特許第6896155号(P6896155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896155インクジェットインク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法
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  • 特許6896155-インクジェットインク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法 図000032
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896155
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20210621BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210621BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C09D11/38
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
【請求項の数】13
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2020-510709(P2020-510709)
(86)(22)【出願日】2019年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2019011273
(87)【国際公開番号】WO2019188522
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-60714(P2018-60714)
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭太
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−338361(JP,A)
【文献】 特開2010−066392(JP,A)
【文献】 特開2008−266561(JP,A)
【文献】 特開2011−073195(JP,A)
【文献】 特開2011−057791(JP,A)
【文献】 特開2015−120818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
アニオン基を有するポリマー、光酸発生剤、及び増感剤を含む粒子と、
を含有し、
前記粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数を粒子中アニオン価Aとし、前記粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数を粒子中光酸発生剤量Gとした場合に、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値が、−0.20以上0.20以下であり、
前記増感剤が、下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、及び下記式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるインクジェットインク組成物。
【化1】

式(S1)、式(S2)、及び式(S3)中、R11、R12、R21、R33、及びR34は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基を表し、n11、n12、n21、n33、及びn34は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。n11が2〜4の整数である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n12が2〜4の整数である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、n21が2〜4の整数である場合、複数のR21は、同一であっても異なっていてもよく、n33が2〜4の整数である場合、複数のR33は、同一であっても異なっていてもよく、n34が2〜4の整数である場合、複数のR34は、同一であっても異なっていてもよい。
式(S2)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は水酸基を表す。
式(S3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
【請求項2】
前記アニオン基が、カルボキシラト基である請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記光酸発生剤が、下記式(G1)で表される化合物及び下記式(G2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【化2】

式(G1)及び式(G2)中、R41、R42、R51、R52、及びR53は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n41、n42、n51、n52、及びn53は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。n41が2〜5の整数である場合、複数のR41は、同一であっても異なっていてもよく、n42が2〜5の整数である場合、複数のR42は、同一であっても異なっていてもよく、n51が2〜5の整数である場合、複数のR51は、同一であっても異なっていてもよく、n52が2〜5の整数である場合、複数のR52は、同一であっても異なっていてもよく、n53が2〜5の整数である場合、複数のR53は、同一であっても異なっていてもよい。
式(G1)中のX及び式(G2)中のXは、それぞれ独立に、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、又はヘキサフルオロヒ酸イオンを表す。
【請求項4】
前記光酸発生剤が、前記式(G2)で表される化合物を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記式(G2)中のXが、トリフルオロメタンスルホン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンである請求項4に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記増感剤が、前記式(S1)で表される化合物を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記粒子が、更に、式(SA)で表される化合物である増感助剤を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【化3】

式(SA)中、R61は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R62は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n62は、0〜4の整数を表す。n62が2〜4の整数である場合、複数のR62は同一であっても異なっていてもよい。
【請求項8】
前記粒子が、更に、ラジカル重合性モノマーを含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、更に、ラジカル重合性基を有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記粒子が、更に、ラジカル重合開始剤を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
基材上にインクジェット法によってインクを付与することによりインク膜を形成する工程と、形成された前記インク膜に、光を照射する工程と、光が照射された前記インク膜を加熱乾燥させて画像を得る工程と、を含む画像形成方法における前記インクとして用いられる、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物を製造する方法であって、
有機溶剤、酸基を有するポリマー、前記光酸発生剤、及び前記増感剤を含む油相成分と、水及び中和剤を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、前記粒子を形成する工程を有するインクジェットインク組成物の製造方法。
【請求項13】
基材上に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェット法によって付与することによりインク膜を形成する工程と、
形成された前記インク膜に、光を照射する工程と、
光が照射された前記インク膜を加熱乾燥させて画像を得る工程と、
を含む画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットインク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水と、ポリマーを含む粒子と、を含有するインクジェットインク組成物が知られている。
例えば、特許文献1には、分散性、及び固化が発生した場合の再分散性に優れ、かつ、高感度に硬化し、膜強度に優れた膜(例えば、画像)が得られるゲル粒子として、重合性基を有し、ウレタン結合及びウレア結合から選ばれる少なくとも1種の結合を含む三次元架橋構造を有し、光重合開始剤を内包しているゲル粒子が開示されており、更に、このゲル粒子と水とを含有するインク組成物が開示されている。
また、特許文献2には、良好な定着性と吐出性を有する水性インク組成物として、a)水系媒体と、b)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、c)水不溶性ビニルポリマーおよび水不溶性光開始剤を含む開始剤含有樹脂粒子と、を含む水性インク組成物が開示されている。
また、特許文献3には、インクの保存安定性、及び画像の定着性に優れた水性インクとして、コアとシェルを有する樹脂粒子、及び多価金属イオンを含有し、相対的にpHが低い記録媒体に画像を記録するための水性インクで、コアを構成する樹脂(C)における、アニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来するユニットの占める割合(質量%)が、樹脂全質量を基準として、5.00質量%以下であり、シェルを構成する樹脂(S)が、アニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来するユニットを有し、その割合(質量%)が、樹脂全質量を基準として、10.00質量%以上であり、シェルの膜厚が、3.0〜15.0nmであり、樹脂粒子のアニオン性基の一部が、多価金属イオンと錯体を形成しており、樹脂粒子及び錯体のアニオン性基の量、及び樹脂粒子の体積平均粒径が50.0〜400.0nmである水性インクが開示されている。
【0003】
特許文献1:国際公開第2016/052053号
特許文献2:特開2011−57791号公報
特許文献3:特開2017−101178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液体成分として水を含む、水性のインクジェットインク組成物によって形成された画像について、画像の精細さをより向上させることが求められる場合がある。また、上記画像の精細さを向上させようとした場合に、水性のインクジェットインク組成物の吐出安定性(詳細には、インクジェットノズルからの吐出安定性。以下同じ。)が低下する場合がある。
【0005】
本開示の一態様の課題は、精細さに優れた画像を形成でき、かつ、吐出安定性に優れるインクジェットインク組成物を提供することである。
本開示の別の一態様の課題は、上記インクジェットインク組成物を製造できるインクジェットインク組成物の製造方法を提供することである。
本開示の更に別の一態様の課題は、精細さに優れた画像を形成でき、かつ、インクの吐出安定性に優れる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の態様を含む。
<1> 水と、
アニオン基を有するポリマー、光酸発生剤、及び増感剤を含む粒子と、
を含有し、
粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数を粒子中アニオン価Aとし、粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数を粒子中光酸発生剤量Gとした場合に、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値が、−0.20以上0.20以下であり、
増感剤が、下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、及び下記式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるインクジェットインク組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
式(S1)、式(S2)、及び式(S3)中、R11、R12、R21、R33、及びR34は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基を表し、n11、n12、n21、n33、及びn34は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。n11が2〜4の整数である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n12が2〜4の整数である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、n21が2〜4の整数である場合、複数のR21は、同一であっても異なっていてもよく、n33が2〜4の整数である場合、複数のR33は、同一であっても異なっていてもよく、n34が2〜4の整数である場合、複数のR34は、同一であっても異なっていてもよい。
式(S2)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は水酸基を表す。
式(S3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
【0009】
<2> アニオン基が、カルボキシラト基である<1>に記載のインクジェットインク組成物。
<3> 光酸発生剤が、下記式(G1)で表される化合物及び下記式(G2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
式(G1)及び式(G2)中、R41、R42、R51、R52、及びR53は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n41、n42、n51、n52、及びn53は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。n41が2〜5の整数である場合、複数のR41は、同一であっても異なっていてもよく、n42が2〜5の整数である場合、複数のR42は、同一であっても異なっていてもよく、n51が2〜5の整数である場合、複数のR51は、同一であっても異なっていてもよく、n52が2〜5の整数である場合、複数のR52は、同一であっても異なっていてもよく、n53が2〜5の整数である場合、複数のR53は、同一であっても異なっていてもよい。
式(G1)中のX及び式(G2)中のXは、それぞれ独立に、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、又はヘキサフルオロヒ酸イオンを表す。
【0012】
<4> 光酸発生剤が、式(G2)で表される化合物を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<5> 式(G2)中のXが、トリフルオロメタンスルホン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンである<4>に記載のインクジェットインク組成物。
<6> 増感剤が、式(S1)で表される化合物を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<7> 粒子が、更に、式(SA)で表される化合物を含む<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
【0013】
【化3】
【0014】
式(SA)中、R61は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R62は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n62は、0〜4の整数を表す。n62が2〜4の整数である場合、複数のR62は同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
<8> 粒子が、更に、ラジカル重合性モノマーを含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<9> ポリマーが、更に、ラジカル重合性基を有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<10> 粒子が、更に、ラジカル重合開始剤を含む<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<11> 基材上にインクジェット法によってインクを付与することによりインク膜を形成する工程と、形成されたインク膜に、光を照射する工程と、光が照射されたインク膜を加熱乾燥させて画像を得る工程と、を含む画像形成方法におけるインクとして用いられる、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物。
<12> <1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物を製造する方法であって、
有機溶剤、酸基を有するポリマー、光酸発生剤、及び増感剤を含む油相成分と、水及び中和剤を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、粒子を形成する工程を有するインクジェットインク組成物の製造方法。
<13> 基材上に、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット法によって付与することによりインク膜を形成する工程と、
形成されたインク膜に、光を照射する工程と、
光が照射されたインク膜を加熱乾燥させて画像を得る工程と、
を含む画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、精細さに優れた画像を形成でき、かつ、吐出安定性に優れるインクジェットインク組成物が提供される。
本開示の別の一態様によれば、上記インクジェットインク組成物を製造できるインクジェットインク組成物の製造方法が提供される。
本開示の更に別の一態様の課題は、精細さに優れた画像を形成でき、かつ、インクの吐出安定性に優れる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例における画像の精細さの評価に用いた文字画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、化学式中の「*」は、結合位置を表す。
【0019】
本明細書において、「画像」の概念には、パターン画像(例えば、文字、記号、又は図形)だけでなく、ベタ画像も包含される。
本明細書において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
本明細書では、紫外線を、「UV(Ultra Violet)光」ということがある。
本明細書では、LED(Light Emitting Diode)光源から生じた光を、「LED光」ということがある。
本明細書において、「(メタ)アクリルポリマー」は、アクリルポリマー及びメタクリルポリマーの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本明細書において、ポリオキシアルキレン基、アミド基、ウレア基、及びウレタン基は、それぞれ、ポリオキシアルキレン結合、アミド結合、ウレア結合、及びウレタン結合を意味する。
【0020】
〔インクジェットインク組成物〕
本開示のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク」ともいう)は、水と、アニオン基を有するポリマー、光酸発生剤、及び増感剤を含む粒子(以下、「特定粒子」ともいう)と、を含有し、特定粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数を粒子中アニオン価Aとし、特定粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数を粒子中光酸発生剤量Gとした場合に、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値が、−0.20以上0.20以下である。
上記増感剤は、下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、及び下記式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
【化4】
【0022】
式(S1)、式(S2)、及び式(S3)中、R11、R12、R21、R33、及びR34は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基を表し、n11、n12、n21、n33、及びn34は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。n11が2〜4の整数である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n12が2〜4の整数である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、n21が2〜4の整数である場合、複数のR21は、同一であっても異なっていてもよく、n33が2〜4の整数である場合、複数のR33は、同一であっても異なっていてもよく、n34が2〜4の整数である場合、複数のR34は、同一であっても異なっていてもよい。
式(S2)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は水酸基を表す。
式(S3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
【0023】
一般に、液体成分として水を含有するインクを用いて形成された画像では、液体成分として重合性モノマー及び/又は有機溶剤を含有するインクを用いて形成された画像と比較して、画像の精細さに劣る傾向がある。この理由は、液体成分として水を含有するインクを用いて形成されたインク滴では、インク滴から液体成分を除去しにくいために、基材上において、インク滴の滲み等が起こる場合があるためと考えられる。
そこで、液体成分として水を含む、水性のインクジェットインク組成物によって形成された画像について、画像の精細さをより向上させることが求められる場合がある。
【0024】
画像の精細さを向上させる方法としては、基材上に付与されたインク滴(以下、「インク膜」ともいう)に光を照射し、光が照射されたインク膜を加熱乾燥させて画像を得る方法が用いられる場合がある。この方法における光の照射は、インク膜を加熱乾燥させる前に行われる。光の照射の目的は、主として、基材上のインク膜を増粘させることである。
しかし、上記光の照射によっても、インク膜を十分に増粘させることができず、インク滴の滲み等が生じ、その結果、精細さに優れた画像が得られない場合がある。
また、インク膜の増粘は、インク膜中に分散している成分の分散状態が破壊されることによって生じる現象である。このため、基材上のインク膜の増粘性能を向上させた場合、基材上に付与される前のインクにおいても、インク中に分散している成分の分散状態が悪くなってしまう場合があり、その結果、インクジェットノズルからの吐出安定性が低下する場合がある。
【0025】
上述した問題に関し、本開示のインクは、精細さに優れた画像を形成でき、かつ、吐出安定性に優れる。
かかる効果が奏される理由は以下のように推測されるが、本開示のインクは以下の理由によって限定されることはない。
【0026】
本開示のインクは、特定粒子を含有する。特定粒子は、アニオン基を有するポリマーを含む。即ち、特定粒子はアニオン基を有している。
本開示のインクでは、特定粒子が有するアニオン基による電荷反発により、インク中における特定粒子の分散安定性が向上し、これにより、インクの吐出安定性が向上すると考えられる。
【0027】
一方、本開示のインクに含有される光酸発生剤及び増感剤は、インク膜に対して光が照射された際に、インク膜を効果的に増粘させる機能を有すると考えられる。詳細には、インク膜に対して光が照射された場合、この光によりインク膜中の増感剤が電子励起し、電子励起した増感剤から光酸発生剤への電子の移動が起こると考えられる。この電子の移動により、光酸発生剤が分解して酸を発生させ、発生した酸に起因し、特定粒子中のアニオン基(例えば−COO基)が酸基(例えば−COOH基)に変化すると考えられる(弱酸遊離反応)。その結果、インク膜中において、アニオン基による電荷反発の効果が損なわれ、特定粒子が凝集する(即ち、インクが増粘する)と考えられる。
【0028】
本開示のインクでは、粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数を粒子中アニオン価Aとし、粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数を粒子中光酸発生剤量Gとした場合に、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値(以下、「差〔A−G〕」ともいう)が、−0.20以上0.20以下に制限されている。これにより、アニオン基によるインクの吐出安定性向上の効果と、光酸発生剤及び増感剤によるインクの増粘効果と、のバランスが保たれると考えられる。その結果、本開示のインクでは、インクの吐出安定性と形成される画像の精細さとが、効果的に両立されると考えられる。
【0029】
本開示のインクは、光が照射されるインクではあるが、光重合性モノマー及び/又は光重合性基を含む光硬化性インクには限定されない。
本開示のインクが、光硬化性インクである場合、及び、光硬化性インクでない場合のいずれである場合においても、光が照射されることにより増粘する。これにより、画像の精細さが向上する。
本開示のインクの態様としては、
光重合性モノマー及び/又は光重合性基を含有する光硬化性インク、
熱重合性モノマー及び/又は熱重合性基を含有する熱硬化性インク、及び、
光硬化性も熱硬化性も有しないインクのいずれであってもよい。
光硬化性インク及び熱硬化性インクの各々の詳細については後述する。
【0030】
以下、本開示のインクに含有され得る各成分について説明する。
【0031】
<特定粒子>
本開示のインクは、特定粒子を少なくとも1種含有する。
特定粒子は、アニオン基を有するポリマー(以下、「特定ポリマー」ともいう)、光酸発生剤、及び増感剤を含む。
特定粒子において、差〔A−G〕(即ち、粒子中光酸発生剤量Gから光酸発生剤量Gを差し引いた値)は、−0.20以上0.20以下である。
【0032】
(アニオン基)
特定ポリマーは、アニオン基を有する。
本開示において、アニオン基とは、酸基が解離して生成される、負電荷を有する基を意味する。
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
アニオン基としては、カルボキシラト基、スルホナト基、スルフィナト基、ホスホナト基、ホスフィナト基等が挙げられる。
【0033】
アニオン基としては、本開示によるインクの効果がより効果的に奏される点で、カルボキシラト基(−COO基)が好ましい。
カルボキシラト基(−COO基)は、カルボキシ基(−COOH基)が解離して生成される、負電荷を有する基である。
【0034】
(差〔A−G〕)
本開示のインクにおいて、差〔A−G〕(即ち、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値)は、−0.20以上0.20以下である。
差〔A−G〕が−0.20以上であることにより、インクの吐出安定性が向上する。
差〔A−G〕が0.20以下であることにより、形成される画像の精細さが向上する。
差〔A−G〕は、インクの吐出安定性をより向上させる観点から、好ましくは−0.15以上であり、より好ましくは−0.10以上である。
差〔A−G〕は、形成される画像の精細さをより向上させる観点から、0.15以下であり、より好ましくは0.10以下である。
【0035】
(粒子中アニオン価A)
粒子中アニオン価Aは、特定粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数である。
粒子中アニオン価Aは、差〔A−G〕が−0.20以上0.20以下を満足する限り、特に制限はないが、好ましくは0.05mmol/g〜0.30mmol/gである。
粒子中アニオン価Aが0.05mmol/g以上である場合、インクの吐出安定性がより向上する。
粒子中アニオン価Aが0.30mmol/g以下である場合、形成される画像の精細さがより向上する。
【0036】
(粒子中光酸発生剤量G)
粒子中光酸発生剤量Gは、特定粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数である。
インク中の光酸発生剤は、基材上のインクに光が照射された際に、特定の増感剤と協働して、基材上のインクを増粘させ、画像の精細さを向上させる。
粒子中光酸発生剤量Gは、差〔A−G〕が−0.20以上0.20以下を満足する限り、特に制限はないが、好ましくは0.05mmol/g〜0.30mmol/gである。
光酸発生剤の好ましい態様については後述する。
【0037】
(増感剤)
特定粒子は、増感剤(以下、「特定増感剤」ともいう)を含む。
特定増感剤は、下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、及び下記式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
特定増感剤の機能は、インク膜に対して光が照射された際に電子励起し、光酸発生剤に電子を渡すことである。
【0038】
【化5】
【0039】
式(S1)、式(S2)、及び式(S3)中、R11、R12、R21、R33、及びR34は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基を表し、n11、n12、n21、n33、及びn34は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。n11が2〜4の整数である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n12が2〜4の整数である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、n21が2〜4の整数である場合、複数のR21は、同一であっても異なっていてもよく、n33が2〜4の整数である場合、複数のR33は、同一であっても異なっていてもよく、n34が2〜4の整数である場合、複数のR34は、同一であっても異なっていてもよい。
式(S2)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は水酸基を表す。
式(S3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
【0040】
式(S1)中、R11は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基を表す。
【0041】
式(S1)中、R11で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましい。
【0042】
式(S1)中、R11で表されるアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよいし、環状アルキル基であってもよい。
【0043】
式(S1)中、R11で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0044】
式(S1)中、R11で表されるアルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
ここで、R11で表されるアルキル基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0045】
式(S1)中、R11で表されるアリール基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0046】
式(S1)中、R11で表されるアリール基の炭素数は、6〜10が好ましく、6〜8がより好ましい。
ここで、R11におけるアリール基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
式(S1)中、R11で表されるアリール基として、好ましくは置換又は無置換のフェニル基である。
【0047】
式(S1)中、R11で表されるアルキルスルファニル基は、直鎖アルキルスルファニル基であってもよいし、分岐アルキルスルファニル基であってもよいし、環状アルキルスルファニル基であってもよい。
【0048】
式(S1)中、R11で表されるアルキルスルファニル基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルキルスルファニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0049】
式(S1)中、R11で表されるアルキルスルファニル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
ここで、R11で表されるアルキルスルファニル基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0050】
式(S1)中、R11で表されるアルキルアミノ基は、モノアルキルアミノ基であってもよいし、ジアルキルアミノ基であってもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルキルアミノ基の構造中に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよいし、環状アルキル基であってもよい。
【0051】
式(S1)中、R11で表されるアルキルアミノ基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルキルアミノ基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0052】
式(S1)中、R11で表されるアルキルアミノ基の炭素数は、1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。
ここで、R11で表されるアルキルアミノ基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0053】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であってもよいし、分岐アルコキシ基であってもよいし、環状アルコキシ基であってもよい。
【0054】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0055】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシ基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
ここで、R11で表されるアルコキシ基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0056】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシカルボニル基は、直鎖アルコキシカルボニル基であってもよいし、分岐アルコキシカルボニル基であってもよいし、環状アルコキシカルボニル基であってもよい。
【0057】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアルコキシカルボニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0058】
式(S1)中、R11で表されるアルコキシカルボニル基の炭素数は、1〜9が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。
ここで、R11におけるアルコキシカルボニル基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0059】
式(S1)中、R11で表されるアシルオキシ基は、置換基を有していてもよい。
式(S1)中、R11で表されるアシルオキシ基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
【0060】
式(S1)中、R11で表されるアシルオキシ基の炭素数は、1〜9が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。
ここで、R11で表されるアシルオキシ基の炭素数は、総炭素数(即ち、置換基を有する場合には置換基の炭素数も含めた総炭素数)を意味する。
【0061】
式(S1)中、R11で表されるアシル基は、置換基を有していてもよい。
11で表されるアシル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子、更に好ましくは、フッ素原子又は塩素原子)、アリール基、水酸基、アミノ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基、スルホ基、等が挙げられる。
式(S1)中、R11で表されるアシル基の好ましい炭素数は、前述した、R11で表されるアシルオキシ基の好ましい炭素数と同様である。
【0062】
式(S1)中のR11として、好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜8(より好ましくは1〜4)のアルキル基、又は水酸基である。
【0063】
式(S1)中、n11は、0〜4の整数を表す。
n11としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
n11が2〜4の整数である場合、複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
式(S1)中、R12及びn12は、それぞれ、式(S1)中のR11及びn11と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0065】
式(S2)中、R21及びn21は、それぞれ、式(S1)中のR11及びn11と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0066】
式(S2)中、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は水酸基を表す。
【0067】
式(S2)中、R22で表されるハロゲン原子は、式(S1)中のR11で表されるハロゲン原子と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(S2)中、R22で表されるアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(S2)中、R23で表されるハロゲン原子は、式(S1)中のR11で表されるハロゲン原子と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(S2)中、R23で表されるアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0068】
式(S3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
式(S3)中、R31で表されるアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(S3)中、R32で表されるアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0069】
式(S3)中、R33及びn33は、それぞれ、式(S1)中のR11及びn11と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(S3)中、R34及びn34は、それぞれ、式(S1)中のR11及びn11と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0070】
特定増感剤は、式(S1)で表される化合物を含むことが好ましい。これにより、画像の精細さがより向上する。
特定増感剤に占める式(S1)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0071】
以下、式(S1)で表される化合物、式(S2)で表される化合物、及び式(S3)で表される化合物の具体例を示すが、式(S1)で表される化合物、式(S2)で表される化合物、及び式(S3)で表される化合物は、以下の具体例には限定されない。
【0072】
【化6】
【0073】
式(S1)で表される化合物の具体例としては、上記以外にも、高分子型チオキサントン系増感剤も挙げられる。
高分子型チオキサントン系増感剤の市販品としては、SPEEDCURE(登録商標)7010(Lambson社製)が挙げられる。
【0074】
特定粒子における特定増感剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.2質量%〜15質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜10質量%であることが更に好ましく、1質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0075】
(光酸発生剤)
特定粒子は、光酸発生剤を少なくとも1種含む。
特定粒子に含まれる光酸発生剤の機能は、インク膜に対して光が照射された際、電子励起した増感剤から電子を受け取って分解し、酸を発生させることである。
光酸発生剤としては、上記機能を有する限り、特に制限はない。
光酸発生剤は、上記機能において、酸だけでなくラジカルも発生させる機能を備えていてもよい。即ち、光酸発生剤は、ラジカル重合開始剤としての機能を備えていてもよい。
【0076】
光酸発生剤は、好ましくは、式(G1)で表される化合物及び式(G2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
式(G1)で表される化合物は、以下の化学構造を有するヨードニウム塩であり、式(G2)で表される化合物は、以下の化学構造を有するスルホニウム塩である。
これらの化合物は、光酸発生剤としての機能に加え、ラジカル重合開始剤としての機能も兼ね備えている。
【0077】
【化7】
【0078】
式(G1)及び式(G2)中、R41、R42、R51、R52、及びR53は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n41、n42、n51、n52、及びn53は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。n41が2〜5の整数である場合、複数のR41は、同一であっても異なっていてもよく、n42が2〜5の整数である場合、複数のR42は、同一であっても異なっていてもよく、n51が2〜5の整数である場合、複数のR51は、同一であっても異なっていてもよく、n52が2〜5の整数である場合、複数のR52は、同一であっても異なっていてもよく、n53が2〜5の整数である場合、複数のR53は、同一であっても異なっていてもよい。
式(G1)中のX及び式(G2)中のXは、それぞれ独立に、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、又はヘキサフルオロヒ酸イオンを表す。
【0079】
式(G1)中、R41で表されるハロゲン原子は、式(S1)中のR11で表されるハロゲン原子と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G1)中、R41で表されるアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G1)中、R41で表されるアリール基は、式(S1)中のR11で表されるアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G1)中、R41で表されるアルコキシ基は、式(S1)中のR11で表されるアルコキシ基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0080】
式(G1)中、R41で表されるアリールオキシ基の構造中のアリール基は、式(S1)中のR11で表されるアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G1)中、R41で表されるアルキルチオ基の構造中のアルキル基は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G1)中、R41で表されるアリールチオ基の構造中のアリール基は、式(S1)中のR11で表されるアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0081】
式(G1)中、R41としては、
ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、
ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールチオ基、又はトリフルオロメチル基がより好ましい。
【0082】
式(G1)中、n41は、0〜5の整数を表す。
n41としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
n41が2〜5の整数である場合、複数存在するR41は、同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
式(G1)中、R42及びn42は、それぞれ、R41及びn41と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0084】
式(G1)中のXは、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、パラトルエンスルホン酸イオン(CHSO)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン((CFSO)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、過塩素酸イオン(ClO)、又はヘキサフルオロヒ酸イオン(AsF)を表す。
【0085】
式(G1)中のXとしては、
パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、又はヘキサフルオロリン酸イオンが好ましく、
テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、又はヘキサフルオロリン酸イオンがより好ましく、
トリフルオロメタンスルホン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンが更に好ましい。
【0086】
式(G2)中のR51及びn51は、それぞれ、式(G1)中のR41及びn41と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G2)中のR52及びn52は、それぞれ、式(G1)中のR41及びn41と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G2)中のR53及びn53は、それぞれ、式(G1)中のR41及びn41と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(G2)中のXは、式(G2)中のXと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0087】
光酸発生剤は、式(G2)で表される化合物を含むことが好ましい。これにより、画像の精細さがより向上する。
この場合、特定粒子に含まれる光酸発生剤中に占める式(G2)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0088】
以下、光酸発生剤の具体例を示すが、光酸発生剤は、以下の具体例には限定されない。
【0089】
【化8】
【0090】
特定粒子における光酸発生剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.2質量%〜15質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
【0091】
(増感助剤)
特定粒子は、更に、下記式(SA)で表される化合物である増感助剤を少なくとも1種含むことが好ましい。
これにより、画像の精細さがより向上する。
この理由は、光酸発生剤の分解効率がより向上するためと考えられる。
【0092】
【化9】
【0093】
式(SA)中、R61は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R62は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、又はトリフルオロメチル基を表し、n62は、0〜4の整数を表す。n62が2〜4の整数である場合、複数のR62は同一であっても異なっていてもよい。
【0094】
式(SA)中、R61で表される炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基が好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
61で表される炭素数1〜20の炭化水素基における炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0095】
式(SA)中のR62で表されるハロゲン原子の好ましい態様は、式(S1)中のR11で表されるハロゲン原子の好ましい態様と同様である。
式(SA)中のR62で表されるアルキル基の好ましい態様は、式(S1)中のR11で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
式(SA)中のR62で表されるアリール基の好ましい態様は、式(S1)中のR11で表されるアリール基の好ましい態様と同様である。
式(SA)中のR62で表されるアルコキシ基の好ましい態様は、式(S1)中のR11で表されるアルコキシ基の好ましい態様と同様である。
【0096】
式(SA)中、n62は、0〜4の整数を表す。
n62としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
n62が2〜4の整数である場合、複数存在するR41は、同一であっても異なっていてもよい。
【0097】
以下、式(SA)で表される化合物の具体例を示すが、式(SA)で表される化合物は、以下の具体例には限定されない。
【0098】
【化10】
【0099】
特定粒子が増感助剤を含有する場合、増感助剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.2質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜5質量%であることが更に好ましく、0.3質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
【0100】
(特定ポリマー)
特定粒子は、特定ポリマー(即ち、アニオン基を有するポリマー)を少なくとも1種含む。
アニオン基の好ましい態様については前述のとおりである。
特定ポリマーが有するアニオン基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0101】
特定粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数(即ち、粒子中アニオン価A)の好ましい範囲は前述のとおりである。
粒子中アニオン価Aは、中和滴定、構造解析等の公知の方法によって求めることができる。
以下に、測定方法の一例として、中和滴定の1種である電位差滴定法による粒子中アニオン価Aの測定方法を示す。
測定装置としては特に制限されず、例えば、京都電子工業(株)の電位差自動滴定装置(型番:AT−510)を好適に用いることができる。以下では、アニオン基がカルボキシラト基(−COO基)である場合を例に挙げて説明する。
まず、粒子中アニオン価Aの測定対象であるインクから、特定粒子及び水以外の成分を取り除き、特定粒子の水分散物を準備する。
準備した水分散物50gに対し、80000rpm(revolutions per minute;以下同じ)、40分の条件の遠心分離を施す。遠心分離によって生じた上澄み液を除去し、沈殿物(特定粒子)を回収する。
容器に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値Wa(g)を記録する。次いで、酢酸60mLを添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより、粒子中アニオン価Aの測定用試料を得る。
得られた測定用試料に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をFa(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、複数の当量点までに要した複数の滴定液量のうちの最大値をFaとする。Fa(mL)と過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)との積が、特定粒子中に含まれるアニオン基(即ち、−COO基)の量に相当する。
Fa(mL)、過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)、及び秤量値Wa(g)に基づき、下記式により、粒子中アニオン価A(mmol/g)を求めることができる。
粒子中アニオン価A(mmol/g)
=特定粒子1g当たりに含まれる−COO基の量(mmol/g)
=Fa(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/Wa(g)
【0102】
特定ポリマー1g当たりのアニオン基のミリモル数を特定ポリマーのアニオン価とした場合、特定ポリマーのアニオン価は、差〔A−G〕が上述した範囲となるように適宜設定される。
特定ポリマーのアニオン価は、例えば0.10mmol/g〜1.00mmol/gであり、好ましくは0.20mmol/g〜0.60mmol/gである。
【0103】
特定ポリマーは、酸基を有していてもよい。
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
酸基を有する態様の特定ポリマー(即ち、酸基及びアニオン基を有するポリマー)は、例えば、特定ポリマーの原料としての酸基を有するポリマー(以下、「原料ポリマー」ともいう)が中和されることによって形成される。原料ポリマーの中和により、原料ポリマーの酸基(例えば−COOH基)の一部が中和され、中和された酸基であるアニオン基(例えば−COO基)と、中和されていない酸基(例えば−COOH基)と、を有する態様の特定ポリマーが形成される(後述の実施例参照)。
【0104】
原料ポリマーの中和は、例えば、中和剤を用いて行う。
中和剤としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、有機アミン(例えば、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
原料ポリマーの中和(即ち、アニオン基を有する特定ポリマーの形成)は、特定粒子の形成過程で行ってもよいし(後述の実施例参照)、特定粒子を形成する前に行ってもよい。
【0105】
原料ポリマー(即ち、特定ポリマーの原料としての酸基を有するポリマー)において、原料ポリマー1g当たりの酸基のミリモル数を「原料ポリマーの酸価」とした場合、原料ポリマーの酸価は、例えば0.10mmol/g〜2.00mmol/gであり、好ましくは0.20mmol/g〜1.00mmol/gである。
【0106】
特定ポリマーにおいて、アニオン基及び酸基の総モル数に対するアニオン基のモル数の割合(%)を「特定ポリマーの中和度」とした場合、特定ポリマーの中和度は、好ましくは20%〜100%であり、より好ましくは30%〜95%であり、更に好ましくは30%〜90%であり、更に好ましくは30%〜80%である。
【0107】
また、特定粒子において、アニオン基及び酸基の総モル数に対するアニオン基のモル数の割合(%)を「特定粒子の中和度」とした場合、特定粒子の中和度は、好ましくは20%〜100%であり、より好ましくは30%〜95%であり、更に好ましくは30%〜90%であり、更に好ましくは30%〜80%である。
原料ポリマーの中和(即ち、アニオン基を有する特定ポリマーの形成)を、特定粒子の形成過程で行う場合(例えば後述の実施例参照)、特定粒子の中和度は、特定ポリマーの中和度と一致するとみなすことができる。
【0108】
特定粒子の中和度は、中和滴定、構造解析等の公知の方法によって求めることができる。
特定粒子の中和度の測定方法の一例として、粒子中アニオン価Aの測定方法の一例として説明した、中和滴定(詳細には電位差滴定法)による測定方法が挙げられる。以下では、アニオン基がカルボキシラト基(−COO基)であり、酸基がカルボキシ基(−COOH)である場合を例に挙げて説明する。
【0109】
まず、特定粒子の中和度の測定対象であるインクから、特定粒子及び水以外の成分を取り除き、特定粒子の水分散物を準備する。
準備した水分散物50gに対し、80000rpm、40分の条件の遠心分離を施す。遠心分離によって生じた上澄み液を除去し、沈殿物(特定粒子)を回収する。
容器1に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値W1(g)を記録する。次いで、テトラヒドロフラン(THF)54mL及び蒸留水6mLの混合液を添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより中和度測定用試料1を得る。
得られた中和度測定用試料1に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF1(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、複数の当量点までに要した複数の滴定液量のうちの最大値を、F1(mL)とする。F1(mL)と水酸化ナトリウム水溶液の規定度(0.1mol/L)との積が、特定粒子中に含まれる酸基(即ち、−COOH基)の量に相当する。
また、容器2に、回収した特定粒子を約0.5g秤量し、秤量値W2(g)を記録する。次いで、酢酸60mLを添加し、秤量した特定粒子を希釈することにより中和度測定用試料2を得る。
得られた中和度測定用試料2に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF2(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、複数の当量点までに要した複数の滴定液量のうちの最大値を、F2(mL)とする。F2(mL)と過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)との積が、特定粒子中に含まれるアニオン基(即ち、−COO基)の量に相当する。
「F1(mL)」及び「F2(mL)」の測定値に基づき、下記の式に従って、特定粒子の中和度(%)を求める。
F1(mL)×水酸化ナトリウム水溶液の規定度(0.1mol/L)/W1(g)+F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 特定粒子1g当たりに含まれる、−COOH基及び−COO基の総量(mmol/g) … (1)
F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 特定粒子1g当たりに含まれる−COO基の量(mmol/g) … (2)
特定粒子の中和度(%) = (2)/(1)×100
【0110】
なお、上記(2)で求められる、特定粒子1g当たりに含まれる−COO基の量(mmol/g)は、前述した粒子中アニオン価Aである。
【0111】
−特定ポリマーの構造−
特定ポリマーは、アニオン基を有する限りにおいて特に制限はなく、どのような構造を有するポリマーであってもよい。
特定ポリマーとして、好ましくは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーである。
これらのポリマーは、いずれも強固な構造を有する。
従って、特定ポリマーが、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、又は(メタ)アクリルポリマーである場合には、画像の硬度及び引っかき耐性がより向上する。
【0112】
本明細書において、ウレタンポリマーとは、ウレタン基を含むポリマー(但し、(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本明細書において、ウレアポリマーとは、ウレア基を含むポリマー(但し、前述のウレタンポリマー又は(メタ)アクリルポリマーに該当するポリマーを除く)を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリルポリマーとは、1種の(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、又は、1種以上の(メタ)アクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体を意味する。
ウレタンポリマーの概念には、ウレタン基とウレア基との両方を含むポリマー(いわゆるウレタンウレアポリマー)も包含される。
(メタ)アクリルポリマーの概念には、ウレタン基及びウレア基の少なくとも一方を含む(メタ)アクリルポリマーも包含される。
特定ポリマーは、画像の硬度及び引っかき耐性をより向上させる観点から、ウレタンポリマー又はウレアポリマーであることが好ましい。
【0113】
特定ポリマーは、架橋構造を有しない鎖状ポリマーであってもよいし、架橋構造(例えば、三次元架橋構造)を有する架橋ポリマーであってもよい。
特定ポリマーが、三次元架橋構造を有する架橋ポリマーである場合には、特定粒子がより強固となり、その結果、画像の硬度及び引っかき耐性がより向上する。
架橋ポリマーが有し得る三次元架橋構造については、国際公開第2016/052053号に記載の三次元架橋構造を参照してもよい。
【0114】
鎖状ポリマーは、主鎖中に、脂肪族環、芳香族環、複素環等の環状構造を含むことが好ましい。これにより、鎖状ポリマーである特定ポリマーを含む態様の特定粒子がより強固なり、その結果、画像の硬度及び引っかき耐性がより向上する。
【0115】
−鎖状ポリマー−
鎖状ポリマーは、
2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つの活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物であるか、又は、
2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つの活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種とその他の化合物との反応生成物であることが好ましい。
【0116】
2つの活性水素基を有する化合物としては、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
例えば、2官能のイソシアネート化合物とジオール化合物との反応により、ウレタン基が形成される。
また、2官能のイソシアネート化合物とジアミン化合物との反応により、ウレア基が形成される。
また、2官能のイソシアネート化合物と水との反応により、ウレア基が形成される。
【0117】
また、上記その他の化合物としては、
後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物;
後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物;
後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物;
後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物;
等が挙げられる。
【0118】
鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、以下の化合物(1−1)〜(1−20)が挙げられる。
【0119】
【化11】
【0120】
鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、以下の化合物(2−1)〜(2−24)が挙げられる。
【0121】
【化12】
【0122】
また、鎖状ポリマーを形成するための、2つの活性水素基を有する化合物としては、後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物、後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を2つ含む化合物、等も挙げられる。
【0123】
−架橋ポリマー
架橋ポリマーは、3官能以上のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つ以上の活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物の構造を含むことが好ましい。
この場合において、架橋ポリマーは、更に、3官能以上のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と2つ以上の活性水素基を有する化合物及び水からなる群から選択される少なくとも1種とその他の化合物との反応生成物の構造を含んでいてもよい。
【0124】
上記その他の化合物としては、
後述する重合性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物;
後述する重合性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物;
後述する親水性基導入用化合物のうち、活性水素基を1つのみ含む化合物;
後述する親水性基を導入したイソシアネート化合物のうち、イソシアネート基を1つのみ含む化合物;
等が挙げられる。
【0125】
特定粒子が架橋ポリマーを含む場合、特定粒子は、架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むマイクロカプセル(以下、「MC」)を含むことが好ましい。
【0126】
架橋ポリマーを形成するための2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、上述した鎖状ポリマーを形成するための2つの活性水素基を有する化合物と同様に、ジオール化合物、ジアミン化合物、及びジチオール化合物が挙げられる。
また、架橋ポリマーを形成するための2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物も挙げられる。
【0127】
架橋ポリマーを形成するための3官能以上のイソシアネート化合物は、2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物)からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物であることが好ましい。
3つ以上の活性水素基を有する化合物と反応させる2官能のイソシアネート化合物のモル数(分子数)は、3つ以上の活性水素基を有する化合物における活性水素基のモル数(活性水素基の当量数)に対し、0.6倍以上が好ましく、0.6倍〜5倍がより好ましく、0.6倍〜3倍が更に好ましく、0.8倍〜2倍が更に好ましい。
【0128】
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための2官能のイソシアネート化合物としては、上述した鎖状ポリマーを形成するための2官能のイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
【0129】
3官能以上のイソシアネート化合物を形成するための、3つ以上の活性水素基を有する化合物としては、下記(H−1)〜(H−13)で表される構造の化合物が挙げられる。なお、下記の構造において、nは、1〜100から選択される整数を表す。
【0130】
【化13】
【0131】
架橋ポリマーの形成に用いられる3官能以上のイソシアネート化合物としては、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物、イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物、ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物、等が挙げられる。
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、P49−75S、D−110N、D−120N、D−140N、D−160N(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ウレタンポリマー(株))、P301−75E(旭化成(株))等が挙げられる。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N(以上、三井化学(株))、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(以上、住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HX、HK(以上、日本ウレタンポリマー(株))、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100、TSA−100、TSS−100、TLA−100、TSE−100(以上、旭化成(株))等が挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物の市販品としては、タケネート(登録商標)D−165N、NP1100(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン(株))、デュラネート(登録商標)24A−100(旭化成(株))等が挙げられる。
【0132】
また、特定粒子が、架橋ポリマーからなるシェルと、コアと、を含むMC(即ち、マイクロカプセル)を含む場合、特定粒子は、MCに対する分散剤として、前述した鎖状ポリマーのうち親水性基を有する態様の鎖状ポリマーを含有していてもよい。この態様におけるインクでは、MCのシェルの周囲の少なくとも一部を、分散剤としての鎖状ポリマーが被覆している状態となり得る。この態様の場合の特定粒子は、分散剤によって被覆されたMC(即ち、MCと分散剤との複合体)である。この態様では、MCのシェルが有するウレタン基及び/又はウレア基と、分散剤(鎖状ポリマー)が有するウレタン基及び/又はウレア基と、の相互作用、並びに、分散剤の親水性基による分散作用が相まって、特定粒子の分散安定性がより向上する。
この態様において、MCの全固形分量に対する分散剤の量の比(以下、質量比〔分散剤/MC固形分〕ともいう)としては、0.005〜1.000であることが好ましく、0.05〜0.7であることがより好ましい。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が0.005以上であると、特定粒子の分散安定性がより向上する。
質量比〔分散剤/MC固形分〕が1.000以下であると、画像の硬度がより向上する。
【0133】
−特定ポリマーの好ましい重量平均分子量(Mw)−
特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)の観点から、5000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましく、8000以上であることが更に好ましい。
特定ポリマーのMwの上限には特に制限はない。特定ポリマーのMwの上限としては、例えば、150000、100000、70000、50000が挙げられる。
【0134】
本明細書中において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を指す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)−8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ−H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、及び「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0135】
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
特定ポリマーの含有量が、特定粒子の全固形分量に対して10質量%以上であると、インクの分散安定性(即ち、特定粒子の分散安定性)がより向上する。
特定ポリマーの含有量は、特定粒子の全固形分量に対し、100質量%となることもあり得るが、80質量%以下が好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0136】
−重合性基−
特定ポリマーは、重合性基を少なくとも1種有していてもよい。
特定ポリマーが重合性基を有する場合には、特定増感剤及び光酸発生剤の作用によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性基の作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の硬度及び引っかき耐性が更に向上する。
【0137】
重合性基としては、光重合性基又は熱重合性基が好ましい。
光重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性二重結合を含む基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、又はビニル基が更に好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応性及び形成される膜の硬度の観点から、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
熱重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、ケトン基、アルデヒド基、又はブロックイソシアネート基が好ましい。
特定ポリマーは、重合性基を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
特定ポリマーが重合性基を有することは、例えば、フーリエ変換赤外線分光測定(FT−IR)分析によって確認することができる。
【0138】
−重合性基導入用化合物−
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基導入用化合物を用いて行うことができる。
重合性基導入用化合物としては、重合性基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
重合性基導入用化合物としては、1つ以上の重合性基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0139】
特定ポリマーへの重合性基の導入方法には特に制限はないが、特定ポリマーを合成する際に、2官能のイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、水、ジオール化合物、ジアミン化合物及びジチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、(必要に応じ親水性基導入用化合物の少なくとも1種と、)を反応させる方法が特に好ましい。
重合性基導入用モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
重合性基導入用化合物としては、例えば、国際公開第2016/052053号の段落0075〜0089に記載の化合物を用いることもできる。
【0141】
重合性基導入用化合物としては、下記式(ma)で表される化合物が好ましい。
Lc (ma)
【0142】
式(ma)において、Lは、m+n価の連結基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜100から選ばれる整数であり、Lcは1価のエチレン性不飽和基を表し、Zは活性水素基を表す。
は、2価以上の脂肪族基、2価以上の芳香族基、2価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO−又はそれらの組合せであることが好ましい。
m及びnは、それぞれ独立に、1〜50であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましく、3〜5であることがとくに好ましい。
Lcで表される1価のエチレン性不飽和基としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
Zで表される活性水素基は、水酸基又は1級アミノ基であることがより好ましく、水酸基であることがさらに好ましい。
【0143】
以下、重合性基導入用化合物の例を示すが、重合性基導入用化合物は以下の例には限定されない。なお、化合物(a−3)及び(a−14)におけるnは、例えば、1〜90から選ばれる整数を表す。
【0144】
【化14】
【0145】
−重合性基を導入したイソシアネート化合物−
特定ポリマーが重合性基を有する場合、特定ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
重合性基を導入したイソシアネート化合物としては、
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した重合性基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;
等が挙げられる。
【0146】
−酸基導入用化合物−
前述した原料ポリマー(即ち、中和されて特定ポリマーとなる、酸基を有するポリマー)は、酸基導入用化合物を用いて形成することができる。
酸基導入用化合物としては、酸基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。
酸基導入用化合物としては、1つ以上の酸基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0147】
酸基導入用化合物としては、α−アミノ酸(具体的には、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)等のアミノ酸が挙げられる。
酸基導入用化合物としては、上記のα−アミノ酸以外にも、以下の具体例も挙げられる。
【0148】
【化15】
【0149】
酸基導入用化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;トリエチルアミンなどの有機塩基;等を用い、酸基の少なくとも一部を中和して用いてもよい。
【0150】
酸基の少なくとも一部が中和された酸基導入用化合物は、アニオン基を有する化合物であるため、特定ポリマーに対するアニオン基導入用化合物として用いることもできる。
即ち、アニオン基導入用化合物を用いることにより、原料モノマーを経由せず、特定モノマー(アニオン基を有するポリマー)を直接的に製造することもできる。
【0151】
−酸基を導入したイソシアネート化合物−
原料モノマーへの酸基の導入は、酸基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
酸基を導入したイソシアネート化合物としては、
上述した酸基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した酸基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述した酸基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;
等が挙げられる。
【0152】
−アニオン基を導入したイソシアネート化合物−
特定モノマーへの酸基の導入は、アニオン基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
アニオン基を導入したイソシアネート化合物としては、
上述したアニオン基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述したアニオン基導入用化合物の少なくとも1種と、3官能以上のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、の反応生成物;
上述したアニオン基導入用化合物の少なくとも1種と、2官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種と、3官能以上のポリオール化合物、3官能以上のポリアミン化合物、及び3官能以上のポリチオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、の反応生成物;
等が挙げられる。
【0153】
−ノニオン性基−
特定ポリマー又は原料ポリマーは、ノニオン性基を有していてもよい。
ノニオン性基としては、ポリエーテル構造を有する基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基を含む1価の基が好ましい。
【0154】
特定ポリマー又は原料ポリマーへのノニオン性基の導入は、ノニオン性基導入用化合物を用いて行うことができる。
ノニオン性基導入用化合物としては、ポリエーテル構造を有する化合物が好ましく、ポリオキシアルキレン基を有する化合物がより好ましい。
【0155】
特定ポリマー又は原料ポリマーへのノニオン性基の導入は、ノニオン性基を導入したイソシアネート化合物を用いて行うこともできる。
ノニオン性基を導入したイソシアネート化合物の具体例としては、トリメチロールプロパン(TMP)とm−キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO)との付加物(例えば、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D−116N)が挙げられる。
【0156】
(重合性モノマー)
特定粒子は、重合性モノマーを含んでもよい。
特定粒子が重合性モノマーを含む場合には、特定増感剤及び光酸発生剤の作用によってインク膜を増粘させた後、増粘したインク膜を、重合性モノマーの作用によって硬化させることができる。
これにより、画像の硬度及び引っかき耐性が更に向上する。
特定粒子が重合性モノマーを含む場合、特定粒子に含まれる重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0157】
特定粒子に含まれる重合性モノマーとしては、国際公開第2016/052053号の段落0097〜0105に記載された化合物を用いてもよい。
【0158】
特定粒子に含まれ得る重合性モノマーとしては、光重合性モノマー又は熱重合性モノマーが好ましい。
光重合性モノマーは、光の照射によって重合する性質を有する。光重合性モノマーとしては、ラジカル重合性モノマーが好ましい。
熱重合性モノマーは、加熱又は赤外線の照射によって重合する性質を有する。
【0159】
本明細書では、特定粒子が光重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーが光重合性基を有することの少なくとも一方を満足する態様のインクを、「光硬化性のインク」と称することがあり、特定粒子が熱重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーが熱重合性基を有することの少なくとも一方を満足する態様のインクを、「熱硬化性のインク」と称することがある。
本開示のインクによって形成されたインク膜の硬化は、本開示のインクが光硬化性のインクである場合には、インク膜に対して光照射を施すことによって行うことができ(後述の硬化工程A参照)、本開示のインクが熱硬化性のインクである場合には、インク膜に対して加熱又は赤外線照射を施すことによって行うことができる(後述の加熱工程又は硬化工程B参照)。
【0160】
光硬化性のインクの特に好ましい態様は、特定粒子がラジカル重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーがラジカル重合性基を有することの少なくとも一方(より好ましくは両方)を満足する態様である。
これにより、光の照射による画像の硬化性がより向上するので、画像の引っ掻き耐性がより向上する。
【0161】
特定粒子が、重合性モノマーとして光重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述の光重合開始剤を含むことが好ましい。
また、特定粒子が、重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、更に、後述する、光熱変換剤及び熱硬化促進剤の少なくとも一方を含んでもよい。
【0162】
特定粒子に含まれる重合性モノマーの含有量(2種以上含む場合には合計量)は、膜の硬化感度及び膜の硬度を向上させる観点から、特定粒子の全固形分量に対して、1質量%〜80質量%が好ましく、5質量%〜70質量%がより好ましく、10質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0163】
本明細書において、特定粒子の全固形分量とは、特定粒子が溶媒を含まない場合には、特定粒子の全量を意味し、特定粒子が溶媒を含む場合には、特定粒子から溶媒を除いた全量を意味する。
【0164】
重合性モノマーの分子量としては、好ましくは100〜4000であり、更に好ましくは100〜2000であり、更に好ましくは100〜1000であり、更に好ましくは100〜900であり、更に好ましくは100〜800であり、特に好ましくは150〜750である。
【0165】
−光重合性モノマー−
光重合性モノマーとしては、ラジカル重合性モノマー及びカチオン重合性モノマーが挙げられ、ラジカル重合性モノマーが好ましい。
ラジカル重合性モノマーは、分子構造中にラジカル重合性基を有する。
ラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基の好ましい態様は、前述の、特定ポリマーが有し得るラジカル重合性基の好ましい態様と同様である。
【0166】
ラジカル重合性モノマーの例としては、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物、N−ビニル複素環化合物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタンが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、ラジカル重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0167】
アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBOA)、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシフタル酸、2−アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性アクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、置換アクリルアミド(例えば、N−メチロールアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド)等の単官能のアクリレート化合物;
【0168】
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10−デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3−メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート等の2官能のアクリレート化合物;
【0169】
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能以上のアクリレート化合物などが挙げられる。
【0170】
メタクリレート化合物としては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の単官能のメタクリレート化合物;
【0171】
ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、テトラエチレングリコールジメタクリレート等の2官能のメタクリレート化合物などが挙げられる。
【0172】
スチレン化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等が挙げられる。
【0173】
ビニルナフタレン化合物としては、1−ビニルナフタレン、メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0174】
N−ビニル複素環化合物としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルピロール、N−ビニフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルコハク酸イミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
【0175】
その他のラジカル重合性のモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミドが挙げられる。
【0176】
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、2官能以下のラジカル重合性モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10−デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3−メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0177】
特定粒子は、2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せを含んでもよい。この場合、2官能以下のラジカル重合性モノマーが、画像と基材との密着性に寄与し、3官能以上のラジカル重合性モノマーが、画像の硬度向上に寄与する。
2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性モノマーとの組合せとしては、2官能のアクリレート化合物と3官能のアクリレート化合物との組合せ、2官能のアクリレート化合物と5官能のアクリレート化合物との組み合わせ、単官能のアクリレート化合物と4官能のアクリレート化合物との組み合わせなどが挙げられる。
【0178】
画像と基材との密着性をより向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、環状構造を有するラジカル重合性モノマー(以下、「環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
環状ラジカル重合性モノマーとしては、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
また、以下で説明する、2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーも挙げられる。
【0179】
画像と基材との密着性を更に向上させる観点から、特定粒子に含まれ得るラジカル重合性モノマーの少なくとも1種は、一分子中に、1つ以上の環状構造と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基と、を含む重合性モノマー(以下、「2官能以上の環状ラジカル重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーとしては、
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、
ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、
ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、
アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、
アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、
シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0180】
特定粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、このラジカル重合性モノマー全体に占める2官能以上の環状ラジカル重合性モノマーの割合は、10質量%〜100質量%が好ましく、30質量%〜100質量%がより好ましく、40質量%〜100質量%が特に好ましい。
【0181】
上記に挙げたラジカル重合性モノマーの他にも、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品、並びに業界で公知のラジカル重合性及び架橋性のモノマーを用いることができる。
【0182】
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物が挙げられる。
カチオン重合性モノマーとしては、少なくとも1つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N複素環、O複素環、S複素環、P複素環、アルデヒド、ラクタム、又は環状エステル基を有する化合物が好ましい。
カチオン重合性モノマーとしては、J. V. Crivelloらの「Advances in Polymer Science」, 62, pages 1 to 47 (1984)、Leeらの「Handbook of Epoxy Resins」, McGraw Hill Book Company, New York (1967) 、及びP. F. Bruinsらの「Epoxy Resin Technology」,(1968)に記載の化合物を用いてもよい。
【0183】
また、光重合性モノマーとしては、特開平7−159983号公報、特公平7−31399号公報、特開平8−224982号公報、特開平10−863号公報、特開平9−134011号公報、特表2004−514014号公報等の各公報に記載の光重合性組成物に用いられる光硬化性の重合性モノマーが知られており、これらも特定粒子に含まれ得る重合性モノマーとして適用することができる。
【0184】
光重合性モノマーとしては、上市されている市販品を用いてもよい。
光重合性モノマーの市販品の例としては、AH−600(2官能)、AT−600(2官能)、UA−306H(6官能)、UA−306T(6官能)、UA−306I(6官能)、UA−510H(10官能)、UF−8001G(2官能)、DAUA−167(2官能)、ライトアクリレートNPA(2官能)、ライトアクリレート3EG−A(2官能)(以上、共栄社化学(株))、SR339A(PEA、単官能)、SR506(IBOA、単官能)、CD262(2官能)、SR238(HDDA、2官能)、SR341(3MPDDA、2官能)、SR508(2官能)、SR306H(2官能)、CD560(2官能)、SR833S(2官能)、SR444(3官能)、SR454(3官能)、SR492(3官能)、SR499(3官能)、CD501(3官能)、SR502(3官能)、SR9020(3官能)、CD9021(3官能)、SR9035(3官能)、SR494(4官能)、SR399E(5官能)(以上、サートマー社)、A−NOD−N(NDDA、2官能)、A−DOD−N(DDDA、2官能)、A−200(2官能)、APG−400(2官能)、A−BPE−10(2官能)、A−BPE−20(2官能)、A−9300(3官能)、A−9300−1CL(3官能)、A−TMPT(3官能)、A−TMM−3L(3官能)、A−TMMT(4官能)、AD−TMP(4官能)(以上、新中村化学工業(株))、UV−7510B(3官能)(日本合成化学(株))、KAYARAD DPCA−30(6官能)、KAYARAD DPEA−12(6官能)(以上、日本化薬(株))等が挙げられる。
その他、重合性モノマーとしては、NPGPODA(ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート)、SR531、SR285、SR256(以上、サートマー社)、A−DHP(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業(株))、アロニックス(登録商標)M−156(東亞合成(株))、V−CAP(BASF社)、ビスコート#192(大阪有機化学工業(株))等の市販品を好適に用いることができる。
これらの市販品の中でも、特に環状構造を有する光重合性モノマーである、SR506、SR833S、A−9300、又はA−9300−CLが好ましく、SR833Sが特に好ましい。
【0185】
−熱重合性モノマー−
熱重合性モノマーは、加熱もしくは赤外線の照射によって重合可能な重合性モノマーの群から選択できる。熱重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、アゼチジン化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、ブロックイソシアネート化合物、等が挙げられる。
【0186】
エポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3−(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)−1,2−プロパンジオール、リモネンオキシド、2−ビフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン−ビスフェノールS由来のエポキシド、エポキシ化スチレン、エピクロロヒドリン−ビスフェノールF由来のエポキシド、エピクロロヒドリン−ビスフェノールA由来のエポキシド、エポキシ化ノボラック、脂環式ジエポキシド等の2官能以下のエポキシ化合物;
多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、ウレタンポリエポキシ化合物、ポリエポキシポリブタジエン等の3官能以上のエポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物の市販品としては、EPICLON(登録商標)840(DIC社)が挙げられる。
【0187】
オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−1−オキセタン、1,4ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−フェノキシメチル−オキセタン、ビス([1−エチル(3−オキセタニル)]メチル)エーテル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、3,3−ジメチル−2−(p−メトキシフェニル)−オキセタン等が挙げられる。
【0188】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物をブロック化剤(活性水素含有化合物)で不活性化した化合物が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、トリメチルへキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、タケネート(登録商標;三井化学社)、デュラネート(登録商標;旭化成社)、Bayhydur(登録商標;バイエルAG社)などの市販のイソシアネート、又はこれらを組み合わせた二官能以上のイソシアネートが好ましい。
【0189】
ブロック化剤としては、ラクタム[例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等]、オキシム[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)、シクロヘキサノンオキシム等]、アミン[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソブチルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン、ジフェニルアミン等)]、脂肪族アルコール[例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等]、フェノール及びアルキルフェノール[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール等]、イミダゾール[例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール等]、ピラゾール[例えばピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等]、イミン[例えばエチレンイミン、ポリエチレンイミン等]、活性メチレン[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等]、特開2002−309217号公報及び特開2008−239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ブロック化剤としては、オキシム、ラクタム、ピラゾール、活性メチレン、又はアミンが好ましい。
【0190】
ブロックイソシアネート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、Trixene(登録商標)BI7982、BI7641,BI7642、BI7950、BI7960、BI7991等(Baxenden Chemicals LTD)、Bayhydur(登録商標;Bayer AG社)が好適に用いられる。また、国際公開第2015/158654号の段落0064に記載の化合物群も好適に用いられる。
【0191】
上述した特定ポリマー及び上述した重合性モノマーを含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー及び重合性モノマーを含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
【0192】
(ラジカル重合開始剤)
特定粒子は、ラジカル重合開始剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
本明細書において、ラジカル重合開始剤とは、光を吸収してラジカルを生成する化合物を意味する。
但し、光を吸収してラジカルを生成する化合物であって、かつ、前述の光酸発生剤にも該当する化合物は、本明細書にいうラジカル重合開始剤の概念には含まれない。
【0193】
本開示のインクにおいて、特定粒子がラジカル重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーがラジカル重合性基を有することの少なくとも一方を満足する場合には、特定粒子がラジカル重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、形成された画像の硬度及び引っかき耐性がより向上する。
詳細には、特定粒子がラジカル重合性モノマーを含むこと、及び、特定ポリマーがラジカル重合性基を有することの少なくとも一方を満足し、かつ、特定粒子がラジカル重合開始剤を含む場合、1つの特定粒子が、ラジカル重合性基(詳細には、ラジカル重合性モノマー中のラジカル重合性基及び又は特定ポリマー中のラジカル重合性基)と、ラジカル重合開始剤と、の両方を有することとなる。このため、ラジカル重合性基とラジカル重合開始剤との距離が近くなるので、従来の光硬化性組成物を用いた場合と比較して、膜の硬化感度(以下、単に「感度」ともいう。)が向上する。このため、形成された画像の硬度及び引っかき耐性がより向上する。
【0194】
また、特定粒子がラジカル重合開始剤を含む場合、従来、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかったラジカル重合開始剤(例えば、水への溶解度が25℃において1.0質量%以下であるラジカル重合開始剤)を用いることができる。これにより、使用するラジカル重合開始剤の選択の幅が広がり、ひいては、用いられる光源の選択の幅も広がる。このため、従来よりも硬化感度が向上し得る。
上述の、高感度ではあるが水への分散性が低い又は溶解性が低いために用いることが難しかったラジカル重合開始剤として、具体的には、後述のカルボニル化合物及びアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられ、アシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
このように、本開示のインクは、水に対する溶解性が低い物質を特定粒子に含ませることにより、水系の組成物である本開示のインク中に含有させることができる。このことも本開示のインクの利点の一つである。
【0195】
また、特定粒子がラジカル重合開始剤を含む態様のインクは、従来の光硬化性組成物と比較して、保存安定性にも優れる。この理由は、ラジカル重合開始剤が特定粒子に含まれていることにより、ラジカル重合開始剤の凝集又は沈降が抑制されるためと考えられる。
【0196】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2016/052053号の段落0091〜0094の記載を適宜参照できる。
【0197】
ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン等のカルボニル化合物又は(b)アシルホスフィンオキシド化合物がより好ましく、具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)819)、2−(ジメチルアミン)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)369)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)907)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)184)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド(例えば、DAROCUR(登録商標)TPO、LUCIRIN(登録商標)TPO(いずれもBASF社製))などが挙げられる。
これらの中でも、感度向上の観点及びLED光への適合性の観点等から、内包光重合開始剤としては、(b)アシルホスフィンオキシド化合物が好ましく、モノアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド)、又は、ビスアシルホスフィンオキシド化合物(特に好ましくは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド)がより好ましい。
LED光の波長としては、355nm、365nm、385nm、395nm、又は405nmが好ましい。
【0198】
ラジカル重合開始剤を含む特定粒子は、例えば、特定ポリマー、光酸発生剤、特定増感剤、ラジカル重合性モノマー、及び光重合開始剤を含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造することができる。
【0199】
ラジカル重合開始剤の含有量は、特定粒子の全固形分量に対して、好ましくは0.1質量%〜15質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは1質量%〜6質量%である。
【0200】
(光熱変換剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、光熱変換剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
光熱変換剤は、赤外線等を吸収して発熱し、熱重合性モノマーを重合硬化させる化合物である。光熱変換剤としては、公知の化合物を用いることができる。
【0201】
光熱変換剤としては、赤外線吸収剤が好ましい。赤外線吸収剤としては、例えば、ポリメチルインドリウム、インドシアニングリーン、ポリメチン色素、クロコニウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素、カルコゲノピリロアリリデン色素、金属チオレート錯体色素、ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ビスアミノアリルポリメチン色素、インドリジン色素、ピリリウム色素、キノイド色素、キノン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、カーボンブラック等が挙げられる。
【0202】
(熱硬化促進剤)
特定粒子が重合性モノマーとして熱重合性モノマーを含む場合、特定粒子は、熱硬化促進剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
熱硬化促進剤は、熱重合性モノマーの熱硬化反応を触媒的に促進する化合物である。
【0203】
熱硬化促進剤としては、公知の化合物を使用することができる。熱硬化促進剤としては、酸もしくは塩基、又は加熱により酸もしくは塩基を発生させる化合物が好ましく、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、脂肪族アルコール、フェノール、脂肪族アミン、芳香族アミン、イミダゾール(例えば、フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール)、ピラゾール等が挙げられる。
【0204】
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全固形分量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
これにより、吐出安定性がより向上し、かつ、画像と基材との密着性がより向上する。
【0205】
本開示のインクにおいて、特定粒子の全固形分量は、インクの全量に対して、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましく、5質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して1質量%以上であると、画像と基材との密着性がより向上する。
また、特定粒子の全固形分量がインクの全量に対して50質量%以下であると、インクの分散安定性がより向上する。
【0206】
特定粒子の体積平均分散粒子径は特に制限はないが、分散安定性の観点から、0.01μm〜10μmであることが好ましく、0.01μm〜5μmであることがより好ましく、0.05μm〜1μmであることが更に好ましく、0.05μm〜0.5μmが更に好ましく、0.05μm〜0.3μmが更に好ましい。
本明細書中において、「体積平均分散粒子径」は、光散乱法によって測定された値を指す。光散乱法による特定粒子の体積平均分散粒子径の測定は、例えば、LA−960((株)堀場製作所)を用いて行う。
【0207】
<水>
本開示のインクは、水を含有する。
水は、特定粒子(分散質)に対する分散媒である。
本開示のインク中の水の含有量には特に制限はないが、水の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは10質量%〜99質量%であり、より好ましくは20質量%〜95質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜90質量%であり、特に好ましくは50質量%〜90質量%である。
【0208】
<色材>
本開示のインクは、色材を少なくとも1種含有するインク(いわゆる「着色インク」)であってもよいし、色材を含有しないインク(いわゆる「クリアインク」)であってもよい。
インクが色材を含有する場合、色材は、特定粒子の外部に含有されること(即ち、特定粒子が色材を含まないこと)が好ましい。
色材としては、特に制限はなく、顔料、水溶性染料、分散染料等の公知の色材から任意に選択して使用することができる。この中でも、耐候性に優れ、色再現性に富む点から、顔料を含むことがより好ましい。
【0209】
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの等)も挙げられる。
有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
【0210】
色材として顔料を用いる場合には、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。
また、色材として顔料を用いる場合には、顔料として、顔料粒子表面に親水性基を有する自己分散顔料を用いてもよい。
色材及び顔料分散剤については、特開2014−040529号公報の段落0180〜0200、国際公開第2016/052053号の段落0122〜0129を適宜参照することができる。
【0211】
本開示のインクが色材を含有する場合、色材の含有量は、インク全量に対し、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が特に好ましい。
【0212】
<その他の成分>
本開示のインクは、必要に応じて、上記で説明した以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分は、特定粒子に含まれていてもよいし、特定粒子に含まれていなくてもよい。
【0213】
(有機溶剤)
本開示のインクは、有機溶剤を含有していてもよい。
本開示のインクが有機溶剤を含有すると、画像と基材との密着性がより向上し得る。
本開示のインクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、インクの全量に対して、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
有機溶剤の具体例は、以下のとおりである。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール等)
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)
・アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)
・複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン等)
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)
・スルホン類(例えば、スルホラン等)
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
【0214】
本開示のインクは、特定粒子に含まれていてもよいし、特定粒子に含まれていなくてもよい成分として、界面活性剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
また、本開示のインクは、画像の硬度、画像と基材との密着性、及びインクの吐出安定性の観点から、必要に応じ、特定粒子の外部に、重合性モノマー、光重合開始剤、樹脂等を含有していてもよい。
これらの成分については、例えば、国際公開第2016/052053号の段落0134〜0157を参照することができる。
【0215】
<インクの好ましい物性>
本開示のインクは、インクを25℃〜50℃とした場合に、粘度が、3mPa・s〜15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s〜13mPa・sであることがより好ましい。特に、本開示のインクは、インクを25℃とした場合における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度が上記の範囲であると、より高い吐出安定性を実現できる。
なお、インクの粘度は、粘度計を用いて測定される値である。
粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV−22(東機産業(株))を用いることができる。
【0216】
本開示のインクが光硬化性のインク又は熱硬化性のインクである場合の特に好ましい形態として、以下の形態1〜4が挙げられる。
【0217】
<形態1>
形態1は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマー(好ましくはラジカル重合性モノマー。以下同じ。)を含み、特定ポリマーが鎖状ポリマーである形態である。
形態1において、鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態1において、光重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
【0218】
<形態2>
形態2は、光硬化性のインクであって、特定粒子が光重合性モノマー(好ましくはラジカル重合性モノマー。以下同じ。)を含み、特定ポリマーが架橋ポリマーである形態である。
形態2としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する架橋ポリマーからなるシェルと、光重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態2において、光重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。光重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
【0219】
<形態3>
形態3は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが鎖状ポリマーである形態である。
形態3において、鎖状ポリマーのMwは5000以上であることが好ましい。鎖状ポリマーのMwのより好ましい範囲については、前述の特定ポリマーの分子量の好ましい範囲を参照できる。
形態3において、熱重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
【0220】
<形態4>
形態4は、熱硬化性のインクであって、特定粒子が熱重合性モノマーを含み、特定ポリマーが架橋ポリマーである形態である。
形態4としては、特定粒子が、三次元架橋構造を有する架橋ポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマーを含むコアと、を含むマイクロカプセルであることが好ましい。
形態4において、熱重合性モノマーの分子量は、100〜4000であることが好ましい。熱重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲については、前述の重合性モノマーの分子量のより好ましい範囲を参照できる。
【0221】
〔インクの製造方法の一例(製法A)〕
本開示のインクを製造する方法には特に制限はないが、以下の一例(製法A)が挙げられる。
製法Aは、有機溶剤、酸基を有するポリマー(原料ポリマー)、光酸発生剤、及び特定増感剤を含む油相成分と、水及び中和剤を含む水相成分と、を混合し、乳化させることにより、特定粒子を形成する工程を有する。
【0222】
特定粒子を形成する工程では、上述した油相成分と水相成分とを混合し、得られた混合物を乳化させることにより、特定粒子が形成される。形成された特定粒子は、製造されるインクにおいて分散質として機能する。
詳細には、特定粒子を形成する工程では、原料ポリマーの酸基の一部が中和されてアニオン基が生成されることにより、アニオン基を有するポリマー(即ち、特定ポリマー)が形成され、かつ、形成された特定ポリマーと光酸発生剤と特定増感剤とを含む特定粒子が形成される。
水相成分中の水は、製造されるインクにおける分散媒として機能する。
【0223】
油相成分に含まれる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
有機溶剤は、特定粒子の形成過程において、また、特定粒子の形成後において、その少なくとも一部が除去されることが好ましい。
【0224】
油相成分は、上記各成分以外にも、例えば、増感助剤、重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、重合性基導入用化合物(好ましくは、重合性基及び活性水素基を有する化合物)、重合性基を導入したイソシアネート化合物、等を含むことができる。
製法Aにより光硬化性のインクを製造する場合には、油相成分に、例えば、
ラジカル重合開始剤と、
ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性基を有する原料モノマー、及びラジカル重合性基を有する特定モノマーからなる群から選択される少なくとも1種と、
を含ませる。
製法Aにより熱硬化性のインクを製造する場合には、油相成分に、例えば、熱重合性モノマーを含ませる。
【0225】
水相成分は、水及び中和剤を含むこと以外には特に制限はない。
中和剤の好ましい態様は、前述したとおりである。
水相成分は、水及び中和剤以外の成分を含んでもよい。
【0226】
製法Aにおける、油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量が、製造されるインクにおける、特定粒子の全固形分量に対応する。
製法Aに用いられ得る各成分の使用量の好ましい範囲については、既述の「インク」の項を参照できる。この参照の際、既述の「インク」の項における、「含有量」及び「特定粒子の全固形分量」は、それぞれ、「使用量」及び「油相成分及び水相成分から有機溶剤及び水を除いた全量」と読み替える。
【0227】
特定粒子を形成する工程において、油相成分と水相成分との混合の方法には特に限定はないが、例えば、撹拌による混合が挙げられる。
【0228】
特定粒子を形成する工程において、乳化の方法には特に限定はないが、例えば、ホモジナイザー等の乳化装置(例えば、分散機等)による乳化が挙げられる。
乳化における分散機の回転数は、例えば、5000rpm〜20000rpmであり、好ましくは10000rpm〜15000rpmである。
乳化における回転時間は、例えば、1分間〜120分間であり、好ましくは3分間〜60分間であり、より好ましくは3分間〜30分間であり、更に好ましくは5分間〜15分間である。
【0229】
特定粒子を形成する工程における乳化は、加熱下で行ってもよい。
乳化を加熱下で行うことにより、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、乳化を加熱下で行うことにより、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
乳化を加熱下で行う場合の加熱温度としては、35℃〜70℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましい。
【0230】
また、特定粒子を形成する工程は、混合物を(例えば35℃未満の温度で)乳化させる乳化工程と、乳化工程によって得られた乳化物を(例えば35℃以上の温度で)加熱する加熱工程と、を含んでいてもよい。
特定粒子を形成する工程が乳化工程と加熱工程とを含む態様では、特に加熱工程において、特定粒子をより効率よく形成できる。
また、特定粒子を形成する工程が乳化工程と加熱工程とを含む態様では、特に加熱工程において、油相成分中の有機溶剤の少なくとも一部を、混合物中から除去し易い。
加熱工程における加熱温度としては、35℃〜70℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましい。
加熱工程における加熱時間は、6時間〜50時間が好ましく、12時間〜40時間がより好ましく、15時間〜35時間が更に好ましい。
【0231】
また、製法Aは、必要に応じて、特定粒子を形成する工程以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、特定粒子を形成する工程後において、その他の成分(顔料等)を添加する工程が挙げられる。
添加されるその他の成分(顔料等)については、インクに含有され得るその他の成分として既に説明したとおりである。
【0232】
〔インクの製造方法の別の一例(製法B)〕
架橋ポリマーを含む特定粒子を含有する態様のインクを製造する方法としては、以下に示す、製法Bも好適である。
製法Bは、油相成分を以下のように変更すること以外は製法Aと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0233】
製法Bにおける油相成分は、有機溶剤と、3官能以上のイソシアネート化合物と、酸基を導入したイソシアネート化合物及び/又は酸基導入用化合物と、光酸発生剤と、特定増感剤と、を含む。
製法Bにより光硬化性のインクを製造する場合には、油相成分に、例えば、
ラジカル重合開始剤と、
ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性基導入用化合物、及び、ラジカル重合性基を導入したイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含ませる。
製法Bにより熱硬化性のインクを製造する場合には、油相成分に、更に、例えば、熱重合性モノマーを含ませる。
【0234】
製法Bにおける特定粒子を形成する工程では、油相成分と水相成分とを混合し、得られた混合物を乳化させることにより、以下の全ての反応が起こると考えられる。
・3官能以上のイソシアネート化合物と、酸基を導入したイソシアネート化合物及び/又は酸基導入用化合物と、水と、の反応による、三次元架橋構造を有しかつ酸基を有する架橋ポリマー(即ち、マイクロカプセルのシェル)の形成反応。
・酸基を導入したイソシアネート化合物、酸基導入用化合物、又は、三次元架橋構造を有しかつ酸基を有する架橋ポリマーにおける酸基の中和反応(即ち、アニオン基の生成反応)。
・三次元架橋構造を有しかつ酸基を有する架橋ポリマー又は三次元架橋構造を有しかつアニオン基を有する架橋ポリマーを含むシェルと、光酸発生剤及び特定増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセルの形成反応。
【0235】
製法Bにおける特定粒子を形成する工程では、以上の反応が、どのような順序で起こってもよいが、要するに、特定粒子として、三次元架橋構造を有しかつアニオン基を有する架橋ポリマーを含むシェルと、光酸発生剤及び特定増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセルが形成される。
製法Bにおける油相成分は、マイクロカプセルを分散させるための分散剤を含んでもよい。この場合には、製法Bにおける特定粒子を形成する工程では、特定粒子として、分散剤によって被覆されたマイクロカプセル(即ち、分散剤とマイクロカプセルとの複合体)が形成される。
【0236】
〔画像形成方法〕
上述した本開示のインクを用いた画像形成方法の好ましい態様(以下、「画像形成方法X」ともいう)は以下のとおりである。
画像形成方法Xは、基材上に、本開示のインクをインクジェット法によって付与することによりインク膜を形成する工程(以下、「付与工程」ともいう)と、
形成されたインク膜に、光を照射する工程(以下、「光照射工程」ともいう)と、
光が照射されたインク膜を加熱乾燥させて画像を得る工程(以下、「加熱乾燥工程」ともいう)と、
を含む。
画像形成方法Xは、必要に応じその他の工程を有していてもよい。
画像形成方法Xによれば、精細さに優れた画像が形成される。
また、画像形成方法Xによれば、インクの優れた吐出安定性が確保される。
【0237】
(付与工程)
付与工程は、基材上に、本開示のインクをインクジェット法によって付与することによりインク膜を形成する工程である。
【0238】
基材としては、特に制限はなく、例えば、支持体及び記録媒体として提供されている公知の基材を適宜選択して使用することができる。
基材としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリスチレン(PS:Polystyrene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のフィルム)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙、上述した金属がラミネートされ又は蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0239】
また、基材としては、テキスタイル基材も挙げられる。
テキスタイル基材の素材としては、例えば、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維;ビスコースレーヨン、レオセル等の化学繊維;ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維;天然繊維、化学繊維、及び合成繊維からなる群から選択される少なくとも2種である混合物;等が挙げられる。テキスタイル基材としては、国際公開第2015/158592号の段落0039〜0042に記載されたテキスタイル基材を用いてもよい。
【0240】
基材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、ポリスチレン(PS)基材、ポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリプロピレン(PP)基材、アクリル樹脂基材等のプラスチック基材が好ましい。
【0241】
インクジェット法によるインクの付与は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
インクジェット記録装置としては特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。
インクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本開示のインクを含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1pl〜100pl、より好ましくは8pl〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320dpi(dot per inch)×320dpi〜4000dpi×4000dpi、より好ましくは400dpi×400dpi〜1600dpi×1600dpi、さらに好ましくは720dpi×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、dpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
【0242】
(光照射工程)
光照射工程は、形成されたインク膜に、光を照射する工程である。
これにより、前述のとおり、光酸発生剤及び特定増感剤の作用によってインク膜が効果的に増粘する。増粘したインク膜を、後述の加熱乾燥工程にて加熱乾燥させることにより、精細さに優れた画像が形成される。
【0243】
光照射工程において、インク膜に照射する光のピーク波長は、前述の特定増感剤を効果的に電子励起させる観点から、好ましくは380nm〜400nmであり、特に好ましくは385nm又は395nmである。
光照射工程では、インク膜を効果的に増粘させる観点から、インク膜に対し、LED(Light Emitting Diode)光源から照射された紫外線(UV光)を照射することが好ましい。
光照射工程において、インク膜に照射される光のエネルギーは、好ましくは10mJ/cm〜300mJ/cmであり、より好ましくは15mJ/cm〜200mJ/cmであり、更に好ましくは20mJ/cm〜100mJ/cmである。
【0244】
(加熱乾燥工程)
加熱乾燥工程は、前述の光照射工程にて光が照射されたインク膜を、加熱乾燥させて画像を得る工程である。
本開示の画像形成方法において、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱乾燥工程における加熱により、インク膜の硬化(即ち、熱重合性モノマーによる熱重合)を行ってもよい。言い換えれば、本開示のインクとして、前述の熱硬化性のインクを用いる場合には、加熱乾燥工程が、後述の硬化工程Bを兼ねていてもよい。
【0245】
加熱乾燥工程における加熱の態様としては、基材上に付与されたインクを加熱手段によって加熱する態様が挙げられる。
加熱乾燥のための加熱手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、赤外線LED、赤外線ヒーター、熱オーブン、ヒート板、赤外線レーザー、赤外線ドライヤー等が挙げられる。
【0246】
加熱乾燥における加熱温度は、40℃以上が好ましく、40℃〜200℃がより好ましく、45℃〜100℃が更に好ましく、50℃〜80℃が更に好ましく、55℃〜70℃が更に好ましい。
加熱温度は、基材上のインクの温度を指し、赤外線サーモグラフィ装置H2640(日本アビオニクス株式会社製)を用いたサーモグラフで測定することができる。
加熱時間は、加熱温度、インクの組成、印刷速度等を加味し、適宜設定することができる。加熱時間は、5秒以上が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜1分がより好ましく、20秒〜1分が更に好ましい。
【0247】
(硬化工程)
画像形成方法Xにおいて、硬化性(光硬化性又は熱硬化性)のインクを用いる場合、画像形成方法Xは、加熱乾燥工程で得られた画像を硬化させる硬化工程を有していてもよい。
この硬化工程により、インク膜中において、重合性モノマー及び/又はポリマーの重合性基による重合反応(即ち、架橋反応)が進行する。
従って、画像形成方法Xが硬化工程を有する場合には、画像の硬度及び引っかき耐性をより向上させることができる。
【0248】
画像形成方法Xにおいて、光硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱乾燥工程で得られた画像に対して光を照射することにより、画像を光硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程A」)を設けることができる。
【0249】
画像形成方法Xにおいて、熱硬化性のインクを用いる場合、硬化工程として、加熱乾燥工程で得られた画像に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことにより画像を熱硬化させる硬化工程(以下、「硬化工程B」)を設けることができる。
但し、熱硬化性のインクを用いる場合、この硬化工程Bを設けず、前述の加熱乾燥工程により、熱硬化を行ってもよい。
即ち、画像形成方法Xにおいて、熱硬化性のインクを用いる場合は、インク膜の加熱乾燥を行う加熱乾燥工程と、画像の熱硬化を行う硬化工程Bと、を別個に設けてもよいし、インク膜の加熱乾燥及び熱硬化を両方行う1回の加熱乾燥工程を設けてもよい。
【0250】
−硬化工程A−
硬化工程Aは、加熱乾燥工程で得られた画像に対して光を照射することにより、画像を光硬化させる工程である。
硬化工程Aでは、画像に対して光を照射することにより、画像中の特定粒子の光架橋反応(即ち、光重合反応)が進行し、これにより画像の強度が高められる。
【0251】
硬化工程Aで用いることができる光としては、紫外線(UV光)、可視光線、電子線等を挙げられ、これらの中でも、UV光が好ましい。
【0252】
硬化工程Aで用いることができる光のピーク波長は、200nm〜405nmであることが好ましく、220nm〜390nmであることがより好ましく、220nm〜385nmであることが更に好ましい。
また、200nm〜310nmであることも好ましく、200nm〜280nmであることも好ましい。
【0253】
硬化工程Aにおいて、画像に照射される光のエネルギーは、好ましくは100mJ/cm〜4000mJ/cmであり、より好ましくは200mJ/cm〜3000mJ/cmであり、更に好ましくは300mJ/cm〜2500mJ/cmである。
【0254】
硬化工程Aにおける光が照射される際の露光面照度は、例えば10mW/cm〜2000mW/cm、好ましくは20mW/cm〜1000mW/cmである。
【0255】
硬化工程Aにおける光を発生させるための源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV蛍光灯、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。
また、上記で例示された光源の、半導体紫外発光デバイスへの置き換えは、産業的にも環境的にも非常に有用である。
半導体紫外発光デバイスの中でも、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)は、小型、高寿命、高効率、及び低コストであり、光源として期待されている。
光源としては、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED、又は青紫レーザーが好ましい。
これらの中でも、増感剤と光重合開始剤とを併用する場合は、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な超高圧水銀ランプ、波長365nm、405nm、若しくは436nmの光照射が可能な高圧水銀ランプ、又は、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDがより好ましく、波長355nm、365nm、385nm、395nm、若しくは405nmの光照射が可能なLEDが最も好ましい。
【0256】
硬化工程Aおいて、画像に対する光の照射時間は、例えば0.01秒間〜120秒間であり、好ましくは0.1秒間〜90秒間である。
照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を同様に適用することができる。
光の照射方式として、具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニット及び光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって光の照射を行う方式が好ましい。
硬化工程Aの光の照射は、インク膜の加熱乾燥後、一定時間(例えば0.01秒間〜120秒間、好ましくは0.01秒間〜60秒間)をおいて行うことが好ましい。
【0257】
−硬化工程B−
硬化工程Bは、加熱乾燥工程で得られた画像に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことによりインク膜を熱硬化させる工程である。
硬化工程Bでは、画像に対し、加熱又は赤外線の照射を施すことにより、画像中の特定粒子の熱架橋反応(即ち、熱重合反応)が進行し、これにより画像の強度が高められる。
硬化工程Bの好ましい態様は、加熱工程の好ましい態様と同様である。
【実施例】
【0258】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例に限定されることはない。

以下において、「部」は、特に断りが無い限り、質量部を表す。
【0259】
<原料ポリマーの合成>
原料ポリマー(即ち、特定ポリマーの原料である、酸基を有するポリマー)として、以下に示すポリマーP−1〜P−3及びポリマーP−aを合成した。
ポリマーP−1〜P−3及びポリマーP−aは、いずれも鎖状ポリマーである。
詳細には、ポリマーP−1〜P−3は、ウレタンポリマーであり、ポリマーP−aは、アクリルポリマーである。
これらポリマーP−1〜P−3及びポリマーP−a中の酸基(具体的にはカルボキシ基)の一部は、後述する、油相成分と水相成分とを混合する段階で中和され、アニオン基(具体的にはカルボキシラト基)となる。この中和により、特定ポリマー(即ち、アニオン基であるカルボキシラト基を有するポリマー)が形成される。
【0260】
(ポリマーP−1の合成)
下記反応スキームに従い、酸基及び光重合性基を有するポリマーP−1を合成した。
なお、ポリマーP−1は、粒子の原料としてだけでなく、実施例307におけるマイクロカプセルに対する分散剤としても用いた。
【0261】
【化16】
【0262】
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(137.4g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(25.48g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(19.6g)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(化合物(a−21))(101.7g)、及び酢酸エチル(182.5g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、ネオスタンU−600(日東化成(株)製、無機ビスマス触媒;以下、「U−600」ともいう)を0.36g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤であるイソプロピルアルコール(199g)と、酢酸エチル(444.7g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマーP−1の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマーP−1の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.65mmol/gであった。
【0263】
(ポリマーP−2の合成)
下記反応スキームに従い、酸基及び光重合性基を有するポリマーP−2を合成した。
【0264】
【化17】
【0265】
三口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(116.4g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(25.48g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(24.1g)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(化合物(a−21))(101.7g)、及び酢酸エチル(161.4g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、ネオスタンU−600(日東化成(株)製、無機ビスマス触媒;以下、「U−600」ともいう)を0.32g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤であるイソプロピルアルコール(184.3g)と、酢酸エチル(410.44g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマーP−2の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマーP−2の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.65mmol/gであった。
【0266】
(ポリマーP−3の合成)
下記反応スキームに従い、酸基を有し、かつ、光重合性基を有しないポリマーP−3を合成した。
【0267】
【化18】
【0268】
三口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’―ジイソシアネート(HMDI)(137.4g)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(20.8g)、トリシクロデカンジメタノール(化合物(2−5))(60.8g)、及び酢酸エチル(219.1g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、U−600を0.43g添加し、70℃で5時間撹拌した。
次に、そこに、末端封止剤としてのイソプロピルアルコール(IPA)(165.2g)と、酢酸エチル(324.6g)と、を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリマーP−3の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマーP−3の重量平均分子量(Mw)は8000であり、酸価は0.65mmol/gであった。
【0269】
(ポリマーP−aの合成)
酸基を有し、かつ、光重合性基を有しない下記ポリマーP−aを合成した。
【0270】
【化19】
【0271】
三口フラスコに、1―メトキシ−2−プロパノール(93.0g)を仕込み、10mL/minの窒素気流下、75℃で30分撹拌した。ここに、メタクリル酸(8.7g)、メタクリル酸メチル(30.0g)、イソボルニルメタクリレート(111.3g)、V−601(和光純薬工業製、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸))(4.15g)、ドデシルメルカプタン(0.91g)及び1―メトキシ−2−プロパノール(57.7g)の混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃でさらに2時間撹拌した。得られた反応液を室温まで放冷した後、水200mL/アセトン20mLの混合液に注いだ。析出した粉体をろ取し、オーブンにて60℃で6時間乾燥した。得られた粉体に酢酸エチルを加えて濃度調整を行うことにより、ポリマーP−a(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/イソボルニルメタクリレート(=5.8/20/74.2[質量比])共重合体)の30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル)を得た。
ポリマーP−aの重量平均分子量(Mw)は20000であり、酸価は0.65mmol/gであった。
【0272】
<増感剤の準備>
以下の増感剤を準備した。
ここで、
ITXは、式(S1)で表される化合物の一例であり(表1及び表2では、分類「S1」と表記した)、
TCは、式(S2)で表される化合物の一例であり(表1及び表2では、分類「S2」と表記した)、
DBAは、式(S3)で表される化合物の一例である(表1及び表2では、分類「S3」と表記した)。
【0273】
【化20】
【0274】
<光酸発生剤の準備>
以下の光酸発生剤を準備した。
以下において、
PAG−2は、式(G1)で表される化合物の一例であり(表1及び表2では、分類「G1」と表記した)、
PAG−5、PAG−7、PAG−9、及びPAG−11は、式(G2)で表される化合物の一例であり(表1及び表2では、分類「G2」と表記した)、
PAG−13は、式(G1)で表される化合物及び式(G2)で表される化合物以外のその他の光酸発生剤の一例である(表1及び表2では、分類「その他」と表記した)。
また、各化合物におけるXの種類は、表1〜表5に示すとおりである。
【0275】
【化21】
【0276】
<増感助剤の準備>
一部の実施例の粒子の原料である、以下の増感助剤を準備した。
ここで、MNTは、式(SA)で表される化合物の一例である。
【0277】
【化22】
【0278】
〔実施例101〕(光硬化性のインク)
<水分散物の調製>
−油相成分の調製−
酢酸エチル及びエタノールの混合溶液(酢酸エチル:エタノール(質量比)=10:1)と、
ポリマーP−1(原料ポリマー)の30質量%溶液(ポリマーP−1の量として50部)と、
サートマー社製のラジカル重合性モノマーSR833S(21部;以下、「S833」ともいう)と、
サートマー社製のラジカル重合性モノマーSR399E(18.5部;以下、「S399」ともいう)と、
BASF社製のラジカル重合開始剤IRGACURE(登録商標)819(3部;以下、「IRG819」ともいう)と、
増感剤としてのITX(2.5部)と、
光酸発生剤としてのPAG−13(5部)と、
を混合し、15分間撹拌することにより、固形分36質量%の油相成分44gを得た。
【0279】
S833は、環状構造を有する2官能のラジカル重合性モノマーであり、具体的にはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304)である。
S399は、環状構造を有しない5官能のラジカル重合性モノマーであり、具体的にはジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量525)である。
IRG819は、アシルホスフィンオキシド系ラジカル重合開始剤であり、具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドである。
【0280】
−水相成分の調製−
蒸留水(45g)と、中和剤としての水酸化ナトリウムと、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
中和剤としての水酸化ナトリウムの使用量は、特定ポリマー(詳細には、ポリマーP−1が中和されることによって形成される特定ポリマー)の中和度が50%となるように調整した。
【0281】
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を25℃でホモジナイザーを用いて18000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。得られた乳化物を蒸留水(25g)に添加し、得られた液体を室温で30分撹拌した。次に、この液体を50℃に加熱し、50℃で6時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチル及びエタノールを留去した。
酢酸エチル及びエタノールが留去された液体を、更に、50℃で24時間撹拌することにより、液体中に特定粒子を形成させた。
次に、この特定粒子を含む液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、特定粒子の水分散物を得た。
【0282】
原料ポリマーであるポリマーP−1は、粒子の形成過程(詳細には、油相成分と水相成分との混合以降の過程)で中和される。
特定粒子中には、ポリマーP−1が中和されて形成された特定ポリマー(アニオン基としてのカルボキシラト基を有する鎖状ポリマー)が含まれている。
原料ポリマーであるポリマーP−1及び中和よって形成された鎖状ポリマーは、いずれも、鎖状のウレタンポリマーである。
【0283】
<光硬化性のインクの調製>
下記組成の各成分を混合し、光硬化性のインクを作製した。
−光硬化性のインクの組成−
・上記水分散物 … 82部
・顔料分散液(Pro−jet Cyan APS1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製)、顔料濃度14質量%) … 13部
・フッ素系界面活性剤(DuPont社製、Capstone FS−31、固形分25質量%) … 0.3部
・2−メチルプロパンジオール … 4.7部
【0284】
得られたインクにおける、特定粒子1g当たりのアニオン基のミリモル数である粒子中アニオン価A(mmol/g)、特定粒子1g当たりの光酸発生剤のミリモル数である粒子中光酸発生剤量G(mmol/g)、及び、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値(即ち、「差〔A−G〕」)は、表1に示すとおりである。
【0285】
<評価>
上記で得られた光硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0286】
(吐出安定性)
調製後室温で1日以内保管した上記光硬化性のインクをインクジェットプリンタ(ローランド ディー.ジー.社製、SP−300V)のヘッドから30分間吐出し、次いで吐出を停止した。
吐出の停止から所定の時間(詳細には、5分間、8分間、及び10分間のそれぞれの時間)経過した後、基材上に、再び上記ヘッドから上記インクを吐出させ、5cm×5cmのベタ画像を形成した。
基材としては、DUROplastic社製のポリプロピレン(PP)基板であるCORREXを用いた。
これらの画像を目視で観察し、不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの有無を確認し、下記評価基準に従ってインクの吐出安定性を評価した。
下記評価基準において、インクの吐出安定性が最も優れるものは、Aである。
【0287】
−吐出安定性の評価基準−
A:吐出の停止から10分経過後の吐出評価時にも不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:吐出の停止から8分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られたが、10分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルが発生し、ドット欠けの発生が認められた。
C:吐出の停止から5分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られたが、8分経過後の吐出評価時には不吐出ノズルが発生し、ドット欠けの発生が認められた。
D:吐出の停止から5分経過後の吐出評価時に不吐出ノズルが発生し、ドット欠けの発生が認められた。
【0288】
(画像の精細さ)
上記基材に対し、上記光硬化性のインクを上記インクジェットプリンタのヘッドから吐出し、図1に示す文字画像を、5ポイント、6ポイント、7ポイント、8ポイント、及び10ポイントの各サイズにて形成した。
形成された各サイズの文字画像に対し、LED光源からの波長385nmの紫外光(UV光)を照射した。
LED光源としては、実験用385nmUV−LED照射器(CCS(株)製)を用いて行った。照射するUV光のエネルギー(露光エネルギー)は、50mJ/cmとした。
次に、上記UV光が照射された各サイズの文字画像を、60℃で3分間加熱乾燥させた。加熱乾燥の方法は、温風乾燥とした。
【0289】
加熱乾燥後の各サイズの図1に示す文字画像を、倍率10倍のクラフトルーペ(エツミ社製)によって観察した。観察した結果に基づき、下記評価基準にて、画像の精細さを評価した。下記評価基準において、画像の精細さが最も優れるものは、Aである。
【0290】
−画像の精細さの評価基準−
A:5ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された。
B:6ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、Aに該当する場合を除く)。
C:7ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、A及びBに該当する場合を除く)。
D:8ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、A〜Cに該当する場合を除く)。
E:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れ及びにじみ無く形成された(但し、A〜Dに該当する場合を除く)。
F:10ポイントのサイズの図1に示す文字画像が、潰れて、又は、にじんで形成された。
【0291】
(硬化膜の鉛筆硬度)
各サイズの文字画像に変えてベタ画像を形成したこと以外は画像の精細さの評価と同様にして、LED光源からのUV光の照射、及び、加熱乾燥がこの順に施されたベタ画像を得た。
加熱乾燥後のベタ画像に対し、メタルハライドランプ光源からのUV光を照射することにより、ベタ画像を硬化させ、硬化膜を得た。
メタルハライドランプ光源からのUV光の照射は、光源としてオゾンレスメタルハライドランプMAN250Lを搭載し、コンベアスピード35m/分、露光強度(UV光の強度)1.0W/cmに設定した実験用UVミニコンベア装置CSOT((株)ジーエス・ユアサパワーサプライ製)を用いて行った。
メタルハライドランプ光源から照射されるUV光のエネルギーは、1000mJ/cmとした。
【0292】
上記硬化膜について、JIS K5600−5−4(1999年)に基づき、鉛筆硬度を測定した。
鉛筆硬度の測定に用いる鉛筆としては、三菱鉛筆(株)製のUNI(登録商標)を使用した。
【0293】
(硬化膜の引っかき耐性)
鉛筆硬度の評価と同様にして形成した硬化膜に対し、以下の条件の引っかき試験を実施した。
【0294】
−引っかき試験の条件−
・装置 … ハイドン社製の往復摩耗試験機「TYPE30S」
・引っかき針 … 先端の曲率半径が1.0mmであるSUS(ステンレス)製の引っ掻き針
・加重 … 100g及び200gの2条件
・引っかき速度 … 3000mm/min.
・引っかき回数 … 5往復
【0295】
引っかき試験の実施後、硬化膜の表面を目視で観察し、下記評価基準に従って、硬化膜の引っかき耐性を評価した。
下記評価基準において、硬化膜の引っかき耐性が最も優れるものは、Aである。
【0296】
−硬化膜の引っかき耐性の評価基準−
A:5往復後において、荷重100g及び荷重200gのいずれの条件においても、硬化膜に引っかき跡は見られなかった。
B:5往復後において、荷重100gの条件では硬化膜に引っ掻き跡は見られなかったが、荷重200gの条件では、硬化膜にわずかに引っかき跡が見られた。
C:5往復後において、荷重100gの条件で、硬化膜にわずかに引っかき跡が見られた。
D:5往復後において、荷重100gの条件で、硬化膜にはっきりと引っかき跡が見られた。
【0297】
〔実施例102〜107〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、光酸発生剤の種類(Xの種類を含む)と増感剤の種類との組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0298】
〔実施例108〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、更に、表1に示す種類及び量の増感助剤を加え、かつ、ラジカル重合性モノマーS833の量を表1に示すように変更したこと以外は実施例105と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0299】
〔実施例109〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、増感剤の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例108と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0300】
〔実施例110、111、及び116〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、原料ポリマーの種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例108と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0301】
〔実施例112〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、ラジカル重合開始剤を用いず、かつ、ラジカル重合性モノマーS833の量を表1に示すように変更したこと以外は実施例108と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0302】
〔実施例113〜115〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、光酸発生剤の種類(Xの種類を含む)を表1に示すように変更したこと以外は実施例108と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0303】
〔実施例117〜126、及び、比較例101〜102〕(光硬化性のインク)
水分散物の調製において、原料ポリマーの量、特定ポリマーの中和度、光酸発生剤の量、及びラジカル重合性モノマーの量の組み合わせを、表2に示すように変更することにより、差〔A−G〕(粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値)を、表2に示すように変更したこと以外は実施例108と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0304】
【表1】
【0305】
【表2】
【0306】
−表1〜表5の説明−
「ポリマー」欄における「種類」は、原料ポリマーの種類を示す。
「ポリマー」欄における「酸価(mmol/g)」は、原料ポリマー1gあたりの酸基(具体的にはカルボキシ基)のミリモル数を示す。
「ポリマー」欄における「中和度」は、特定ポリマーの中和度(即ち、特定ポリマーにおける、アニオン基及び酸基の総モル数に対するアニオン基のモル数の割合;%)を示す。
「ポリマー」欄における「アニオン価(mmol/g)」は、特定ポリマーのアニオン価(即ち、特定ポリマー1gあたりのアニオン基のミリモル数)を示す。
光酸発生剤の分類における「G1」は、光酸発生剤が、式(G1)で表される化合物に該当することを意味する。
光酸発生剤の分類における「G2」は、光酸発生剤が、式(G2)で表される化合物に該当することを意味する。
光酸発生剤の分類における「その他」は、光酸発生剤が、式(G1)で表される化合物にも式(G2)で表される化合物にも該当しないことを意味する。
光酸発生剤のXにおける「BF4」は、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)を意味する。
光酸発生剤のXにおける「CF3CO3」は、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFCO)を意味する。
光酸発生剤のXにおける「PF6」は、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)を意味する。
増感剤の分類における「S1」は、増感剤が、式(S1)で表される化合物に該当することを意味する。
増感剤の分類における「S2」は、増感剤が、式(S2)で表される化合物に該当することを意味する。
増感剤の分類における「S3」は、増感剤が、式(S3)で表される化合物に該当することを意味する。
「粒子中アニオン価A(mmol/g)」は、特定粒子1gあたりのアニオン基(具体的にはカルボキラト基)のミリモル数を示す。
「粒子中光酸発生剤量G(mmol/g)」は、特定粒子1gあたりの光酸発生剤のミリモル数を示す。
【0307】
表1及び表2に示すように、水と、アニオン基を有するポリマー(即ち、特定ポリマー)、光酸発生剤、及び増感剤を含む粒子(即ち、特定粒子)と、を含有し、粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値(差〔A−G〕)が、−0.20以上0.20以下である光硬化性のインクを用いた実施例101〜126では、形成された画像の精細さに優れ、かつ、インクの吐出安定性に優れていた。
これに対し、差〔A−G〕が0.20を超える比較例101は、画像の精細さに劣っていた。
また、差〔A−G〕が−0.20未満である比較例102は、インクの吐出安定性に劣っていた。
【0308】
上述した実施例101〜126の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.10μm〜0.25μmの範囲であった。
【0309】
実施例101〜103の結果から、光酸発生剤が、式(G1)で表される化合物又は式(G2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である場合(実施例102及び103)、画像の精細さがより向上することがわかる。
【0310】
実施例102及び103の結果から、光酸発生剤が、式(G2)で表される化合物を含む場合(実施例103)、画像の精細さがより向上することがわかる。
【0311】
実施例103〜105の結果から、光酸発生剤が式(G2)で表される化合物を含む場合において、式(G2)中のXが、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFCO)又はヘキサフルオロリン酸イオン(PF)である場合(実施例104及び105)、画像の精細さがより向上することがわかる。
【0312】
実施例105〜107の結果から、増感剤が、式(S1)で表される化合物を含む場合(実施例105)、画像の精細さがより向上することがわかる。
【0313】
実施例105及び108の結果から、粒子が、更に、増感助剤(式(SA)で表される化合物に該当するMNT)を含む場合(実施例108)、画像の精細さがより向上することがわかる。
【0314】
実施例108、0110、及び111の結果から、特定ポリマーが、ラジカル重合性基を有する場合〔実施例108(ポリマーP−1)及び110(ポリマーP−2)〕、画像の鉛筆硬度及び引っかき耐性がより向上することがわかる。
【0315】
実施例108及び112の結果から、特定粒子が、ラジカル重合開始剤を含む場合(実施例108)、画像の鉛筆硬度及び引っかき耐性がより向上することがわかる。
【0316】
〔実施例201〕(熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
水分散物の調製において、原料ポリマーの種類を表3に示すように変更し、かつ、S833、S399、及びIRG819を、60℃、2.67kPa(20torr)の条件でプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去したTrixeneTMBI7982(熱重合性モノマー;ブロックイソシアネート;Baxenden Chemicals社)(以下、「BI7982」ともいう;量は表3に示すとおり;分子量793)に変更したこと以外は実施例105と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
【0317】
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、以下の評価を行った。
結果を表3に示す。
【0318】
(インクの吐出安定性)
実施例101におけるインクの吐出安定性の評価と同様にして実施した。
【0319】
(画像の精細さ)
実施例101における画像の精細さの評価と同様にして実施した。
【0320】
(硬化膜の鉛筆硬度)
ベタ画像に対して、加熱乾燥(LED光源からのUV光の照射後の加熱乾燥)及びUV光照射(メタルハライドランプ光源)を施す操作を、ベタ画像を120℃のオーブンで5分加熱する操作に変更したこと以外は実施例101における硬化膜の鉛筆硬度の評価と同様にして、硬化膜の鉛筆硬度の評価を実施した。
【0321】
(硬化膜の引っかき耐性)
ベタ画像に対して、加熱乾燥(LED光源からのUV光の照射後の加熱乾燥)及びUV光照射(メタルハライドランプ光源)を施す操作を、ベタ画像を120℃のオーブンで5分加熱する操作に変更したこと以外は実施例101における硬化膜のひっかき耐性の評価と同様にして、硬化膜の引っかき耐性の評価を実施した。
【0322】
〔実施例202〕(熱硬化性のインク)
水分散物の調製において、更に、表3に示す種類及び量の増感助剤を加え、かつ、熱重合性モノマーBI7982の量を表3に示すように変更したこと以外は実施例201と同様の操作を行った。
【0323】
〔比較例201〕(熱硬化性のインク)
特定ポリマーの中和度を表3に示すように変更し、これにより、差〔A−G〕(粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値)が表3に示す値となるように変更したこと以外は実施例202と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0324】
【表3】
【0325】
表3に示すように、熱硬化性のインクに関する実施例201及び202においても、光硬化性のインクに関する実施例105及び108と同様の結果が得られた。
【0326】
上述した実施例201及び202の各々における特定粒子の水分散物を用い、特定粒子の体積平均分散粒子径を測定した。
その結果、いずれの例においても、特定粒子の体積平均分散粒子径は、0.10μm〜0.25μmの範囲であった。
【0327】
〔実施例301〕(MCを含有する光硬化性のインク)
<マイクロカプセル(MC)の水分散物の調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、及び増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
【0328】
−油相成分の調製−
酢酸エチルと、
三井化学社製のタケネート(登録商標)D−120N(固形分である3官能イソシアネート化合物の量として43.5部;以下、この固形分を「D120」ともいう)と、
下記NCO1の溶液(固形分であるNCO1の量として25部)と、
ラジカル重合性モノマーである前述のS833(21部)と、
ラジカル重合開始剤である前述のIRG819(3部)と、
光酸発生剤である前述のPAG−9(XはCFCO)(5部)と、
増感剤である前述のITX(2.5部)と、
を混合し、15分間撹拌することにより、固形分30質量%の油相成分45.7gを得た。
【0329】
タケネートD−120Nは、トリメチロールプロパン(TMP)と1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)との付加物(3官能イソシアネート化合物である「D120」)の75質量%酢酸エチル溶液である。
【0330】
NCO1は、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であり、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)とIPDIとの付加物(DMPA/IPDI=1/3(モル比))である。
NCO1の酸価(1gのNCO1当たりのカルボキシ基のミリモル数)は、1.24mmol/gである。
上述のNCO1の溶液は、NCO1の35質量%酢酸エチル溶液である。
NCO1の溶液は、三口フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)16.5g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)82g、及び酢酸エチル(AcOEt)186gを加え、50℃に加熱し、そこにネオスタンU−600を0.3g添加し、3時間反応させることによって調製した。
【0331】
−水相成分の調製−
蒸留水(43.1g)と、中和剤としての水酸化ナトリウムと、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
また、中和剤としての水酸化ナトリウムの使用量は、製造されるMCのシェル(架橋ポリマー)の中和度が50%となるように調整した。
【0332】
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を室温でホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を50℃に加熱し、50℃で5時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。残った液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、マイクロカプセル(MC)の水分散物を得た。
【0333】
このマイクロカプセル(MC)のシェルである架橋ポリマーは、3官能イソシアネート化合物であるD120と、カルボキシ基を導入したイソシアネート化合物であるNCO1と、水と、の反応によって形成された、三次元架橋構造を有するウレタンポリマーである。
架橋ポリマーは、NCO1中のカルボキシ基の一部が中和されて生成したカルボキシラト基(アニオン基)を有する。
【0334】
<光硬化性のインクの調製>
下記組成の各成分を混合し、光硬化性のインクを作製した。
−光硬化性のインクの組成−
・上記水分散物 … 82部
・顔料分散液(Pro−jet Cyan APS1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製)、顔料濃度14質量%) … 13部
・フッ素系界面活性剤(DuPont社製、Capstone FS−31、固形分25質量%) … 0.3部
・2−メチルプロパンジオール … 4.7部
【0335】
<評価>
得られた光硬化性のインクを用い、実施例101で実施した評価と同様の評価を行った。
結果を表4に示す。
【0336】
〔実施例302〜304〕(MCを含有する光硬化性のインク)
光酸発生剤におけるXの種類及び増感剤の種類の組み合わせを、表4に示すように変更したこと以外が実施例301と同様の評価を行った。
結果を表4に示す。
【0337】
〔実施例305〕(MCを含有する光硬化性のインク)
水分散物の調製において、更に、表4に示す種類及び量の増感助剤を加え、かつ、ラジカル重合性モノマーS833の量を表4に示すように変更したこと以外は実施例302と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0338】
〔実施例306〕(MCを含有するインク)
水分散物の調製において、ラジカル重合性モノマーS833及び光重合開始剤IRG819を用いず、かつ、タケネートD−120Nの使用量を、固形分であるD120の量が表4に示す量となるように変更したこと以外は実施例305と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0339】
〔実施例307〕(MCを含有する光硬化性のインク)
実施例307は、実施例101等で用いたポリマーP−1を、マイクロカプセルの分散剤として用いた例である。
この例では、マイクロカプセルと分散剤との複合体が、特定粒子に該当する。
具体的には、油相成分の調製において、NCO1の溶液(固形分であるNCO1の量として25部)を、ポリマーP−1の30質量%溶液(固形分であるポリマーP−1の量として50部)に変更し、かつ、タケネートD−120Nの使用量を、固形分であるD120の量が表4に示す量となるように変更したこと以外は実施例305と同様の操作を行った。
この例では、中和剤としての水酸化ナトリウムの使用量は、分散剤であるポリマーP−1の中和度が50%となるように調整した。
結果を表4に示す。
【0340】
〔比較例301〕
架橋ポリマーの中和度を表4に示す値となるように変更し、これにより、差〔A−G〕(粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値)が表4に示す値となるように変更したこと以外は実施例305と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0341】
【表4】
【0342】
表4に示すように、MCを含有する光硬化性のインクに関する実施例301〜307においても、インクの吐出安定性及び画像の精細さに優れる効果が得られることが確認された。
【0343】
また、実施例305及び306の結果から、特定粒子が、ラジカル重合性モノマーを含む場合(実施例305)、画像の引っかき耐性がより向上することがわかる。
【0344】
上述した実施例301〜307におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定したところ、MCの体積平均分散粒子径は0.10μm〜0.25μmの範囲であった。
【0345】
〔実施例401〕(MCを含有する熱硬化性のインク)
<熱硬化性のインクの調製>
以下のようにして、三次元架橋構造を有する架橋ポリマーであるウレタンポリマーからなるシェルと、熱重合性モノマー、光酸発生剤、及び増感剤を含むコアと、を含むマイクロカプセル(MC)の水分散物を調製した。
この例では、マイクロカプセル(MC)が特定粒子に該当する。
【0346】
詳細には、S833、IRG819、及びITXを、BI7982(量は表5に示すとおり)に変更し、かつ、D120の量を表5に示す量に変更したこと以外は実施例302における光硬化性のインクの調製と同様にして、熱硬化性のインクを調製した。
熱硬化性のインク中、MCのシェルを形成する架橋ポリマーの構造は、実施例301におけるMCのシェルを形成するポリマーの構造と同様である。
【0347】
<評価>
上記で得られた熱硬化性のインクを用い、熱硬化性のインクに関する実施例201と同様の評価を行った。
結果を表5に示す。
【0348】
〔実施例402〕(MCを含有する熱硬化性のインク)
水分散物の調製において、更に、表5に示す種類及び量の増感助剤を加え、かつ、熱重合性モノマーBI7982の量を表5に示すように変更したこと以外は実施例401と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
【0349】
〔比較例401〕(MCを含有する熱硬化性のインク)
特定ポリマーの中和度を表5に示すように変更し、これにより、差〔A−G〕(粒子中アニオン価Aから粒子中光酸発生剤量Gを差し引いた値)が表5に示す値となるように変更したこと以外は実施例402と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
【0350】
【表5】
【0351】
表5に示すように、MCを含有する熱硬化性のインクに関する実施例401及び402においても、インクの吐出安定性及び画像の精細さに優れる効果が得られることが確認された。
【0352】
上述した実施例401及び402におけるMCの水分散物を用い、MCの体積平均分散粒子径を測定したところ、MCの体積平均分散粒子径は、0.10μm〜0.25μmの範囲であった。
【0353】
2018年3月27日に出願された日本国特許出願2018−060714号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1