、高分子組成物。
【化6】
(式(E−1)〜(E−7)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、ヒドロキシル基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を、iはそれぞれ独立して1〜3000を表す。)
【化7】
(式(d−4)〜(d−10)中、R’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R’’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はシリル基(−SiR’’’)を、R’’’は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
<6> 数平均分子量(M)が300〜2000000である、<5>に記載の高分子組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、「繰り返し構造」や「末端構造」が明確で、かつ分子量分散度を小さく抑えたポリシロキサン構造含有化合物を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0010】
<ポリシロキサン構造含有化合物の製造方法>
本発明の一態様であるポリシロキサン構造含有化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、下記式(A)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(b)で表される繰り返し構造を形成する開環重合工程(以下、「開環重合工程」と略す場合がある。)を含む方法であり、開環重合工程が、有機塩基の存在下で反応が行われ、かつ水及び下記式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「開始剤」と略す場合がある。)によって反応を開始させる工程であることを特徴とする。
【化8】
(式(A)及び(b)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を表す。)
【化9】
(式(C−1)及び(C−2)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、ヒドロキシル基、又は水素原子を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を表す。)
【0011】
本発明者らは、有機塩基を触媒とし、水や式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物を開始剤として、環状シロキサン三量体を開環重合させることにより、「繰り返し構造」や「末端構造」が明確で、かつ分子量分散度を小さく抑えたポリシロキサン構造が形成できることを見出したのである。シラノール構造を含む化合物を開始剤とした場合の開環重合工程を模擬的に表すと、下記式のように表現することができる。
【化10】
かかる開環重合工程によって形成されるポリシロキサン構造は、sec−ブチルリチウム等のリチウム化合物を開始剤として用いた場合や、有機塩基を触媒、メタノール等のアルコールを開始剤として用いた場合に比べて、その分子量分散度を小さく抑えることができることを本発明者らは明らかとしており、分子量分散度が制御されたポリシロキサン構造含有化合物を製造することができるのである。
また、上記式で表現されているように、異なる環状シロキサン三量体を連続重合させることにより、2種以上のポリシロキサン構造を有するブロック共重合体を形成することも可能であり、有用性の高い製造方法であると言える。
なお、「有機塩基」とは、ブレンステッド塩基性を有した有機化合物を意味するものとする。
以下、「式(A)で表される環状シロキサン」、「有機塩基」、「開始剤」等について詳細に説明する。
【0012】
(式(A)で表される環状シロキサン)
開環重合工程は、下記式(A)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(b)で表される繰り返し構造を形成する工程であるが、「式(A)で表される環状シロキサン」の具体的種類は特に限定されず、目的とするポリシロキサン構造に応じて適宜選択することができる。なお、開環重合工程で使用する「式(A)で表される環状シロキサン」の種類は、1種類に限られず、2種以上を組み合せてポリシロキサン構造を共重合体とすることもできる。以下、式(A)で表される環状シロキサンについて具体例を挙げて説明する。
【化11】
式(A)及び(b)中のRは、それぞれ独立して「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基」、「ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基」、又は「水素原子」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、ハロゲン原子等を含む1価の官能基で置換されていてもよいほか、炭化水素基の炭素骨格内部の炭素原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、ハロゲン原子等を含む2価以上の官能基(連結基)で置換されていてもよいことを意味する。また、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味し、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基等も含まれるものとする。また、「(ポリ)シロキシ基」とは、「シロキシ基」又は「ポリシロキシ基」であることを意味する。
が炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO)、一級アミノ基(−NH)、二級アミノ基(−NHR)、三級アミノ基(−NR)、四級アンモニウム基(−N),アミド基(−NRC(=O)−)、オキシ基(−O−)、カルボキシル基(−COOH)、エステル基(−COOR)、オキシカルボニル基(−OCO−)、ケト基(−COR)、ホルミル基(−C(H)=O)、トリヒドロシリル基(−SiH)、ジヒドロシリル基(−SiR)、ヒドロシリル基(−SiHR)、トリアルキルシリル基(−SiR)、フロオロ基(フッ素原子、−F)、クロロ基(塩素原子、−Cl)、ブロモ基(臭素原子、−Br)、ヨード基(ヨウ素原子、−I)等が挙げられる。
が(ポリ)シロキシ基である場合、(ポリ)シロキシ基のケイ素原子数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、より好ましくは10以下である。
が(ポリ)シロキシ基である場合、(ポリ)シロキシ基に含まれる置換基としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)等が挙げられる。
としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
【0013】
式(A)で表される環状シロキサンとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化12】
【0014】
(有機塩基)
開環重合工程は、有機塩基の存在下で反応が行われる工程であるが、「有機塩基」の具体的種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。以下、有機塩基について具体例を挙げて説明する。
有機塩基の共役酸の酸解離定数pKは、温度25℃のアセトニトリル溶媒における数値として、通常20以上、好ましくは23以上であり、通常40以下、より好ましくは36以下である。有機塩基の共役酸の酸解離定数pKが前記範囲内であると、下記式で表されるような、いわゆるバックバイティング反応を抑制し易くなる。
【化13】
有機塩基としては、下記式(1)で表されるアミジン構造、下記式(2)で表されるグアニジン構造、(3)で表されるフォスファゼン構造、及び下記式(4)で表されるプロアザフォスファトラン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であるであることが好ましい。
【化14】
【0015】
具体的な有機塩基としては、下記式で表されるもの(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、t−ブチルイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(BEMP)、フォスファゼン塩基PBu−トリス(テトラメチレン)(Bu−P(Pyrr))、フォスファゼン塩基P−Et(P−Et))、2,8,9−トリイソブチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TiBP)等が挙げられる。
【化15】
【0016】
開環重合工程における有機塩基の使用量(仕込量)は、式(A)で表される環状シロキサンに対して物質量換算で、通常0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上であり、通常10mol%以下、好ましくは5mol%以下、より好ましくは2mol%以下である。前記範囲内であると、ポリシロキサン構造含有化合物を効率良く製造し易くなる。
【0017】
(開始剤)
開環重合工程は、水及び下記式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種によって反応を開始させる工程であるが、式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物の具体的種類は特に限定されず、目的とするポリシロキサン構造の「末端構造」に応じて適宜選択することができる。以下、開始剤シラノールについて具体例を挙げて説明する。
【化16】
式(C−1)及び(C−2)中のRは、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基」、「ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基」、「ヒドロキシル基」、又は「水素原子」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」と「(ポリ)シロキシ基」は、前述のRの場合と同義である。また、Rは「それぞれ独立して」いるため、mが2以上の場合の1分子内に存在するRは同一であっても、それぞれ異なるものであってもよい。
が炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO)、一級アミノ基(−NH)、二級アミノ基(−NHR)、三級アミノ基(−NR)、四級アンモニウム基(−N),アミド基(−NRC(=O)−)、オキシ基(−O−)、カルボキシル基(−COOH)、エステル基(−COOR)、オキシカルボニル基(−OCO−)、ケト基(−COR)、ホルミル基(−C(H)=O)、トリヒドロシリル基(−SiH)、ジヒドロシリル基(−SiR)、ヒドロシリル基(−SiHR)、トリアルキルシリル基(−SiR)、ホスフィン基(−PR)、四級ホスホニウム基(−P)、フロオロ基(フッ素原子、−F)、クロロ基(塩素原子、−Cl)、ブロモ基(臭素原子、−Br)、ヨード基(ヨウ素原子、−I)等が挙げられる。
が(ポリ)シロキシ基である場合、(ポリ)シロキシ基のケイ素原子数は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、より好ましくは10以下である。
が(ポリ)シロキシ基である場合、(ポリ)シロキシ基に含まれる置換基としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)等が挙げられる。
としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、ヒドロキシル基、水素原子等が挙げられる。
【0018】
Zは「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」は、前述のRの場合と同義である。
式(C−2)で表される化合物は、下記式で表されるような多価シラノールを表しており、mはシラノール基の数を、Zはシラノール基が結合した連結基を表している。
【化17】
Zは「炭化水素基」のみ、「(ポリ)シロキシ基」、又は「炭化水素基」及び「(ポリ)シロキシ基」によって構成される基であることを意味しており、「炭化水素基」、「(ポリ)シロキシ基」はそれぞれ2種以上であってもよいものとする。
Zに炭化水素基が含まれる場合、炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下、さらに好ましくは600以下、特に好ましくは300以下である。
Zに(ポリ)シロキシ基が含まれる場合、(ポリ)シロキシ基のケイ素原子数は、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、より好ましくは2000以下である。
Zに炭化水素基が含まれる場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO)、一級アミノ基(−NH)、二級アミノ基(−NHR)、三級アミノ基(−NR)、四級アンモニウム基(−N),アミド基(−NRC(=O)−)、オキシ基(−O−)、カルボキシル基(−COOH)、エステル基(−COOR)、オキシカルボニル基(−OCO−)、ケト基(−COR)、ホルミル基(−C(H)=O)、トリヒドロシリル基(−SiH)、ジヒドロシリル基(−SiR)、ヒドロシリル基(−SiHR)、トリアルキルシリル基(−SiR)、フロオロ基(フッ素原子、−F)、クロロ基(塩素原子、−Cl)、ブロモ基(臭素原子、−Br)、ヨード基(ヨウ素原子、−I)等が挙げられる。
Zに(ポリ)シロキシ基が含まれる場合、(ポリ)シロキシ基に含まれる置換基としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
mは1〜100の整数を表しているが、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは80以下、より好ましくは60以下である。
【0019】
式(C−1)で表される化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化18】
【0020】
式(C−2)で表される化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化19】
【0021】
開環重合工程における開始剤の使用量は、式(A)で表される環状シロキサンに対する水又は式(C−1)〜(C−2)の何れかで表される化合物のシラノール構造の物質量として、通常0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上であり、通常10mol%以下、好ましくは7.5mol%以下、より好ましくは5mol%以下である。前記範囲内であると、ポリシロキサン構造含有化合物を効率良く製造し易くなる。
【0022】
開環重合工程は、下記式(D)で表される化合物によって反応を終了させる工程であることが好ましい。
【化20】
(式(D)中、Xは下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を表す。)
【化21】
(式(d−4)〜(d−10)中、R’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R’’はそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はシリル基(−SiR’’’)を、R’’’は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子基を表す。)
式(D)で表される化合物は、好適な脱離基を有したシラン類であり、下記式で表されるようにポリシロキサン構造の末端のヒドロキシル基と反応して、末端を封止し、反応を終了させることができるのである。
【化22】
【0023】
Xは式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を表し、式(d−1)〜(d−10)中のR’はそれぞれ独立して「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基」を、R’’はそれぞれ独立して「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基」、又は「シリル基(−SiR’’’)」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、前述のRの場合と同義である。
R’、R’’が炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
R’、R’’が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO)、三級アミノ基(−NR)、四級アンモニウム基(−N),アミド基(−NRC(=O)−)、オキシ基(−O−)、エステル基(−COOR)、オキシカルボニル基(−OCO−)、ケト基(−COR)、ホルミル基(−C(H)=O)、トリヒドロシリル基(−SiH)、ジヒドロシリル基(−SiR)、ヒドロシリル基(−SiHR)、トリアルキルシリル基(−SiR)、フロオロ基(フッ素原子、−F)、クロロ基(塩素原子、−Cl)、ブロモ基(臭素原子、−Br)、ヨード基(ヨウ素原子、−I)等が挙げられる。
R’としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
R’’としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
R’’’としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
【0024】
式(D)中のRは、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基」、「水素原子」、「ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基」又は「式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、前述のRの場合と同義である。
が炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO)、三級アミノ基(−NR)、四級アンモニウム基(−N),アミド基(−NRC(=O)−)、オキシ基(−O−)、エステル基(−COOR)、ケト基(−COR)、ホルミル基(−C(H)=O)、トリヒドロシリル基(−SiH)、ジヒドロシリル基(−SiR)、ヒドロシリル基(−SiHR)、トリアルキルシリル基(−SiR)、フロオロ基(フッ素原子、−F)、クロロ基(塩素原子、−Cl)、ブロモ基(臭素原子、−Br)、ヨード基(ヨウ素原子、−I)等が挙げられる。
としては、メチル基(−CH、−Me)、エチル基(−C、−Et)、n−プロピル基(−、−Pr)、i−プロピル基(−、−Pr)、n−ブチル基(−、−Bu)、t−ブチル基(−、−Bu)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13,−Hex)、シクロヘキシル基(−11,−Cy)、フェニル基(−C,−Ph)、ベンジル基(−CH,−Bn)、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(−CHCH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CHC≡CH)、水素原子等が挙げられる。
【0025】
式(D)で表される化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化23】
【0026】
開環重合工程の反応温度は、通常−78℃以上、好ましくは−40℃以上、より好ましくは−20℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
開環重合工程の反応時間は、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下である。
前記範囲内であると、ポリシロキサン構造含有化合物を効率良く製造し易くなる。
【0027】
開環重合工程の回数は、1回に限られず、異なる環状シロキサン三量体を連続重合させて、2種以上のポリシロキサン構造を有するブロックコポリマーを形成するものであってもよい。
【0028】
<高分子組成物>
本発明の製造方法によって分子量分散度が制御されたポリシロキサン構造含有化合物を製造することができることを前述したが、本発明の製造方法によって製造することができる下記式(E−1)〜(E−7)の何れか1つで表されるポリシロキサン構造含有化合物で分子量が異なる2種以上の分子からなり、分子量分布(M/M)が1.00〜1.20である高分子組成物(以下、「本発明の高分子組成物」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
【化24】
(式(E−1)〜(E−7)中、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基、ヒドロキシル基、又は水素原子を、Rはそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子、又は下記式(d−1)〜(d−10)の何れかで表される構造を、Zは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ホウ素原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜10000の炭化水素基、並びにケイ素原子数1〜3000の(ポリ)シロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種からなる連結基を、mは1〜100の整数を、iはそれぞれ独立して1〜3000を表す。)
なお、式(E−1)〜(E−7)中のR、R、R、Z、mは、前述のものと同義である。また、R、R、Rは「それぞれ独立して」いるため、mが2以上の場合の1分子内に存在するR、R、Rはそれぞれ同一であっても、異なるものであってもよい。
また、「式(E−1)〜(E−7)の何れか1つで表されるポリシロキサン構造含有化合物で分子量が異なる2種以上の分子からなる」とは、例えば下記式で表される化合物のように、何れも式(E−1)に該当するポリシロキサン含有化合物であるが、分子量が異なるものからなる高分子組成物であるものとする。
【化25】
iは1〜3000を表しているが、好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、好ましくは2500以下、より好ましくは2000以下である。なお、iは「それぞれ独立して」いるため、iで表されるポリシロキシ基の長さは同一であっても、それぞれ異なるものであってもよい。
【0029】
本発明の高分子組成物の分子量分布(M/M)は、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.03以上であり、通常1.20以下,好ましくは1.18以下,より好ましくは1.16以下,さらに好ましくは1.14以下である。
【0030】
本発明の高分子組成物の数平均分子量(M)は、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上であり、通常2000000以下、好ましくは1000000以下、より好ましくは500000以下である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0032】
<実施例1> ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D(Me2))の重合によるポリジメチルシロキサン(PDMS)の合成
(Me2)(283 mg,1.27 mmol)、メチルジフェニルシラノール(MePhSiOH,27.2 mg,127 μmol)、及びテトラヒドロフラン(THF,661 μL)からなる溶液に、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(TBD,共役酸の酸解離定数pK:26.03)のTHF溶液(88.4 mg mL−1,20.0 μL,12.7 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で24時間反応させた。ピリジン(82.2 μL, 1.02 mmol)とクロロトリエチルシラン(106 μL, 635 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。エバポレーターを用いて生成物を濃縮した。続いて、メタノール(5 mL)を加えて攪拌し、静置し、パスツールピペットで上澄みを除去した。このメタノールでの洗浄をさらに二度繰り返した後、真空を用いて残った油状物質からメタノールを除去した。得られた無色透明の油状物質を、NMRおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析し、生成物の化学構造と数平均分子量(M)および分子量分散度を決定した。結果を表1に示す。
【化26】
【0033】
<実施例2> 1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン(D(Me,Ph))の重合によるポリ(メチルフェニルシロキサン)(PMPS)の合成
(Me,Ph)(260 mg,0.635 mmol)、メチル(フェニル)ビニルシラノール(MePhViSiOH,16.8 mg,102 μmol)、及びTHF(481 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,4.0 μL,2.5 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で4時間反応させた。ピリジン(40.9 μL, 508 μmol)とクロロトリエチルシラン(53.2 μL, 318 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表1に示す。
【化27】
【0034】
<実施例3> 1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン(D(Me,Vi))の重合によるポリ(メチルビニルシロキサン)(PMVS)の合成
(Me,Vi)(268 mg,1.05 mmol)、MePhViSiOH(17.0 mg,105 μmol)、及びTHF(544 μL)からなる溶液に、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD,共役酸の酸解離定数pK:25.49)のTHF溶液(100 mg mL−1,15.9 μL,10.5 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で2時間反応させた。ピリジン(67.0 μL, 842 μmol)とクロロトリエチルシラン(87.0 μL, 526 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表1に示す。
【化28】
【0035】
<実施例4> 1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン(D(Me,TFPr))の重合によるポリ[メチル(1,3,5−トリフルオロプロピル)シロキサン](PMTFPS)の合成
(Me,TFPr)(357 mg,0.762 mmol)、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)フェニルシラノール(MeTFPrPhSiOH,17.9 mg,76.2 μmol)、及びTHF(406 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,15.9 μL,10.5 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で2.5時間反応させた。ピリジン(49.1 μL, 697 μmol)とクロロトリエチルシラン(63.8 μL, 436 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表1に示す。
【化29】
【0036】
<実施例5> PDMS−PMVSブロックコポリマーの合成
(Me2)(246 mg,1.11 mmol)、MePhSiOH(8.5 mg,40 μmol)、及びテトラヒドロフラン(THF,500 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,9.0 μL,5.7 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で16.9時間反応させた。D(Me,Vi)(246 mg,0.952 mmol)を加えた後、窒素雰囲気下−20℃でさらに45分間反応させた。ピリジン(61.3 μL, 762 μmol)とクロロトリエチルシラン(79.7 μL, 476 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。Mn=14.7kg mol−1、分子量分散度:1.08。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
<実施例6> 開始剤として水を用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(212 mg,0.953 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),172 μL,水95.3 μmol)、及びTHF(352 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,6.0 μL,3.8 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で22時間反応させた。ピリジン(61.4 μL, 726 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(80.0 μL, 476 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化30】
【0039】
<実施例7> 開始剤としてD単位シラノールを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、1,5−ジヒドロキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(HO−D(Me2)−OH,24.0 μL,99.1 μmol)、及び塩化メチレン(513 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で1時間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 793 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(83.2 μL, 496 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化31】
【0040】
<実施例8> 開始剤としてT単位シラノールを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、3−ヒドロキシ−1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(Me(TMSO)SiOH,23.7 mg,99.1 μmol)、及び塩化メチレン(513 μL)からなる溶液に、1,2−トリメチレン−3−n−プロピルグアニジン(TMnPG,共役酸の酸解離定数pK:24〜26)のTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で92分間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 793 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(83.2 μL, 496 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化32】
【0041】
<実施例9> 開始剤としてQ単位シラノールを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、トリス(トリメチルシロキシ)シラノール((TMSO)SiOH,31.0 mg,99.1 μmol)、及び塩化メチレン(513 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で90分間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 793 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(83.2 μL, 496 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化33】
【0042】
<実施例10> 末端にビニル基とヒドロシリル基を有するPDMSの合成
(Me2)(283 mg,1.27 mmol)、MePhViSiOH(20.9 μL,127 μmol)、及びTHF(665 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,20.0 μL,12.7 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で17.5時間反応させた。ピリジン(82.2 μL, 1.02 mmol)とクロロ(メチル)フェニルシラン(95.4 μL, 635 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【0043】
<実施例11> 末端にメタクリロイル基とヒドロシリル基を有するPDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シラノール(MAMeSiOH,19.9 μL,99.1 μmol)、及び塩化メチレン(517 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で1時間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 0.793 mmol)とクロロジメチルシラン(66.1 μL, 595 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化34】
【0044】
<実施例12> 開始剤として多価シラノールを用いた重合による分岐状PDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、1,3,5−トリス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン(THSB,29.8 mg,99.1 μmol)、及びTHF(537 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で90分間反応させた。ピリジン(71.9 μL, 892 μmol)とクロロトリエチルシラン(99.6 μL, 595 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化35】
【0045】
<実施例13> 開始剤としてシランジオールを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(220 mg,0.991 mmol)、メチル(フェニル)シランジオール(MePhSi(OH),15.3 mg,99.1 μmol)、及び塩化メチレン(530 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で90分間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 793 μmol)とクロロトリエチルシラン(99.6 μL, 595 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化36】
【0046】
<実施例14> 触媒としてアミジンを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(219 mg,0.985 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),178 μL,水98.5 μmol)、及びTHF(355 μL)からなる溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU,共役酸の酸解離定数pK:23.34)のTHF溶液(100 mg mL−1,15.0 μL,9.85 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で120時間反応させた。ピリジン(63.5 μL, 751 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(82.7 μL, 493 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【0047】
<実施例15> 触媒としてフォスファゼンを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(219 mg,0.985 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),178 μL,水98.5 μmol)、及びTHF(355 μL)からなる溶液に、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン(BEMP,共役酸の酸解離定数pK:27.58)のTHF溶液(100 mg mL−1,27.0 μL,9.84 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で35.25時間反応させた。ピリジン(63.4 μL, 750 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(82.7 μL, 493 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【0048】
<実施例16> 触媒としてプロアザフォスファトランを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(227 mg,1.02 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),187 μL,水102 μmol)、及びTHF(371 μL)からなる溶液に、2,8,9−トリイソブチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TiBP,共役酸の酸解離定数pK:33.53)のTHF溶液(10 mg mL−1,17.5 μL,9.84 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で10分間反応させた。ピリジン(63.5 μL, 762 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(85.8 μL, 500 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2.25時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【0049】
<実施例17> 開始剤として水、末端封止剤としてクロロ(クロロメチル)ジメチルシランを用いた重合による末端官能基化PDMSの合成
(Me2)(212 mg,0.953 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),172 μL,水95.3 μmol)、及びTHF(340 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(29.5 mg mL−1,18.0 μL,3.81 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で24時間反応させた。エチルジイソプロピルアミン(DIPEA,163 μL, 953 μmol)とクロロ(クロロメチル)ジメチルシラン(75.2 μL, 571 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化37】
【0050】
<実施例18> 開始剤として水、末端封止剤として2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルジメチルシランを用いた重合による末端官能基化PDMSの合成
(Me2)(212 mg,0.953 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),172 μL,水95.3 μmol)、及びTHF(340 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(29.5 mg mL−1,18.0 μL,3.81 μmol)を投入し、窒素雰囲気下−20℃で24時間反応させた。エチルジイソプロピルアミン(DIPEA,163 μL, 953 μmol)とクロロ(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)ジメチルシラン(106 μL, 571 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化38】
【0051】
<実施例19> 開始剤として水,末端封止剤としてクロロトリエトキシシランを用いた重合による末端官能基化PDMSの合成
(Me2)(218 mg,0.979mol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),176 μL,水97.9 μmol)、及びTHF(352 μL)からなる溶液に、MTBDのTHF溶液(100 mg mL−1,15.0 μL,9.79 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で16時間反応させた。ピリジン(63.1 μL, 746 μmol)とクロロトリエトキシシラン(96.1 μL, 489 μmol)を順に反応溶液に加え、−20℃で2時間反応させた。生成物の精製はメタノールの代わりにアセトニトリルを用いて実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化39】
【0052】
<実施例20> 末端封止剤としてアセトキシトリメチルシランを用いた重合によるPDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),179 μL,水99.1 μmol)、及び塩化メチレン(358 μL)からなる溶液に、TMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で1時間反応させた。ピリジン(63.9 μL, 756 μmol)とアセトキシトリメチルシラン(73.3 μL, 496 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で6.5時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化40】
【0053】
<実施例21> 末端封止剤としてジメチルアミノトリメチルシランを用いた重合によるPDMSの合成
実施例17と同じ条件でD(Me2)の重合を行った。ジメチルアミノトリメチルシラン(77.8 μL, 496 μmol)を反応溶液に加え、30℃で3.5時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【化41】
【0054】
<実施例22> 高分子量PDMSの合成
(Me2)(221 mg,0.991 mmol)、水/THF混合溶液(1/99(v/v),17.9 μL,水9.91 μmol)、塩化メチレン(519 μL)からなる溶液に、及びTMnPGのTHF溶液(100 mg mL−1,14.0 μL,9.91 μmol)を投入し、窒素雰囲気下30℃で6時間反応させた。ピリジン(6.4 μL, 79 μmol)とクロロ(ジメチル)フェニルシラン(8.3 μL, 50 μmol)を順に反応溶液に加え、30℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
<比較例1>
オクタメチルシクロテトラシロキサン(499 mg,1.68 mmol)、ヘキサメチルジシロキサン(7.6 mg,27 μmol)、及びTBD(2.0 mg,14 μmol)の混合物を窒素雰囲気下で100℃に加熱して反応を開始した。反応開始から4時間の時点でTBDに対して過剰の安息香酸を加えて反応を停止した。NMRにより測定したモノマーの反応率は38.1%であり、SECにより測定した生成物のMnおよび分子量分散度はポリスチレン換算でそれぞれ32.1kg mol−1及び2.11であった。
【0057】
<比較例2>
オクタメチルシクロテトラシロキサン(250 mg,0.843 mmol)及びヘキサメチルジシロキサン(2.7 μL,13 μmol)の混合物に窒素雰囲気下100℃でイソブチル置換アザホスファトラン(TiBP)のTHF溶液(10.0 mg mL−1,100 μL,2.92 μmol)を投入して反応を開始した。反応開始から2時間および22時間の時点ではモノマーの消費が認められなかった。さらにその後、水(1.5 μL, 83 μmol)を反応溶液に添加してさらに反応を5.5時間継続したがなおもモノマーの消費は観測されなかった。
【0058】
<比較例3>
(Me2)(283 mg,1.27 mmol)、3−フェニル−1−プロパノール(17.3 mg,127 μmol)、及びTHF(384 μL)からなる溶液に、TBDのTHF溶液(88.4 mg mL−1,20.0 μL,12.7 μmol)を投入し、窒素雰囲気下0℃で160分間反応させた。ピリジン(82 μL, 1.0 mmol)とクロロジメチル(フェニル)シラン(107 μL, 635 μmol)を順に反応溶液に加え、0℃で2時間反応させた。生成物の精製は実施例1と同様の方法によって行った。NMRにより測定したモノマーの反応率は97.2%であり、生成物のMn及び分子量分散度はそれぞれH NMRおよびSEC測定により5.55kg mol−1及び1.38と決定された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の製造方法によって得られたポリシロキサン構造含有化合物は、高耐熱性材料等として利用することができる。様々な材料に使用することができる。