特許第6895783号(P6895783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895783
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20210621BHJP
   F28F 23/02 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F28D20/00 A
   F28F23/02 A
   F28D20/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-62068(P2017-62068)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165578(P2018-165578A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】近澤 啓子
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】反町 真人
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121778(WO,A1)
【文献】 特開平04−013027(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079770(WO,A1)
【文献】 特開2006−141593(JP,A)
【文献】 特表2015−536288(JP,A)
【文献】 特開2001−239156(JP,A)
【文献】 特開2000−026488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F28F 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトが収容された蓄熱部と、前記蓄熱部と接続された、前記ゼオライトに吸着される被吸着物が貯留された被吸着物貯留部と、前記蓄熱部及び前記被吸着物貯留部と接続された熱交換部と、を有し、
前記ゼオライトの蓄熱温度が、150℃以上350℃以下であり、
前記蓄熱部が、管状体と、該管状体に収容された前記ゼオライトと、前記管状体を長軸方向に貫通する流路と、前記ゼオライトと前記流路との間に設けられた拡散層と、を有し、
前記ゼオライトの粒子に加えてバインダを含み、前記バインダが、前記ゼオライトの粒子と一緒に残存して固まり、前記ゼオライトの粒子間を相互に接続すると共に、前記ゼオライトを前記管状体に密着させており、
前記ゼオライトが、下記一般式(1)
Me2/xO・Al・mSiO・nHO (1)
(式中、Meは陽イオン、xはMeの価数、mは2.5の値を意味する。)で表され、
前記ゼオライトが、X型ゼオライトであり、
前記ゼオライトが、85モル%以上95モル%以下のイオン交換率にて、2価または3価の陽イオンを含有し、前記2価または3価の陽イオンが、Mg2+、Fe3+及びAl3+からなる群から選択された少なくとも1種である、
自動車の排ガス管の下流の環境温度が350℃以下に低くなる場所に配置される蓄熱装置。
【請求項2】
前記蓄熱部と、
前記管状体の一方の端部と接続された、液相の前記被吸着物が収容された前記被吸着物貯留部と、
前記管状体の他方の端部と接続された熱交換部と、
前記蓄熱部と前記被吸着物貯留部とを接続する第1の配管系と、
前記被吸着物貯留部と前記熱交換部とを接続する第3の配管系と、
を備えた、循環系を有し、
前記循環系が、気密状態であり、脱気されている請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記第1の配管系には、第1のバルブが設けられ、前記第1のバルブが、前記蓄熱部の放熱温度に応じて閉鎖される請求項に記載の蓄熱装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトが、被吸着物(例えば、水等)を吸着する際に熱を放出し、吸熱して被吸着物が離脱する作用を利用して、発熱と蓄熱を繰り返すことができる蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業プラント等における排熱の貯蔵及び利用や、自動車のエンジンや排気から得られる排熱を貯蔵及び利用する蓄熱装置が検討されている。
【0003】
そこで、図4に示すように、粉体の化学蓄熱材62と、化学蓄熱材62に隣接して配置した発泡膨張材63とを含有する化学蓄熱材複合体が内管61と外管67との間に収容され、化学蓄熱材62の蓄熱・放熱に伴う反応物・反応生成物としての水蒸気が流通する反応流路64が、内管61内に構成され、化学蓄熱材62との間で熱交換を行う熱交換媒体であるガス状の流体が流通する熱交換流路66が、外管67と外壁65との間に設けられた蓄熱容器6が、提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1で使用する、酸化カルシウム等の化学蓄熱材は、蓄熱するために必要となる温度(蓄熱温度)が350℃超と高い。従って、例えば、自動車の排ガス管の下流に蓄熱部を配置する場合等、蓄熱部を配置する場所によっては、蓄熱部が配置される環境温度が350℃以下と低くなるので、排熱を蓄熱部へ蓄熱することが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−228952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、蓄熱部が配置される環境温度が低くても、熱を蓄熱部へ蓄えることができる蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、ゼオライトが収容された蓄熱部と、前記蓄熱部と接続された、前記ゼオライトに吸着される被吸着物が貯留された被吸着物貯留部と、前記蓄熱部及び前記被吸着物貯留部と接続された熱交換部と、を有し、前記ゼオライトの蓄熱温度が、150℃以上350℃以下である蓄熱装置である。
【0008】
上記態様では、ゼオライトは、被吸着物の吸着によって発熱し、吸熱して該被吸着物が脱離する。従って、ゼオライトは、蓄熱材として機能する。また、本明細書中、「蓄熱温度」とは、JIS K7122転移熱測定方法を用い、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定した転移温度である。本発明では、ゼオライトに吸着された被吸着物の70質量% が離脱する温度を蓄熱温度とする。
【0009】
本発明の態様は、前記ゼオライトが、下記一般式(1)
Me2/xO・Al・mSiO・nHO (1)
(式中、Meは陽イオン、xはMeの価数、mは2.0以上5.0未満の値を意味する。)
で表される蓄熱装置である。
【0010】
mの値はゼオライトのシリカアルミナ比であり、上記態様では、シリカアルミナ比が2.0以上5.0未満となっている。なお、本明細書中、「親水性ゼオライト」とは、シリカアルミナ比が2.0以上5.0未満のゼオライトを意味し、「疎水性ゼオライト」とは、シリカアルミナ比が5.0以上のゼオライトを意味する。
【0011】
本発明の態様は、前記mが、2.0以上3.0以下である蓄熱装置である。
【0012】
上記態様には、A型ゼオライト(m=2.0)、X型ゼオライト(m=2.5)が含まれる。
【0013】
本発明の態様は、前記ゼオライトが、X型ゼオライトである蓄熱装置である。
【0014】
本発明の態様は、前記ゼオライトが、60モル%以上のイオン交換率にて、2価以上の陽イオンを含有する蓄熱装置である。
【0015】
本明細書中、「イオン交換率」とは、(蓄熱部に収容されたゼオライトに含まれる2価以上の陽イオンと交換された1価の陽イオンのモル数/蓄熱部に収容されたゼオライトに含まれる陽イオンが全て1価の陽イオンとみなした場合の陽イオンのモル数)×100を意味する。
【0016】
本発明の態様は、前記2価以上の陽イオンが、Mg2+、Fe3+ 及びAl3+からなる群から選択された少なくとも1種である蓄熱装置である。
【0017】
本発明の態様は、前記蓄熱部が、管状体と、該管状体に収容された前記ゼオライトと、前記管状体を長軸方向に貫通する流路と、前記ゼオライトと前記流路との間に設けられた拡散層と、を有する蓄熱装置である。
【0018】
本発明の態様は、前記蓄熱部と、前記管状体の一方の端部と接続された、液相の前記被吸着物が収容された前記被吸着物貯留部と、前記管状体の他方の端部と接続された熱交換部と、前記蓄熱部と前記被吸着物貯留部とを接続する第1の配管系と、前記被吸着物貯留部と前記熱交換部とを接続する第3の配管系と、を備えた、循環系を有し、前記循環系が、気密状態であり、脱気されている蓄熱装置である。
【0019】
本発明の態様は、前記第1の配管系には、第1のバルブが設けられ、前記第1のバルブが、前記蓄熱部の放熱温度に応じて閉鎖される蓄熱装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、蓄熱温度が150℃以上350℃以下であるゼオライトが、蓄熱部の蓄熱材として用いられることにより、蓄熱部が配置される環境温度が低い場合でも、熱を蓄熱部へ蓄えることができる。従って、酸化カルシウム等の化学蓄熱材を使用した蓄熱装置と比較して、蓄熱装置の設置場所の選択の自由度が向上する。
【0021】
本発明の態様によれば、シリカアルミナ比が2.0以上5.0未満である親水性ゼオライトを用いることにより、特に、被吸着物として水を用いた場合に、蓄熱密度がさらに向上する。
【0022】
本発明の態様によれば、ゼオライトのシリカアルミナ比が2.0以上3.0以下であることにより、より優れた蓄熱密度が得られ、X型ゼオライトであることにより、特に優れた蓄熱密度が得られる。
【0023】
本発明の態様によれば、60モル%以上のイオン交換率にて2価以上の陽イオンを有することにより、蓄熱密度がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)図は、第1実施形態例に係る蓄熱部の側面断面図、(b)図は図1(a)における蓄熱部のA−A’断面図である。
図2】(a)図は、第2実施形態例に係る蓄熱部の側面断面図、(b)図は図2(a)における蓄熱部のB−B’断面図である。
図3】本発明の第1実施形態例に係る蓄熱装置の説明図である。
図4】従来の蓄熱装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態例に係る蓄熱装置について説明する。本発明の実施形態例に係る蓄熱装置100は、後述する図3に示すようにゼオライト12が収容された蓄熱部2と、第1の配管系102を介して蓄熱部2と接続された、ゼオライト12に吸着される被吸着物(以下、「熱輸送流体」ともいう)が貯留された被吸着物貯留部101と、第2の配管系104を介して蓄熱部2と接続され、且つ第3の配管系107を介して被吸着物貯留部101と接続された熱交換部106と、を備えている。
【0026】
まず、本発明の実施形態例に係る蓄熱装置に設けられた蓄熱部について、図面を用いながら説明する。図1(a)に示すように、第1実施形態例に係る蓄熱部1は、両端部が開口した管状体である筒状体11と、筒状体11の内部に配置されたゼオライト12を備えている。また、蓄熱部1は、ゼオライト12の筒状体11の一方の端部13側に隣接して配置された多孔質体からなる第1の蓋体15と、ゼオライト12の筒状体11の他方の端部14側に隣接して配置された多孔質体からなる第2の蓋体16と、第1の蓋体15と第2の蓋体16との間に、ゼオライト12の内側側面に隣接して配置された、液体を輸送する拡散層である、毛細管構造を有する第1のウィック構造体17を備えている。
【0027】
図1(b)に示すように、筒状体11の径方向の断面は円形状である。また、ゼオライト12は、粉体が筒状に成型された態様であり、径方向の断面は円形状である。筒状体11の中心軸と筒状であるゼオライト12の中心軸は、同軸状に配置されている。
【0028】
第1の蓋体15と第2の蓋体16は、いずれも、中央部に孔部が形成された円形状であり、第1の蓋体15の孔部15’の壁面と第2の蓋体16の孔部16’の壁面は、後述する流路18の壁面の一部であり、流路18の端部を形成してもいる。従って、孔部15’、16’は、流路18の径方向の断面の形状及び寸法に対応した形状及び寸法となっている。
【0029】
図1(a)、(b)に示すように、蓄熱部1では、第1の蓋体15、第2の蓋体16、第1のウィック構造体17及び筒状体11内面は、それぞれ、対向するゼオライト12の部位と、直接、接している。第1の蓋体15がゼオライト12の一方の端部の端面を覆い、第2の蓋体16がゼオライト12の他方の端部の端面を覆い、第1のウィック構造体17がゼオライト12の内側側面を覆い、筒状体11内面がゼオライト12の外側側面を覆っている。第1の蓋体15、第2の蓋体16は、それぞれ、筒状体11の一方の端部13、他方の端部14よりも内部に収容されている。また、第1のウィック構造体17は、第1の蓋体15表面の孔部15’の周縁部と第2の蓋体16表面の孔部16’の周縁部に、それぞれ、接続されている。具体的には、第1のウィック構造体17の一方の端部が、流路18の開口した一方の端部を形成している孔部15’を有する第1の蓋体15と接し、第1のウィック構造体17の他方の端部が、流路18の開口した他方の端部を形成している孔部16’を有する第2の蓋体16と接している。従って、蓄熱部1では、ゼオライト12は、第1の蓋体15、第2の蓋体16、第1のウィック構造体17及び筒状体11内面に接した状態で被覆されている。
【0030】
蓄熱部1では、第1のウィック構造体17の形状は、筒状であり、径方向の断面は円形状である。つまり、第1のウィック構造体17の内側には、筒状体11を長軸方向に貫通する空間部、すなわち、流路18が設けられている。従って、第1のウィック構造体17の内周面が、流路18の壁面となっている。
【0031】
ゼオライト12は、第1の蓋体15、第2の蓋体16、第1のウィック構造体17及び筒状体11内面に接した状態で被覆されているので、ゼオライト12の被吸着物として水等の液体を使用しても、成型されたゼオライト12の形状を維持することができる。従って、第1のウィック構造体17は、ゼオライト12の形状の保持部材としても機能する。また、液相の熱輸送流体(被吸着物)Lは、その一部が、第1の蓋体15を介して、ゼオライト12の一方の端部へ供給される。さらに、第1のウィック構造体17の有する毛細管力によって、液相の熱輸送流体Lが、ゼオライト12の一方の端部からゼオライト12の内側側面全体へ、円滑に供給される。つまり、第1のウィック構造体17の毛細管力によって、液相の熱輸送流体Lが、第1のウィック構造体17の長手方向に沿って、すなわち、筒状体11の長軸方向に沿って、ゼオライト12の一方の端部から他方の端部まで、円滑かつ確実に拡散される。
【0032】
第1のウィック構造体17は、ゼオライト12の内周面と接触しているので、第1のウィック構造体17に吸収された液相の熱輸送流体Lが、ゼオライト12に速やかに吸着され、熱Hが放出される。
【0033】
ゼオライト12から放出された熱Hは、流路18の一方の端部から供給された液相の熱輸送流体Lへ移動する。これにより、液相の熱輸送流体Lは、流路18内を一方の端部から他方の端部へ移動する間に液相から気相へ相変化する。流路18内で気化した熱輸送流体(すなわち、気相の熱輸送流体G)は、流路18の他方の端部から蓄熱部1外へ放出され、さらには熱交換部106へ熱Hを輸送する。このように、流路18は、気相の熱輸送流体Gの通路として機能する。蓄熱部1では、流路18の径方向の断面は円形状であり、流路18の中心軸は、筒状体11の中心軸と同軸状に配置されている。
【0034】
このように、液相の熱輸送流体Lは、ゼオライト12の吸熱及び発熱に寄与する被吸着物として機能し、かつゼオライト12に蓄熱された熱を熱利用先へ輸送する熱輸送のための媒体としても機能する。よって、被吸着物の経路と熱輸送流体の経路を、それぞれ、別経路とする必要がなく、配管経路の構造を簡易化できる。また、気相ではなく液相の被吸着物がゼオライトに吸着するので、優れた蓄熱密度を得ることができる。
【0035】
ゼオライト12としては、蓄熱温度150℃以上350℃以下のものが、蓄熱部1に収納されている。蓄熱温度150℃以上350℃以下のゼオライト12が蓄熱部1に用いられることにより、蓄熱部1の配置される環境温度が350℃以下の場合でも、熱を蓄熱部1へ蓄えることができる。従って、酸化カルシウム等の化学蓄熱材を使用した蓄熱装置と比較して、蓄熱部1の設置場所の選択の自由度が向上する。
【0036】
蓄熱部1に収納されるゼオライト12は、下記一般式(1)
Me2/xO・Al・mSiO・nHO (1)
(式中、Meは陽イオン、xはMeの価数、mは2.0以上を意味し、nは、特に限定されず適宜選択されるが、例えば、0〜15が挙げられる。)で表される。一般式(1)中のm(すなわち、シリカアルミナ比)の値は、特に限定されないが、被吸着物として水を用いた場合に、被吸着物のゼオライト12に対する吸着特性が向上して良好な蓄熱密度を得る点から、2.0以上5.0未満(すなわち、親水性ゼオライト)が好ましく、より優れた蓄熱密度を得る点から2.0以上3.0以下がより好ましく、X型ゼオライト(m=2.5)が特に好ましい。
【0037】
ゼオライト12は、必要に応じて、2価以上の陽イオンを所定量含有する態様としてもよい。2価以上の陽イオンを有する態様とすることで、ゼオライト12の蓄熱密度がより向上する。2価以上の陽イオンを所定量含有するゼオライト12は、例えば、ゼオライト12を2価以上の陽イオンを含んだ液にてイオン交換処理することで調製することができる。
【0038】
本明細書においては、ゼオライト中の2価以上の陽イオンの含有量を「イオン交換率」として特定する。また、本明細書において、上記「イオン交換率」は、(蓄熱部1に収容されたゼオライトに含まれる2価以上の陽イオンと交換された1価の陽イオンのモル数/蓄熱部1に収容されたゼオライトに含まれる陽イオンが全て1価の陽イオンとみなした場合の陽イオンのモル数)×100にて算出する。
【0039】
例えば、上記一般式(1)のmが2.0のゼオライトの場合、Alが計6価、Siが計8価なので、電荷のバランスをとるために、ゼオライトには、2価分の陽イオン(Me)が含まれている。従って、蓄熱部1に収容されたゼオライトに含まれる陽イオン(Me)が全て1価の陽イオンとみなした場合、mが2.0のゼオライトの1モル中に、2モルの陽イオンが含まれることとなる。また、蓄熱部1に収容されたゼオライトに含まれる2価以上の陽イオンのモル数は、蓄熱部1に収容されたゼオライトを蛍光X線元素分析法にて測定することで特定される。なお、陽イオンのモル数の測定は、蛍光X線元素分析法に限らず、EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光器)組成分析、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分光分析等で測定してもよい。
【0040】
ゼオライトのイオン交換率は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、蓄熱密度を確実に向上させる点から60モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、85モル%が特に好ましい。また、ゼオライトのイオン交換率の上限値は、優れた蓄熱密度を得る点から100モル%が好ましい。ただ、2価以上の陽イオンの種類に関わらず生産性と蓄熱密度を向上させる点とのバランスからは、上記上限値は95モル%が好ましい。
【0041】
2価以上の陽イオンであれば、価数は特に限定されないが、より優れた蓄熱密度を得る点から、2価または3価の陽イオンが好ましい。2価以上の陽イオン種としては、特に限定されないが、より優れた蓄熱密度を得る点から、Mg2+、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Fe3+、Th4+が好ましく、Mg2+、Fe2+、Al3+、Fe3+がより好ましく、Mg2+、Al3+、Fe3+が特に好ましい。これらの陽イオンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
第1の蓋体15及び第2の蓋体16は、液相の熱輸送流体Lの通過は可能であるが、ゼオライト12は通過しない寸法の貫通孔を有する多孔質体である。多孔質体の貫通孔の寸法(平均口径)は、上記機能を有する寸法であれば特に限定されず、例えば、50マイクロメートル以下である。また、第1の蓋体15及び第2の蓋体16の材質は、特に限定されず、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属メッシュ、発泡金属、貫通孔を設けた金属箔、貫通孔を設けた金属板等を挙げることができる。
【0043】
第1のウィック構造体17は、毛細管構造を有する構成であれば特に限定されず、例えば、粉末状の金属材料を焼成することで構築される金属焼結体、金属メッシュ等の部材を挙げることができる。また、第1のウィック構造体17は、蓄熱部1のように、第1の蓋体15及び第2の蓋体16と別体でもよく、第1のウィック構造体17として、銅粉等の金属粉の焼結体や金属メッシュを使用する場合には、第1の蓋体15及び第2の蓋体16と一体としてもよい。
【0044】
筒状体11の材質は、特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等を挙げることができる。液相の熱輸送流体Lとしては、例えば、水、エタノール等のアルコール、水とアルコールとの混合物等を挙げることができる。
【0045】
次に、第2実施形態例に係る蓄熱部について図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係る蓄熱部と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。図2(a)、(b)に示すように、第2実施形態例に係る蓄熱部2では、長軸方向の形状が筒状であり、径方向の断面は円形状である第1のウィック構造体17の内周面に、両端部が開口した管材である内管19が嵌挿されている。従って、第2実施形態例に係る蓄熱部2では、内管19の内面が、流路28の壁面となっている。また、第1のウィック構造体17の内周面と内管19の外面が接触することで、内管19が第1のウィック構造体17と熱的に接続されている。
【0046】
内管19の径方向の断面は円形状であり、内管19の中心軸(すなわち、流路28の中心軸)は、筒状体11の中心軸と同軸状に配置されている。また、内管19の端部は、筒状体11の一方の端部13及び他方の端部14よりも内部に位置している。
【0047】
第2実施形態例に係る蓄熱部2では、第1のウィック構造体17が受熱した熱Hは、内管19を介して、流路28の一方の端部から供給された流路28内の、液相の熱輸送流体Lへ移動する。また、第1のウィック構造体17の内周面に内管19が嵌挿されることにより、第1ウィック構造体17の内側側面が外部環境から保護される。さらに、内管19により、第1ウィック構造体17の形状変化を防止できるので、流路28の形状を確実に維持できる。
【0048】
内管19の材質は、特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等を挙げることができる。
【0049】
次に、上記各実施形態例に係る蓄熱部の動作について説明する。ここでは、第1実施形態例に係る蓄熱部1を例にとって説明する。蓄熱部1を、例えば、熱回収対象である流体(例えば、排ガス)に近接して設置すると、筒状体11の外面が、前記流体から熱を受け、受けた熱を蓄熱部1内へ伝達する。筒状体11の外面を介して前記流体から伝達された熱は、筒状体11の内面と接触することで熱的に接続されているゼオライト12へ伝えられ、ゼオライト12が、伝えられた前記熱を蓄える。ゼオライト12が蓄熱する際に、熱輸送流体がゼオライト12から脱離し、気体としてゼオライト12から放出される。
【0050】
一方、蓄熱部1へ供給された液相の熱輸送流体Lが、蓄熱したゼオライト12に吸着されることで、熱Hが、ゼオライト12から放出される。
【0051】
ゼオライト12から放出された熱Hは、蓄熱部1へ供給された液相の熱輸送流体Lへ伝えられ、液相の熱輸送流体Lの一部が流路18内にて液相から気相へ相変化する。流路18内にて液相から相変化した気相の熱輸送流体Gが、該熱Hを輸送する熱媒体として蓄熱部1から熱交換部106へ輸送される。
【0052】
なお、蓄熱部1は、熱回収対象である流体からの熱回収効率を向上させるために、筒状体11の外面に熱交換手段、例えばフィン等を備えてもよい。
【0053】
次に、本発明の蓄熱装置で使用される蓄熱部の製造方法例を説明する。ここでは、第2実施形態例に係る蓄熱部2を例にして説明する。蓄熱部2の製造方法は、特に限定されないが、例えば、まず、筒状体11の長軸方向に、筒状体11の内面に沿って、筒状にゼオライト12を挿入する。この時、必要に応じて、ゼオライト12の入ったスラリーとして、ゼオライト12の粒子に加えて、バインダや添加剤等を含んだものを用いてもよい。バインダとしては、例えば、粘土系の鉱物(セピオライト、タルクなど)、ビニルアルコール系、(メタ)アクリル系などの有機バインダ、アルミナゾルなどの無機バインダが挙げられる。バインダを使用すると、ゼオライト12の粒子と一緒に残存して固まり得、これら粒子間を相互に接続すると共に蓄熱部2の筒状体11に密着し得るので、ゼオライト12と筒状体11との間において、より高い熱伝達性を得ることができる。添加剤としては、分散剤、粘度調整剤等が挙げられ、既知のものが使用され得る。次に、筒状体11の長軸方向に沿って、内管19を挿入し、内管19の外面とゼオライト12の内周面との間に形成された空隙部に、拡散層である第1のウィック構造体17となる材料(例えば、粉末状の金属材料)を充填する。次に、ゼオライト12の一方の端部側に第1の蓋体15となる材料(例えば、粉末状の金属材料)、ゼオライト12の他方の端部側に第2の蓋体16となる材料(例えば、粉末状の金属材料)を、それぞれ、充填する。上記各材料を充填後、加熱処理して、内側側面部を第1のウィック構造体17に、一方の端部を第1の蓋体に、他方の端部を第2の蓋体に、それぞれ、覆われたゼオライト12を有する蓄熱部2を製造することができる。
【0054】
なお、必要に応じて、上記のように製造した蓄熱部2を、さらに、扁平加工して、扁平型の蓄熱部としてもよい。
【0055】
また、第1のウィック構造体17を金属メッシュ等で形成する場合には、例えば、筒状体11に芯棒を挿入し、芯棒の外周面に金属メッシュ等を配置、固定して第1のウィック構造体17を形成する。その後、筒状体11の内面と第1のウィック構造体17の外面との間に形成された空隙部にゼオライト12を充填配置することで、蓄熱部2を製造してもよい。
【0056】
また、ゼオライト12の表面に拡散層(第1のウィック構造体17)を設ける方法として、例えば以下に示す方法をとることができる。まず、ゼオライト12を、相互に連通する複数の開口部を有する孔部を備えた形状に成形し、前記開口部から成形されたゼオライト12へ、前記孔部の経路に対応した形状を有する芯棒を挿入する。次に、前記芯棒の外面と前記孔部の内面との間に拡散層(第1のウィック構造体17)となる材料(例えば、粉末状の金属材料)を挿入し、前記材料を加熱または焼結する。その後、前記芯棒を引き抜くことで、ゼオライト12表面に拡散層を設けることができる。
【0057】
次に、本発明の蓄熱装置について、図面を用いながら説明する。ここでは、第2実施形態例に係る蓄熱部2を用いた蓄熱装置を例にとって説明する。
【0058】
図3に示すように、本発明の第1実施形態例に係る蓄熱装置100は、蓄熱部2の筒状体11の開口した一方の端部13が、第1の配管系102を介して、液相の熱輸送流体Lが貯留された被吸着物貯留部101と接続されている。第1の配管系102は、液相の熱輸送流体Lの供給手段である第1のバルブ103を備えている。上記の通り、液相の熱輸送流体Lは、ゼオライト12の蓄熱及び発熱に寄与する媒体として機能し、かつ液相から気相へ相変化することにより熱輸送媒体としても機能する。被吸着物貯留部101は、蓄熱部2と同じ高さ、又は蓄熱部2よりも高い位置に設置されているので、第1のバルブ103を開くことにより、液相の熱輸送流体Lが、被吸着物貯留部101から、筒状体11の開口した一方の端部13を介して、蓄熱部2内、すなわち、第1のウィック構造体17と内管19内部(すなわち、流路28)へ流入する。なお、蓄熱装置100における蓄熱部2の設置数は、1つに限定されず、複数の蓄熱部2がヘッダー部(図示せず)に組み込まれて並列に連結された構成としてもよい。
【0059】
第1のウィック構造体17内へ流入した、液相の熱輸送流体Lが、ゼオライト12に吸着されて、熱Hが放出される。一方で、蓄熱部2の流路28へ流入した、液相の熱輸送流体Lが、流路28を一方の端部13側から他方の端部14側へ移動する間に、放出された熱Hを受熱して気化し、気相の熱輸送流体Gとなる。流路28内にて気化した気相の熱輸送流体Gは、筒状体11の開口した他方の端部14から、つまり、蓄熱部2から第2の配管系104へ、熱輸送流体として放出される。
【0060】
図3に示すとおり、第1の配管系102には、第1のバルブ103と蓄熱部2との間に、逆流抑制部材として多孔質体である隔壁105が配置されている。隔壁105によって、第1の配管系102は、蓄熱部2側と被吸着物貯留部101側とに分離されている。隔壁105の材料である多孔質体は、液相の熱輸送流体Lが通過できる寸法の貫通孔を有している。よって、第1のバルブ103が開放されると、液相の熱輸送流体Lは、被吸着物貯留部101から隔壁105を通過して蓄熱部2へ供給される。また、多孔質体である隔壁105は、気相の熱輸送流体Gの第1の配管系102側への逆流を防止する部材として機能する。
【0061】
隔壁105を形成する多孔質体の各貫通孔の寸法(平均口径)は、上記機能を有する寸法であれば特に限定されず、例えば、所定の断面において、貫通孔を円形に換算した場合の直径で50マイクロメートル以下である。また、多孔質体の材質は特に限定されず、例えば、第1の蓋体15、第2の蓋体16と同じ材質を挙げることができ、具体的には、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属メッシュ、発泡金属、貫通孔を設けた金属箔、貫通孔を設けた金属板等を挙げることができる。
【0062】
また、上記逆流抑制部材は、流路28内における気相の熱輸送流体Gの逆流を防止できる部材であれば、多孔質体である隔壁105に限定されず、例えば、1つの孔部を有する部材や整流板等でもよく、また、弁でもよい。
【0063】
図3に示すとおり、蓄熱部2の筒状体11の開口した他方の端部14は、第2の配管系104を介して、熱交換部106(例えば、凝縮器)と接続されている。筒状体11の他方の端部14から第2の配管系104へ放出された気相の熱輸送流体Gは、第2の配管系104中を熱交換部106の方向へ移動していき、熱交換部106へ導入される。熱交換部106は、第2の配管系104から導入された気相の熱輸送流体Gを、例えば、冷却することによって液相へ相変化させる。
【0064】
熱交換部106に導入された気相の熱輸送流体Gは、凝縮されて液相に相変化することで、液相の熱輸送流体Lになるとともに、潜熱を放出する。熱交換部106にて放出された潜熱は、熱交換部106と熱的に接続された熱利用先(図示せず)へ輸送される。このように、蓄熱装置100では、ゼオライト12に吸着する媒体(すなわち、被吸着物)を、ゼオライト12から放出された熱を熱交換部106へ輸送する熱輸送流体としても使用している。
【0065】
さらに、蓄熱装置100は、熱交換部106と被吸着物貯留部101とを接続する第3の配管系107を備えている。第3の配管系107を介して、熱交換部106にて気相から相変化した液相の熱輸送流体Lが、熱交換部106から被吸着物貯留部101へ返送される。また、第3の配管系107には、液相の熱輸送流体Lの供給手段である第2のバルブ108が設けられている。
【0066】
蓄熱装置100は、第1の配管系102、第2の配管系104及び第3の配管系107によって、それぞれ、被吸着物貯留部101から蓄熱部2へ、蓄熱部2から熱交換部106へ、熱交換部106から被吸着物貯留部101へと、熱輸送流体が循環する循環系が形成されている。前記循環系は、気密状態であり、かつ脱気されている。つまり、前記循環系は、ループ状のヒートパイプ構造となっている。また、被吸着物貯留部101は、蓄熱部2と同じ高さ、又は蓄熱部2よりも高い位置に設置されている。さらに、第1のバルブ103と蓄熱部2の間の第1の配管系102には、気相の熱輸送流体Gの逆流を防止する隔壁105が配置されている。
【0067】
従って、循環系に収容された熱輸送流体を循環させるための機器(例えば、ポンプ等)を使用しなくても、第1のウィック構造体17の毛細管力や、相対的に高温である蓄熱部2内部と相対的に低温である熱交換部106内部との温度差、あるいは蓄熱部2内部と熱交換部106内部との間における気圧差によって、熱輸送流体は、蓄熱装置100の循環系を円滑に循環する。
【0068】
次に、図3の蓄熱装置100の構成要素を用いて、蓄熱部2に熱を蓄熱させる場合の操作例について説明する。蓄熱部2の蓄熱時には、蓄熱装置100の第1のバルブ103を閉じ、第2のバルブ108を開けた状態で、蓄熱部2に外部環境から熱を受熱させる。蓄熱部2が外部環境から熱を受熱すると、ゼオライト12が気相の被吸着物を放出する。ゼオライト12から放出された気相の被吸着物は、第2の配管系104、熱交換部106(熱交換部106にて、被吸着物は、気相から液相へ相変化)、第3の配管系107を介して、液相の被吸着物(すなわち、液相の熱輸送流体L)として被吸着物貯留部101へ輸送、貯留される。
【0069】
なお、第1のバルブ103は、蓄熱部2が所定の放熱温度に達した時点で閉じられてもよい。また、例えば、蓄熱部2の熱放出の動作後、ゼオライト12の熱放出の開始(又は、第1のバルブ103の開放)から所定時間経過した時、液相の熱輸送流体Lが被吸着物貯留部101へ所定量返送された時、または熱交換部106の放熱量が所定値に達した時等から、第1のバルブ103を閉じるタイミングを判断してもよい。
【0070】
蓄熱部2の温度変化を図示しないセンサ等で測定し、蓄熱が完了したと判断された場合には、第1のバルブ103だけではなく、第2のバルブ108も閉じて、液相の熱輸送流体Lを被吸着物貯留部101内に閉じ込めておく。
【0071】
なお、第2のバルブ108は、被吸着物貯留部101における液相の熱輸送流体Lの貯留量に応じて閉じられてもよい。液相の熱輸送流体Lの貯留量は、被吸着物貯留部101中の体積を実測してもよく、ゼオライト12の放熱時間や放熱量、被吸着物貯留部101の重さ、熱交換部106の放熱量、熱交換部106からの液相の熱輸送流体Lの排出量等から、判断してもよい。
【0072】
一方、蓄熱部2から熱交換部106へ、蓄熱部2に蓄えられていた熱を輸送する場合には、蓄熱装置100の第1のバルブ103を開けて、液相の熱輸送流体Lを蓄熱部2へ供給するとともに、第2のバルブ108も開けて蓄熱装置100の循環系を開放することで、蓄熱装置100を稼働させる。
【0073】
次に、本発明の蓄熱装置を用いた暖機装置の例について、説明する。例えば、車両に搭載された内燃機関(エンジン等)に接続された排気管に蓄熱装置の蓄熱部を搭載することで、排気管内を流れる排ガスの熱を蓄熱部に蓄熱することができる。蓄熱部の筒状体の外面の少なくとも一部が、排気管内を流れる排ガスと直接接触するように蓄熱部を配置することで、蓄熱部を熱源と熱的に接続することができる。
【0074】
蓄熱部に蓄熱された排ガス由来の熱は、蓄熱装置の循環系にて、蓄熱部から熱交換部へ輸送され、さらに、熱交換部から熱利用先である内燃機関の暖機装置へ輸送される。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態例について説明する。第2実施形態例に係る蓄熱部では、第1のウィック構造体は、粉末状の金属材料を焼成することで構築される金属焼結体や金属メッシュ等の部材であったが、これに代えて、内管の外面に形成された毛細管力を有する溝でもよい。
【0076】
また、上記各実施形態例の蓄熱部では、第1のウィック構造体は、粉末状の金属材料を焼成することで構築される金属焼結体や金属メッシュ等の部材であったが、これに代えて、筒状体の内面に形成された毛細管力を有する溝でもよい。また、内管の内面に、毛細管構造を有する第2のウィック構造体を設けてもよい。
【0077】
上記各実施形態例の蓄熱部では、筒状体の径方向の断面は円形状であったが、該断面の形状は特に限定されず、例えば、上記した扁平型の他、楕円形状、三角形状や四角形状等の多角形状、長円形状、丸角長方形等でもよい。さらに、上記各実施形態例の蓄熱部では、第1の蓋体と第2の蓋体は多孔質体であったが、これに代えて、毛細管構造を有するウィック構造体としてもよい。
【0078】
上記実施形態例に係る蓄熱部では、孔部を有する第1の蓋体が使用されていたが、これに代えて、孔部を有さない第1の蓋体が使用されてもよい。なお、この場合、内管の長さを、蓄熱部の内管の長さよりも、適宜、短くすることで、孔部を有さない第1の蓋体をゼオライトの筒状体の一方の端部側に隣接して配置することができる。
【0079】
また、上記各実施形態例の蓄熱部では、第1のウィック構造体の設置数は1つであったが、その設置数は特に限定されず、使用される状況に応じて複数設けてもよい。また、上記各実施形態例の蓄熱部では、第1のウィック構造体の内側に設けられた流路の設置数は1つであったが、その設置数は特に限定されず、使用される状況に応じて複数設けてもよい。また、上記各実施形態例の蓄熱部では、拡散層としてウィック構造体が用いられていたが、これに代えて、ゼオライトの有する細孔構造を用いてもよい。
【0080】
本発明の蓄熱装置の使用方法は、車両に搭載された内燃機関の暖機装置用以外にも、特に限定されず、例えば、車内の暖房装置用でもよく、また、本発明の蓄熱装置を工業プラントからの排熱の回収・貯蔵・利用に使用してもよい。さらに、本発明の蓄熱装置の他の熱利用先として、例えば、室内暖房、給湯器、乾燥機等を挙げることができる。
【0081】
上記本発明の各実施形態例に係る蓄熱装置では、第2実施形態例に係る蓄熱部を用いたが、これに代えて、他の実施形態例に係る蓄熱部を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の蓄熱装置は、蓄熱部が配置される環境温度が低くても、熱を蓄熱部へ蓄えることができるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、車両に搭載して排熱を回収・貯蔵及び利用する分野で、利用価値が高い。
【符号の説明】
【0083】
1、2 蓄熱部
12 ゼオライト
100 蓄熱装置
101 被吸着物貯留部
106 熱交換部
図1
図2
図3
図4