特許第6897427号(P6897427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6897427太陽電池封止シート用マスターバッチおよび太陽電池封止シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897427
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】太陽電池封止シート用マスターバッチおよび太陽電池封止シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20210621BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20210621BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20210621BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20210621BHJP
【FI】
   C08J3/22CES
   C08L23/04
   C08K3/34
   H01L31/04 560
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-163057(P2017-163057)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2018-35353(P2018-35353A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2020年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-166567(P2016-166567)
(32)【優先日】2016年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】余田 宏章
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−126170(JP,A)
【文献】 特表2015−522945(JP,A)
【文献】 特開2015−135937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28
C08J 99/00
C08K 3/34
C08L 23/04
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と、
二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含有し、
ケイ素凝集度が0以上0.350以下であり、
前記化合物の強熱減量が1.7%を超え15%以下である
太陽電池封止シート用マスターバッチ。
【請求項2】
前記化合物の強熱減量が2%以上15%以下である請求項1に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
【請求項3】
エチレン系樹脂がエチレン−不飽和エステル共重合体である請求項1または2に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
【請求項4】
エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の共重合体である請求項3に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
【請求項5】
エチレン−不飽和エステル共重合体が、
エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、不飽和エステルに由来する単量体単位を23質量%以上35質量%以下含むエチレン−不飽和エステル共重合体である
請求項3または4に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスターバッチと、
エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と
の混合物を
溶融混練後シート状に成形することにより得られる太陽電池封止シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマスターバッチと、
エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と
の混合物を
溶融混練後シート状に成形する太陽電池封止シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止シート用マスターバッチおよび太陽電池封止シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、再生可能エネルギーの利用に適するものとして注目が集っており、その普及が進んでいる。
太陽電池モジュールは、一般に、ガラス製受光面保護材、太陽電池素子、封止シート、およびバックシートを含み、ガラス製受光面保護材とバックシートとの間に、封止シートを介して太陽電池素子が積層された構造である。封止シートとしてはエチレン−酢酸ビニル共重合体、またはエチレン−α−オレフィン共重合体からなるシートが用いられている。太陽電池モジュールの機能安定化を図るため、近年では、封止シートの絶縁性向上が求められており、例えば特許文献1には、特定のメルトフローレート、特定の密度、および特定のショアA硬度を有するエチレン系共重合体を含む太陽電池封止材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−504647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メガソーラー発電所等では、高い電圧下で太陽電池モジュールが使用されるため、封止シートの絶縁性はさらなる向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気絶縁性の高い太陽電池封止シートを製造するためのマスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、下記[1]〜[7]を提供する。
【0008】
[1]エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と、
二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含有し、
ケイ素凝集度が0以上0.350以下でありる
前記化合物の強熱減量が1.7%を超え15%以下である
太陽電池封止シート用マスターバッチ。
[2]前記化合物の強熱減量が2%以上15%以下である請求項1に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
[3]エチレン系樹脂がエチレン−不飽和エステル共重合体である[1]または[2]に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
[4]エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の共重合体である[3]に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
[5]エチレン−不飽和エステル共重合体が、
エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、不飽和エステルに由来する単量体単位を23質量%以上35質量%以下含むエチレン−不飽和エステル共重合体である
[3]または[4]に記載の太陽電池封止シート用マスターバッチ。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のマスターバッチと、
エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と
の混合物を
溶融混練後シート状に成形することにより得られる太陽電池封止シート。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のマスターバッチと、
エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂と
の混合物を
溶融混練後シート状に成形する太陽電池封止シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、電気絶縁性の高い太陽電池封止シートを製造するためのマスターバッチを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、単量体単位とは、高分子化合物の構成単位である。
[エチレン系樹脂]
本発明に係る太陽電池封止シート用マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂は、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体、および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂である。
【0011】
〔エチレン−α−オレフィン共重合体〕
エチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレンに由来する単量体単位と炭素数3以上20以下のα−オレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体である。該α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、これらのα−オレフィンに由来する単量体単位を、一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。α−オレフィンとして、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンである。
【0012】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに由来する単量体単位の含有量は、マスターバッチを用いた太陽電池封止シートの二酸化ケイ素もしくはゼオライトの凝集を低減できる点から、50質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、α−オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。ただし、前記エチレンに由来する単量体単位と、前記α−オレフィンに由来する単量体単位との合計量を100質量%とする。なお、前記エチレン−α−オレフィン共重合体が、二種以上のα−オレフィンに由来する単量体単位を有するものである場合、α−オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体中の各α−オレフィンに由来する単量体単位の合計量である。
エチレン−α−オレフィン共重合体の全質量を100質量%として、エチレンに由来する単量体単位と炭素数3以上20以下のα−オレフィンに由来する単量体単位との合計量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
前記エチレンに由来する単量体単位の含有量と、前記α−オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、赤外分光法により測定することができる。
【0013】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、またはエチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体である。本発明のマスターバッチは、これらのエチレン−α−オレフィン共重合体を一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0014】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度の上限値は、マスターバッチを用いた太陽電池封止シートの二酸化ケイ素もしくはゼオライトの凝集を低減できる点から、、好ましくは、950kg/mであり、より好ましくは、920kg/mであり、さらに好ましくは、910kg/mであり、さらにより好ましくは、905kg/mである。密度の下限値は、マスターバッチ保管時のマスターバッチ同士の融着を防ぐことができる点から、、好ましくは、860kg/mであり、より好ましくは、880kg/mでありさらに好ましくは、900kg/mである。該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980に規定されたA法に従って測定される。前記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに由来する単量体単位の含有量により調整することができる。
【0015】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)の下限値は、好ましくは、1g/10分であり、より好ましくは3g/10分である。また、MFRの上限値は、好ましくは、20g/10分であり、より好ましくは10g/10分である。MFRは、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、JIS K7210−1995に規定されたA法により測定される値である。前記エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRは、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合時の、水素濃度や重合温度により調整することができる。水素濃度や重合温度を高くすると、エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRが大きくなる。
【0016】
〔エチレン単独重合体〕
エチレン単独重合体とは、エチレンに由来する単量体単位のみからなる重合体である。エチレン単独重合体は、好ましくは、高圧法によってエチレンを重合して得られるエチレン単独重合体である。例えば、槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140MPa以上300MPa以下、重合温度200℃以上300℃以下の条件下でエチレンを重合することによって製造されるエチレン単独重合体である。
【0017】
エチレン単独重合体の密度の下限値は、好ましくは920kg/mであり、より好ましくは925kg/m、さらに好ましくは928kg/mであり、マスターバッチを用いた太陽電池封止シートの二酸化ケイ素もしくはゼオライトの凝集を低減できる点から、、好ましくは935kg/mであり、より好ましくは933kg/mである。該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980に規定されたA法に従って測定される。
【0018】
〔エチレン−不飽和エステル共重合体〕
エチレン−不飽和エステル共重合体とは、エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位とを含む共重合体である。
不飽和エステルとは、炭素−炭素二重結合とエステル結合とを分子内に有する化合物であり、例えば、カルボン酸ビニルエステル、不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。エチレン−不飽和エステル共重合体は、これらの不飽和エステルに由来する単量体単位を、一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0019】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体は、エチレンと不飽和エステルとの共重合により得られる重合体であり、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。本発明のマスターバッチは、これらのエチレン−不飽和エステル共重合体を一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0020】
マスターバッチを用いた太陽電池封止シートの二酸化ケイ素もしくはゼオライトの凝集を低減できる点から、前記エチレン−不飽和エステル共重合体は、エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、不飽和エステルに由来する単量体単位を23質量%以上35質量%以下含み、エチレンに由来する単量体単位を65質量%以上77質量%以下含むエチレン−不飽和エステル共重合体であることが好ましい。エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、前記エチレン−不飽和エステル共重合体に含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、より好ましくは、67質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは68質量%以上75質量%以下である。
エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、前記エチレン−不飽和エステル共重合体に含まれる不飽和エステルに由来する単量体単位の含有量は、より好ましくは25質量%以上33質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上32質量%以下である。
なお、前記エチレン−不飽和エステル共重合体が、二種以上の不飽和エステルに由来する単量体単位を有する場合、不飽和エステルに由来する単量体単位の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体中の各不飽和エステルに由来する単量体単位の合計量である。
エチレン−不飽和エステル共重合体の全質量を100質量%として、エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位との合計量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
前記エチレンに由来する単量体単位の含有量と、前記不飽和エステルに由来する単量体単位の含有量は、赤外分光法により測定することができる。
【0021】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体のメルトフローレート(MFR)の上限値は、好ましくは20g/10分であり、より好ましくは10g/10分である。MFRの下限値は、好ましくは1g/10分であり、より好ましくは3g/10分である。MFRは、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、JIS K7210−1995に規定されたA法により測定される値である。また、前記エチレン−不飽和エステル共重合体のMFRは、例えば、エチレン−不飽和エステル共重合体の重合時の、反応圧力や反応温度を変更することで調整できる。
【0022】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の下限値は、太陽電池封止シートへ加工する際の押出負荷をより低減できる点から、2であることが好ましく、2.5であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、封止シートの強度を高める観点から、好ましくは8であり、より好ましくは5であり、さらに好ましくは4.5であり、さらにいっそう好ましくは4である。なお、Mwは、ポリスチレン換算の重量平均分子量を指し、Mnは、ポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0023】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体のポリエチレン換算の重量平均分子量は、太陽電池封止シートの加工性を高める観点から、好ましくは40000以上80000以下でり、より好ましくは50000以上70000以下である。ポリエチレン換算の重量平均分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量と、ポリスチレンのQファクターに対するポリエチレンのQファクターの比(17.7/41.3)との積である。上記ポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によって求められる。
【0024】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体の製造方法としては、公知のラジカル発生剤の存在下で、エチレンと不飽和エステルとを共重合する方法が挙げられる。
【0025】
[二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物]
本発明に係る太陽電池封止シート用マスターバッチは、二酸化ケイ素およびゼオライトを含有する。
【0026】
本明細書において、二酸化ケイ素とは、一般式SiOで表される化合物を意味する。二酸化ケイ素として、例えば、結晶質の二酸化ケイ素、非晶質の二酸化ケイ素が挙げられる。また、非晶質の二酸化ケイ素としては、焼成された非晶質の二酸化ケイ素、焼成されていない非晶質の二酸化ケイ素が挙げられる。
結晶質の二酸化ケイ素としては、例えば、龍森株式会社製のクリスタライト等が挙げられる。焼成された非晶質の二酸化ケイ素としては、例えば、エボニック・デグサ・ジャパン製焼成シリカ Carplex(登録商標) CS−5が挙げられる。焼成されていない非晶質の二酸化ケイ素としては、例えば、中国宣城晶瑞新材料製VK−SP30S、鈴木油脂社製多孔質シリカ、PQコーポレーション製Gasil(登録商標) AB905、丸釜釜戸陶料株式会社製スノ−マ−ク SP−5、エボニック・デグサ・ジャパン製シリカ Carplex(登録商標)#80、Carplex(登録商標) FPS−2、Carplex(登録商標) FPS−101、Carplex(登録商標)#67等が挙げられる。焼成された非晶質の二酸化ケイ素は、後述の強熱減量が通常2%未満である。
二酸化ケイ素は、太陽電池封止シートの透明性および絶縁性をより高くできる点で、好ましくは非晶質の二酸化ケイ素であり、より好ましくは、焼成されていない非晶質の二酸化ケイ素である。
【0027】
本明細書において、ゼオライトとは、一般式M/nO・Al・xSiO・yHO(MはNa、K、CaまたはBa、nはMの価数、xは2から10までの正の数、yは2から7までの数を示す。)を有し、(Al,Si)O四面体が頂点を共有してつくる三次元網目構造中の空孔にアルカリ金属、アルカリ土類金属又は水分子が入った構造を有する物質を意味する。本発明においては、天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれを用いてもよい。天然ゼオライトとしては、例えば、方沸石(アナルサイト)、菱沸石(チャバザイト)、毛沸石(エリオナイト)、曹達沸石(ナトロライト)、モルデン沸石(モルデナイト)、斜プチロル沸石(クリノプチロライト)、輝沸石(ヒューランダイト)、束沸石(スチルバイト)、濁沸石(ローモンタイト)などが挙げられる。合成ゼオライトとしては、例えば、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、ZSM−5などが挙げられる。合成ゼオライトは、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、シリカゲルなどの出発原料をよく混合し、80〜120℃で結晶を析出させ、得られた結晶をろ液のpHがpH9〜12まで水洗したのち、ろ過することにより、得ることができる。
ゼオライトとしては、例えば、東ソー株式会社製ハイシリカゼオライトHSZ(登録商標)シリーズの820NHA、822HOA、643NHA、842HOA、ユニオン昭和株式会社製モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A等が挙げられる。
【0028】
二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の強熱減量は、太陽電池のPID現象をより抑制できる点で、1.7%より大きく、好ましくは2%以上であり、より好ましく3%以上であり、更に好ましくは4%以上である。前記化合物の強熱減量は、15%以下であり、好ましくは13%以下であり、より好ましくは10%以下である。前記化合物の強熱減量は、好ましくは2%以上13%以下であり、より好ましくは3%以上10%以下である。該強熱減量は、真空下、約150℃で乾燥させた試料を用いて、JIS K1150−1994に規定された方法に従って測定される。強熱減量は、化合物中の揮発性物質量を示す値である。
【0029】
前記化合物の平均粒子径は、太陽電池封止シート中において、前記化合物がより均一に分散できる点から、0.001μm以上、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上、10μm以下である。本明細書において、粒子径は粒子の直径を意味する。
【0030】
なお、本明細書において、前記化合物の平均粒子径とは、以下の方法により算出される中位径のことである。前記化合物をエタノール中に分散させた分散液にレーザー光線を照射し、その散乱光をレンズで集めたときの焦点面上に生じる回折像を得た。得られた回折像をもとに、前記化合物の体積基準の粒度分布を測定した。体積基準で測定した粒度分布の体積基準の積算分率における中位径(50%径)を求めた。
【0031】
なお、前記化合物の平均粒子径を0.001μm以上、30μm以下とする方法としては、例えば、乳鉢で前記化合物をすりつぶす方法、またはジェットミルで前記化合物を粉砕する方法が挙げられる。
【0032】
[ケイ素凝集度]
ケイ素凝集度は、電子線マイクロアナライザを用いてケイ素由来の特性X線の強度をマッピングし、画像解析処理で得られるケイ素を有する化合物の樹脂中の凝集性の指標である。電子線マイクロアナライザを用いて、以下の方法により算出する。まず、マスターバッチを110℃でプレス成形することにより、厚さ約500μmのシートを得る。−80℃においてミクロトームで該シートを切削し、シートの厚み方向の断面を観察面とする試料を1つ作製する。試料を断面観察用試料台にカーボンテープで貼り付けたのち、導電処理のため観察面ではない試料側面にカーボンペーストを塗布し、観察面である試料の断面および観察面ではない試料側面に導電性金属(Au)のスパッタ成膜を実施する。得られたサンプルの特性X線マップを、電子線マイクロアナライザ(島津製作所製EPMA−1610)を用いて、500μm×500μmの測定範囲、1μm(画像サイズ500−500)の測定ピッチ、15kVの加速電圧において取得する。なお、同一測定範囲の特性X線マップを2つ取得する。その際のX線分光条件は、波長PET/7.126Å Si−Kα、露光時間10ms/pointとする。得られたそれぞれのケイ素の強度マッピング画像を、画像処理ソフト(Adobe(登録商標)Photoshop(登録商標)、アドビシステムズ社製)を用いてグレースケール化する。画像解析ソフト(NanoHunter NS2K−Pro、ナノシステム株式会社製)を用いて、Thresholdが9以上27以下の部分を白、Thresholdが9未満の部分を黒とする2値処理化を実施する。2値処理後のそれぞれの像において、白の部分を、二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の粒子に由来する部分とした。それぞれの2値処理後の像において、前記化合物の凝集体の面積基準の粒度分布を測定した。以下の式より、それぞれのケイ素凝集度を求め、その値の平均値をケイ素凝集度とする。
ケイ素凝集度=(前記化合物の凝集体1個あたりの面積が20μmを超える凝集体の個数)÷(前記化合物の凝集体1個あたりの面積が5μmを超える凝集体の個数) ケイ素凝集度は、得られる太陽電池封止シートの体積抵抗率をより高くする観点から、0以上0.350以下であることが好ましく、0.05以上0.345以下であることが更に好ましい。
マスターバッチのケイ素凝集度は、マスターバッチ中の二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂のMFR、またはマスターバッチ製造時の混練温度を調整することにより、制御することができる。
マスターバッチのケイ素凝集度を0.350以下にするために、マスターバッチの全質量を100質量%として、マスターバッチ中の二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量を4質量%以上40質量%以下とすることが好ましく、上限値を30質量%以下とすることがより好ましい。
マスターバッチのケイ素凝集度を0.350以下にするために、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂のMFRを1g/10分以上20g/10分以下とすることが好ましく、3g/10分以上10g/10分以下とすることがより好ましい。
マスターバッチのケイ素凝集度を0.350以下にするために、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−不飽和エステル共重合体である場合、マスターバッチ製造時の混練温度を70℃以上180℃以下とすることが好ましく、75℃以上160℃以下とすることがより好ましい。マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン単独重合体である場合、マスターバッチ製造時の混練温度を130℃以上180℃以下とすることが好ましく、140℃以上160℃以下とすることがより好ましい。
【0033】
[太陽電池封止シート用マスターバッチ]
本発明に係るマスターバッチは、プラスチックに高濃度の添加剤を練りこむことにより得られ、得られたマスターバッチはプラスチックの成型時に規定の倍率で希釈して使用される。本発明に係る太陽電池封止シート用マスターバッチは、太陽電池封止シートを製造する際に、太陽電池封止シートを構成する主成分であるエチレン系樹脂と混合し、太陽電池封止シートに二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を所定量含有させるために使用するものである。通常、太陽電池封止シートを構成する主成分であるエチレン系樹脂は、二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む。
マスターバッチに含まれる前記化合物の含有量は、該マスターバッチを用いて製造される太陽電池封止シートに含まれる前記化合物の含有量よりも多い。太陽電池封止シートを構成する主成分であるエチレン系樹脂100質量部に対して、前記太陽電池封止シート用マスターバッチ0.05〜40質量部を混合して、太陽電池封止シートを製造することが好ましく、前記太陽電池封止シート用マスターバッチの配合量は0.1〜10質量部の範囲がより好ましい。マスターバッチの全質量を100質量%として、太陽電池封止シート用マスターバッチ中の二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量の下限値は、好ましくは4質量%であり、前記含有量の上限値は、好ましくは40質量%、より好ましくは30質量%である。
太陽電池封止シート中の二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の好ましい含有量に合わせるように、マスターバッチ中の前記化合物の含有量およびマスターバッチの使用量を調整する。
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチは、マスターバッチに含有される各成分の配合後、または各成分と添加剤の配合後、二軸混練機やバンバリー混練機を用いて混練することで製造可能である。混練時の温度は、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−不飽和エステル共重合体である場合、好ましくは70℃以上180℃以下であり、より好ましくは75℃以上160℃以下である。混練時の温度は、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン単独重合体である場合、好ましくは130℃以上180℃以下であり、より好ましくは140℃以上160℃以下である。
マスターバッチは、混練後、押出機を用いてペレット化することもできる。この場合、押出機の設定温度は、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−不飽和エステル共重合体である場合、通常70〜190℃であり、好ましくは80〜160℃であり、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂の主成分がエチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン単独重合体である場合、好ましくは130℃以上180℃以下であり、より好ましくは140℃以上160℃以下である。
【0034】
[太陽電池封止シート]
太陽電池封止シートは、太陽電池の部材の一つであり、ガラスと太陽電池セルの接着、および、太陽電池セルとバックシートの接着のために用いられるシートである。太陽電池封止シートの全質量を100質量%として、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン単独重合体および、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のエチレン系樹脂を90質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。太陽電池封止シートに使用するエチレン系樹脂の好ましいものは、前述のマスターバッチに使用するエチレン系樹脂の好ましいものと同様である。
太陽電池封止シート中の二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量は、マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂およびマスターバッチと混合して用いるエチレン系樹脂の合計量を100質量部とした場合、0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましく、前記含有量の下限値は、好ましくは0.01質量部、より好ましくは0.1質量部であり、前記含有量の上限値は、好ましくは5質量部、より好ましくは0.5質量部である。
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチ及び前記マスターバッチを用いて得られる太陽電池封止シートは、架橋剤を含有してもよい。前記架橋剤としては、封止シートに含有されるエチレン系樹脂の融点を超える温度でラジカルを発生するものが挙げられ、好ましくは、1時間半減期温度が、封止シートに含有されるエチレン系樹脂の融点より高い有機過酸化物である。架橋剤としては、太陽電池封止シートへの加工時には分解しにくく、太陽電池の組み立て時の加熱により架橋剤が分解し、エチレン系樹脂同士の架橋を進行しやすくする点で、1時間半減期温度が100℃以上、150℃以下である有機過酸化物がより好ましい。また、太陽電池封止シートへの加工時に架橋剤が分解しにくいという点で、1時間半減期温度が70℃以上である有機過酸化物がさらに好ましく、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、前記架橋剤を一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0035】
ジアルキルパーオキサイドとは、パーオキシ基以外の極性基を有していない化合物である。前記極性基としては、−COO−、−CO−、−OH、−NH等が挙げられる。なお、一分子中に複数のパーオキシ基が含まれていてもよい。
ジアルキルパーオキサイドは、例えば、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、前記ジアルキルパーオキサイドを、一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。また、ジアルキルパーオキサイドと、ジアルキルパーオキサイド以外の架橋剤を併用してもよい。
【0036】
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチ及び封止シートが前記架橋剤を含有する場合、太陽電池の組み立て時の加熱で分解せずに残存した架橋剤が、太陽電池の使用時に徐々に分解して、太陽電池封止シートの変色などの劣化を引き起こす場合がある。このような残存した架橋剤による太陽電池封止シートの劣化を抑制する点から、前記架橋剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下が好ましく、太陽電池組み立て時に発生する気泡を抑制できる点から、0.001質量部以上2質量部以下がより好ましい。
【0037】
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチ及び封止シートは、架橋助剤を含有してもよい。前記架橋助剤としては、単官能性架橋助剤、2官能性架橋助剤、3官能性架橋助剤、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤等が挙げられる。単官能性架橋助剤としては、アクリレート、メタクリレート等を挙げることができる。2官能性架橋助剤としては、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等を挙げることができる。3官能性架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。マスターバッチ及び封止シートは、前記架橋助剤を一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0038】
前記4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤とは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を4個以上有するものである。具体的には、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト2量体等が挙げられる。また、これらのアクリル酸付加体またはアクリル酸エステル付加体であってもよく、これらは、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドで変性されたものであってもよい。具体的にはペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト・モノアクリル酸付加体、ぺンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−トのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリト−ルペンタ(メタ)アクリレ−トのエチレンオキサイド変性物等が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、これらを一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。また、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤と、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤以外の架橋助剤を併用してもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基またはアクリロイル基を指し、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを指す。
【0039】
また、前記4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤として、ウレタンポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、有機イソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートから合成することができる。前記ウレタンポリ(メタ)アクリレ−トとしては、数平均分子量が高いものが好ましい。具体的には、数平均分子量が1000以上であるものが好ましく、1200以上であるものがより好ましい。
【0040】
4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋助剤の市販品の例としては、新中村化学工業(株)製の「A−DPH」、「AD−TMP」、「U−4HA」、「U−6HA」、「U−6LPA」、「U−15HA」、「UA−122P」、「UA−33H」、「A−9550」、「ATM−35E」、「A−DPH−6E」、「A−DPH−12E」、「M−DPH−6E」、および「M−DPH−12E」、共栄社化学(株)製の「UA−306H」、「UA−306T」、「UA306I」、および「UA510H」、ダイセル・オルネクス社製の「KRM8452」、「EB1290」、「EB5129」、「KRM7864」、および「EB1290K」、大阪有機化学工業(株)製の「ビスコ−ト802」、日本合成化学(株)製の「UV7600B」、「UV7605B」、「UV7610B」、および「UV7620EA」等が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、これらを、一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0041】
本発明の太陽電池封止シートが前記架橋助剤を含有する場合、前記架橋助剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上、2.0質量部以下である。
【0042】
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチ及び封止シートは、必要に応じて、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、可塑剤、界面活性剤、着色剤、帯電防止剤、変色防止剤、難燃剤、結晶核剤、滑剤、光安定剤等を含有してもよい。
【0043】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤、トリアジン系の紫外線吸収剤、サリチル酸系の紫外線吸収剤、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、前記紫外線吸収剤を、一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0044】
前記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール;2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−ブチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−ブチルフェノール;2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール;2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール;2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール;2−(5−クロロ−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0045】
前記紫外線吸収剤として、前記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤と前記ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を併用する場合、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の含有量の合計は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは1.0質量部以下である。
【0046】
前記ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。前記ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0047】
前記トリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0048】
前記サリチル酸系の紫外線吸収剤としては、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0049】
前記シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記酸化防止剤としては、例えば、アミン系、フェノール系、リン系、ビスフェニル系、およびヒンダードアミン系の酸化防止剤が挙げられ、例えば、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ビス(2,2,6.6−テトラメチル−4−ピペラジル)セバケートトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、又はトリフェニルホスファイト等のアリールホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト等のアルキルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ジイソオクチルオクチルフェニルホスファイト、フェニルネオペンチルグリコールホスファイト、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,4,8,10−テトラキス(t−ブチル)−6−{(エチルヘキシル)オキシ}−12H−ジベンゾ)[d,g]1,3,2−ジオキサホスホシン等のアルキル−アリールホスファイト、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''−ヘキサ−t−ブチル−a,a',a''−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
前記酸化防止剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上0.5質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.3質量部以下である。
【0051】
前記着色剤としては、チタン白や炭酸カルシウム等の白色着色剤、ウルトラマリン等の青色着色剤、カーボンブラック等の黒色着色剤、ガラスビーズや光拡散剤等の乳白色着色剤等を挙げられ、好ましくはチタン白である。これらの着色剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0052】
前記可塑剤としては、多塩基酸のエステルや多価アルコールのエステル等が挙げられる。具体的には、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネート等が挙げられる。
可塑剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
【0053】
前記変色防止剤としては、カドミウム、バリウム等の金属と高級脂肪酸との塩が挙げられる。金属と高級脂肪酸との塩としては、例えば金属石鹸等が挙げられる。変色防止剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
【0054】
前記難燃剤としては、ハロゲン原子を分子中に1個以上含む有機難燃剤やハロゲン原子を分子中に1個以上含む無機難燃剤が挙げられる。ハロゲン原子として、好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0055】
前記ハロゲン原子を分子中に1個以上含む有機難燃剤の例としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等を有する単量体または重合体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、パークロロペンタシクロデカン、四塩化無水フタル酸、1,1,2,2−テトラブロモエタン、1,4−ジブロモブタン、1,3−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、α−ブロモ酪酸エチル、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロデカン等が挙げられる。
【0056】
前記ハロゲン原子を分子中に1個以上含む無機難燃剤の例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物塩、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛などのリン酸化物塩、赤リンなどが挙げられる。
【0057】
前記難燃剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上50質量部以下である。
【0058】
更に難燃助剤として、三酸化アンチモンまたは膨張黒鉛を含有してもよい。前記難燃助剤として膨張黒鉛を含有する場合、該膨張黒鉛の含有量は、エチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは17質量部以下である。前記難燃助剤として三酸化アンチモンを含有する場合、該三酸化アンチモンの含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは9質量部以下である。
【0059】
前記滑剤としては、脂肪酸アミド化合物やホスファイト系化合物等が挙げられる。前記脂肪酸アミド化合物としては、具体的には、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。ホスファイト系化合物として、具体的には、デシルホスファイト等のアルキルホスファイト;デシルアシッドホスフェート等のアルキルアシッドホスフェート;フェニルアシッドホスフェート等のアリールアシッドホスフェート;トリヘキシルホスフェート等のトリアルキルホスフェート;トリクレシルホスフェート等のトリアリールホスフェート;ジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
前記滑剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。
【0060】
前記シランカップリング剤は、受光面保護材や、下部保護材(バックシート)、太陽電池素子に対する太陽電池封止シートの接着力を向上する目的で添加される。前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリエトキシシラン、ビニルプロピルトリメトキシシラン、ビニルブチルトリメトキシシラン、ビニルブチルトリエトキシシラン、ビニルブチルトリイソプロポキシシラン、ビニルペンチルトリメトキシシラン、ビニルヘキシルトリメトキシシラン、ビニルヘプチルトリメトキシシラン、ビニルオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、前記シランカップリング剤を、一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
前記シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリエトキシシラン、ビニルプロピルトリメトキシシラン、ビニルブチルトリメトキシシラン、ビニルブチルトリエトキシシラン、またはビニルブチルトリイソプロポキシシランが好ましく、ビニルブチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0061】
前記シランカップリング剤の含有量の下限値は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部であり、より好ましくは0.01質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部であり、前記シランカップリング剤の含有量の上限値は、好ましくは5質量部であり、より好ましくは、1.0質量部であり、より好ましくは0.5質量部である。
【0062】
本発明で用いられる光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,2,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、pKaが6.0〜8.0であり、分子量が2000〜10000であるヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。pKaが6.0〜8.0であり、分子量が2000〜10000であるヒンダードアミン系化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンと炭素数20から24のα―アルケン共重合体、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール等が挙げられる。前記光安定剤の含有量は、封止シートに含まれるエチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下であり、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
前記pKaが6.0〜8.0であり、分子量が2000〜10000であるヒンダードアミン系化合物の市販品としては、Tinuvin(登録商標) 622、Uvinul(登録商標) 5050H(BASF社製)等が挙げられる。マスターバッチ及び封止シートは、前記光安定剤を、一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0063】
太陽電池封止シートの製造方法としては、本発明に係るマスターバッチと、太陽電池封止シートを構成する主成分であるエチレン系樹脂との混合物を、溶融混練後シート状に成形する方法が挙げられる。溶融混練後シート状に成形する方法としては、溶融押出シート成形法、圧延成形法が挙げられる。
前記混合物は、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。前記混合物は、シート状に成形する前に予め溶融混練して樹脂組成物としてもよい。
溶融押出シート成形法に用いられるシート成形機としては、T−ダイ押出成形機が挙げられる。圧延成形法に用いられるシート成形機としては、カレンダー成形機が挙げられる。
【0064】
〔太陽電池モジュール〕
本発明の太陽電池封止シートを用いて、受光面保護材および下部保護材との間に太陽電池素子が封止されている太陽電池を得ることができる。前記受光面保護材としては、ガラス、プラスチックス等の透光性を有する保護材が挙げられる。前記下部保護材としては、プラスチックス、セラミック、ステンレス、アルミニウム等の種々の保護材が挙げられる。
【0065】
前記太陽電池は、例えば以下のように組み立てられる。太陽電池用シリコン基板等の平板状の太陽電池素子の両面に、本発明の太陽電池封止シートを1枚ずつ設置する。太陽電池封止シートを設置した太陽電池素子の片面に、上記の受光面保護材を接触させ、もう片面に上記の下部保護材を接触させ、真空ラミネーターに投入し、真空ラミネーター内部を真空状態にした後、太陽電池封止シートが溶融する温度に加熱する。太陽電池封止シートをある程度溶融させた後、加熱したまま加圧を行う。真空および加圧下における加熱により、1枚の太陽電池封止シートに含まれるエチレン系樹脂同士が架橋し、太陽電池素子の一方面に設置されている太陽電池封止シートに含まれるエチレン系樹脂と、もう片面に設置されている太陽電池封止シートに含まれるエチレン系樹脂とが架橋する。また、上記の加熱により、太陽電池封止シートに含まれるシランカップリング剤と前記受光面保護材、
太陽電池封止シートに含まれるシランカップリング剤と前記下部保護材、および太陽電池封止シートに含まれるシランカップリング剤と前記太陽電池素子がそれぞれ反応することで、太陽電池封止シートと前記受光面保護材、太陽電池封止シートと前記下部保護材、および太陽電池封止シートと前記太陽電池素子が接着される。
【0066】
前記太陽電池素子としては、P型単結晶シリコン、N型単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物系素子等が挙げられる。
本発明の太陽電池封止シート用マスターバッチを用いて得られる太陽電池封止シートは、透明性に優れ太陽電池の変換効率を高くすることができ、且つ絶縁性が高くPID現象を抑制することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0068】
〔酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量(単位:質量%)〕
エチレン−酢酸ビニル共重合体に含有される酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量は、エチレンに由来する単量体単位と、酢酸ビニルに由来する単量体単位との合計量を100質量%とするときの値であり、JIS K7192に記載の赤外分光法に従い測定した。
【0069】
〔メチルメタクリレートに由来する単量体単位の量(単位:質量%)〕
エチレン−メチルメタクリレート共重合体に含有されるメチルメタクリレートに由来する単量体単位の含有量は、以下の方法により求めた。エチレン−メチルメタクリレート共重合体の0.3mm厚のプレスシートを作製し、赤外線吸収スペクトルを測定した。前記赤外線吸収スペクトルの1700cm-1前後に現れるカルボニル基(C=O)の特性吸収の吸光度を、プレスシートの厚みで補正して、検量線法によりメチルメタクリレートに由来する構造単位の量を求めた。
〔体積抵抗率(単位:Ω・cm)〕
JIS K6911に準拠し、23℃において500Vの電圧を印加し、デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー株式会社製 DSM−8103)にて1分後の抵抗値を測定し、該抵抗値をもとに体積抵抗率を算出した。体積抵抗率が高いほど、電気絶縁性が高い。
【0070】
〔平均光線透過率(単位:%)〕
シートの厚み方向の光線透過スペクトルを、分光光度計(株式会社 島津製作所製 UV−3150)を用いて測定し、波長範囲400nm〜1200nmの光線透過率の平均値を算出した。
【0071】
〔平均粒子径(単位:μm)〕
二酸化ケイ素の平均粒子径は、以下の方法で算出した。
二酸化ケイ素をエタノールに加え、ホモジナイザで10分間分散した。上記分散液にレーザー光線を照射し、その散乱光をレンズで集めたときの焦点面上に生じる回折像を得た。得られた回折像をマイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製 MT−3000EX II)で体積基準の粒度分布として測定し、粒度分布の積算分率における中位径を求めた。
【0072】
〔メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)〕
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。
【0073】
〔強熱減量(単位:%)〕
二酸化ケイ素の強熱減量は、真空下、約150℃で2時間乾燥させた試料を用いて、JIS K1150−1994に規定された方法に従って、測定した。
【0074】
〔ケイ素凝集度〕
ケイ素凝集度は、電子線マイクロアナライザを用いて、以下の方法により算出した。
測定用試料を以下の方法により作製した。マスターバッチを熱プレス機により、温度110℃、圧力2MPaで5分間プレスした後、冷却プレス機により、温度30℃で5分間冷却し、厚さ約500μmのシートに成形した。−80℃においてミクロトームで該シートを切削し、シートの厚み方向の断面を観察面とする試料を1つ作製した。試料を断面観察用試料台にカーボンテープで貼り付けたのち、導電処理のため観察面ではない試料側面にカーボンペーストを塗布し、観察面である試料の断面および観察面ではない試料側面に導電性金属(Au)のスパッタ成膜を実施した。その後、試料の観察面の特性X線マップを、電子線マイクロアナライザ(株式会社島津製作所製EPMA−1610)を用いて、500μm×500μmの測定範囲、1μm(画像サイズ500−500)の測定ピッチ、15kVの加速電圧において取得した。その際のX線分光条件は、波長PET/7.126Å Si−Kα、露光時間10ms/pointとした。なお、同一視野の特性X線マップを2枚取得した。得られたそれぞれのケイ素の強度マッピング画像を、画像処理ソフト(Adobe(登録商標)Photoshop(登録商標)、アドビシステムズ社製)を用いてグレースケール化した。画像解析ソフト(NanoHunter NS2K−Pro、ナノシステム株式会社製)を用いて、Thresholdが9以上27以下の部分を白、Thresholdが9未満の部分を黒とする2値処理化を実施した。2値処理後のそれぞれの像において、白の部分を、二酸化ケイ素およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の粒子に由来する部分とした。それぞれの2値処理後の像において、前記化合物の粒子の面積基準の粒度分布を測定した。以下の式より、それぞれのケイ素凝集度を求め、その値の平均値をケイ素凝集度とした。
ケイ素凝集度=(前記化合物の粒子1粒子あたりの面積が20μmを超える粒子の個数)÷(前記化合物の粒子1粒子あたりの面積が5μmを超える粒子の個数)
【0075】
実施例に使用した二酸化ケイ素もしくはゼオライトは、以下のとおりである。
(A−1):エボニック・デグサ・ジャパン社製 Carplex(登録商標)#67
焼成されていない非晶質二酸化ケイ素、平均粒子径:8μm、強熱減量:4.0%
(A−2):東ソー株式会社製 ゼオライト 820NHA
平均粒径:5μm、強熱減量:4.2%
(A−3):エボニック・デグサ・ジャパン社製 Carplex(登録商標)CS−5
焼成された非晶質二酸化ケイ素、平均粒径:8μm、強熱減量:1.7%
【0076】
<実施例1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−1、住友化学株式会社製、KA−30、MFR:7g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量:28質量%)と(A−1)を、二酸化ケイ素濃度が4質量%(ただし、EVA−1と二酸化ケイ素の合計量を100質量%とした)になるようにブレンドし、ラボプラストミルにより80℃、回転数25rpmの条件で、10分間混練した。得られた混練物を熱プレス機により、温度100℃、圧力2MPaで5分間プレスした後、冷却プレス機により、温度30℃で5分間冷却し、厚さ約1mmのシートに成形した。該シートを5mm角にカットすることで、マスターバッチを作製した。得られたマスターバッチのケイ素凝集度を表1に示した。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−2、住友化学株式会社製、KA−40、MFR:20g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量:28質量%)と前記マスターバッチとを、二酸化ケイ素濃度が0.12質量%(ただし、EVA−2と、EVA−1と二酸化ケイ素の合計量を100質量%とした)になるように、マスターバッチを3質量%、EVA−2を97質量%の割合でブレンドし、30mmφ造粒機により温度90℃で造粒し、ペレットを得た。該ペレットを熱プレス機により、温度100℃、圧力2MPaで5分間プレスした後、冷却プレス機により、温度30℃で5分間冷却し、厚さ約500μmのシートを成形した。該シートは太陽電池封止シートとして使用可能である。
得られた太陽電池封止シートの体積抵抗率、及び平均光線透過率を測定し、その結果を表1に示した。
【0077】
<実施例2>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度が20質量%になるようにブレンドした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0078】
<実施例3>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度が30質量%になるようにブレンドした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0079】
<実施例4>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度が40質量%になるようにブレンドした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0080】
<実施例5>
マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂をEVA−1からエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−3、住友化学株式会社製、K2010、MFR:3g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量:25質量%)へ変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示した。
【0081】
<実施例6>
マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂をEVA−1からエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA−1、住友化学株式会社製、WK307、MFR:7g/10分、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量:25質量%)へ変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表2に示した。
【0082】
<実施例7>
マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂をEVA−1からエチレン−酢酸ビニル-メタクリル酸メチル共重合体(E−VA−MMA、住友化学株式会社製、MFR:19g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量:15質量%、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量:14質量%、WO2012―/165351の実施例1)へ変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表2に示した。
【0083】
<実施例8>
(A−1)の代わりに、(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表2に示した。
【0084】
<実施例9>
マスターバッチ中のゼオライト濃度を20質量%とした以外は、実施例8と同様に実施した。評価結果を表2に示した。
【0085】
<実施例10>
マスターバッチ中のゼオライト濃度を30質量%とした以外は、実施例8と同様に実施した。評価結果を表2に示した。
【0086】
<実施例11>
エチレン単独重合体(LDPE−1、住友化学株式会社製、F200−0、MFR:2g/10分、密度:924kg/m)と(A−1)を、二酸化ケイ素濃度が20質量%(ただし、LDPE−1と二酸化ケイ素の合計量を100質量%とした)になるようにブレンドし、ラボプラストミルにより80℃、回転数25rpmの条件で、10分間混練した。得られた混練物を熱プレス機により、温度100℃、圧力2MPaで5分間プレスした後、冷却プレス機により、温度30℃で5分間冷却し、厚さ約1mmのシートに成形した。該シートを5mm角にカットすることで、マスターバッチを作製した。得られたマスターバッチのケイ素凝集度を表5に示した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(LLDPE−1、住友化学株式会社製、CW2007、MFR:1.4g/10分、密度:903kg/m)と前記マスターバッチとを、二酸化ケイ素濃度が0.12質量%(ただし、LDPE−1と、LLDPE−1と二酸化ケイ素の合計量を100質量%とした)になるように、マスターバッチを0.6質量%、LLDPE−1を99.4質量%の割合でブレンドし、30mmφ造粒機により温度90℃で造粒し、ペレットを得た。該ペレットを熱プレス機により、温度100℃、圧力2MPaで5分間プレスした後、冷却プレス機により、温度30℃で5分間冷却し、厚さ約500μmのシートを成形した。該シートは太陽電池封止シートとして使用可能である。
得られた太陽電池封止シートの体積抵抗率、及び平均光線透過率を測定し、その結果を表5に示した。
【0087】
<実施例12>
マスターバッチに用いる樹脂をLDPE−1からLLDPE−1に変更し、マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度を4質量%とした以外は、実施例11と同様に実施した。評価結果を表5に示した。
【0088】
<実施例13>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度を20質量%とした以外は、実施例12と同様に実施した。評価結果を表5に示した。
【0089】
<比較例1>
マスターバッチ作製時に、ラボプラストミルでの混練条件を、190℃、回転数25rpmの条件に変更し、30分間混練した以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0090】
<比較例2>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度が2質量%になるようにブレンドした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0091】
<比較例3>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度が3質量%になるようにブレンドした以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0092】
<比較例4>
マスターバッチに含有されるエチレン系樹脂をEVA−1からエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−4、住友化学株式会社製、H4011、MFR:20g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量:20質量%)へ変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0093】
<比較例5>
マスターバッチを添加しなかった点以外は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表3に示した。
【0094】
<比較例6>
(A−1)の代わりに、(A−3)を用いた点以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表4に示した。
【0095】
<比較例7>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度を20質量%に変更した以外は、比較例6と同様に実施した。評価結果を表4に示した。
【0096】
<比較例8>
マスターバッチ中のゼオライト濃度を40質量%に変更した以外は、実施例8と同様に実施した。評価結果を表4に示した。
【0097】
<比較例9>
マスターバッチ中の二酸化ケイ素濃度を4質量%に変更した以外は、実施例11と同様に実施した。評価結果を表5に示した。
【0098】
<比較例10>
マスターバッチ添加しなかった以外は、実施例11と同様に実施した。評価結果を表5に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】