特許第6895352号(P6895352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895352
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】被加工物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210621BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20210621BHJP
   C23C 16/14 20060101ALI20210621BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20210621BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   C23C16/455
   C23C16/14
   C23C16/50
   G03F7/20 521
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-174957(P2017-174957)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-50342(P2019-50342A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】長友 優
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−092791(JP,A)
【文献】 特表2003−536272(JP,A)
【文献】 特開平04−032228(JP,A)
【文献】 特開2016−076620(JP,A)
【文献】 特開2016−076621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23C 16/14
C23C 16/455
C23C 16/50
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を処理する方法であって、
前記被加工物は、下地膜、及び、該下地膜上に設けられたマスクを有し、該マスクは、開口を提供しており、
該方法は、
前記被加工物上にタングステン膜を形成する工程であり、該タングステン膜は、前記開口を画成する前記マスクの側壁面に沿って延在する第1領域、及び、前記下地膜上で延在する第2領域を含む、該工程と、
前記第1領域を残し、前記第2領域を除去するように、前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を含み、
タングステン膜を形成する前記工程は、
前記被加工物上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、前記被加工物に、タングステンを含有する前駆体ガスを供給する工程と、
前記被加工物上の前記前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガスのプラズマを生成する工程と、
を含
タングステン膜を形成する前記工程における前記被加工物の温度は、0℃以下である、方法。
【請求項2】
被加工物を処理する方法であって、
前記被加工物は、下地膜、及び、該下地膜上に設けられたマスクを有し、該マスクは、開口を提供しており、
該方法は、
前記被加工物上にタングステン膜を形成する工程であり、該タングステン膜は、前記開口を画成する前記マスクの側壁面に沿って延在する第1領域、及び、前記下地膜上で延在する第2領域を含む、該工程と、
前記第1領域を残し、前記第2領域を除去するように、前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を含み、
タングステン膜を形成する前記工程は、
前記被加工物上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、前記被加工物に、タングステンを含有する前駆体ガスを供給する工程と、
前記被加工物上の前記前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガスのプラズマを生成する工程と、
を含み、光学測定装置によって測定された前記開口の幅を基準値に近づけるように前記タングステン膜を形成する、
方法。
【請求項3】
タングステン膜を形成する前記工程では、前駆体ガスを供給する前記工程と水素ガスのプラズマを生成する前記工程とを各々が含む複数回のサイクルが実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体ガスは、ハロゲン化タングステンガスである、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体ガスは、六フッ化タングステンガスである、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
被加工物を処理する方法であって、
前記被加工物は、下地膜、及び、該下地膜上に設けられたマスクを有し、該マスクは、開口を提供しており、
該方法は、
前記被加工物上にタングステン膜を形成する工程であり、該タングステン膜は、前記開口を画成する前記マスクの側壁面に沿って延在する第1領域、及び、前記下地膜上で延在する第2領域を含む、該工程と、
前記第1領域を残し、前記第2領域を除去するように、前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を含み、
タングステン膜を形成する前記工程は、
前記被加工物上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、前記被加工物に、タングステンを含有する前駆体ガスを供給する工程と、
前記被加工物上の前記前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガスのプラズマを生成する工程と、
を含み、
前記被加工物は、シリコン含有膜、該シリコン含有膜上に設けられた有機膜、該有機膜上に設けられたシリコン含有の反射防止膜、該反射防止膜上に設けられたレジストマスクを有し、
前記シリコン含有膜は、シリコンから形成された第1の膜、及び、該第1の膜上に設けられた第2の膜であり、酸化シリコンから形成された該第2の膜を有し、
前記下地膜は前記反射防止膜であり、前記下地膜上に設けられた前記マスクは前記レジストマスクであり、
該方法は、
前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する前記工程の実行後に、前記反射防止膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
前記有機膜のプラズマエッチングを実行する工程であり、該有機膜から有機マスクを形成する、該工程と、
前記第2の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
前記有機マスクを除去する工程と、
前記第1の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を更に含む、方法。
【請求項7】
被加工物を処理する方法であって、
前記被加工物は、下地膜、及び、該下地膜上に設けられたマスクを有し、該マスクは、開口を提供しており、
該方法は、
前記被加工物上にタングステン膜を形成する工程であり、該タングステン膜は、前記開口を画成する前記マスクの側壁面に沿って延在する第1領域、及び、前記下地膜上で延在する第2領域を含む、該工程と、
前記第1領域を残し、前記第2領域を除去するように、前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を含み、
タングステン膜を形成する前記工程は、
前記被加工物上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、前記被加工物に、タングステンを含有する前駆体ガスを供給する工程と、
前記被加工物上の前記前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガスのプラズマを生成する工程と、
を含み、
前記被加工物は、シリコン含有膜、該シリコン含有膜上に設けられた有機膜、該有機膜上に設けられたシリコン含有の反射防止膜、該反射防止膜上に設けられたレジストマスクを有し、
前記シリコン含有膜は、シリコンから形成された第1の膜、及び、該第1の膜上に設けられた第2の膜であり、酸化シリコンから形成された該第2の膜を有し、
前記下地膜は前記第1の膜であり、前記マスクは前記第2の膜から形成されるマスクであり、
該方法は、
前記反射防止膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
前記有機膜のプラズマエッチングを実行する工程であり、該有機膜から有機マスクを形成する、該工程と、
前記第2の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
前記有機マスクを除去する工程と、
前記第1の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、
を更に含み、
タングステン膜を形成する前記工程、及び、前記タングステン膜のプラズマエッチングを実行する前記工程は、有機マスクを除去する前記工程と前記第1の膜のプラズマエッチングを実行する前記工程との間で実行される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、被加工物を処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、マスクのパターンを下地膜に転写するためにプラズマエッチングが行われる。マスクとしては、一般的に、レジストマスクが用いられる。レジストマスクは、フォトリソグラフィ技術によって形成される。したがって、被エッチング層に形成されるパターンの限界寸法は、フォトリソグラフィ技術によって形成されるレジストマスクの解像限界に依存する。
【0003】
近年の電子デバイスの高集積化に伴い、レジストマスクの解像限界よりも小さい寸法のパターンを形成することが要求されている。このため、レジストマスク上にシリコン酸化膜を堆積させることにより、当該レジストマスクによって画成される開口の幅を調整する技術が提案されている。この技術は、特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された技術では、原子層堆積法(ALD法)によってレジストマスク上にシリコン酸化膜が形成される。具体的には、レジストマスクを有する被加工物に、アミノシランガスと活性化された酸素種とが交互に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−82560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラズマエッチングには、高いアスペクト比の開口を膜に形成すること、及び/又は、深い開口を膜に形成することが要求されるようになっている。このため、マスクの開口の幅を調整することに加えて、プラズマエッチングに対してより強固なマスクを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、被加工物を処理する方法が提供される。被加工物は、下地膜及びマスクを有している。マスクは、下地膜上に設けられている。マスクは、開口を提供している。この方法は、(i)被加工物上にタングステン膜を形成する工程であり、タングステン膜は、開口を画成するマスクの側壁面に沿って延在する第1領域、及び、下地膜上で延在する第2領域を含む、該工程と、(ii)第1領域を残し、第2領域を除去するように、タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程と、を含む。タングステン膜を形成する工程は、(iii)被加工物上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、被加工物に、タングステンを含有する前駆体ガスを供給する工程と、(iv)被加工物上の前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガスのプラズマを生成する工程と、を含む。
【0008】
一態様に係る方法では、前駆体の堆積と、水素の活性種による前駆体中の不純物の除去とが実行されることにより、マスク及び下地膜の表面上に、タングステン膜が形成される。そして、第1領域が残されるようにタングステン膜がエッチングされる。これにより、マスクの開口の幅が調整される。さらに、タングステン製の第1領域がマスクの側壁面に沿って設けられるので、下地膜のプラズマエッチングに対してより強固なマスクが提供される。ところで、プラズマを用いない原子層堆積法によるタングステン膜の形成では、前駆体中の不純物の除去のための反応を生じさせるために、被加工物の温度は、通常、250℃以上の温度に設定される。一方、一態様に係る方法では、水素ガスのプラズマからの水素の活性種によって前駆体中の不純物が除去されてタングステン膜が形成されるので、タングステン膜を形成する工程の実行中の被加工物の温度が低い温度に設定され得る。
【0009】
一実施形態の、タングステン膜を形成する工程では、前駆体ガスを供給する工程と水素ガスのプラズマを生成する工程とを各々が含む複数回のサイクルが実行される。
【0010】
一実施形態において、前駆体ガスは、ハロゲン化タングステンガスである。一実施形態において、前駆体ガスは、六フッ化タングステンガスであってもよい。
【0011】
一実施形態において、方法は、被加工物の複数の領域の各々におけるマスクの開口の幅の測定値を取得する工程と、複数の領域の各々の開口の幅の測定値と基準値との間の正の差分値を算出する工程と、タングステン膜を形成する工程において、被加工物の複数の領域の各々に差分値に対応する膜厚を有するタングステン膜が形成されるよう、被加工物の複数の領域の各々の温度を調整する工程と、を更に含む。タングステン膜を形成する工程は、被加工物の複数の領域の各々の温度が調整された状態で、実行される。
【0012】
一実施形態において、被加工物は、シリコン含有膜、該シリコン含有膜上に設けられた有機膜、該有機膜上に設けられたシリコン含有の反射防止膜、該反射防止膜上に設けられたレジストマスクを有する。シリコン含有膜は、シリコンから形成された第1の膜、及び、該第1の膜上に設けられた第2の膜であり、酸化シリコンから形成された該第2の膜を有する。
【0013】
一実施形態において、下地膜は反射防止膜であり、下地膜上に設けられたマスクはレジストマスクである。この実施形態において、方法は、タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程の実行後に、反射防止膜のプラズマエッチングを実行する工程と、有機膜のプラズマエッチングを実行する工程であり、該有機膜から有機マスクを形成する、該工程と、第2の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、有機マスクを除去する工程と、第1の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、を更に含む。
【0014】
一実施形態において、下地膜は第1の膜であり、マスクは第2の膜から形成されるマスクである。この実施形態において、方法は、反射防止膜のプラズマエッチングを実行する工程と、有機膜のプラズマエッチングを実行する工程であり、該有機膜から有機マスクを形成する、該工程と、第2の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、有機マスクを除去する工程と、第1の膜のプラズマエッチングを実行する工程と、を更に含む。タングステン膜を形成する工程、及び、タングステン膜のプラズマエッチングを実行する工程は、有機マスクを除去する工程と第1の膜のプラズマエッチングを実行する工程との間で実行される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、マスクの開口の幅を調整し、且つ、プラズマエッチングに対してより強固なマスクを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る被加工物を処理する方法を示す流れ図である。
図2図2は、図1に示す方法を適用可能な一例の被加工物の一部拡大断面図である。
図3図1に示す方法の実行において用いることが可能なプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図4図4の(a)、図4の(b)、図4の(c)、及び、図4の(d)は、方法MTの実行中に得られる被加工物の一部拡大断面図であり、図4の(e)は、方法MTの実行後の状態の被加工物の一部拡大断面図である。
図5図1に示す工程STRの一実施形態を示す流れ図である。
図6】タングステン膜の形成処理に関するタイミングチャートである。
図7図7の(a)は、タングステン膜の形成後の状態の被加工物の一部拡大断面図であり、図7の(b)はタングステン膜のエッチング後の状態の被加工物の一部拡大断面図である。
図8図5に示す工程ST11において実行可能な別の処理を示す流れ図である。
図9図8に示す処理に含まれる工程ST35を示す流れ図である。
図10図1に示す方法において図8に示す処理を実行する場合に利用することが可能な処理システムを概略的に示す図である。
図11】被加工物の複数の領域の一部を例示する図である。
図12】実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0018】
図1は、一実施形態に係る被加工物を処理する方法を示す流れ図である。図1に示す方法MTは、マスクの開口の幅を調整する工程STRを含む。工程STRは、工程ST2、工程ST3、工程ST4、及び、工程ST6のうち少なくとも一つの工程におけるプラズマエッチングのためのマスクの開口の幅を調整するために実行される。
【0019】
図2は、図1に示す方法を適用可能な一例の被加工物の一部拡大断面図である。図2に示す被加工物Wは、略円盤形状を有し得る。一実施形態において、被加工物Wは、シリコン含有膜SF、有機膜OF、反射防止膜BF、及び、レジストマスクRMを有する。シリコン含有膜SFは、ベース層BL上に設けられている。シリコン含有膜SFは、一実施形態では、第1の膜F1及び第2の膜F2を含んでいる。第1の膜F1は、ベース層BL上に設けられており、第2の膜F2は、第1の膜F1上に設けられている。第1の膜F1と第2の膜F2は、シリコンを含有し、且つ、互いに異なる材料から形成されている。第1の膜F1は、例えばシリコンから形成されている。第1の膜F1は、多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜であり得る。第2の膜F2は、例えば酸化シリコンから形成されている。
【0020】
有機膜OFは、シリコン含有膜SF上に設けられている。反射防止膜BFは、有機膜OF上に設けられている。反射防止膜BFは、シリコンを含有する。レジストマスクRMは、反射防止膜BF上に設けられている。レジストマスクRMは、プラズマエッチングによって反射防止膜BFに転写されるべきパターンを有している。即ち、レジストマスクRMは、開口ORMを提供している。開口ORMは、溝又はホールであり、反射防止膜BFの表面を部分的に露出させている。レジストマスクRMは、フォトリソグラフィ技術によるレジスト膜のパターニングにより形成され得る。
【0021】
方法MTは、図1に示すように、工程ST1〜工程ST6及び工程STRを含む。工程ST1〜工程ST6及び工程STRの実行には、一以上のプラズマ処理装置が用いられる。即ち、工程ST1〜工程ST6及び工程STRは、単一のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。或いは、工程ST1〜工程ST6及び工程STRの各々は、これらの工程のうち他の工程で用いられるプラズマ処理装置とは異なるプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。或いは、工程ST1〜工程ST6及び工程STRのうち幾つかの工程は、一つのプラズマ処理装置を用いて実行され、これらの工程のうち一以上の他の工程は一以上の他のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。
【0022】
図3は、図1に示す方法の実行において用いることが可能なプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図3に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置10は、チャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、略円筒形状を有しており、内部空間12sを提供している。チャンバ本体12は、例えば、アルミニウムから形成されている。チャンバ本体12の内壁面には陽極酸化処理が施されている。チャンバ本体12は接地されている。
【0023】
チャンバ本体12の底部上には、略円筒状の支持部13が設けられている。支持部13は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部13を構成する絶縁材料は、例えば石英である。支持部13は、チャンバ本体12内において、チャンバ本体12の底部から鉛直方向に延在している。チャンバ本体12の内部空間の中には、ステージ14が設けられている。ステージ14は、支持部13によって支持されている。
【0024】
ステージ14は、その上に載置される被加工物Wを支持するように構成されている。ステージ14は、電極プレート16、下部電極18、及び、静電チャック20を有している。電極プレート16及び下部電極18は、導体であり、アルミニウムといった金属から形成され得る。電極プレート16及び下部電極18は、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート16上に設けられており、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0025】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。静電チャック20は、導電膜である電極を、一対の絶縁層の間又は一対の絶縁シートの間に配置した構造を有している。静電チャック20の電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。静電チャック20上に被加工物Wが載置されている状態で、直流電源22からの電圧が静電チャック20に印加されると、被加工物Wと静電チャック20との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、被加工物Wは静電チャック20に保持される。
【0026】
ステージ14の周縁部上には、被加工物Wのエッジ及び静電チャック20を囲むようにフォーカスリングFRが配置される。フォーカスリングFRは、プラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。フォーカスリングFRは、例えばシリコン含有材料から形成されている。
【0027】
下部電極18の内部には、流路18pが設けられている。流路18pは、ステージ14の中心軸線の周りで渦巻き状に延在し得る。流路18pには、チャンバ本体12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。流路18pに供給される冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。即ち、流路18pとチラーユニットとの間では、冷媒が循環する。この冷媒の温度を制御することによって、静電チャック20上に搭載された被加工物Wの温度が制御される。
【0028】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と被加工物Wの裏面との間に供給する。
【0029】
プラズマ処理装置10には、被加工物Wの温度を調節する温度調整部HTが設けられている。温度調整部HTは、静電チャック20内に設けられている。温度調整部HTには、ヒータコントローラHCが接続されている。ヒータコントローラHCから温度調整部HTに電力が供給されることにより、静電チャック20の温度が調整され、静電チャック20上に載置された被加工物Wの温度が調整される。なお、温度調整部HTは、下部電極18内に設けられていてもよい。
【0030】
一実施形態において、温度調整部HTは、複数のヒータ(複数の発熱抵抗素子)及び複数の温度センサを有する。複数の温度センサは、複数のヒータのそれぞれの周囲の温度をそれぞれ検出する。複数のヒータは、ステージ14の複数の領域内にそれぞれ設けられている。ステージ14の当該複数の領域は、被加工物Wが静電チャック20上に載置されている状態では、被加工物Wの複数の領域ER(後述)のそれぞれの直下に位置する。プラズマ処理装置10では、複数の温度センサによって測定される被加工物Wの複数の領域ERの温度に応じて、複数のヒータによる複数の領域ERそれぞれの温度調整が行われる。
【0031】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、ステージ14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁材料から形成されている。上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34は、内部空間12sに面している。天板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。天板34は、一実施形態では、シリコンを含有する。別の実施形態では、天板34は、酸化シリコンを含有し得る。
【0032】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持するように構成されている。支持体36は、導体であり、アルミニウムといった金属から形成されている。支持体36は、水冷構造を有し得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス通流孔36bが下方に延びている。複数のガス通流孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0033】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。複数のガスソースは、方法MTにおいて用いられる複数のガスのソースである。バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0034】
プラズマ処理装置10では、チャンバ本体12の内壁に沿ってシールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、支持部13の外周にも設けられている。シールド46は、チャンバ本体12にプラズマ処理の副生物(例えば、エッチング副生物)が付着することを防止するものである。シールド46は、例えば、アルミニウム製の母材の表面をY等のセラミックスで被覆することにより構成され得る。
【0035】
チャンバ本体12の底部側、且つ、支持部13とチャンバ本体12の側壁との間にはバッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウム製の母材の表面をY等のセラミックスで被覆することにより構成され得る。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、チャンバ本体12内の空間を所望の真空度まで減圧することが可能であるように構成されている。一例において、排気装置50は、自動圧力制御弁及び真空ポンプを有する。真空ポンプは、例えばターボ分子ポンプを含む。チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。被加工物Wは、内部空間12sとチャンバ本体12の外部との間で搬送される際に、通路12pを通過する。通路12pはゲートバルブ12gによって開閉可能である。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0036】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、第1の高周波を発生する電源である。第1の高周波は、主としてプラズマ生成のために利用される高周波である。第1の高周波は、27〜100[MHz]の範囲内の周波数を有する。第1の高周波の周波数は、例えば60[MHz]である。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極18に接続されていてもよい。
【0037】
第2の高周波電源64は、第2の高周波を発生する電源である。第2の高周波は、被加工物Wにイオンを引き込むのに適した周波数を有する。第2の高周波は、400[kHz]〜40.68[MHz]の範囲内の周波数を有する。第2の高周波の周波数は、例えば13.56[MHz]である。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極18に接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0038】
プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、電圧を上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。電源70からの電圧が上部電極30に印加されると、内部空間12sの中に存在する正イオンが、天板34に衝突する。その結果、天板34から二次電子及び/又はシリコンが放出される。
【0039】
プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備えている。制御部Cntは、コンピュータ装置であることができる。制御部Cntは、例えば、プロセッサ、メモリといった記憶装置、キーボード、マウス、及び/又は、タッチパネルといった入力装置、並びに、表示装置等を備える。制御部Cntのプロセッサは、記憶装置に記憶された制御プログラムを実行し、記憶装置に記憶されたレシピデータに従い、プラズマ処理装置10の各部を制御する。制御部Cntは、方法MTの実行においてプラズマ処理装置10の各部を制御する。
【0040】
再び図1を参照して、方法MTについて説明する。以下では、方法MTがプラズマ処理装置10を用いて図2に示した被加工物Wに適用される場合を例として、方法MTを説明する。しかしながら、方法MTは、プラズマ処理装置10以外の一以上のプラズマ処理装置を用いて実行することが可能である。また、方法MTが適用される被加工物は、図2に示した被加工物Wに限定されるものではない。以下、図1と共に図4を参照する。図4の(a)、図4の(b)、図4の(c)、及び、図4の(d)は、方法MTの実行中に得られる被加工物の一部拡大断面図であり、図4の(e)は、方法MTの実行後の状態の被加工物の一部拡大断面図である。
【0041】
図1に示すように、方法MTでは、工程ST1が実行される。工程ST1では、レジストマスクRMが改質される。具体的に工程ST1では、図2に示した被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST1で用いられる処理ガスは、例えば、水素ガスと希ガスの混合ガスであり得る。また、工程ST1では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST1では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。さらに、工程ST1では、電源70からの電圧が上部電極30に印加される。なお、工程ST1では、第2の高周波電源64からの第2の高周波は、下部電極18に供給されてもよく、供給されなくてもよい。工程ST1の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。プラズマ中の正イオンは、上部電極30の天板34に衝突する。その結果、天板34から二次電子が放出される。放出された二次電子により、レジストマスクRMが改質される。
【0042】
方法MTでは、工程ST1の実行後に、工程ST2が実行される。工程ST2では、マスクMK1のパターンを反射防止膜BFに転写するために、プラズマエッチングが実行される。マスクMK1は、レジストマスクRM、又は、レジストマスクRMの開口の幅を工程STRにおいて調整することにより得られたマスクである。
【0043】
工程ST2では、マスクMK1を有する被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST2で用いられる処理ガスは、例えばフルオロカーボンガスを含み得る。また、工程ST2では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST2では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。また、工程ST2では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給される。工程ST2の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオン及び/又はラジカルといった活性種によって、反射防止膜BFがエッチングされる。その結果、図4の(a)に示すように、マスクMK1のパターンが反射防止膜BFに転写される。工程ST2の実行の後、マスクMK1は除去されてもよい。
【0044】
方法MTでは、工程ST2の実行後に、工程ST3が実行される。工程ST3では、マスクMK2のパターンを有機膜OFに転写するために、プラズマエッチングが実行される。マスクMK2は、工程ST2のプラズマエッチングにより反射防止膜BFから得られたマスク、又は、反射防止膜BFから得られた当該マスクの開口の幅を工程STRにおいて調整することにより得られたマスクである。
【0045】
工程ST3では、マスクMK2を有する被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST3で用いられる処理ガスは、酸素含有ガス(例えば酸素ガス)を含む。或いは、工程ST3で用いられる処理ガスは、水素ガス及び窒素ガスを含む。また、工程ST3では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST3では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。また、工程ST3では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給される。工程ST3の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオン及び/又はラジカルといった活性種によって、有機膜OFがエッチングされる。その結果、図4の(b)に示すように、マスクMK2のパターンが有機膜OFに転写されて、有機膜OFから有機マスクOFMが得られる。工程ST3の実行の後、マスクMK2は除去されてもよい。
【0046】
方法MTでは、工程ST3の実行後に、工程ST4が実行される。工程ST4では、マスクMK3のパターンを第2の膜F2に転写するために、プラズマエッチングが実行される。マスクMK3は、有機マスクOFM、又は、有機マスクOFMの開口の幅を工程STRにおいて調整することにより得られたマスクである。
【0047】
工程ST4では、マスクMK3を有する被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST4で用いられる処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、工程ST4では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST4では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。また、工程ST4では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給される。工程ST4の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオン及び/又はラジカルといった活性種によって、第2の膜F2がエッチングされる。その結果、図4の(c)に示すように、マスクMK3のパターンが第2の膜F2に転写される。
【0048】
方法MTでは、次いで、工程ST5が実行される。工程ST5では、マスクMK3が除去される。工程ST3では、図4の(c)に示した被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST5で用いられる処理ガスは、酸素含有ガス(例えば酸素ガス)を含む。或いは、工程ST3で用いられる処理ガスは、水素ガス及び窒素ガスを含む。また、工程ST5では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST5では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。なお、工程ST5では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給されてもよく、供給されなくてもよい。工程ST5の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオン及び/又はラジカルといった活性種によって、マスクMK3、即ち、有機マスクOFM自体又は当該有機マスクOFMを含むマスクが除去される。その結果、図4の(d)に示す被加工物Wが得られる。
【0049】
方法MTでは、工程ST5の実行後に、工程ST6が実行される。工程ST6では、マスクMK4のパターンを第1の膜F1に転写するために、プラズマエッチングが実行される。マスクMK4は、工程ST4のプラズマエッチングにより第2の膜F2から得られたマスク、又は、第2の膜F2から得られた当該マスクの開口の幅を工程STRにおいて調整することにより得られたマスクである。
【0050】
工程ST6では、マスクMK4を有する被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST6で用いられる処理ガスは、ハロゲン系のガスを含み得る。工程ST6で用いられる処理ガスは、例えば、塩素ガス及び臭化水素ガスのうち一以上のガスを含み得る。また、工程ST6では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST6では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。また、工程ST6では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給される。工程ST6の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオン及び/又はラジカルといった活性種によって、第1の膜F1がエッチングされる。その結果、図4の(e)に示すように、マスクMK4のパターンが第1の膜F1に転写される。なお、工程ST6の実行前に、第1の膜F1の表面上に形成された酸化膜を除去するために、プラズマエッチングが実行されてもよい。酸化膜の除去のためのプラズマエッチングには、フルオロカーボンガスを用いることが可能である。
【0051】
以下、図5図6図7の(a)、及び、図7の(b)を参照しつつ、工程STRについて説明する。図5は、図1に示す工程STRの一実施形態を示す流れ図である。図6は、タングステン膜の形成処理に関するタイミングチャートである。図6において、横軸は、時間を示している。また、図6において、縦軸は、キャリアガスの流量、前駆体ガスの流量、水素ガスの流量、及び、高周波の状態を示している。図6において、高周波がONであることは、プラズマの生成のために少なくとも第1の高周波が供給されていることを表しており、高周波がOFFであることは、第1の高周波及び第2の高周波の供給が停止されていることを示している。図7の(a)は、タングステン膜の形成後の状態の被加工物の一部拡大断面図であり、図7の(b)はタングステン膜のエッチング後の状態の被加工物の一部拡大断面図である。
【0052】
上述したように、工程STRは、工程ST2、工程ST3、工程ST4、及び、工程ST6のうち少なくとも一つの工程におけるプラズマエッチングのためのマスクの開口の幅を調整するために実行される。即ち、工程STRは、工程ST1の実行期間と工程ST2の実行期間の間の期間、工程ST2の実行期間と工程ST3の実行期間の間の期間、工程ST3の実行期間と工程ST4の実行期間の間の期間、及び、工程ST5の実行期間と工程ST6の実行期間の間の期間のうち、少なくとも何れかの期間で実行される。
【0053】
工程STRでは、工程ST11が実行される。工程ST11の一実施形態では、被加工物W上にタングステン膜を形成するために、成膜処理DPAが実行される。工程ST11の実行により、図7の(c)に示すように、被加工物Wの表面、即ち、マスクMKの表面及び下地膜UFの表面上にタングステン膜WFが形成される。マスクMKは、レジストマスクRM、工程ST2の実行により反射防止膜BFから形成されたマスク、有機マスクOFM、又は、工程ST4の実行の実行により第2の膜F2から形成されたマスクである。下地膜UFは、マスクMKがレジストマスクRMである場合には、反射防止膜BFであり、マスクMKが工程ST2の実行により反射防止膜BFから形成されたマスクである場合には、有機膜OFであり、マスクMKが有機マスクOFMである場合には、第2の膜F2であり、マスクMKが工程ST4の実行により第2の膜F2から形成されたマスクである場合には、第1の膜F1である。
【0054】
成膜処理DPAでは、タングステン膜WFを形成するために、サイクルCYが一回以上実行される。各サイクルCYは、工程ST21及び工程ST23を含んでいる。成膜処理DPAにおいて、サイクルCYが複数回実行される場合には、工程ST21と工程ST23は交互に実行される。一実施形態では、各サイクルCYは、工程ST21と工程ST23との間で実行される工程ST22を含んでいる。また、各サイクルCYは、工程ST23の後に実行される工程ST24を含んでいる。
【0055】
工程ST21では、被加工物W上にタングステンを含有する前駆体を堆積させるために、被加工物Wに前駆体ガスが供給される。即ち、チャンバ本体12の内部空間12sに前駆体ガスが供給される。前駆体ガスは、タングステンを含有する。前駆体ガスは、ハロゲン化タングステンガスであり得る。一例の前駆体ガスは、六フッ化タングステン(WF)ガスである。前駆体ガスは、六塩化タングステンガスといった他のハロゲン化タングステンガス、又は、別のタングステン含有ガスであってもよい。工程ST21では、プラズマは生成されない。即ち、工程ST21では、第1の高周波及び第2の高周波の供給が停止される。
【0056】
工程ST21では、前駆体ガスと共にキャリアガスが内部空間12sに供給されてもよい。キャリアガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Xeガス、Krガスといった希ガスであり得る。一実施形態では、キャリアガスは、図6に示すように、成膜処理DPAの実行期間にわたって内部空間12sに供給されてもよい。工程ST21では、前駆体ガスの流量は、100sccm以上、300sccm以下の流量に設定され得る。工程ST21では、キャリアガスの流量は、0sccm以上、3000sccm以下の流量に設定され得る。また、工程ST21では、内部空間12sの圧力は、0.02Torr(2.6Pa)以上、3Torr(400Pa)以下の圧力に設定され得る。
【0057】
続く工程ST22では、内部空間12sのパージが実行される。具体的に、工程ST22では、内部空間12sの排気が実行される。工程ST22では、パージガスとしてキャリアガスが内部空間22sに供給されてもよい。工程ST22の実行により、内部空間12sの中の前駆体ガスが排出され、被加工物W上に過剰に堆積していた前駆体が除去される。
【0058】
続く工程ST23では、被加工物W上の前駆体に水素の活性種を供給するために、水素ガス(Hガス)のプラズマが内部空間12sの中で生成される。工程ST23において水素ガスのプラズマを生成するために、図6に示すように、工程ST22の実行後、且つ、工程ST23の実行前に、内部空間12sへの水素ガスの供給が開始される。水素ガスの供給が開始されてから所定時間が経過した後に、工程ST23の実行が開始される。水素ガスの供給は、工程ST23の終了時まで継続する。水素ガスが内部空間12sに供給されているときには、キャリアガスも内部空間12sに供給され得る。
【0059】
工程ST23では、内部空間12sに水素ガスが供給されている状態で、第1の高周波が下部電極18(又は上部電極30)に供給される。これにより、内部空間12sの中で水素ガスのプラズマが生成される。工程ST23では、第2の高周波が下部電極18に供給されてもよい。工程ST23では、プラズマからの水素の活性種、即ち、水素のイオン及び/又はラジカルにより、前駆体中の不純物が除去される。前駆体ガスがハロゲン化タングステンガスである場合には、前駆体中のハロゲン元素と水素との反応により、前駆体からハロゲン元素が除去される。
【0060】
工程ST23では、水素ガスの流量は、100sccm以上、3000sccm以下の流量に設定され得る。工程ST23では、キャリアガスの流量は、0sccm以上、3000sccm以下の流量に設定され得る。工程ST23では、内部空間12sの圧力は、0.02Torr(2.6Pa)以上、3Torr(400Pa)以下の圧力に設定され得る。工程ST23では、第1の高周波の電力は、20W以上、3000W以下の電力に設定され得る。また、工程ST23では、第2の高周波の電力は、0W以上、200W以下の電力に設定され得る。
【0061】
続く工程ST24では、内部空間12sのパージが実行される。具体的に、工程ST24では、内部空間12sの排気が実行される。工程ST24では、パージガスとして、キャリアガスが内部空間12sに供給されてもよい。工程ST24の実行により、内部空間12sの中の水素ガスが排出される。
【0062】
続く工程ST25では、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件はサイクルCYの実行回数が所定回数に達している場合に満たされるものと判定される。所定回数は、1回以上の回数である。工程ST25において停止条件が満たされていないと判定されると、再びサイクルCYが実行される。一方、工程ST25において停止条件が満たされていると判定されると、成膜処理DPAの実行が停止する。成膜処理DPAの実行により、図7の(a)に示すように、被加工物Wの表面上にタングステン膜WFが形成される。タングステン膜WFは、第1領域R1及び第2領域R2を含む。第1領域R1は、開口OMKを画成するマスクMKの側壁面SWに沿って延在する。第2領域R2は、下地膜UF上で延在する。
【0063】
一実施形態において、工程ST11の成膜処理DPAの実行中の被加工物Wの温度は、当該被加工物Wの全領域において略均一であり、例えば、0℃以下の温度に設定される。更なる実施形態において、工程ST11の成膜処理DPAの実行中の被加工物Wの温度は、−20℃以下の温度に設定される。
【0064】
図5に示すように、工程STRでは、次いで、工程ST12が実行される。工程ST12では、第1領域R1を残し、第2領域R2を除去するようにタングステン膜WFのプラズマエッチングが行われる。工程ST12では、図7の(a)に示した状態の被加工物Wがステージ14上に載置された状態で、処理ガスが内部空間12sに供給される。工程ST12で用いられる処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、工程ST12では、排気装置50によって内部空間12sの圧力が指定された圧力に設定される。また、工程ST12では、第1の高周波電源62からの第1の高周波が上部電極30に供給される。工程ST12では、第1領域R1に体して第2領域R2を選択的に除去するために、異方性のプラズマエッチングが行われる。したがって、工程ST12では、第2の高周波電源64からの第2の高周波が下部電極18に供給される。工程ST12の実行により、内部空間12sの中で処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中のイオンが被加工物Wに引き込まれて、第2領域R2がエッチングされる。その結果、図7の(b)に示すように、タングステン膜WFの第1領域R1が残されて、第2領域R2がエッチングされる。なお、マスクMKの上面の上で延在しているタングステン膜WFは除去されるか、或いは、その膜厚が小さくなる。
【0065】
上述した一実施形態の方法MTでは、前駆体の堆積(工程ST21)と、水素の活性種による前駆体中の不純物の除去(工程ST23)とが実行されることにより、マスクMK及び下地膜UFの表面上に、タングステン膜WFが形成される。そして、工程ST12において、第1領域R1が残されるようにタングステン膜WFがエッチングされる。これにより、マスクMKの開口OMKの幅が調整される。また、タングステン製の第1領域R1がマスクMKの側壁面SWに沿って設けられるので、下地膜UFのプラズマエッチングに対してより強固なマスクMKi(iは、1〜4の何れかの整数)が提供される。さらに、タングステン製の第1領域R1により、マスクMKの側壁面のラフネスが改善される。ところで、プラズマを用いない原子層堆積法によるタングステン膜の形成では、前駆体中の不純物の除去のための反応を生じさせるために、被加工物の温度は、通常、250℃以上の温度に設定される。一方、方法MTでは、水素ガスのプラズマからの水素の活性種によって前駆体中の不純物が除去されてタングステン膜WFが形成されるので、工程ST11の成膜処理DPAの実行中の被加工物Wの温度が低い温度に設定され得る。
【0066】
以下、工程ST11において実行可能な別の処理について説明する。図8は、図5に示す工程ST11において実行可能な別の処理を示す流れ図である。図9は、図8に示す処理に含まれる工程ST35を示す流れ図である。図10は、図1に示す方法において図8に示す処理を実行する場合に利用することが可能な処理システムを概略的に示す図である。図8に示す処理PRCを工程ST11で実行する場合に、方法MTでは、図10に示す処理システム1を用いることができる。
【0067】
処理システム1は、台122a、台122b、台122c、台122d、容器124a、容器124b、容器124c、容器124d、ローダモジュールLM、ロードロックモジュールLL1、ロードロックモジュールLL2、トランスファーモジュール121、及び、上述のプラズマ処理装置10を備える。
【0068】
台122a〜122dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。台122a〜122dのそれぞれの上には、容器124a〜124dがそれぞれ設けられている。容器124a〜124dの各々の中には、被加工物Wが収容され得る。容器124a〜124dの各々は、例えばFOUP(Front−Opening Unified Pod)と呼ばれる容器である。
【0069】
ローダモジュールLMは、チャンバを提供している。ローダモジュールLMのチャンバの中には、搬送ロボットRb1が設けられている。搬送ロボットRb1は、容器124a〜124dのうち任意の容器とロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2のうち任意のロードロックモジュールの予備減圧室との間、任意のロードロックモジュールの予備減圧室と光学観察装置OCとの間、光学観察装置OCと容器124a〜124dのうち任意の容器との間で、被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0070】
ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2は、ローダモジュールLMの別の一縁に沿って設けられており、ローダモジュールLMに接続されている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2は、トランスファーモジュール121にそれぞれ接続されている。
【0071】
トランスファーモジュール121は、減圧可能なチャンバを提供している。トランスファーモジュール121のチャンバの中には、搬送ロボットRb2が設けられている。トランスファーモジュール121には、プラズマ処理装置10が接続されている。搬送ロボットRb2は、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2のうち任意のロードロックモジュールの予備減圧室と内部空間12sとの間で被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0072】
処理システム1は、光学観察装置OCを更に備える。被加工物Wは、搬送ロボットRb1及び搬送ロボットRb2によって、光学観察装置OCとプラズマ処理装置10との間で移動され得る。搬送ロボットRb1によって被加工物Wが光学観察装置OC内に収容され、光学観察装置OC内において被加工物Wの位置合わせが行われた後に、光学観察装置OCは、被加工物Wのマスクの開口の幅を測定する。具体的に、光学観察装置OCは、被加工物Wの複数の領域ERの各々におけるマスクの開口の幅を測定し、マスクの開口の幅の測定値を、制御部Cntに送信する。制御部Cntは、プラズマ処理装置10の各部に加えて、処理システム1の各部を制御する。制御部Cntの記憶装置には、後述する対応データDTが、読出し自在に格納されている。
【0073】
再び図8及び図9を参照する。処理PRCは、工程ST31〜ST35を含んでいる。工程ST35は、工程ST33及び工程ST34の判定結果に応じて、複数回実行され得る。工程SB31では、処理システム1の光学観察装置OCによって、被加工物Wの複数の領域ERの各々におけるマスクMKの開口の幅の測定値が取得される。図11は、被加工物の複数の領域の一部を例示する図である。複数の領域ERは、被加工物Wの主面WMSを区画する。主面WMSは、マスクMKの表面、及び、マスクMKから露出されている下地膜UFの上面を含む。複数の領域ERは、互いに重ならない。複数の領域ERは、被加工物Wの中心軸線に対して同心の複数のエリアの各々の中の一以上の領域を含み得る。或いは、複数の領域ERは、被加工物Wの主面を格子状に区切る複数の領域であり得る。複数の領域ERのレイアウトは限定されるものではない。
【0074】
工程ST31に続く工程ST32では、工程ST31で取得された複数の領域の各々の測定値と基準値との間の正の差分値が算出される。続く工程ST33では、マスクMKの開口の幅の調整が既に行われたか否かが判定される。具体的には、処理PRC内で工程ST35が既に実行されている場合には、マスクMKの開口の幅の調整が既に一度行われているものと判定される。工程ST33において、マスクMKの開口の幅の調整が未だ行われていないものと判定される場合には、工程ST35に処理が移る。工程ST33において、マスクMKの開口の幅の調整が既に行われているものと判定される場合には、工程ST34に処理が移る。
【0075】
工程ST34では、工程ST32で算出された差分値に基づいて、マスクMKの開口の幅の再調整が必要か否かが判定される。工程ST34では、各差分値が所定値よりも大きい場合に、マスクMKの開口の幅の再調整が必要であるものと判定される。工程ST34において、マスクMKの開口の幅の調整が必要であると判定される場合には、工程ST35に処理が移る。工程ST34において、マスクMKの開口の幅の再調整が必要ではないと判定される場合には、処理PRCは終了する。
【0076】
工程ST35では、マスクMKの開口の幅が調整される。具体的に、工程ST35では、被加工物Wが、搬送ロボットRb1及び搬送ロボットRb2によって、光学観察装置OCからプラズマ処理装置10の内部空間12sの中に搬入される。そして、複数の領域ERの各々におけるマスクMKの開口の幅を上述の基準値に一致させるか又は近づけるように、複数の領域ERの各々の表面上にタングステン膜WFが形成される。工程ST35におけるタングステン膜の形成については、後述する。次いで、被加工物Wは、搬送ロボットRb1及び搬送ロボットRb2によって、内部空間12sから光学観察装置OC内に移動される。そして、再び、工程ST31からの処理が実行される。
【0077】
図9に示すように、工程ST35のタングステン膜の形成では、工程ST351が実行され得る。工程ST351では、上述の成膜処理DPAが実行され得る。成膜処理DPAにより、比較的コンフォーマルにタングステンの膜が形成され得る。なお、工程ST351は実行されなくてもよい。
【0078】
続く工程ST352では、温度調整部HT(上述の複数のヒータ)を用いて、被加工物Wの温度が複数の領域ERごとに調整される。工程ST352では、対応データDTが利用される。対応データDTは、被加工物Wの温度と当該被加工物W上に堆積するタングステン膜の膜厚との関係を特定するデータであり、予め取得されたデータである。工程ST352では、対応データDTを参照することにより、複数の領域ERの各々について、上述の差分値に対応する膜厚に関連付けられた温度が特定される。工程ST35において成膜処理DPAが実行されない場合には、工程ST352では、対応データDTを参照することにより、複数の領域ERの各々について、上述の差分値の半分の膜厚に関連付けられた温度が特定される。工程ST35において成膜処理DPAが実行される場合には、工程ST352では、対応データDTを参照することにより、複数の領域ERの各々について、上述の差分値の半分の膜厚から工程ST35の成膜処理DPAで形成されるタングステン膜の膜厚を差し引くことにより得られる膜厚に関連付けられた温度が特定される。各領域ERの温度は、特定された温度に調整される。
【0079】
工程ST35では、次いで、成膜処理DPBが実行される。成膜処理DPBでは、工程ST41〜工程ST44を含むサイクルが一回以上実行される。工程ST41〜工程ST44はそれぞれ、工程ST21〜工程ST24と同様の工程である。但し、工程ST21(即ち、成膜処理DPA)では、被加工物の複数の領域REの温度は互いに略同一の温度であるが、工程ST41(即ち、成膜処理DPB)における複数の領域REの温度は、工程ST352にて個別に調整された温度である。各領域REの温度が低いほど、成膜処理DPBによってその上に形成されるタングステン膜の膜厚は厚くなる。また、工程ST41の処理時間長は、工程ST41において被加工物W上に形成される前駆体の膜の厚みが、被加工物Wの温度に応じて増減する状態となる時間長の範囲内にある。このような処理時間長は、原子層堆積法の自己制御(self−limited)領域に含まれる時間長よりも短い時間である。なお、自己制御領域に含まれる処理時間長では、形成される膜の厚みが被加工物Wの温度に依存しない。
【0080】
成膜処理DPBでは、工程ST44に次いで、工程ST45が実行される。工程ST45では、停止条件が満たされるか否かが判定される。工程ST45では、工程ST41〜工程ST44を含むサイクルの実行回数が所定回数に達している場合に、停止条件が満たされるものと判定される。停止条件が満たされない場合には、工程ST41〜工程ST44を含むサイクルが再び実行される。一方、停止条件が満たされる場合には、工程ST354に処理が移行する。工程ST354では、上述の成膜処理DPAが実行される。工程ST354の成膜処理DPAは実行されなくてもよい。
【0081】
かかる処理PRCによれば、複数の領域ERのマスクMKの開口の幅が互いに異なっていても、複数の領域ERのマスクMKの開口の幅の差を低減又は解消するように、マスクMKの開口の幅を調整することが可能となる。
【0082】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、方法MTの実行に用いられるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、プラズマの生成のためにマイクロ波といった表面波を利用するプラズマ処理装置といった任意のプラズマ処理装置であってもよい。また、処理システム1は、プラズマ処理装置10に加えて、一以上のプラズマ処理装置を備えていてもよい。即ち、処理システム1は、トランスファーモジュールに接続された121に接続された複数のプラズマ処理装置を備えていてもよい。工程ST1〜工程ST6及び工程STRの各々は、これらの工程のうち他の工程で用いられる処理システム1のプラズマ処理装置とは異なる処理システム1のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。或いは、工程ST1〜工程ST6及び工程STRのうち幾つかの工程は、処理システム1の一つのプラズマ処理装置を用いて実行され、これらの工程のうち一以上の他の工程は処理システム1の一以上の他のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。
【0083】
以下、方法MTの成膜処理の評価のために行った実験について説明する。実験では、プラズマ処理装置10を用いて成膜処理DPAを実行することにより、複数のサンプルの下地膜の上にタングステン膜を形成した。実験では、工程ST21の処理時間及び成膜処理DPAにおけるサイクルの実行回数を可変のパラメータとして異ならせた。以下に実験の条件を示す。
<実験の条件>
工程ST21
内部空間12sの圧力:800mTorr(107Pa)
WFガスの流量:170sccm
キャリアガス(Arガス)の流量:600sccm
処理時間:10秒又は30秒
工程ST22
内部空間12sの圧力:800mTorr(107Pa)
キャリアガス(Arガス)の流量:800sccm
処理時間:30秒
工程ST23
内部空間12sの圧力:800mTorr(107Pa)
ガスの流量:500sccm
キャリアガス(Arガス)の流量:600sccm
第1の高周波:100MHz、500W
第2の高周波:0W
処理時間:3秒
工程ST24
内部空間12sの圧力:800mTorr(107Pa)
キャリアガス(Arガス)の流量:800sccm
処理時間:30秒
【0084】
実験では、複数のサンプル各々の下地膜の上に形成されたタングステン膜の膜厚を測定した。その結果を図12に示す。図12のグラフにおいて、横軸はサイクルCYの実行回数を示しており、縦軸はタングステン膜の膜厚を示している。図12に示すように、サイクルの実行回数に応じて、タングステン膜の膜厚は増加していた。この結果から、タングステンを含有する前駆体ガスの供給と水素の活性種の交互の供給を含むサイクルの実行回数に応じてタングステン膜の膜厚を制御可能であることが確認された。故に、方法MTによれば、マスクMKの開口の幅を任意に調整可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0085】
1…処理システム、OC…光学観察装置、10…プラズマ処理装置、12…チャンバ本体、12s…内部空間、14…ステージ、18…下部電極、20…静電チャック、HT…温度調整部、30…上部電極、50…排気装置、62…第1の高周波電源、64…第2の高周波電源、Cnt…制御部、W…被加工物、SF…シリコン含有膜、F1…第1の膜、F2…第2の膜、OF…有機膜、OFM…有機マスク、BF…反射防止膜、RM…レジストマスク、WF…タングステン膜、R1…第1領域、R2…第2領域、MK,MK1,MK2,MK3,MK4…マスク、UF…下地膜。
図1
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図12