特許第6895898号(P6895898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6895898(メタ)アクリレート系重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895898
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/18 20060101AFI20210621BHJP
   C08F 4/52 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C08F20/18
   C08F4/52
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-561147(P2017-561147)
(86)(22)【出願日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2017000729
(87)【国際公開番号】WO2017122706
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-3613(P2016-3613)
(32)【優先日】2016年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】岡部 史彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 享
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/009083(WO,A1)
【文献】 特開2000−063439(JP,A)
【文献】 特開平03−031307(JP,A)
【文献】 新実験化学講座,1978年 5月20日,19巻 高分子化学I,61−63頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/18
C08F 4/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量Mwが50,000〜500,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、(メタ)アクリレート系重合体(A)を構成する全構造単位の質量に対する上記一般式(1)で表される構造単位の含有量が40〜80質量%であり、該(メタ)アクリレート系重合体(A)は、(メタ)アクリレート系重合性単量体として、下記一般式(1)で表される構造単位となる炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸メチルのみが含有され、かかる(メタ)アクリレート系重合性単量体のみを重合することにより得られる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法であり、下記一般式(1)で表される構造単位となる炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜80質量%とメタクリル酸メチルのみを含有する(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水酸基を有する化合物を0.2質量部以下で含有する原料を用いる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数10〜36のアルキル基を示す。)
【請求項2】
重量平均分子量Mwが50,000〜500,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、(メタ)アクリレート系重合体(A)を構成する全構造単位の質量に対する上記一般式(1)で表される構造単位の含有量が40〜80質量%であり、該(メタ)アクリレート系重合体(A)は、(メタ)アクリレート系重合性単量体として、下記一般式(1)で表される構造単位となる炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸メチルのみが含有され、かかる(メタ)アクリレート系重合性単量体のみを重合することにより得られる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法であり、下記一般式(1)で表される構造単位となる炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜80質量%とメタクリル酸メチルのみを含有する(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、フェノール性水酸基を有する化合物を0.005質量部以下で含有する原料を用いる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【化2】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数10〜36のアルキル基を示す。)
【請求項3】
(メタ)アクリレート系重合性単量体が、炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する、請求項1または2に記載の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【請求項4】
(メタ)アクリレート系重合性単量体が、炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜90質量%、炭素数10〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%、および炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%で含有する混合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【請求項5】
活性アルミナ、シリカ、活性白土、酸性白土、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライトおよびモレキュラーシーブスから選ばれる少なくとも1つを用いた吸着処理により、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物から、水酸基を有する化合物および/または重合禁止剤の少なくとも一部を除去したものを原料として用いる請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【請求項6】
アニオン重合によって製造される請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【請求項7】
有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合を実施する、請求項に記載の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート系重合体の製造方法に関する。より詳細には、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが小さい、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含有する(メタ)アクリレート系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関や変速機等に用いられる潤滑油の省燃費性能を改善するために添加される粘度指数向上剤として、Mw/Mnの小さい狭分散(メタ)アクリレート系重合体が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
このような狭分散(メタ)アクリレート系重合体の製造方法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆付加フラグメント化連鎖移動重合(RAFT)、ニトロキシド介在重合(NMP)、硼素介在重合および触媒移動重合(CCT)などが挙げられる(例えば特許文献4〜6参照)。しかしながら、これらの重合方法では重合反応が追い込みにくく、単量体を完全に消失させるためには反応時間がかかる、重合反応を途中で止めた場合には残存した単量体の除去が必要、末端が熱的に不安定で分解しやすい、などといった問題点があり、工業的に製造するには課題がある。
【0004】
これに対して、狭分散の(メタ)アクリレート系重合体の有用な製造方法としてアニオン重合(典型的にはリビング性の高いアニオン重合)が挙げられる(例えば特許文献7参照)。上記重合方法に比べて重合が追い込みやすく、得られた重合体の熱安定性も高いことから、工業的な製造方法として適しているが、工業的に容易に入手できる単量体をそのまま使用した場合には単量体中の水分や重合禁止剤、原料アルコール等の水酸基を有する化合物によって重合反応の触媒が失活してしまい、Mw/Mnが小さい狭分散(メタ)アクリレート系重合体を得ることができなかった。また、これら重合反応の触媒を失活させる水酸基を有する化合物の影響は使用する単量体の種類や重合体の分子量によって異なり、その濃度の閾値が明確になっていないこと、使用する(メタ)アクリレート系重合性単量体の沸点が比較的低い場合には、蒸留分離によって水酸基を有する化合物を除去できるが、炭素数が5以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体といった比較的高沸点の単量体の場合には、蒸留時の温度が高温となり、蒸留塔内で重合が起きて蒸留自体が困難となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−013957号公報
【特許文献2】特開2015−013962号公報
【特許文献3】国際公開第2014/017554号
【特許文献4】特表2003−515630号公報
【特許文献5】特表2008−518051号公報
【特許文献6】特表2007−512413号公報
【特許文献7】特開2007−084658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、炭素数の大きいアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する原料を用いて重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが小さい(メタ)アクリレート系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
[1]重量平均分子量Mwが50,000〜500,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、下記一般式(1)で表される構造単位を含む(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水酸基を有する化合物を0.2質量部以下で含有する原料を用いる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【0008】
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数10〜36のアルキル基を示す。)
[2]重量平均分子量Mwが50,000〜500,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.6以下である、下記一般式(1)で表される構造単位を含む(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対してフェノール性水酸基を有する化合物を0.005質量部以下で含有する原料を用いる(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
【0009】
【化2】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数10〜36のアルキル基を示す。)
[3](メタ)アクリレート系重合体(A)を構成する全構造単位の質量に対する、上記一般式(1)で表される構造単位の含有量が、40〜80質量%である、[1]または[2]の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[4](メタ)アクリレート系重合性単量体が、炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する、[1]〜[3]のいずれか1つの(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[5](メタ)アクリレート系重合性単量体が、炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜90質量%、炭素数10〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%、および炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%含有する混合物である、[1]〜[4]のいずれか1つの(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[6]活性アルミナ、シリカ、活性白土、酸性白土、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライトおよびモレキュラーシーブスから選ばれる少なくとも1つを用いた吸着処理により、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物から、水酸基を有する化合物および/または重合禁止剤の少なくとも一部を除去したものを原料として用いる、[1]〜[5]のいずれか1つの(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[7]アニオン重合によって製造される、[1]〜[6]のいずれか1つの(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[8]有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合を実施する、[7]の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法。
[9][1]〜[8]のいずれか1つの製造方法により得られる(メタ)アクリレート系重合体(A)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の(メタ)アクリレート系重合体の製造方法により、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが小さい、炭素数の大きいアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルから形成される構成単位を含有する(メタ)アクリレート系重合体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「メタクリレート」と「アクリレート」との総称を意味する。
【0012】
〔(メタ)アクリレート系重合性単量体〕
本発明で使用する(メタ)アクリレート系重合性単量体には、下記一般式(1)で表される構造単位となるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含有される。
【0013】
【化3】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数10〜36のアルキル基を示す。)
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸n−ノナデシル、(メタ)アクリル酸n−エイコシル、(メタ)アクリル酸n−ヘンエイコシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸n−トリコシル、(メタ)アクリル酸n−テトラコシル、(メタ)アクリル酸n−ペンタコシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプタコシル、(メタ)アクリル酸n−オクタコシル、(メタ)アクリル酸n−ノナコシル、(メタ)アクリル酸n−トリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘントリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−トリトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−ペンタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサトリアコンチル等の直鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、(メタ)アクリル酸2−ブチルオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−n−オクチル−n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸1−n−ヘキシル−n−トリデシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−n−ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソイコシル、(メタ)アクリル酸1−n−オクチル−n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2−n−デシル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸2−n−ドデシル−n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸イソトリアコンチル、(メタ)アクリル酸2−n−テトラデシル−n−ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2−n−ヘキサデシル−n−ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2−n−ヘキサデシル−n−イコシルおよび(メタ)アクリル酸2−n−テトラデシル−n−ドコシル等の分岐アルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。
【0014】
上記炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、潤滑油などの粘度指数向上剤として使用した場合の粘度指数向上効果の観点からは、炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0015】
これら炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、粘度指数向上剤として用いた場合の粘度指数向上効果および潤滑油組成物とした場合の剪断粘度安定性の観点から、炭素数14〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数16〜28のアルキル基がさらに好ましく、炭素数16〜24のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
また、前述の(メタ)アクリレート系重合性単量体には、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の(メタ)アクリレート系重合性単量体が含有されていてもよい。かかる他の(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロドデシル等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビフェニル等の芳香族炭化水素を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のエーテル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0018】
また、上記他の(メタ)アクリレート系重合性単量体として、炭素数1〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含有されていてもよい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル等の炭素数1〜9の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の炭素数3〜9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが含まれていてもよい。
【0019】
炭素数1〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、潤滑油などの粘度指数向上剤として使用した場合の粘度指数向上効果の観点からは、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
【0020】
上記他の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、粘度指数向上剤として用いた場合の粘度指数向上効果および潤滑油組成物とした場合の剪断粘度安定性の観点からは、炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数10〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する混合物が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、炭素数12〜20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および炭素数16〜28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する混合物がより好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体には、炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれていれば特に制限はないが、粘度指数向上剤として用いた場合の粘度指数向上効果の観点からは、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体は、炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜90質量%、炭素数10〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%、および炭素数10〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5〜60質量%を含有する混合物であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを10〜60質量%、炭素数12〜20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜60質量%、および炭素数16〜28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜60質量%を含有する混合物であることがより好ましい。
【0023】
〔(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む原料中の水酸基を有する化合物〕
本発明において、狭分散の(メタ)アクリレート系重合体(A)を得るには、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む原料中の水酸基を有する化合物の濃度を制御することが重要である。原料中に含まれる水酸基を有する化合物には特に制限はなく、例えば水、フェノール性水酸基を有する化合物、アルコール性水酸基を有する化合物(例えば、アルコールなど)を挙げることができる。
【0024】
フェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、(メタ)アクリレート系重合性単量体の保存安定性を確保する重合禁止剤などとして用いられる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ハイドロキノン、メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどが挙げられる。なお、重合禁止剤としては、重合禁止効果の高い、ハイドロキノン、メトキシフェノール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましく使用される。
【0025】
原料中に含まれるアルコール性水酸基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系重合性単量体に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対応するアルコールが挙げられる。特に、炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対応する炭素数10〜36のアルキル基を有するアルキルアルコールは沸点が高く、原料中に含まれる場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに影響を与えることなく完全に除去することは困難である。即ち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、一般に該アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応または該アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸メチルとのエステル交換反応等により合成されるが、該アルキルアルコールに対する反応率を100%にまで追込むのが困難であること、未反応のアルキルアルコールを減圧蒸留により除去することが困難であること、等により残存し易いことによる。
【0026】
原料中の水酸基を有する化合物の割合は、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以下である。
【0027】
(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造に与える影響を考慮すると、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水は0.002質量部以下であることが好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物は、0.005質量部以下であることが好ましく、アルコール性水酸基を有する化合物は0.2質量部以下であることが好ましい。
【0028】
また、原料中の水酸基を有する化合物の割合は、(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造に与える影響を考慮すると、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水は0.00001質量部以上であることが好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物は、0.00001質量部以上であることが好ましく、アルコール性水酸基を有する化合物は0.0001質量部以上であることが好ましい。
【0029】
水およびアルコール性水酸基を有する化合物の下限値が上記値である理由は、原料に含まれる水またはアルコール性水酸基を有する化合物をこれ以上除去することは、除去効率、経済性の観点から困難なためである。また、フェノール性水酸基を有する化合物の下限値が上記値である理由は、原料に含まれる(メタ)アクリレート系重合性単量体の保存安定性確保のためである。
【0030】
特に、本発明の(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料に含まれる炭素数10〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、沸点が高く、一般には、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む原料には、水酸基を有する化合物の残存量が多い傾向にある。
【0031】
(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料に含まれる水酸基を有する化合物の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーを用い、内部標準法、絶対検量線法によって求めることができる。
【0032】
(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料に含まれる水酸基を有する化合物の含有量を低減する方法に制限は無く、例えば、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物から蒸留、再結晶などにより水酸基を有する化合物の含有量を低減する方法、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物から吸着材を用いた吸着処理により水酸基を有する化合物を低減する方法などが挙げられ、さらに(メタ)アクリレート系重合性単量体の製造時に原料アルコールを消費させることによって残存量を抑える方法なども挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む原料の回収率および操作の簡便さの観点から、吸着処理により水酸基を有する化合物の含有量を低減する方法が好ましい。
【0034】
上記吸着材としては、水酸基を有する化合物を吸着除去することが可能な限り特に制限なく使用できるが、吸着効率の高さから、活性アルミナ、シリカ、活性白土、酸性白土、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト、モレキュラーシーブスが好ましい。中でも、活性アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブスがより好ましい。
【0035】
吸着処理の方法としては、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物と吸着材とをバッチ式で混合した後、撹拌または静置する方法、吸着材を充填した充填塔に(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物を連続的に導入する方法などが挙げられる。
【0036】
吸着処理は、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物を溶媒に希釈してから行ってもよい。使用する溶媒としては、吸着処理に悪影響を及ぼさない限り特に限定されず、例えばペンタン、n−ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル;などが挙げられる。これらの中でも、その後の重合反応にそのまま使用できること、溶媒の回収精製が容易であることなどの観点から、芳香族炭化水素が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
水酸基を有する化合物の含有量を低減する方法を実施する対象である混合物は、2種以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体を含んでいてもよいし、1種の(メタ)アクリレート系重合性単量体のみを含んでいてもよい。上記方法を実施する対象としては、適当な条件を決めやすいこと、水酸基を有する化合物を低減しやすいことなどから、1種の(メタ)アクリレート系重合性単量体のみを含む混合物が好ましい。したがって、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料として、2種以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む原料を用いる場合には、(メタ)アクリレート系重合性単量体の種類が異なる、1種の(メタ)アクリレート系重合性単量体のみを含む混合物を複数種準備し、その少なくとも1つ以上に、水酸基を有する化合物の含有量を低減する方法を実施した後、複数種の混合物を所望の状態となるように混合することにより原料を作製することが好ましい一態様である。
【0038】
〔(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物の製造方法〕
本発明で得られる(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料となる(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物の製造方法は特に制限なく、公知または公知に準ずる方法により製造できる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル等の短鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとアルキルアルコールをブレンステッド酸やルイス酸触媒の存在下でエステル交換させる方法や、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールを硫酸やp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸や固体酸などの酸触媒の存在下でエステル化(縮合)させる方法、(メタ)アクリル酸クロリドまたは(メタ)アクリル酸無水物とアルキルアルコールをトリエチルアミンやピリジン等の塩基存在下で反応させる方法等を挙げることができる。
【0039】
(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物の反応液からの取得は、抽出、再結晶等の公知の方法によって行うことができ、その方法において特に制限は無い。例えば、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとの反応による反応液からの(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物は、例えば(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールを、トルエンやヘキサン等の有機溶媒中、硫酸やp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸や固体酸等の酸触媒存在下で加熱し、共沸脱水によって生成した水を系外に除去しながら反応を行って反応液を得た後に、該反応液に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することによって酸触媒を中和、抽出し、その後有機層中の溶媒を留去することによって取得できる。
【0040】
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物の製造においては、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ベンゾキノンなどのキノン類;メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、および2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールから選ばれる少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する化合物;クペロン、フェノチアジンが挙げられる。なお、重合禁止剤としては、重合禁止効果の高い、ハイドロキノン、メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましく使用される。
【0041】
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物の製造する際の重合禁止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの重合防止の観点から、原料の(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステルの合計質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、当該使用量は、生成物の有用性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0042】
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物中の上記重合禁止剤の含有量は、保管中の重合防止の観点から、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して好ましくは0.00001質量部以上、より好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上である。また、当該含有量は、重合で使用する前の除去の容易さから、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。
【0043】
(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料は、(メタ)アクリレート系重合性単量体を1種のみを含む混合物であってもよいし、(メタ)アクリレート系重合性単量体2種以上を含む混合物であってもよい。原料として2種以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む混合物を用いる場合には、(メタ)アクリレート系重合性単量体を1種以上含む複数の混合物を準備し、これらを混合することにより、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料として用いてもよい。
【0044】
〔(メタ)アクリレート系重合体(A)の物性〕
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」と表記する)は50,000〜500,000であり、好ましくは100,000〜400,000、より好ましくは150,000〜300,000である。
【0045】
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)は、Mwと数平均分子量(以下、「Mn」と表記する)の比(Mw/Mn、以下、この値を「分子量分布」と表記する。)は1.6以下であり、好ましくは1.01〜1.6、より好ましくは1.05〜1.6、さらに好ましくは1.05〜1.5である。このような範囲内にある分子量分布を有する(メタ)アクリレート系重合体を用いると、粘度指数向上剤として用いた場合の粘度指数向上効果および潤滑油組成物とした場合の剪断粘度安定性に優れた重合体が得られる。MwおよびMnは、例えば、(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造の際に使用する(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む原料中の水酸基を有する化合物、重合禁止剤の量に依存する。MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定から求められたポリスチレン換算分子量の値である。
【0046】
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)中、上記一般式(1)で表される構造単位の含有量は、40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%が好ましい。この範囲にすることで、粘度指数向上剤として使用する際に、低温においても基油へ溶解し易くなる。
【0047】
〔(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法〕
本発明の(メタ)アクリレート系重合体(A)の製造方法は特に制限ないが、Mw/Mnを所望の範囲とするためには、該製造方法は、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆付加フラグメント化連鎖移動重合(RAFT)、ニトロキシド介在重合(NMP)、ヨウ素移動重合、(有機テルル、アンチモン、ビスマス等の)高周期ヘテロ元素を用いる重合、硼素介在重合、触媒移動重合(CCT)、およびコバルトやチタンなどの金属と炭素結合をドーマント種とする重合系(OMRP)などの精密ラジカル重合、ならびにアニオン重合(典型的にはリビング性の高いアニオン重合)が好ましい。なかでも、熱安定性が高い(メタ)アクリレート系重合体(A)が得られることから、アニオン重合がより好ましい。かかるアニオン重合法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号参照)、有機希土類金属錯体やメタロセン型金属錯体を重合開始剤としてアニオン重合する方法(特開平6−93060号参照)などが挙げられる。
【0048】
なかでも、Mw/Mnのより小さい重合体が得られるために粘度指数向上剤として使用した場合の剪断粘度安定性が良好となること、シンジオタクティシティの高い重合体が得られるために粘度指数向上剤として使用した場合の粘度指数向上効果が高くなることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0049】
(メタ)アクリレート系重合体(A)を製造するための方法として好ましく採用される、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でのアニオン重合する方法は、例えば、有機リチウム化合物と、下記の一般式(2):
AlRabc (2)
(一般式(2)中、Ra、RbおよびRcはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、またはRaが前記したいずれかの基を表し、RbおよびRcは一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を表す。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4などのエーテル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジルなどの含窒素化合物をさらに存在させて(メタ)アクリレート系重合性単量体を重合させることにより行なわれる。
【0050】
上記アニオン重合する方法で用いられる有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウムなどのアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、リチウムナフタレンなどのアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、トリチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウムなどのアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、イソプロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、sec−ブトキシリチウム、tert−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、ヘプチルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウムなどのリチウムアルコキシドの1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
また、上記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウムなどのジアルキルフェノキシアルミニウム;メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルキルジフェノキシアルミニウム;メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルコキシジフェノキシアルミニウム;トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリフェノキシアルミニウムなどの1種または2種以上を用いることができる。中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどが、取り扱いが容易であり、しかも比較的緩和な温度条件下で失活なく(メタ)アクリレート系重合性単量体の重合を進行させることができる点から特に好ましく用いられる。
【0052】
上記アニオン重合する方法は、好ましくは溶媒中で行なう。該溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されず、例えばペンタン、n−ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。中でも、生成する単独重合体または共重合体の溶解度が高いこと、廃水への混入が生じにくいこと、溶媒の回収精製が容易であることなどの観点から、芳香族炭化水素が好ましく、トルエン、キシレンがより好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、上記溶媒は、予め脱気および脱水処理して精製しておくことが、重合反応を円滑に進行させる点から好ましい。
【0053】
また、(メタ)アクリレート系重合体(A)を製造する際には、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリレート系重合体(A)を製造する際の重合温度は、使用する(メタ)アクリル酸エステルの種類、重合反応液中の濃度などに応じて適切に選択すればよいが、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でのアニオン重合する方法により製造する場合には、重合時間が短縮でき、また、重合中の失活反応が少ないことなどから、通常−20〜80℃の範囲の温度が好ましい。これは、従来の(メタ)アクリレート系重合性単量体のアニオン重合条件と比較して極めて温和な温度条件であるので、本発明の方法を工業的に実施するに際しては、従来の方法と比較して冷却設備のコストを大幅に削減することができる。
【0055】
(メタ)アクリレート系重合体(A)を製造するための重合方式としては、例えばバッチ重合方式、連続重合方式などを用いることができる。
【0056】
(メタ)アクリレート系重合体(A)は、例えば、製造する最終の反応器より連続的に流出する重合反応液に、重合停止剤を添加することによって重合反応を停止させることにより得ることができる。重合停止剤としては、例えば水、メタノール、酢酸、塩酸などのプロトン性化合物などが挙げられる。重合停止剤の使用量は特に限定されないが、通常、使用する重合開始剤に対して1〜100倍モルの範囲である。
【0057】
重合停止後の重合反応液から分離取得した(メタ)アクリレート系重合体(A)中に、使用した有機アルミニウム化合物に由来するアルミニウムが残存していると、(メタ)アクリレート系重合体(A)や、それを用いた材料の物性低下を生じる場合があるので、有機アルミニウム化合物に由来するアルミニウムを重合終了後に除去することが好ましい。該アルミニウムの除去方法としては、重合停止剤を添加した後の重合反応液を、酸性水溶液を用いた洗浄処理する方法、イオン交換樹脂などの吸着材を用いた吸着処理などに付する方法などが有効である。
【0058】
重合を停止させ、アルミニウムの除去処理操作を行なった後の重合反応液から(メタ)アクリレート系重合体(A)を分離取得するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、重合反応液を、(メタ)アクリレート系重合体(A)の貧溶媒に注いで該(メタ)アクリレート系重合体(A)を析出させる方法;重合反応液から溶媒を減圧下に留去して(メタ)アクリレート系重合体(A)を取得する方法などが挙げられる。また、まず薄膜蒸発装置などを用いて、重合反応液から溶媒および低沸点成分の大部分を除去した後、得られた残留物を連続的に溶融押出器に供給し、かかる溶融押出器中において減圧下に溶媒などを留去して、(メタ)アクリレート系重合体(A)をストランド、ペレットまたは餅状ブロックとして回収することも可能である。また、重合反応液として取り出してもよいし、用いた溶媒よりも沸点の高い溶媒を加えて溶媒を除去することで、重合で用いた別の溶媒に溶解した溶液として取り出すことも可能である。
【0059】
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)は、単一の単量体から製造される単独重合体であっても、複数の単量体から製造される共重合体であってもよい。単独重合体としては、直鎖状であっても、スター型であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、スター型共重合体であってもよい。
【0060】
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)に酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体、摩耗防止剤(または極圧剤)、腐食防止剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、無灰摩擦調整剤などの他の添加剤を加えて使用してもよい。
【0061】
本発明の方法で製造される(メタ)アクリレート系重合体(A)は、分子量分布が狭く剪断粘度安定性等の力学特性に優れるため、粘度指数向上剤の他、ポリオレフィン改質剤、粘着剤、接着剤、プライマー、ハードコートなどの表面機能化コート剤等、様々な用途で使用できる。特に好ましくは、エンジンオイルへの溶解性が高く、エンジンオイルの粘度の温度依存性を下げられることから粘度指数向上剤として利用できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
【0063】
((メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量、アルコール性水酸基を有する化合物の含有量)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−2014に、カラムとしてGL Sciences Inc.製 InertCap 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を240℃に、検出器温度を300℃に、カラム温度を180℃から昇温速度10℃/分で280℃まで昇温して、10分間保持する条件にて測定を行った。(メタ)アクリレート系重合性単量体の純度は、ガスクロマトグラフィーで検出される単純面積から算出し、フェノール性水酸基を有する化合物およびアルコール性水酸基を有する化合物の含有量は、絶対検量線法から単量体100質量部に対する質量比として算出した。
【0064】
(原料中の水分量)
株式会社三菱化学アナリティック社製電量滴定方式カールフィッシャー水分計CA−200を用いて、単量体中の水分量を測定し、単量体100質量部に対する質量比として算出した。
【0065】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn))
下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、得られたクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量に換算したMw、Mn、Mw/Mnの値を算出した。なお、ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
【0066】
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
【0067】
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
(重合体中の単量体組成)
核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用い、樹脂10mgに対して重水素化クロロホルム1mL、室温、積算回数64回の条件にて、1H−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのうち、TMSを0ppmとした際の3.3〜4.2ppmに現れるエステル基の酸素原子に隣接するメチレンまたはメチン、メチル基由来のシグナルの面積値から(メタ)アクリレート系重合体(A)中の単量体に由来する構造単位の組成を算出した。
【0068】
(製造例1)
温度計、ガラス製ラシヒリングを充填した蒸留塔(内径2cm、長さ25cm)、ガラスキャピラリーを取り付けた500mLの三口フラスコに、2−オクチルドデカノールとメタクリル酸のエステル化(縮合)により合成したメタクリル酸2−オクチルドデシル((メタ)アクリレート系重合性単量体)を含む混合物(メタクリル酸2−オクチルドデシル98.67%;メタクリル酸2−オクチルドデシル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0101質量部、2−オクチルドデカノール0.2533質量部、および水0.0203質量部を含む)を455g、重合禁止剤としてアデカスタブAO−60(フェノール性水酸基を有する化合物:株式会社アデカ製)を0.46g入れ、ガラスキャピラリーから空気をバブリングしながら、内圧0.1kPa、内温214〜234℃、塔頂温度185〜191℃で18時間かけ、70g程度に留分を分けながら蒸留を行った。そのうち2−オクチルドデカノールおよびメトキシフェノールの含有量が少ない留分を(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料として、82.1g(回収率18.0%)の原料(1)を得た。ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計により測定を行った結果、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(1)中、メタクリル酸2−オクチルドデシルの含有量は99.54%であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水の含有量は0.0007質量部、2−オクチルドデカノールの含有量は0.017質量部であり、メトキシフェノールおよびアデカスタブAO−60は検出されなかった。
【0069】
(製造例2)
温度計、メカニカルスターラーを取り付けた1L三口フラスコに、n−ステアリルアルコールとメタクリル酸のエステル化(縮合)により合成したメタクリル酸n−ステアリル((メタ)アクリレート系重合性単量体)を含む混合物(メタクリル酸n−ステアリル99.26%;メタクリル酸n−ステアリル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0252質量部、n−ステアリルアルコール0.3425質量部、および水0.0181質量部を含む)250gとイソプロパノール583gとを入れ、25℃で撹拌することによってメタクリル酸n−ステアリルを溶解させた。その後、4時間かけて−20℃まで冷却した。析出した結晶をろ過、乾燥することによって、243.3g(回収率97.3%)の結晶性の(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(2)を得た。ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計により測定を行った結果、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(2)中、メタクリル酸n−ステアリルの含有量は99.67%であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水の含有量は0.001質量部、n−ステアリルアルコールの含有量は0.006質量部であり、メトキシフェノールは検出されなかった。
【0070】
(製造例3)
磁気撹拌子を入れた500mL三口フラスコに、2−オクチルドデカノールとメタクリル酸のエステル化(縮合)により合成したメタクリル酸2−オクチルドデシル((メタ)アクリレート系重合性単量体)を含む混合物(メタクリル酸2−オクチルドデシル98.67%;メタクリル酸2−オクチルドデシル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0101質量部、2−オクチルドデカノール0.2533質量部、および水0.0203質量部を含む)を90g、トルエンを210g、吸着材として水澤化学製活性アルミナGP−20を30g入れ、25℃で4時間撹拌させた。その後ろ過によって活性アルミナを除去し、エバポレーターを用いて液温35℃以下でトルエンを留去することによって、86.1gの液状の(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(3)を得た。ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計により測定を行った結果、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(3)中、メタクリル酸2−オクチルドデシルの含有量は98.88%であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水の含有量は0.0006質量部、2−オクチルドデカノールの含有量は0.14質量部であり、メトキシフェノールは検出されなかった。
【0071】
(製造例4)
磁気撹拌子を入れた500mL三口フラスコに、n−ステアリルアルコールとメタクリル酸のエステル化(縮合)により合成したメタクリル酸n−ステアリル((メタ)アクリレート系重合性単量体)を含む混合物(メタクリル酸n−ステアリル99.26%;メタクリル酸n−ステアリル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0252質量部、n−ステアリルアルコール0.3425質量部、および水0.0181質量部を含む)を90g、トルエンを210g、吸着材として水澤化学製活性アルミナGP−20を30g入れ、25℃で4時間撹拌させた。その後ろ過によって活性アルミナを除去し、エバポレーターを用いて液温35℃以下でトルエンを留去することによって、87.2gの液状の(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(4)を得た。ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計により測定を行った結果、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(4)中、メタクリル酸n−ステアリルの含有量は99.20%であり、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、水の含有量は0.0007質量部、2−ステアリルアルコールの含有量は0.11質量部であり、メトキシフェノールは検出されなかった。
【0072】
(製造例5)
製造例3によって得られたメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む原料(3)にp−メトキシフェノールを、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.0005質量部となるように添加することにより、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(5)を調製した。
【0073】
(製造例6)
製造例4によって得られたメタクリル酸n−ステアリルを含む原料(4)にp−メトキシフェノールを、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.0005質量部となるように添加することにより、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(6)を調製した。
【0074】
(製造例7)
製造例3によって得られたメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む原料(3)に2−オクチルドデカノールを、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.32質量部となるように添加することにより、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(7)を調製した。
【0075】
(製造例8)
製造例4によって得られたメタクリル酸n−ステアリルを含む原料(4)にn−ステアリルアルコールを、(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.36質量部となるように添加することにより、(メタ)アクリレート系重合体(A)の原料(8)を調製した。
【0076】
<実施例1>
特開2007−84658号公報を参考にして、以下の通りに(メタ)アクリレート系重合体を製造した。十分乾燥した2Lの三口フラスコの内部を窒素にて置換した後、室温にて、トルエン480g、1,2−ジメトキシエタン24g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.45Mトルエン溶液10gを入れ、さらに、sec−ブチルリチウム1.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液0.62gを加えた。続いて(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む製造例1で得た原料(1)30質量%、製造例2で合成した(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸ステアリルを含む製造例2で得た原料(2)30質量%、およびメタクリル酸メチル原料(株式会社クラレ製:メタクリル酸メチルの含有量99.9%以上;メタクリル酸メチル100質量部に対して、水の含有量0.0003質量部、メタノールの含有量0.0002質量部以下、重合禁止剤である2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールの含有量0.0001質量部)40質量%を含む混合物を原料((メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、アルコールの含有量 0.0070質量部、水の含有量 0.0006質量部、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量 検出限界以下)として85g加え、室温にて12時間攪拌した。反応液は、当初黄色に着色していたが、12時間攪拌後には無色となった。その後、メタノール1.0gを加え、重合反応を停止させた。得られた反応液を6.0kgのメタノール中に注いで白色沈殿物を析出させた。その後、この白色沈殿物を濾過により回収し、乾燥させることにより、メタクリレート系重合体80gを得た。
【0077】
得られたメタクリレート重合体の1H−NMR測定およびGPC測定を行った結果、ランダム共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は81800であり、数平均分子量(Mn)は75600であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
【0078】
また、得られたメタクリレート系重合体中の各単量体に由来する構造の質量比は、メタクリル酸メチルに由来する構造が40質量%、メタクリル酸ステアリルに由来する構造が30質量%、およびメタクリル酸2−オクチルドデシルに由来する構造が30質量%であることが分かった。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例2>
sec−ブチルリチウム1.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液 0.62gを、sec−ブチルリチウム0.64mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液0.39gに変更した以外は実施例1と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0080】
<実施例3>
sec−ブチルリチウム1.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液 0.62gを、sec−ブチルリチウム0.55mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液0.33gに変更した以外は実施例1と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0081】
<実施例4>
sec−ブチルリチウム1.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液 0.62gを、sec−ブチルリチウム0.44mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液0.27gに変更した以外は実施例1と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0082】
<実施例5>
sec−ブチルリチウム1.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液 0.62gを、sec−ブチルリチウム0.41mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液0.25gに変更した以外は実施例1と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0083】
<実施例6>
実施例3で使用した原料に替えて、(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む製造例3で得た原料(3)30質量%、(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸ステアリルを含む製造例4で得た原料(4)30質量%、およびメタクリル酸メチル原料(株式会社クラレ製:メタクリル酸メチルの含有量99.9%以上;メタクリル酸メチル100質量部に対して、水の含有量0.0003質量部、メタノールの含有量0.0002質量部以下、重合禁止剤である2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールの含有量0.0001質量部)40質量%を含む混合物を原料((メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、アルコールの含有量 0.0751質量部、水の含有量 0.0005質量部、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量 検出限界以下)として85g加える以外は実施例3と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0084】
<実施例7>
実施例3で使用した原料に替えて、(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む製造例5で得た原料(5)30質量%、(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸ステアリルを含む製造例6で得た原料(6)30質量%、およびメタクリル酸メチル原料(株式会社クラレ製:メタクリル酸メチルの含有量99.9%以上;メタクリル酸メチル100質量部に対して、水の含有量0.0003質量部、メタノールの含有量0.0002質量部以下、重合禁止剤である2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールの含有量0.0001質量部)40質量%を含む混合物を原料((メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、アルコールの含有量 0.0751質量部、水の含有量 0.0005質量部、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量 0.0003質量部)として85gを加えた以外は実施例3と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0085】
<比較例1>
実施例5で使用した原料に替えて、2−オクチルドデカノールとメタクリル酸のエステル化により合成したメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む混合物(メタクリル酸2−オクチルドデシル含有量98.67%;メタクリル酸2−オクチルドデシル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0101質量部、2−オクチルドデカノール0.2533質量部、および水0.0203質量部を含む)35質量%、n−ステアリルアルコールとメタクリル酸のエステル化により合成したメタクリル酸n−ステアリルを含む混合物(メタクリル酸n−ステアリル含有量99.26%;メタクリル酸n−ステアリル100質量部に対する含有量として、メトキシフェノール0.0252質量部、n−ステアリルアルコール0.3425質量部、および水0.0181質量部を含む)35質量%、およびメタクリル酸メチル原料(株式会社クラレ製:メタクリル酸メチルの含有量99.9%以上;メタクリル酸メチル100質量部に対して、水の含有量0.0003質量部、メタノールの含有量0.0002質量部以下、重合禁止剤である2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールの含有量0.0001質量部)30質量%含む混合物を原料((メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、アルコールの含有量 0.2066質量部、水の含有量 0.0134質量部、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量 0.0123質量部)として85g加えた以外は実施例5と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0086】
<比較例2>
実施例3で使用した原料に替えて、(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸2−オクチルドデシルを含む製造例7で得た原料(7)30質量%、製造例8で合成した(メタ)アクリレート系重合性単量体であるメタクリル酸ステアリルを含む製造例8で得た原料(8)30質量%、およびメタクリル酸メチル原料(株式会社クラレ製:メタクリル酸メチルの含有量99.9%以上;メタクリル酸メチル100質量部に対して、水の含有量0.0003質量部、メタノールの含有量0.0002質量部以下、重合禁止剤である2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールの含有量0.0001質量部)40質量%を含む混合物を原料((メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して、アルコールの含有量 0.2041質量部、水の含有量 0.0005質量部、フェノール性水酸基を有する化合物の含有量 検出限界以下)として85gを加えた以外は実施例3と同様にして、メタクリレート系重合体80gを得た。得られたメタクリレート系重合体の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
以上の結果から、水酸基を有する化合物(例えば、原料アルコール、水、重合禁止剤など)の量を(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以下にすることで、Mw/Mnが小さい(メタ)アクリレート系重合体を得ることができる。