(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n型不純物を含有する第1化合物半導体層と、p型不純物を含有する第2化合物半導体層と、前記第1化合物半導体層および前記第2化合物半導体層の間に設けられる発光層と、を有する光共振器と、
前記光共振器に対して、サブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入するパルス注入手段と、を備え、
前記光共振器は、利得領域と吸収領域とに分離されたマルチセクション構造を有し、
前記発光層は、5周期以上の多重量子井戸構造を有し、
前記光共振器の光子寿命の2.5倍よりも短いパルス幅で光パルスを発生する半導体レーザ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者等が得た知見について説明する。
【0009】
発生する光パルスのパルス幅が、フェムト秒から数ピコ秒である超短パルスレーザとしては、例えば、モード同期法を用いた固体レーザが知られている。しかしながら、このような固体レーザは、高コストかつ大型であり、温調やクリーンな環境がないと動作が不安定である。したがって、低コストかつ小型で、高安定動作をする超短パルス半導体レーザが望まれてきた。
【0010】
半導体レーザにおいて、短パルスを発生させる方法としては、例えば、モード同期法や利得スイッチング法が知られている。
【0011】
モード同期法を用いた半導体レーザでは、フェムト秒から数ピコ秒の超短パルスの発生報告がある。しかしながら、モード同期法を用いた半導体レーザは、ロバスト性が低く、繰り返し周波数に任意性がないという問題があった。
【0012】
一方、利得スイッチング法を用いた半導体レーザは、モード同期法に比べて高安定に動作し、繰り返し周波数を任意に設定できる。しかしながら、利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは、発生する光パルスのパルス幅の下限が光共振器の光子寿命によって理論的に制限され、また、実際に発生できる光パルスのパルス幅は光共振器の光子寿命の2.5倍以上にとどまるため、フェムト秒から数ピコ秒の超短パルス発生は困難とされていた。
【0013】
本願発明者等は、上述のような事象に対して鋭意研究を行った。その結果、光共振器をマルチセクション構造とし、サブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することによって、光共振器の光子寿命の2.5倍よりも短いパルス幅を有する光パルスを発生できること、さらには、当該光子寿命よりも短いパルス幅を有する光パルスを発生できること、そしてこれにより、フェムト秒から数ピコ秒の超短パルスを安定的に発生できることを見出した。
【0014】
本発明は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
<本発明の第1実施形態>
(1)半導体レーザの構成
まず、本実施形態の半導体レーザ10の構成について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の半導体レーザ10の概略構成図である。本実施形態の半導体レーザ10は、
図1に示すように、パルス注入手段11と、光共振器20とを備えている。
【0018】
パルス注入手段11は、例えば、パルス電流を光共振器20に印加するように構成されている。パルス注入手段11が印加するパルス電流によって、半導体レーザ10を駆動することができる。
【0019】
図2(a)は、本実施形態の光共振器20の長手方向に沿った縦断面図である。
図2(b)は、本実施形態の光共振器20の長手方向に垂直な断面図である。
図2(a)および
図2(b)に示すように、本実施形態の光共振器20は、第1化合物半導体層21と、第2化合物半導体層22と、発光層23とを有している。
【0020】
なお、本明細書において、光共振器20等の「長手方向」とは、半導体レーザ10の放出光に平行な方向を意味し、「発振方向」と言い換えることができる。
【0021】
第1化合物半導体層21は、例えば、光共振器20の下部に設けられている。第1化合物半導体層21は、n型不純物を含有している。このような第1化合物半導体層21としては、例えば、SiをドープしたAlGaAs系化合物半導体が例示される。
【0022】
第2化合物半導体層22は、例えば、光共振器20の上部に設けられている。第2化合物半導体層22は、p型不純物を含有している。このような第2化合物半導体層22としては、例えば、CをドープしたAlGaAs系化合物半導体が例示される。なお、
図2(b)に示すように、第2化合物半導体層22には、光共振器20の長手方向から見た際に、例えば、凸部が形成されている。
【0023】
発光層23は、第1化合物半導体層21および第2化合物半導体層22の間に設けられている。発光層23は、後述する多重量子井戸構造を有している。
【0024】
図3は、発光層23の長手方向に沿った縦断面図である。
図3に示すように、発光層23は、複数の井戸層24と、複数の障壁層25とが交互に積層された多重量子井戸構造を有している。(井戸層24、障壁層25)の組合せとしては、例えば、(GaAs、Al
xGa
(1−x)As)が例示される。
【0025】
発光層23は、井戸層24および障壁層25が、5周期以上積層された多重量子井戸構造を有している。5周期未満の量子井戸構造を有する発光層23を用いる場合、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることが困難となる。これに対し、発光層23が5周期以上の多重量子井戸構造を有することで、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。発光層23は、10周期以上の多重量子井戸構造を有することが好ましい。これにより、発生する光パルスのパルス幅をより短くすることができる。発光層23は、20周期以上の多重量子井戸構造を有することがより好ましい。これにより、発生する光パルスのパルス幅をさらに短くすることができる。また、発生する光パルスのピーク強度を向上させることができる。
【0026】
なお、光共振器20の光子寿命t
phは、以下の式(1)で定義される。
【数1】
式(1)では、v
gは群速度である。a
inは透明キャリア密度における内部損失である。a
mはミラー損失である。群速度v
gは、以下の式(2)で定義される。
【数2】
式(2)では、cは光速である。n
gは群屈折率である。また、ミラー損失a
mは、以下の式(3)で定義される。
【数3】
式(3)では、Lは共振器長である。R
1は一方の反射鏡の反射率である。R
2は他方の反射鏡の反射率である。なお、共振器長Lが数百μm程度の一般的な光共振器の場合、光子寿命t
phは、例えば、数ピコ秒程度である。本実施形態の光共振器20の光子寿命t
phは、具体的には、例えば、2psである。
【0027】
ここで、従来の技術常識では、多重量子井戸構造の周期数を増やすと、キャリア注入量が増えるため、半導体レーザが高速動作し難くなると考えられてきた。
【0028】
また、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザは、発生する光パルスのパルス幅が光共振器の光子寿命t
phによって制限されるため、光子寿命t
phよりも短いパルス幅を有する光パルスを発生させることは理論的に不可能と考えられていた。また、実際に発生できる光パルスのパルス幅は、光共振器の光子寿命t
phの2.5倍以上にとどまるため、光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることは困難とされていた。
【0029】
これに対し、本実施形態の半導体レーザ10は、敢えて5周期以上の多重量子井戸構造を採用するとともに、サブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することによって、従来の技術常識の予想を超える短いパルス幅を有する光パルスを発生させることができる。本実施形態の半導体レーザ10は、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは実現されなかった、光共振器の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができ、さらには、光子寿命t
phより短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。
【0030】
また、本実施形態の光共振器20は、例えば、
図2(a)に示すように、利得領域Z1と、吸収領域Z2とを有している。利得領域Z1および吸収領域Z2は、光共振器20の長手方向(発振方向)に沿って交互に配置されている。利得領域Z1は、例えば、光共振器20の長手方向両端部にそれぞれ配置され、吸収領域Z2は利得領域Z1の間に配置されている。このように、光共振器が利得領域Z1と、吸収領域Z2とを有する構造は、マルチセクション構造と呼ばれる。光共振器20がマルチセクション構造を有することで、レーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得から吸収への遷移を急峻化することができる。これにより、発生する光パルスのテール成分を小さくし、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。
【0031】
吸収領域Z2の長手方向の幅は、任意に選択することができる。吸収領域Z2の長手方向の幅を変化させることで、発生する光パルスのパルス幅およびピーク強度を制御することができる。
【0032】
吸収領域Z2の長手方向の幅は、光共振器20の長手方向の幅の1%以上50%以下とすることが好ましい。吸収領域Z2の長手方向の幅が、光共振器20の長手方向の幅の1%未満では、発生する光パルスのパルス幅を短くする効果が得られ難い。これに対し、吸収領域Z2の長手方向の幅を、光共振器20の長手方向の幅の1%以上とすることで、効率よく発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。一方で、吸収領域Z2の長手方向の幅が、光共振器20の長手方向の幅の50%を超えると、発生する光パルスのピーク強度が低くなる可能性がある。これに対し、吸収領域Z2の長手方向の幅を、光共振器20の長手方向の幅の50%以下とすることで、発生する光パルスのピーク強度を向上することができる。
【0033】
ここで、本実施形態の光共振器20が有する電極構造について説明する。本実施形態の光共振器20は、例えば、
図2(b)に示すように、第1電極31と、第2電極32と、絶縁層33とを有している。
【0034】
第1電極31は、例えば、第1化合物半導体層21を覆うように設けられ、第1化合物半導体層21に電気的に接続されている。第2電極32は、例えば、第2化合物半導体層22の一部を覆うように設けられ、第2化合物半導体層22に電気的に接続されている。第2電極32は、
図2(a)に示すように、利得領域Z1の上部にそれぞれ位置している。絶縁層33は、例えば、光共振器20の長手方向から見た際に、第2化合物半導体層22の凸部の両側に設けられている。第1電極31および第2電極32は、パルス注入手段11に接続されるように構成されている。
【0035】
絶縁層33は、光共振器20の浮遊容量を小さくするためのキャパシタの誘電体として機能する。このような絶縁層33としては、例えば、ポリイミドなどの絶縁体を用いることができる。絶縁層33は、光共振器20の浮遊容量が充分小さくなるように構成されていることが好ましい。光共振器20の浮遊容量を小さくすることで、半導体レーザ10を高速に駆動させることができる。具体的には、例えば、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となる。つまり、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となるように、絶縁層33を構成することが好ましい。
【0036】
また、第2電極32の面積は、充分小さいことが好ましい。第2電極32の面積を小さくすることで、半導体レーザ10を高速に駆動させることができる。具体的には、例えば、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となる。つまり、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となるように、第2電極32の面積を設定することが好ましい。
【0037】
本実施形態の光共振器20は、上述の電極構造を有している。これにより、光共振器20の利得領域Z1に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となる。
【0038】
(2)半導体レーザの駆動方法
次に、本実施形態の半導体レーザ10の駆動方法について説明する。
【0039】
図4は、光共振器20に印加するパルス電流の模式図である。
図4に示すように、光共振器20に印加するパルス電流は、例えば、時間幅t、高さiの矩形状のパルス電流である。パルス注入手段11は、任意のタイミングで上述のパルス電流を光共振器20に印加することができる。
【0040】
光共振器20に印加するパルス電流の時間幅tは、サブナノ秒、具体的には1ns未満である。パルス電流の時間幅tを1ns未満とすることで、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。
【0041】
光共振器20に印加するパルス電流の高さiは、光共振器20の定常発振の閾値電流i
thの2倍以上であることが好ましい。パルス電流の高さiが閾値電流i
thの2倍未満では、高速なキャリアダイナミクスが実現し難くなる。これに対し、パルス電流の高さiを閾値電流i
thの2倍以上とすることで、高速なキャリアダイナミクスを実現することができる。これにより、レーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得吸収変化を急峻化し、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。また、パルス電流の高さiは、閾値電流i
thの5倍以上であることがより好ましい。これにより、発生する光パルスのパルス幅をさらに短くすることができる。
【0042】
図5(a)は、本実施形態による、多重量子井戸構造およびマルチセクション構造を有する半導体レーザのレーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得吸収変化を示すグラフである。
図5(b)は、比較形態による、ダブルヘテロ構造およびシングルセクション構造を有する半導体レーザのレーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得吸収変化を示すグラフである。なお、
図5(a)および
図5(b)において、縦軸の正の値は利得を示し、負の値は吸収を示している。
【0043】
図5(b)に示すように、比較形態による半導体レーザでは、利得から吸収への変化が急峻化しておらず、尾を引くような遷移になっている。そのため、発生する光パルスのテール成分が大きくなり、発生する光パルスのパルス幅が長くなってしまう可能性がある。これに対し、
図5(a)に示すように、本実施形態では、すべてのエネルギー帯(0.000eV〜0.200eV)において、利得から吸収への変化が急峻化しており、立ち上がりおよび立下りが共にシャープな遷移になっている。そのため、発生する光パルスのテール成分を小さくし、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。なお、多重量子井戸構造およびマルチセクション構造の少なくとも一方によって、比較形態と比べ、発生する光パルスのパルス幅を短くできることも、本願発明者等は確認している。
【0044】
図6は、本実施形態の光共振器20に印加するパルス電流の時間幅t(つまり、光共振器20に対し励起エネルギーを注入する時間幅t)と、発生する光パルスのパルス幅と、の関係の一例を示すグラフである。本実施形態では、上述の半導体レーザ10の構成および駆動方法によって、
図6に示すように、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。さらに、好ましくは、光子寿命t
phより短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。これらは、従来の技術常識の予想を超える効果であり、従来の利得スイッチング法とは異なるメカニズムが作用しているものと考えられる。このような新規のメカニズムを、本明細書では「超利得スイッチング法」と呼ぶものとする。
【0045】
図6に示す例において、光共振器20の光子寿命t
phは2.0psであり、その2.5倍、2.0倍および1.5倍は、それぞれ、5.0ps、4.0psおよび3.0psである。
図6に示す例では、光共振器20に印加するパルス電流の時間幅tを、1ns(1000ps)とすることで、発生する光パルスのパルス幅を、光共振器20の光子寿命t
phを少し上回る2.2ps程度まで短くすることができる。このことから、時間幅tを、1ns未満(サブナノ秒)とすることで、発生する光パルスのパルス幅を、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短くすること、好ましくは2.0倍より短くすること、より好ましくは1.5倍より短くすることができると理解される。さらに、パルス電流の時間幅tを、例えば600ps未満とすることで、光パルスのパルス幅を、光共振器20の光子寿命t
phよりも短くすることができる。また、パルス電流の時間幅tを、例えば70ps未満とすることで、光パルスのパルス幅を、フェムト秒台(1ps未満)とすることができる。
【0046】
上述のように、光共振器20に対し励起エネルギーを注入する時間幅tを、例えば1ns未満(サブナノ秒)の範囲内で適宜設定することで、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは得られなかった短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。時間幅tは、発生させたいパルス幅に応じて、適宜設定されてよい。例えば、パルス幅が光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短くなるように、また例えば、パルス幅が光共振器20の光子寿命t
phより短くなるように、また例えば、パルス幅が1ps未満となるように、時間幅tは、必要に応じて適宜設定されてよい。なお、時間幅tを1ns未満(サブナノ秒)の範囲内で設定する態様を例示しているが、パルス幅をより確実に短くするために、時間幅tは、例えば900ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば800ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば700ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば600ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば500ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば400ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば300ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば200ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば100ps未満の範囲内で設定されてもよい。
【0047】
なお、時間幅tの下限は、特に制限されないが、例えば2ps以上(また例えば10ps以上)であることが例示される。本例において、時間幅tが2ps未満(または10ps未満)では、光パルスのパルス幅を短くする効果が飽和する。これに対し、時間幅tを2ps以上(または10ps以上)とすることで、光パルスのパルス幅を効率よく制御することができる。なお、本例では、0.4ps程度までパルス幅を短くすることができる。
【0048】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0049】
(a)本実施形態の光共振器20は、マルチセクション構造を有している。これにより、レーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得から吸収への遷移を急峻化することができる。したがって、発生する光パルスのテール成分を小さくし、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。
【0050】
ここで、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは、上述のように、光共振器の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることは困難とされていた。
【0051】
これに対し、本実施形態では、マルチセクション構造と、超利得スイッチング法とを組み合わせることによって、従来の技術常識の予想を超える超短パルスを発生させることができる。本実施形態の半導体レーザ10は、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは実現されなかった、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。好ましくは、光共振器20の光子寿命t
phのより短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。そしてこれにより、フェムト秒から数ピコ秒の超短パルスを安定的に発生させることができる。
【0052】
(b)本実施形態の発光層23は、井戸層24および障壁層25が、5周期以上積層された多重量子井戸構造を有している。そのため、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。好ましくは、光共振器20の光子寿命t
phより短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。
【0053】
ここで、従来の技術常識では、多重量子井戸構造の周期数を増やすと、キャリア注入量が増えるため、半導体レーザが高速動作し難くなると考えられてきた。
【0054】
また、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザは、上述のように、光共振器の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることは困難とされていた。
【0055】
これに対し、本実施形態の半導体レーザ10は、敢えて5周期以上の多重量子井戸構造を採用し、さらに超利得スイッチング法を用いることによって、従来の技術常識の予想を超える短いパルス幅を有する光パルスを発生させることができる。本実施形態の半導体レーザ10は、従来の利得スイッチング法を用いた半導体レーザでは実現されなかった、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。好ましくは、光共振器20の光子寿命t
phより短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。そしてこれにより、フェムト秒から数ピコ秒の超短パルスを安定的に発生させることができる。
【0056】
(c)本実施形態の発光層23を10周期以上の多重量子井戸構造とすることで、発生する光パルスのパルス幅をより短くすることができる。また、本実施形態の発光層23を20周期以上の多重量子井戸構造とすることで、発生する光パルスのパルス幅をさらに短くすることができる。また、発生する光パルスのピーク強度を向上させることができる。
【0057】
(d)本実施形態の絶縁層33は、光共振器20の浮遊容量が充分小さくなるように構成されていることが好ましい。光共振器20の浮遊容量を小さくすることで、半導体レーザ10を高速に駆動させることができる。具体的には、例えば、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となる。
【0058】
(e)本実施形態の第2電極32の面積は、充分小さいことが好ましい。第2電極32の面積を小さくすることで、半導体レーザ10を高速に駆動させることができる。具体的には、例えば、光共振器20に対してサブナノ秒の時間幅で励起エネルギーを注入することが可能となる。
【0059】
(f)本実施形態の光共振器20に印加するパルス電流の時間幅tは、サブナノ秒、具体的には1ns未満である。これにより、光共振器20の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。
【0060】
(g)本実施形態の光共振器20に印加するパルス電流の高さiは、光共振器20の定常発振の閾値電流i
thの2倍以上であることが好ましい。これにより、高速なキャリアダイナミクスを実現することができる。したがって、レーザ発振スペクトルにおける時間領域の利得吸収変化を急峻化し、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。また、パルス電流の高さiは、閾値電流i
thの5倍以上であることがより好ましい。これにより、発生する光パルスのパルス幅をさらに短くすることができる。
【0061】
(4)第1実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
(4−1)第1実施形態の変形例1
図7(a)は、本変形例の半導体レーザ70の概略構成図である。
図7(a)に示すように、本変形例の半導体レーザ70は、後述する逆バイアス電圧を印加する手段としてのバイアス電源72を有する点で、第1実施形態の半導体レーザ10とは異なっている。
【0063】
図7(b)は、本変形例の光共振器71の長手方向に沿った縦断面図である。
図7(b)に示すように、本変形例の光共振器71は、第3電極73を有する点で、第1実施形態の光共振器20とは異なっている。第3電極73は、第2化合物半導体層22の上部の一部を覆うように、吸収領域Z2の上部に設けられており、第2化合物半導体層22と電気的に接続されている。第2電極32と、第3電極73との間には、分離溝74が設けられており、第2電極32および第3電極73が電気的に接触しないように構成されている。
【0064】
本変形例では、第1電極31および第2電極32を介して光共振器71の利得領域Z1にパルス電流を印加する際に、バイアス電源72を用いて、第1電極31および第3電極73を介して光共振器71の吸収領域Z2に電圧を印加する。利得領域Z1に対して印加するパルス電流を順バイアスとすると、吸収領域Z2に対して印加する電圧は逆バイアスとなる。吸収領域Z2に逆バイアス電圧を印加することで、光共振器71の作製精度に公差があったとしても、逆バイアス電圧の印加量を制御することによって発生する光パルスのパルス幅を微調整し、校正することができる。これにより、半導体レーザ装置の生産歩留まり向上が可能となる。また、発生する光パルスのピーク強度を制御することができる。
【0065】
(4−2)第1実施形態の変形例2
図8は、本変形例の光共振器80の長手方向に沿った縦断面図である。
図8に示すように、本変形例の光共振器80は、第2電極32および絶縁層33を有さず、第3電極73を有する点で、第1実施形態の光共振器20とは異なっている。
【0066】
本変形例では、光共振器80にパルス電流を印加する代わりに、パルス注入手段として、光共振器80に対して上方より励起光を照射することで励起エネルギーを注入する。この際、第3電極73によって励起光の一部が反射されるため、励起光による励起エネルギーを利得領域Z1のみに注入することができる。励起光の光源としては、例えば、チタンサファイアレーザを用いることができる。
【0067】
本変形例の励起光の時間幅tは、サブナノ秒、具体的には1ns未満である。励起光の時間幅tを1ns未満とすることで、光共振器80の光子寿命t
phの2.5倍より短いパルス幅の光パルスを発生させることができる。
【0068】
本変形例においても、第1実施形態の変形例1と同様に、第1電極31および第3電極73を介して光共振器80の吸収領域Z2に逆バイアス電圧を印加してもよい。吸収領域Z2に逆バイアス電圧を印加することで、第1実施形態の変形例1と同様の効果が得られる。
【0069】
本変形例では、励起光によって光共振器80に励起エネルギーを注入するため、第2電極32や絶縁層33を設ける必要がなく、電極構造を単純化することができる。これにより、第1実施形態と比べて、より簡便に実施をすることが可能となる。
【0070】
(4−3)第1実施形態の変形例3
図9(a)は、本変形例の光共振器91の長手方向に平行な横断面図である。
図9(a)に示すように、本変形例の光共振器91は、利得領域Z1および吸収領域Z2の配置状態が第1実施形態の光共振器20とは異なっている。
【0071】
本変形例の利得領域Z1および吸収領域Z2は、例えば、
図9(a)に示すように、光共振器91を平面視した際に、光共振器91の長手方向に交差する方向(以下、「短手方向」という)に沿って交互に配置されている。吸収領域Z2は、例えば、光共振器91の短手方向両端部にそれぞれ配置され、利得領域Z1は吸収領域Z2の間に配置されている。
【0072】
図9(b)は、本変形例の光共振器91の一例を示す概略断面図(長手方向に垂直な断面図)である。
図9(b)に示すように、本変形例の光共振器91は、例えば、第3電極73が、第2化合物半導体層22の短手方向両端部に設けられている。本変形例では、第1電極31および第3電極73を介して光共振器91の吸収領域Z2に逆バイアス電圧を印加する。吸収領域Z2に逆バイアス電圧を印加することで、吸収領域Z2が光共振器91の発振方向(長手方向)に沿って配置されていなくても、吸収領域Z2の光吸収を促進することができる。これにより、発生する光パルスのテール成分を小さくし、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。また、第1実施形態と比べて、発生する光パルスのピーク強度を向上させることができる。
【0073】
図9(c)は、本変形例の光共振器91の他の例を示す概略断面図(長手方向に垂直な断面図)である。
図9(c)に示すように、本変形例の光共振器91は、例えば、第2化合物半導体層22の一部に、イオン注入領域Z3が設けられている。イオン注入領域Z3は、発光層23の一部に設けられてもよいし、第2化合物半導体層22および発光層23の境界部に設けられてもよい。本変形例では、イオン注入領域Z3にイオン注入を行うことによって、イオン注入領域Z3を吸収領域として機能させる。これにより、発生する光パルスのテール成分を小さくし、発生する光パルスのパルス幅を短くすることができる。また、第1実施形態と比べて、電極構造を単純化することができる。
【0074】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0075】
例えば、上述の第1実施形態では、利得領域Z1が光共振器20の長手方向両端部にそれぞれ配置され、吸収領域Z2は利得領域Z1の間に配置されている場合について説明した。また、例えば、上述の第1実施形態の変形例3では、吸収領域Z2が光共振器91の短手方向両端部にそれぞれ配置され、利得領域Z1は吸収領域Z2の間に配置されている場合について説明した。しかしながら、利得領域Z1および吸収領域Z2の配置状態は、上述の形態に限らず種々変更可能である。
【0076】
例えば、利得領域Z1が光共振器の長手方向の一端に配置され、吸収領域Z2が光共振器の長手方向の他端に配置されてもよい。また、例えば、利得領域Z1が光共振器の短手方向の一端に配置され、吸収領域Z2が光共振器の短手方向の他端に配置されてもよい。また、例えば、3個以上の利得領域Z1が光共振器の長手方向または短手方向に沿って複数配置され、吸収領域Z2が利得領域Z1の間にそれぞれ複数配置されてもよい。また、例えば、利得領域Z1が光共振器の長手方向および短手方向に沿って、格子状に複数配置され、吸収領域Z2が利得領域Z1の間にそれぞれ複数配置されてもよい。
【0077】
上述のように、利得領域Z1および吸収領域Z2の配置状態を種々変更することで、発生する光パルスのパルス幅およびピーク強度を制御することができる。
【実施例】
【0078】
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0079】
(1)光共振器の作製
以下のように、光共振器の試料1を作製した。
【0080】
GaAs基板を用意し、GaAs基板の上に、第1化合物半導体層として、Siを6〜7×10
17cm
−3ドープしたAl
0.33Ga
0.67Asを2000nmの厚さにエピタキシャル成長させた。
【0081】
第1化合物半導体層の上に、発光層として、井戸層(GaAs)および障壁層(Al
0.33Ga
0.67As)を50周期積層して、多重量子井戸構造を構成した。井戸層の厚さはそれぞれ12nm、障壁層の厚さはそれぞれ10nmとした。よって、発光層の厚さは1100nmとなった。
【0082】
発光層の上に、第2化合物半導体層として、Cを6〜7×10
17cm
−3ドープしたAl
0.33Ga
0.67Asを1700nmの厚さにエピタキシャル成長させた。
【0083】
試料1は、吸収領域を設けず、シングルセクション構造とした。第1電極を第1化合物半導体層の下部に設けた。光共振器の長手方向両端部をへき開面とし、光共振器の長手方向の幅を250μmとした。光共振器の光子寿命は2.2psであった。以上により、光共振器の試料1を得た。
【0084】
試料2は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、10μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0085】
試料3は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、20μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0086】
試料4は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、30μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0087】
試料5は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、40μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0088】
試料6は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、50μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0089】
試料7は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、60μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0090】
試料8は、マルチセクション構造とし、光共振器の長手方向両端部の利得領域の間に、80μmの吸収領域を設け、第3電極を吸収領域の上部に設けた。それ以外は試料1と同様に作製した。
【0091】
(2)半導体レーザの駆動
(1)で作製した試料1〜試料8に対して、チタンサファイアレーザを用いて、励起光を照射し、半導体レーザを駆動させた。励起光のパルス幅は2psとし、励起強度は光共振器の閾値の14倍とした。
【0092】
また、試料3に対しては、第1電極および第3電極をバイアス電源に接続し、逆バイアス電圧を印加しながら半導体レーザを駆動させた。逆バイアス電圧は−2V、−4V、−8V、−12Vとした。
【0093】
また、試料6に対しては、第1電極および第3電極をバイアス電源に接続し、逆バイアス電圧を印加しながら半導体レーザを駆動させた。逆バイアス電圧は−4V、−8V、−12Vとした。
【0094】
また、試料8に対しては、第1電極および第3電極をバイアス電源に接続し、逆バイアス電圧を印加しながら半導体レーザを駆動させた。逆バイアス電圧は−8V、−12Vとした。
【0095】
(3)光パルスのパルス幅およびピーク強度の評価
(2)で発生させた光パルスのパルス幅およびピーク強度の評価を行った結果を、表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
(3−1)光パルスのパルス幅の評価
No.1では、光共振器の光子寿命(2.2ps)より短いパルス幅の光パルス(1.61ps)を発生させることができた。すなわち、多重量子井戸構造を採用し、超利得スイッチング法を用いることで、光共振器の光子寿命より短いパルス幅の光パルスが発生することを確認した。なお、本実施例では50周期の多重量子井戸構造を採用しているが、本願発明者等は、5周期以上の多重量子井戸構造を採用し、超利得スイッチング法を用いることで、光共振器の光子寿命の2.5倍より短いパルス幅の光パルスが発生すること、さらに、光共振器の光子寿命より短いパルス幅の光パルスが発生することを確認している。
【0098】
また、マルチセクション構造を採用したNo.2〜No.8では、シングルセクション構造のNo.1(1.61ps)より短いパルス幅の光パルス(0.56〜1.25ps)を発生させることができた。すなわち、マルチセクション構造を採用することで、発生する光パルスのパルス幅をさらに短くできることを確認した。また、吸収領域の幅を変えることで、発生する光パルスのパルス幅を制御できることを確認した。
【0099】
また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.9〜No.12では、逆バイアス電圧を印加していないNo.3(0.86ps)より短いパルス幅の光パルス(0.60〜0.80ps)を発生させることができた。また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.13〜No.15では、逆バイアス電圧を印加していないNo.6(0.56ps)より長いパルス幅の光パルス(0.58〜0.68ps)を発生させることができた。また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.16〜No.17では、逆バイアス電圧を印加していないNo.8(0.69ps)より長いパルス幅の光パルス(0.76〜1.01ps)を発生させることができた。以上より、逆バイアス電圧の印加量を制御することによって、発生する光パルスのパルス幅を微調整できることを確認した。
【0100】
(3−2)光パルスのピーク強度の評価
No.1〜No.8では、光パルスのピーク強度が9.6〜25.2Wの範囲で変化した。すなわち、吸収領域の幅を変えることで、発生する光パルスのピーク強度を制御できることを確認した。
【0101】
また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.9〜No.12では、逆バイアス電圧を印加していないNo.3(22.0W)より大きいピーク強度の光パルス(23.0〜28.1W)を発生させることができた。また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.13〜No.15では、逆バイアス電圧を印加していないNo.6(25.2W)より小さいピーク強度の光パルス(16.3〜23.5W)を発生させることができた。また、吸収領域に逆バイアス電圧を印加したNo.16〜No.17では、逆バイアス電圧を印加していないNo.8(9.6W)より小さいピーク強度の光パルス(5.2〜8.8W)を発生させることができた。以上より、逆バイアス電圧の印加量を制御することによって、発生する光パルスのピーク強度を制御できることを確認した。
【0102】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0103】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
n型不純物を含有する第1化合物半導体層と、p型不純物を含有する第2化合物半導体層と、前記第1化合物半導体層および前記第2化合物半導体層の間に設けられる発光層と、を有する光共振器と、
前記光共振器に対して、サブナノ秒(1ns未満)の時間幅で励起エネルギーを注入するパルス注入手段と、を備え、
前記光共振器は、利得領域と吸収領域とに分離されたマルチセクション構造を有し、
前記光共振器の光子寿命の2.5倍よりも短いパルス幅で光パルスを発生する半導体レーザが提供される。好ましくは、前記光パルスの前記パルス幅は、前記光子寿命の2.0倍よりも短い。より好ましくは、前記光パルスの前記パルス幅は、前記光子寿命の1.5倍よりも短い。好ましくは、前記時間幅は600ps未満である。より好ましくは、前記時間幅は70ps未満である。また、前記時間幅は、例えば900ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば800ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば700ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば600ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば500ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば400ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば300ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば200ps未満の範囲内で設定されてもよいし、また例えば100ps未満の範囲内で設定されてもよい。
【0104】
(付記2)
付記1に記載の半導体レーザであって、
前記光共振器は、発振方向に沿って利得領域と吸収領域とに分離されたマルチセクション構造を有する。
【0105】
(付記3)
付記1に記載の半導体レーザであって、
前記光共振器は、前記発振方向と交差する方向に沿って利得領域と吸収領域とに分離されたマルチセクション構造を有する。
【0106】
(付記4)
付記1から付記3に記載の半導体レーザであって、
前記光共振器の光子寿命よりも短いパルス幅で光パルスを発生する(前記励起エネルギーを注入する前記時間幅は、前記光パルスの前記パルス幅が前記光共振器の光子寿命よりも短くなるように設定されている)。好ましくは、前記光パルスの前記パルス幅は、1ps未満である。
【0107】
(付記5)
付記1から付記4に記載の半導体レーザであって、
前記発光層は、5周期以上の多重量子井戸構造を有する。好ましくは、前記発光層は、10周期以上の多重量子井戸構造を有する。さらに好ましくは、前記発光層は、20周期以上の多重量子井戸構造を有する。
【0108】
(付記6)
付記1から付記5のいずれか1つに記載の半導体レーザであって、
前記吸収領域に対して逆バイアス電圧を印加する手段をさらに備える。