特許第6897052号(P6897052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897052
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】カラムフィルター
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20210621BHJP
   B01D 15/10 20060101ALI20210621BHJP
   B22F 5/10 20060101ALI20210621BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G01N30/26 P
   B01D15/10
   B22F5/10
   B22F3/11 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-199508(P2016-199508)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-59885(P2018-59885A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真仁田 大輔
【審査官】 小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−157653(JP,A)
【文献】 特開平03−249911(JP,A)
【文献】 特開2011−026628(JP,A)
【文献】 特開2004−195464(JP,A)
【文献】 特開2002−317207(JP,A)
【文献】 特開平02−271252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/26
B01D 15/10
B01D 15/10
B22F 3/11
B22F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小粒径が30μm以上であり、最大粒径が50μm以下の粒子径を有する球形粉体を焼結し、粒子が球状粒子のまま維持されたことを特徴とする焼結体(但し、セラミック焼結体を除く)で構成される、厚さ1.5mm以上の送液方向の出口側の液体クロマトグラフィー用カラムフィルター。
【請求項2】
焼結体がステンレス鋼である請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用カラムフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球形粉体で構成される焼結体であることを特徴とするカラムフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーによる分析では、カラム充填剤をカラム外に流出させないためにカラムフィルターを設けることがある。生体試料を測定対象とする液体クロマトグラフィー用カラムフィルターは、試料に対してある程度不活性であるステンレス鋼製のフィルターが用いられている。
【0003】
このようなステンレス鋼製フィルターの具体例として、ステンレス鋼製の短繊維または微粉末を高温、高圧下で焼結したものが用いられる。従来のステンレス鋼製フィルターは、短繊維または微紛体等の大きさや形が厳密に一定ではない異形粉体を用いていたが、一定の単位構造を有していないため、カラム出口側でカラム充填剤以外の物質が蓄積し凝集することにつながっていた。
【0004】
また、球形金属粉体を焼結させたものを用いたフィルターについても提案されているが(例えば、特許文献1〜3参照)、カラム充填剤の粒径が十分に考慮されておらず、使用する金属粉体の平均粒径としては適切な範囲ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−89731号公報
【特許文献2】特開平10−237504号公報
【特許文献3】特開2004−195464公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液体クロマトグラフィーによる生体試料の分析において、生体試料中の脂質やタンパク質が分析カラム内で非特異的吸着することで生じる凝集物をカラム内に留まることなく流出させることを促進し、カラムの寿命を向上させることが可能なカラムフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、球形粉体より形成された焼結体からなる球形粉焼結フィルターを用いることで、圧力上昇に伴うカラムの耐久性悪化を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明は、最小粒径が30μm以上であり、最大粒径が50μm以下の粒子径を有する球形粉体を焼結し、粒子が球状粒子のまま維持されたことを特徴とする焼結体で構成される、厚さ1.5mm以上の液体クロマトグラフィー用カラムフィルターに関するものである。
【0010】
最小粒径が30μm以上であり、最大粒径が50μm以下の粒子径を有する球形粉体は、粒径が30〜50μmの範囲内に分級された粉末を使用すれば問題ない。最小粒径が30μm以上とは、カラム充填物の粒径の6〜12倍程度であることを想定しており、最大粒径が50μm以下とはカラム充填剤の10〜20倍程度であることを想定している。本発明の効果は、カラム充填剤の粒子径によらず、カラム圧力上昇の抑制に期待できるが、通常、カラム充填剤の粒子径が小さいカラムで圧力上昇が問題となることから、カラム充填剤の粒子径が5μm以下のカラムで大きな効果を期待できる。
【0011】
本発明は、粒子が球状粒子のまま維持されたことを特徴とする焼結体で構成される必要があるが、その焼結方法は粒子が球状粒子のまま維持される方法であれば特に制限はなく、例えば容器内に無加圧で充填保持し、不活性ガスまたは真空、無加圧下で焼結するような方法で行えば問題ない。
【0012】
また、本発明は、厚さ1.5mm以上であることが必要であり、好ましくは1.5mm以上2.5mm以下である。厚さ1.5mm未満であると、外圧からの変形に伴うフィルターの強度不足や、フィルターの性能が低下することによりカラム充填剤の漏れが生じる可能性がある。一方で、厚さが2.5mmを超えるとデッドボリュームが増加し、測定結果の理論段数が低下するなどカラムの性能が低下する傾向がある。
【0013】
さらに、カラムフィルターの濾過精度は、カラム充填剤の粒子径分布の平均値に対して0.1倍〜1.0倍程度が望ましい。濾過精度が小さすぎると、フィルター自体の圧力損失が大きくなり、またカラムフィルターからの流出効果が期待できないおそれがあり、カラム濾過精度が大きすぎるとカラム充填剤が漏れてしまうおそれがある。
【0014】
従来の異形粉焼結フィルターは、密度が大きく、図1に示す通り、流路が袋小路状となるものが生じていたため、フィルター自体の圧力損失が大きかった。一方、球形粉焼結フィルターは、球形同士が接するため、濾過精度に比して密度が小さくなり、その単位構造が維持されやすくなるために、図2に示す通り、流路が塞がりにくく、フィルター自体の圧力損失を小さくすることができる。密度が小さくなることで、カラム内に存在する、凝集を伴った不純物を含む各物質はカラム出口側のカラム充填剤とフィルターの接面やカラムフィルター内部に留まることなく流出させることができ、カラムの寿命を向上させることができる。球形粉焼結フィルターはカラムの入口側でも使用可能であるが、本効果は送液方向の出口側(流出側)に適用することが効果的である。
【0015】
本発明における球形粉体としては、ガラスやエンジニアリングプラスチック樹脂でも適用できるが、上述のような生体試料に対してある程度不活性であり、強度も高い球形金属粉体が好ましく、特にステンレス鋼のものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】異形粉焼結フィルターの拡大写真を示したものである。
図2】球形粉焼結フィルターの拡大写真を示したものである。
図3】カラムおよびカラムフィルターの概略図を示したものである。
図4】液体クロマトグラフ装置のシステム概要を示したものである。
図5図4の装置で得られたクロマトグラムを示したものである。
図6】検体の注入回数とカラムにかかる圧力の関係を示すグラフを示したものである。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
直径が30〜50μmの範囲内に分級された粒子径であるステンレス鋼製の球形粉体を焼結させることにより形成された球形粉焼結フィルター(φ3.1mm×厚さ2.0mm、濾過精度1μm)を株式会社巴製作所より提供を受けた。
【0019】
この球形粉焼結フィルターを、自動リポ蛋白分析計(東ソー株式会社製、商品名「HLC−729LPII」)専用カラムである「TSKgel Lipopropak−AEXII」(東ソー株式会社製)の出口側カラムフィルターに適用した。
【0020】
この「HLC−729LPII」は、陰イオン交換クロマトグラフィー法を原理として、血清中のリポ蛋白を高密度リポ蛋白(HDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白(VLDL)を含む5つのリポ蛋白に1検体あたり5.2分で分離測定することができる。カラムとカラムフィルターの概略図を図3に示す。流入側のカラムフィルター(002)として異形粉焼結フィルター、流出側のカラムフィルター(004)として球形粉焼結フィルターを適用した。その両者の間にカラム充填剤(003)があり、各フィルターはテフロン製のスリーブ(001)にはめられている。カラム両端には、システムと結ぶ送液ライン(005)が接続されている。システム概要を図4に示した。「TSKgel Lipopropak−AEXII」は陰イオン交換基であるDEAE基を有する粒径2.5μmを中心値とする充填剤を有する陰イオン交換カラムである。溶出液として、上記装置専用溶離液である溶離液第1液(100)(Tris緩衝液)、溶離液第2液(101)(Tris緩衝液、250mM過塩素酸ナトリウム)、溶離液第3液(102)(Tris緩衝液、400mM過塩素酸ナトリウム)を用いる。それぞれの溶離液に対応したポンプ(103、104および105)による塩濃度を変化させたステップグラジエントにより送液され、ミキサー(106)で混合され、カラムフィルター(109)を有する陰イオン交換カラム(108)で分離溶出し、リポ蛋白を分画する。測定試料は血清を用いて、サンプラー(107)で自動注入した。分離された各リポ蛋白はコレステロール反応液(110)、および反応液ポンプ(111)によりコレステロール染色され、検出器(112)において590nmの波長で検出した。また、ポンプ・カラム間に圧力センサー(113)を設けた。このシステムにより得られたクロマトグラム例を図5に示した。ヒト血清中のリポ蛋白であるHDL(201)、LDL(202)、IDL(203)、VLDL(204)、Other(205)(OtherにはカイロミクロンおよびLipoprotein(a)が含まれる)中のコレステロールが測定された。血清試料として健常人のプール検体を用いた。この血清検体を前処理や希釈をすることなく、上記装置により一測定あたり1.0μLを自動注入した。測定は、1バッチの測定あたり50〜100検体の測定を実施し、圧力上昇が顕著に確認されるまで実施した。この測定を同じ方法で製造した3個のカラムで実施した。測定注入回数とカラム圧力{圧力センサー(113)で測定}の結果を図6に示した。いずれのカラムも450検体以上の測定でシステム圧力が10MPaに達した。
【0021】
(比較例1)
「TSKgel Lipopropak−AEXII」(東ソー株式会社製)の出口側カラムフィルター以外は実施例1と同様にして測定を行った。出口側フィルターには、ステンレス鋼製の異形粉体を焼結させることにより形成された異形粉焼結フィルター(φ3.5mm×厚さ1.0mm、濾過精度1μm)を用いた。この異形粉焼結フィルターは株式会社巴製作所より提供を受けた。この測定を同じ方法で製造した3個のカラムで実施した。測定注入回数とカラム圧力{圧力センサー(113)で測定}の結果を図6に示した。いずれのカラムも300検体以下の測定でシステム圧力が10MPaに達した。
【0022】
実施例1ではいずれのカラムも、比較例1のカラムと比較して圧力上昇がゆるやかになった。これは、実施例1で出口側カラムフィルターとして、ステンレス鋼製の球形粉体を焼結させることにより形成された球形粉焼結フィルターを採用したことで、カラム内部に堆積または凝集した血液由来の物質が、出口側カラムフィルターに留まることなく流出が促進された結果だと示唆された。
【0023】
(比較例2)
直径が50〜100μmの範囲内に分級された粒子径であるステンレス鋼製の球形粉体を焼結させることにより形成された球形粉焼結フィルター(φ3.1mm×厚さ2.0mm、濾過精度2μm)を株式会社巴製作所より提供を受けた。
【0024】
この球形粉焼結フィルターを、自動リポ蛋白分析計(東ソー株式会社製、商品名「HLC−729LPII」)専用カラムである「TSKgel Lipopropak−AEXII」(東ソー株式会社製)の出口側カラムフィルターに適用した。陰イオン交換基であるDEAE基を有する粒径2.5μmを中心値とする充填剤をカラムに充填した場合、本実施例ではゲル漏れが発生した。これは、50μm以上の粒子径であるステンレス鋼製の球形粉体を焼結させることにより形成された球形粉焼結フィルターでは、カラム充填剤をカラム外に流出させないことが主な役割であるカラムフィルターの機能が果たされていない結果となった。
【符号の説明】
【0025】
(001) カラムフィルタースリーブ
(002) 流入側(入口側)の異形粉焼結カラムフィルター
(003) カラム充填剤
(004) 流出側(出口側)の球形粉焼結カラムフィルター
(005) 送液ライン
(100) 溶離液1
(101) 溶離液2
(102) 溶離液3
(103) ポンプ1
(104) ポンプ2
(105) ポンプ3
(106) ミキサー
(107) オートサンプラー
(108) カラム
(109) カラムフィルター
(110) コレステロール反応液
(111) コレステロール反応液を送液するためのポンプ
(112) 検出器
(113) 圧力センサー
(201) HDLコレステロールのピーク
(202) LDLコレステロールのピーク
(203) IDLコレステロールのピーク
(204) VLDLコレステロールのピーク
(205) Otherコレステロールのピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6