【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1)
スーパーグロース法により製造された単層カーボンナノチューブ(以下、SGと記述する、G/D比=5) 50mgとタウロデオキシコール酸ナトリウム(以下、TDOCと記述する) 450mgを24.5gの水に加え、超音波攪拌装置(株式会社日本精機製作所製、USS-1)を用いて予備分散した後、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US-50)を用いて、本分散を行うことでSG-TDOC分散液を得た。
【0034】
TDOC450mgを水24.5gに溶かした水溶液のpHは6.4であった。
【0035】
SG-TDOC分散液を注入ノズル(内径1.25mm)からイソプロピルアルコール(以下、IPAと記述する)に注入しSG-TDOC紡糸原糸の作製を行った。
【0036】
得られたSG-TDOC紡糸原糸をIPAにて1日間放置した後、水に置換し3日以上浸漬した。
【0037】
水中から取り出したSG-TDOC紡糸原糸の両端を治具で固定し、延伸装置(株式会社SDI社製)を用い片端を駆動させることにより15%延伸し、乾燥し、SG-TDOC糸(CNT糸)を得た。
【0038】
得られたSG-TDOC糸のG/D比は2.64であった。
【0039】
得られたSG-TDOC糸を示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA、STA7200日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、大気中、30℃から1000℃の温度範囲での重量変化を観察した。結果として380℃にて重量が低下することを確認した。従ってCNT糸の表面にTDOCが付着していることを確認した。
【0040】
(比較例1)
SG 50mgとコール酸ナトリウム(以下、SCと記述する) 450mgを24.5gの水に加え、超音波攪拌装置(株式会社日本精機製作所製、USS-1)を用いて予備分散した後、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US-50)を用いて、本分散を行うことでSG-SC分散液を得た。
【0041】
SC450mgを水24.5gに溶かした溶液のpHは8.0であった。
【0042】
SG-SC分散液を注入ノズル(内径1.25mm)からIPAに注入しSG-SC紡糸原糸の作製を行った。
【0043】
得られたSG-SC紡糸原糸をIPAにて1日間放置した後、水に置換し3日以上浸漬した。
【0044】
水中から取り出したSG-SC紡糸原糸の両端を治具で固定し、延伸装置を用い片端を駆動させることより15%延伸し乾燥し、SG-SC糸を得た。
(試験例1)
実施例1にて作製したSG-TDOC糸と比較例1にて作製したSG-SC糸の導電率を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から界面活性剤としてTDOCを用いて作製したSG-TDOC糸は界面活性剤としてSCを用いて作製したSG-SC糸と比較し、導電率が高いことが分かった。このようにSCよりもTDOCを用いることにより導電率を2.66倍以上向上できる。
【0047】
(実施例2)
eDips法により製造された単層カーボンナノチューブ(株式会社名城ナノカーボン社製、EC、以下、eDipsと記述する,G/D比=91) 50mgとTDOC 450mgを24.5gの水に加え、超音波攪拌装置(株式会社日本精機製作所製、USS-1)を用いて予備分散した後、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US-50)を用いて、本分散を行うことでeDips-TDOC分散液を得た。
【0048】
eDips-TDOC分散液を注入ノズル(内径1.25mm)からIPAに注入しeDips-TDOC紡糸原糸の作製を行った。
【0049】
得られたeDips-TDOC紡糸原糸をIPAにて1日間放置した後、水に置換し3日以上浸漬した。
【0050】
水中から取り出した凝集eDips-TDOC紡糸原糸の両端を治具で固定し、延伸装置を用い片端を駆動させることより12.5%延伸し、乾燥し、eDips-TDOC糸を得た。
【0051】
得られたeDips-TDOC糸のG/D比は38.6であった。
【0052】
得られたeDips-TDOC糸を示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA、STA7200日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、大気中、30℃から1000℃の温度範囲での重量変化を観察した。結果として380℃にて重量が低下することを確認した。従ってCNT糸の表面にTDOCが付着していることを確認した。
【0053】
(比較例2)
eDips 50mgとSC 450mgを24.5gの水に加え、超音波攪拌装置(株式会社日本精機製作所製、USS-1)を用いて予備分散した後、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US-50)を用いて、本分散を行うことでeDips-SC分散液を得た。
【0054】
eDips-SC分散液を注入ノズル(内径1.25mm)からIPAに注入しeDips-SC紡糸原糸の作製を行った。
【0055】
得られたeDips-SC紡糸原糸をIPAにて1日間放置した後、水に置換し3日以上浸漬した。
【0056】
水中から取り出したeDips-SC紡糸原糸の両端を治具で固定し、延伸装置を用い片端を駆動させることより12.5%延伸し、乾燥し、eDips-SC糸を得た。
(試験例2)
実施例2にて作製したeDips-TDOC糸と比較例2にて作製したeDips-SC糸の導電率を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から界面活性剤としてTDOCを用いて作製したeDips-TDOC糸は界面活性剤としてSCを用いて作製したeDips-SC糸と比較し、導電率が高いことが分かった。このようにSCよりもTDOCを用いることにより導電率を1.80倍以上向上できる。
【0059】
(実施例3)
eDips 20mgとTDOC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-TDOC分散液を得た。
【0060】
TDOC120mgを水9.86gに溶かした水溶液のpHは6.8であった。
【0061】
得られた分散液を注入ノズル(内径0.9mm)からIPA液中に注入し、eDips-TDOC紡糸原糸の作製を行った。
【0062】
IPA液中にて30分間放置した後、IPA液中から取り出し、水に1日以上浸漬した。
【0063】
水中から取り出した凝集eDips-TDOC紡糸体を湿潤状態で一端を治具で固定し、他端に10g重の荷重をかけて延伸し、eDips-TDOC糸を得た。
【0064】
(比較例3)
eDips 20mgとSC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-SC分散液を得た。
【0065】
SC120mgを水9.86gに溶かした水溶液のpHは7.6であった。
【0066】
得られた分散液を注入ノズル(内径0.9mm)からIPA液中に注入し、eDips-SC紡糸原糸の作製を行った。
【0067】
IPA液中にて30分間放置した後、IPA液中から取り出し、水に1日以上浸漬した。
【0068】
水中から取り出した凝集eDips-SC紡糸体を湿潤状態で一端を治具で固定し、他端に10g重の荷重をかけて延伸し、eDips-SC糸を得た。
(試験例3)
実施例3にて作製したeDips-TDOC糸と比較例3にて作製したeDips-SC糸の導電率を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果から界面活性剤としてTDOCを用いて作製したeDips-TDOC糸は界面活性剤としてSCを用いて作製したeDips-SC糸と比較し、導電率が高いことが分かった。このようにSCよりもTDOCを用いることにより導電率を1.73倍以上向上できる。
【0071】
(実施例4)
eDips20mgとTDOC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-TDOC分散液を得た。
【0072】
得られた分散液を注入ノズル(内径0.51mm)からIPA液中に注入し、eDips-TDOC紡糸原糸の作製を行った。
【0073】
IPA液中にて30分間放置した後、IPA液中から取り出し、水に1日以上浸漬した。
【0074】
水中から取り出したeDips-TDOC紡糸原糸を湿潤状態で一端を治具で固定し、他端に3g重の荷重をかけて延伸し、eDips-TDOC糸を得た。
【0075】
(比較例4)
eDips20mgとSC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-SC分散液を得た。
【0076】
得られた分散液を注入ノズル(内径0.51mm)からIPA液中に注入し、eDips-SC紡糸原糸の作製を行った。
【0077】
IPA液中にて30分間放置した後、IPA液中から取り出し、水に1日以上浸漬した。
【0078】
水中から取り出したeDips-SC紡糸原糸を湿潤状態で一端を治具で固定し、他端に3g重の荷重をかけて延伸し、eDips-SC糸を得た。
(試験例4)
実施例4にて作製したeDips-TDOC糸と比較例4にて作製したeDips-SC糸の導電率を表3に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
表4の結果から界面活性剤としてTDOCを用いて作製したeDips-TDOC糸は界面活性剤としてSCを用いて作製したeDips-SC糸と比較し、導電率が高いことが分かった。このようにSCよりもTDOCを用いることにより導電率を1.48倍以上向上できる。
【0081】
(実施例5)
eDips20mgとTDOC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-TDOC分散液を得た。
【0082】
得られた分散液を注入ノズル(内径1.25mm)から25%塩化ナトリウム水溶液中(pH=6.1)に注入することによりeDips-TDOC紡糸原糸の作製を行った。
【0083】
25%塩化ナトリウム水溶液中にて1日間放置した後、IPAに置換し1日放置した後、水に置換し1日以上浸漬した。
【0084】
水中から取り出した凝集eDips-TDOC紡糸原糸を湿潤状態で一端を治具で固定し、片端に10g重の荷重をかけて延伸し、eDips-TDOC糸を得た。
【0085】
(比較例5)
eDips20mgとSC 120mgを9.86gの水に加え、超音波攪拌装置30分間35℃を用いて攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて処理し、eDips-SC分散液を得た。
【0086】
得られた分散液を注入ノズル(内径1.25mm)から25%塩化ナトリウム水溶液中(pH=6.1)に注入することによりeDips-SC紡糸原糸の作製を行った。
【0087】
25%塩化ナトリウム水溶液中にて1日間放置した後、IPAに置換し1日放置した後、水に置換し1日以上浸漬した。
【0088】
水中から取り出した凝集eDips-SC紡糸原糸を湿潤状態で一端を治具で固定し、片端に10g重の荷重をかけて延伸したが、延伸途中で破断した。そこで片端に1g重以下の荷重をかけて延伸することによりeDips-SC糸を得た。
(試験例5)
実施例5にて作製したeDips-TDOC糸と比較例5にて作製したeDips-SC糸の導電率を表3に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
表5の結果から界面活性剤としてTDOCを用いて作製したeDips-TDOC糸は界面活性剤としてSCを用いて作製したeDips-SC糸と比較し、導電率が高いことが分かった。このようにSCよりもTDOCを用いることにより導電率を1.35倍以上向上できる。