(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
第1実施形態では、ボルト等の固定具によりパッド温調機構140が上下動機構150に着脱自在に取り付けられている構成について説明する。
図1は、本実施形態にかかる研磨装置100を示す正面図である。ここで、
図1およびその他の図は模式図である。各図に図示された部品の大きさ、位置および形状などは、実際の装置における大きさ、位置および形状などとは異なり得る。以下では、
図1における左右方向をX方向(紙面右側を正)、紙面に垂直な方向をY方向(紙面手前側を正)、上下方向をZ方向(紙面上側を正)とする。
図1の研磨装置100は、いわゆる「ロータリー式」のCMP装置である。しかし、研磨パッドの温調が必要な装置である限り、研磨装置100はロータリー式以外の方式のCMP装置であってもよく、CMP装置以外の研磨装置であってもよい。
図1の研磨装置100は、研磨テーブル110、研磨ヘッド120、吐出機構130、パッド温調機構140および上下動機構150を備える。研磨装置100はさらに、各要素を制御するための制御部160を備える。
【0008】
研磨装置100は研磨テーブル110を備える。研磨テーブル110の上面には研磨パッド111が着脱可能に取り付けられる。研磨テーブル110は図示しないモータなどにより少なくとも1方向に回転可能である。
図1の研磨テーブル110は上部から見て反時計回りに回転可能である。
【0009】
研磨装置100はさらに研磨ヘッド120を備える。研磨ヘッド120は研磨テーブル110に対向するように研磨テーブル110の上部に設けられている。研磨ヘッド120の下面には基板121が着脱可能に取り付けられる。研磨ヘッド120は図示しないモータなどにより少なくとも1方向に回転可能である。
図1の研磨ヘッド120は上部から見て反時計回り(研磨テーブル110の回転方向と同じ方向)に回転可能である。また、研磨ヘッド120は図示しないヘッド上下動機構により上下に移動可能である。
【0010】
研磨テーブル110上の研磨パッド111に基板121を押し付け、かつ、研磨テーブル110および研磨ヘッド120の少なくとも片方、好ましくは双方を回転させることにより、基板121は研磨される。
【0011】
研磨装置100はさらに、研磨液、薬液および/または洗浄液などの液体を研磨面に向かって吐出するための吐出機構130を備える。
図1の吐出機構130は、研磨テーブル110の側部に備えられた液体供給源131から延びている吐出用配管132を備える。液体供給源131は研磨装置100の一部を構成する部品であってよい。追加または代替として、研磨装置100と別個独立した液体供給源131を用いることもできる。
図1の吐出用配管132は、研磨テーブル110の上部を通って研磨テーブル110のおおよそ中心部分まで伸びている。好ましくは、基板121の研磨中に吐出用配管132から研磨液が吐出される。好ましくは、研磨パッド111および/または基板121の洗浄中に吐出用配管132から洗浄液が吐出される。液体供給源131および吐出用配管132の数は1つに限られない。
【0012】
研磨装置100はさらに、研磨パッド111の温度を調整するためのパッド温調機構140を備える。
図1のパッド温調機構140は、熱伝導部141、アーム142および加熱冷却機構143を備える。熱伝導部141は研磨テーブル110の上部に設けられており、研磨パッド111との間で熱を伝導するため(熱を交換するため)に設けられている。アーム142は熱伝導部141から上下動機構150に向けて延びている。また、アーム142は上下動機構150に着脱可能に固定されている。加熱冷却機構143は熱伝導部141を加熱および/または冷却するための機構である。
図1の加熱冷却機構143は、熱媒体源144から供給される熱媒体のための熱媒体流路145を備える。熱媒体源144は研磨装置100の一部を構成する部品であってよい。追加または代替として、研磨
装置100と別個独立した熱媒体源144を用いることもできる。熱媒体源144から供給される熱媒体は加熱用の熱媒体であってもよく、冷却用の熱媒体であってもよい。熱媒体としてたとえば水を用いることが可能である。熱媒体源144は、熱媒体を加熱および/または冷却するためのヒータおよび/またはクーラ(図示せず)を備えてもよい。追加または代替として、熱媒体源144は、すでに加熱および/または冷却された熱媒体を保持するように構成されていてもよい。熱媒体源144は、熱媒体を熱媒体流路に向けて流すためのポンプ(図示せず)を備えてもよい。
【0013】
熱媒体流路145は熱伝導部141の内部に設けられている。したがって、熱媒体源144から熱媒体流路145に熱媒体を流すことによって、熱伝導部141が加熱および/または冷却される。熱媒体源144および熱媒体流路145の数は1つに限られない。たとえば、熱媒体源144として、温水を供給する第1の熱媒体源144と、冷水を供給する第2の熱媒体源144とを設けることができる。熱媒体源144が複数設けられている場合は、それぞれの熱媒体源144に1つずつ熱媒体流路145が接続されていてもよい。複数の熱媒体源144が1つの熱媒体流路145を共用することも可能である。1つの熱媒体源144に複数の熱媒体流路145を接続することも可能である。
【0014】
パッド温調機構140を退避させるための「跳ね上げ機構(特許文献1参照)」を
図1の構成に加えた場合、パッド温調機構140の退避中にパッド温調機構140と吐出機構130とが衝突してしまう。したがって、
図1の構成において「跳ね上げ機構」を用いて研磨パッド111を交換することおよび/または研磨パッド111とパッド温調機構140との間の熱的な接触を解除することは困難である。なお、研磨装置100の構成によっては、吐出機構130以外の部品がパッド温調機構140と衝突または干渉し得る。
【0015】
そこで、
図1の研磨装置100は、パッド温調機構140の少なくとも一部を上下動させるための上下動機構150を備える。より詳細には、上下動機構150は少なくともアーム142および熱伝導部141を上下動させるように構成されている。上下動機構150はアーム142に着脱可能に固定されている。
図1の例では、固定具151によりアーム142が上下動機構150に固定されている。なお、図示の便宜のため、
図1では固定具151が取り外された状態で図示されている。固定具151の例としてボルトが挙げられる。上下動機構150は、熱媒体源144を上下動させるように構成されていてもよい。追加または代替として、熱媒体流路145を可撓性の部材(たとえばベローズまたは少なくとも一部が弾性体もしくは可撓性部材からなるチューブ(ラバーまたは樹脂などからなるチューブ))から形成し、熱媒体源144を上下動させないように上下動機構150を構成することも可能である。
【0016】
研磨パッド111の温調が必要である場合、制御部160は、熱伝導部141と研磨パッド111が熱的に接触するように上下動機構150を制御する。換言すれば、上下動機構150は、熱伝導部141と研磨パッド111とが接触するまで熱伝導部141を下降させる。熱伝導部141と研磨パッド111とが接触した状態で、制御部160が熱媒体の流量および/または温度を制御することで、研磨パッド111の温度が調整される。
【0017】
研磨パッド111の温調が不要である場合、制御部160は、熱伝導部141と研磨パッド111が熱的に接触しなくなるよう上下動機構150を制御する。換言すれば、上下動機構150は、熱伝導部141と研磨パッド111とが接触しなくなるまで熱伝導部141を上昇させる。追加または代替として、研磨パッド111の温調が不要である場合、制御部160による熱媒体の制御を停止してもよい。
【0018】
研磨パッド111の交換が必要である場合、制御部160が、熱伝導部141と研磨パッド111との間に十分な隙間が生じるように上下動機構150を制御する。換言すれば
、上下動機構150は、熱伝導部141と研磨パッド111との間に十分な隙間が生じるまで熱伝導部141を上昇させる。研磨パッド111の交換が必要である場合、ユーザが固定具151による固定を解除してパッド温調機構140を取り外してもよい。取り外されたパッド温調機構140は研磨装置100の外部に保管されてよい。研磨装置100の内部に、取り外されたパッド温調機構140を保管するための機構を設けてもよい。熱伝導部141を上昇させることまたは熱伝導部141を取り外すことにより、研磨パッド111の交換に必要な空間を確保することが可能である。研磨パッド111を研磨テーブル110から剥離することを容易にするために、研磨テーブル110の上面には摩擦係数が低い材料(たとえばテフロン(登録商標))によるコーティングが施されていることが好ましい。
【0019】
また、パッド温調機構140が着脱可能であることにより、パッド温調機構140、特に熱伝導部141のクリーニングが容易になるという利点が存在する。パッド温調機構140、特に熱伝導部141には研磨液が付着または固着し得るので、クリーニングの容易さは重要である。
【0020】
パッド温調機構140の詳細について、
図2を用いて説明する。
図2はパッド温調機構140の正面断面図である。また、
図2には、パッド温調機構140に接続された上下動機構150も図示されている。
【0021】
図2の熱媒体流路145は、熱媒体源144から熱媒体を供給し、かつ、供給した熱媒体を回収するように構成される。
図2のように熱媒体流路145を構成し、熱媒体を熱伝導部141の中で循環させることで、熱伝導部141を安定して加熱および/または冷却することができる。熱媒体流路145により回収された熱媒体は、加熱および/または冷却されて再使用されてもよいし、廃棄されてもよい。熱媒体流路145は熱伝導部141の体積の3割以上を占めることが好ましく、より好ましくは4割以上を占め、最も好ましくは5割以上を占める。
【0022】
好ましくは、熱伝導部141の下面、すなわち研磨パッド111と接触する部分に凹凸構造200が設けられている。熱伝導部141の下面が完全に平坦である場合、熱伝導部141と研磨パッド111との間の液体(研磨液または洗浄液など)の表面張力により、熱伝導部141が研磨パッド111に張り付いてしまう可能性がある。一方で、熱伝導部141の下面が完全に平坦である場合は熱を効率よく伝導することができる。さらに、熱伝導部141の下面が完全に平坦である場合、凹部がないので、研磨により発生した副生成物が凹部に溜まることがない。さらに、凹部がない熱伝導部141を用いる場合、研磨液が凹部を通ることによって研磨液の流れが乱されることがなくなる。
【0023】
熱伝導部141の下面を平坦に構成することに代え、凹凸構造200を熱伝導部141の下面に設けることで、熱伝導部141の研磨パッド111への張り付きを防止することが可能である。また、凹凸構造200を設けることで、熱伝導部141と研磨パッド111との間のビビリ(チャタリング)を防止することができる。熱伝導部141の下面を平坦にするか、それとも熱伝導部141の下面に凹凸構造200を設けるかどうかは、熱伝導部141の張り付き具合、熱伝導部141からの熱伝導効率などを考慮して決定することが好ましい。凹凸構造200を設ける場合、凹凸構造200を設ける領域および凹凸構造200の具体的な構造は、必要な熱伝導効率などから適宜決定されてよい。
【0024】
好ましくは、研磨装置100は、アーム142と上下動機構150とが正しく固定されていることを検知するためのセンサ210を備える。センサ210は制御部160(
図2では図示せず)により制御されてよい。
図2では、センサ210として、アーム142および上下動機構150との間に近接センサが設けられている。他の例として、マイクロス
イッチ、光学センサおよびカメラ等を採用することも可能である。センサ210により、パッド温調機構140を取り外した状態、または、パッド温調機構140が正しく取り付けられていない状態で基板121を研磨してしまうことを防止することが可能である。
【0025】
他の構成の加熱冷却機構143を採用することもできる。
図3は、電気的な加熱冷却機構143を備えるパッド温調機構140の正面断面図である。
図3の加熱冷却機構143はヒータ300およびクーラ310を備える。ヒータ300およびクーラ310は熱伝導部141の内部に設けられている。また、ヒータ300およびクーラ310は電源320と接続されている。電源320は研磨装置100の一部を構成する部品であってよい。追加または代替として、研磨装置100と別個独立した電源320を用いることもできる。加熱冷却機構143はヒータ300およびクーラ310のどちらか一方のみを備えてもよい。
【0026】
図2の構成と
図3の構成を複合させた加熱冷却機構143を採用することもできる。たとえば、冷水を供給する熱媒体源144に接続された熱媒体流路145およびヒータ300を備える加熱冷却機構143が用いられてもよい。
【0027】
<第2実施形態>
第2実施形態では、熱伝導部141を容易に着脱可能な構成について説明する。本実施形態について、
図4、
図5および
図6を参照して説明する。
図4は本実施形態にかかるパッド温調機構140を示す図である。
図4Aはパッド温調機構140の上面図である。
図4Bはパッド温調機構140の正面断面図である。なお、
図4Bには上下動機構150も図示されている。
図5は本実施形態にかかる上下動機構150およびアームマウント400を示す右側面図である。
図6は本実施形態にかかる熱伝導部141およびアーム142を示す正面図である。なお、
図4における熱伝導部141内部の加熱冷却機構143の配置パターンは一例であり、他に任意の配置パターンを用いることができる。
【0028】
本実施形態にかかるパッド温調機構140は、熱伝導部141および2本のアーム142のほか、アームマウント400を備える。アームマウント400は上下動機構150に固定されている。アームマウント400はアーム142を据え付けるために設けられている。アームマウント400にはアーム142の本数に対応した個数(ここでは2つ)のアームガイド410が設けられている。ユーザは、アームガイド410に沿ってアームマウント400にアーム142を挿入することおよびアームマウント400からアーム142を抜き取ることが可能である。本実施形態にかかるアームガイド410は溝状の構造である。なお、アーム142の本数は2本に限らず、1本でも3本以上でもよい。好ましくは、アームガイド410の個数はアーム142の本数と同一である。しかし、アームガイド410の個数はアーム142の本数と同一でなくともよい。
【0029】
アーム142はプランジャ420によりアームマウント400に据え付けられる。アームマウント400にアーム142を挿入した場合、プランジャ420のピンはアーム142に設けられたプランジャ孔430に係合する。プランジャ420およびプランジャ孔430の個数、大きさ、位置などは適宜設計されてよい。好ましくは、アーム142には、プランジャ420のピンをプランジャ孔430へ導くためのプランジャガイド440が設けられる。本実施形態におけるプランジャガイド440は、プランジャ孔430に近づくにつれて深さが浅くなる溝である。
【0030】
プランジャ420のピンがプランジャ孔430と係合するまで、ユーザがアームガイド410に沿ってアーム142を挿入することによって、熱伝導部141が上下動機構150に取り付けられる。アーム142は何らかの運搬機構により自動で挿入されてもよい。本実施形態では、ねじ止め等の手間なく、熱伝導部141を上下動機構150に容易に取
り付けることが可能である。
【0031】
プランジャ420は、たとえば頭部を引っ張ることで、プランジャ420のピンとプランジャ孔430との係合を解除することが可能であるように構成されている。プランジャ420のピンとプランジャ孔430との係合が解除された状態でアーム142をアームマウント400から抜き取ることで、熱伝導部141は上下動機構150から取り外される。プランジャ420のピンとプランジャ孔430との間の係合を解除した状態に保つため、プランジャ420がロック機構を備えることが好ましい。本実施形態では、ねじ外し等の手間なく、熱伝導部141を上下動機構150から容易に取り外すことが可能である。
【0032】
好ましくは、アーム142の挿入および抜き取りを容易にするため、アーム142にはハンドル450が設けられる。基板121の研磨および研磨パッド111の温調の障害とならない限り、ハンドル450は熱伝導部141に設けられてもよい。好ましくは、アーム142の抜き取りを補助するため、アームマウント400にはスプリング460が設けられる。スプリング460はアーム142に設けられてもよい。スプリング460はアーム142が抜き取られる方向(
図4ではXの正方向)にアーム142を押すように設けられる。スプリング460の押圧力により、ユーザがアーム142を抜き取ることが容易になる。なお、図示の便宜上、スプリング460は縮められた状態で図示されている。
【0033】
アームマウント400にはカップリング470が設けられている。図示した例では、熱媒体源144と熱媒体流路145は流体用のカップリング470により脱着可能に接続されている。熱伝導部141が取り付けられる場合は、熱媒体流路145の先端がカップリング470に差し込まれる。熱媒体が流体である場合、熱媒体流路145とカップリング470とは、ワンタッチジョイント、Oリング、メタルシールなどによって封止されていることが好ましい。熱媒体が流体である場合、カップリング470には逆止弁(図示せず)が設けられていてもよい。追加または代替として、カップリング470以外の部品、たとえば熱媒体流路145の先端に逆止弁が設けられていてもよい。逆止弁を設けることにより、熱媒体源144と熱媒体流路145との接続が解除された際に、各部品の中に残留している流体が外部へ流れ出ることを防止することができる。加熱冷却機構143として電気的な部品を用いる場合、すなわち加熱冷却機構143がヒータ300および/またはクーラ310を備える場合、電気配線用のカップリング470が用いられてよい。カップリング470により熱媒体源144と熱媒体流路145との切り離しが容易になり、ひいては熱伝導部141を取り外すことが容易になる。追加または代替として、伸縮性および/または可撓性を有する配管または配線によって熱媒体源144と熱媒体流路145とを接続してもよい。
【0034】
アームガイド410の形状によっては、アーム142が傾斜した状態で、および/または、
図5における上下左右方向(Y方向および/またはZ方向)にずれた状態でアームガイド410に挿入される可能性がある。したがって、熱媒体流路145が傾斜した状態で、および/または、上下左右方向にずれた状態でカップリング470に差し込まれる可能性がある。傾斜量および/またはずれ量が大きい場合は、熱媒体源144と熱媒体流路145とが適切に接続されない可能性がある。
【0035】
そこで本実施形態では、カップリング470とアームマウント400との間に空隙が設けられている。
図7は、
図5にA−Aと付された切断線の位置におけるアームマウント400の断面図である。
図7に示されるカップリング470は流体用のカップリングであるとして説明する。カップリング470は断面T字状の形状を有し、カップリング470の中央には流体を通過させるための第1の貫通穴700が設けられている。また、アームマウント400には、カップリング470の小径部(T字の縦棒に相当する部分)を差し込むための第2の貫通穴710が設けられている。カップリング470の小径部が第2の貫
通穴710に差し込まれた後、カップリング470の小径部に止め具720(止め輪またはクランプなど)が取り付けられる。カップリング470の小径部との間に空隙が存在するように、第2の貫通穴710の直径が決定される。具体的には、第2の貫通穴710の直径(
図7では「D
hole」と示されている)を、カップリング470の小径部の直径(
図7では「D
cpl」と示されている)より0.1mm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上または20mm以上大きくすることができる。カップリング470が第2の貫通穴710から抜け落ちることの無いよう、第2の貫通穴710の直径はカップリング470の大径部の直径より小さいことが好ましい。
【0036】
さらに、カップリング470の大径部のうちアームガイド410と接触し得る部分と、止め具720との間の距離(
図7では「l」と示されている)は、アームガイド410のうち第2の貫通穴710が設けられる部分の肉厚(
図7では「t」と示されている)より大きくなるように決定される。具体的には、カップリング470の大径部のうちアームガイド410と接触し得る部分と、止め具720との間の距離を、アームガイド410のうち第2の貫通穴710が設けられる部分の肉厚より0.1mm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上または20mm以上長くすることができる。
【0037】
図7の構成によれば、カップリング470とアームマウント400との間に設けられた空隙が、熱媒体流路145の傾斜および/または上下左右へのずれを吸収する。したがって、熱媒体流路145が傾斜した状態で、および/または、上下左右方向にずれた状態でカップリング470に差し込まれたとしても、熱媒体源144と熱媒体流路145とを適切に接続することができる。また、カップリング470とアームマウント400との間に設けられた空隙は、カップリング470および/またはアームマウント400の熱膨張のための遊びとしても働く。
【0038】
特に熱媒体が液体である場合であって、かつ、カップリング470と熱媒体流路145との接続が不適切である場合は、液体の漏れが生じる可能性がある。また、カップリング470に逆止弁が設けられている場合であって、かつ、カップリング470と熱媒体流路145との接続が不適切である場合は、逆止弁が熱媒体の流れを阻害する可能性がある。カップリング470と熱媒体流路145が適切に接続されていることを確認するために、カップリング470の周辺にセンサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0039】
第2実施形態の構成では、上下動機構150は必ずしも必要な機構ではない。ただし、熱伝導部141の取り外しを容易にするため、研磨パッド111の交換を容易にするため、および、温調が不要なときに熱伝導部141を研磨パッド111から引き離すため、上下動機構150が設けられることが好ましい。
【0040】
第2実施形態の構成においても、「跳ね上げ機構(特許文献1参照)」を用いることなく、研磨パッド111の交換および/または熱伝導部141と研磨パッド111との間の熱的な接触の解除が可能である。
【0041】
<第3実施形態>
第2実施形態で説明した構成では、アーム142をアームガイド410に挿入するために、アーム142とアームガイド410との間に遊びを設ける必要がある。また、プランジャ420のピンとプランジャ孔430の間にも遊びを設ける必要がある。これらの部品間の遊びはアーム142のがたつきを引き起こす。アーム142のがたつきは、熱伝導部141と研磨パッド111とが接触する位置のずれを引き起こし、研磨パッド111の精密な温調を困難にさせる可能性がある。特に、熱伝導部141が研磨テーブル110の径方向(X方向)にずれた場合、研磨パッド111のうち熱伝導部141と接触するべき部位が熱伝導部141と接触しなくなる可能性がある。
【0042】
また、アーム142の挿入および抜き取りの際にアーム142とアームガイド410とが擦れあうことによって摩耗粉が発生し得る。摩耗粉は、研磨装置100中の気体および/または液体の流れに乗って研磨パッド111にたどり着く可能性がある。研磨パッド111上の摩耗粉は基板121の異常研磨を引き起こし得る。また、基板121に付着した摩耗粉は、基板研磨よりも後の工程における異常の原因にもなり得る。さらに、アーム142および/またはアームガイド410との間の擦れあいは、アーム142とアームガイド410との間のすべり性を悪化させ、アーム142の挿入及び抜き取りを困難にする可能性がある。
【0043】
アーム142のがたつきを低減するために部品間の遊びを減らした場合、アーム142とアームガイド410とが強く擦れあうことになると考えられる。逆に、アーム142とアームガイド410との間の擦れあいを低減するために部品間の遊びを増やした場合、アーム142のがたつきが大きくなると考えられる。
【0044】
そこで第3実施形態では、アーム142のがたつきおよびアーム142とアームガイド410との擦れあいの少なくとも一方を低減する構成について、
図8、
図9および
図10を参照して説明する。
図8は本実施形態にかかるパッド温調機構140を示す図である。
図8Aはパッド温調機構140の上面図である。
図8Bはパッド温調機構140の正面部分断面図である(熱媒体源144、上下動機構150およびアームマウント400が断面で図示され、熱伝導部141およびアーム142が非断面で図示されている)。なお、
図8Bには上下動機構150も図示されている。
図9は本実施形態にかかる上下動機構150およびアームマウント400を示す右側面図である。
図10は本実施形態にかかる熱伝導部141およびアーム142を示す左側面図である。
【0045】
アーム142がアームガイド410に挿入可能に構成されているという点において、第3実施形態は第2実施形態と共通の特徴を有する。一方、第3実施形態におけるアーム142およびアームガイド410の形状は、第2実施形態におけるそれらの形状と異なる。
【0046】
図8Bに最もよく示されているように、本実施形態におけるアーム142の少なくとも1本(図面中では2本のアーム142の双方)の先端はテーパ状に形成されている。より具体的には、アーム142のうち、熱伝導部141から離れた先端の上部がテーパ状に形成されている。ここで、「アーム142の先端」とは、「アーム142のうちアームガイド410に挿入される部分」と言い換えることができる。追加または代替として、アーム142の下部をテーパ状に形成してもよい。ただし、好ましくは、アーム142の意図せぬ脱落を防止するため、アーム142の下部は非テーパ形状である。アームガイド410の形状はアーム142の形状に対応した形状である。すなわち、アームガイド410はテーパ溝状に形成される。アーム142およびアームガイド410のテーパ角は任意の角度であってよく、たとえば10度以上45度以下の角度にすることが可能である。テーパ角は10度未満の角度であってもよく、45度より大きい角度であってもよい。アーム142のうちテーパ状の部分の長さが、アーム142のうちアームガイド410に挿入される部分の長さより長くなるようテーパ角を決定することが好ましい。
【0047】
本実施形態では、アーム142をアームマウント400のアームガイド410に据え付けるために、換言すれば、アーム142がアームガイド410から脱落することを防ぐために、脱落防止部材810が設けられている。具体的には、脱落防止部材810として、アーム142にフック811が設けられ、アームマウント400にファスナ812が設けられている。図示した例では、一組のフック811およびファスナ812が設けられているが、二組以上のフック811およびファスナ812を用いてもよい。フック811とファスナ812とが係合した場合、アーム142はアームマウント400に押し付けられ、
アーム142の脱落が防止される。追加または代替として、アーム142にファスナ812を設け、アームマウント400にファスナ812を設けてもよい。さらなる追加または代替として、フック811およびファスナ812とに代え、他の要素、たとえばスプリング、プランジャ、ピン、ボルト、ナット、ワイヤおよび/またはストリングなどを用いることも可能である。脱落防止部材810は、永久磁石または電磁石などから生じる電磁気的な力によってアーム142の脱落を防止する部材であってもよい。また、脱落防止部材810は任意の場所に設けられてよく、たとえばファスナ812を上下動機構150に設けることもできる。
【0048】
第3実施形態の構成によれば、アーム142がアームガイド410に完全に挿入されていない場合は、アーム142とアームガイド410とがあまり擦れあわなくなる。したがって、第3実施形態の構成によれば、摩耗粉の発生を低減することが可能になる。また、擦れあいの低減により、すべり性の悪化を防止することができる。さらに、アーム142とアームガイド410がテーパ状に構成されていることで、アーム142の挿入および抜き取りが容易になる。
【0049】
アーム142がアームガイド410に完全に挿入された場合、アーム142のテーパ面とアームガイド410のテーパ面が接触することとなる。換言すれば、アーム142がアームガイド410に完全に挿入された場合は、アーム142と410との間のX方向の遊びは事実上ゼロ(製造誤差、組立誤差、部品の撓み、経年劣化および熱膨張係数の違い等の影響により発生する遊びは除く)となる。よって、アーム142のX方向へのがたつきが低減される。したがって、第3実施形態の構成によれば、熱伝導部141を高精度に位置決めすることができる。
【0050】
さらに好ましくは、
図10に最もよく示されているように、アーム142の少なくとも1本は、アリほぞ状に形成される。ただし、ここでの「アリほぞ状」という用語には「片アリほぞ状」を含む。また、
図9に最もよく示されているように、アリほぞ状の前記アームのためのアームガイド410はアリ溝状に形成されていることがこのましい。ただし、ここでの「アリ溝状」という用語には「片アリ溝状」を含む。アリほぞ構造およびアリ溝構造により、アーム142のY方向へのがたつきが低減される。図示した例と異なり、複数個のアーム142およびアームガイド410をアリほぞ状またはアリ溝状に構成してもよい。アリほぞおよびアリ溝の角度は任意の角度であってよく、たとえば45度または60度とすることができる。
【0051】
本実施形態の変形例を
図11に示す。
図11はアームマウント400および上下動機構150の正面断面図である。ただし、図示の便宜上、カップリング470は図示されていない。
図11の例では、正面から見て矩形状の溝1100と、正面から見た形状が台形状のブロック1110により、全体としてテーパ溝状のアームガイド410が構成されている。ブロック1110の少なくとも一部は、矩形状の溝1100の内部に位置する。
図11の例ではブロック1110がすべて矩形状の溝1100の内部に位置する。ブロック1110は、ボルトなどの固定具1120により固定されている。また、ブロック1110の固定位置および固定角度の少なくとも一方は調整可能である。ブロック1110の固定位置をX方向に移動させることで、アーム142の挿入長さを調整し、ひいては熱伝導部141の位置を調整することが可能である。ブロック1110の固定角度を変更することで、熱伝導部141のテーパ部分の角度に応じて、アームガイド410のテーパ角度を調整することが可能である。矩形状の溝1100とブロック1110により、テーパ溝状、かつ、アリ溝状のアームガイド410を構成してもよい。
【0052】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。また
、相互に矛盾していない限り、ある実施形態で説明された事項を他の実施形態に対して適用することが可能である。例えば、第1実施形態で説明した凹凸構造200および/またはセンサ210などを第2実施形態または第3実施形態に適用することができる。同様に、第2実施形態で説明したプランジャ420および/またはスプリング460などを第3実施形態に適用することができる。
【0053】
本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0054】
本願は、一実施形態として、研磨装置の研磨パッドの温度を調整するためのパッド温調機構であって、パッド温調機構は、研磨パッドとの間で熱を伝導するための熱伝導部と、熱伝導部から延びるアームであって、先端がテーパ状に形成されているアームと、アームを据え付けるためのアームマウントであって、アームの形状に対応したテーパ溝状のアームガイドが形成された、アームマウントと、アームがアームガイドから脱落することを防止するための脱落防止部材と、を備える、パッド温調機構を開示する。
【0055】
このパッド温調機構は、アームのがたつきおよびアームとアームガイドとの擦れあいの少なくとも一方を低減することができるという効果を一例として奏する。さらに、このパッド温調機構は、アームのX方向へのがたつきを低減することができるという効果を一例として奏する。
【0056】
さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、アームの少なくとも1本はアリほぞ状に形成されており、アームガイドのうち、アリほぞ状のアームのためのアームガイドはアリ溝状に形成されている、パッド温調機構を開示する。
【0057】
このパッド温調機構は、アームのY方向へのがたつきを低減することができるという効果を一例として奏する。
【0058】
さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、熱伝導部の内部に加熱冷却機構が設けられている、パッド温調機構を開示する。さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、加熱冷却機構は、熱媒体を流すための熱媒体流路を備え、アームマウントに、アームがアームマウントに据え付けられた場合に熱媒体流路と接続されるカップリングが設けられている、パッド温調機構を開示する。
【0059】
これらの開示内容により、パッド温調機構および加熱冷却機構の詳細が説明される。
【0060】
さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、カップリングは、アームマウントとの間に空隙が形成されるように設けられている、パッド温調機構を開示する。
【0061】
このパッド温調機構は、熱媒体源と熱媒体流路とを適切に接続しやすくなるという効果を一例として奏する。
【0062】
さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、加熱冷却機構はヒータおよび/またはクーラを備える、パッド温調機構を開示する。
【0063】
この開示内容により、加熱冷却機構の他の例が説明される。
【0064】
さらに本願は、一実施形態として、パッド温調機構であって、矩形状の溝と、少なくとも一部が矩形状の溝の内部に位置するブロックであって、固定位置および/または固定角度を調整可能である、ブロックと、により、テーパ溝状のアームガイドが形成されている、パッド温調機構を開示する。
【0065】
このパッド温調機構は、アームの挿入長さおよび/またはアームガイドのテーパ角度を調整することが可能であるという効果を一例として奏する。
【0066】
さらに本願は、一実施形態として、研磨パッドが取り付けられる研磨テーブルと、研磨テーブルに対向するように研磨テーブルの上部に設けられる研磨ヘッドと、本明細書に記載されたパッド温調機構と、を備える、研磨装置を開示する。さらに本願は、一実施形態として、研磨装置であって、パッド温調機構を上下動するための上下動機構をさらに備える、研磨装置を開示する。
【0067】
これらの開示内容により、本明細書に記載されたパッド温調機構を備える研磨装置の詳細が説明される。
【0068】
さらに本願は、一実施形態として、研磨装置であって、研磨テーブルの研磨パッドが取り付けられる面に低摩擦係数の材料のコーティングが施されている、研磨装置を開示する。
【0069】
この研磨装置は、研磨パッドを研磨テーブルから剥離することが容易となるという効果を一例として奏する。