特許第6894503号(P6894503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6894503ボイラ燃焼制御システム、およびボイラ燃焼制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894503
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ボイラ燃焼制御システム、およびボイラ燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20210621BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F22B35/00 J
   F23N5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-518831(P2019-518831)
(86)(22)【出願日】2018年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2018018877
(87)【国際公開番号】WO2018212224
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2020年7月16日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/018399
(32)【優先日】2017年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599030688
【氏名又は名称】郵船商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄治
(72)【発明者】
【氏名】増原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一徳
(72)【発明者】
【氏名】山下 亨
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】西山 博章
(72)【発明者】
【氏名】首藤 健一郎
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200875(JP,A)
【文献】 特開2013−155898(JP,A)
【文献】 特開2013−164195(JP,A)
【文献】 特開2013−181701(JP,A)
【文献】 特開2014−126305(JP,A)
【文献】 特開2008−8522(JP,A)
【文献】 特開2002−23806(JP,A)
【文献】 特開昭54−152767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷要求量に対して所定の燃料関数に基づいて算出されたボイラへの燃料投入量に係る燃料を前記ボイラに供給し、測定された前記ボイラの主蒸気圧である測定主蒸気圧と、予め設定された前記ボイラの主蒸気圧である設定主蒸気圧とに基づいてフィードバック補正量を求め、前記フィードバック補正量に基づいて前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正するプラントに対して、前記フィードバック補正後の前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正する燃料補正係数を出力するボイラ燃焼制御システムであって、
前記フィードバック補正の前後の前記負荷要求量の比と、前記ボイラについて前記負荷要求量と前記燃料投入量との関係の初期値を規定した初期値および微調整関数と、に基づいて前記燃料補正係数を算出する燃料補正係数演算部と、
前記初期値および微調整関数を補正する基準曲線補正係数を出力する基準曲線補正部と、を有し、
前記基準曲線補正部は、
前記測定主蒸気圧と前記設定主蒸気圧との偏差を算出する偏差判定部と、
前記偏差の変動に係る周期を取得して記録する周期判定部と、
前記偏差の変動に係る振幅を取得して記録する振幅判定部と、
前記基準曲線補正係数を所定の基準曲線補正関数に基づいて算出して出力する基準曲線補正係数出力部と、
前記周期と前記振幅の組み合わせが所定の条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たした場合に、前記ボイラに対する制御状態に基づいて、前記基準曲線補正関数を補正する基準曲線補正判定部と、を有する、ボイラ燃焼制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラ燃焼制御システムにおいて、
前記条件は、前記振幅が所定の範囲内にあり、かつ前記周期が過去の一定時間範囲の履歴において最も小さいことである、ボイラ燃焼制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載のボイラ燃焼制御システムにおいて、
前記周期判定部および前記振幅判定部は、それぞれ、前記周期および前記振幅を、過去の一定時間における移動平均によって取得する、ボイラ燃焼制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のボイラ燃焼制御システムにおいて、
前記基準曲線補正関数は可変関数として設定され、
前記基準曲線補正判定部は、前記基準曲線補正関数を、前記周期と前記振幅の組み合わせが前記条件を満たす間、移動させることで補正する、ボイラ燃焼制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載のボイラ燃料制御システムにおいて、
前記燃料補正係数演算部は、前記フィードバック補正前の前記負荷要求量と、前記ボイラに供給される水と燃料との重量比で規定される水燃比に基づき調整された前記フィードバック補正後の前記負荷要求量との比に基づいて前記燃料補正係数を算出する、ボイラ燃料制御システム。
【請求項6】
負荷要求量に対して所定の燃料関数に基づいて算出されたボイラへの燃料投入量に係る燃料を前記ボイラに供給し、測定された前記ボイラの主蒸気圧である測定主蒸気圧と、予め設定された前記ボイラの主蒸気圧である設定主蒸気圧とに基づいてフィードバック補正量を求め、前記フィードバック補正量に基づいて前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正するプラントに対して、前記フィードバック補正後の前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正する燃料補正係数を出力するボイラ燃焼制御システムにおけるボイラ燃焼制御方法であって、
前記フィードバック補正の前後の前記負荷要求量の比と、前記ボイラについて前記負荷要求量と前記燃料投入量との関係の初期値を規定した初期値および微調整関数と、に基づいて前記燃料補正係数を算出する燃料補正係数演算工程と、
前記初期値および微調整関数を補正する基準曲線補正係数を出力する基準曲線補正工程と、を有し、
前記基準曲線補正工程は、
前記測定主蒸気圧と前記設定主蒸気圧との偏差を算出する偏差判定工程と、
前記偏差の変動に係る周期を取得して記録する周期判定工程と、
前記偏差の変動に係る振幅を取得して記録する振幅判定工程と、
前記基準曲線補正係数を所定の基準曲線補正関数に基づいて算出して出力する基準曲線補正係数出力工程と、
前記周期と前記振幅の組み合わせが所定の条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たした場合に、前記ボイラに対する制御状態に基づいて、前記基準曲線補正関数を補正する基準曲線補正判定工程と、を有する、ボイラ燃焼制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のボイラ燃焼制御方法において、
前記燃料補正係数演算工程の前に、前記ボイラに供給される水と燃料との重量比で規定される水燃比に基づき、前記フィードバック補正後の前記負荷要求量を調整し、前記フィードバック補正前の前記負荷要求量と、調整した後の前記フィードバック補正後の前記負荷要求量との比を算出する工程を有し、
前記燃料補正係数演算工程では、調整した後の前記フィードバック補正後の前記負荷要求量に基づいて算出された前記比に基づいて前記燃料補正係数を算出する、ボイラ燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの燃焼を制御する技術に関し、特に、ボイラの負荷要求量に基づいてボイラへの燃料投入量を決定するボイラ燃焼制御システム、およびボイラ燃焼制御方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボイラ設備を使用してエネルギーを取得する場合、ボイラ(火炉)に燃料(固体燃料、液体燃料、もしくは気体燃料)を供給して燃焼させ、その熱を熱交換器で吸収し、蒸気を発生させて熱エネルギーを得る。発生した蒸気は、例えば、蒸気タービンへ供給することで熱エネルギーから回転運動に変換され、発電機による発電等に用いられる。ボイラへの燃料投入量は、負荷要求量(例えば、発電要求量MWD(Mega Watt Demand)であり、以下では、負荷要求量MWDと記載する場合がある)と、ボイラへの燃料投入量(以下では、ボイラ入力指令値BID(Boiler Input Demand)と記載する場合がある)との間の関係式である燃料関数FXにより決定される。
【0003】
ここで、ボイラ設備に係る諸因子、例えば、燃料性状や発熱量、火炉汚れ、スーツブロワ、気水温等による影響により、ボイラの運転状態、特に、主蒸気圧に変動が生じる場合がある。そこで、燃料関数FXにより求められた燃料投入量に係る燃料をボイラに供給し、発生した主蒸気圧を測定して、これと予め設定された主蒸気圧との差分に基づいてPID(Proportional-Integral-Differential)制御によってフィードバック補正量を求め、これを負荷要求量に加算してボイラへの燃料投入量を補正するという制御が一般的に行われていた。
【0004】
これに関連する技術として、例えば、特許第4522326号公報(特許文献1)には、フィードバック補正を行う前と後の値の比または差を逐次更新しつつ複数記憶し、記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この補正係数によりフィードバック補正後の値を補正する旨が記載されている。これにより、諸因子の影響によるボイラの熱効率の変化を考慮して適正な燃料投入量に補正することが可能であるとされる。
【0005】
さらに、例えば、特許第4791269号公報(特許文献2)には、複数種類燃料混合燃焼ボイラにおいて、フィードバック補正後の値を補正するための燃料補正係数を3要素に細分化することで、燃料の単位熱量の差異および混焼率の変化に伴うボイラ熱効率の差異に対応して、ボイラへの燃料投入量を補正する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4522326号公報
【特許文献2】特許第4791269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1、2等の従来技術によれば、諸因子の影響によるボイラの熱効率の変化に対して、フィードバック補正の前後の負荷要求量MWDの値(もしくは他の制御値)を随時比較計測することでこれを判定し、判定結果に基づいてフィードバック補正後の値をさらに補正して最適化するための補正係数の値を自己学習により取得することが可能である。
【0008】
一方で、負荷要求量MWDとこれに対応するボイラ入力指令値BIDとの関係を関数(曲線)として規定した燃料関数FXは、ボイラの特性を反映して設定されるものであり、従来技術では、過去の実測データの蓄積等に基づいて予め算出した固定値として設定されている。しかし、ボイラの特性に基づく主蒸気圧の挙動は、個々のボイラで異なるものであり、さらに、1つのボイラにおいてもボイラ設備の更新等により変化し得る。すなわち、主蒸気圧の実際の挙動と、燃料関数FXにおいて想定している、あるべき値(最適値)との間にごく僅かながら乖離が生じる場合がある。この乖離は、燃料投入量の最適値からの乖離となってボイラの燃焼制御プロセスを不安定化し、結果としてエネルギーの損失を生じさせる。
【0009】
そこで本発明の目的は、主蒸気圧の挙動における燃料関数FXが想定する最適値からの乖離を検知し、燃料関数FXを自律的・自己完結的に修正することを可能とするボイラ燃焼制御システム、およびボイラ燃焼制御方法を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態によるボイラ燃焼制御システムは、負荷要求量に対して所定の燃料関数に基づいて算出されたボイラへの燃料投入量に係る燃料を前記ボイラに供給し、測定された前記ボイラの主蒸気圧である測定主蒸気圧と、予め設定された前記ボイラの主蒸気圧である設定主蒸気圧とに基づいてフィードバック補正量を求め、前記フィードバック補正量に基づいて前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正するプラントに対して、前記フィードバック補正後の前記負荷要求量もしくは前記燃料投入量を補正する燃料補正係数を出力するボイラ燃焼制御システムであって、前記フィードバック補正の前後の前記負荷要求量の比と、前記ボイラについて前記負荷要求量と前記燃料投入量との関係の初期値を規定した初期値および微調整関数と、に基づいて前記燃料補正係数を算出する燃料補正係数演算部と、前記初期値および微調整関数を補正する基準曲線補正係数を出力する基準曲線補正部と、を有するものである。
【0013】
そして、前記基準曲線補正部は、前記測定主蒸気圧と前記設定主蒸気圧との偏差を算出する偏差判定部と、前記偏差の変動に係る周期を取得して記録する周期判定部と、前記偏差の変動に係る振幅を取得して記録する振幅判定部と、前記基準曲線補正係数を所定の基準曲線補正関数に基づいて算出して出力する基準曲線補正係数出力部と、前記周期と前記振幅の組み合わせが所定の条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たした場合に、前記ボイラに対する制御状態に基づいて、前記基準曲線補正関数を補正する基準曲線燃料関数補正判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、主蒸気圧の挙動における燃料関数FXが想定する最適値からの乖離を検知し、燃料関数FXを自律的・自己完結的に修正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係るボイラ燃焼制御システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の実施の形態1における基準曲線補正部の構成例について概要を示した図である。
図3】本発明の実施の形態1における初期値および微調整関数の補正を行う処理の流れの例を示したフロー図である。
図4】主蒸気圧の挙動の例について概要を示した図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るボイラ燃焼制御システムの構成例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
上述したように、ボイラ設備を使用してエネルギーを取得する場合、ボイラの蒸気要求量(負荷要求量MWD)に対応する燃料(例えば石炭やバイオマス燃料等)投入量(ボイラ入力指令値BID)は、燃料関数FXを用いて決定される。このとき、負荷要求量MWDは、ボイラの主蒸気圧を所望の設定主蒸気圧に近づけるようなフィードバック補正を行うよう制御される。
【0019】
これに対し、上記の特許文献1、2等に記載されたような従来技術では、さらに制御の精度を向上させるため、フィードバック補正を行う前後の負荷要求量MWDの比、すなわち主蒸気圧のフィードバック補正の操作度合いを示す指標に基づいて燃料補正係数を自己学習により求め、この燃料補正係数により負荷要求量MWD(もしくはボイラ入力指令値BID)をさらに補正する仕組みを有している。この補正は、実質的には燃料関数FXを補正することと等価であるといえる。
【0020】
本発明の実施の形態1に係るボイラ燃焼制御システムは、上記の従来技術に対してさらに精度を向上させるため、自己学習の基礎・起点となる基準曲線をAI(Artificial Intelligence:人工知能)により補正するものである。この基準曲線は、対象のボイラについて規定された負荷要求量MWDとボイラ入力指令値BIDとの関係の初期値を示したものである。従来技術では、この基準曲線は、燃料関数FXと同様に、過去の実測データの蓄積に基づいて予め算出した固定値として設定されていた。この場合、ボイラの設備更新やその他の状態の変化によっては、主蒸気圧の挙動が、燃料補正係数による補正後の燃料関数FXにおいて想定している最適値から僅かに乖離してボイラの燃焼制御プロセスが不安定となり効率が低下する場合がある。
【0021】
これに対し、本実施の形態のボイラ燃料制御システムでは、ボイラの主蒸気圧の挙動・状態変化を、過去のデータに基づいて常時分析・判定し、判定結果に基づいて上記の基準曲線を調整することで、燃料関数FXに生じる僅かなズレを補正する。そして、本実施の形態では、この一連の処理を自己完結型の処理ループによって自律的に、かつリアルタイムで行う。
【0022】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係るボイラ燃焼制御システムの構成例について概要を示した図である。ボイラ燃焼制御システム1は、上述したように、プラントにおけるボイラ2に対する燃料投入量が最適となるように初期値および微調整関数FXAIを用いて基準曲線を調整することで燃料補正係数Kを決定し、制御情報としてボイラ2への燃料投入等を行う既設の回路等に出力する(すなわち、燃料関数FXを実質的に補正することでボイラ2の燃焼を制御する)装置である。
【0023】
ボイラ燃焼制御システム1は、例えば、後述する各機能に係る処理を実行する図示しない半導体回路やマイコン等からなるハードウェアにより実装された装置として構成されてもよい。もしくは、汎用的なサーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、後述する各機能に係る処理を実行するものとしてもよい。
【0024】
また、これらのハードウェアによる実装とソフトウェアによる実装とを適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。また、全体を1つの筐体で実装する構成に限らず、一部の機能を別の筐体で実装し、これらの筐体間を通信ケーブル等により相互に接続する構成であってもよい。すなわち、ボイラ燃焼制御システム1の実装形態は特に限定されず、プラントの環境等に応じて適宜柔軟に構成することが可能である。
【0025】
ボイラ燃焼制御システム1は、図示するように、例えば、ハードウェアもしくはソフトウェアにより実装された除算部11、基準曲線補正部12、乗算部13、および燃料補正係数演算部14等の各部を有する。また、メモリやHDD等に記録されたファイルやテーブルとして実装された初期値および微調整関数FXAI等のデータを有する。
【0026】
プラントにおいて、燃料投入量(図中ではボイラ入力指令値BID)の情報に基づいてボイラ2で燃料を燃焼させることで発生した主蒸気は、例えば、蒸気タービン3に供給され、図示しない発電機による発電等に用いられる。発電機での出力に対応するボイラ2の負荷要求量MWD(入力蒸気要求量)は、例えば、ボイラ2における図示しない操作パネル等によって入力されるとともに、ボイラ燃焼制御システム1にも入力される。
【0027】
一方、例えば、ボイラ2に設けられた図示しない圧力計により、ボイラ2で発生した主蒸気の圧力が測定され、測定値が主蒸気圧発信器PXに入力される。主蒸気圧発信器PXから発信された測定主蒸気圧PVは、PID制御部4に入力され、PID制御部4において本来あるべき主蒸気圧である設定主蒸気圧SVとの間で比較が行われる。このとき、例えば、ボイラ2の状態(火炉の汚れ等)、燃料性状、その他の諸因子が維持された条件で得られる燃料関数FXを用いて燃料投入量を決定しているのであれば、測定主蒸気圧PVと設定主蒸気圧SVとの差はほとんど生じず、燃料関数FXによって所望の負荷(発電機出力)が得られる。しかし、上述したように、例えば、ボイラ2の状態変化や、燃料性状、その他の諸因子の変化に伴って、測定主蒸気圧PVと設定主蒸気圧SVとの間で圧力差が生じる場合がある。
【0028】
PID制御部4では、測定主蒸気圧PVと設定主蒸気圧SVとの間の圧力差を検知した場合、公知のPID制御の手法によりフィードバック補正量、すなわち、燃料不足(もしくは過剰)により発生した主蒸気圧の偏差(誤差量)を算出してこれを加算部5に送る。加算部5では、PID制御部4から送られたフィードバック補正量を、ボイラ燃焼制御システム1にも入力される負荷要求量MWDに加算することで、フィードバック補正後の負荷要求量MWD’(ボイラ入力指令値BID’)を出力する(PID制御部4および加算部5をフィードバック制御部と記載する場合がある)。
【0029】
本実施の形態のボイラ燃料制御システム1では、上述したように、特許文献1、2等の従来技術と同様に、ボイラ2の効率等の特性の変化に伴う最適値からの乖離に追従するため、フィードバック制御部(PID制御部4および加算部5)によるフィードバック補正の操作度合いを示す指標、すなわち、フィードバック補正の前後の指令値である負荷要求量MWDと負荷要求量MWD’(ボイラ入力指令値BID’)の比を除算部11により求める。そして、これを入力として、燃料補正係数演算部14により燃料補正係数Kを自己学習により算出し、出力する。
【0030】
出力された燃料補正係数Kは、乗算部6によって負荷要求量MWD’(ボイラ入力指令値BID’)に乗算される。この補正後の負荷要求量MWD”(ボイラ入力指令値BID”)を入力として、燃料投入量演算部7が燃料関数FXによってこれをボイラ入力指令値BIDに変換する。このボイラ入力指令値BIDに基づいてボイラ2への燃料の投入が制御される。
【0031】
なお、ボイラ燃焼制御システム1の燃料補正係数演算部14における燃料補正係数Kの算出手法については、例えば、特許文献1、2等に記載されたものと同様の手法を適宜用いることができるため、ここでの再度の詳細な説明は省略する。また、特許文献1、2等に記載されているように、ボイラ燃焼制御システム1を含むプラント各部の接続関係や処理順序等は、図1に示したものに限られず、同様の思想の範囲内で各種のバリエーションの構成を適宜採用することができる。例えば、図1の例では、燃料補正係数Kをフィードバック補正後の負荷要求量MWD’に乗算して補正しているが、燃料投入量演算部7によって求められたボイラ入力指令値BIDに乗算して補正する構成としてもよい。また、燃料関数FXを直接補正する構成としてもよい。
【0032】
上述したように、燃料補正係数Kの決定においては、基準曲線を起点として自己学習が行われるが、従来技術では、基準曲線には予め設定された固定値が用いられていた。この場合、ボイラ2の効率等の特性の変化に伴い、この基準曲線についても最適値から僅かに乖離し、ボイラ2の燃焼制御プロセスが不安定となり効率が低下する場合が生じ得る。そこで、本実施の形態では、基準曲線補正部12により、ボイラ2の測定主蒸気圧PVと、本来あるべき設定値である設定主蒸気圧SVとの比較計測を常時行って、ボイラ2の主蒸気圧の挙動の変化を分析・判定し、判定結果に基づいて基準曲線補正係数KPを設定する。そして、これを乗算部13により初期値および微調整関数FXAIに乗算することで、初期値および微調整関数FXAIに規定された基準曲線の初期値をリアルタイムで補正する。
【0033】
図4は、主蒸気圧の挙動の例について概要を示した図である。各段の図は、それぞれ、時間経過に伴う測定主蒸気圧PVの変動の例を曲線で示しており、併せて設定主蒸気圧力SVについても直線で示している。上段の図は、補正(燃料補正係数Kによる補正、およびPID制御による積分補正)の程度を強く設定した場合を示しており、測定主蒸気圧PVが設定主蒸気圧SVを跨いで大きく変動していることを示している。これに対し、中段の図は、補正の程度が最適である場合を示しており、測定主蒸気圧PVは設定主蒸気圧SVの付近で変動していることを示している。一方、下段の図は、補正の程度を弱く設定した場合を示しており、測定主蒸気圧PVは、小さな変動を繰り返しながら、全体として設定主蒸気圧SVを跨いで大きくゆっくりと変動していることを示している。
【0034】
ここで、本実施の形態のボイラ燃焼制御システム1では、主蒸気圧の挙動を、設定主蒸気圧SVを基準とした測定主蒸気圧PVの振動、すなわち、設定主蒸気圧SVを中心とした振幅と周期(測定主蒸気圧PVが設定主蒸気圧SVと交差するタイミングの間隔)によって把握する。主蒸気圧(測定主蒸気圧PV)が最適な状態とは、基本的に、中段の図に示すように、振幅が小さく、かつ周期が短い状態を指す。なお、周期が長い状態とは、下段の図に示すように、測定主蒸気圧PVが設定主蒸気圧SVから離れた状態が長期間続くことを意味する。
【0035】
上述したように、例えば、ボイラ2の状態や燃料性状、その他の諸因子が維持された条件で得られる燃料関数FXを用いて燃料投入量を決定しているのであれば、測定主蒸気圧PVと設定主蒸気圧SVとの差はほとんど生じない。実際には、例えば、図4の中段の図に示すように、測定主蒸気圧PVは、設定主蒸気圧SVを中心として小さい振幅で振動する形となる。しかし、ボイラ2の状態変化や、燃料性状、その他の諸因子の変化に伴って、測定主蒸気圧PVと設定主蒸気圧SVとの間で圧力差(偏差)が生じ得る。本実施の形態では、この偏差を計測して、測定主蒸気圧PVが最適な状態、すなわち、振幅および周期の値が小さい状態となったタイミングを検知し、そのときの状態に基づいて燃料関数FXに対する補正係数(本実施の形態では、初期値および微調整関数FXAIに対する燃料関数補正係数KP)を算出する。
【0036】
図2は、本実施の形態における基準曲線補正部12の構成例について概要を示した図である。基準曲線補正部12は、例えば、その構成としてさらに、ハードウェアもしくはソフトウェアにより実装された偏差判定部121、周期判定部122、振幅判定部123、基準曲線補正判定部124、および基準曲線補正係数出力部125等の各部を有する。また、メモリやHDD等に記録されたファイルやテーブルとして実装された周期履歴126、振幅履歴127、最適値情報128、および基準曲線補正関数VFX等の各データを有する。
【0037】
基準曲線補正部12に入力された測定主蒸気圧PVおよび設定主蒸気圧SVは、偏差判定部121に入力され、その差分(偏差)が算出される。算出された差分は、周期判定部122および振幅判定部123にそれぞれ入力され、測定主蒸気圧PVの挙動を特徴付ける情報としてその変動の周期および振幅をそれぞれ算出する。なお、上述したように、測定主蒸気圧PVの挙動は一定ではなく時々刻々と変化する。したがって、周期および振幅は、長時間(例えば、30分間)での移動平均として算出するものとする。このため、算出した周期および振幅の情報は、それぞれ、周期履歴126および振幅履歴127としてメモリやHDD等に記録しておく。
【0038】
算出された周期および振幅の値は、基準曲線補正判定部124に入力される。基準曲線補正判定部124では、周期および振幅の値が最適値(これに準ずる一定範囲の好適な値も含むものとする)であるか否かを判定する。最適値に係る情報は、例えば、最適値情報128としてメモリやHDD等に記録しておく。そして、周期および振幅が最適な状態であると判定した場合に、最適な状態から外れるまでの間、可変関数として設定された基準曲線補正関数VFXの値を移動させる。
【0039】
この基準曲線補正関数VFXに基づいて、基準曲線補正係数出力部125は、負荷要求量MWDに対応する基準曲線補正係数KPを取得して出力する。この基準曲線補正係数KPは、初期値および微調整関数FXAIに対して乗算されることで初期値および微調整関数FXAIを補正する。
【0040】
<初期値および微調整関数FXAIの補正処理>
図3は、本実施の形態における初期値および微調整関数FXAIの補正を行う処理の流れの例を示したフロー図である。ここでは、基準曲線補正部12の基準曲線補正判定部124において基準曲線補正関数VFXを設定する部分までの処理の流れを示す。以降は、基準曲線補正部12の基準曲線補正係数出力部125が、設定された基準曲線補正関数VFXに基づいて負荷要求量MWDに対応する基準曲線補正係数KPを取得して出力する。
【0041】
基準曲線補正部12では、まず、偏差判定部121が、設定主蒸気圧SVを取得する(S01)。設定主蒸気圧SVは、図1に示すように定数としてシステム内部に予め設定しておいてもよいし、ボイラ2等からの外部入力として取得してもよい。その後、主蒸気圧発信器PXから発信される測定主蒸気圧PVを取得する(S02)。上記の処理順は一例であり、逆の順序で実行してもよいし並行的に行ってもよい。設定主蒸気圧SVと測定主蒸気圧PVを取得すると、これらの間の差分を求める偏差処理を行う(S03)。偏差判定部121は、算出した差分の情報を周期判定部122および振幅判定部123にそれぞれ入力するとともに、ステップS01に戻って処理を継続する。
【0042】
周期判定部122では、偏差判定部121から取得した主蒸気圧の差分の情報に基づいて、設定主蒸気圧SVを基準とした測定主蒸気圧PVの変動の周期を計測する(S11)。例えば、図示しないメモリ等に蓄積した過去の差分の履歴情報に基づいて、差分の符合が反転するタイミングを把握し、その時間間隔を周期とする。上述したように、測定主蒸気圧PVの挙動は一定ではなく時々刻々と変化する。したがって、周期は、過去の長時間(例えば、30分間)の履歴に基づく移動平均として算出する。その後、計測した周期が正常か否か(マイナス等の異常値ではないか)を判定する(S12)。正常ではない(異常値である)場合は(S12:N)、ステップS11に戻って周期計測の処理を継続する。
【0043】
また、振幅判定部123でも同様に、偏差判定部121から取得した主蒸気圧の差分の情報に基づいて、設定主蒸気圧SVを基準とした測定主蒸気圧PVの変動の振幅を計測する(S21)。例えば、差分の絶対値を振幅として把握する。振幅についても、過去の長時間(例えば、30分間)の履歴情報の移動平均として算出する。その後、計測した振幅が正常か否かを判定する(S22)。正常ではない場合は(S22:N)、ステップS21に戻って振幅計測の処理を継続する。
【0044】
周期および振幅の値がいずれも正常である場合は(S12:Y、S22:Y)、算出された周期および振幅の値が基準曲線補正判定部124に入力される。基準曲線補正判定部124では、過去の一定時間範囲内(例えば、5分間)での周期の遷移を取得し(S31)、各周期が所定の範囲内に収まっているか否かを判定する(S32)。所定の範囲内に収まっていない場合は(S32:N)、何もしない、もしくは基準曲線補正関数VFXに対する補正処理を既に行っている場合はこれを終了する(S38)。これにより、後段の基準曲線補正係数出力部125は、この時点での基準曲線補正関数VFXに基づいて基準曲線補正係数KPを取得して出力することになる。
【0045】
一方、過去の一定時間範囲内の周期が所定の範囲内に収まっている場合は(S32:Y)、計測した周期および振幅がそれぞれ過去の変動の履歴においてこれまでの最小値であるか否かを判定する(S33)。これまでの最小値の情報は、例えば、最適値情報128に記録しておくようにしてもよい。なお、周期については、ステップS32における所定の範囲内にある上で、最小値であるか否かを判定する。周期および振幅の少なくとも一方が最小値ではない場合は(S33:N)、何もしない、もしくは基準曲線補正関数VFXに対する補正処理を既に行っている場合はこれを終了する(S38)。
【0046】
一方、計測した周期および振幅のいずれも最小値である場合は(S33:N)、最適値情報128からこれまでの最適値に係る周期および振幅の情報を取得し(S34)、これとの比較において、計測した周期および振幅の組み合わせの方が最適値であるといえるかを判定する(S35)。いずれが最適値かの判定手法は、例えば、振幅の値が所定の範囲内に入っている上で、周期がより小さい方が最適であるとする等、適当な手法を用いることができる。計測した周期および振幅の組み合わせが最適値ではない場合は(S35:N)、何もしない、もしくは基準曲線補正関数VFXに対する補正処理を既に行っている場合はこれを終了する(S38)。
【0047】
一方、計測した周期および振幅の組み合わせの方が最適値である場合は(S35:Y)、この組み合わせにより最適値情報128の内容を更新し(S36)、基準曲線補正関数VFXに対する補正処理を開始する(S37)。基準曲線補正関数VFXは、負荷要求量MWDと、初期値および微調整関数FXAIに対する補正係数である基準曲線補正係数KPとの対応関係の曲線を規定する可変関数として設定されており、この曲線を所定量移動させることによって補正する。この補正は、例えば、計測された周期および振幅が最適な状態から外れるまで継続する。なお、このような補正手法は一例であり、例えば、計測した周期および振幅の組み合わせが最適値であるときの制御状態におけるボイラ入力指令値BID等の他の指標を用いて、基準曲線補正関数VFX(もしくは初期値および微調整関数FXAI)を補正する手法を用いてもよい。
【0048】
以上に説明したように、本発明の実施の形態1に係るボイラ燃焼制御システム1によれば、測定主蒸気圧PVの変動の設定主蒸気圧SVに対する偏差を周期および振幅として測定し、その長時間の遷移に基づいて周期および振幅が最適な状態であるタイミングを特定する。そして、周期および振幅が最適であるときの状態に基づいて燃料関数FX(本実施の形態では具体的には初期値および微調整関数FXAI)を補正するための基準曲線補正係数KPを出力する。すなわち、実質的には燃料関数FXに生じる僅かなズレを自律的・自己完結的にリアルタイムで修正することが可能である。
【0049】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。なお、以下では、前述の実施の形態と重複する箇所については、原則としてその説明を省略する。
【0050】
本実施の形態では、超臨界圧貫流ボイラや超々臨界圧貫流ボイラに適用可能なボイラ燃焼制御システムについて説明する。超臨界圧貫流ボイラや超々臨界圧貫流ボイラにおける燃料投入量や給水量は、主蒸気圧及び水燃比に依存する。水燃比とは、ボイラへの給水量と燃料との重量比で規定される値である。この水燃比は、ボイラ燃焼制御システム外に設けられた水燃比マスタで制御される。水燃比マスタは、熱量(主蒸気圧)に応じた積分処理を行いながら燃料投入量を調整しているが、従来は、燃料投入量を適切に制御することができず、燃焼を安定させることができなかった。
【0051】
そこで、本実施の形態では、超臨界圧貫流ボイラや超々臨界圧貫流ボイラにおいて、燃料投入量を適切に制御することが可能なボイラ燃焼制御システム等を提供することを目的とする。
【0052】
図5は、本発明の実施の形態2に係るボイラ燃焼制御システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態におけるボイラ燃焼制御システム201以外の構成は、図1に給水マスタ208、水燃比マスタ209、及び加算部210が追加された構成となっている。
【0053】
水燃比マスタ209は、ボイラ2に供給される水(液体)と燃料との重量比で規定される水燃比が所定の値(あるいは所定の範囲内)となるように、ボイラ入力指令値BID,BID’(負荷要求量MWD’)や給水量を調整する。これらの制御により、水燃比マスタ209は、給水量、パイプ内の流体温度、及びパイプの表面温度を制御する。水燃比マスタ209は、図示しない圧力計により測定された主蒸気圧力PVの測定値や、給水量等の情報に基づいて水燃比マスタ信号を生成し、生成した水燃比マスタ信号を出力する。水燃比マスタ信号は、燃料投入量の増減に関する信号であり、燃料不足の場合には、燃料投入量を増加させるプラス信号となり、燃料過剰の場合には、燃料投入量を減少させるマイナス信号となる。
【0054】
給水マスタ208は、負荷要求量MWD、水燃比の設定値等に基づいてボイラ2への給水量を調整する。加算部210は、水燃比マスタ209から出力される水燃比マスタ信号に基づき、燃料投入量演算部7から出力されるボイラ入力指令値BIDを調整する。
【0055】
このように、水燃比の設定値に基づいてボイラ2周辺の各部により給水量や燃料投入量が調整されるが、本実施の形態では、さらに、ボイラ燃焼制御システム201においても、燃料投入量の制御が行われる。図5に示すように、ボイラ燃焼制御システム201は、図1のボイラ燃焼制御システム1に、加算部215が追加された構成となっている。加算部215は、水燃比マスタ209と接続され、水燃比マスタ209から出力される水燃比マスタ信号に基づいて、加算部5から出力されるフィードバック調整後のボイラ入力指令値BID’(負荷要求量MWD’)の値を調整する。
【0056】
加算部215は、水燃比マスタ信号がプラス信号であれば、ボイラ入力指令値BID’に所定の値を加算する信号処理を行い、水燃比マスタ信号がマイナス信号であれば、ボイラ入力指令値BID’から所定の値を減算する信号処理を行う。そして、加算部215は、信号処理後のボイラ入力指令値BID’(負荷要求量MWD’)を除算部11へ出力する。
【0057】
除算部11は、負荷要求量MWDと信号処理後のボイラ入力指令値BID’との比を算出し、燃料補正係数演算部14へ出力する。燃料補正係数演算部14は、除算部11から出力された比を入力として、信号処理後のボイラ入力指令値BID’に基づく燃料補正係数Kを自己学習により算出し、出力する。なお、基準曲線補正部12及び乗算部13における処理は、実施の形態1と同様である。
【0058】
水燃比マスタ209の制御に基づく燃料補正係数Kは、乗算部6によって負荷要求量MWD’(ボイラ入力指令値BID’)に乗算される。この補正後の負荷要求量MWD”(ボイラ入力指令値BID”)を入力として、燃料投入量演算部7は、燃料関数FXによってこれをボイラ入力指令値BIDに変換し、加算部210へ出力する。加算部210における処理はすでに述べた通りである。
【0059】
本実施の形態によれば、前述の実施の形態における効果に加え、以下の効果が得られる。本実施の形態によれば、燃料補正係数演算部14は、フィードバック補正前の負荷要求量MWDと、水燃比に基づき調整されたフィードバック補正後の負荷要求量MWD’(ボイラ入力指令値BID’)との比に基づいて燃料補正係数Kを算出する。この構成によれば、水燃比マスタ209の制御に基づく適切な燃料補正係数Kを算出することができるので、超臨界圧貫流ボイラや超々臨界圧貫流ボイラにおいても、燃料投入量を適切に制御することが可能なボイラ燃焼制御システム等が提供される。
【0060】
また、この構成によれば、水燃比マスタ209の影響を計算により割り出すことができるので、ボイラ入力指令値BIDに対する水燃比マスタ209による制御との重みを算出することができ、安定燃焼させることが可能となった。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0062】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0063】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ボイラの負荷要求量に基づいてボイラへの燃料投入量を決定するボイラ燃焼制御システム、およびボイラ燃焼制御方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,201…ボイラ燃焼制御システム、2…ボイラ、3…蒸気タービン、4…PID制御部、5…加算部、6…乗算部、7…燃料投入量演算部、
11…除算部、12…基準曲線補正部、13…乗算部、14…燃料補正係数演算部、
121…偏差判定部、122…周期判定部、123…振幅判定部、124…基準曲線補正判定部、125…基準曲線補正係数出力部、126…周期履歴、127…振幅履歴、128…最適値情報、
215…加算部、
SV…設定主蒸気圧、PV…測定主蒸気圧、PX…主蒸気圧発信器、MWD、MWD’、MWD”…負荷要求量、BID、BID’、BID”…ボイラ入力指令値、K…燃料補正係数、KP…基準曲線補正係数、FX…燃料関数、FXAI…初期値および微調整関数、VFX…基準曲線補正関数
図1
図2
図3
図4
図5