(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896321
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】酸性化合物検出用組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20210621BHJP
C07C 251/24 20060101ALN20210621BHJP
C07C 251/70 20060101ALN20210621BHJP
C07C 251/86 20060101ALN20210621BHJP
C07D 213/81 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
G01N31/22 122
!C07C251/24
!C07C251/70
!C07C251/86
!C07D213/81
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-565026(P2019-565026)
(86)(22)【出願日】2019年1月17日
(65)【公表番号】特表2020-520979(P2020-520979A)
(43)【公表日】2020年7月16日
(86)【国際出願番号】KR2019000714
(87)【国際公開番号】WO2019146961
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0010273
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォンジョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ドンファン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンホァン・キム
【審査官】
三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−125032(JP,A)
【文献】
Asato, Eiji, et al,First "back-to-back" shaped compartmental ligand; structural characterization of a tetranuclear zinc(II) complex in a highly flattened form,Chemistry Letters,2000年,No.6,p.678-679
【文献】
INORGANIC CHEMISTRY,2007年,Vol.46(6),p.2224-2236
【文献】
He, Guangjie, et al,The synthesis of a coumarin carbohydrazide dinuclear copper complex based fluorescence probe and its detection of thiols,PLoS One,2016年,Vol.11(2),e0148026/1-e0148026/12
【文献】
Analytica Chimica Acta,2013年,Vol.776,p.69-73
【文献】
Datta, Barun Kumar, et al,A novel chemosensor with visible light excitability for sensing Zn2+ in physiological medium and in HeLa cells,Organic & Biomolecular Chemistry,2014年,Vol.12(27),p.4975-4982
【文献】
Sarkar, Sougata, et al,Redox-Switchable Copper(I) Metallogel: A Metal-Organic Material for Selective and Naked-Eye Sensing of Picric Acid,ACS Applied Materials & Interfaces,2014年,Vol.6(9),p.6308-6316
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/22
C07C 251/24
C07C 251/70
C07C 251/86
C07D 213/81
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物
(カルボキシ基を含む場合には、Na+、またはK+塩)と金属イオンの配位結合で形成された有機金属複合体を含
み、
前記金属イオンの金属は、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、またはランタン族金属であることを特徴とする、酸性化合物検出用組成物:
【化1】
前記化学式1において、
Rは、それぞれ独立して、−R
1、−NH−CO−R
2、または−NH−R
2であり、
R
1は、それぞれ独立して、−OH
、またはアミノ酸残基であり、
前記アミノ酸残基は、アミノ酸の構造からアミノ基を除いた構造であり、
R
2は、C
1−10アルキル、C
6−60アリール、またはN、OおよびSのうちのいずれか1つを含むC
4−60ヘテロアリールである。
【請求項2】
R1は、それぞれ独立して、−OH、またはアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ピロリシン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、セレノシステイン、バリン、トリプトファン、チロシンから構成される群より選択されるいずれか1つのアミノ酸の残基であることを特徴とする、請求項1に記載の酸性化合物検出用組成物。
【請求項3】
R2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、タート−ブチル、ペンチル、タート−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ナフチル、またはピリジニルであることを特徴とする、請求項1に記載の酸性化合物検出用組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式1−1〜1−5で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の酸性化合物検出用組成物:
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項5】
前記ランタン族金属は、Tb、Eu、またはYbであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸性化合物検出用組成物。
【請求項6】
前記酸性化合物は、液体または気体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸性化合物検出用組成物。
【請求項7】
前記酸性化合物は、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、窒素酸化物、硝酸、硫黄酸化物、または硫酸である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸性化合物検出用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年1月26日付の韓国特許出願第10−2018−0010273号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、酸性化合物検出用組成物およびこれを用いて酸性化合物を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機−金属複合体から構成されたネットワークの形成で作られたハイブリッド物質は、単一素材からなる有機材料や無機材料が有する限界を乗り越えて、各自の利点を同時に実現して新たな物性を有することができる。また、有機成分と無機成分の選択および組み合わせにより物質の構造的多様性とデザインの精巧さも極大化することができる。このような有機−金属複合体の代表的な産業的利用のケースとして、エネルギー貯蔵、生体医薬品、センサ、半導体回路素子などがある。
【0004】
有機−金属複合体のうち、メタロゲル(metallogel)は、最近、本格的に研究され始めた。メタロゲルは、多座配位性(multidentate)リガンドと金属イオンが重合体またはネットワークを形成する過程で物質間の空間に溶媒が捕集されるメカニズムにより生成される。構造的に多様なリガンドと様々な金属イオンの配位結合により、先に言及した有機−金属複合体の利点である構造的多様性を実現することができる。また、少量のゲル形成分子(gelator)を用いて大きな体積のバルク物質を作り、物性を制御できるという利点もある。
【0005】
有機−金属複合材料のメタロゲルは、有機ゲル(organogel)とは異なり、配位結合構造の変化を利用して気体分子を検知することができる。例えば、酸性気体分子によって誘発されるpH変化をメタロゲルで検知することができる。酸性気体分子がゲル内部溶媒のpHを変化させると、金属が解離してネットワークが崩れ、その結果、バルク物質が溶液相に変化して崩れ落ちる物理的変化(ゾル−ゲル転移;sol−gel transition)が生じる。これにより、酸性気体分子を検知することができる。その他にも、気体分子が金属に配位して金属の酸化数を変化させる酸化−還元反応を利用する検知戦略も活発に研究された(T.Pal et al.ACS Appl.Mater.Interfaces2014、6、6308−6316)。
【0006】
本発明者らは、有機−金属複合体のメタロゲルが酸性化合物に感応して視覚的に容易に確認可能なゾル−ゲル転移を示す反応性を確認した。これに基づいて、多様な金属−リガンド組み合わせの組成と重量パーセント(weight percent)を変化させてメタロゲルを合成した。酸性気体フロー下、様々な種類のゲルがゾル−ゲル転移により液体状に変化する時間の測定により、金属の種類と重量パーセントに応じて感応性を制御できることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酸性化合物検出用組成物およびこれを用いて酸性化合物を検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の化学式1で表される化合物またはその塩と金属イオンの配位結合で形成された有機金属複合体を含む、酸性化合物検出用組成物を提供する:
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1において、
Rは、それぞれ独立して、−R
1、−NH−CO−R
2、または−NH−R
2であり、
R
1は、それぞれ独立して、−OH、C
6−60アリール、C
1−10アルキル、またはアミノ酸残基であり、
R
2は、C
1−10アルキル、C
6−60アリール、またはN、OおよびSのうちのいずれか1つを含むC
4−60ヘテロアリールである。
【0011】
前記化学式1で表される化合物は、ビフェニル(biphenyl)の母核構造を有しており、パイ−コンジュゲーション(π−conjugation)を介して電荷移動(charge transfer)が可能である。また、前記化学式1で表される化合物は、各ベンゼン環にヒドロキシ基を有しており、ヒドロキシ基のオルト(ortho)位に2個のイミン基を有しており、このようなヒドロキシ基とイミン基を介して金属と配位結合が可能である。
【0012】
特に、前記化学式1で表される化合物は、ヒドロキシ基およびイミン基のほか、イミン基に置換されている置換基Rが金属イオンと追加的な配位結合が可能なR
1置換基、アミド結合(−NH−CO−R
2)、またはアミン基(−NH−R
2)を有することができるという特徴がある。これにより、前記ヒドロキシ基およびイミン基を介した金属イオンとの配位結合以外にも、追加的に金属イオンと配位結合が可能で、前記化学式1で表される化合物と金属イオンは、2次元または3次元のネットワーク構造が形成される。
【0013】
一例として、前記化学式1において、Rが−OHの化合物は、フェノキシドとイミン基およびオキシム部分のヒドロキシ基が様々な金属と配位結合をすることができる。塩基性条件でこの化合物に金属塩を添加する場合、ゲル(gel)の形態で配位結合ネットワークを形成することができ、予想されるネットワークの構造は
図1に示した。
【0014】
前記有機金属複合体は、メタロゲルであって、酸性化合物と反応して液体に変換される特徴があり、この過程は、視覚的に確認可能で酸性化合物の検出に使用することができる。
【0015】
具体的には、前記有機金属複合体は、塩基性条件下で脱プロトン化されたリガンドが金属と配位してネットワークが形成されてメタロゲルとして存在するので、酸性化合物と反応してリガンドのプロトン化により金属イオンが解離しながらネットワークが崩れて液体状に変換される。
【0016】
前記金属イオンの金属は特に制限されず、一例として、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znを含む1周期遷移金属、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Agなどの2周期遷移金属、Ir、Pt、Auなどの3周期遷移金属だけでなく、Tb、Eu、Ybなどのランタン族金属も含む。特に、酸性化合物を検出するという点から、Co、Cu、またはZnが好ましい。
【0017】
前記化学式1において、好ましくは、R
1が−OH、またはアミノ酸残基である。
【0018】
好ましくは、R
1は、それぞれ独立して、−OH、フェニル、ナフチル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、タート−ブチル、ペンチル、タート−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、もしくは3−ペンチルであるか、またはアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ピロリシン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、セレノシステイン、バリン、トリプトファン、チロシンから構成される群より選択されるいずれか1つのアミノ酸の残基である。
【0019】
前記アミノ酸残基とは、アミノ酸の構造からアミ
ノ基を除いた構造を意味する。アミン基は、アルデヒドと縮合してイミンを形成する。例えば、アラニン(alanine)の場合、アラニンの構造からアミン基を除いたプロピオン酸(propionic acid)がアミノ酸残基となる。
【0020】
また、好ましくは、R
2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、タート−ブチル、ペンチル、タート−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ナフチル、またはピリジニルである。
【0021】
また、前記化学式1で表される化合物がカルボキシ基を含む場合には、塩の形態で存在することができ、この時、対イオン(counter ion)は、Na
+、K
+などになってもよい。
【0022】
前記化学式1で表される化合物の代表例は、下記の化学式1−1〜1−5で表される化合物のうちのいずれか1つである:
【0023】
【化2】
【化3】
【化4】
【0024】
また、本発明は、前述した化学式1で表される化合物の製造方法として、下記反応式1のような製造方法を提供する:
【0025】
【化5】
【0026】
具体的には、前記製造方法は、前記化学式1’で表される化合物、前記化学式2’で表される化合物およびトリフルオロ酢酸を反応させて、前記化学式3’で表される化合物を製造する段階(段階1);および前記化学式3’で表される化合物を前記化学式4’で表される化合物と反応させる段階を含む。
【0027】
前記段階1は、Duff反応(Duff reaction)であって、前記化学式1’で表される化合物のヒドロキシ基のオルト(ortho)位にアルデヒド基を置換させる反応である。
【0028】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物と前記化学式2で表される化合物のモル比は、1:20である。また、前記トリフルオロ酢酸は、溶媒の役割も同時に果たすもので、前記化学式1で表される化合物と前記化学式2で表される化合物をすべて溶解できる程度に使用することが好ましい。
【0029】
好ましくは、前記段階1の反応温度は、100℃〜150℃である。また、好ましくは、前記段階1の反応時間は、1日〜10日である。
【0030】
前記段階1の反応後、生成物を得る段階が追加されてもよい。一例として、1モル〜5モルの過剰の塩酸に反応混合物を添加し、1日〜3日間撹拌して沈殿物を得ることができる。その精製のために、沈殿物をジメチルスルホキシドで再結晶して、化学式3’で表される化合物を得ることができる。
【0031】
前記段階2は、アルデヒドとヒドロキシアミンが反応してアルドオキシムを形成する反応であって、前記化学式3’で表される化合物のアルデヒドにアルドオキシムを形成させる反応である。前記化学式4’で表される化合物において、Rの定義は、先に化学式1で定義した通りである。
【0032】
前記段階2の反応の溶媒としては、水、C
1−4アルコール、またはこれらの混合溶媒が好ましく、水/エタノール混合溶媒、または水/メタノール混合溶媒がより好ましい。
【0033】
前記段階2の反応後、生成物を得る段階が追加されてもよい。一例として、前記段階2の反応後、過剰の水を添加して生成される沈殿物をろ過し、水とアセトンで順次に洗浄して、化学式1で表される化合物を得ることができる。
【0034】
また、前記有機金属複合体は、前述した化学式1で表される化合物および前記金属の前駆体を混合して製造することができる。
【0035】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物と金属前駆体のモル比は、1:1〜1:4であり、好ましくは1:2(配位数が6の金属を用いる場合)または1:3(配位数が4の金属を用いる場合)である。さらに、溶媒は、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルホルムアミドが好ましく、追加的にトリエチルアミンやソジウムメトキシドなどの塩基を1当量以上使用することが好ましい。
【0036】
好ましくは、前記反応は、10〜40℃である。また、前記反応後に、超音波処理、または100℃〜140℃で10分〜10時間加熱が追加される。
【0037】
前述のように、本発明による有機金属複合体は、メタロゲルであって、酸性化合物と反応して液体に変換される特徴があり、この過程は、視覚的に確認可能で酸性化合物の検出に使用することができる。
【0038】
前記酸性化合物は、本発明による有機金属複合体の転移を誘導する化合物を意味する。好ましくは、前記酸性化合物は、液体または気体の形態であり、より好ましくは、気体の形態である。また、前記酸性化合物の具体例としては、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、窒素酸化物(NO
x)、硝酸、硫黄酸化物(SO
x)、または硫酸が挙げられる。
【0039】
後述する実施例のように、本発明による有機金属複合体は、塩化水素気体への露出時に液体状に変化し、重量パーセントと金属イオンの種類によって液体に変化する速度の差があることを確認することができた。これにより、酸性化合物ガスセンサへの応用の可能性を確認しただけでなく、有機金属複合体の組成を制御することによって、ガスセンサの感度を向上させることができることを確認した。
【発明の効果】
【0040】
上述のように、本発明による酸性化合物検出用組成物は、有機金属複合体の特性を利用して視覚的に酸性化合物の検出を確認することができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の有機金属複合体のネットワークの構造を模式的に示すものである。
【
図2】本発明の酸性化合物検出用組成物がシリンダ内に装着された様子を示すものである。
【
図3】本発明の有機金属複合体が液体に変化するのにかかる時間(秒)をグラフで示すものである。
【
図4】本発明の実験例においてコバルトメタロゲルが重量パーセントごとに時間に応じて液体に変化する様子を示すものである。
【
図5】本発明の実験例において銅メタロゲルが重量パーセントごとに時間に応じて液体に変化する様子を示すものである。
【
図6】本発明の実験例において亜鉛メタロゲルが重量パーセントごとに時間に応じて液体に変化する様子を示すものである。
【
図7】本発明の実験例において亜鉛メタロゲルがトリフルオロ酢酸によって溶け落ちる過程を時間ごとに示した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
製造例:テトラオキシムビフェニルジオールの製造
【化6】
【0044】
(段階1)
乾燥した丸底フラスコにHMTA(hexamethylenetetramine、7.530g、53.70mmol)を入れた。前記フラスコをアルゴンパージングし、TFA(trifluoroacetic acid、50mL)を入れた。HMTAを完全に溶解させた後、ビフェニル−4,4’−ジオール(1.000g、5.370mmol)を速やかに入れた。前記混合物がオレンジ色になったことを確認した後、120℃に7日間加熱した。生成物は赤黒色であり、これを4N HCl(100mL)に注いで黄色沈殿物をろ過した。沈殿物を熱いDMSOで再結晶して、黄色の微細結晶2.460g(収率:65.1%)を得た。
【0045】
(段階2)
反応器に、前記段階1で製造した化合物(0.296g、1.000mmol)およびNH
2OH−HCl(0.420g、6.0mmol)を入れた。水(7mL)を添加した後、80℃に加熱した。前記混合物が透明になるまでメタノールを滴加した。反応器を硬く密封した後、100℃に1時間加熱した。常温に冷却した後、水を添加して沈殿物を誘導し、これをろ過および水で洗浄して、明るい黄色の生成物(powder、0.360g)を得た。
【0046】
1H NMR(300MHz,DMSO−d)δ11.60(s,4H),10.88(s,2H),8.45(s,4H),7.83(s,s)
【0047】
実施例1−1〜1−4
1)実施例1−1
先に製造例で製造した化合物(テトラオキシムビフェノール、25mg)をDMF(0.88mL)に溶かし、次に、トリエチルアミン(0.02mL)を滴加して混合した溶液Aを準備した。また、Co(OAc)
2・4H
2O(35mg)をDMF(3.53mL)に溶かした溶液Bを準備した。前記溶液A(0.1mL)と前記溶液B(0.4mL)を混合してメタロゲルを製造した後、1分間超音波処理してメタロゲルの強度を増加させた。このように製造したメタロゲルを「Cobalt metallogel2wt%」と名付けた。
【0048】
2)実施例1−2〜1−4
溶液Aおよび溶液Bの製造時、下記表1のようにDMFの使用量を調節することを除けば、前記実施例1−1と同様の方法でメタロゲルを製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2−1〜2−4
1)実施例2−1
先に製造例で製造した化合物(テトラオキシムビフェノール、25mg)をDMF(1.09mL)に溶かし、次に、トリエチルアミン(0.02mL)を滴加して混合した溶液Aを準備した。また、Cu(acac)
2(55mg)をDMF(4.36mL)に溶かした溶液Bを準備した。前記溶液A(0.1mL)と前記溶液B(0.4mL)を混合してメタロゲルを製造した後、1分間超音波処理してメタロゲルの強度を増加させた。このように製造したメタロゲルを「Copper metallogel2wt%」と名付けた。
【0051】
2)実施例2−2〜2−4
溶液Aおよび溶液Bの製造時、下記表2のようにDMFの使用量を調節することを除けば、前記実施例2−1と同様の方法でメタロゲルを製造した。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例3−1〜3−4
1)実施例3−1
先に製造例で製造した化合物(テトラオキシムビフェノール、25mg)をDMF(1.04mL)に溶かし、次に、トリエチルアミン(0.02mL)を滴加して混合した溶液Aを準備した。また、Zn(acac)
2・H
2O(50mg)をDMF(4.15mL)に溶かした溶液Bを準備した。前記溶液A(0.1mL)と前記溶液B(0.4mL)を混合してメタロゲルを製造した後、1分間超音波処理してメタロゲルの強度を増加させた。このように製造したメタロゲルを「Zinc metallogel2wt%」と名付けた。
【0054】
2)実施例3−2〜3−4
溶液Aおよび溶液Bの製造時、下記表3のようにDMFの使用量を調節することを除けば、前記実施例3−1と同様の方法でメタロゲルを製造した。
【0055】
【表3】
【0056】
実験例
図2のように、シリンダの内部に一定体積の、先に製造した実施例のメタロゲルを入れた。Oリングを装着し、クランプを用いてシステムを外部から隔離させた後、一定の流速と流量で塩化水素ガスをシリンダの内部に流した。この後、メタロゲルが溶け落ちる様子を観察しながら時間(秒)を測定した。メタロゲルが完全に溶け落ちるのにかかる時間を下記表4に示し、これをグラフ(
図3)と一定の時間間隔に応じて観察したイメージを
図4〜6に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
前記のように、短時間内に塩化水素ガスを検出することができ、メタロゲルの金属および重量%に応じて時間の差を示すことを確認することができた。したがって、このような特性を利用して酸性化合物の検出およびその感度を制御できることを確認することができる。
【0059】
実験例2
図2のように、シリンダの内部に実施例3−2で製造した4wt%のZinc metallogel(1.2mL)を入れた。シリンダの一方の端にOリングを装着し、シリンダの内部圧力確認のためにオイルバブラーと連結した。シリンダの他方の端にはトリフルオロ酢酸の入っている丸底フラスコとタイゴンチューブで連結した。丸底フラスコに窒素を流して、トリフルオロ酢酸蒸気がシリンダを通過するようにし、メタロゲルが溶け落ちる過程をデジタル映像で録画し、これを一定の時間間隔(20秒)ごとにキャプチャーして
図7に示した。