(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する位置に設けられ、中央又は略中央に形成された折目で折り込まれるまち構造のフィルム壁と、まち構造を有しないフィルム壁とがシールされてなるガゼット袋であって、
前記フィルム壁のうち少なくとも2面が排液及び通気構造を有し、
前記排液及び通気構造を有する前記フィルム壁は、排液及び通気構造が設けられた本体フィルムと、該本体フィルムの外側に、該本体フィルムに剥離可能に設けられたカバーフィルムとを有し、
前記まち構造を有しない一方のフィルム壁に注入ユニットが設けられており、
前記まち構造のフィルム壁が、該ガゼット袋の側面に設けられ、前記排液及び通気構造を有する、ことを特徴とするガゼット袋。
前記排液及び通気構造は、前記本体フィルムの一面側と他面側とを連絡する隙間又は穴であり、前記本体フィルムが不織布、メッシュからなるフィルム材及び穴が形成されたフィルム材から選ばれた部材である、請求項1に記載のガゼット袋。
前記まち構造のフィルム壁の折目が前記まち構造を有しないフィルム壁と交わる交線のシール部分の近傍には、前記まち構造のフィルム壁の一部が切り欠かれ、対向する前記まち構造を有しないフィルム同士がシールされている、請求項1又は2に記載のガゼット袋。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した特許文献1及び特許文献2で提案されている包装袋おいて、包装袋の内部と外部とが連絡される領域は、包装袋の下部のみを切り裂くことにより形成される。これらの包装袋は、内部に存在する水を包装袋の外部に排出することだけが目的なので、包装袋の内部と外部とが連絡される領域は、包装袋の一部を構成している下部に設ければ十分である。
【0008】
しかし、最近では、包装袋の内部から外部に水を排出するだけなく、包装袋の内部に導入したり排出したりする作用(通気性)を備える包装袋が要求されている。
【0009】
上述した2つの特許文献において、包装袋から水分等の液体を排出するためには、上記したように、包装袋の下部を切り裂くことが必要になる。排出のために、あえて包装袋の下部を切り裂く作業は、包装袋を使用する者に煩わしさを与えるおそれがある。そのため、これまでの包装袋とは異なり、簡単な作業で包装袋の内側と外側とを連絡させことができる構造の包装袋が望まれる。また、包装袋が良好な通気性を有し、空気の導入と排出が可能な包装袋も望まれている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内部に粉体や粒体等の固体を収容し、内部の余分な水の排出、内部への空気の導入及び空気の排出を可能とするガゼット袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るガゼット袋は、対向する位置に設けられ、中央又は略中央に形成された折目で折り込まれるまち構造のフィルム壁と、まち構造を有しないフィルム壁とがシールされてなるガゼット袋であって、前記フィルム壁のうち少なくとも2面が排液及び通気構造を有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、フィルム壁のうち少なくとも2面が排液及び通気構造を有するので、ガゼット袋の内部に注入された余分な水等の液体をガゼット袋の外部に排出することができる。また、ガゼット袋の内部に空気を導入したり空気を排出したりすることができる。
【0013】
本発明に係るガゼット袋において、前記排液及び通気構造を有する前記フィルム壁は、排液及び通気構造が設けられた本体フィルムと、該本体フィルムの外側に設けられたカバーフィルムとを有する。
【0014】
この発明によれば、本体フィルムの外側にカバーフィルムを設けた形態では、内部の液体を貯めておくことができる。一方、カバーフィルムを取り除いた形態では、余分な液体を排出する共に、空気を内部への導入と外部への排出を行うことができる。
【0015】
本発明に係るガゼット袋において、前記まち構造のフィルム壁が、前記排液及び通気構造を有する。
【0016】
この発明によれば、まち構造のフィルム壁に排液及び通気構造を有するので、カバーフィルムを取り除いたときに、水を排出することができる。また、まち構造のフィルム壁は対向して設けられているため、空気の導入と排出を良好に行うことができる。
【0017】
本発明に係るガゼット袋において、前記排液及び通気構造は、前記本体フィルムの一面側と他面側とを連絡する隙間又は穴であり、前記本体フィルムが不織布、メッシュからなるフィルム材及び穴が形成されたフィルム材から選ばれた部材である。
【0018】
この発明によれば、本体フィルムが不織布又はメッシュからなるフィルム材である場合には、不織布の隙間又はフィルム材に形成されている編み目である隙間が排液及び通気構造となる。本体フィルムが穴の形成されたフィルム材である場合には、穴が排液及び通気構造となる。
【0019】
本発明に係るガゼット袋において、前記まち構造のフィルム壁の折目が前記まち構造を有しないフィルム壁と交わる交線のシール部分の近傍には、前記まち構造のフィルム壁の一部が切り欠かれ、対向する前記まち構造を有しないフィルム同士がシールされている。
【0020】
この発明によれば、上記のように折目が交わる交線のシール部の近傍のシール構造が上記のように構成されているので、まち構造のフィルム壁の折り込み交線のシール部分が外力によって開くことが抑制される。例えば、落下等によりヒートシール部に応力が加わった場合に、もっとも応力集中の起きやすいフィルム壁の折り込み交線部付近への影響を軽減でき、容器自体の落下強度も向上することができる。
【0021】
本発明に係るガゼット袋において、前記まち構造を有しないフィルム壁と前記まち構造のフィルム壁を構成する前記本体フィルムのシール強度は、前記カバーフィルムと前記本体フィルムのシール強度よりも高く、且つ前記まち構造のフィルム壁の前記折目が前記まち構造を有しないフィルム壁と交わる交線の近傍におけるカバーフィルムとまち構造フィルムとのシール強度が該ガゼット袋における他のシールされた部位のシール強度よりも高い。
【0022】
この発明によれば、まち構造を有するフィルム壁の折り込み交線の近傍とカバーフィルムのシール強度を強くすることで、例えば落下させてしまい、まち構造を有しないフィルム壁とまち構造のフィルム壁の本体フィルムとのヒートシール部に応力が加わった場合でも、最も応力集中の起きやすい部分のヒートシール部が破損することを抑制することができる。
【0023】
本発明に係るガゼット袋において、前記カバーフィルムの周縁の少なくとも一部が前記本体フィルムの周縁から張り出している。
【0024】
この発明によれば、カバーフィルムの周縁の少なくとも一部が本体フィルムの周縁から張り出しているので、張り出した部分を摘まみ部として機能させることができる。そのため、摘まみ部を手で摘まんでカバーフィルムを本体フィルムから取り除きやすくすることができる。
【0025】
本発明に係るガゼット袋において、前記収容物が粉体又は粒体である。
【0026】
この発明によれば、水を注入した状体で粉体又は粒体を収容させておくことにより、粉体又は粒体を、水を含ませた状態に維持させておくことができる。その後、カバーフィルムを本体フィルムから取り外すことにより、水分を排液すると共に、空気の導入と排出を行わせて、粉体又は粒体を乾燥させることができる。とりわけ、内容物が植物の種子である場合、ガゼット袋の内部で水に浸しておき、その後に水を排出して通気させることにより、発芽を促すことができる。
【0027】
本発明に係るガゼット袋において、液体を注入するための注入部が前記まち構造を有しないフィルム壁に設けられている。
【0028】
この発明によれば、注入部が設けられているので、ガゼット袋の内部に水などの液体を容易に注入することができる。また、必要に応じて、注入部から粉体や粒体等の固体を入れてガゼット袋に収容させることもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、内部に粉体又は粒体等の固体を収容すると共に、水の注入と排出、空気の導入と排出を行うことが可能なガゼット袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0032】
[基本構成]
本発明に係るガゼット袋1は、
図1から
図3に示す例のように、まち構造のフィルム壁13,15と、まち構造を有しないフィルム壁11,12と、を有している。まち構造のフィルム壁13,15は、対向する位置に設けられており、中央に形成された折目14,16を互いに接近させて折り込まれる構造になっている。まち構造を有しないフィルム壁11,12は平面状(平面構造)のフィルム材が用いられている。本発明に係るガゼット袋1は、内部に注入された液体の排出、空気の導入と排出を可能にする構造(排水及び通気構造という。)が少なくとも2面に形成されている。
【0033】
このガゼット袋1は、ガゼット袋1の内外を連絡させ、内部にたまった余分な液体を排出することができると共に、ガゼット袋の内部への空気の導入と外部への空気の排出を可能にするという特有の効果を奏する。すなわち、本発明は、ガゼット袋から液体を排出すること、空気の内部への導入と外部への排出(通気性ともいう。)という2つの特性を有する。
【0034】
以下、本発明に係るガゼット袋の各構成を説明する。ガゼット袋1は、
図1から
図3に示すような注入ユニット20を有しているので、ガゼット袋1を、袋本体部10と注入ユニット20の構成に分けて説明する。
【0035】
(袋本体部)
袋本体部10は、例えば、
図1及び
図2に示すように、一対のまち構造を有しないフィルム壁11,12と、一対のまち構造を有するまち構造のフィルム壁13,15とにより構成されている。袋本体部10は、まち構造を有しないフィルム壁11,12の周縁とまち構造フィルム壁13,15の周縁とが接合されることにより形成されている。本明細書では、袋本体部10とは、注出ユニット20を除いたガゼット袋の構成要素を意味する。
【0036】
本実施形態の袋本体部10では、
図1及び
図2に示すように、まち構造を有しないフィルム壁11,12として長方形等の四角形のフィルム材が用いられている。まち構造を有しないフィルム壁11,12の構造は特に限定されないが、通常、平面状の平面構造からなるフィルム壁である。一方、まち構造のフィルム壁13,15は、
図2及び
図3に示すように、長方形のフィルム材が用いられている。まち構造のフィルム壁13,15は、その短軸方向の中心に折目14,16が形成されており、折目14,16の位置でガゼット袋1の中心側に向かって折り込まれている。なお、ガゼット袋の寸法設計によっては、まち構造のフィルム壁13,15は、その長軸方向の中心に折目14,16が形成されることもある。まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15との接合は、ヒートシールにより行われている。
図1及び
図3において、ヒートシールした位置をわかりやすくするために、ヒートシールした位置にはハッチングを施している。なお、本実施例ではまち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15との接合は、ヒートシールによる場合を例に説明しているが、両者の接合は、ヒートシールには限定されず、ガゼット袋を形成すル際にフィルム材同士を接合する一般的な手法で接合してもよい。
【0037】
まち構造を有しないフィルム壁11,12の周縁をなす4辺のうち、第1の辺1aの位置と、この第1の辺1aと対辺をなす第3の辺1cの位置とは、まち構造のフィルム壁13の短軸方向の両側にそれぞれヒートシールされている。具体的に、まち構造を有しないフィルム壁11,12の第1の辺1aと、まち構造のフィルム壁13の短軸方向の側部とは、まち構造を有しないフィルム壁11,12の第1辺の端縁から一定の距離だけ内側に入り込んだ位置でヒートシールされている。このヒートシールされた部分が
図1及び
図3においてヒートシール部33として示されている。ヒートシール部33は、一定範囲の領域が、端縁に沿って帯状にヒートシールされる。同様に、まち構造を有しないフィルム壁11,12の第3の辺1cとまち構造のフィルム壁15の短軸方向の側部をなす他方の辺とは、まち構造を有しないフィルム壁11,12の第3の辺1cの端縁から一定の距離だけ内側に入り込んだ位置で、ヒートシールされている。このヒートシールされた部分が
図1において、ヒートシール部34として示されている。これらのヒートシール部33,34は、まち構造を有しないフィルム壁11,12の第2の辺1bと第4の辺1dの間の全領域で行われている。
【0038】
一方、まち構造を有しないフィルム壁11,12の4辺のうち、第2の辺1bの位置と第4の辺1dの位置において、まち構造のフィルム壁13,15と重なる部分では、まち構造のフィルム壁13,15と、まち構造を有しないフィルム壁11,12の周縁同士がヒートシールされ、まち構造のフィルム壁13,15と重ならない部分では、まち構造を有しないフィルム壁11,12の周縁同士がヒートシールされて接合されている。このヒートシールされた部分が
図1において、ヒートシール部31,32として示されている。第2の辺1bの位置及び第4の辺1dの位置に形成されたヒートシール部31,32は、まち構造を有しないフィルム壁11,12の端縁とこの端縁から一定の距離だけ内側に入り込んだ位置との間の範囲がヒートシールされることによって形成されている。これらのヒートシール部31,32は、第2の辺1b及び第4の辺1dの位置において、第1の辺1aと第3の辺1cとの間の全領域に形成されている。
【0039】
また、第2の辺1bの位置及び第4の辺1dの位置では、まち構造を有しないフィルム壁11,12の周縁部とまち構造のフィルム壁13,15の長軸方向の両端部とがヒートシールされている。具体的に、一方のまち構造を有しないフィルム壁11の第2の辺1b及び第4の端縁の内面と、二つ折りされた一対のまち構造のフィルム壁13,15の長軸方向の端縁とが、まち構造を有しないフィルム壁11,12における第1の辺1a及び第3辺が位置する両側の位置でヒートシールされる。その場合、一対のまち構造のフィルム壁13,15は、短軸方向における一方の端部と折目14,16との間の領域が各々の長軸方向の一方の端部の位置でまち構造を有しないフィルム壁11,12の内面にそれぞれヒートシールされる。また、他方のまち構造を有しないフィルム壁12の第2の辺1b及び第4の辺1dの端縁の内面と、二つ折りされた一対のまち構造のフィルム壁13,15の長軸方向の端縁とが同様にヒートシールされる。
【0040】
(まち構造を有しないフィルム壁)
まち構造を有しないフィルム壁11,12として用いられるフィルム材は、従来から一般的に使用されている積層フィルム材であり、単層のフィルム材や積層されたフィルム材が使用できる。単層フィルム材は、主にはシーラント層に用いられる樹脂単体でなるフィルム材が用いられる。これに対し、積層フィルム材は、基材層にシーラント層を積層してなるフィルム材が用いられている。基材層としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエステル等からなるフィルム材が用いられる。シーラント層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。積層フィルム材を製造する方法としては、例えば、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法などを挙げることができる。また、基材層とシーラント層との間に接着剤やアンカー剤等を設けることによって、基材層とシーラント層との接着強度を向上させることができる。
【0041】
(注入ユニット)
注入ユニット20は、袋本体部10の内部に内容物を注入したり、水などの液体を注入したりするための構成要素である。注入ユニット20は、まち構造を有しない一方のフィルム壁11の中央部又は略中央部に設けられている。なお、注出ユニット20は、用途、目的等によって、適宜適切な位置に設けることができる。
【0042】
注入ユニット20は、円筒状の注入部21と注入部21を開閉する蓋部24とにより構成されている。注入部21は、円筒状の筒体部22と、筒体部22の軸方向の一端で半径方向の外側に向かって張り出す円盤状の被着部23とで構成されている。この注入部21は、被着部23がまち構造を有しない一方のフィルム壁11の中央部又は略中央部にヒートシールされることにより、筒体部22が袋本体部10の外側に向かって突出する形態に取り付けられている。筒体部22の内部は空洞になっており、袋本体部10の内側と外側とを連絡させている。筒体部22の外周面には螺旋状のねじ25が形成されている。蓋部24は、内部に空間を有する円筒状の構成要素である。蓋部24は軸方向の一端側が開かれ、他端側が閉じられている。そして内面には、注入部21の筒体部22の外周面に形成されたねじ25に掛かり合わされる図示しない螺旋状のねじが形成されている。
【0043】
注入ユニット20は、蓋部24を注入部21に対して一方の方向に回転させることにより注入部21から蓋部24を取り外し、蓋部24を注入部21に対しして他方の方向に回転させることにより注入部21に取り付けられるように構成されている。ただし、注入部21の開閉は、ねじによる開閉に限定されず、押し込みや嵌合などでもよく、また、蓋部24は紛失防止のためヒンジ付き等で取り外し不可でもよい。また、蓋ではなくコック等による開閉とすることもできる。
【0044】
この注入ユニット20は、例えば、樹脂により構成される。注入ユニット20の注入部21と蓋部24とは、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形などにより成形される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを例として挙げることができる。
【0045】
(まち構造のフィルム壁)
まち構造のフィルム壁13,15は、本実施形態のガゼット袋1において、最も特徴を有する構成部である。
【0046】
まち構造のフィルム壁13,15は、上述したように、長方形のフィルム材により構成されている。まち構造のフィルム壁13,15は、短軸方向の中心に折目14,16が形成されており、この折目14,16の位置で二つ折りされた形態をなしている。また、まち構造のフィルム壁13,15は、本体フィルム18,19と本体フィルム18,19の外側に設けられたカバーフィルム40とが重ね合わされた二重構造をなしている。
【0047】
本体フィルム18,19は、排液及び通気構造を少なくとも一部に設けている。すなわち、本体フィルム18,19は、ガゼット袋1の内側として構成される一面側から外側として構成される他面側に液体を排出すると共に、空気をガゼット袋の内部に入り込ませたり、内部から外部に排気させたりすることができる構造を有している。排液及び通気構造とは、本体フィルムに形成された隙間や穴であり、本体フィルムの一面側と他面側とを連絡する構造を意味する。
【0048】
排液と通気とを可能にしている構造が少なくとも一部に形成された本体フィルム18,19としては、例えば、ヒートシールすることが可能な材料で形成された不織布、メッシュの形成されたフィルム材、及び複数の小さな穴が形成されたフィルム材を挙げることができる。本体フィルムがヒートシール可能な不織布である場合、不織布を構成しているフィルム材の繊維同士の間に形成される隙間が排液及び通気構造である。本体フィルムがメッシュの形成されたフィルム材である場合、フィルム材に形成された編み目である隙間が排液及び通気構造である。本体フィルムが穴の形成されたフィルム材である場合、穴が排液及び通気構造である。本体フィルム18,19は、不織布、メッシュの形成されたフィルム材及び穴が形成されたフィルム材の中から、ガゼット袋の内部に収容する内容物の性質やガゼット袋の用途に応じた構造のものを選択すればよい。本実施形態のガゼット袋1は、
図3に示すように、複数の小さな穴が形成されたフィルム材を本体フィルム18,19として用いた形態を例として挙げている。本体フィルム18,19をフィルム材で形成する場合、フィルム材の材質は、まち構造を有しないフィルム壁11,12を構成するフィルム壁と同様のフィルム材が用いられる。
【0049】
本体フィルムは、上記の不織布、メッシュの形成されたフィルム材及び穴が形成されたフィルム材の他に、例えば、ヒートシール可能な不織布をラミネートした紙や多孔質膜を用いることができる。
【0050】
カバーフィルム40は、本体フィルム18,19から剥離させることができるように、イージーピールフィルム材が用いられている。カバーフィルム40としては、従来から一般的に用いられている単層フィルムや基材にシーラント層を積層した積層フィルムが用いられ、材質としては、単層フィルムやシーラント層はイージーピールフィルムを用いることができ、基材にはポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン系等のフィルム材を挙げることができる。
【0051】
カバーフィルム40は、
図3及び
図4に示す例のように、本体フィルム18,19の面積よりも若干大きく形成された長方形のフィルム材であり、本体フィルム18,19の外面にヒートシールされている。カバーフィルム40と本体フィルム18,19とは、まち構造のフィルム壁13,15を構成している本体フィルム18,19とまち構造を有しないフィルム壁11,12とがヒートシールされている位置と同じ位置でヒートシールされることにより接合されている。
【0052】
具体的に、カバーフィルム40における短軸方向の両側は、
図3及び
図4に示すように、端縁よりも内側位置と、その位置よりもさらに内側の位置との間の領域が本体フィルム18,19の外面に帯状にヒートシールされている。
図3に示したヒートシール部45,46がカバーフィルム40の短軸方向の端部と本体フィルム18とがヒートシールされた部分である。一方、カバーフィルム40における長軸方向の両側についても、
図3に示すように、端縁よりも内側位置と、その位置よりもさらに内側の位置との間の領域が本体フィルム18,19の外面に帯状にヒートシールされている。
図3に示したヒートシール部47がカバーフィルム40の長軸方向の端部と本体フィルム18とがヒートシールされた部分である。
【0053】
以上のように、本実施形態のガゼット袋1を構成している袋本体部10では、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15とが接合されるヒートシール部の位置と、まち構造のフィルム壁13,15を構成している本体フィルム18,19とカバーフィルム40とが接合されるヒートシール部の位置とが完全に一定している。ただし、本実施形態のガゼット袋1は、カバーフィルム40と本体フィルム18,19とのヒートシール部の位置は、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15とのヒートシール部の位置からずれた位置に形成することを妨げるものではない。
【0054】
カバーフィルム40は、上記のように本体フィルム18,19の面積よりも若干多く形成されている。カバーフィルム40の周縁部分が本体フィルム18,19の周縁からはみ出した部分は、摘まみ部41として機能する。カバーフィルム40を本体フィルム18,19から剥離する際、カバーフィルム40は、摘まみ部41が手で摘ままれ、本体フィルム18,19から引き離されるようにして本体フィルム18,19から剥離される。本実実施形態のガゼット袋1では、カバーフィルム40が本体フィルム18,19にヒートシールされた形態において、短軸方向の一方の側縁が本体フィルム18,19の側縁の外側に張り出す形態をなしている。
【0055】
(フィルム壁同士の接合、及び本体フィルムとカバーフィルムの接合)
本発明に係るガゼット袋1では、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15との接合の方法は、特に限定されず、ガゼット袋を製造する際に用いられている一般的な方法で接合することができる。同様に、本体フィルム18,19とカバーフィルム40との接合もフィルム材にイージーピールフィルムを接合する際に一般的に行われている手法で接合することができる。以下では、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15との接合、及び本体フィルム18,19とカバーフィルム40との接合がヒートシールである場合について説明する。
【0056】
本実施形態のガゼット袋1は、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15とがヒートシールされて接合される。また、まち構造のフィルム壁13,15において、本体フィルム18,19とカバーフィルム40とは、ヒートシールされることにより接合される。カバーフィルム40は、その全面を本体フィルム18,19にヒートシールするなどして接合することが望ましいが、以下に説明するように両者の周縁同士をヒートシールして接合することもできる。その場合において、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15とのシール強度と本体フィルム18,19とカバーフィルム40とのシール強度に差を設ける方法として、カバーフィルム40又そのシーラント層にイージーピール材を利用することができる。
【0057】
本実施形態のガゼット袋1では、まち構造を有しないフィルム壁11,12及びカバーフィルム40として構成されるイージーピールフィルム材が、まち構造のフィルム壁13,15を構成する本体フィルム18,19の外側に配置された状態で、まち構造を有しないフィルム壁11,12及び本体フィルム18,19とカバーフィルム40にヒートシールされる。
【0058】
まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15の本体フィルム18,19とのヒートシール部31,32,33,34には、応力が集中しやすい。とりわけ、内側に向けて折り込まれた部分のヒートシール部31,32には、応力が特に集中しやすい。そのため、ガゼット袋1では、一般に落下するなどして圧力が伝播し折込み部を開く方向にヒートシール部31,32に外力が付加された場合、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15の本体フィルム18,19とのヒートシール部31,32の位置で破損してしまうことがある。
【0059】
本体フィルム18,19とまち構造を有しないフィルム壁11,12との間のシール強度は、カバーフィルム40を本体フィルム18,19から剥離する際に、本体フィルム18,19とまち構造を有しないフィルム壁11,12とが剥離することがない強度に接合されている。
【0060】
ここで、
図1及び
図5を参照し、高強度シール部31a,32aと、シール部31b,32bの詳細について説明する。
図1に示すように、高強度シール部31a,32aは、まち構造を有しないフィルム壁11,12とまち構造のフィルム壁13,15とがシールされるシール部31,32において、まち構造のフィルム壁13,15の折目14,16がまち構造を有しないフィルム壁11,12と交わる交線の近傍に形成されている。この高強度シール部31a,32aは、のシール強度を他のシールされた部位のシール強度よりも高く形成した部分である。折目14,16が交わる交線の近傍は、応力が集中しやすくなっている。そのため、折目14,16が交わる交線の近傍は、シール強度を他のシールされた部位よりもシール強度を高くすることにより、破損の発生を抑制している。この高強度シール部31a,32aは、ヒートシールするときの温度を特に高くしてヒートシールして形成される。
【0061】
また、高強度シール部31a,32aの近傍、具体的には外側には、シール部31b,32bが形成されている(
図1を参照。)。このシール部31b,32bは、シール部31,32において、まち構造のフィルム13,15及びカバーフィルム40に、
図5(A)に示すように、切り欠きを形成し、まち構造を有しないフィルム壁11,12同士を
図5(B)に示すように、直接シールしている部分である。
図5に示した例おいて、切り欠きは、まち構造のフィルム壁13,15及びカバーフィルム40の端部から内側に向けて円弧状に切り欠くことにより形成されている。まち構造を有しないフィルム壁11,12同士は、切り欠かれた部分で直接シールされている。このシール部31b,32bは、上記のように構成することにより、まち構造のフィルム壁13,15の折目14,16がまち構造を有しないフィルム壁11,12と交わる交線の位置のシールされた部分が外力によって開くことが抑制される。例えば、落下等によりシールされた部分に応力が加わった場合においても、最も応力集中が発生するまち構造のフィルム壁13,15の折目が待ち構造を有しないフィルム壁11,12と交わる交線の近傍への影響を軽減でき、容器自体の落下強度も向上することができる。
【0062】
(ガゼット袋の用途)
次に、ガゼット袋の用途について説明する。このガゼット袋は、内部に粉体や粒体等の固体、例えば、穀物類、乾燥食品、植物の種子等を内部に収容することに用いることができる。
図6〜
図8を参照して植物の種子をガゼット袋1の内部に収容した場合を用途の一例として説明する。
【0063】
本実施形態のガゼット袋1は、例えば、植物の種子を収容することに用いられる。
図6は、ガゼット袋1の内部に、植物の種子を収容した形態を示している。また、ガゼット袋1の内部には、水を注入し、植物の種子に水分を含ませている。この場合、注入ユニット20の蓋部24が取り外されて注入部21を開いた状態にし、植物の種子がこの注入部21から必要な量だけ充填される。次いで、注入部21から水が注入され、植物の種子に水分を吸収させる。なお、内容物である植物の種子を充填する場合、第1の辺1a又は第3の辺1cをヒートシールせず、開いた形態にしておき、開いた第1の辺1a又は第3の辺1cの位置から充填することもできる。その場合、内容物を充填した後に、開いた第1の辺1a又は第3の辺1cの位置がヒートシールされる。
【0064】
次に、
図7に示すように、まち構造のフィルム壁13,15において、本体フィルム18,19からカバーフィルム40が剥離される。
図7は、カバーフィルム40が本体フィルム18,19から剥離されている過程を示している。カバーフィルム40の短軸方向の片側には、その端縁が本体フィルム18,19の端縁よりも外側に張り出してなる摘まみ部41が設けられており、この摘まみ部41が人の手によって摘ままれる。カバーフィルム40は、摘まみ部41が摘ままれて本体フィルム18,19から引き離されて徐々に剥離される。
【0065】
図8は、カバーフィルム40が本体フィルム18,19から完全に剥離されたガゼット袋1の形態を示している。この
図8に示すように、カバーフィルム40が本体フィルム18,19から完全に剥離された形態では、本体フィルム18,19に形成された複数の穴が現れる。本実施形態において、ガゼット袋1の内部には、植物の種子が収容されると共に、水が注入される。収容した植物の種子が注入した水のすべてを吸収することができない場合、吸収されなかった水は、余分な水分となる。複数の穴は、植物の種子が吸収しきれなかった余分な水をガセット袋の内部から外部に排出する機能を有している。
【0066】
本体フィルム18,19に形成された複数の穴は、さらに、空気がガゼット袋1の内部に入り込むと共に、ガゼット袋1の内部の空気がガゼット袋1の外部に排気する機能を有している。植物の種子をガゼット袋の内部で発芽させるためには、ガゼット袋の内部で、適量な水分を種子に含ませ、及び空気がガゼット袋に入り込むと共に、ガゼット袋の内部の空気が外部に排気されることが必要となる。このガゼット袋1は、内部に収容された植物の種子が発芽に必要な適量の水分を含ませた状態を作り出す機能と、発芽に必要な空気を種子に送り込む機能の両方の機能を有している。空気がガゼット袋の内部に入り込む作用と、内部の空気が外部に排気される作用とによって、ガゼット袋の内部では、空気が適度に循環し、ガゼット袋の内部に収容された植物の種子の全体に空気が行き渡る。そのため、収容された植物の種子は全体が、適切に発芽する。
【0067】
本実施形態のガゼット袋1は、上述した機能を有しているので、植物の種子が発芽する直前までガゼット袋1の内部に収容させておき、植物の種子をガゼット袋1の内部に収容した態様で植物の種子を運搬することができる。
【0068】
本発明に係るガゼット袋1は、その内部に植物の種子を充填する場合の他に、例えば、乾燥食品等、使用する直前に水分を含ませ、余分な水分を排出する用途に用いることもできる。その他にも、本発明に係るガゼット袋は、液体を内部に注入し、余分な液体を外部に排出させ、かつ、空気がガゼット袋の内部に配置込むことと内部の空気が外部に排出される作用が必要な粉体又は粒体等の固体を収容する用途に用いることができる。
【0069】
以上、対向するまち構造のフィルム壁が排液及び通気構造を備えた場合を例にして説明した。ただし、排液及び通気構造は、対向するまち構造を有しないフィルム壁に設けたり、まち構造のフィルム壁とまち構造を有しないフィルム壁に設けたり、ガゼット袋を構成するすべてのフィルム壁に設けることもできる。