(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895518
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】極端紫外光センサユニット
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20210621BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-524574(P2019-524574)
(86)(22)【出願日】2017年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2017021678
(87)【国際公開番号】WO2018229838
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】宮下 光太郎
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−119099(JP,A)
【文献】
特開2010−147138(JP,A)
【文献】
特開2007−109451(JP,A)
【文献】
特開2005−069854(JP,A)
【文献】
特開平11−061081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
さらに、前記波長フィルタと前記光センサとを、所定の距離を離して離間させるスペーサを備え、
前記スペーサによって前記波長フィルタと前記光センサとの間に形成された隙間に、前記パージガス供給部から前記パージガスが供給される極端紫外光センサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記スペーサは、前記波長フィルタと前記光センサの隙間を流れる前記パージガスの拡散を抑制し、前記パージガスが一方向に向かって流れるよう前記パージガスの流路の側面を塞ぐ壁部材を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項3】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
前記ミラーと前記波長フィルタとの間に前記パージガスと同種又は異種の第1のパージガスを供給するよう配置された第1のパージガス供給部と、
前記波長フィルタと前記光センサとの間に前記パージガスである第2のパージガスを供給するよう配置された前記パージガス供給部である第2のパージガス供給部と、
を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記第1のパージガス供給部を通じて前記ミラーと前記波長フィルタとの間に供給される前記第1のパージガスと、前記第2のパージガス供給部を通じて前記波長フィルタと前記光センサとの間に供給される前記第2のパージガスとによる前記波長フィルタの両面の圧力差が3kPa以下である極端紫外光センサユニット。
【請求項5】
請求項3に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記第1のパージガス供給部と前記第2のパージガス供給部の流路断面の面積比が5:1から15:1の範囲である極端紫外光センサユニット。
【請求項6】
請求項3に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記第1のパージガス供給部と前記第2のパージガス供給部の流量比が8:1から12:1の範囲である極端紫外光センサユニット。
【請求項7】
請求項3に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記第1のパージガス供給部及び前記第2のパージガス供給部の少なくとも一方は、ガス流量を調整するための絞りを含む極端紫外光センサユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記第1のパージガス供給部及び前記第2のパージガス供給部の少なくとも一方は、前記絞りを交換可能に固定する絞り取付部を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項9】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
前記パージガス供給部は、前記波長フィルタの表面に向かって直接に前記パージガスを吹き出さない流路構造を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項10】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
前記パージガス供給部は、前記波長フィルタと前記光センサの隙間に前記パージガスを流出させるガス流出口を含み、
前記ガス流出口は、前記波長フィルタに対して非対面の位置に設けられている極端紫外光センサユニット。
【請求項11】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
前記パージガス供給部は、
ガス導入口と、
前記ガス導入口から第1の方向に向かって前記パージガスを導く第1の流路部と、
前記第1の流路部に接続され、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記パージガスを導く第2の流路部と、を含み、
前記第2の方向は、前記波長フィルタの表面に平行な方向であり、
前記第1の流路部と前記第2の流路部との接続部にて前記パージガスの流れの向きを屈曲させて、前記第2の流路部を通して前記第2の方向から前記波長フィルタと前記光センサとの間に前記パージガスを供給する極端紫外光センサユニット。
【請求項12】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
さらに、前記パージガスのガス流路から前記光センサに可視光を含む散乱光が入射するのを抑制する遮蔽構造を備える極端紫外光センサユニット。
【請求項13】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
さらに、前記波長フィルタと前記光センサの間の空間に連通し、前記波長フィルタと前記光センサの間を通過した前記パージガスを前記波長フィルタの表面と非平行な方向に導く第3の流路部を備える極端紫外光センサユニット。
【請求項14】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
さらに、前記波長フィルタと前記光センサの間の空間と連通し、前記波長フィルタと前記光センサの間を通過した前記パージガスを、前記光センサから離れた位置のガス出口へと導くパージガス排出流路を備え、
前記パージガス排出流路は、前記波長フィルタと前記光センサの間の空間から前記ガス出口までのガスの流れの経路が非直線の経路となる流路構造を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項15】
極端紫外光を反射するミラーと、
前記ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記極端紫外光を検出する光センサと、
前記波長フィルタと前記光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、
を備え、
さらに、前記ミラーに入射させる前記極端紫外光を含むプラズマ光及び前記パージガス供給部から供給された前記パージガスを通過させる管部であって、前記プラズマ光の光入射口となる開口部を有し、前記開口部から入射する前記プラズマ光を前記ミラーに向けて通過させるとともに、前記ミラーと前記波長フィルタとの間を流れた前記パージガスを前記開口部から流出させる管部を含む極端紫外光センサユニット。
【請求項16】
請求項15に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記ミラー、前記波長フィルタ、及び前記光センサを収容するケースを備え、
前記ケースに前記管部と前記パージガス供給部とが設けられている極端紫外光センサユニット。
【請求項17】
請求項16に記載の極端紫外光センサユニットであって、
前記ケースの外側に嵌合するソケットを備え、
前記ソケットは、前記ケースの外壁と前記ソケットの内壁との間にガス経路となる隙間を形成するガス経路形成部と、
前記ガス経路形成部に連通する配管接続部と、
を有し、
前記ケースの外壁と前記ソケットの内壁との間に形成される前記隙間を通じて前記ケースの中に前記パージガスが供給される極端紫外光センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光センサユニット及び極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、20nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長13nm程度の極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−508722号公報
【特許文献2】特開2006−135307号公報
【特許文献3】特開2004−103773号公報
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光センサユニットは、極端紫外光を反射するミラーと、ミラーによって反射された極端紫外光を選択的に透過する波長フィルタと、波長フィルタを透過した極端紫外光を検出する光センサと、波長フィルタと光センサとの間にパージガスを供給するよう配置されたパージガス供給部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2はEUV光センサユニットの構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は実施形態1に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6はスペーサの三面図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図7】
図7はセンサ保持部材に固定された第2の光センサの断面図である。
【
図8】
図8はフィルタ保持部材に固定されたフィルタの断面図である。
【
図9】
図9は実施形態2に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図10は実施形態3に係るEUV光センサユニットの要部構成を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図11は実施形態4に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【0007】
−目次−
1.用語の説明
2.極端紫外光生成システムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.実施形態4
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
8.変形例
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0008】
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.用語の説明
「ターゲット」は、チャンバに導入されたレーザ光の被照射物である。レーザ光が照射されたターゲットは、プラズマ化してEUV光を放射する。ターゲットは、プラズマの発生源となる。液状のターゲット物質によって形成されるドロップレットは、ターゲットの一形態である。
【0010】
「パルスレーザ光」は、複数のパルスを含むレーザ光を意味し得る。
【0011】
「レーザ光」は、パルスレーザ光に限らずレーザ光一般を意味し得る。
【0012】
「レーザ光路」は、レーザ光の光路を意味する。
【0013】
「プラズマ光」は、プラズマ化したターゲットから放射された放射光である。当該放射光にはEUV光が含まれている。
【0014】
「EUV光」という表記は、「極端紫外光」の略語表記である。
【0015】
「光学部品」という用語は、光学素子、若しくは光学部材と同義である。
【0016】
2.極端紫外光生成システムの全体説明
2.1 構成
図1に例示的なLPP式のEUV光生成システム10の構成を概略的に示す。EUV光生成装置11は、少なくとも1つのレーザ装置12と共に用いられる場合がある。本開示においては、EUV光生成装置11とレーザ装置12を含むシステムを、EUV光生成システム10と称する。
【0017】
図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置11は、レーザ光伝送装置14と、レーザ光集光光学系16と、チャンバ18と、EUV光生成制御装置20と、ターゲット制御装置22と、ガス制御装置24と、を含んで構成される。
【0018】
レーザ装置12は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムであってよい。レーザ装置12は、図示せぬマスターオシレータと、図示せぬ光アイソレータと、複数台の図示せぬCO
2レーザ増幅器とを含んで構成され得る。マスターオシレータが出力するレーザ光の波長は例えば10.59μmであり、所定の繰り返し周波数は例えば100kHzである。マスターオシレータには固体レーザを採用することができる。
【0019】
レーザ光伝送装置14は、レーザ光の進行方向を規定するための光学部品と、この光学部品の位置や姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えている。
図1に示したレーザ光伝送装置14は、レーザ光の進行方向を規定するための光学部品として、第1の高反射ミラー31と第2の高反射ミラー32とを含む。
【0020】
レーザ光集光光学系16は、集光レンズ34と集光レンズホルダ35と三軸ステージ36とを含んで構成される。三軸ステージ36は、X軸、Y軸及びZ軸の互いに直交する三軸の方向に移動可能なステージである。
図1においてチャンバ18から露光装置100に向かってEUV光を導出する方向をZ軸とする。
図1の紙面に垂直な方向をX軸とし、紙面に平行な縦方向をY軸とする。レーザ光集光光学系16は、レーザ光伝送装置14によって伝送されたレーザ光をチャンバ18内のプラズマ生成領域64に集光するよう構成されている。
【0021】
チャンバ18は密閉可能な容器である。チャンバ18は、例えば、中空の球形状又は筒形状に形成されてもよい。チャンバ18は、EUV光集光ミラー40と、プレート41と、EUV光集光ミラーホルダ42と、第1のウインドウ44と、第1の覆い45と、を備えている。また、チャンバ18は、ターゲット供給部50と、二軸ステージ51と、ドロップレット受け52と、ドロップレット検出装置54と、EUV光センサユニット60と、ガス供給装置61と、排気装置62と、圧力センサ63と、を備えている。
【0022】
チャンバ18の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。その貫通孔は第1のウインドウ44によって塞がれる。レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光48が集光レンズ34を介して第1のウインドウ44を透過する。
【0023】
EUV光集光ミラー40は、例えば、回転楕円面形状の反射面を有し、第1の焦点及び第2の焦点を有する。EUV光集光ミラー40の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV光集光ミラー40は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域64に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF:Intermediate Focusing point)66に位置するように配置される。EUV光集光ミラー40の中央部には貫通孔68が設けられ、貫通孔68をパルスレーザ光48が通過する。
【0024】
プレート41とEUV光集光ミラーホルダ42は、EUV光集光ミラー40を保持する部材である。プレート41はチャンバ18に固定される。EUV光集光ミラー40はEUV光集光ミラーホルダ42を介してプレート41に保持される。
【0025】
第1の覆い45は、第1のウインドウ44から貫通孔68を通ってプラズマ生成領域64へとパルスレーザ光48を導く光路を覆うシュラウド(shroud)である。第1の覆い45は、第1のウインドウ44からプラズマ生成領域64に向かって先細りする略円錐台形の筒形状に構成されている。
【0026】
ターゲット供給部50は、ターゲット物質をチャンバ18内部に供給するよう構成され、例えば、チャンバ18の壁を貫通するように取り付けられる。ターゲット供給部50は二軸ステージ51を介してチャンバ18の壁に取り付けられる。二軸ステージ51はX軸及びZ軸の各方向に移動可能なXZ軸ステージである。ターゲット供給部50は二軸ステージ51により、XZ平面内の位置を調整することができる。
【0027】
ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。ターゲット供給部50は、ターゲット物質により形成されたドロップレット56をチャンバ18内部のプラズマ生成領域64に向けて出力するよう構成される。
【0028】
ターゲット制御装置22は、EUV光生成制御装置20、レーザ装置12、ターゲット供給部50及びドロップレット検出装置54の各々と接続されている。ターゲット制御装置22は、EUV光生成制御装置20の指令に従い、ターゲット供給部50の動作を制御する。また、ターゲット制御装置22は、ドロップレット検出装置54からの検出信号を基にレーザ装置12のパルスレーザ光48の出力タイミングを制御する。
【0029】
ドロップレット検出装置54は、ドロップレット56の存在、軌跡、位置、及び速度のうちいずれか又は複数を検出するよう構成される。ドロップレット検出装置54は、X方向の軌道の変化を検出できるように配置される。ドロップレット検出装置54は、光源部70と受光部75を含んでいる。
【0030】
光源部70は、光源71と、照明光学系72と、第2のウインドウ73と、第2の覆い74とを含んで構成される。光源71は、ランプや半導体レーザ等であってもよい。照明光学系72は、光源71から出力された光によってドロップレット軌道を照明する集光レンズであってもよい。
【0031】
受光部75は、転写光学系76と、第1の光センサ77と、第3のウインドウ78と、第3の覆い79とを含んで構成される。転写光学系76は照明されたドロップレット56の像を第1の光センサ77の素子上に転写するレンズであってもよい。第1の光センサ77は、CCD(Charge−coupled device)等の2次元のイメージセンサであってもよい。
【0032】
チャンバ18は、図示しないもう1つのドロップレット検出装置を備えており、図示しないもう1つのドロップレット検出装置によって、ドロップレット56のZ方向の軌道のずれを検出する。
【0033】
ドロップレット受け52は、ターゲット供給部50からチャンバ18内に出力されたドロップレット56が進行する方向の延長線上に配置される。
図1ではドロップレット56の滴下方向がY軸と平行な方向であり、ドロップレット受け52はターゲット供給部50に対してY方向を向いてターゲット供給部50と対向する位置に配置される。
【0034】
また、EUV光生成装置11は、チャンバ18の内部と露光装置100の内部とを連通させる接続部82を含む。接続部82の内部には、アパーチャ84が形成された壁86が設けられる。壁86は、そのアパーチャ84がEUV光集光ミラー40の第2の焦点位置に位置するように配置される。
【0035】
露光装置100は露光装置コントローラ102を含んでおり、露光装置コントローラ102はEUV光生成制御装置20と接続される。
【0036】
EUV光センサユニット60は、チャンバ18内で生成されるEUV光を検出するセンサユニットである。EUV光センサユニット60はEUV光生成制御装置20に接続されている。EUV光センサユニット60は、異なる複数の位置からプラズマを観測できるように複数台あってもよい。
図1では1つのEUV光センサユニット60が示されているがチャンバ18の周りの複数箇所にEUV光センサユニット60が設置される形態が好ましい。
【0037】
ガス供給装置61は、配管90を介して第1の覆い45、第2の覆い74、第3の覆い79、及びEUV光センサユニット60の中の空間に接続されている。さらに、ガス供給装置61は、EUV光集光ミラー40の表面にガスを流すよう構成された配管91に接続されている。ガス供給装置61は配管90、91にガスを供給するガス供給源である。ガス供給装置61は例えば、水素ガスを供給する水素ガス供給装置とすることができる。
【0038】
水素ガスはパージガスの一例である。パージガスは水素ガスに限らず、水素を含むガスであってもよい。パージガスは、ターゲット物質の材料と反応して化合物である気体を生成し得るガスであることが好ましい。パージガスの種類はターゲット物質の材料との関係で選択される。
【0039】
ガス制御装置24は、EUV光生成制御装置20、ガス供給装置61、排気装置62及び圧力センサ63の各々と接続される。排気装置62は、チャンバ18内の気体をチャンバ18の外部に排出する。圧力センサ63はチャンバ18内の圧力を検出する。圧力センサ63の検出信号はガス制御装置24に送られる。ガス制御装置24は、EUV光生成制御装置20の指令に従い、ガス供給装置61及び排気装置62の動作を制御する。
【0040】
EUV光生成制御装置20は、EUV光生成システム10全体の制御を統括するよう構成される。EUV光生成制御装置20は、EUV光センサユニット60の検出結果を処理する。EUV光生成制御装置20は、ドロップレット検出装置54の検出結果に基づいて、例えば、ドロップレット56が出力されるタイミングやドロップレット56の出力方向等を制御するよう構成されてもよい。さらに、EUV光生成制御装置20は、例えば、レーザ装置12の発振タイミング、パルスレーザ光48の進行方向、パルスレーザ光48の集光位置等を制御するよう構成されてもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよいし、一部の制御機能を省略してもよい。
【0041】
本開示において、EUV光生成制御装置20、ターゲット制御装置22、ガス制御装置24及び露光装置コントローラ102等の制御装置は、1台又は複数台のコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現することが可能である。ソフトウェアはプログラムと同義である。また、複数の制御装置の機能を一台の制御装置で実現することも可能である。さらに本開示において、EUV光生成制御装置20、ターゲット制御装置22、ガス制御装置24及び露光装置コントローラ102等は、ローカルエリアネットワークやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムユニットは、ローカル及びリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0042】
図2はEUV光センサユニット60の一例を示す概略構成図である。EUV光センサユニット60は、EUV光を発生させるチャンバ18の壁を貫通して取り付けられる。
図2においてチャンバ18の壁の右側がチャンバ18の内側、つまり低圧側であり、チャンバ18の壁の左側が大気側である。
【0043】
EUV光センサユニット60は、EUV光反射ミラー121と、フィルタ122と、第2の光センサ124とを含んで構成される。EUV光反射ミラー121は、プラズマから放射される光のうちEUV光を含む光を選択的に反射する多層反射膜によるミラーである。EUV光反射ミラー121は、例えば、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に積層してなるMo/Si多層膜によるミラーとすることができる。
【0044】
フィルタ122は、EUV光反射ミラー121によって反射された光のうちEUV光の波長を選択的に透過する波長フィルタである。フィルタ122が透過するEUV光の波長は、例えば13.5nmである。フィルタ122は例えば、膜厚300〜600nmの金属薄膜フィルタである。フィルタ122の一例として、ジルコニウム(Zr)の金属薄膜フィルタを用いることができる。フィルタ122の膜厚は、例えば、350nmである。
【0045】
フィルタ122は、第2の光センサ124の受光面を覆うように配置される。EUV光反射ミラー121の反射特性とフィルタ122の透過特性の組み合わせにより、所望の波長のEUV光を第2の光センサ124に入射させることができる。
【0046】
第2の光センサ124は、フォトダイオード等、入射した光のエネルギを検出するセンサである。第2の光センサ124は受光量に応じた電気信号を出力する。第2の光センサ124から出力される信号はEUV光生成制御装置20に送られる。
【0047】
EUV光センサユニット60は、EUV光反射ミラー121と、フィルタ122と、第2の光センサ124とを収容する中空のケース130を備える。ケース130は、光学部品収容部132と円筒形状部134と第1のガス供給部140とを有する。
【0048】
光学部品収容部132は、EUV光反射ミラー121と、フィルタ122と、第2の光センサ124とが収容される空間である。EUV光反射ミラー121は図示せぬミラー保持部材に保持される。第2の光センサ124は光学部品収容部132を画成するケース130の壁面の一部に取り付けられる。フィルタ122は、フィルタ保持部材123に保持され、第2の光センサ124の前面に配置される。
【0049】
円筒形状部134は、EUV光を含むプラズマ光の光入射口となる開口部135を有する。開口部135を含む円筒形状部134の一部はチャンバ18の内側に配置される。開口部135から入射したプラズマ光は円筒形状部134を通過してEUV光反射ミラー121に入射する。
【0050】
第1のガス供給部140は、EUV光反射ミラー121とフィルタ122との間にパージガスを供給するよう配置されたガス供給路である。第1のガス供給部140は、第1のガス導入口141と、第1のガス流出口142とを含む。第1のガス導入口141からケース130に導入されたパージガスは、第1のガス供給部140の第1のガス流出口142から噴出し、円筒形状部134を通って開口部135からチャンバ18内へと流出する。
【0051】
図2において、第1のガス供給部140及び円筒形状部134を通過して開口部135から出る矢印はガス流を表している。また、開口部135から円筒形状部134を通過してEUV光反射ミラー121によって折り返され、フィルタ122及び第2の光センサ124へと向かう矢印はプラズマ光又はEUV光の光路を表している。
【0052】
ケース130はフランジ部144を含む。EUV光センサユニット60はチャンバ18の壁に設けられた貫通孔に対して大気側から挿入され、フランジ部144を介してチャンバ18に固定される。すなわち、ケース130のフランジ部144はチャンバ18の外側に配置され、ガスケット146を介してチャンバ18の壁に固定される。
【0053】
チャンバ18の内側、つまり、低圧側には、EUV光センサユニット60のケース130を挿入するソケット200が配置される。ソケット200は、EUV光センサユニット60のケース130の低圧側を覆うように形成される。
【0054】
EUV光センサユニット60のケース130をチャンバ18の大気側からソケット200に挿入してケース130をチャンバ18内においてソケット200に嵌合させることができる。また、
図2に示された嵌合状態からケース130を大気側に引き抜き、ソケット200からケース130を離脱させることができる。
【0055】
ソケット200は、EUV光センサユニット60のケース130が接合した際に、ケース130の外壁とソケット200内壁との間に隙間202が形成されるよう構成される。隙間202はソケット200内壁全周に亘って形成されてもよい。チャンバ18の大気側からEUV光センサユニット60のケース130を挿入すると、ソケット200内壁とケース130の外壁との隙間202が形成され、この隙間202がガス経路として機能する。この時、ソケット200の内壁とケース130の外壁は完全に密封された状態でなくても良く、特にシール構造を備えなくともよい。隙間202を形成し得るソケット200の内壁の凹部203が「ガス経路形成部」の一形態に相当する。
【0056】
ソケット200には配管接続部206が設けられる。この配管接続部206にガスを供給するための配管210が接続される。配管210はチャンバ18の内壁に張り巡らされる。配管接続部206に接続された配管210の内部と隙間202は連通する。チャンバ18の内壁に張り巡らされた配管210は複数のEUV光センサユニットにガスを供給してもよい。
【0057】
配管210はフィードスルー212を介してガス供給装置61と接続される。チャンバ18の大気側から真空側の配管210にガスを送り込むフィードスルー212は一箇所に集約されてよい。
【0058】
EUV光センサユニット60のケース130外壁の隙間202に面する部分には第1のガス導入口141が形成される。第1のガス導入口141から第1のガス流出口142へと繋がる第1のガス供給部140は、ケース130内に導入したガスがEUV光反射ミラー121に向けて吹き付けられるように形成される。また、第1のガス供給部140は、フィルタ122に直接ガスを吹き付けないよう構成される。
【0059】
すなわち、第1のガス流出口142はEUV光反射ミラー121に向かって開口しており、第1のガス流出口142から流出するガスはEUV光反射ミラー121に吹き付けられる。つまり、パージガスがEUV光反射ミラー121に直接吹きつけられる位置に第1のガス流出口142が設けられる。第1のガス流出口142はフィルタ122に対して直接ガスを吹き付けないように、フィルタ122に対して非対面の位置に設けられる。フィルタ122は、既述のように非常に薄いため、吹き付けるガスによる変形や破損を抑制するためである。
【0060】
2.2 動作
図1及び
図2を参照して、例示的なLPP式のEUV光生成システム10の動作を説明する。EUV光生成システム10がEUV光を出力する場合、露光装置100の露光装置コントローラ102からEUV光生成制御装置20にEUV光出力指令が送られる。
【0061】
EUV光生成制御装置20は、ガス制御装置24に制御信号を送信する。ガス制御装置24は、圧力センサ63の検出値に基づいて、チャンバ18内の圧力が所定の範囲内となるように、ガス供給装置61と排気装置62とを制御する。
【0062】
チャンバ18内の圧力の所定の範囲とは、例えば、数〜数百Paの間の値である。ガス供給装置61から送り出された水素ガスは、配管90を通じて第1の覆い45、第2の覆い74及び第3の覆い79の各々の覆いの中、並びにEUV光センサユニット60の中に供給される。また、ガス供給装置61から送り出された水素ガスは、配管91を通じてEUV光集光ミラー40の反射面に供給される。
【0063】
第1の覆い45の中に供給された水素ガスは、第1の覆い45の開口部45Aから噴出する。第2の覆い74の中に供給された水素ガスは、第2の覆い74の開口部74Aから噴出する。第3の覆い79の中に供給された水素ガスは、第3の覆い45の開口部79Aから噴出する。EUV光センサユニット60の中に供給された水素ガスはEUV光センサユニット60の開口部135から噴出する。
【0064】
ガス制御装置24は、チャンバ18の内圧が所定の範囲内の圧力となったら、EUV光生成制御装置20に信号を送信する。EUV光生成制御装置20は、ガス制御装置24から送られてくる信号を受信後、ターゲット制御装置22にドロップレット出力を指示するドロップレット出力指示信号を送信する。
【0065】
ターゲット制御装置22は、ドロップレット出力指示信号を受信すると、ターゲット供給部50にドロップレット出力信号を送信してドロップレット56を出力させる。ドロップレット56は溶融したスズ(Sn)の液滴であってもよい。
【0066】
ターゲット供給部50から出力したドロップレット56の軌道はドロップレット検出装置54によって検出される。ドロップレット検出装置54による検出された検出信号はターゲット制御装置22に送られる。
【0067】
ターゲット制御装置22は、ドロップレット検出装置54から得られる検出信号を基に、ドロップレット56の軌道が所望の軌道となるように、二軸ステージ51にフィードバック信号を送信してもよい。
【0068】
ターゲット制御装置22は、ドロップレット56の軌道が安定したら、ドロップレット56の出力信号に同期して、所定時間遅延したトリガ信号をレーザ装置12に出力する。この遅延時間は、ドロップレット56がプラズマ生成領域64に到達した時にレーザ光がドロップレット56に照射されるように、設定しておく。
【0069】
レーザ装置12はトリガ信号に同期してレーザ光を出力する。レーザ装置12から出力されるレーザ光のパワーは、数kW〜数十kWに達する。レーザ装置12から出力されたレーザ光はレーザ光伝送装置14を介してレーザ光集光光学系16の集光レンズ34に入射する。集光レンズ34に入射したレーザ光は集光レンズ34によって集光され、第1のウインドウ44を通過してチャンバ18に入力される。集光レンズ34によって集光され、チャンバ18に入射したレーザ光は、プラズマ生成領域64に到達したドロップレット56に照射される。
【0070】
ドロップレット56には、パルスレーザ光48に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光が照射されたドロップレット56はプラズマ化し、そのプラズマから放射光106が放射される。放射光106に含まれるEUV光108は、EUV光集光ミラー40によって選択的に反射される。EUV光集光ミラー40によって反射されたEUV光108は、中間集光点66で集光され、露光装置100に出力される。なお、1つのドロップレット56に、パルスレーザ光48に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0071】
ドロップレット受け52は、レーザ光が照射されずにプラズマ生成領域64を通過したドロップレット56や、レーザ光の照射によっても拡散しなかったドロップレットの一部分を回収する。
【0072】
ドロップレット56にレーザ光が照射されると、プラズマが生成し得る。この生成したプラズマのエネルギをEUV光センサユニット60で計測して、生成したプラズマ光に含まれるEUV光のエネルギを計測してもよい。
【0073】
プラズマ光である放射光106の一部は、開口部135からEUV光センサユニット60に進入し、円筒形状部134を通過してEUV光反射ミラー121に入射する。EUV光反射ミラー121は放射光106に含まれるEUV光をフィルタ122に向けて反射する。フィルタ122に入射した光のうちEUV波長領域の光のみがフィルタ122を透過する。フィルタ122を透過したEUV光は、第2の光センサ124の受光面に達する。第2の光センサ124のフォトダイオードは、受光したEUV光のエネルギに対応する信号を出力する。第2の光センサ124から出力される信号に基づきEUV光のエネルギを検出することができる。
【0074】
EUV光センサユニット60を複数配置する場合は、各EUV光センサユニットの検出位置と各検出エネルギからプラズマの位置が計算できる。
【0075】
ドロップレット56が溶融したSn液滴の場合、プラズマ生成に伴って、Snデブリが生成し、チャンバ18中に拡散し得る。この場合、SnデブリはSn微粒子を指す。拡散したSnデブリは、第1の覆い45の開口部45A、第2の覆い74の開口部74A、第3の覆い79の開口部、及びEUV光センサユニット60の開口部135に到達し得る。
【0076】
第1の覆い45の開口部45A、第2の覆い74の開口部74A、第3の覆い79の開口部79A、及びEUV光センサユニット60の開口部135の各開口部からは、水素ガスが噴出している。このため、Snデブリが第1のウインドウ44、第2のウインドウ73及び第3のウインドウ78並びにEUV光センサユニット60内のEUV光反射ミラー121に到達するのを抑制し得る。
【0077】
EUV光集光ミラー40の表面に供給されたガスが水素を含む場合、EUV光集光ミラー40に堆積したSnデブリと水素が反応してスタナンガス(SnH
4)を生成する。スタナンガスは排気装置62によってチャンバ18外に排気される。
【0078】
同様に、第1のウインドウ44、第2のウインドウ73及び第3のウインドウ78の周囲に水素を含むガスが供給されることにより、第1のウインドウ44、第2のウインドウ73及び第3のウインドウ78へのSnデブリの堆積が抑制される。
【0079】
少なくともEUV光の生成中、EUV光センサユニット60内における第1のガス供給部140の第1のガス流出口142から水素ガスを噴出させ、EUV光反射ミラー121に水素ガスを吹き付ける。すなわち、EUV光反射ミラー121とフィルタ122の間の空間に対し、EUV光反射ミラー121の反射光路側からパージガスを供給する。
【0080】
EUV光反射ミラー121によって反射されたEUV光がフィルタ122に向かって進行する光路がEUV光反射ミラー121の反射光路である。開口部135から円筒形状部134を通過してEUV光反射ミラー121ミラーに入射するプラズマ光の光路がEUV光反射ミラー121の入射光路である。EUV光反射ミラー121へのプラズマ光の入射光路を第1の光路とする。EUV光反射ミラー121からフィルタ122に向かうEUV光の反射光路を第2の光路とする。第1のガス供給部140の第1のガス流出口142は、第1の光路と第2の光路のうち、第2の光路に近い位置に設けられている。
【0081】
すなわち、第1のガス供給部140のガス供給通路の軸は、第2の光路と交差しており、第1のガス流出口142から吹き出されたガスは、第2の光路と交差してから第1の光路の方へと流れる。第1のガス供給部140は、第1の光路と第2の光路のうち、第2の光路の方からEUV光反射ミラー121とフィルタ122の間にパージガスを供給する。
【0082】
第1のガス流出口142から噴出した水素ガスは、EUV光反射ミラー121とフィルタ122の間を流れ、円筒形状部134を通過して開口部135からチャンバ18内へと流出する。
【0083】
EUV光反射ミラー121は「極端紫外光を反射するミラー」の一形態に相当する。第2の光センサ124は「波長フィルタを透過した極端紫外光を検出する光センサ」の一形態に相当する。円筒形状部134は「管部」の一形態に相当する。
【0084】
3.課題
図2に示したEUV光センサユニット60は、ケース130の内部にガスを供給し、円筒形状部134を経由して開口部135からガスを噴出させることにより、SnデブリがEUV光反射ミラー121に到達するのを抑制することができる。
【0085】
円筒形状部134の内径が小さく、円筒形状部134の長さLが長ければ長いほど、Snデブリが進入してきた場合に、水素とSnが反応する可能性が高くなり、より確実にSnデブリをスタナンガス化することができる。その一方で、次のような課題がある。
【0086】
[課題1]EUV光センサユニット60は、チャンバ18に搭載するために大きさの制限を受け、省スペースな設計でなければならない。また、EUV光はビーム径が拡がりながら伝搬しており、第2の光センサ124におけるフォトダイオード有効範囲内にEUV光を収めるため、フィルタ122と第2の光センサ124との間の隙間が狭くなっている。
【0087】
[課題2]フィルタ122と第2の光センサ124と間の隙間が狭く、第1のガス供給部140を通じてEUV光センサユニット60内に供給したガスが、フィルタ122と第2の光センサ124と間の隙間に流れることは殆ど無い。
【0088】
[課題3]フィルタ122や第2の光センサ124には、炭素を含む接着剤が使用されている。大気中の残留炭素又はフィルタ122や第2の光センサ124に使用された接着剤から揮発した炭素がEUV照射中にフィルタ122及び第2の光センサ124間のEUV照射領域内に堆積し得る。このフィルタ122及び/又は第2の光センサ124の表面に堆積した炭素の影響によって第2の光センサ124の検出感度が低下し、エネルギ計測に支障をきたす。
【0089】
[課題4]課題3に示した炭素の堆積を抑制するために、フィルタ122と第2の光センサ124の付近にガスをパージする場合、フィルタ122の両面での圧力差があるとフィルタ122が損傷し、エネルギ計測に支障をきたす。
【0090】
4.実施形態1
4.1 構成
図3は実施形態1に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図3に示す実施形態1に関して
図2で説明した構成との相違点を説明する。
図2で説明したEUV光センサユニット60に代えて、
図3に示すEUV光センサユニット160を用いることができる。
図4は
図3中の4−4線を切断線とする断面図である。
【0091】
実施形態1に係るEUV光センサユニット160は、フィルタ122と第2の光センサ124の間にパージガスを供給するよう配置された第2のガス供給部240を備える。第2のガス供給部240は、第2のガス導入口241と第2のガス流出口242とを含むガス供給路である。ケース130は、第2のガス供給部240である流路構造部を備える。
【0092】
第2のガス導入口241は、ケース130外壁の隙間202に面する部分に形成される。第2のガス流出口242は、EUV光反射ミラー121とフィルタ122との間に向かってパージガスを吹き出すガス流出口である。第2のガス導入口241から第2のガス流出口242へと繋がる第2のガス供給部240は、ケース130内に導入したガスをフィルタ122と第2の光センサ124の間の隙間へと導くよう形成される。
【0093】
第2のガス導入口241からケース130に導入されたガスは、第2のガス供給部240の第2のガス流出口242から噴出し、フィルタ122と第2の光センサ124の間の隙間を通って開口部135からチャンバ18内へと流出する。フィルタ122と第2の光センサ124の間に形成される隙間の空間250は、パージガスが流れるガス流路となる。
【0094】
第1のガス供給部140と第2のガス供給部240は共に、ソケット200とケース130外壁との隙間202に連通しており、隙間202を通じて第1のガス供給部140と第2のガス供給部240の各々にガスが流れる。第1のガス供給部140の流量と、第2のガス供給部240の流量の比率は、それぞれのガス流路のコンダクタンスを調整することにより所望の比率を実現できる。
【0095】
第1のガス供給部140は、例えば、流路断面積が一定である管を用いて構成することができる。同様に、第2のガス供給部240は、流路断面積が一定である管を用いて構成することができる。この場合、第1のガス供給部140と第2のガス供給部240の流路断面の面積比は、例えば、5:1から15:1の範囲でもよい。
【0096】
図4に示すように、第2のガス供給部240からフィルタ122と第2の光センサ124の間に供給されたガスが拡散せず一方向に流れるように、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250によって構成されるガス流路の側面251は、壁部材252によって塞がれている。この壁部材252は、フィルタ122と第2の光センサ124とを、所定の距離を離して離間させるスペーサの一部であってよい。
【0097】
図5はスペーサの例を示す斜視図である。
図6は
図5に示したスペーサ260の三面図である。
図6の(a)は平面図、
図6の(b)は側面図、
図6の(c)は正面図である。スペーサ260は、第2の光センサ124のセンサ保持部材270と接する第1のプレート262と、フィルタ保持部材123と接する第2のプレート264及び第3のプレート265がU字状に組み合わされた構造を有する。
【0098】
第1のプレート262には、EUV光を通過させる貫通穴263が形成されている。第2の光センサ124はセンサ保持部材270に固定されている。第2の光センサ124を保持したセンサ保持部材270は、第1のプレート262の貫通穴263と第2の光センサ124の位置を一致させた状態で第1のプレート262に当接する。
【0099】
第2のプレート264及び第3のプレート265は、
図3で説明した壁部材252に相当する。フィルタ122と第2の光センサ124は、スペーサ260によって所定の距離だけ離れた状態で配置される。スペーサ260を用いることにより、フィルタ122と第2の光センサ124の受光面の距離を所望の距離に設計することができる。例えば、
図2に示した例では、フィルタ122と第2の光センサ124の受光面の距離が1.5mmであるのに対し、
図3に示す実施形態1では、その距離が4.0mmに構成される。
【0100】
図6の(c)に示した第2のプレート264と第3のプレート265を側壁面とする空間266は、パージガスが流れる空間250となる。
【0101】
図7はセンサ保持部材270に保持された第2の光センサ124の断面図である。第2の光センサ124は、センサ保持部材270に固定されている。センサ保持部材270は、第2の光センサ124の背面及び側面を覆う枠体である。第2の光センサ124は接着剤272を用いてセンサ保持部材270に固定されている。接着剤272は、炭素を含有する。接着剤272は、第2の光センサ124の背面とセンサ保持部材270の間に用いられる。第2の光センサ124の背面には、信号線124Aが接続されている。信号線124Aは、センサ保持部材270に形成された貫通穴を通して引き出されており、図示せぬ電気回路と接続される。センサ保持部材270は、第2の光センサ124を保持する保持部材の一例である。
【0102】
図8はフィルタ保持部材123に固定されたフィルタ122の断面図である。フィルタ保持部材123は、保持枠123Aと押さえ部材123Bとを含む。フィルタ122は、接着剤274と押さえ部材123Bとを用いて保持枠123Aに固定される。
【0103】
接着剤274は、炭素を含有する。接着剤274は、
図7に示した接着剤272と同種の接着剤であってもよいし、異なる種類の接着剤であってもよい。接着剤274は、フィルタ122と押さえ部材123Bの間に用いられる。フィルタ122は、保持枠123Aと押さえ部材123Bとの間に挟まれた状態でフィルタ保持部材123に固定される。
【0104】
4.2 動作
少なくともEUV光の生成中、EUV光センサユニット60内の第2のガス供給部240の第2のガス流出口242から水素ガスを噴出させ、フィルタ122と第2の光センサ124の間にパージガスを供給する。パージガスは、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250を流れる。
【0105】
このパージガスの流れによって、フィルタ122と第2の光センサ124の間に存在する炭素が除去される。
【0106】
第2のガス供給部240の流路断面積及び流路長さを適切に設定することで、フィルタ122の両面での圧力差が生じにくいようにすることができる。フィルタ122の両面の圧力差は3kPa以下であることが好ましい。第1のガス供給部140と第2のガス供給部240の流量比は8:1から12:1の範囲であることが好ましい。
【0107】
EUV光センサユニット160は、「極端紫外光センサユニット」の一例である。第1のガス供給部140は、「第1のパージガス供給部」の一例である。第1のガス供給部140から供給されるパージガスは「第1のパージガス」の一例である。第2のガス供給部240は、「パージガス供給部」及び「第2のパージガス供給部」の一例である。第2のガス供給部240から供給されるパージガスは「第2のパージガス」の一例である。EUV光センサユニット160を備えたEUV光生成装置11は「極端紫外光生成装置」の一例である。
【0108】
4.3 作用・効果
実施形態1によれば、フィルタ122及び第2の光センサ124への炭素の付着による透過率の低下や感度低下を抑制することができる。
【0109】
5.実施形態2
5.1 構成
図9は実施形態2に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図9に示す実施形態2に関して
図3で説明した実施形態1の構成との相違点を説明する。
【0110】
実施形態2に係るEUV光センサユニット160の第2のガス供給部240は、フィルタ122の表面に向かって直接にパージガスを吹き出さない流路構造となっている。
図9に示すように、第2のガス供給部240は、フィルタ122に対して非対面の位置に設けられている。
【0111】
また、実施形態2に係るEUV光センサユニット160は、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250を通過したガスを、フィルタ122の表面と非平行な方向に導く第3の流路部280を備える。本例における第3の流路部280は、
図9の横方向に沿ってガスを導く流路構造を有する。第3の流路部280は、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250と連通し、フィルタ122と第2の光センサ124の間を通過したパージガスをガス出口282へと導くパージガス排出流路として機能する。第3の流路部280のガス出口282は、第2の光センサ124から離れた位置に設けられている。ガス出口282は、
図9の下方向に向かって開口している。第3の流路部280は、ガス出口282を介して円筒形状部134と繋がっている。
【0112】
第3の流路部280によって構成されるパージガス排出流路は、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250からガス出口282までのガスの流れの経路が非直線の経路となる流路構造を含んでいる。
【0113】
この非直線の経路を構成する流路構造を含む第3の流路部280は、第2の光センサ124に可視光を含む散乱光が入射するのを抑制する遮蔽構造としても機能する。すなわち、第3の流路部280の流路壁284は、フィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250への散乱光の進入を抑制する遮蔽部材として機能する。また、非直線の経路を構成する流路構造は、ガス出口282から進入した散乱光が第2の光センサ124の受光面に到達し難い構造である。
【0114】
5.2 動作
第2のガス導入口241から導入されたガスは、第2のガス供給部240を通って第2のガス流出口242から噴出される。第2のガス流出口242から流れ出たガスは、フィルタ保持部材123又はフィルタ保持部材123に連結された流路構造部材の壁に当たって流れの向きを変え、フィルタ122と第2の光センサ124の間へと流れる。
【0115】
フィルタ122と第2の光センサ124の間を流れたガスは、第3の流路部280を通って、ガス出口282から排出される。
【0116】
5.3 作用・効果
実施形態2によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、実施形態2によれば、第2のガス供給部240がフィルタ122に向けて直接パージガスを吹き出さない流路構造を有しているため、フィルタ122の破損を抑制することができる。また、実施形態2によれば、パージガスの流路を通じて第2の光センサ124に散乱光が入射し難い構造を備えており、より正確なエネルギ計測が可能である。
【0117】
6.実施形態3
6.1 構成
図10は実施形態3に係るEUV光センサユニットの要部構成を概略的に示す断面図である。
図10は、フィルタ122と第2の光センサ124の間にパージガスを流すための流路構造部分を示している。
図10に示す実施形態3に関して
図9で説明した実施形態2の構成との相違点を説明する。
図10において、フィルタ122と第2の光センサ124の間を流れるパージガスの流れを矢印によって示した。
【0118】
実施形態3における第2のガス供給部240は、第1の流路部240Aと第2の流路部240Bを含んで構成される。第1の流路部240Aは、第2のガス導入口241から
図10の下方向に向かってガスを導くガス供給路である。第1の流路部240Aを通るガス流の方向を第1の方向という。第2の流路部240Bは、第1の流路部240Aに接続され、
図10の右斜め下方向に向かってガスを導くガス供給路である。第2の流路部240Bを通るガス流の方向を第2の方向という。第2の方向は、第1の方向と交差する方向であり、フィルタ122の表面に平行な方向である。
【0119】
第2のガス供給部240は、第1の流路部240Aと第2の流路部240Bの接続部においてガスの流れの向きが屈曲するよう構成される。第2の流路部240Bは、フィルタ122と第2の光センサ124との間の空間250に接続されている。第2の流路部240Bと空間250との接続部が第2のガス流出口242に相当する。第2のガス流出口242は、フィルタ122に対して非対面の位置に設けられている。第2のガス流出口242から流れ出るパージガスは、第2の方向に沿って流れる。
【0120】
6.2 動作
第2のガス導入口241から導入されたガスは、第1の流路部240Aと第2の流路部240Bの接続部において、第2の流路部240Bの流路壁に当たって流れの向きを変え、第2の流路部240Bへと流れる。第2の流路部240Bを通過したガスは、第2のガス流出口242からフィルタ122と第2の光センサ124の間の空間250に流れる。
【0121】
6.3 作用・効果
第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
7.実施形態4
7.1 構成
図11は実施形態4に係るEUV光センサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図11に示す実施形態4に関して
図3で説明した実施形態1の構成との相違点を説明する。
【0123】
実施形態4に係るEUV光センサユニット160は、第1のガス供給部140に第1の絞り301を備える。また、EUV光センサユニット160は、第2のガス供給部240に第2の絞り302を備える。
図11の例では、第1のガス供給部140と第2のガス供給部240の両方に絞りを設けたが、第1のガス供給部140と第2のガス供給部240のいずれか一方に絞りを設ける形態としてもよい。
【0124】
第1の絞り301は、第1の絞り押さえ311によって、第1のガス供給部140の流路に交換可能に固定される。第2の絞り302は、第2の絞り押さえ322によって、第2のガス供給部240の流路に交換可能に固定される。第1のガス供給部140は、第1の絞り301を取り付けるための支持面を含む第1の絞り取付部315を備える。
【0125】
第2のガス供給部240は、第2の絞り302を取り付けるための支持面を含む第2の絞り取付部325を備える。
【0126】
7.2 動作
第1の絞り301によって第1のガス供給部140を流れるガスの流量が調整される。第2の絞り302によって第2のガス供給部240を流れるガスの流量が調整される。複数種の絞りを組み合わせて各流路のガス流量を調整することができる。第1の絞り301と第2の絞り302は「絞り」の一例である。
【0127】
7.3 作用・効果
実施形態4によれば、実施形態1と同様の効果が得られる。また、実施形態4によれば、装置のアップグレード等によりチャンバ内圧やガス供給装置61の供給圧が変更されても、適切なパージ条件に調整できる。
【0128】
8.変形例
上述の実施形態では、ソケット200を利用して、第1のガス供給部140と第2のガス供給部240に同種のガス(水素ガス)を導入する例を説明したが、第1のガス供給部140にガスを導入する経路と、第2のガス供給部240にガスを導入する経路とをそれぞれ独立に設ける形態としてもよい。
【0129】
また、フィルタ122と第2の光センサ124の間に供給するパージガスの種類は、EUV光反射ミラー121とフィルタ122の間に供給するパージガスの種類と異なる種類であってもよい。例えば、第2のガス供給部240から供給するパージガスは、水素ガスに限らず、不活性ガスであってもよい。
【0130】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0131】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。