特許第6896547号(P6896547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896547
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】バンドギャップリファレンス回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/16 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   G05F3/16
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-145285(P2017-145285)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-28592(P2019-28592A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】示野 洋一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−182113(JP,A)
【文献】 特開2011−198093(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016153(WO,A1)
【文献】 米国特許第05852360(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0124445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順方向にバイアスされた第1及び第2のPN接合素子と、
2系統の差動入力段を有し単相出力を可能に構成されてなる差動差動増幅器と、
ボルテージフォロアに構成された演算増幅器と、
直列接続された複数の抵抗器を有してなる抵抗回路と、
複数のスイッチを有してなるスイッチアレイと、
前記スイッチアレイへ出力して、前記複数のスイッチのオン・オフを定めるスイッチ選択コードが読み出し可能に記憶された選択コード記憶素子とを有するバンドギャップリファレンス回路であって、
前記差動差動増幅器の前記2系統の差動入力段の一方の差動入力段には、前記第1及び第2のPN接合素子のそれぞれの順方向電圧の電圧差が入力され、
前記2系統の差動入力段の他方の差動入力段の非反転入力端子には、前記第1のPN接合素子又は前記第2のPN接合素子のいずれか一方の順方向電圧が、前記ボルテージフォロアをなす演算増幅器を介して入力され、
前記差動差動増幅器の出力端子と前記演算増幅器の出力端子との間には、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗器が直列接続されて設けられ、
前記スイッチアレイは、前記スイッチのオン・オフによって、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗器を、前記差動差動増幅器の出力端子と前記他方の差動入力段の反転入力端子との間に、フィードバック抵抗器として接続される抵抗器と、前記差動差動増幅器の前記他方の差動入力段の反転入力端子と前記演算増幅器の出力端子との間に終端抵抗器として接続される抵抗器と、に分割可能に設けられ、
前記スイッチアレイは、前記選択コード記憶素子からスイッチ選択コードが入力されると、前記スイッチ選択コードに対応した一つのスイッチをオンとするよう構成されてなり、
前記第1及び第2のPN接合素子の順方向バイアス電圧を変動させることなくバンドギャップ電圧の調整を可能としてなることを特徴とするバンドギャップリファレンス回路。
【請求項2】
第3のPN接合素子と、可変電流源と、制御コード記憶素子とを有し、
前記可変電流源は、前記制御コード記憶素子から出力される制御コードに応じた電流を出力可能に構成され、
前記制御コード記憶素子は、前記可変電流源に入力されて、前記可変電流源の出力電流を定める制御コードが読み出し可能に記憶されてなり、
前記第3のPN接合素子には前記可変電流源からの電流が供給され、
前記2系統の差動入力段の他方の差動入力段の非反転入力端子には、前記第1のPN接合素子又は前記第2のPN接合素子のいずれか一方の順方向電圧に代えて、前記第3のPN接合素子の順方向電圧が、前記ボルテージフォロアをなす演算増幅器を介して入力され、
前記第1及び第2のPN接合素子のそれぞれの順方向電圧の電圧差の調整と独立して前記第3のPN接合素子の順方向電圧を調整可能としてなることを特徴とする請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップリファレンス回路に係り、特に、バンドギャップ電圧の調整精度の向上、回路の安定性向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
バンドギャップリファレンス回路は、電子回路等において安定した基準電圧が所望される場合に用いられるもので、出力特性の改善等を施した種々の回路が提案、実用化されていることは良く知られている通りである(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
図5には、従来のバンドギャップリファレンス回路の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、従来回路について説明する。
この従来回路は、第1及び第2のダイオードQ1,Q2と、抵抗スイッチ回路51と、演算増幅器52とに大別されて構成されたものとなっている。
【0004】
第1及び第2のダイオードQ1,Q2は、アノード面積比Q1:Q2=1:Nに設定されている。
抵抗スイッチ回路51は、複数のスイッチ51−1〜51−n(nは正の整数)の切り換えによって、所望する抵抗R1、R2の設定を行うための回路であり、抵抗R1、R2は、以下に説明するようにバンドギャップ電圧の設定要素である。
演算増幅器52は、第1のダイオードQ1のアノードの電圧と、抵抗スイッチ回路51を介した第2のダイオードQ2のアノードの電圧との差分を増幅出力する。
【0005】
このバンドギャップリファレンス回路により得られるバンドギャップ電圧VBGRは、下記する式1により表される。
【0006】
VBGR=VBE1+(R2/R1)×ΔVBE=VBE1+(R2/R1)×VT×ln(N)・・・式1
【0007】
ここで、VBE1は第1のダイオードQ1の順方向電圧、ΔVBEは第1のダイオードQ1の順方向電圧と第2のダイオードQ2の順方向電圧との順方向電圧差、R1,R2は、抵抗スイッチ回路51により設定されたそれぞれの抵抗値、VTは熱電圧、Nは、第1のダイオードQ1に対する第2のダイオードQ2のアノード面積比である。
【0008】
式1から、抵抗スイッチ回路51のスイッチ切り換えにより、R2とR1の比率を適宜調整することで、温度依存が少ないバンドギャップ電圧VBGRが得られることが理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−216014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、PN接合の第2のダイオードQ2に流れる電流は、(VT/R1)×ln(N)であるため、R2とR1の比率を変えると同時に、第2のダイオードQ2に流れる電流も変動してしまうという欠点がある。
また、抵抗R3の抵抗値が固定の場合、第1のダイオードQ1の電流も変動してしまう。
【0011】
このため、従来回路においては、バンドギャップ電圧VBGRを所望の値に調節しようとすると、順方向電圧差ΔVBEと第1のダイオードQ1の順方向電圧VBE1が同時に変動するため調節の難易度が高く、熟練を要するという問題があった。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、所望のバンドギャップ電圧VBGRを、熟練を要することなく、高精度に調整可能なバンドギャップリファレンス回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るバンドギャップリファレンス回路は、
順方向にバイアスされた第1及び第2のPN接合素子と、
2系統の差動入力段を有し単相出力を可能に構成されてなる差動差動増幅器と、
ボルテージフォロアに構成された演算増幅器と、
直列接続された複数の抵抗器を有してなる抵抗回路と、
複数のスイッチを有してなるスイッチアレイと、
前記スイッチアレイへ出力して、前記複数のスイッチのオン・オフを定めるスイッチ選択コードが読み出し可能に記憶された選択コード記憶素子とを有するバンドギャップリファレンス回路であって、
前記差動差動増幅器の前記2系統の差動入力段の一方の差動入力段には、前記第1及び第2のPN接合素子のそれぞれの順方向電圧の電圧差が入力され、
前記2系統の差動入力段の他方の差動入力段の非反転入力端子には、前記第1のPN接合素子又は前記第2のPN接合素子のいずれか一方の順方向電圧が、前記ボルテージフォロアをなす演算増幅器を介して入力され、
前記差動差動増幅器の出力端子と前記演算増幅器の出力端子との間には、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗器が直列接続されて設けられ、
前記スイッチアレイは、前記スイッチのオン・オフによって、前記抵抗回路を構成する複数の抵抗器を、前記差動差動増幅器の出力端子と前記他方の差動入力段の反転入力端子との間に、フィードバック抵抗器として接続される抵抗器と、前記差動差動増幅器の前記他方の差動入力段の反転入力端子と前記演算増幅器の出力端子との間に終端抵抗器として接続される抵抗器と、に分割可能に設けられ、
前記スイッチアレイは、前記選択コード記憶素子からスイッチ選択コードが入力されると、前記スイッチ選択コードに対応した一つのスイッチをオンとするよう構成されてなり、
前記第1及び第2のPN接合素子の順方向バイアス電圧を変動させることなくバンドギャップ電圧の調整を可能としてなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、差動差動増幅器を用いることで、スイッチのオン抵抗の影響を受けることなく、2つのPN接合素子の順方向電圧の差である電圧差ΔVBEの利得調整を熟練を要することなく高精度に行うことが可能となる。また、PN接合素子の順方向電圧をボルテージフォロア回路を介して用いるようにしたので、フィードバック抵抗器や終端抵抗器に流れる電流がPN接合素子の順方向電圧と分離されるため、従来と異なり、その順方向電圧の発生経路における電流変化を招くことなく、高精度に電圧差ΔVBEの調整を可能とするという効果を奏するものである。
さらに、PN接合素子の順方向電圧をボルテージフォロア回路を介して用いる構成に代えて、PN接合素子を可変電流源によりバイアスし、その際の順方向電圧をボルテージフォロア回路を介して用いる構成とすることで、順方向電圧のみを独立して調整できるため、さらなる高精度の調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路に用いられる差動差動増幅器の構成例を示す構成図である。
図4】差動差動増幅器を用いてレベルシフト非反転増幅器を構成した場合の回路構成例を示す回路図である。
図5】従来のバンドギャップリファレンス回路の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるバンドギャップリファレンス回路の第1の回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
第1の回路構成例におけるバンドギャップリファレンス回路は、第1及び第2のPN接合素子(図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」と表記)1,2と、差動差動増幅器3と、演算増幅器4と、第1及び第2の定電流源11,12と、抵抗回路21と、利得調整用スイッチアレイ22と、スイッチ選択コード記憶素子23とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0017】
第1及び第2のPN接合素子1,2は、具体的にはダイオードが用いられるが、PNP型トランジスタのベースとコレクタを接続し、いわゆるダイオード接続状態としたものを用いても良い。
以下の説明においては、第1及び第2のPN接合素子1,2はダイオードであるとする。
この回路構成例において、第1及び第2のPN接合素子1,2のアノード面積比は1:Nに設定されたものとなっている。
【0018】
第1のPN接合素子1のアノードには第1の定電流源11が、第2のPN接合素子2のアノードには、第2の定電流源12が、それぞれ接続される一方、各カソードは、いずれもグランドに接続されている。
また、第1のPN接合素子1のアノードは、差動差動増幅器3の第1の差動入力段の非反転入力端子に、第2のPN接合素子2のアノードは、差動差動増幅器3の第1の差動入力段の反転入力端子に、それぞれ接続されている。
【0019】
演算増幅器4は、非反転入力端子が第2のPN接合素子2のアノードに接続される一方、反転入力端子と出力端子が相互に接続され、ボルテージフォロア回路として動作すると共に、演算増幅器4の出力端子は、差動差動増幅器3の第2の差動入力段の非反転入力端子に接続されている。
【0020】
抵抗回路21は、直列接続された複数の抵抗器21aにより構成されており、差動差動増幅器3の出力端子と演算増幅器4の出力端子との間に、直列接続されて設けられている。
抵抗回路21の抵抗器の数は、特定の値に限定される必要はなく、所望する抵抗値の設定精度や所望する抵抗値の可変範囲等に応じて適宜選定されるべきものである。
【0021】
利得調整用スイッチアレイ22は、複数のスイッチ22aを有しており、詳細は後述するように、いずれか一つのスイッチ22aをオンとすることで、所望の終端抵抗値R1とフィードバック抵抗値R2を設定可能に構成されている。
利得調整用スイッチアレイ22を構成する複数のスイッチ22aは、抵抗回路21において隣接する抵抗器相互の接続点と、差動差動増幅器3の第2の差動入力段の反転入力端子との間に設けられている。
【0022】
この複数のスイッチ22aは、スイッチ選択コード記憶素子23から出力されたスイッチ選択コードに応じて、いずれか一つが選択されてオンとされ、他のスイッチ22aは全てオフとされるようになっている。
【0023】
複数のスイッチ22aの一つがオンとされた場合、抵抗回路21の複数の抵抗器21aの内、差動差動増幅器3の出力端子と、オンとされたスイッチ22aを介して接続される差動差動増幅器3の第2の差動入力段の反転入力端子との間に位置する直列接続された複数の抵抗器21aは、差動差動増幅器3のフィードバック抵抗器R2となる。
【0024】
一方、オンとされたスイッチ22aと演算増幅器4の出力端子との間に位置する直列接続された複数の抵抗器21aは、差動差動増幅器3の終端抵抗器R1となる。
このように、利得調整用スイッチアレイ22は、スイッチ22aのオンによって、抵抗回路21の複数の抵抗器21aを、フィードバック抵抗器R2と終端抵抗器R1に分割可能に構成されている。
なお、説明の便宜上、上述のフィードバック抵抗器をR2で表すと共に、その抵抗値であるフィードバック抵抗値もR2で表すものとする。また、同様に、上述の終端抵抗器をR1で表すと共に、その抵抗値である終端抵抗値もR1で表すものとする。
【0025】
複数のスイッチ22aのいずれがオンとなっても、差動差動増幅器3の出力端子と演算増幅器4の出力端子との間の直列接続状態の抵抗器21aの数は変わることはない。このことは、フィードバック抵抗器の抵抗値R2と終端抵抗器の抵抗値R1の和は、常に一定であることを意味する。
そして、オンとされるスイッチ22aの位置によって、終端抵抗値R1とフィードバック抵抗値R2が選定されるものとなっている。
【0026】
上述の複数のスイッチ22aのオン・オフの組み合わせは、複数パターン存在する。
そのため、スイッチ選択コード記憶素子23には、上述のスイッチ22aの複数のオン・オフの組み合わせの中の所望の一つを選択するために利得調整用スイッチアレイ22へ入力すべき予め定められたコード(スイッチ選択コード)と、そのスイッチ選択コードを出力するために、スイッチ選択コード記憶素子23へ入力すべき予め定められた入力コードとが予め記憶されている。
すなわち、スイッチ選択コード記憶素子23は、所望するスイッチ選択コードに対応する入力コードの入力により、所望のスイッチ選択コードが読み出し可能に構成されている。
【0027】
ここで、差動差動増幅器3について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
図3は、差動差動増幅器3の等価回路であり、以下、同図を参照しつつ、差動差動増幅器3の構成について説明する。
差動差動増幅器3は、第1及び第2の演算増幅器31,32と演算増幅器33とを主たる構成要素として、2系統の差動入力段を備えて単相出力可能に、次述するように構成されたものである。
【0028】
まず、第1及び第2の演算増幅器31,32は、同一特性を有し、共にトランスコンダクタンスがgmの演算増幅器である。また、演算増幅器33は、増幅度AZを有するものである。
第1の演算増幅器31の入力段は、差動差動増幅器3の第1の差動入力段であり、第2の演算増幅器32の入力段は、差動差動増幅器3の第2の差動入力段である。
演算増幅器33には、第1の演算増幅器31の出力と第2の演算増幅器32の出力の和が入力され、増幅度AZで増幅されて出力されるようになっている。
【0029】
かかる構成において、出力電圧VOUTは、下記する式2により表される。
【0030】
VOUT={gm(V1−V2)+gm(V3−V4)}・AZ=gm・AZ(V1−V2+V3−V4)・・・式2
【0031】
ここで、gmは第1及び第2の演算増幅器31,32のトランスコンダクタンス、AZは演算増幅器33の増幅度、V1は第1の演算増幅器31の非反転入力端子の入力電圧、V2は第1の演算増幅器31の反転入力端子の入力電圧、V3は第2の演算増幅器32の非反転入力端子の入力電圧、V4は第2の演算増幅器32の反転入力端子の入力電圧である。
【0032】
仮に、gm・AZを無限大と仮定すると、差動差動増幅器3において、(V1−V2+V3−V4)は限り無く零となり、差動差動増幅器3は(V1−V2)=(V4−V3)が成立するように動作する。
【0033】
図4には、差動差動増幅器3を用いてレベルシフト非反転増幅器を構成した場合の回路構成例が示されており、以下、この回路構成例について説明する。
このレベルシフト非反転増幅器は、第1の差動入力段に入力電圧Vinが印加されるようになっている。また、第2の差動入力段の非反転入力端子には基準電圧VOFFSETが印加されると共に、反転入力端子との間には、抵抗器R1が設けられる一方、出力端子と第2の差動入力段の反転入力端子との間には抵抗器R2が設けられている。
【0034】
かかる構成において、出力電圧VOUTは、下記する式3により表される。
【0035】
VOUT=VOFFSET+(1+R2/R1)×Vin・・・式3
【0036】
なお、R1、R2は、抵抗器R1、R2の抵抗値とする。
次に、このような差動差動増幅器の動作特性を踏まえて図1に示された回路構成例の回路動作を説明する。
先ず、アノード面積の異なる第1及び第2のPN半導体素子1,2には、同一の定電流I1が供給されることで、それぞれの順方向電圧の電圧差ΔVBEが生じ、その電圧差ΔVBEは、差動差動増幅器3の第1の差動入力段に印加される。
【0037】
また、差動差動増幅器3の第2の差動入力段の非反転入力端子には、ボルテージフォロア回路としての機能する演算増幅器4を介して、第2のPN接合素子2の順方向電圧VBEが印加されるようになっている。なお、演算増幅器4を介して差動差動増幅器3の第2の差動入力段の非反転入力端子に印加される電圧は、第2のPN接合素子2の順方向電圧VBEに代えて、第1のPN接合素子1の順方向電圧VBEであっても良い。
【0038】
この差動差動増幅器3の第2の差動入力段の非反転入力端子に印加される電圧は、先に、図4に示された回路例における基準電圧VOFFSETに相当するものである。
しかして、差動差動増幅器3の出力電圧としてのバンドギャップ電圧VBGRは、下記する式4により表される。
【0039】
VBGR=VBE+(1+R2/R1)×ΔVBE・・・式4
【0040】
ここで、R1はスイッチ選択コード記憶素子23から出力されるスイッチ選択コードに従い、1つのスイッチ22aをオンし、他のスイッチ22aがオフすることで設定された終端抵抗値、R2はフィードバック抵抗値である。オンする1つのスイッチ22aが変わればR1とR2の抵抗比変わることになる。
このように、R1とR2の抵抗比を変えることで、ΔVBEの利得を調節でき、所望のバンドギャップ電圧VBGRを得ることができることが式4により理解できる。
先に述べたように、R1とR2の抵抗比を変えてもR1+R2は一定値であるため、差動差動増幅器3と演算増幅器4の出力負荷は一定値となり、差動差動増幅器3の出力電圧は、ΔVBEにのみ依存し決定されるものとなっている。
【0041】
この第1の回路構成例においては、利得調整用スイッチアレイ22が、抵抗回路21と、差動差動増幅器3の第2の差動入力段の反転入力端子との間に設けられているため、CMOSゲート入力で製造された差動差動増幅器3におけるゲート入力電流がほぼ零となり、利得調整用スイッチアレイ22に流れる電流もほぼ零であり、利得調整用スイッチアレイ22のオン抵抗がR1/R2の利得比に与える影響はほぼ無くなる。
【0042】
また、第1及び第2のPN接合素子1,2の出力と抵抗回路21との間には、演算増幅器4によるバッファアンプが挿入されていることで、RとR2の比を調整の際に、第1及び第2のPN接合素子1,2のバイアス電流、電圧に影響を与えないため順方向電圧VBEが変動することがない。
このため、式4において、従来と異なり、VBEやΔVBEの変動を招くことなく(1+R2/R1)を独立に制御できるため、従来に比して、より高精度なバンドギャップ電圧VBGRの調節が可能である。
【0043】
次に、第2の回路構成例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、演算増幅器4の非反転入力端子への電圧印加部分のの回路構成が図1に示された第1の回路構成例と異なるもので、他の回路構成は図1と同一である。
【0044】
以下、具体的に説明すれば、まず、第1及び第2のPN接合素子1,2と同一の構成を有してなる第3のPN接合素子15が設けられている。
すなわち、第3のPN接合素子15のカソードは、グランドに接続される一方、アノードは、演算増幅器4の非反転入力端子に接続されると共に、可変電流源16に接続されている。
【0045】
この可変電流源16は、外部から入力される制御コードに応じて、所望する電流値の電流I2を出力可能に構成されてなるものである。
電流制御コード記憶素子25は、不揮発性の半導体記憶素子を用いるのが好適である。この電流制御コード記憶素子25には、上述の可変電流源16の出力電流の大きさI2を制御するために可変電流源16に入力するべき複数の制御コードが、予め記憶されている。
【0046】
この電流制御コード記憶素子25は、制御コード毎に予め定められた選択コードを入力することで、対応する制御コードを出力することができるよう構成されたものとなっている。
【0047】
可変電流源16による電流供給により第3のPN接合素子15に生じた順方向電圧は、先の図1に示された第1の回路構成例における第2のPN接合素子2の順方向電圧に代えて、演算増幅器4を介して差動差動増幅器3の第2の差動入力段の非反転入力端子に印加されるものとなっている。
【0048】
この第2の回路構成例におけるバンドギャップ電圧VBGRは、先の第1の回路構成例において説明したように式4により表される点は同様であるが、上述のように第3のPN接合素子15、可変電流源16、及び、電流制御コード記憶素子25を設けたことにより、式4における第2項の(1+R2/R1)とは別個に、第1項のVBEを独立して所望の値に調整、設定できるため、全体として、第1の回路構成例より更に高精度のバンドギャップ電圧VBGRの設定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
容易な調整作業でバンドギャップ電圧VBGRを高精度に設定可能とすることが所望されるバンドギャップリファレンス回路に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…第1のPN接合素子
2…第2のPN接合素子
3…差動差動増幅器
21…抵抗回路
22…利得調整用スイッチアレイ
23…スイッチ選択コード記憶素子
図1
図2
図3
図4
図5