(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光性ドーパント材料が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる群れから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体である請求項1に記載の有機電界発光素子。
第1ホストと第2ホストを混合して予備混合物としたのち、これを含むホスト材料を蒸着させて発光層を形成させる工程を有する請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機EL素子は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を有し、発光層の少なくとも1層が、真空蒸着によって作製され、第1ホストと第2ホスト、及び発光性ドーパント材料を含有する。第1ホストは、上記一般式(1)で表される化合物であり、第2ホストは、上記一般式(2)で表される化合物である。この有機EL素子は、対向する陽極と陰極の間に複数の層からなる有機層を有するが、複数の層の少なくとも1層は、発光層であり、発光層は複数あってもよい。
【0020】
上記一般式(1)について、説明する。
環Aは式(1a)で表される芳香族炭化水素環であり、環Bは式(1b)で表される複素環であり、環A及び環Bはそれぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
【0021】
Ar
1はフェニル基、ビフェニル基、またはターフェニル基を示す。好ましくは、フェニル基、ビフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。ここで、ビフェニル基は、-Ph-Phで表される基であり、ターフェニル基は、-Ph-Ph-Phまたは-Ph(-Ph)-Phで表される基である。ここで、Phはフェニル基又はフェニレン基等である。
【0022】
Rは独立に炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基を示す。好ましくは、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、フェニル基、又は炭素数3〜9の芳香族複素環基を示す。より好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、フェニル基、又は炭素数3〜6の芳香族複素環基である。
【0023】
上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
【0024】
上記炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜12の芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、又はカルバゾールから1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、又はベンゾチアジアゾールから生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、又はオキサジアゾールから生じる芳香族基が挙げられる。
【0025】
a、b、cは、置換数を表し、各々独立して0〜3の整数を表し、好ましくは0又は1の整数である。mとnは、繰り返し数を表し、各々独立して0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1の整数である。ここで、m+nは0又は1以上の整数であることが好ましく、より好ましくは1、2又は3の整数である。
【0026】
一般式(1)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0030】
次に、第2ホストとなる一般式(2)、(3)又は一般式(4)の化合物について、説明する。一般式(2)〜(4)において、共通する記号は同じ意味を有する。
Ar
2とAr
3は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、または該芳香族炭化水素基が1〜2個連結した基を表す。好ましくは、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
【0031】
Ar
2とAr
3の具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の任意の芳香族化合物、又はこれら芳香族化合物の芳香族環が2個連結した化合物からHを1個とって生じる芳香族基又は連結芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンから生じる芳香族基又はこれらの芳香族基が2個連結した連結芳香族基が挙げられ、より好ましくはベンゼン、ナフタレン、又はフェナントレンから生じる芳香族基である。Ar
3はフェニル基であることが更に好ましい。ここで、連結芳香族基は、-Ar
4-Ar
6、-Ar
4-Ar
5-Ar
6、又は-Ar
4(-Ar
5)-Ar
6のような式で表される基であり、Ar
4、Ar
5、Ar
6は独立に炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である。Ar
4は2価又は3価の基であり、Ar
5は1価又は2価の基であり、Ar
6は1価の基である。
【0032】
L
1は、直接結合又は、式(2a)〜式(2c)のいずれからなる2価のフェニレン基を表し、好ましくは式(2a)、(2b)で表される2価のフェニレン基である。L
2は式(2c)で表される2価のフェニレン基を表す。
なお、カルバゾール環のNに直接結合する芳香族基がフェニレン基である場合は、これはL
1であると解する。
【0033】
一般式(2)〜(4)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0035】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0036】
前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる第1ホストと前記一般式(2)で表される化合物から選ばれる第2ホストを発光層のホスト材料として使用することで優れた有機EL素子を提供することができる。
【0037】
第1ホストと第2ホストは、個々に異なる蒸着源から蒸着して使用することもできるが、蒸着前に予備混合して予備混合物とし、その予備混合物を1つの蒸着源から同時に蒸着して発光層を形成することが好ましい。この場合、予備混合物には、発光層を形成するために必要な発光性ドーパント材料又は必要により使用される他のホストを混合させてもよいが、所望の蒸気圧となる温度に大きな差がある場合は、別の蒸着源から蒸着させることがよい。
【0038】
第1ホストと第2ホストの混合比(重量比)は、第1ホストと第2ホストの合計に対し、第1ホストの割合が20〜60%がよく、好ましくは20%よりも多く、55%よりも少ないことであり、より好ましくは40〜50%である。
【0039】
また、第1ホストと第2ホストの電子親和力(EA)差が0.1 eVよりも大きく、0.6 eVよりも小さいことが好ましい。EAの値は、ホスト材料薄膜での、光電子分光法により得られたイオン化ポテンシャル(IP)の値と、吸収スペクトルを測定し、その吸収端から求めたエネルギーギャップの値を用いて算出することができる。
【0040】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造はこれに限定されない。
【0041】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表す。本発明の有機EL素子は発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有してもよい。励起子阻止層は発光層の陰極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、そして陰極を必須の層として有するが、必須の層以外に正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することがよく、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することがよい。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか、または両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0042】
図1とは逆の構造、すなわち基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も必要により層を追加、省略することが可能である。
【0043】
―基板―
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については特に制限はなく、従来から有機EL素子に用いられているものであれば良く、例えばガラス、透明プラスチック、石英等からなるものを用いることができる。
【0044】
―陽極―
有機EL素子における陽極材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3-ZnO)等の非晶質で、透明導電膜を作成可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成しても良く、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは有機導電性化合物のような塗布可能な物質を用いる場合には印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0045】
―陰極―
一方、陰極材料としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属)、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム―カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの陰極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度は向上し、好都合である。
【0046】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で形成した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0047】
―発光層―
発光層は陽極及び陰極のそれぞれから注入された正孔及び電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり発光層には有機発光性ドーパント材料とホスト材料を含む。
【0048】
発光層におけるホスト材料としては、一般式(1)で表される第1ホストと一般式(2)で表される第2ホストを用いる。更に、公知のホスト材料を1種又は複数種類併用しても良いが、その使用量はホスト材料の合計に対し、50wt%以下、好ましくは25wt%以下とすることがよい。
【0049】
第1ホストと第2ホストは、それぞれ異なる蒸着源から蒸着するか、蒸着前に予備混合して予備混合物とすることで1つの蒸着源から第1ホストと第2ホストを同時に蒸着することもできる。
【0050】
第1ホストと第2ホストを予備混合して使用する場合は、良好な特性を有する有機EL素子を再現性良く作製するために、50%重量減少温度(T
50)の差が小さいことが望ましい。50%重量減少温度は、窒素気流減圧(50Pa)下でのTG-DTA測定において、室温から毎分10℃の速度で550℃まで昇温したとき、重量が50%減少した際の温度をいう。この温度付近では、蒸発又は昇華による気化が最も盛んに起こると考えられる。
【0051】
第1ホストと第2ホストは、上記50%重量減少温度の差が20℃以内であることが好ましく、15℃以内であることがより好ましい。予備混合方法としては、粉砕混合等の公知の方法が採用できるが、可及的に均一に混合することが望ましい。
【0052】
発光性ドーパント材料として燐光発光ドーパントを使用する場合、燐光発光ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には、J.Am.Chem.Soc.2001,123,4304や特表2013-53051号公報に記載されているイリジウム錯体が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0053】
燐光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。燐光発光ドーパント材料の含有量はホスト材料に対して0.1〜30wt%であることが好ましく、1〜20wt%であることがより好ましい。
【0054】
燐光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる
【0056】
発光性ドーパント材料として蛍光発光ドーパントを使用する場合、蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないが例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族誘導体、スチリル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、オキサジン誘導体、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、又はランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフトフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタレン、ヘキサセン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α‐ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はジアリールアミノ基を有しても良い。
【0057】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜20 wt%であることが好ましく、1〜10wt%であることがより好ましい。
【0058】
発光性ドーパント材料として熱活性化遅延蛍光発光ドーパントを使用する場合、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないがスズ錯体や銅錯体等の金属錯体や、WO2011/070963号公報に記載のインドロカルバゾール誘導体、Nature 2012,492,234に記載のシアノベンゼン誘導体、カルバゾール誘導体、Nature Photonics 2014,8,326に記載のフェナジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、スルホン誘導体、フェノキサジン誘導体、アクリジン誘導体等が挙げられる。
【0059】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0061】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されてもよいし、2種類以上を含有してもよい。また、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントは燐光発光ドーパントや蛍光発光ドーパントと混合して用いてもよい。熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜50%であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましい。
【0062】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0063】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0064】
正孔阻止層には公知の正孔阻止層材料を用いることができるが、一般式(1)で表される化合物を含有させることが好ましい。
【0065】
−電子阻止層−
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0066】
電子阻止層の材料としては、公知の電子阻止層材料を用いることができ、また後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0067】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は2つ以上の発光層が隣接する素子において、隣接する2つの発光層の間に挿入することができる。
【0068】
励起子阻止層の材料としては、公知の励起子阻止層材料を用いることができる。例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0069】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0070】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。かかる正孔輸送材料としては例えば、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体及びスチリルアミン誘導体を用いることが好ましく、アリールアミン化合物を用いることがより好ましい。
【0071】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0072】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントロリン等の多環芳香族誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体等が挙げられる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を超えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0074】
化合物1−11(0.20g)と化合物2−2(0.80g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物H1を調製した。
同様にして、表2に示す第1ホストと第2ホストを使用して、予備混合物H2〜H9を調製した。
【0075】
第1ホストと第2ホストの種類及び配合比を表2に示す。なお、化合物番号は、上記例示化合物に付した番号に対応する。
【0076】
比較のためのホストとして使用した化合物Aの化学式を次に示す。
【化23】
【0077】
表1に化合物1-1、1-2、1-3、1-4、1-11、1-157、2-2、2-4、そして化合物Aの50%重量減少温度(T
50)と、電子親和力(EA)を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして、ホストとして予備混合物H1を、発光ドーパントとしてIr(ppy)
3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)
3の濃度が10wt%となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層としてET-1を20nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0080】
実施例2〜9
実施例1において、ホストとして予備混合物H2〜H9のいずれかを用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0081】
実施例10
実施例3において、発光層を形成した後、正孔阻止層として化合物1−11を10nmの厚さに形成し、電子輸送層としてET-1を10nmの厚さに形成した以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0082】
実施例11
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。次に、第1ホストとして化合物1−11を、第2ホストとして化合物2−2を、発光ドーパントとしてIr(ppy)
3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)
3の濃度が10wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が40:60となる蒸着条件で共蒸着した。次に電子輸送層としてET-1を20nmの厚さに形成した。更に電子輸送層上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0083】
実施例12
実施例11において第1ホストとして化合物1−1を、第2ホストとして化合物2-2を使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0084】
実施例13
実施例11において第1ホストとして化合物1−2を、第2ホストとして化合物2-4を使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0085】
実施例14
実施例11において第1ホストとして化合物1−3を、第2ホストとして化合物2-4を使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0086】
実施例15
実施例11において第1ホストとして化合物1−157を、第2ホストとして化合物2-2を使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0087】
実施例16
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを45nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そしてホストとして予備混合物H2を、発光ドーパントとしてIr(piq)
2acacをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時Ir(piq)
2acacの濃度が6.0wt%となる蒸着条件で共蒸着した。更に、正孔阻止層としてET-1を10nmの厚さに形成した。次に電子輸送層としてET-1を27.5nmの厚さに形成した。そして電子輸送層上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0088】
実施例17、18
実施例16において、ホストとして予備混合物H3とH4のいずれかを使用した以外は実施例16と同様にして有機EL素子を作製した。
【0089】
実施例19
実施例17において、発光層を形成した後、正孔阻止層として化合物1−11を10nmの厚さに形成し、電子輸送層としてET-1を10nmの厚さに形成した以外は実施例17と同様にして有機EL素子を作製した。
【0090】
実施例20
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを45nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして第1ホストとして化合物1−11を、第2ホストとして化合物2−2を、発光ドーパントとしてIr(piq)
2acacをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(piq)
2acacの濃度が6.0wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が、30:70となる蒸着条件で共蒸着した。更に、正孔阻止層としてET-1を10nmの厚さに形成した。次に電子輸送層としてET-1を27.5nmの厚さに形成した。そして電子輸送層上に電子注入層としてLiFを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0091】
実施例21
実施例20において、第1ホストと第2ホストの重量比が40:60となる蒸着条件で共蒸着した以外は、実施例20と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0092】
実施例22
実施例20において、第1ホストと第2ホストの重量比が50:50となる蒸着条件で共蒸着した以外は、実施例20と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0093】
比較例1
実施例1において、ホストとして化合物1−11を単独で用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。発光層の厚み、発光ドーパント濃度は実施例1と同様である。
【0094】
比較例2〜6
ホストとして表3に示す化合物を単独で用いた以外は比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0095】
比較例7
実施例11において、第1ホストとして化合物1−11を、第2ホストとして化合物Aを使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0096】
比較例8
実施例11において、第1ホストとして1−157を、第2ホストとして化合物Aを使用した以外は実施例11と同様にして有機EL素子を作製した。
【0097】
比較例9〜10
実施例15において、ホストとして化合物1−2又は化合物1−11を単独で使用した以外は、実施例15と同様にして有機EL素子を作製した。
【0098】
実施例で使用した化合物を次に示す。
【化24】
【0099】
第1ホストと第2ホストの予備混合物の種類、第1ホストと第2ホストの種類、及び割合を表2、3に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
実施例1〜15及び比較例1〜8で作製された有機EL素子は、これに外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長530nmの発光スペクトルが観測され、Ir(ppy)
3からの発光が得られていることがわかった。
また、実施例16〜22及び比較例9、10で作製された有機EL素子は、これに外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長620nmの発光スペクトルが観測され、Ir(pic)
2acacからの発光が得られていることがわかった。
【0103】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命を表4及び5に示す。表中で輝度、駆動電圧、発光効率は駆動電流20mA/cm
2時の値であり、初期特性である。表4中でLT70は、初期輝度9000cd/m
2時に輝度が初期輝度の70%まで減衰するまでにかかる時間であり、表5中でLT95は、初期輝度3700cd/m
2時に輝度が初期輝度の95%まで減衰するまでにかかる時間であり、いずれも寿命特性である。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
表4と表5から、一般式(1)で表される第1ホストと一般式(2)で表される第2ホストを混合して使用すると、それぞれを単独で使用した場合と比較し、寿命特性が著しく伸長することがわかる。また、第1ホストと第2ホストを混合して使用したとしても、一方が一般式(1)又は一般式(2)の化合物ではない場合、電力効率が低く、良好な寿命特性が得られないことが分かる。
また、実施例10や19のように正孔阻止材料として一般式(1)で表される化合物を使用すると、寿命特性が伸長することが分かる。