特許第6894110号(P6894110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894110
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ホログラム記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0065 20060101AFI20210614BHJP
   G03H 1/28 20060101ALI20210614BHJP
   G11B 7/1374 20120101ALI20210614BHJP
   G11B 7/1362 20120101ALI20210614BHJP
   G11B 7/1378 20120101ALI20210614BHJP
【FI】
   G11B7/0065
   G03H1/28
   G11B7/1374
   G11B7/1362
   G11B7/1378
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-32931(P2017-32931)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-137028(P2018-137028A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー・環境新技術先導プログラム/データセンタの省電力化を実現する大容量・高速光アーカイブシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】牛山 善太
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−114388(JP,A)
【文献】 特開2015−164085(JP,A)
【文献】 特開2005−078665(JP,A)
【文献】 特開2016−219087(JP,A)
【文献】 特開2011−238311(JP,A)
【文献】 特開2014−032727(JP,A)
【文献】 特開平07−020766(JP,A)
【文献】 特表2010−508617(JP,A)
【文献】 特開2006−343714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0065
G03H 1/28
G11B 7/1362
G11B 7/1374
G11B 7/1378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ情報を担持した信号光と参照光とを干渉させることにより形成されるホログラムをシフト多重方式によって記録媒体に多重記録すると共に、ホログラムが記録された記録媒体に参照光を照射することによりホログラムに記録されたデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
記録再生光源と、当該記録再生光源からの光を信号光用の光と参照光用の光とに分割する光分離手段と、当該信号光用の光を変調してデータ情報を担持した信号光を生成する空間光変調器と、当該信号光を記録媒体に集光して照射すると共に前記参照光用の光を球面波に変換して参照光として記録媒体に照射する一の集光用対物レンズと、当該集光用対物レンズに対する参照光用の光の入射方向を変更して記録媒体における参照光の照射領域の位置を信号光の照射領域の位置に対して一方向に微小変位させる参照光照射位置変位手段と、記録媒体に記録されたホログラムの再生光を結像レンズを介して受光する撮像素子とを備えており、
前記参照光照射位置変位手段から前記集光用対物レンズを介して記録媒体に至る光学系がfθ特性を有しており、
前記集光用対物レンズおよび前記結像レンズが無収差レンズよりなり、
前記集光用対物レンズから前記記録媒体に記録されたホログラムを介して前記撮像素子に至る光学系が略無収差であることを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
データ情報を担持した信号光と参照光とを干渉させることにより形成されるホログラムをシフト多重方式によって記録媒体に多重記録すると共に、ホログラムが記録された記録媒体に参照光を照射することによりホログラムに記録されたデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
記録再生光源と、当該記録再生光源からの光を信号光用の光と参照光用の光とに分割する光分離手段と、当該信号光用の光を変調してデータ情報を担持した信号光を生成する空間光変調器と、当該信号光を記録媒体に集光して照射すると共に前記参照光用の光を球面波に変換して参照光として記録媒体に照射する一の集光用対物レンズと、当該集光用対物レンズに対する参照光用の光の入射方向を変更して記録媒体における参照光の照射領域の位置を信号光の照射領域の位置に対して一方向に微小変位させる参照光照射位置変位手段と、記録媒体に記録されたホログラムの再生光を結像レンズを介して受光する撮像素子とを備えており、
前記参照光照射位置変位手段から前記集光用対物レンズを介して記録媒体に至る光学系がfθ特性を有しており、
前記集光用対物レンズと前記結像レンズとによって収差補正が行われる収差補正光学系が構成され、
前記集光用対物レンズから前記記録媒体に記録されたホログラムを介して前記撮像素子に至る光学系が略無収差であることを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項3】
前記参照光照射位置変位手段と前記集光用対物レンズとの間に、アフォーカルレンズを備えており、当該アフォーカルレンズと当該集光用対物レンズとによってfθ特性を有するfθ光学系が構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホログラム記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録再生装置に関する。更に詳しくは、2次元化されたデジタルビットパターンを記録媒体にホログラムとして多重に記録することにより大容量光メモリを構成する上で、高速記録再生が可能なホログラム記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラムを用いてデジタル情報を二次元的に記録再生するホログラム記録再生装置が提案されている。ホログラム記録再生装置においては、複数の画素よりなる空間光変調器で変調された、デジタル情報(データ情報)を担持した信号光と、当該信号光とコヒーレントな参照光とを記録媒体内で干渉させることにより得られる干渉縞をホログラムとして記録する。また、記録媒体に記録されたホログラムを再生する場合には、記録に用いた参照光をホログラムに照射することにより回折光を発生させ、例えばCCDなどの撮像素子上に、ホログラムとして記録されているデジタル情報の画像を形成させる。
【0003】
このようなホログラム記録再生方法の一としては、例えば、参照光として球面波(以下、「球面参照光」ともいう。)を用いた球面参照光シフト多重記録方式が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
球面参照光シフト多重記録の原理を図5を用いて説明すると、球面参照光は、平面波が複数存在するものと考えられる。従って、図5(a)に示すように、ホログラムHが記録された記録媒体10を当該記録媒体10の表面(図5(a)における上面)に沿って一方向(図5(a)における右方向)にわずかな距離シフトさせると、既に記録されたホログラムHの再生が不可となり、新たなホログラムをその記録領域の一部が既に記録されたホログラムHの記録領域と重なる状態で記録することが可能となる。記録媒体10のシフト量は、通常、10μm程度以上である。
再生可能な条件は、図5(b)に示すように、信号光の波数ベクトルks、参照光の波数ベクトルkrおよびホログラムの波数ベクトル(格子ベクトル)kgがブラッグの回折条件を満たす場合である。記録媒体10をシフトさせると、図5(c)に示すように、波数ベクトルの関係がブラッグの回折条件から外れ、ホログラムHの再生が不可となる。
ここに、図5(b)は、図5(a)において一点破線で囲んだ領域αにおける、信号光の波数ベクトルksと参照光の波数ベクトルkrとホログラムの波数ベクトル(格子ベクトル)kgとの関係を示す説明図である。また、図5(c)は、図5(a)において破線で囲んだ領域βにおける、信号光の波数ベクトルksと参照光の波数ベクトルkrとホログラムの波数ベクトル(格子ベクトル)kgとの関係を示す説明図である。
【0005】
このように、球面参照光シフト多重記録にあっては、参照光として球面波を用いることにより、記録媒体をわずかな距離シフトさせるだけで既に記録されたホログラムが再生されず、新たなホログラムを記録することが可能となってシフト多重記録を繰り返すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−098797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、従来のホログラム記録再生装置における光ビーム(信号光および参照光)と記録媒体との相対位置を制御する技術として、例えば、信号光および参照光を照射する光学機構は動かさず、記録媒体の2軸移動と回転とによってアクセスを行う方法が採用されている。この方法は、光学機構からの信号光および参照光の記録媒体における照射位置を固定し、記録媒体を移動させた後に停止させ、この状態でホログラムを形成し、再び、記録媒体を移動させた後に停止させ、新たなホログラムを形成する処理を繰り返して行う(ストップアンドゴー方式)。
しかしながら、記録媒体を移動させるメカ機構のスピードによって、ホログラムの記録再生時のデータ転送速度が制限されるため、高速アクセスを阻害し、メモリ装置としての高速アクセス性能を大幅に制限することになる、という問題がある。具体的には、通常のメカ機構によるストップアンドゴーの動作においては、例えば100ms程度の静止時間が必要となり、1秒間に記録再生することのできるホログラムは10個程度となる。
【0008】
このような問題に対して、例えば、信号光と参照光の両方、あるいは参照光のみを記録媒体移動速度と一致させ、高速度でスイッチングを行うことによりシフト多重記録を行う方法が考えられる。
しかしながら、このようなシフト多重記録方式においては、信号光と参照光を記録媒体に照射する光学系が別々に構成されている場合(二光束干渉方式)には、光学系の調整が複雑となり、その調整誤差による信頼性の劣化が生じやすい。そのため、信号光と参照光を同一の集光用対物レンズに入射させることが望ましいことになる。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、球面参照光シフト多重記録方式を採用したホログラム記録再生装置において、ホログラムの高速な記録再生を高い信頼性で行うことができ、しかもコスト的に有利に製造することのできるホログラム記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホログラム記録再生装置は、データ情報を担持した信号光と参照光とを干渉させることにより形成されるホログラムをシフト多重方式によって記録媒体に多重記録すると共に、ホログラムが記録された記録媒体に参照光を照射することによりホログラムに記録されたデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
記録再生光源と、当該記録再生光源からの光を信号光用の光と参照光用の光とに分割する光分離手段と、当該信号光用の光を変調してデータ情報を担持した信号光を生成する空間光変調器と、当該信号光を記録媒体に集光して照射すると共に前記参照光用の光を球面波に変換して参照光として記録媒体に照射する一の集光用対物レンズと、当該集光用対物レンズに対する参照光用の光の入射方向を変更して記録媒体における参照光の照射領域の位置を信号光の照射領域の位置に対して一方向に微小変位させる参照光照射位置変位手段と、記録媒体に記録されたホログラムの再生光を結像レンズを介して受光する撮像素子とを備えており、
前記参照光照射位置変位手段から前記集光用対物レンズを介して記録媒体に至る光学系がfθ特性を有しており、
前記集光用対物レンズおよび前記結像レンズが無収差レンズよりなり、
前記集光用対物レンズから前記記録媒体に記録されたホログラムを介して前記撮像素子に至る光学系が略無収差であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のホログラム記録再生装置は、データ情報を担持した信号光と参照光とを干渉させることにより形成されるホログラムをシフト多重方式によって記録媒体に多重記録すると共に、ホログラムが記録された記録媒体に参照光を照射することによりホログラムに記録されたデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
記録再生光源と、当該記録再生光源からの光を信号光用の光と参照光用の光とに分割する光分離手段と、当該信号光用の光を変調してデータ情報を担持した信号光を生成する空間光変調器と、当該信号光を記録媒体に集光して照射すると共に前記参照光用の光を球面波に変換して参照光として記録媒体に照射する一の集光用対物レンズと、当該集光用対物レンズに対する参照光用の光の入射方向を変更して記録媒体における参照光の照射領域の位置を信号光の照射領域の位置に対して一方向に微小変位させる参照光照射位置変位手段と、記録媒体に記録されたホログラムの再生光を結像レンズを介して受光する撮像素子とを備えており、
前記参照光照射位置変位手段から前記集光用対物レンズを介して記録媒体に至る光学系がfθ特性を有しており、
前記集光用対物レンズと前記結像レンズとによって収差補正が行われる収差補正光学系が構成され、
前記集光用対物レンズから前記記録媒体に記録されたホログラムを介して前記撮像素子に至る光学系が略無収差であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のホログラム記録再生装置においては、前記参照光照射位置変位手段と前記集光用対物レンズとの間にアフォーカルレンズを備えており、当該アフォーカルレンズと当該集光用対物レンズとによってfθ光学系が構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホログラム記録再生装置においては、参照光照射位置変位手段を駆動させて球面参照光の照射位置と記録媒体における記録位置との相対位置を変更することにより、球面参照光シフト多重記録が行われる。参照光照射位置変位手段による球面参照光の照射領域の位置のシフトに要する時間は、記録媒体を移動または回動させる移動機構のストップアンドゴー動作における静止時間に比して極めて短い時間であるため、本発明のホログラム記録再生装置および本発明のホログラム記録再生方法によれば、ホログラムの高速な記録再生が可能となる。しかも、信号光および参照光を記録媒体に照射する集光用対物レンズが同一のものであって、記録参照光照射位置変位手段から集光用対物レンズに至る光学系がfθ特性を有し、かつ集光用対物レンズから記録媒体(ホログラム)を介して撮像素子に至る光学系が略無収差となるよう構成されている。このため、信号光および参照光の到達点を厳密に制御することができると共に、記録媒体における球面参照光の照射位置の、信号光の照射位置に対する相対位置の制御を確実に行うことができ、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のホログラム記録再生装置の構成を概略的に示す説明図である。
図2】参照光照射位置変位手段の機能を説明する概略図である。
図3】本発明のホログラム記録再生装置における球面参照光シフト多重記録の概要を示す説明図である。
図4】本発明のホログラム記録再生装置の一例における要部構成を示す説明用概略図である。
図5】従来における球面参照光シフト多重記録の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明のホログラム記録再生装置は、球面参照光シフト多重記録方式によって、ホログラムの多重記録を行うものであって、記録媒体を静止させた状態において、記録媒体における球面参照光の照射領域の位置が信号光の照射領域の位置に対して一方向にシフトされることにより球面参照光シフト多重記録が行われるものである。
【0017】
本発明のホログラム記録再生装置は、図1に示すように、データ情報を担持した信号光Lsと、球面参照光Lrとを記録媒体10に集光して照射する一の集光用対物レンズ40と、記録媒体10における球面参照光Lrの照射領域の位置を信号光Lsの照射領域の位置に対して一方向(図1においては左右方向)に微小変位させる参照光照射位置変位手段45と、記録媒体10に記録されたホログラムの再生光Lgを結像レンズ52を介して受光する撮像素子51とを備えており、参照光照射位置変位手段45から集光用対物レンズ40を介して記録媒体10に至る光学系がfθ特性を有しており、集光用対物レンズ40から記録媒体10に記録されたホログラムおよび結像レンズ52を介して撮像素子51に至る光学系が略無収差となるよう構成されている。
【0018】
集光用対物レンズ40は、開口数(NA)が0.6以上の高NAレンズに構成されている。高NAレンズが用いられることにより信号光Lsと球面参照光Lrとの交差角度を容易に最適化することができる。
集光用対物レンズ40は、複数枚例えば2〜4枚のレンズ素子が所定の機能が得られるよう組み合わせられてなるものである。
【0019】
本発明のホログラム記録再生装置においては、図2にも示すように、参照光照射位置変位手段45と集光用対物レンズ40との間の位置に、アフォーカルレンズ46を備えており、アフォーカルレンズ46と集光用対物レンズ40との組み合わせによってfθ特性を有するfθ光学系が構成されている。集光用対物レンズ40を構成する高NAレンズとアフォーカルレンズ46とによってfθ光学系が構成されていることにより、信号光Lsのフーリエ面に平行な方向のみで振動の影響が現れることから、高い信頼性を得ることができる。
【0020】
本発明のホログラム記録再生装置においては、集光用対物レンズ40および結像レンズ52の両者を無収差レンズにより構成することにより、あるいは、集光用対物レンズ40と結像レンズ52との組み合わせによって収差補正が行われる収差補正光学系を構成することにより、集光用対物レンズ40から記録媒体10に記録されたホログラムおよび結像レンズ52を介して撮像素子51に至る光学系が略無収差となるよう構成されている。
集光用対物レンズ40と結像レンズ52との組み合わせによって収差補正光学系が構成される場合には、無収差レンズに比してレンズ素子の枚数の少ないレンズによって集光用対物レンズ40および結像レンズ52の各々を構成することができるようになるため、コスト的に有利に製造することができる。
【0021】
本発明のホログラム記録再生装置においては、球面参照光Lrは、その半値幅が信号光Lsの半値幅より大きくなる照射条件で、記録媒体10に照射される。
球面参照光Lrの半値幅は、信号光Lsの半値幅の例えば1.5〜2.0倍の大きさであることが好ましい。
【0022】
参照光照射位置変位手段45は、球面参照光Lrの照射領域の位置を当該球面参照光Lrの照射領域内に信号光Lsの照射領域が含まれる範囲内でシフトさせるものであって、例えばガルバノミラーなどの走査型のミラーデバイスや、音響光学素子などにより構成することができる。
この例における参照光照射位置変位手段45は、例えば走査型のミラーデバイスにより構成されている。ミラーデバイスは、適宜の駆動手段によって、記録媒体10に対する信号光Lsの光軸および球面参照光Lrの光軸を含む平面に垂直な方向に延びる回転軸Cを中心として回転されることによりミラー角度が調整される。
【0023】
以下、本発明のホログラム記録再生装置において実施される球面参照光シフト多重記録について説明する。
図3は、本発明のホログラム記録再生装置における球面参照光シフト多重記録の概要を示す説明図である。
本発明のホログラム記録再生装置においては、先ず、図3(a)に示すように、信号光と、参照光照射位置変位手段を構成するミラーデバイスのミラー角度が基準となるミラー角度に設定された状態で照射される球面参照光とを干渉させることにより得られる干渉縞がホログラムとして記録される。図3(a)において、Asは信号光の照射領域であり、Arは球面参照光の照射領域である。その後、信号光の照射領域Asの位置が固定された状態において、参照光照射位置変位手段45を構成するミラーデバイスが所定角度回転されることにより参照光用の光の参照光集光用対物レンズ40に対する入射方向が変更される。これにより、図3(b)に示すように、記録媒体における球面参照光の照射領域Arの位置が、参照光照射位置変位手段45によって、信号光の照射領域Asの位置に対して相対的に微小変位され、この状態において、新たなホログラムがその記録領域の一部が既に記録されたホログラムの記録領域と重なる状態で記録される。このとき、球面参照光Lrの記録媒体10に対する入射角度は、既に記録されたホログラムの記録時における球面参照光の入射角度と同じである。
【0024】
そして、このような操作が繰り返して行われることにより、複数のホログラムが記録領域の一部が互いに重なる状態で前記一方向に並ぶシフト多重ホログラム列が記録される。図3(c)は、球面参照光の照射領域Arの位置が、図3(b)に示す状態からさらに一方向に微小変位された状態を示す。また、図3(a)〜図3(c)における上段に示すグラフは、それぞれ信号光の照射強度分布Isおよび球面参照光の照射強度分布Irを示す。
ここに、一のホログラムは、平面視で略円形状であって、そのサイズは、例えば直径が500μmである。球面参照光の照射領域Asの位置のシフト量dは、例えば10μm程度である。
【0025】
本発明のホログラム記録再生装置においては、記録媒体の表面における記録再生領域を複数のブロック単位に分割し、各ブロック単位を単位記録領域として、ブロック単位毎に、球面参照光シフト多重記録が行われる。このため、各ブロック単位に対してアクセスするための手段の一として、光学機構および記録媒体の一方を他方に対して相対的に前記一方向に移動させる移動機構を備えた構成とされている。
従って、記録媒体における信号光の照射領域の位置を、移動機構によって相対的にシフト(移動)させた状態において、参照光照射位置変位手段による球面参照光の照射領域の位置を微小変位させることにより球面参照光シフト多重記録が行われる。
【0026】
このような構成のものにおいては、球面参照光の照射領域の位置が参照光照射位置変位手段によって一方向に微小変位(シフト)されて球面参照光シフト多重記録が行われることによりシフト多重ホログラムが形成された後、移動機構によって、記録媒体における信号光の照射領域の位置が、既に記録されたシフト多重ホログラム列の記録時における信号光の照射領域の位置に対して相対的に移動される。この状態において、参照光照射位置変位手段によって、球面参照光の照射領域の位置が前記一方向にシフトされて球面参照光シフト多重記録が行われることにより、新たなシフト多重ホログラム列がその記録領域の一部が既に記録されたシフト多重ホログラム列の記録領域と重なる状態で記録される。
【0027】
さらにまた、本発明のホログラム記録再生装置においては、例えば、上述の球面参照光シフト多重記録を行って第1のシフト多重ホログラム列を記録した後、記録媒体を回動させた状態において、球面参照光シフト多重記録を行って新たなシフト多重ホログラム列をその記録領域の一部が既に記録されたシフト多重ホログラム列の記録領域と重なる状態で、多重記録(クロスシフト多重記録)する方法が実施されてもよい。
【0028】
このような方法が実施されるホログラム記録再生装置においては、例えば、記録媒体をその表面に沿った平面内で回動(回転)させる記録媒体回動機構と、ディスク状媒体をその表面に沿った平面内で移動させる記録媒体移動機構とを備えた構成とすればよい。
【0029】
本発明のホログラム記録再生装置においては、ホログラムの再生に際しては、参照光照射位置変位手段によって、球面参照光の照射領域の位置が記録媒体に対してシフトされることにより、あるいは、参照光照射位置変位手段および移動機構のいずれか一方または両方によって球面参照光の照射領域の位置が記録媒体に対してシフトされることにより、記録媒体に記録されたシフト多重ホログラム列を構成する複数のホログラムの各々が再生される。
【0030】
以下、本発明のホログラム記録再生装置の具体例について図を用いて説明する。
【0031】
図4は、本発明のホログラム記録再生装置の一例における要部構成を示す説明用概略図である。
このホログラム記録再生装置は、データ情報を担持した信号光および球面参照光を記録媒体10に照射する光学機構と、記録媒体駆動機構と、記録媒体10に記録されたホログラムに球面参照光が照射されることにより当該ホログラムから発せられる再生光(回折光)Lgを検出する再生光検出光学系とを備えている。このホログラム記録再生装置においては、記録媒体10として例えば透過型のディスク状のものが用いられる。
【0032】
光学機構は、例えば青色レーザ光源よりなる記録再生光源21と、記録再生光源21からの光を信号光用の光と参照光用の光とに分割する例えば偏向プリズムビームスプリッタよりなる光分離手段22と、信号光用の光をデータ情報を担持した信号光Lsとして記録媒体10の表面に照射する信号光照射光学系と、参照光用の光を球面波に変換して球面参照光Lrとして記録媒体10の表面に照射する球面参照光照射光学系とを備えている。
記録再生光源21と光分離手段22との間におけるレーザ光の光路上には、シャッタ23、偏光板24およびビーム整形用レンズ25が配置されている。
【0033】
信号光照射光学系は、光分離手段22からの信号光用の光のビーム径を拡大するビームエクスパンダ31と、信号光用の光を記録すべきページデータに対応した空間情報を用いて変調し、偏光方向(偏光面)を90°回転させて出射する空間光変調器(SLM)32と、空間光変調器32によって変調された光のフーリエ面での周波数帯域を調整するナイキストフィルタ34と、ナイキストフィルタ34からの光のフーリエ面での不要な直流成分光をカットする位相板35と、位相板35を透過した光を信号光Lsとして集光して記録媒体10に照射する集光用対物レンズ40とを備えている。
30は、ビームエクスパンダ31を介して入射される信号光用の光を反射して空間光変調器32に入射させると共に空間光変調器32から出射された光を透過する偏光プリズムビームスプリッタである。また、33は、空間光変調器32によって変調された光をナイキストフィルタ34を介して位相板35に入射させるためのリレーレンズである。
【0034】
球面参照光照射光学系は、光分離手段22からの参照光用の光の光量を調節するNDフィルタ41と、参照光用の光の偏光方向を変更する半波長板(λ/2波長板)42と、参照光用の光を球面波に変換して球面参照光Lrとして集光して記録媒体10に照射する、信号光照射光学系と共通の集光用対物レンズ40と、参照光用の光の集光用対物レンズ40に対する入射方向を変更することにより記録媒体10における球面参照光Lrの照射領域の位置を信号光Lsの照射領域の位置に対して一方向に相対的に微小変位させる参照光照射位置変位手段45と、参照光照射位置変位手段45から例えば平行光として入射される参照光用の光を平行光として出射するアフォーカルレンズ46とを備えている。図4における48は、参照光用の光の進行方向を変更して参照光照射位置変位手段45に照射するための反射ミラーである。
この球面参照光照射光学系においては、アフォーカルレンズ46と集光用対物レンズ40との組み合わせによってfθ特性を有するfθ光学系が構成されている。
【0035】
この例における参照光照射位置変位手段45は、例えばガルバノミラーなどの走査型のミラーデバイスにより構成されており、適宜の駆動手段によって、記録媒体10に対する信号光Lsの光軸および球面参照光Lrの光軸を含む平面に垂直な方向に回転軸Cを中心として回転されることによりミラー角度が調整される。
【0036】
再生光検出用光学系は、記録媒体10の裏面側に位置されており、例えばCCDよりなる撮像素子51と、記録媒体10に記録されたホログラムからの再生光Lgを撮像素子51に入射させる結像レンズ52とを備えている。
このホログラム記録再生装置においては、例えば、集光用対物レンズ40と結像レンズ52との組み合わせによって収差補正光学系が構成されている。上述したように、集光用対物レンズ40および結像レンズ52として無収差レンズを用いることによりホログラムからの再生光が略無収差となる状態で撮像素子51に結像されるよう構成されていてもよい。
【0037】
記録媒体駆動機構は、記録媒体10をその表面に沿った平面内で回動(回転)させる記録媒体回動機構と、記録媒体10をその表面に沿った平面内で移動させる記録媒体移動機構とを備えている。
【0038】
このホログラム記録再生装置においては、記録再生光源21から出射されたレーザ光は、光分離手段22によって信号光用の光と参照光用の光に分割される。信号光用の光は、ビームエクスパンダ31を介して偏光プリズムビームスプリッタ30に入射される。信号光用の光は、偏光プリズムビームスプリッタ30によって反射されて空間光変調器32に照射される。この空間光変調器32によって、信号光用の光は偏光面が90°変更されたデータパターンに変調される。空間光変調器33から出射された光は、偏光プリズムビームスプリッタ30を透過して、リレーレンズ33および位相板35を介して、集光用対物レンズ40に入射される。このとき、信号光用の光は、ナイキストフィルタ43で空間周波数帯域が調整される。集光用対物レンズ40に入射された光は、集光されて信号光Lsとして記録媒体10に照射される。一方、参照光用の光は、NDフィルタ41および半波長板42を介して参照光照射位置変位手段45を構成する、基準となるミラー角度に設定されたミラーデバイスに照射され、このミラーデバイスからの参照光用の光は、アフォーカルレンズ46を介して、所定の入射角度で集光用対物レンズ40に入射される。集光用対物レンズ40に入射された参照光用の光は、球面波に変換されて球面参照光Lrとして記録媒体10に照射される。これにより、記録媒体10においては、信号光Lsと球面参照光Lrとによる干渉縞がホログラムとして記録される。
【0039】
そして、参照光照射位置変位手段45を構成するミラーデバイスのミラー角度が基準となるミラー角度に対して所定角度回転されて参照光用の光の集光用対物レンズ40に対する入射方向が変更されることにより、集光用対物レンズ40からの球面参照光Lrの照射領域の位置が微小変位された状態において、新たなホログラムが記録される。このような操作が繰り返して行われることによる球面参照光シフト多重記録によって、複数のホログラムが一方向に並ぶシフト多重ホログラム列が記録される。
また、記録媒体10がその表面に沿って一方向に移動されることにより信号光Lsの照射領域の位置および球面参照光Lrの照射領域の位置と記録媒体10との相対位置が調整された状態において、参照光照射位置変位手段45によって球面参照光Lrの照射領域の位置を微小変位させることによる球面参照光シフト多重記録が行われることにより、複数のシフト多重ホログラム列が記録領域の一部が互いに重なる状態で一方向に並ぶよう記録される。
【0040】
この例においては、記録媒体10における単位記録領域(ブック)へのアクセスは、例えば記録媒体10の2軸移動と回転(回動)とによって行われる。
【0041】
記録媒体10に記録されたホログラムに係るデータ情報の再生時には、光量を大幅に落とした再生用の球面参照光のみが、その照射領域の位置が参照光照射位置変位手段45によって微小変位されながら、記録媒体10に照射される。これにより、再生用の球面参照光と同一の参照光照射条件で記録されたホログラムから再生光Lgが発せられる。ホログラムからの再生光Lgは記録媒体10の裏面側から出射され、結像レンズ52を介して略無収差の状態で撮像素子51に結像される。撮像素子51によって再生光Lgが検出されることにより、当該ホログラムに記録されたデータ情報が再生される。
【0042】
而して、上記のホログラム記録再生装置においては、参照光照射位置変位手段45を構成するミラーデバイスを駆動させて球面参照光Lrの照射位置と記録媒体10における記録位置との相対位置を変更することにより、球面参照光シフト多重記録が行われる。参照光照射位置変位手段45を構成するミラーデバイス(例えばガルバノミラー)のストップアンドゴー動作において必要とされる静止時間は、記録媒体10を移動させる記録媒体移動機構のストップアンドゴー動作における静止時間に比して極めて短い時間であるため、上記のような方法により球面参照光シフト多重記録が行われるホログラム記録再生装置によれば、ホログラムの高速な記録再生が可能となる。具体的には、例えば参照光照射位置変位手段を構成するガルバノミラーのストップアンドゴー動作における静止時間は0.2ms(200μs)程度であり、記録媒体に対するホログラムの記録に要する時間が例えば0.3ms程度であることを考慮すると、トータルで0.5msの時間で1個のホログラムを記録することができることとなる。従って、1秒間の時間の間に、約2000個のホログラムを記録することが可能となる。
【0043】
しかも、上記のホログラム記録再生装置によれば、次のような効果が得られる。すなわち、信号光と球面参照光とを単に同一の集光用対物レンズに入射させる構成としたのであれば、集光用対物レンズの無収差設計が必要であると共にいわゆるfθレンズの機能が要求される。このため、集光用対物レンズを、基本的には例えば8〜9枚程度のレンズ素子による多段レンズにより構成することが必要となり、光学的調整が非常に困難になると共に非常に高コストなものとなってしまう。
然るに、上記のホログラム記録再生装置においては、信号光Lsおよび球面参照光Lrを記録媒体10に照射する集光用対物レンズ40が共有化されたものであって、アフォーカルレンズ46と集光用対物レンズ40とによって構成される光学系がfθ特性を有し、例えば集光用対物レンズ40と結像レンズ52とによって収差補正光学系が構成されている。このため、信号光Lsおよび球面参照光Lrの到達点を厳密に制御することができると共に、記録媒体10における球面参照光Lrの照射位置の、信号光Lsの照射位置に対する相対位置の制御を確実に行うことができて、高い信頼性を得ることができる。また、集光用対物レンズ40および結像レンズ52を構成するレンズ素子の枚数を低減することができ、光学的調整が煩雑になることを回避することができて所期の性能を有する光学系をコスト的にも有利に形成することができるようになる。
【0044】
本発明のホログラム記録再生装置においては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば参照光照射位置変位手段として、走査型のミラーデバイスに代えて音響光学素子が用いられていてもよい。音響光学素子としては、光学媒体の中に超音波を発生させて、進行するレーザ光を回折させる音響光学偏向器(AOD;Acousto−Optic Deflector)を用いることができる。音響光学偏向器にあっては、駆動用入力信号の周波数に応じて参照光用の光の回折度合いを変更することにより参照光用の光の角度変調を行うことができる。すなわち、音響光学偏向器は機械的可動部を有さないため、音響光学偏向器よりなる参照光照射位置変位手段を備えたホログラム記録再生装置によれば、記録再生の更なる高速化を実現することができる。また、機械的可動部の経時的な劣化による位置精度の低下といった問題が生ずることがないので、所期の性能を長期間の間にわたって安定的に得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 記録媒体
21 記録再生光源
22 光分離手段
23 シャッタ
24 偏光板
25 ビーム整形用レンズ
30 偏光プリズムビームスプリッタ
31 ビームエクスパンダ
32 空間光変調器(SLM)
33 リレーレンズ
34 ナイキストフィルタ
35 位相板
40 集光用対物レンズ
41 NDフィルタ
42 半波長板(λ/2波長板)
45 参照光照射位置変位手段
46 アフォーカルレンズ
48 反射ミラー
51 撮像素子
52 結像レンズ
As 信号光の照射領域
Ar 球面参照光の照射領域
C 回転軸
H ホログラム
Ir 球面参照光の照射強度分布
Is 信号光の照射強度分布
Lg 再生光
Lr 球面参照光
Ls 信号光
図1
図2
図3
図4
図5