(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、処理対象物(例えば半導体ウェハなどの基板、又は基板の表面に形成された各種の膜)に対して各種処理を行うために処理装置が用いられている。処理装置の一例としては、処理対象物の研磨処理等を行うためのCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置が挙げられる。一般的にCMPでは、処理対象物を研磨パッドに押圧し、研磨剤(スラリー)を処理対象物と研磨パッドの間に供給しながら、処理対象物と研磨パッドとを相対的に運動させることで、処理対象物の表面を研磨する。
【0003】
CMP装置における研磨速度はプレストンの法則に従うことが知られており、研磨速度は研磨圧力に比例する。研磨対象である基板の表面に凹凸がある場合、凸部では凹部よりも研磨パッドへの接触圧力が大きくなるため、凸部の方が凹部よりも研磨速度が速くなる。CMP装置においては、この凸部と凹部との研磨速度の差によって、基板表面の段差を解消して平坦化を実現している。
【0004】
ここで、CMP装置で平坦化する前の基板の表面には様々な設計のチップが形成されており、本チップ内にはパターン構造や成膜方法に由来する様々な高さの段差があり、また段差の寸法(具体的には凸部の幅や表面積)も様々である。そして、これらの段差の寸法の違いがCMPにおける平坦性に大きく影響する。
図1は、その例として、配線部を含む基板表面にCu層が成膜された基板をCMPにて平坦化する工程を示す断面図を示している。
図1(a)は、絶縁膜51に配線溝52が形成された基板WFにバリアメタル53がPVD、CVD、ALD等の方法により成膜され、さらにバリアメタル53の上層にPVD等の方法によりCuシード膜が成膜され、その後に電解めっき等の方法でCu層54が形成された状態を示している。通常のCMP工程では、たとえば第一工程にて配線部以外にあるバリアメタル53上の余剰なCu層54を研磨除去する。さらに、図示しないが、第二工程において、バリアメタル53および下層の絶縁膜51を少量研磨することで、配線部のみにCuを残留させることで、配線部へのCuの埋め込みを完了させる。ここで、図示のように、成膜されたCu層54には下層の配線構造(配線幅や密度)や、電解めっきの成膜条件に起因してCu層54の表面に段差が形成される。特に、細幅の配線密集部ではめっき時に複数の配線を横断するような寸法の大きな段差(
図1(a)の左側の凸部)が形成されることもある。この様な様々な寸法の段差を有する基板の表面をCMPにより研磨すると、段差の高さや幅、面積によって段差の凹凸部に加わる研磨圧力が異なる。これは、研磨パッドの弾性によって段差の凸部と凹部に接触することで、段差の凸部と凹部とに印加される圧力差が異なるためであり、具体的には、高さが小さい段差や、幅や表面積が大きな段差においては、段差の凸部と凹部との研磨速度差が小さくなることで、研磨量に対する段差解消の速度が小さくなる。そのため、バリアメタル53が露出し始めた時点において、このような段差解消速度の小さい部分は、他の部分よりもCu層54が残留しやすい(
図1(b))。このような状況においては、配線間でCu層54が残留すれば、配線間ショートを引き起こす原因となり、配線間以外の部分にCu層が残留すれば、さらに上層に成膜を施した際に新たに段差を形成してしまう。よって、この残留するCu層54は完全に除去する必要があり、そのために意図的に過研磨が行われる。しかし、この過研磨により、Cuの残膜量の小さい、もしくはCu残膜が無かった配線部分では、さらに過剰にCuが過研磨されたり、配線間のバリアメタル53やその下層の絶縁膜51まで研磨されてしまう。そのため、CMP終了後において、配線部にディッシングやエロージョンが生じてしまう(
図1(c))。これらディッシングやエロージョンは配線断面積
のバラつきに大きく影響するため、ひいてはデバイス性能にも大きく影響する。
【0005】
以上は、CMPによるCu配線の埋め込み工程の例であるが、他の平坦化工程においても、事前の成膜段階でチップ内のパターン構造や成膜方法に由来する様々な寸法の段差が存在し、この寸法差による段差解消性の不均一性が発生している。したがって、段差の寸法差によらず、均一な段差解消性を実現することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、チップ内に存在するパターン構造や成膜方法に由来する様々な寸法の段差の存在下において、均一な段差解消性を得る平坦化方法を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[形態1]形態1によれば、基板の表面を平坦化するための平坦化装置が提供され、かかる平坦化装置は、前記基板の被処理面を粗面化粒子を用いて粗面化処理するための粗面化処理ユニットと、被処理面が粗面化された前記基板の表面を化学機械的研磨(CMP)するためのCMPユニットと、を有する。
【0009】
[形態2]形態2によれば、形態1による平坦化装置において、前記粗面化処理ユニットは、前記基板よりも寸法が大きいパッドと、前記パッドを保持し、前記基板に対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記基板の被処理面を前記パッドの方に向けて保持し、前記基板を前記パッドに押圧しながら、前記パッドに対して相対的に運動可能な基板保持ヘッドと、前記粗面化処理において、粗面化用粒子を含む液体を前記パッドに供給するための第1供給ノズルと、前記粗面化処理後において、前記基板および前記パッドを洗浄するための、洗浄用液体を供給するための第2供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有する。
【0010】
[形態3]形態3によれば、形態1による平坦化装置において、前記粗面化処理ユニットは、前記基板よりも寸法が大きく、粗面化用粒子を含むパッドと、前記パッドを保持するための、前記基板に対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記基板の被研磨面を前記パッドの方に向けて保持し、前記基板を前記パッドに押圧しながら、前記パッドに対して相対的に運動可能な基板保持ヘッドと、前記粗面化処理において、液体を前記パッドに供給するための第1供給ノズルと、前記粗面化処理後において、前記基板および前記パッドを洗浄するための、洗浄用液体を供給するための第2供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有する。
【0011】
[形態4]形態4によれば、形態1による平坦化装置において、前記粗面化処理ユニットは、前記基板よりも寸法が小さいパッドと、前記基板を保持するための、前記基板に対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記パッドを基板の方に向けて保持し、前記パッドを前記基板に押圧しながら、前記パッドに対して相対的に運動可能な保持ヘッドと、前記保持ヘッドを前記基板上で、前記基板の平面に平行な方向に揺動させるためのアームと、前記粗面化処理において、粗面化用粒子を含む液体を前記基板に供給するための第1供給ノズルと、前記粗面化処理後において、前記基板に洗浄用液体を供給するための第2供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有する。
【0012】
[形態5]形態5によれば、形態1による平坦化装置において、前記粗面化処理ユニットは、前記基板よりも寸法が小さく、粗面化用粒子を含むパッドと、前記基板を保持するための、前記パッドに対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記パッドを前記基板の方に向けて保持し、前記パッドを基板に押圧しながら、前記基板に対して相対的に運動可能な保持ヘッドと、前記保持ヘッドを前記基板上で前記基板の平面に平行な方向に揺動させるためのアームと、前記粗面化処理において、前記基板に液体を供給するための第1供給ノズルと、前記粗面化処理後において、前記基板および前記パッドを洗浄するための洗浄用液体を供給するための第2供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有する。
【0013】
[形態6]形態6によれば、形態1による平坦化装置において、前記粗面化処理ユニットは、前記粗面化粒子を含む液体を高圧で基板に向けて供給するため高圧供給ノズルと、前記基板を保持するための、前記高圧供給ノズルに対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記高圧供給ノズルを基板の平面に平行に揺動させるためのアームと、前記粗面化処理後において、基板に洗浄用液体を供給するための供給ノズルと、を有する。
【0014】
[形態7]形態7によれば、形態2から形態6のいずれか1つの形態による平坦化装置であって、前記相対的な運動が、回転運動、直線運動、スクロール運動、および回転運動と直線運動との組み合わせ、の少なくとも1つを含む。
【0015】
[形態8]形態8によれば、基板の表面を平坦化するための平坦化装置が提供され、かかる平坦化装置は、前記基板を化学機械的研磨(CMP)するためのCMPユニットと、前記基板を洗浄するための洗浄ユニットと、前記基板を乾燥させるための乾燥ユニットと、前記基板を前記CMPユニット、前記洗浄ユニット、および前記乾燥ユニットの間で搬送するための搬送機構と、を有し、前記CMPユニットは、粗面化粒子を含む液体を供給するための第1供給ノズルと、CMP用のスラリーを供給するための第2供給ノズルと、を有する。
【0016】
[形態9]形態9によれば、形態8による平坦化装置において、前記CMPユニットは、前記基板よりも寸法が大きいパッドと、前記パッドを保持し、前記基板に対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記基板の被処理面を前記パッドの方に向けて保持し、前記基板を前記パッドに押圧しながら、前記パッドに対して相対的に運動可能な基板保持ヘッドと、前記パッドに洗浄用液体を供給するための第3供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有し、前記第1供給ノズルは、粗面化粒子を含む液体を前記パッド上に供給するように構成され、前記第2供給ノズルは、前記CMP用のスラリーを前記パッド上に供給するように構成される。
【0017】
[形態10]形態10によれば、形態8による平坦化装置において、前記CMPユニットは、基板よりも寸法が小さいパッドと、前記基板を保持するための、前記パッドに対して相対的に運動が可能なテーブルと、前記パッドを前記基板の方に向けて保持し、前記パッドを前記基板に押圧しながら、前記基板に対して相対的に運動可能な保持ヘッドと、前記保持ヘッドを前記基板上で前記基板の平面に平行な方向に揺動させるためのアームと、前記基板に洗浄用液体を供給するための第3供給ノズルと、前記パッドの表面のコンディショニングを行うためのコンディショナと、を有し、前記第1供給ノズルは、前記粗面化粒子を含む液体を前記基板に供給するように構成され、前記第2供給ノズルは、前記CMP用のスラリーを前記基板に供給するように構成される。
【0018】
[形態11]形態11によれば、形態1から形態10のいずれか1つの形態による平坦化装置において、前記粗面化粒子の平均粒子径が100nm以下である。
【0019】
[形態12]形態12によれば、形態1から形態11のいずれか1つの形態による平坦化装置において、前記粗面化粒子が、ダイヤモンド、SiC、CBN、SiO
2、CeO
2、およびAl
2O
3からなるグループから選択される少なくとも1つの粒子を有する。
【0020】
[形態13]形態13によれば、基板を平坦化する方法が提供され、かかる方法は、前記基板の被処理面を粗面化粒子を用いて粗面化する粗面化処理ステップと、粗面化した前記基板の被処理面を化学機械的研磨(CMP)するCMPステップと、を有する。
【0021】
[形態14]形態14によれば、形態13による方法において、前記粗面化処理ステップにおいて、粗面化により前記基板の被処理面に形成される凹凸の高さは、粗面化処理前の前記基板の被処理面に存在する最大初期段差の80%以下であり、且つ、粗面化処理により前記基板の被処理面に形成される凹凸の平均ピッチは100μm以下である。
【0022】
[形態15]形態15によれば、形態13または形態14による方法において、前記粗面化処理ステップは、前記基板よりも寸法の大きいパッドの上に粗面化粒子を含む液体を供給し、前記パッドと前記基板の被処理面とを押圧した状態で、前記パッドと前記基板とを相対的に運動させるステップと、を有する。
【0023】
[形態16]形態16によれば、形態13または形態14による方法において、前記粗面化処理ステップは、前記基板に粗面化粒子を含む液体を供給し、前記基板よりも寸法の小さいパッドを前記基板に押圧した状態で、前記パッドと前記基板とを相対的に運動させるステップと、を有する。
【0024】
[形態17]形態17によれば、形態13または形態14による方法において、前記粗面化処理ステップは、粗面化用粒子が固定された前記基板よりも寸法の大きなパッドを前記基板に押圧した状態で、前記パッドと前記基板とを相対的に運動させるステップを有する。
【0025】
[形態18]形態18によれば、形態13または形態14による方法において、前記粗面化処理ステップは、粗面化用粒子が固定された前記基板よりも寸法の小さなパッドを前記基板に押圧した状態で、前記パッドと前記基板とを相対的に運動させるステップと、前記パッドを前記基板上で前記基板の平面に平行な方向に揺動させるステップと、を有する。
【0026】
[形態19]形態19によれば、形態13または形態14による方法において、前記粗面化処理ステップは、高圧供給ノズルから粗面化粒子を含む液体を高圧で前記基板に向けて供給するステップと、前記基板を前記高圧供給ノズルに対して相対的に運動させるステップと、前記高圧供給ノズルを前記基板の平面に平行に揺動させるステップと、を有する。
【0027】
[形態20]形態20によれば、形態13から形態19のいずれか1つの形態による方法において、前記粗面化粒子の平均粒子径が100nm以下である。
【0028】
[形態21]形態21によれば、形態13から形態20のいずれか1つの形態による方法において、前記粗面化粒子が、ダイヤモンド、SiC、CBN、SiO
2、CeO
2、およびAl
2O
3からなるグループから選択される少なくとも1つの粒子を有する。
【0029】
[形態22]形態22によれば、形態15から形態21のいずれか1つの形態による方法において、前記相対的な運動は、回転運動、直線運動、スクロール運動、および回転運
動と直線運動との組み合わせ 、の少なくとも1つを含む。
【0030】
[形態23]形態23によれば、形態13から形態22のいずれか1つの形態による方法において、前記粗面化処理ステップは、粗面化処理ユニットにより実行され、前記CMPステップは、CMPユニットにより実行され、前記粗面化処理ユニットにより粗面化した前記基板を、前記CMPユニットに搬送するステップを有する。
【0031】
[形態24]形態24によれば、形態13から形態22のいずれか1つの形態による方法において、前記粗面化処理ステップと、前記CMPステップとの間に、粗面化した前記基板の被処理面を洗浄するステップを有する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る基板の表面を平坦化するための平坦化装置および平坦化方法の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で説明される各特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0034】
図2は、一実施形態による平坦化装置10を示す平面図である。
図2に示すように、平坦化装置10は、ロード/アンロードユニット20と、粗面化処理ユニット100と、研磨ユニット200と、洗浄ユニット300と、乾燥ユニット400と、を備える。また、平坦化装置10は、ロード/アンロードユニット20、粗面化処理ユニット100、研磨ユニット200、洗浄ユニット300、および乾燥ユニット400の各種動作を制御するための制御ユニット500を備える。
【0035】
ロード/アンロードユニット20は、平坦化処理が行われる前の基板WFを粗面化処理ユニット100へ渡すとともに、粗面化、研磨、洗浄、および乾燥などの処理が行われた
後の基板を乾燥ユニット400から受け取るためのユニットである。ロード/アンロードユニット20は、複数(本実施形態では4台)のフロントロード部22を備える。フロントロード部22にはそれぞれ、基板をストックするためのカセットまたはFOUP(Front-Opening Unified Pod)24が搭載される。
【0036】
平坦化装置10は、搬送機構30a、30bを備える。搬送機構30aは、基板WFをカセットまたはFOUP24から取り出して、粗面化処理ユニット100へ渡す。なお、搬送機構30aは粗面化処理ユニット100での粗面化処理の形態によっては、基板WFを反転する機構を有してもよい。また、搬送機構30aは、基板WFの平坦化が行われた後の基板を乾燥ユニット400から受け取ってカセットまたはFOUP24へ戻す。搬送機構30bは、粗面化処理ユニット100、研磨ユニット200、洗浄ユニット300、および乾燥ユニット400の間で基板WFの受け渡しを行う。なお、搬送機構30bは研磨ユニット200や洗浄ユニット300での処理の形態によっては、基板WFを反転する機構を有してもよい。また、図示はしていないが、搬送機構30a、30bは、複数の搬送ロボットから構成されていてもよい。さらに、搬送機構30a、30bは任意の構成とすることができ、たとえば、基板WFを保持および解放することができる移動可能なロボットとすることができる。
【0037】
粗面化処理ユニット100は、詳しくは後述するが、基板WFを研磨ユニット200で研磨する前に、基板WFの被処理面に対して粗面化処理を行うためのユニットである。
【0038】
研磨ユニット200は、粗面化処理後の基板WFの被処理面に研磨を行うためのユニットである。
図2の実施形態においては、平坦化装置10は、4つの研磨ユニット200を備えている。4つの研磨ユニット200は、同一の構成とすることができる。一実施形態においては、研磨ユニットは、任意の構成のCMPユニットとすることができる。
【0039】
洗浄ユニット300は、粗面化処理ユニット100により粗面化処理された基板WF、または研磨ユニット200によって研磨処理が行われた基板WFの洗浄処理を行うためのユニットである。
図2に示される実施形態においては、洗浄ユニット300は3つであるが、任意の数の洗浄ユニット300を備えるものとすることができる。また、複数の洗浄ユニット300は同一の構成でもよく、異なる構成でもよい。
【0040】
乾燥ユニット400は、洗浄ユニット300により洗浄された基板WFに対して乾燥処理を行うためのユニットである。乾燥ユニット400は任意の構成とすることができる。
【0041】
以下において、平坦化装置10に採用することができる粗面化処理ユニット100の実施形態を説明する。
図3は、一実施形態による粗面化処理ユニット100を示す斜視図である。
図3に示されるように、粗面化処理ユニット100は、平坦な上面を備えるテーブル102を有する。本実施形態においては、テーブル102は、図示しないモータ等の駆動機構により
図3の矢印で示されるように回転可能に構成されるが、その他の運動、たとえば直線運動やスクロール運動、直線運動と回転運動とを組み合わせた運動であってもよい。ここで、直線運動とは、直線的な往復運動を含み、回転運動とは、図示のような自転運動や、旋回運動、角度回転運動および偏心回転運動を含む。直線運動と回転運動との組み合わせは、たとえば楕円軌道を描く運動を含む。テーブル102の上面には、粗面化処理用のパッド104(以降では「粗面化パッド」と表記する)が貼り付けられる。
図3に示される実施形態において、粗面化パッド104は、粗面化の対象である基板WFよりも大きな寸法である。一実施形態において、粗面化パッド104は、基板WFの直径の3倍以内のサイズの直径を備える粗面化パッドとすることができる。本実施形態において、粗面化処理では後述のように基板WFと粗面化パッド104を相対的に運動させるが、粗面化パッド104の径が大きいほど基板WFと粗面化パッド104との相対速度を大きくで
きるので、粗面化の速度が増加することで、基板WFの処理速度が向上する。
【0042】
粗面化処理ユニット100は、基板WFを保持するための保持ヘッド106を備える。保持ヘッド106は、回転可能なシャフト108に連結されている。シャフト108は、
図3に矢印に示されるように図示しない駆動機構により保持ヘッド106とともに回転可能である。基板WFは保持ヘッド106の下面に真空吸着により支持されている。保持ヘッド106は、粗面化パッド104の表面に垂直な方向に移動可能に構成される。また、保持ヘッド106は、テーブル102の平面内、たとえばテーブル102の半径方向に移動可能なアーム109(
図3には不図示)に接続されている。粗面化処理ユニット100は、テーブル102および保持ヘッド106をそれぞれ回転させながら、粗面化粒子を含む液体を粗面化パッド104上に供給するとともに保持ヘッド106により基板WFを粗面化パッド104に押圧し、保持ヘッド106をテーブル102の平面内で移動させることで基板WFを粗面化することができる。
【0043】
粗面化パッド104は、CMPに使用される研磨パッドと同様のパッドを粗面化パッド104として使用することができる。ここで、粗面化パッド104は、例えば発泡ポリウレタン系のハードパッド、スウェード系のソフトパッド、または、スポンジなどで形成される。粗面化パッド104の種類は被処理面の材質や粗面化粒子に応じて適宜選択すれば良い。例えば被処理面がCuやLow−k膜等の機械的強度の小さな材料である場合や、後述する粗面化粒子の硬度が大きい場合は、粗面化処理において必要以上に粗面化を生じさせる場合があるため、硬度や剛性の低いパッドを選択しても良い。一方で、粗面化する基板WFの表面の凸部に対して優先的に粗面化処理を行うには、基板WFとの接触をコントロールすることが必要である。そのためには、基板WFの除去対象材料の表面の凹凸に対する粗面化パッド104の接触圧力の選択性が高い方が好ましい。たとえば、被処理面に初期に存在する凹凸の凸部のみを選択的に粗面化する場合には粗面化パッド104は硬度や剛性の高い物を選択してもよい。また、粗面化パッド104は複数のパッドを積層させた構造でも良い。例えば、基板WFの被処理面と接触する面は硬度や剛性の高いパッドとし、下層を剛性、高度の低いパッドとする2層構造としても良い。これによって、粗面化パッド104の剛性が調整可能である。
【0044】
また、粗面化パッド104の剛性の調整方法として、冷却機構により粗面化パッド104の表面を冷却することで、粗面化パッド104の表面の剛性を増加させることができ、接触圧力の選択性を高めることもできる。冷却機構としては、例えば粗面化パッド104が貼り付けられるテーブル102の内部にペルチェ素子を設けてもよい。
図4は、冷却機構として内部にペルチェ素子150を設けられたテーブル102を概略的に示す側面図である。
図4に示される粗面化処理ユニット100は、たとえば放射温度計のような温度計測器152を備える。温度計測器152は、粗面化パッド104表面の温度を計測するように構成される。一実施形態として、温度計測器152により測定された粗面化パッド104の温度に基づいて、ペルチェ素子150に供給される電流を制御して、粗面化パッド104の表面の温度を所定の温度に制御するように構成することができる。
【0045】
また、一実施形態において、粗面化パッド104のための冷却機構として、冷却流体を使用することもできる。
図5は、冷却流体を使用する冷却機構を備えるテーブル102を概略的に示す側面図である。
図5に示されるテーブル102は、テーブル102の内部に冷却流体が通るように構成される流体通路154を備える。流体通路154を通る冷却流体の温度を制御することで、粗面化パッド104の温度を制御することができる。また、
図5に示される冷却機構は、粗面化パッド104の表面に接触するパッド接触部材156と、温度調整された液体をパッド接触部材156内に供給する液体供給機構158と、を備える。液体供給機構158は、温度制御された液体が通る通路とすることができる。液体供給機構158に使用される液体として、温水および冷水を用いることができ、それぞ
れのパッド接触部材156へ通す液体の温度および供給量を制御することで、パッド接触部材156および粗面化パッド104が所定温度になるように制御することができる。
図5に示される実施形態においても、温度計測器152が設けられている。温度計測器152により測定された粗面化パッド104の温度に基づいて、流体通路154を通る冷却流体の温度および/または流量、液体供給機構158を通る液体の温度および/または流量を制御することで、粗面化パッド104を所定の温度に制御することができる。なお、
図5に示される冷却機構は、テーブル102の内部を通る流体通路154を利用する冷却機構、および粗面化パッド104に接触するパッド接触部材156を利用する冷却機構の2つの冷却機構が示されているが、いずれか一方だけを備えるものとしてもよい。なお、
図4、5においては、図示の明瞭化のために、粗面化粒子供給ノズル110およびコンディショナ120を省略しているが、これらを備える粗面化処理ユニット100とすることができる。
【0046】
なお、粗面化パッド104の表面には、例えば同心円状溝や縦横方向に形成されたXY溝、渦巻き溝、放射状溝といった溝形状が施されていても良い。溝形状を設けることで、後述する粗面化粒子を含む液体の基板WFと粗面化パッド104間への均一な供給や、粗面化処理において生成された加工生成物の排出が容易になる。
【0047】
また、粗面化処理における押圧について、基板WFと粗面化パッド104の接触圧力は小さい方がよく、好ましくは1psi以下、より好ましくは0.1psi以下である。なお、基板WFの粗面化パッド104への押圧の方式としては、エアシリンダもしくはボールネジ等の駆動機構により、保持ヘッド106に保持され基板WFを粗面化パッド104に押圧しても良い。また、別の形態として、図示しないが、基板WFの背面にエアバッグを備え、保持ヘッド106を粗面化パッド104に近接させた後、エアバッグに接触圧力相当のエアを供給することで、基板WFをパッド粗面化104に押圧しても良い。なお、エアバッグは複数の領域に分割し、各領域で圧力を調整しても良い。本方式により、基板WFの粗面化パッド104への接触圧力を変更することで、粗面化処理で形成される凹凸の高さを調整することができる。
【0048】
図3に示される実施形態において、粗面化処理ユニット100は、基板WFの被処理面を粗面化するための粗面化粒子を分散させた液体を粗面化パッド104上に供給するための粗面化粒子供給ノズル110を備える。一実施形態において、粗面化粒子供給ノズル110は、テーブル102上の粗面化パッド104の固定された一定の位置に粗面化粒子を供給するものとすることができる。また、一実施形態として、粗面化粒子供給ノズル110を移動可能に構成し、テーブル102上の粗面化パッド104の任意の位置に粗面化粒子を供給するように構成することができる。たとえば、粗面化粒子供給ノズル110を保持ヘッド106と同期して移動させることで、効率的に基板WFと粗面化パッド104との間に粗面化粒子を分散させた液体を供給することができる。
【0049】
ここで、粗面化処理において使用する粗面化粒子のサイズや種類および濃度は、対象となる基板WFの除去対象層の初期段差の大きさ、層の厚さ、および種類によって選択することができる。粗面化粒子の種類は、たとえば、ダイヤモンド、炭化ケイ素(SiC)、キュービックボロンナイトライド(CBN)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)の少なくとも1つを含むものとすることができる。粗面化粒子は100nm〜数百nm程度の粒子サイズとすることができる。たとえばCMPにより研磨する前の基板WFでは、表面に100nm程度の大きな段差が存在することがある。この場合、粗面化処理により10nm〜数十nm程度の高さの凹凸となるように基板の表面を粗面化することが望ましい。粗面化時の基板WFの表面に形成される凹凸が基板の配線構造に達するほど深くならないようにするために、上記のような粗面化粒子のサイズが望ましい。また、初期段差の小さな基板WFを粗面化する場合
、基板WFの表面に形成される凹凸が10nm以下となるように粗面化することが望ましい。その場合、粗面化粒子のサイズは10nm〜数十nm程度とすることが望ましい。また、粗面化粒子の濃度については10重量%未満、好ましくは1重量%未満である。粗面化粒子の濃度が大きいと、粗面化の速度が速くなる一方で基板WFの被処理面自身が研磨されてしまうためである。なお、粗面化粒子を懸濁させる液体自身は純水(DIW:De-Ionized Water)でも良いが、被処理面の性状によって、適宜pH調整剤によるpH調整を行っても良い。また、例えばCeO
2のような、凝集性の高い粗面化粒子に対しては、分散剤を添加することで、粗面化粒子の凝集を抑制しても良い。また、基板WFの被処理面に初期に存在する段差の凸部のみを選択的に粗面化する場合、凹部を保護するための、保護材成分を添加しても良い。これにより段差の凸部の粗面化の選択性が調整可能となる。
【0050】
また、
図3に示される実施形態において、粗面化処理ユニット処理100は、粗面化処理後の基板WF及び粗面化パッド104を洗浄するための洗浄用液体を供給する洗浄液供給ノズル111が配置されている。これにより、基板WFの被処理面及び粗面化パッド104上に残留した粗面化粒子を含む液体及び粗面化処理により発生した加工生成物の除去が可能となる。なお、洗浄液としては、DIWでも良いが、粗面化粒子の種類によって適宜薬液を洗浄液として供給しても良い。また、洗浄液供給ノズル110は、粗面化パッド104上の一定の位置に洗浄液を供給するように構成してもよく、あるいは、洗浄液供給ノズル111を移動可能に構成して、粗面化パッド104上の任意の位置に洗浄液を供給するように構成してもよい。図示はしないが、洗浄液を高圧ノズルにて供給しても良い。
【0051】
図3に示される粗面化処理ユニット100は、粗面化パッド104のコンディショニングを行うためのコンディショナ120を備える。コンディショナ120は、コンディショニングヘッド122を備える。コンディショニングヘッド122は、回転可能なシャフト124に連結されている。シャフト124は、
図3に示されるように図示しない駆動機構によりコンディショニングヘッド122とともに回転可能である。コンディショニングヘッド122の下面にはコンディショニングパッド126が取り付けられる。ここで、コンディショニングパッド126は、例えばダイヤモンドがNi電着層等の固定層で固定されたものでもよく、また樹脂のブラシが固定されていても良い。コンディショニングヘッド122は、粗面化パッド104の表面に垂直な方向に移動可能に構成される。また、コンディショニングヘッド122は、テーブル102の平面内、たとえばテーブル102の半径方向に移動可能に構成される。粗面化処理ユニット100は、テーブル102およびコンディショニングヘッド122をそれぞれ回転させながら、コンディショニングヘッド122によりコンディショニングパッド126を粗面化パッド104にエアシリンダやボールネジ等の押圧機構により所定圧で押圧し、かつコンディショニングヘッド122をテーブル102の平面内で移動させることで粗面化パッド104をコンディショニングすることができる。コンディショニングは、基板WFの粗面化を行っているときに同時に実行してもよく、また基板WFの粗面化が終わった後に次の基板WFを粗面化する前に実行してもよい。これにより、粗面化処理における粗面化パッド104の表面状態を維持することが可能であり、粗面化処理性能が安定する。なお、コンディショニングにより、粗面化パッド104をCMPで使用する研磨パッドの場合よりも表面を平滑化してもよい。たとえば粗面化パッド104の平滑化のレベルは、10μm以下、好ましくは1μm以下とすることができる。この場合、例えばコンディショニングパッド126のダイヤモンド径を小さくする、もしくは固定層からのダイヤモンドの突出し量を小さくすることで、粗面化パッド104の加工量を小さくすることで調整可能となる。
【0052】
なお、粗面化処理ユニット100は、
図3に図示はしないが、制御部を備える。粗面化処理ユニット100の各種の駆動機構や各ノズルのバルブの開閉は制御部に接続されており、制御部は、粗面化処理ユニット100の動作を制御することができる。また、制御部は、
図14で後述する段差の測定結果を処理し、目標値未満か否かの判断等を行うための
演算部を備える。制御部は、演算部により処理・判断された結果に基づいて、粗面化処理ユニット100を制御するように構成される。なお、制御部は、記憶装置、CPU、入出力機構など備える一般的なコンピュータに所定のプログラムをインストールすることで構成することができる。
【0053】
また、
図3に図示していないが、粗面化処理における処理の終点の判断する処理状態検出部を設けても良い。例えば、基板WFの被処理膜表面にレーザー等の光を入射し、反射光を検出する方式や、画像認識による表面状態を検出する方式が挙げられる。前者は粗面化により、基板WFの被処理膜表面で入射光が散乱されることで、反射光強度が変化することを利用し、特定の反射光強度に達した時点で処理を終了する。また、後者は色調の変化によりを検出し、特定の色調に達した時点で処理を終了する。また、処理状態の検出としては、例えば、パッドが取り付けられたテーブル102や後述の粗面化処理ヘッド134の回転運動、または基板WFを保持する保持ヘッド106やテーブル132の回転運動、または粗面化処理ヘッド134の揺動運動における駆動モータのトルクの変化を監視しても良い。これは、粗面化処理によって、基板WFの被処理面の状態が変化することでパッドとの接触・摩擦状態が変換することを利用している。ここで、検出部は検出した反射光や色調及びトルクの信号を処理する信号処理部に接続されており、その信号を元に制御部が粗面化処理を終了する。なお、検出部で検出した信号を処理する信号処理部と、各種の駆動機構や各ノズルのバルブの開閉を制御するための制御部と同一のハードウェアを使用してもよく、別のハードウェアを使用してもよい。別々のハードウェアを用いる場合、基板WFの粗面化処理と基板WFの表面状態の検出および後続の信号処理に使用するハードウェア資源を分散でき、全体として処理を高速化できる。
【0054】
図7は、一実施形態による粗面化処理ユニット100を概略的に示す側面図である。
図7に示される粗面化処理ユニット100は、テーブル102上の貼り付けられた粗面化パッド104aを使用して、保持ヘッド106に保持された基板WFを粗面化するように構成されている。ここで、
図7に示される粗面化処理ユニット100においては、粗面化パッド104aには粗面化粒子が樹脂材料等のバインダで固定されている。そのため、本実施形態による粗面化処理ユニット100は、
図3の実施形態のように粗面化粒子を含む液体を粗面化パッド104a上に供給する必要がなく、粗面化粒子供給ノズル110は必要ない。ここで、粗面化パッド104aに固定する粗面化粒子のサイズや種類および濃度は、対象となる基板WFの除去対象層の初期段差の大きさ、層の厚さ、および種類によって選択することができる。粗面化粒子の種類は、たとえば、ダイヤモンド、炭化ケイ素(SiC)、キュービックボロンナイトライド(CBN)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)の少なくとも1つを含むものとすることができる。粗面化粒子は100nm〜数百nm程度の粒子サイズとすることができる。たとえばCMPにより研磨する前の基板WFでは、表面に100nm程度の大きな段差が存在することがある。この場合、粗面化処理により10nm〜数十nm程度の高さの凹凸となるように基板の被処理面を粗面化することが望ましい。粗面化時の基板WFの被処理面に形成される凹凸が基板の配線構造に達するほど深くならないようにするために、上記のような粗面化粒子のサイズが望ましい。また、初期段差の小さな基板WFを粗面化する場合、基板WFの表面に形成される凹凸が10nm以下となるように粗面化することが望ましい。その場合、粗面化粒子のサイズは10nm〜数十nm程度とすることが望ましい。
図7に示される粗面化処理ユニット100は、粗面化処理において液体を粗面化パッド104a上に供給するための液体供給ノズル112、洗浄液を供給するための洗浄液供給ノズル111を備える。粗面化処理において供給する液体はたとえば純水でもよいが、バインダ成分を溶解させる薬液を供給してもよい。また、液体供給ノズル112は、粗面化パッド104a上の一定の位置に液体を供給するように構成してもよく、あるいは、液体供給ノズル112を移動可能に構成して、粗面化パッド104a上の任意の位置に液体を供給するように構成してもよい。また、粗面化処理後は洗浄液供給ノズル1
11より洗浄用の液体を供給することで、基板WFの被処理面及びパッド104a上に残留した粗面化粒子を含む液体及び粗面化処理により発生した加工生成物を除去する。
【0055】
図8は、一実施形態による粗面化処理ユニット100を概略的に示す斜視図である。
図8に示される粗面化処理ユニット100は、平坦な上面を備えるテーブル132を有する。テーブル132は、図示しないモータ等により回転可能に構成される。テーブル132の上面には、真空吸着等により基板WFを固定することが可能に構成される。また、テーブル132の基板WF固定面には緩衝材が設けられる場合がある。このため、基板WFの吸着は、テーブル132を介して直接吸着する場合と、緩衝材を介して吸着する場合と、がある。緩衝材は、例えばポリウレタン、ナイロン、フッ素系ゴム、シリコーンゴム等の弾性材料から成り、粘着性樹脂層を介してテーブル132と密着している。緩衝材は弾性を有しているため、ウェハに傷がつくことを防いだり、テーブル132の表面の凹凸の粗面化処理への影響を緩和したりするものである。
【0056】
図8に示される粗面化処理ユニット100は、粗面化処理ヘッド134を備える。粗面化処理ヘッド134は、回転可能なシャフト136に連結されている。シャフト136は、図示しない駆動機構により粗面化処理ヘッド134とともに回転可能である。粗面化処理ヘッド134の下面に、粗面化パッド138が取り付けられている。シャフト136は、揺動可能なアーム109に接続されている。
図8に示される実施形態において、粗面化パッド138は、粗面化の対象である基板WFよりも小さな寸法である。例えば基板WFの直径Φが300mmである場合、粗面化パッド138は好ましくは直径Φが100mm以下、より好ましくは直径Φ60〜100mmであることが望ましい。粗面化パッド138の径が大きいほど基板WFとの面積比が小さくなるため、基板WFの処理速度は増加する。一方で、基板WFの被処理面の処理速度の基板面内均一性については、逆に粗面化パッド138の径が小さくなるほど向上する。これは、単位処理面積が小さくなるためであり、後述のような、粗面化パッド138をアーム109により基板WFの面内で揺動等の相対運動をさせることで基板WFの全面処理を行う方式において有利となる。粗面化処理ヘッド134は、テーブル132上の基板WFの表面に垂直な方向に移動可能に構成されており、これにより粗面化パッド138を所定圧力で基板WFに押圧が可能である。ここで、押圧の方式としてはエアシリンダやボールネジ等により押圧する方式や、図示しないが、粗面化処理ヘッド134内にエアバッグを配置し、粗面化処理ヘッド134を基板WFに近接させた後、エアバッグに接触圧力相当のエアを供給することで、粗面化パッド138を基板WFに押圧しても良い。なお、エアバッグは複数の領域に分割し、各領域で圧力を調整しても良い。なお、エアバッグは複数の領域に分割し、各領域で圧力を調整してもよい。また、粗面化処理ヘッド134は、アーム109により、テーブル132の平面内、たとえばテーブル132の半径方向に移動可能に構成される。ここで、アーム109による粗面化処理ヘッド134の移動速度について、基板WF及び粗面化処理ヘッド134の回転数及び粗面化処理ヘッド134の移動距離により、最適な移動速度の分布は異なるため、基板WF面内で粗面化処理ヘッド134の移動速度は可変であることが望ましい。この場合の移動速度の変化方式としては、例えば基板WF面内での揺動距離を複数の区間に分割し、それぞれの区間に対して移動速度を設定できる方式が望ましい。図示の粗面化処理ユニット100は、
図3の実施形態と同様に粗面化粒子供給ノズル110を備える。粗面化処理ユニット100は、テーブル132および粗面化処理ヘッド134をそれぞれ回転させながら、粗面化粒子を含む液体を基板WFに供給するとともに粗面化処理ヘッド134を基板WFに対して押圧し、粗面化処理ヘッド134をテーブル132の平面内で移動させることで基板WFを粗面化することができる。粗面化パッド138は、寸法以外は
図3の実施形態の粗面化パッド104と同様のものとしてもよい。
図8に示される粗面化処理ユニット100はさらに、基板WF上に洗浄液を供給するための洗浄液供給ノズル111を備える。洗浄液はたとえば純水および/または薬液などとすることができる。また、図示の粗面化処理ユニット100では、基板WF上への粗面化処理液は粗面化粒子
供給ノズル110から供給しているが、別形態として、粗面化処理ヘッド134内に供給流路を設け、粗面化パッド138内に設けた貫通穴を通して粗面化粒子を含む液体を供給する方式でも良い。本方式により、粗面化処理ヘッド134が基板WF面内を揺動する際においても、粗面化パッド138の基板WFとの接触面に粗面化粒子を含む液体を効率的に供給することが可能である。
【0057】
図8に示される粗面化処理ユニット100はさらに、粗面化パッド138のコンディショニングを行うためのコンディショナ120を備える。コンディショナ120は、ドレステーブル140と、ドレステーブル140の上に設置されたドレッサ142と、を備える。ドレステーブル140は、図示していない駆動機構によって回転可能に構成される。ドレッサ142は、ダイヤドレッサ、ブラシドレッサ、又はこれらの組み合わせで形成される。
図8に示される粗面化処理ユニット100は、粗面化パッド138のコンディショニングを行う際には、粗面化パッド138がドレッサ142に対向する位置になるまでアーム109を旋回させる。粗面化処理ユニット100は、粗面化パッド138およびドレッサ142をともに回転させながら粗面化パッド138をドレッサ142に押し付けることによって、粗面化パッド138のコンディショニングを行うことができる。
【0058】
図9は、一実施形態による粗面化処理ユニット100を概略的に示す側面図である。
図9に示される粗面化処理ユニット100は、
図8に示される粗面化処理ユニット100と同様に、基板WFをテーブル132上で上向きに保持し、小径の粗面化パッド138aを基板WFに押し圧して基板WFの表面を粗面化するように構成されている。ただし、
図9に示される粗面化処理ユニット100においては、粗面化パッド138aには粗面化粒子が樹脂材料等のバインダで固定されている。そのため、本実施形態による粗面化処理ユニット100は、
図8の実施形態のように粗面化粒子を含む液体を基板WF上に供給する必要がなく、粗面化粒子供給ノズル110は必要ない。
図9に示される粗面化処理ユニット100は、液体を基板WF上に供給するための液体供給ノズル112を備える。粗面化処理において供給する液体はたとえば純水でもよいが、バインダ成分を溶解させる薬液を供給してもよい。また、液体供給ノズル112は、基板WF上の一定の位置に液体を供給するように構成してもよく、あるいは、液体供給ノズル112を移動可能に構成して、基板WF上の任意の位置に液体を供給するように構成してもよい。また、粗面化処理後は洗浄液供給ノズル111より洗浄用の液体を供給することで、基板WFの被処理面及び粗面化パッド104a上に残留した粗面化粒子を含む液体及び粗面化処理により発生した加工生成物を除去する。
【0059】
図10は、一実施形態による粗面化処理ユニット100を概略的に示す側面図である。
図10に示される粗面化処理ユニット100は、
図8、
図9に示される粗面化処理ユニット100と同様に、基板WFをテーブル132上で上向きに保持するように構成される。ただし、
図10に示される実施形態による粗面化処理ユニット100においては、粗面化パッドを使用しない。
図10の粗面化処理ユニット100は、基板WFの平面に平行に揺動可能なアーム109に、粗面化粒子を含む液体を高圧で基板WFの表面に供給するための高圧供給ノズル115が取り付けられる。高圧供給ノズル115は、粗面化粒子供給タンク116に接続されている。粗面化粒子供給タンク116はコンプレッサ117およびレギュレータ119等に接続されており、圧力ゲージ121を介して高圧供給ノズル115から、たとえば1kgf/cm
2〜10kgf/cm
2の圧力で粗面化粒子を含む液体を基板WFの表面に噴きつけることができる。ここで、粗面化粒子のサイズや種類および濃度は、対象となる基板WFの除去対象層の初期段差の大きさ、層の厚さ、および種類によって選択することができる。粗面化粒子の種類は、たとえば、ダイヤモンド、炭化ケイ素(SiC)、キュービックボロンナイトライド(CBN)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)の少なくとも1つを含むものとすることができる。粗面化粒子は100nm〜数百nm程度の粒子サイズと
することができる。たとえばCMPにより研磨する前の基板WFでは、表面に100nm程度の大きな段差が存在することがある。この場合、粗面化処理により10nm〜数十nm程度の高さの凹凸となるように基板の表面を粗面化することが望ましい。粗面化時の基板WFの表面に形成される凹凸が基板の配線構造に達するほど深くならないようにするために、上記のような粗面化粒子のサイズが望ましい。また、初期段差の小さな基板WFを粗面化する場合、基板WFの表面に形成される凹凸が10nm以下となるように粗面化することが望ましい。その場合、粗面化粒子のサイズは10nm〜数十nm程度とすることが望ましい。なお、粗面化粒子を懸濁させる液体自身はDIWでも良いが、被処理面の性状によって、適宜pH調整剤によるpH調整を行っても良い。また、例えばCeO
2のような、凝集性の高い粗面化粒子に対しては、分散剤を添加することで、粗面化粒子の凝集を抑制しても良い。また、基板WFの被処理面に初期に存在する凹凸の凸部のみを選択的に粗面化する場合、凹部を保護するための、保護材成分を添加しても良い。これにより凹凸の粗面化の選択性が調整可能となる。また、アーム109による高圧供給ノズル115の移動速度について、基板WFの回転数や高圧供給ノズル115の移動距離により、最適な移動速度の分布は異なるため、基板WF面内で高圧供給ノズル115の移動速度は可変であることが望ましい。この場合の移動速度の変化方式としては、例えば基板WF面内での揺動距離を複数の区間に分割し、それぞれの区間に対して移動速度を設定できる方式が望ましい。
図10に示される粗面化処理ユニット100は、粗面化処理後において洗浄液を基板WF上に供給するための洗浄液供給ノズル111を備える。洗浄液供給ノズル111は、基板WF上の一定の位置に液体を供給するように構成してもよく、あるいは、洗浄液供給ノズル111を移動可能に構成して、基板WF上の任意の位置に液体を供給するように構成してもよい。
【0060】
図11は、一実施形態による平坦化装置10を概略的に示す上面図である。
図11に示される平坦化装置10は、同一の筐体内に粗面化処理ユニット100と研磨ユニット200とを備える。
図11に示される実施形態による平坦化装置10では、基板WFよりも大きな寸法を備えるテーブル102、粗面化パッド104を備える。また、かかる平坦化装置10の研磨ユニット200は、CMPユニットである。かかるCMPユニットは、基板WFよりも大きな寸法を備える平坦な上面を備えるテーブル103を有する。テーブル103は、図示しないモータ等の駆動機構により回転可能に構成される。テーブル103の上面には、研磨パッド105が貼り付けられる。CMPユニットは、研磨パッド105上にスラリーを供給するためのスラリー供給ノズル114を備える。
図11に示される平坦化装置10は、基板WFを保持するための保持ヘッド106を備える。保持ヘッド106は回転可能に構成される。基板WFは保持ヘッド106の下面に真空吸着により支持されている。保持ヘッド106は、粗面化パッド104および研磨パッド105の表面に垂直な方向に移動可能に構成される。保持ヘッド106は、また、保持ヘッド106は、テーブル102、103の平面内で、粗面化処理ユニット100のテーブル102および研磨ユニット200のテーブル103に渡って移動可能に構成される。したがって、粗面化処理ユニット100および研磨ユニット200は、アーム109および保持ヘッド106を共有している。粗面化処理ユニット100は、テーブル102および保持ヘッド106をそれぞれ回転させながら、粗面化粒子供給ノズル110により粗面化粒子を含む液体を粗面化パッド104上に供給するとともに保持ヘッド106により基板WFを粗面化パッド104に押圧し、保持ヘッド106をテーブル102の平面内で移動させることで基板WFを粗面化することができる。また、研磨ユニット200は、テーブル103および保持ヘッド106をそれぞれ回転させながら、スラリー供給ノズル114によりスラリーを研磨パッド105上に供給するとともに保持ヘッド106により基板WFを研磨パッド105に押圧し、保持ヘッド106をテーブル103の平面内で移動させることで基板WFを研磨することができる。なお、図示しないが、粗面化処理ユニット100及び研磨ユニット200には粗面化パッド104及び研磨パッド105を洗浄する洗浄液供給ノズルやコンディショナを搭載してもよい。このように、同一の筐体内に粗面化処理ユニット100
と研磨ユニット200とを備えることで、基板WFの搬送が省略されることから、処理速度が増加する。
【0061】
図6は、一実施形態による、平坦化装置10を概略的に示す側面図である。
図6に示される平坦化装置10においては、同一のテーブル102上の同一のパッド107上で基板WF粗面化およびその後の研磨を行うことができる。
図6の実施形態は粗面化処理ユニット100であり、また同時に研磨ユニット200でもある。図示の実施形態は、平坦な上面を備えるテーブル102を有する。テーブル102は、図示しないモータ等の駆動機構により回転可能に構成される。テーブル102の上面には、パッド107が貼り付けられる。パッド107は粗面化パッドおよび研磨パッドとしての機能を備える。
図6に示される実施形態において、パッド107は、粗面化および研磨の対象である基板WFよりも大きな寸法である。図示の実施形態は、基板WFを保持するための保持ヘッド106を備える。保持ヘッド106は、回転可能なシャフト108に連結されている。シャフト108は、図示しない駆動機構により保持ヘッド106とともに回転可能である。基板WFは保持ヘッド106の下面に真空吸着により支持されている。保持ヘッド106は、パッド107の表面に垂直な方向に移動可能に構成される。また、保持ヘッド106は、テーブル102の平面内、たとえばテーブル102の半径方向に移動可能なアーム109に接続されている。図示の実施形態は、基板WFの表面を粗面化するための粗面化粒子を分散させた液体をパッド107上に供給するための粗面化粒子供給ノズル110、および洗浄用の液体を供給するための洗浄液供給ノズル111を備える。一実施形態において、粗面化粒子供給ノズル110および洗浄液供給ノズル111は、テーブル102上のパッド107の固定された一定の位置に粗面化粒子を供給するものとしてもよく、移動可能としてもよい。また、図示の実施形態は、パッド107上にスラリーを供給するためのスラリー供給ノズル114を備える。一実施形態において、スラリー供給ノズル114は、テーブル102上のパッド107の固定された一定の位置にスラリーを供給するものとしてもよく、移動可能としてもよい。図示の実施形態における基板WFの平坦化工程について説明する。まず粗面化粒子を含む液体を粗面化粒子供給ノズル110よりパッド107に供給した状態で、保持ヘッド106に保持された基板WFをパッド107に押圧し、かつ基板WFとパッド107とを相対運動させることで、基板WFの被処理面を粗面化する。次に、洗浄液供給ノズル111より洗浄液を供給することで基板WFの被処理面及びパッド107上に残留した粗面化粒子を含む液体及び粗面化処理により発生した加工生成物を除去する。その後、基板WFをパッド107より退避させた状態でコンディショナ120によるパッド107のコンディショニングを行うが、本コンディショニングは基板WFの被処理面及びパッド107の洗浄時に同時に行ってもよい。その後、スラリー供給ノズル114よりCMPスラリーを供給した状態で、パッド107に供給した状態で、保持ヘッド106に保持された基板WFをパッド107に押圧し、かつ基板WFとパッド107とを相対運動させることで、基板WFの被処理面の平坦化を行う。このように、粗面化とCMPを同一のユニットで実施することで、基板WFの搬送が省略されて処理速度が増加する。
【0062】
図15は、一実施形態による、平坦化装置10を概略的に示す側面図である。
図6に示される平坦化装置10においては、テーブル132上に支持された基板WFを同一のパッド137を用いて粗面化およびその後の研磨を行うことができる。
図15の実施形態は粗面化処理ユニット100であり、また同時に研磨ユニット200でもある。
図15に示される実施形態は、平坦な上面を備えるテーブル132を有する。テーブル132は、図示しないモータ等により回転可能に構成される。テーブル132の上面には、真空吸着等により基板WFを固定することが可能に構成される。
図15に示される実施形態による平坦化装置10、ヘッド134を備える。ヘッド134は、回転可能なシャフト136に連結されている。シャフト136は、図示しない駆動機構によりヘッド134とともに回転可能である。ヘッド134の下面に、パッド137が取り付けられている。シャフト136は、揺動可能なアーム109に接続されている。
図15に示される実施形態において、パ
ッド137は、粗面化および研磨の対象である基板WFよりも小さな寸法である。ヘッド134は、テーブル132上の基板WFの表面に垂直な方向に移動可能に構成される。また、ヘッド134は、アーム109により、テーブル132の平面内、たとえばテーブル132の半径方向に移動可能に構成される。図示の実施形態は、粗面化粒子供給ノズル110を備える。図示の実施形態は、基板WFの表面を粗面化するための粗面化粒子を分散させた液体を基板WF上に供給するための粗面化粒子供給ノズル110、及び洗浄用の液体を供給するための洗浄液供給ノズル111を備える。一実施形態において、粗面化粒子供給ノズル110及び洗浄液供給ノズル111は、テーブル132上の基板WFの固定された一定の位置に粗面化粒子を供給するものとしてもよく、移動可能としてもよい。また、図示の実施形態は、基板WF上にスラリーを供給するためのスラリー供給ノズル114を備える。一実施形態において、スラリー供給ノズル114は、テーブル132上の基板WFの固定された一定の位置にスラリーを供給するものとしてもよく、移動可能としてもよい。図示の実施形態での基板WFの平坦化工程について説明する。まず粗面化粒子を含む液体を粗面化粒子供給ノズル110より基板WFに供給した状態で、処理ヘッド134に保持されたパッド137を基板WFに押圧し、かつ基板WFとパッド137とを相対運動させることで、基板WFの被処理面を粗面化する。次に、洗浄液供給ノズル111より洗浄液を供給することで基板WFの被処理面及びパッド137上に残留した粗面化粒子を含む液体及び粗面化処理により発生した加工生成物を除去する。なお、この際、図示しないがコンディショナ120によるパッド137のコンディショニングを行っても良い。更に、スラリー供給ノズル114よりCMPスラリーを基板WF上に供給した状態で、処理ヘッド134に保持されたパッド137を基板WFに押圧し、かつ基板WFとパッド137とを相対運動させることで、基板WFの被処理面の平坦化を行う。このように、粗面化とCMPを同一ユニットにて実施することで、基板WFの搬送が省略されることから、処理速度が増加する。
【0063】
以下では、一実施形態による基板の表面を平坦化するための平坦化方法を
図12〜
図14とともに説明する。
図12は、一実施形態による、配線部を含む基板表面にCu層が成膜された基板を平坦化するときの工程を示す断面図である。
図12(a)は、絶縁膜51に配線溝52が形成された基板WFにバリアメタル53がPVD、CVD、ALD等の方法にて成膜され、更にバリアメタルの上層にPVD等の方法でCuシード膜が成膜され、その後に電解めっき等の方法でCu層54が形成された状態を示している。成膜されたCu層54には下層の配線構造(配線幅や密度)や、電解めっきの成膜条件に起因してCu層54の表面に段差が形成される。特に、細幅の配線密集部ではめっき時に複数の配線を横断するような寸法の大きな段差(
図12(a)の左側の凸部)が形成されることもある。
【0064】
図13は、一実施形態による、基板の表面を平坦化するための方法を示すフローチャートである。
図12(a)の状態にある基板WFの被処理面を平坦化する場合を考える。一実施形態において、まず基板の表面を粗面化する(S102)。基板WFの被処理面の粗面化は、上述した任意の粗面化処理ユニット100を使用して行うことができる。かかる粗面化は、基板WFの表面に形成されている大きな凸部の寸法を小さくすることが目的であるので、粗面化は基板WFの表面に形成された凸部に優先的に施されることが好ましい。また、粗面化処理により形成される凹凸の高さは、処理対象である基板WFに形成されている初期段差の高さに応じて決めることができる。たとえば、粗面化処理により形成される凹凸の高さが、基板WFに形成されている最大初期段差の80%以下とすることができる。あるいは、平均初期段差の80%以下としてもよい。たとえば、最大初期段差が1.0μmであるなら、粗面化処理により形成される凹凸の高さは0.8μm以下とすることが好ましい。これは一般的なCMPにおける段差解消率は80%前後であるので、粗面化処理により初期段差の80%以上の高さの凹凸が形成されると、粗面化処理で形成された凹凸が後の研磨工程において除去しきれない恐れがあるからである。また、粗面化によ
り形成される凹凸の平均ピッチ(隣接する凹部または凸部の距離の平均)は100μm以下であることが望ましい。CMPにおける段差解消は凹凸の幅に大きく依存し、100μm以上では段差解消率が大幅に低下するからである。粗面化処理に使用する粗面化粒子のサイズや種類、また粗面化処理における粗面化パッド104、138と基板WFとの接触圧力、処理時間などは、所望の粗面化が達成されるように適宜選択する。一般的には、粗面化する対象の層が硬い層であれば、粗面化粒子も硬いものを使用し、粗面化で大きな凹凸を形成する場合は、相対的に大きな粒子の粗面化粒子を使用する。また、基板WFの表面に形成されている初期段差が小さい場合、粗面化粒子の濃度を小さくしたり、粗面化粒子の供給量を小さくしたり、断続的に粗面化粒子を供給したりしてもよい。また、粗面化の対象層の膜厚が非常に小さい場合やLow−k材料のように脆弱な材料である場合には、粗面化により形成される凹凸が大きくなりすぎることが懸念される。そのような場合、粗面化処理の前に、基板WFの表面に保護膜を形成してから粗面化処理をしてもよい。保護膜は、たとえば、レジストのような有機系溶剤を塗布したり、スピンコートなどにより形成することができる。
図12(b)は、粗面化された基板WFを示す断面図である。
【0065】
図13に示されるように、基板WFを粗面化したら、次に基板WFを洗浄する(S104)。粗面化後に基板WFを洗浄しないと、粗面化処理に使用した粗面化粒子が、後の研磨工程において残留した粗面化粒子が基板WFにスクラッチを生じさせる恐れがあるからである。しかし、粗面化後の基板WFの洗浄が不要であれば洗浄工程は省略してもよい。たとえば、粗面化粒子が、後の研磨工程で使用するスラリーに含まれる粒子と同一種類で粒子サイズが同程度であれば、粗面化粒子が研磨工程でスクラッチ等を生じさせる恐れは少ないので、洗浄処理を省略してもよい。
【0066】
次に、粗面化および洗浄した基板を研磨する(S106)。基板WFの研磨はCMPなどにより行うことができる。基板WFの研磨は任意のCMP装置により行うことができる。研磨前に基板の表面を粗面化しているので、寸法の大きな凸部が存在せず、寸法の大きな凸部で生じていた研磨速度の低下の問題を解消ないし緩和することができる。
図12(c)は、粗面化後の基板を研磨した基板を示す断面図である。
図12(a)に示した下層の配線構造(配線幅や密度)や、電解めっきの成膜条件に起因して発生していた初期段差が均一に解消されることで、ディッシングやエロ―ジョンが軽減される。
【0067】
基板WFの研磨が終了したら、基板WFを洗浄し、乾燥させる(S108)。このように基板WFの平坦化が終了したら、基板WFをカセット24(
図2)に戻し、次の工程へ基板WFが送られる。
【0068】
図14は、一実施形態による、基板の表面を平坦化するための方法を示すフローチャートである。本実施形態による平坦化方法においては、まず、平坦化する基板WFの表面に形成されている初期の段差を測定する(S202)。測定方法は任意であるが、たとえばレーザー顕微鏡(共焦点方式)や、位相差干渉方式などで段差形状を直接測定する方式や、膜厚測定を利用して測定膜厚差により段差形状を間接的に求める。次に、測定した段差が目標値未満か否かを判断する(S204)。なお、本測定については、平坦化装置内に測定部を設けて測定してもよく、また平坦化装置外にて測定してもよい。かかる目標値は、たとえば平均値または最大値として100nmとすることができる。基板WFの初期段差が目標値以上であれば、目標値と現状値との差分から求めた段差形状の高さ及びピッチに基づき、基板WFの条件を決定した後、基板WFの被処理面を粗面化し、その後粗面化した基板WFの被処理面を研磨して平坦化する(S206〜S212)。なお、その際、粗面化処理の前処理として、図示はしないが、基板WFの表面に保護膜を形成する工程を入れても良く、初期段差に比べて粗面化工程で大きな凹凸ができないように保護膜を形成する。保護膜は、上述したようにレジストのような有機系溶剤を塗布したり、スピンコートなどにより形成することができる。基板の粗面化処理から研磨による粗面化した被処理
面の平坦化までは、
図13のS102〜S108と同様である。基板WFの初期段差が目標値未満である場合、まず基板WFを所定残膜厚まで研磨する(S214)。基板WFの研磨はたとえば任意のCMP装置などの研磨ユニット200により行うことができる。基板WFを研磨ユニット200にて所定残膜厚まで研磨後、必要であれば洗浄および乾燥を行う。その後、再び基板WFの表面の段差を測定し(S216)、測定した段差が目標値以上か否かを判断する(S218)。かかる目標値は、たとえば平均値または最大値として10nmとすることができる。基板WFの表面の段差が目標値未満の場合、基板WFの平坦化を終了する。基板WFの表面の段差が目標値以上の場合、基板を粗面化してから研磨する(S222〜S226)。なお、その際、粗面化処理の前処理として、図示はしないが、基板WFの表面に保護膜を形成する工程を入れても良い。基板WFを一度研磨しているので、基板WFの表面に形成されている段差は小さくなっているので、初期段差に比べて粗面化工程で大きな凹凸ができないように保護膜はより効果的である。保護膜は、上述したようにレジストのような有機系溶剤を塗布したり、スピンコートなどにより形成することができる。