特許第6897041号(P6897041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6897041配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897041
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20210621BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210621BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20210621BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C08L63/00 Z
   C08K3/36
   C08J5/24CFC
   H05K1/03 610H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-185847(P2016-185847)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48279(P2018-48279A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹越 正明
(72)【発明者】
【氏名】横田 弘
(72)【発明者】
【氏名】内村 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖浩
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−049998(JP,A)
【文献】 特開2009−200500(JP,A)
【文献】 特開平07−082490(JP,A)
【文献】 特開平11−147942(JP,A)
【文献】 特表2004−522816(JP,A)
【文献】 特開平07−196793(JP,A)
【文献】 特開2002−146310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04−5/10
C08J 5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化後の単位体積あたりの破壊エネルギーが0.0001〜0.001J/mmであり、かつ弾性率が8000MPa以上である配線板用樹脂組成物であって、
前記破壊エネルギー及び弾性率は、前記配線板用樹脂組成物から形成される厚さ1.2mm、幅2.9mm、長さ45mmサイズの樹脂板を硬化させた試験片について、支点間距離25mm、試験速度1mm/min、温度20〜25℃の条件で前記試験片が破壊するまで三点曲げ試験した結果に基づいて算出される配線板用樹脂組成物
【請求項2】
請求項1に記載の配線板用樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなるプリプレグ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリプレグを複数枚積層してなり、厚さが20〜100μmである、積層板。
【請求項4】
請求項3に記載の積層板に配線形成してなる配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型情報通信機器端末をはじめ、電子機器の小型化及び高機能化が急速に進んでおり、薄型かつ高機能な半導体装置が要求されている。半導体装置に用いる配線板を薄くすれば、半導体装置の薄型化に直結し、また配線板内の導体経路長が短縮できることから、高機能化にも有利である。そのため、配線板材料を極力薄型化することが求められている。また同時に、配線板内の導体層同士を接続するビアホールを小形化することで、ビア−ビア間に多くの配線を取りまわせるようになる、単位面積当たりのビアホール数を多くできる等の理由から、配線板内の電気回路の高密度化が図れる。そのため、容易な小径ビアの形成方法が求められている。
【0003】
小径ビアの形成方法としては、レーザーを用いて絶縁材料を焼き飛ばすものと、感光性絶縁樹脂を用いてフォトリソグラフィープロセスで開口を得るものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
現在、ビアホールの形成(穴あけ)にはCOレーザーが最も一般的に使用されている。原理的な理由から穴径は50μm程度が限界となっており、更なるビア小径化のためには、特許文献1にも記載されているように、YAGレーザーやエキシマレーザー等の適用が不可欠である。しかし、これらレーザー装置はCOレーザー装置よりはるかに高額である。また、そもそもレーザーは多穴を同時に開口できないため、多穴化時のタクトタイムが非常に長くなるおそれがある。
【0005】
一方、感光性絶縁樹脂を用いたビア形成では、一般的なフォトリソグラフィープロセスを適用するため、高額な装置を必要としない。また、多穴を同時に開口することができるため、タクトタイムが穴数に影響を受けず、穴あけ時間を極めて短時間化できる。しかし、感光性絶縁樹脂を用いたビア形成にはガラスクロスを適用することができず、含有できる無機フィラの量にも制限があるため、熱膨張係数を低く抑えることが難しい。そのため、特許文献2にも記載されているように、他の低熱膨張材料と併用する必要があるため、薄型の配線板には適用しづらい。
【0006】
また、これらの方法では、ビア内部や近傍にスミア(加工屑)が発生するため、デスミア(屑の除去)工程が必須となっているが、ビアが小径化するにつれ、薬液を用いたデスミアは液回りの理由などから難度が上がる。以上のことから、それぞれ薄型配線板への容易な小径ビアの形成方法としては課題がある。
【0007】
一方で、サンドブラストを用いた穴あけ方法も昔から存在している。専用のドライフィルムレジストで穴あけしたい部分以外をカバーし、砥粒を混ぜた空気を吹き付けて材料を研削することにより穴をあける(例えば、特許文献3参照)。装置はYAGレーザー等と比較して安価であり、タクトタイムは穴数に依存せず、ガラスクロスの加工も可能なため低熱膨張材料を適用でき、加工原理上スミアも穴に溜まりにくいことから、レーザーや感光性絶縁樹脂を用いる方法が有する多くの課題を解決できる。近年、ブラスト装置の進歩によって比較的小径のビアも開口可能になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−235202号公報
【特許文献2】特開2014−225671号公報
【特許文献3】特開2004−160649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、サンドブラスト法を用いた薄型配線板の加工実績は多くなく、サンドブラスト加工に最適な配線板用樹脂組成物とはどういったものか明らかになっていない。そこで本発明者らは鋭意検討した結果、小径ビアをサンドブラストで加工する上で、ドライフィルムレジストは薄型化せざるを得ないため、積層板の加工速度を上げることが重要であることを見出した。また、同時に配線板が極薄であるため、良好な取扱性を確保することが重要であることを見出した。
【0010】
そこで本発明は、サンドブラスト法を用いた薄型配線板の製造に適用した場合に、加工速度が向上し、且つ取扱性が良好である配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題をすべて解決しうる配線板用樹脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の態様を有することを特徴とする。
[1] 硬化後の単位体積あたりの破壊エネルギーが0.0001〜0.001J/mmであり、かつ弾性率が8000MPa以上である配線板用樹脂組成物。
[2] [1]に記載の配線板用樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなるプリプレグ。
[3] [2]に記載のプリプレグを複数枚積層してなる積層板。
[4] 厚さが20〜100μmである、[3]に記載の積層板。
[5] [3]又は[4]に記載の積層板に配線形成してなる配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サンドブラスト法を用いた薄型配線板の製造に適用した場合に、加工速度が向上し、且つ取扱性が良好である配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】破壊エネルギー及び弾性率の算出方法を説明するための図である。
図2】配線の形成方法の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の寸法比率は図示した比率に限られるものではない。
【0016】
本明細書中、単位体積あたりの破壊エネルギーと弾性率については、以下のように求めることができる。まず、配線板用樹脂組成物を用いて厚さ(h)1.2mmの樹脂板を作製し、幅(b)2.9mm、長さ45mmサイズにダイサ等で切り出して試験片を作る。支点間距離(L)25mm、試験速度1mm/min、温度20〜25℃の条件で試験片が破壊する(ここでは最大荷重を記録後、加重が最大荷重の3/4に下がったときを「破壊」とする)まで三点曲げ試験し、得られた曲げ荷重(F)と曲げたわみ(s)から、曲げ応力(σ)と曲げひずみ(ε)を算出し、応力―ひずみ曲線(S−Sカーブ)を得る。なお、曲げ応力(σ)と曲げひずみ(ε)の算出式はσ=(3FL)/(2bh)、ε=(6hs)/Lとなる。ここで、図1に示すように、得られたS−Sカーブの面積を単位体積あたりの破壊エネルギー、立ち上がりの接線の傾きを弾性率とする。
【0017】
なお、樹脂板の作製に関しては、試験片内にボイドなく作製できるのであれば、特に方法を規定するものではなく、様々な方法をとることができる。例えば、配線板用樹脂組成物を用いて作製したプリプレグをビニール袋に入れ、ビニール袋の口を閉じた状態でよく揉んで半硬化の樹脂粉を集め、それをテフロン(登録商標)製シートの型枠に投入し、加熱プレスで押し固めて樹脂板を得てもよい。あるいは、例えば、配線板用樹脂組成物をバーコーター等を用いて任意の厚さで支持体(例えばPET)上に塗布し、配線板用樹脂組成物が硬化しない程度の温度で加熱して溶剤を除去した後、塗布物をビニール袋に入れ、ビニール袋の口を閉じた状態でよく揉んで半硬化の樹脂粉を集め、それをテフロン(登録商標)製シートの型枠に投入し、加熱プレスで押し固めて樹脂板を得てもよい。支持体としては、特に制限はなく、汎用のものを使用することができ、また、塗布の方法としても特に制限はなく、通常の卓上塗工機を用いて塗布すればよい。なお、硬化後の単位体積あたりの破壊エネルギーと弾性率の測定に用いられる樹脂板は、実施例に記載の方法で作製されることが好ましい。
【0018】
なお、積層板の作製に関しては特に方法を規定するものではなく、様々な方法をとることができる。例えば、当該積層板に用いられる配線板用樹脂組成物をガラスクロスに含浸した後、加熱により半硬化(Bステージ化)して得たプリプレグを複数枚重ね、その片面又は両面に銅箔を配置して、加熱加圧プレスによって積層形成して得た銅張積層板の銅箔層を銅エッチング液で溶かして得てもよい。
【0019】
本実施形態の配線板用樹脂組成物の硬化物の単位体積あたりの破壊エネルギーは0.0001〜0.001J/mmである。破壊エネルギーが0.0001J/mmを下回ると、積層板を取り扱う際の様々な外力によって、配線板用樹脂組成物が割れたりヒビが入ったりしやすくなるため好ましくない。また、破壊エネルギーが0.001J/mを上回ると、サンドブラスト加工時に配線板用樹脂組成物が砕け散りにくく、加工速度が下がるため好ましくない。この破壊エネルギーは、取扱性及び加工速度をより向上させる観点から、好ましくは0.00015〜0.0008J/mmであり、より好ましくは0.0002〜0.0006J/mmである。
【0020】
本実施形態の配線板用樹脂組成物の硬化物の弾性率は8000MPa以上である。弾性率が8000MPaを下回ると、極薄の積層板がたわみやすくなるため、積層板及び配線板の搬送やマガジンラックへの挿抜等の取り扱いが難しくなるため好ましくない。この弾性率は、たわみを抑制して取扱性をより向上させる観点から、好ましくは9000MPa以上であり、より好ましくは10000MPa以上である。なお、弾性率の上限は特に限定されないが、例えば15000MPa以下とすることができる。
【0021】
本実施形態の配線板用樹脂組成物が上記所定の要件を満たすことにより上述の効果を奏する理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは以下のように推察している。
破壊エネルギーを所定値以下とすることで、サンドブラストの砥粒が衝突した際に効率よく砕け散ることができ、かつ所定値以上の破壊エネルギーを有することで、積層板取扱時の折れや割れを防ぐことができる。更に、同時に弾性率を所定値以上とすることで、積層板を極薄化してもたわみを小さく抑えることができ、取扱性に優れる。
【0022】
ここで配線板用樹脂組成物は、上記所定の破壊エネルギーと弾性率を有すれば、特にその組成は限定されず、様々な種類の組成物とすることができる。例えば、分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物、酸性置換基を有するアミン化合物、及び分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物を配合、又は反応させて得られる熱硬化性樹脂組成物であってもよく、ホスホニウム塩及びホスフィン−ルイス酸錯体より選ばれる少なくとも1種のリン含有化合物;エポキシ樹脂もしくはシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂;無機充填材;及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含む組成物とすることもできる。特に、分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物、及び分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物を含むと、良好なガラス転移温度(Tg)、低熱膨張率、弾性率、銅箔接着性、耐デスミア性が得られ、高密度化、高多層化されたプリント配線板を製造することができ、大量のデータを高速で処理するコンピュータや情報機器端末等の用いられる電子機器の配線板に好適に用いることができ、好ましい。
【0023】
プリプレグは、配線板用樹脂組成物をガラスクロスに含浸することにより得ることができる。ガラスクロスは、実用途に応じ、任意の厚さのEガラスやTガラス、Dガラス等を好適に用いることができる。
【0024】
本実施形態の積層板は上述の方法等で作製することができる。積層板は片面又は両面に銅箔を備えるものであってもよい。積層板の銅箔を除いた厚さは20〜100μmであることが好ましい。この厚さが20μmを下回ると、たわみが大きくなりすぎて、積層板を単独で取り扱うことが難しくなる傾向がある。また、100μmを上回ると、小径のビアが開口しにくくなる傾向がある。この厚さは、たわみを抑制して取扱性を向上させる観点から、より好ましくは25〜80μmであり、更に好ましくは30〜60μmである。
【0025】
本実施形態の積層板は、配線板におけるビルドアップ層として好適に用いることができる。積層板に配線形成する方法としては従来公知の方法を採用できるが、例えば図2に示す方法により配線を形成することができる。
【0026】
まず、図2(a)に示すように、支持基材1と、支持基材1上に形成された導体層2とを備える積層体3を用意する(用意工程)。積層体3は、例えば、支持基材1上に導体を積層することにより得られる。
【0027】
支持基材1は、例えば、基板4と、基板4上に形成された複数の金属箔層5a,5bとを備える。基板4は、FR−4(ガラスエポキシ樹脂基材)、FR−5(耐熱ガラスエポキシ基材)、SUS(ステンレス)基材等であってよい。金属箔層5は、2層以上の金属箔層からなっていてよく、複数の金属箔層の少なくとも2層間が互いに物理的に剥離可能になっている。金属箔層5は、好ましくはピーラブル銅箔で形成される。ピーラブル銅箔層の基板4から最も離れた層の厚さが極薄であることで、最終的にエッチアウトする際に時間短縮が図られる。支持基材1は、好ましくはFR−4あるいはFR−5にピーラブル銅箔を貼付したものであるが、SUS板にめっき処理により金属箔層を形成したものであってもよい。
【0028】
導体層2は、例えば銅で形成されている。導体層2は、例えば支持基材1上にパターニングされた配線であってよく、パッド、ダミーパターン等であってもよい。導体層2の形成方法は、特に限定されず、例えば金属箔層(ピーラブル銅箔層)5をシード層にして、めっきプロセスで形成する方法であってよい。
【0029】
用意工程に続いて、図2(b)に示すように、本実施形態の積層板を用いて、導体層2を覆うようにして支持基材1上にビルドアップ層6を形成する(ビルドアップ層形成工程)。ビルドアップ層6は、例えば、支持基材1上に積層板を真空プレスすることにより形成される。
【0030】
ビルドアップ層形成工程に続いて、図2(c)に示すように、ビルドアップ層6上に樹脂層(めっきプロセス用プライマ樹脂層)7を形成する(樹脂層形成工程)。樹脂層7は、例えばラミネートすることにより形成される。樹脂層7に用いられる樹脂は、ビルドアップ層6の物性に影響が少なく、無電解めっきとの密着性がよいことから、好ましくは多官能型エポキシ樹脂である。
【0031】
樹脂層形成工程に続いて、図2(c)に示すように、樹脂層7上に第一のドライフィルムレジスト層8を形成する(第一のドライフィルムレジスト層形成工程)。第一のドライフィルムレジスト層8は、例えば、ロールラミネート、真空ラミネートなど公知の方法により形成できる。ラミネートは、例えば、0〜180℃で0.001N以上、ロール速度0.01mm/s以上の条件で行われてよい。
【0032】
解像性と耐サンドブラスト性との両立の観点から、第一のドライフィルムレジスト層8の厚さは、好ましくは35μm以下であり、また、第一のドライフィルムレジスト層8は、好ましくは、カルボキシル基を有するセルロース又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂を含むアルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和基を有する単官能化合物又は多官能化合物を含む光重合性化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物で形成されている。
【0033】
第一のドライフィルムレジスト層形成工程に続いて、図2(d)に示すように、例えば露光マスク9を用いて、第一のドライフィルムレジスト層8の一部である所定領域を活性光線Lで露光する(露光工程)。ここでの所定領域は、第一のドライフィルムレジスト層8に開口部が形成される予定の領域である。露光方法は、露光マスク9を用いる方法に代えて、UVレーザーによる直描方式であってもよい。
【0034】
露光工程に続いて、図2(e)に示すように、露光後の第一のドライフィルムレジスト層8の未露光領域(露光工程において、露光マスク9により活性光線Lが遮断されていた領域)を除去して開口部10を形成する(開口部形成工程)。開口部10は、ビルドアップ層6にIVH(Inner Via Hole)が形成される予定の領域に対応する位置に形成される。
【0035】
第一のドライフィルムレジスト層8の未露光領域を除去する方法としては、特に限定されず、現像液を用いたシャワー現像又はミスト現像によって除去する方法、サンドブラスト法によって除去する方法等が挙げられる。現像液によるシャワー現像又はミスト現像、洗浄及び乾燥工程を省略して、工程を簡易化できる観点から、サンドブラスト法によって除去する方法が好適である。サンドブラストは、例えば後述するIVH形成工程におけるサンドブラストと同様の条件で行われる。
【0036】
開口部形成工程に続いて、図2(f)に示すように、サンドブラスト法を用いて、ビルドアップ層6にIVH11を形成する(IVH形成工程)。
【0037】
IVH形成工程では、開口部10を有する第一のドライフィルムレジスト層8がマスクとしての役割を果たし、砥粒(研磨剤)を吹き付けることで、開口部10に対応する位置のビルドアップ層6を切削する。サンドブラストの条件は、特に制限されない。砥粒としては、例えば、ガラスビーズ、SiC、SiO、Al、ZrO等の微粒子が挙げられる。砥粒の平均粒径は、例えば2〜100μmであってよい。砥粒は、好ましくは平均粒径が30μm以下のAlの微粒子(アルミナ粉)である。砥粒の射出量は、好ましくは砥粒がIVHに詰まらない程度の量である。
【0038】
IVH11の直径は、50μm以下であり、配線板内の電気回路(配線)を高密度化できることから、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。IVH11の直径が50μm以下であると、配線板内の電気回路(配線)の高密度化が図られ、ビルドアップ層6の層数の増加を抑制し、従来のCOレーザーによるIVH形成よりもコストが低くなる。
【0039】
IVH形成工程の後、例えば、サンドブラスト処理により削り取られずに樹脂層7上に残った第一のドライフィルムレジスト層8を除去する(第一のドライフィルムレジスト層除去工程)。第一のドライフィルムレジスト層8の除去方法としては、例えばアルカリ水溶液による除去方法等が挙げられる。
【0040】
第一のドライフィルムレジスト層除去工程の後、樹脂層7上、IVH11の内壁上及び導体層2上にシード層を形成する(シード層形成工程)。シード層は好ましくは銅により形成される。シード層は、例えば無電解銅めっきにより形成される。シード層の厚みなどは、特に制限されない。
【0041】
シード層形成工程の後、シード層上に第三のドライフィルムレジスト層を形成する(第三のドライフィルムレジスト層形成工程)。第三のドライフィルムレジスト層は、例えば、第一のドライフィルムレジスト層8と同様の材料及び方法により形成される。第三のドライフィルムレジスト層の耐サンドブラスト性の有無は問わない。
【0042】
第三のドライフィルムレジスト層形成工程の後、第一のドライフィルムレジスト層8と同様にして、第三のドライフィルムレジスト層の所定領域を露光し、次いで、第三のドライフィルムレジスト層の未露光部を除去する。
【0043】
続いて、IVH11内、及び第三のドライフィルムレジスト層が形成されていないシード層上に配線を形成する(配線形成工程)。配線は、好ましくは銅で形成される。配線は、例えば電気銅めっきにより形成される。
【0044】
配線形成工程の後、第三のドライフィルムレジスト層を除去する(第三のドライフィルムレジスト層除去工程)。第三のドライフィルムレジスト層の除去方法は、第一のドライフィルムレジスト層8と同様の方法により除去できる。
【0045】
第三のドライフィルムレジスト層除去工程の後、配線が積層されていない領域に対応するシード層を除去する(シード層除去工程)。シード層の除去方法としては、例えばエッチング処理が挙げられる。
【0046】
以上説明したビルドアップ層形成工程からシード層除去工程までを繰り返して、多層化してよい。すなわち、ビルドアップ層6を2層以上形成し、複数のビルドアップ層6間を配線で電気的に接続してよい。
【実施例】
【0047】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例で得られた樹脂板又は積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
【0048】
<単位体積あたりの破壊エネルギー及び弾性率の測定>
厚さ(h)1.2mmの樹脂板を、幅(b)2.9mm、長さ45mmサイズにダイサ等で切り出して試験片を作る。インストロン社製5948型試験機を用いて支点間距離(L)25mm、試験速度1mm/min、温度20〜25℃の条件で試験片が破壊する(ここでは最大荷重を記録後、加重が最大荷重の3/4に下がったときを「破壊」とする)まで三点曲げ試験し、得られた曲げ荷重(F)と曲げたわみ(s)から、曲げ応力(σ)と曲げひずみ(ε)を算出し、応力―ひずみ曲線(S−Sカーブ)を得る。なお、曲げ応力(σ)と曲げひずみ(ε)の算出式はσ=(3FL)/(2bh2)、ε=(6hs)/L2となる。ここで、図1に示すように、得られたS−Sカーブの面積を単位体積あたりの破壊エネルギー、立ち上がりの接線の傾きを弾性率とした。
【0049】
<加工性の評価>
まず、積層板表面にφ80μmの開口を有するサンドブラスト用ドライフィルム層を形成した。プロセスは以下のとおりである。
積層板表面にサンドブラスト用ドライフィルムSB−3050(日立化成製)を温度80℃圧力0.4MPa速度1.0m/minの条件でロールラミネートする。平行露光機とネガマスクを用いて、開口部を形成しようとする部位以外の面にUV光を115mJ/cm照射する。スプレー現像機を用いて、1.0wt%のNaCO水溶液でドライフィルムにφ80μmの開口を300μm以上の間隔で100穴以上現像する。1000mJ/cmのUV光を照射し硬化を促進させる。
次に、サンドブラスト装置を用いて積層板に穴加工を行った。プロセスは以下のとおりである。
開口を有するサンドブラスト用ドライフィルム層を形成した積層板をサンドブラスト装置ELP−1TR(エルフォテック製)にセットする。基板面から100mmの距離にあるφ5mm径のノズルから、噴射圧0.15MPaで平均粒径20μmのアルミナ#600砥粒を吹き付ける。その際、砥粒供給は、供給ローラー回転数で3rpmに設定、ノズルは移動速度8m/minで130mm幅を往復運動しつつ、積層板は20mm/minの速度で運ばれる。φ80μmの穴が開いている箇所を2回通過したら穴加工を止め、積層板を取り出し、ドライフィルムを取り去る。積層板に加工された穴の深さを深度計で無作為に20穴測定し、平均したものを加工性の指標とした。この数値が大きいほど加工速度が速い、すなわち加工性が高いということができる。
【0050】
<取扱性の評価>
200mm×200mmサイズの積層板を20枚重ねたものを、搬送ローラーの脇に準備する。搬送ローラー径50mm、搬送ローラー幅1mm、ローラーの間隔50mm、ローラー軸のピッチ最大45mm、搬送速度2.0mm/sの条件で搬送ローラーを動かし、積層板を一枚ずつ取り上げ、搬送ローラーに置いてゆき、5m搬送後1枚ずつ回収して重ねた。その際、積層板のダメージ(割れやヒビ)や、搬送ローラーからの落下や巻き込まれの有無をチェックし、取扱性の指標とした。なお、今回は積層板製造現場の基板搬送設備を利用したが、同様の搬送ローラーを有してあれば搬送設備に特に指定はない。
【0051】
(実施例1、比較例1〜3)
<ワニスの調製>
以下に示す(d)、(e)、(f)、(g)及び(x)成分を表1に示した配合割合(質量部;但し(g)成分のみvol%)で混合し、溶媒にメチルエチルケトンを用いて樹脂分65質量%のワニスを調製した。
[(d)熱硬化性樹脂]
(d−1)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
〔日本化薬株式会社製;商品名:XD−1000〕
(d−2)ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂
〔日本化薬株式会社製;商品名:NC−3000H〕
[(e)熱可塑性エラストマー]
(e−1)タフテックH1043:水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔旭化成株式会社製、商品名〕
[(f)リン含有化合物]
(f−1)トリフェニルホスフィントリフェニルボラン
〔北興化学工業株式会社製;商品名:TPP−S〕
[(g)無機充填材]
(g−1)溶融シリカ(株式会社アドマテックス製:商品名:SC2050−KNK)
[(x)変性シリコーン]
製造例1:化合物(x−1)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−161A:30.4gと、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン:192.0gと、p−アミノフェノール:7.3gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:20.3g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:375.0gを入れ、100℃で3時間反応させて、化合物(x−1)含有溶液を得た。
製造例2:化合物(x−2)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−161B:26.8gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:301.0gと、p−アミノフェノール:7.2gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:22.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:536.3gを入れ、100℃で3時間反応させて、化合物(x−2)含有溶液を得た。
製造例3:(x−3)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−161B:39.5gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:211.7gと、p−アミノフェノール:5.0gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:13.7g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:405.0gを入れ、100℃で3時間反応させて、化合物(x−3)含有溶液を得た。
<製造例1〜3で用いた材料>
[(a)分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物]
(a−1)両末端ジアミン変性シロキサン
〔信越化学工業株式会社製;商品名:X−22−161A〕
(a−2)両末端ジアミン変性シロキサン
〔信越化学工業株式会社製;商品名:X−22−161B〕
(a−3)3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン
〔日本化薬株式会社製;商品名:KAYAHARD A−A〕
[(b)酸性置換基を有するアミン化合物]
p−アミノフェノール〔関東化学株式会社製〕
[(c)少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物]
2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン
〔大和化成工業株式会社製;商品名:BMI−4000〕
【0052】
【表1】
【0053】
<積層板の作製>
次に、上記ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、9μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。その後、上下の銅箔を銅エッチング液により溶解して取り去って積層板を得た。
【0054】
<樹脂板の作製>
また、上記ワニスを、16μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムに、乾燥後の樹脂厚が35μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、PI−1210)を用いて塗布し、160℃で10分加熱乾燥し、半硬化物の樹脂粉を得た。この樹脂粉を厚さ1.2mmのテフロン(登録商標)シートの型枠に投入し、12μmの電解銅箔の光沢面を上下に配置し、圧力2.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行った後、電解銅箔を除去して樹脂板を得た。
【0055】
得られた積層板及び樹脂板の試験・評価した結果を表2に示す。実施例では、砕け易さとハンドリングを両立する破壊エネルギーを有し、かつ高弾性率とすることで、良好な加工性と薄型積層板の取扱性を両立できている。一方比較例では、加工性には優れるがハンドリング時に割れる、あるいはたわみが大きく機械搬送に難があったり、取扱性に優れるものの加工速度が遅かったりしており、明らかに実施例と比較すると劣っている。
【0056】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上、本発明によって、極薄でありながらたわみが少なく取扱性に優れ、高密度配線の配線板を高効率で製造することができるようになる。当該配線板は、電子機器の小型化及び高機能化に対応できる、薄型かつ高機能な半導体装置に好適であり、産業上の利用価値は非常に大きい。
【符号の説明】
【0058】
1…支持基材、2…導体層、3…積層体、4…基板、5,5a,5b…金属箔層、6…ビルドアップ層、7…樹脂層、8…第一のドライフィルムレジスト層、9…露光マスク、10…開口部、11…IVH。
図1
図2