特許第6896346号(P6896346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896346
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 5/02 20060101AFI20210621BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B23D5/02
   H01L21/304 601B
   H01L21/304 601Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-208229(P2017-208229)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-77018(P2019-77018A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】小池 和裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 正寛
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−85501(JP,A)
【文献】 特開2000−173954(JP,A)
【文献】 特開2001−7135(JP,A)
【文献】 特開2004−76905(JP,A)
【文献】 特開2005−150523(JP,A)
【文献】 特開2010−5721(JP,A)
【文献】 特開2012−114366(JP,A)
【文献】 特開2013−21017(JP,A)
【文献】 特開2014−24158(JP,A)
【文献】 特開2014−24882(JP,A)
【文献】 特開2014−53352(JP,A)
【文献】 特開2016−107368(JP,A)
【文献】 特開2017−112226(JP,A)
【文献】 特開2017−132022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00−25/06
B23C 1/00−9/00
B23D 1/00−13/06
B24B 41/00−51/00
B29C 59/00−59/18
B29C 64/00−64/40
B29C 67/00−67/08
B29C 73/00−73/34
H01L 21/00
H01L 21/304
H01L 21/463
H01L 23/12−23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に複数の分割予定ラインが設定され該複数の分割予定ラインにより区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハと、該デバイスの上方に形成されたバンプと、該バンプを埋設するとともに該ウェーハの表面を覆う封止材と、を含む被加工物の加工方法であって、
切削工具を備える切削装置において、該切削工具の下端が該バンプの上端の高さ位置よりも高くなるように該切削工具を該被加工物の表面に向けて下降させ、該封止材に該バンプの上端の高さ位置に至らない深さの複数の同心円状の切削溝を互いに所定の間隔をおいて形成する切削溝形成工程と、
該切削溝形成工程の後、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具を備えるバイト切削装置において、該切刃の下端が該バンプの上端の高さ位置よりも低くなるように該バイト工具を下降させ、該バイト工具の切刃に切削水を供給しながら該表面側が露出した該被加工物の該封止材の上部及び該バンプの上部をバイト切削することにより、該バンプを該封止材から露出させるバイト切削工程と、を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスが表面に形成された被加工物の裏面を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパソコン等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体等の材料からなるウェーハの表面に複数の交差する分割予定ラインを設定する。そして、該分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。さらに、該ウェーハを所定の厚みに薄化し、その後、該ウェーハを該分割予定ラインに沿って分割するとデバイスチップを形成できる。
【0003】
近年、デバイスチップを所定の実装対象に実装する際に、実装に要する領域の省スペース化のために、フリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている。フリップチップボンディングは、デバイスの表面側に配線基板を介して10μm〜100μm程度の高さの複数のバンプと呼ばれる金属突起物を形成し、これらのバンプを該実装対象に形成された電極に相対させて直接接合する実装技術である。該バンプは、デバイスチップの端子として機能し、配線基板と、金属細線と、を介して該デバイスに接続される。
【0004】
さらに、半導体のパッケージング技術として、金属細線による内部配線を行わずデバイス表面に直接バンプを形成し、ウェーハ表面と、該バンプと、を封止材で覆って封止し、該ウェーハを個々のデバイスチップに分割する技術が実用化されている。該パッケージング技術は、WL−CSP(Wafer-level Chip Size Package)と呼ばれている(特許文献1参照)。
【0005】
ウェーハの表面に形成された該複数のバンプの高さは必ずしも均一ではないため、該複数のバンプをそのままデバイスチップの実装対象に形成された電極に接合させようとしても、一様に接合させるのは容易ではない。そこで、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具が装着されたバイト切削装置により該封止材の上部及び該バンプの上部をバイト切削し、該封止材を薄化するとともに該バンプの高さを均一にする加工方法が開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−7135号公報
【特許文献2】特開2000−173954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
封止材と、バンプと、が形成されたウェーハの表面側をバイト切削するバイト工具は、バイト切削時の加工抵抗が高い該封止材と、金属で形成された該バンプと、を同時にバイト切削する。そのため、該バイト切削により生じる加工負荷や加工熱が該バイト工具に強く働き、該バイト工具の切刃が激しく損耗する。
【0008】
激しく損耗したバイト工具ではさらなるバイト切削を実施できないため、頻繁にバイト工具を交換しなければならない。バイト工具を交換している間はバイト切削装置を使用できず、また、交換用のバイト工具に多大な費用がかかる。したがって、バイト切削装置の加工効率が低くなり問題となる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バイト工具の切刃の摩耗を抑制し、バイト切削装置の加工効率を向上できる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、表面に格子状に複数の分割予定ラインが設定され該複数の分割予定ラインにより区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハと、該デバイスの上方に形成されたバンプと、該バンプを埋設するとともに該ウェーハの表面を覆う封止材と、を含む被加工物の加工方法であって、切削工具を備える切削装置において、該切削工具の下端が該バンプの上端の高さ位置よりも高くなるように該切削工具を下降させ、該表面側が露出した該被加工物の該封止材に該バンプの上端の高さ位置に至らない深さの複数の同心円状の切削溝を互いに所定の間隔をおいて形成する切削溝形成工程と、該切削溝形成工程の後、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具を備えるバイト切削装置において、該切刃の下端が該バンプの上端の高さ位置よりも低くなるように該バイト工具を下降させ、該バイト工具の切刃に切削水を供給しながら該表面側が露出した該被加工物の該封止材の上部及び該バンプの上部をバイト切削することにより、該バンプを該封止材から露出させるバイト切削工程と、を備えることを特徴とする被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様においては、被加工物の表面側をバイト切削するバイト切削工程を実施する前に、該封止材に複数の切削溝を形成する切削溝形成工程を実施する。切削溝形成工程で封止材に切削溝が形成されると、該切削溝が形成される領域を占めていた封止材が除去されるため、バイト工具がバイト切削で除去する封止材を減らせる。その分、バイト切削で該バイト工具にかかる加工負荷が少なくなる。
【0012】
さらに、該バイト切削工程では、バイト切削で発生する加工屑を除去するため、及び、加工により生じる加工熱を除去するために該バイト工具に切削水が供給される。該封止材に切削溝が形成されていると該切削水が該切削溝に溜まるようになり、より効率的にバイト工具に切削水が供給されて加工熱が効率よく除去されるようになる。特に、同心円状の切削溝が互いに所定の間隔をおいて形成されているので被加工物の全域で均一に切削水が保持されやすい。
【0013】
すなわち、封止材に予め切削溝を形成すると、バイト切削で該バイト工具にかかる加工負荷を少なくでき、バイト切削で生じる加工熱を効率良く除去できる。すると、バイト工具の切刃の消耗を抑制でき、バイト工具の交換頻度を低下させてバイト切削装置の加工効率を高められる。
【0014】
したがって、本発明によりバイト工具の切刃の摩耗を抑制し、バイト切削装置の加工効率を向上できる被加工物の加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、表面にバンプ及び封止材が設けられた被加工物を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、表面にバンプ及び封止材が設けられた被加工物を模式的に示す断面図である。
図2】切削溝形成工程を模式的に示す斜視図である。
図3図3(A)は、バイト切削工程を模式的に示す側面図であり、図3(B)は、バイト切削工程を模式的に示す上面図である。
図4図4(A)は、封止材に切削溝が形成された被加工物に切削水が供給された状態を模式的に示す断面図であり、図4(B)は、バイト切削工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る加工方法の被加工物について図1(A)及び図1(B)を用いて説明する。図1(A)は、被加工物を模式的に示す斜視図である。該被加工物5は、ウェーハ1と、バンプ7と、封止材3と、を含む。
【0017】
該ウェーハ1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板である。ウェーハ1の表面1aには複数の分割予定ライン(不図示)が格子状に設定されており、該分割予定ラインにより区画された各領域にはIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス7aが形成されている。最終的に、ウェーハ1が該分割予定ラインに沿って分割されると、個々のデバイスチップが形成される。
【0018】
図1(B)は、被加工物5を模式的に示す断面図である。該バンプ7は、金属等の導電性材料で形成されており、該ウェーハ1が分割されて形成される該デバイスチップの端子となる。ウェーハ1が分割される前にバイト工具を備えるバイト切削装置により被加工物5がバイト切削されて、バンプ7を覆う封止材3の上部及び該バンプ7の上部が部分的に除去される。すると、該バンプ7が封止材3から露出するため、該デバイスチップを所定の実装対象に実装する際に該バンプ7を該実装対象の電極に接合できるようになる。
【0019】
次に、本発明の一態様に係る被加工物5の加工方法について説明する。該被加工物5の加工方法は、該被加工物5の該封止材3に切削溝を形成する切削溝形成工程と、該封止材3の上部及び該バンプ7の上部をバイト切削することにより該バンプ7を該封止材3から露出させるバイト切削工程と、を備える。以下、該被加工物5の加工方法の各工程について説明する。
【0020】
まず、切削溝形成工程について図2を用いて説明する。図2は、切削溝形成工程を模式的に示す斜視図である。該切削溝形成工程は、図2に示される切削装置2により実施される。該切削装置2は、ウェーハ1の表面1aに平行な面内の一方向に沿ったスピンドル6と、該スピンドル6の先端に装着された切削工具8と、を有する切削ユニット4を備える。該スピンドル6を該方向に沿った軸の周りに回転させると該切削工具8を回転できる。
【0021】
該切削工具8は、例えば、外周部に結合剤及び砥粒からなる砥石を備える円環状のブレード、又は超硬メタルソーである。切削工具8を回転させ、回転する該切削工具8を被加工物5に接触させると該被加工物5が切削される。
【0022】
切削溝形成工程では、まず、封止材3側を上方に向けて被加工物5を切削装置2に設置する。次に、切削ユニット4を該被加工物5の上方に位置付ける。そして、切削ユニット4のスピンドル6を回転させ、該切削工具8の下端が被加工物5のバンプ7の上端の高さ位置よりも高くなるように該切削工具8を下降させる。このとき、該表面1aの中心を該表面1aに垂直な方向に貫く軸を中心に被加工物5を回転させておく。そして、形成する予定の円状の切削溝9の径だけ該中心から離れた位置に該切削工具8を切り込ませて該被加工物5の封止材3を切削する。
【0023】
すると、該封止材3にバンプ7に至らない深さの円状の切削溝9が形成される。該切削溝形成工程では、該切削溝9がこのような深さで形成されるように切削工具8を所定の高さ位置に位置付けるため、該切削工具8は導電性材料で形成されたバンプ7を切削することはない。
【0024】
円状の切削溝9が形成された後、該切削ユニット4を上昇させて、該被加工物5及び切削ユニット4を該被加工物5の径方向に所定の距離で相対的に移動させ、再び切削ユニット4を下降させて切削工具8で次々に封止材3を切削させる。すると、封止材3には、複数の同心円状の切削溝9が所定の間隔をおいて形成される。
【0025】
なお、同心円状の切削溝9は他の方法で形成してもよく、例えば、所定の半径の円上に切削砥石が並ぶカップホイールを用いて形成してもよい。この場合、該カップホイールの該切削砥石が並ぶ該円の中心が該表面1aの中心の上方に位置するように該カップホイールを位置付け、該円の中心を上下方向に貫く軸の周りに該カップホイールを回転させる。
【0026】
そして、該カップホイールを下降させて被加工物5の封止材3に接触させて該封止材3を切削する。該カップホイールによる切削により円状の切削溝9を形成した後、該切削砥石が並ぶ円の径とは異なる径の円上に切削砥石が並ぶ複数の他のカップホイールを用いて次々と切削を実施すると、同心円状に並ぶ複数の切削溝9を形成できる。
【0027】
本実施形態に係る被加工物の加工方法では、該切削溝形成工程の後にバイト切削工程を実施する。該バイト切削工程では、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具を備えるバイト切削装置において、封止材3に切削溝9が形成された被加工物5の該封止材3の上部及び該バンプ7の上部をバイト切削することにより、該バンプ7を該封止材3から露出させる。
【0028】
図3(A)は、バイト切削工程を模式的に示す側面図である。該バイト切削工程は、例えば、図3(A)に示すバイト切削装置10が使用される。該バイト切削装置10は、チャックテーブル12と、該チャックテーブル12の上方に配設されたバイト切削ユニット14と、を備える。
【0029】
該チャックテーブル12は、上面側に多孔質部材(不図示)を有する。該多孔質部材の上面は被加工物5を保持する保持面12aとなる。チャックテーブル12は、一端が吸引源(不図示)に接続された吸引路(不図示)を内部に備える。該吸引路の他端は該多孔質部材に接続されている。封止材3側を上方に露出させるように被加工物5を該保持面12a上に載せ、該多孔質部材の孔を通して該吸引源により生じた負圧を該被加工物5に作用させると、被加工物5はチャックテーブル12に吸引保持される。
【0030】
該バイト切削ユニット14は、スピンドル18と、該スピンドル18の一端に保持されたバイトホイール16と、該バイトホイール16に固定されたバイト工具20と、を有する。スピンドル18の他端にはモーター等の回転駆動源(不図示)が接続されており、該回転駆動源がスピンドル18を回転させる。
【0031】
バイト切削装置10は、昇降手段(不図示)をさらに備え、該昇降手段によりスピンドル18を上下方向に移動できる。また、移動手段(不図示)をさらに備え、該移動手段によりチャックテーブル12を保持面12aに平行な面内の方向に直線的に移動できる。該バイト工具20は、下端にダイヤモンドからなる切刃20a(図4(B)参照)を備え、該切刃20aが該保持面12aに保持された被加工物5に接触すると、該被加工物5はバイト切削される。
【0032】
バイト切削装置10の該バイト切削ユニット14の近傍には、該バイト工具20に切削水を供給する切削水供給ノズル22(図3(B)参照)が配設される。被加工物5のバイト切削時には、該切削水供給ノズル22がバイト工具20に供給される。該切削水は、例えば、純水である。該切削水は、バイト切削で生じた加工屑を除去し、また、該バイト工具20や被加工物5を冷却する。
【0033】
バイト切削工程では、まず、封止材3側を上面に露出させた状態でチャックテーブル12の保持面12a上に被加工物5を載せ、該チャックテーブル12に該被加工物5を吸引保持させる。次に、該バイト切削ホイール16を回転させた状態で、該切刃20aの下端が該バンプ7の上端の高さ位置よりも低くなるように該バイト工具20を下降させる。
【0034】
図3(B)は、バイト切削工程を模式的に示す上面図である。該バイト工具20を下降させた後、図3(B)に示すように該切削水供給ノズル22から該バイト工具20に切削水を供給しながら該チャックテーブル12を保持面12aに平行な方向に移動させる。該チャックテーブル12に吸引保持された被加工物5に該バイト工具20が触れると該被加工物5がバイト切削される。
【0035】
また、図4(A)に、バイト切削される直前の被加工物5の断面を模式的に示す。図4(A)に示す通り、本実施形態に係る被加工物の加工方法では、該バイト切削を実施する前に該切削溝形成工程により該封止材3に切削溝9が形成されている。そして、バイト切削工程では、切削水がバイト工具20に供給され該切削水が周囲に飛散する。すると、飛散した切削水が該切削溝9に入り込む。
【0036】
該切削溝9に切削水24が入り込んでいると、図4(B)に示す通り、該バイト工具20は切削溝9に入り込んだ該切削水24ごと該封止材3やバンプ7をバイト切削する。そのため、該切削溝9が封止材3に形成されていない場合と比較して、該切削水は加工箇所に効率的に供給され、バイト切削で生じる加工熱がより効率的に除去される。
【0037】
また、該切削溝9が封止材3に形成されていると、該バイト工具20が除去する封止材3の体積が減少する。すると、該バイト工具20にかかる加工負荷が減少し、また、該加工熱の発生量も減少する。そのため、該バイト工具20の切刃20aの消耗が抑制され、該バイト工具20の交換頻度を低減できる。バイト切削装置10の停止時間が短くなり、また、一つのバイト工具でバイト切削できる回数が増えるため、バイト切削の加工効率が高くなる。
【0038】
なお、切削溝形成工程で除去される封止材3の体積が大きくなるほど、該バイト切削工程でバイト工具20が除去する封止材3の体積が小さくなり加工負荷を低減できる。該切削溝9の幅は切削装置2の切削工具8の厚さにより決定されるため、形成される切削溝9に該切削水24が入り込みやすい幅で切削溝9が形成されるように、該切削工具8は所定の厚みを有することが望ましい。該切削工具8の厚みは、好ましくは、0.4mm〜2.0mmである。
【0039】
また、該切削溝9に入り込んだ切削水による加工熱の除去の効果を封止材3の全域において均一に発現させるために、該封止材3に形成される複数の切削溝9のそれぞれは、隣接する切削溝9との間の間隔が一定であることが望ましい。
【0040】
さらに、切削溝形成工程における該封止材3の除去量が多くなるほど該バイト工具20にかかる加工負荷が低減されるため、該切削溝9の数はより多い方が好ましい。また、例えば、封止材3に形成される複数の切削溝9を上方から平面視した際の総面積は、該封止材3の上面の5%〜50%程度となることが好ましい。
【0041】
バイト切削工程を実施すると、該封止材3からバンプ7が露出する。バイト工具20によりバンプ7がバイト切削されているため、該バンプ7の上端の高さ位置が均一となる。すると、該被加工物5が最終的に分割されてデバイスチップが形成され該デバイスチップを所定の実装基板に実装する際に、該実装基板が備える電極に該バンプ7を均一に接合できる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、切削溝形成工程で複数の同心円状の切削溝を互いに所定の間隔をおいて形成する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。種々の形状の該複数の切削溝が封止材に形成されてもよい。
【0043】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0044】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
3 封止材
5 被加工物
7 バンプ
7a デバイス
9 切削溝
2 切削装置
4 切削ユニット
6 スピンドル
8 切削工具
10 バイト切削装置
12 チャックテーブル
12a 保持面
14 バイト切削ユニット
16 バイト切削ホイール
18 スピンドル
20 バイト工具
20a 切刃
22 切削水供給ノズル
24 切削水
図1
図2
図3
図4