(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態の光照射装置100Aは、光(励起光)を発する光源部102、筐体106、光源部102から発せられた光を筐体106に案内する光ファイバ104を備えている。光ファイバ104の一端は、光源部102の光の出射部に接続され、光ファイバ104の他端は、筐体106の一方の面に設けられた図示しない接続孔を介して内部に到達している。
なお、光照射装置100Aは、本開示の技術の光照射装置の1例であり、光源部102、光ファイバ104、及び筐体106は、本開示の技術の照射部の1例であり、光源部102は、本開示の技術の光源部の1例である。
【0006】
筐体106は、ロッド型のホモジナイザ112を備えている。ホモジナイザ112における、上記接続孔側(上部)の図示しない入射口には、光ファイバ104の他端が接続され、光ファイバ104により案内された光が入射口を介してホモジナイザ112に案内される。ホモジナイザ112は、案内された光を、ガウシャン分布ではなく、ホモジナイザ112の光軸に垂直な平面において光強度が均一な光ビームにして、出射する。
なお、ホモジナイザ112は、本開示の技術の光学系の1例である。
【0007】
ここで、
図2を用いて、ホモジナイザ112における、上記接続孔側の構成を説明する。ホモジナイザ112の入射口側には、後述する蛍光の波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタ110、バンドパスフィルタ110の光源側には、蛍光の強度を検出する蛍光検出部108が設けられている。蛍光検出部108は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を用いることができる。
なお、蛍光検出部108は、本開示の技術の蛍光寿命検出部の1例である。
【0008】
図1に示すように筐体106は、ホモジナイザ112の光の出射側に、ホモジナイザ112から出射された光ビームのビーム径を変化させるビーム径可変レンズ114を備えている。ビーム径可変レンズ114は、後述するレンズ駆動部312(
図3も参照)により、光軸に沿って、光源部102から遠ざかる方向および近づく方向に移動する。ビーム径可変レンズ114が光源部102から遠ざかる方向に移動すると、ビーム径は縮小し、光源部102に近づく方向に移動すると、ビーム径は拡大する。筐体106には、筐体106におけるホモジナイザ112からの光ビームの出射側の他方の面には、照射窓118が形成されている。
なお、ビーム径可変レンズ114は、本開示の技術の変化部の1例である。
【0009】
後述するように、光照射装置100Aが、生体150の中のがん細胞155(がん細胞による腫瘍部)に対応する皮膚の表面に配置される。筐体106の照射窓118と生体150の皮膚の表面との間に、ホモジナイザ112からの光ビームが当該皮膚の表面で反射(散乱や乱反射)することを抑制する屈折率マッチング部材120が設けられている。屈折率マッチング部材120は、例えばシリコーン樹脂などで構成され透明なラバー状部材である。その他、屈折率がマッチングした溶液やジェル、ゲルなどを用いてもよい。
なお、がん細胞155は、本開示の技術の腫瘍部の1例である。
【0010】
次に、
図3を参照して、光照射装置100Aの要部の電気系の構成を説明する。
図3に示すように、光照射装置100Aは、コンピュータ300を備えている。コンピュータ300は、CPU(Central Processing Unit)302、ROM(Read Only Memory)304、RAM(Random Access Memory)306、入出力(I/O)ポート308を備え、これらの素子(CPU302〜308)は、バス310により相互に接続されている。入出力(I/O)ポート308には、光源部102、蛍光検出部108、およびレンズ駆動部312が接続されている。光源部102、蛍光検出部108、およびレンズ駆動部312は、コンピュータ300により制御される。ROM304には、後述する光強度調整処理プログラム(蛍光寿命測定処理プログラムを含む)が記憶されている。CPU302は、光強度調整処理プログラムを、ROM304から読み出しRAM306に展開し、実行する。
なお、コンピュータ300は、本開示の技術のコンピュータの1例であり、CPU302は、本開示の技術の制御部の1例であり、光強度調整処理プログラムは、本開示の技術の光照射プログラムの1例である。
【0011】
次に、
図4を参照して、光照射装置100Aの要部の機能の構成を説明する。
図4に示すように、光照射装置100Aは、蛍光寿命測定部402、光強度調整部404を備えている。CPU302が光強度調整処理プログラムを実行すると、CPU302は、蛍光寿命測定部402及び光強度調整部404として機能する。
【0012】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
最初に、光免疫療法(photoimmunotherapy(PIT))を説明する。
図5に示すように、光免疫療法では、『抗体』502と『IR700』504とが結合された『抗体−IR700分子』500が用いられる。『抗体』502は、がん細胞155と結合する抗体(抗がん抗体)、具体的には、モノクローナル抗体(MAb)である。『IR700』504は、近赤外(Near InfraRed)フタロシアニン色素であり、光(励起光)が照射されると、蛍光を発生する。なお、がん細胞155は、例えば、乳房、肝臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、脳、子宮頸部、骨、皮膚、肺、または血液のがん細胞である。がん細胞155は、抗原を有する細胞であり、細胞表面タンパク質を含む。細胞表面タンパク質は、腫瘍特異的タンパク質である。腫瘍特異的タンパク質は、HER1、HER2、CD20、CD25、CD33、CD52、CD44、CD133、Louis Y、メソテリン、CEA、または前立腺特異的膜抗原(PSMA)を含む。
【0013】
ここで、モノクローナル抗体とは、Bリンパ球の単一クローンにより産生される抗体、または単一抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞により産生される抗体である。モノクローナル抗体は、骨髄腫細胞の、脾臓の免疫細胞との融合体に由来する、ハイブリッド抗体形成細胞を作製することにより産生される。
【0014】
『抗体−IR700分子』500を、注射器510を介して静脈注射する。これにより血液により『抗体−IR700分子』500は身体の細胞を巡り、がん細胞155まで到達する。がん細胞155に到達した『抗体−IR700分子』500は、『抗体−IR700分子』500の『抗体』502ががん細胞155と結合する。
【0015】
がん細胞155に『抗体−IR700分子』500が結合した状態で、光照射装置100Aによりがん細胞155(腫瘍部)に対応する皮膚の表面に、近赤外光を照射する。近赤外光は、皮膚の表面を透過し、がん細胞155および『抗体−IR700分子』500まで到達し、『抗体−IR700分子』500が近赤外光により照射される。近赤外光ががん細胞155に結合した『抗体−IR700分子』500に照射されると、次の現象が生ずる。近赤外光が照射された『抗体−IR700分子』500の『IR700』504は、照射された光を吸収し、蛍光を発すると共に、『IR700』504の周囲の温度を急速に上昇させる。『IR700』504の周囲の温度の急速な上昇により『IR700』504の周囲の水の温度が急速に上昇し、当該水の膨張が起こる。当該水の膨張により圧力波が生じ、当該圧力波が、がん細胞155に到達し、がん細胞155の細胞膜(脂質二重膜)が破壊され、細胞形態が変化し、内容物が漏出してがん細胞155が死滅する。
【0016】
細胞膜が破壊されるためには、1つの『IR700』504からの圧力波では不十分であり、複数の『IR700』504からの圧力波によって細胞膜は破壊される。また、『IR700』504からの圧力波の到達距離は、『IR700』504から数nmである。よって、『抗体−IR700分子』500が結合したがん細胞155の周囲の正常の細胞には、圧力波が到達しないか複数の圧力波が到達しないので、当該正常な細胞は破壊されない。
【0017】
また、上記現象は、がん細胞155および『抗体−IR700分子』500の温度に無関係に生ずる。よって、上記現象は、がん細胞155および『抗体−IR700分子』500が、例えば、摂氏4度でも、摂氏37度であっても同様に生ずる。
【0018】
次に、光源部102が発する光の波長を説明する。
【0019】
図6に示すように、可視光の波長の範囲(400nm〜700nm)では、ヘモグロビンの光を吸収、散乱する強さは、比較的大きいのに対し、波長が700nm〜1500nmの範囲では、光の吸収、散乱の強さが比較的小さい。また、水の光を吸収、散乱する強さは、可視光の波長の範囲(400nm〜700nm)では、比較的小さく、波長が1500nmを超えた範囲では、光を吸収、散乱する強さは、比較的大きい。
【0020】
これに対し、生体の窓と言われる波長の700nm〜1500nmの波長の範囲では、ヘモグロビンの光を吸収、散乱する強さは小さく、水の光を吸収、散乱する強さは、1500nmを超える範囲より小さい。そこで、本実施の形態では、光源部102は、生体の窓に対応する700nm〜1500nmの範囲の光を発する。より好ましくは、光源部102は、より光を吸収、散乱する強さが小さい近赤外光(700nm〜900nm)の波長の光を発する。更に好ましくは、光源部102は、光を吸収、散乱する強さが最も小さい710nmの波長の光を発する。
【0021】
なお、光源部102は、発光ダイオード(LED)でもレーザ装置でもよい。本第1の実施の形態では、『IR700』504が光(励起光)を吸収した後の蛍光寿命に基づいて、光源部102の光強度を制御する。蛍光は、LEDの方がレーザ装置より減少は小さい。そこで、本第1の実施の形態では、光源部102として、レーザ装置を用いている。
【0022】
図7に示す光強度調整処理プログラムがスタートする前に、光照射装置100Aを保持する図示しない保持部により、光照射装置100Aは、別の手段により予め見つけられたがん細胞155に対応する皮膚の表面に配置される。具体的には、保持部は、光照射装置100Aを上記皮膚の表面の上に位置させ、上記皮膚の表面の上に位置した光照射装置100Aの照射窓118と、上記皮膚の表面との間に屈折率マッチング部材120を挟んだ状態で光照射装置100Aを、上記皮膚の表面に押し付けるように、配置する。光照射装置100Aは保持部によりがん細胞155に対応する皮膚の表面に照射窓118が位置するように保持部により固定される。
なお、光強度調整処理プログラムが実行されることにより、光照射装置が駆動される。光強度調整処理プログラムによって、光照射装置の駆動方法が規定される。
【0023】
図示しないスイッチがオンされると、光強度調整部404が実行する光強度調整処理プログラムがスタートする。本光強度調整処理プログラムがスタートすると、ステップ702で、後述する蛍光寿命が減少したか否かを示すフラグFを0にセットする。F=0では、蛍光寿命が変化していないと判断され、F=1では、蛍光寿命が減少していると判断される。ステップ704で、光源部102が発する光の初期の光強度、すなわち、線量を設定する。即ち、線量Pに、初期値P0を設定する。上記のように別の手段によりがん細胞の位置は予め見つけられており、皮膚の表面からのがん細胞155の位置する深さも予め知ることができる。一方、皮膚の表面からの深さによって、光がどのくらい吸収、散乱されるのかも予め知ることができる。よって、皮膚の表面からのがん細胞の位置する深さが分かると、がん細胞に光が到達するための光の線量の値も分かる。初期値P0は、がん細胞155が存在する深さの位置に光が到達すると予想される光の線量である。
【0024】
ステップ706で、
図10(1)に示すように、第1の時間T1、線量Pで、光(励起光;近赤外光)を照射する。なお、第1の時間T1は、例えば、10秒である。第1の時間T1は10秒に限定されない。
【0025】
ステップ708で、蛍光寿命Lを測定する。詳細には、
図8に示すように、ステップ802で、蛍光寿命測定部402は、繰り返し行う処理(ステップ804〜810)の処理回数のカウント値を示す変数Cを0にセットし、ステップ804で、蛍光寿命測定部402は、変数Cを1インクリメントする。
【0026】
繰り返し行う処理(ステップ804〜810)で、
図10(1)に示すように、蛍光測定光を用いた光照射、および、
図10(2)に示すように、蛍光測定が行われる。
図10(1)の蛍光測定光を用いた光照射、および、
図10(2)の蛍光測定の具体的内容が、
図10(3)、
図10(4)に示されている。具体的には、ステップ806で、蛍光寿命測定部402は、第1の時間T1の光照射後に、
図10(3)に示すように、所定時間t、線量Pで光(蛍光測定光)を発する。所定時間tは、例えば、0.01秒である。所定時間tは0.01秒に限定されない。光源部102からの光は、光ファイバ104により、ホモジナイザ112に到達する。ホモジナイザ112は、光ファイバ104により案内された光を光の強度がホモジナイザ112の光軸に垂直な平面で均一な光ビームにして、出射する。ホモジナイザ112からの光ビームは、ビーム径可変レンズ114を透過して、所定のビーム径となって、照射窓118、屈折率マッチング部材120、およびがん細胞155に対応する皮膚の表面を介して、がん細胞に到達する。がん細胞には、『抗体−IR700分子』500が結合されているので、光ビームが『抗体−IR700分子』500に照射される。
【0027】
『IR700』504は、近赤外(NIR)フタロシアニン色素であるので、光が照射されると、蛍光を発する。『IR700』504による吸収は波長689nmの光で最大となる。そして、『IR700』504から発した蛍光は、上記皮膚の表面、屈折率マッチング部材120、照射窓118、ビーム径可変レンズ114、ホモジナイザ112を介してバンドパスフィルタ110に到達する。バンドパスフィルタ110により蛍光の波長のみの光が透過して蛍光検出部108に到達する。『IR700』504から発した蛍光スペクトルは700nmが最大となる。
よって、バンドパスフィルタ110を考慮した場合、励起光(治療用の赤外光)の波長としては650nm〜700nmが好ましい。そのときのバンドパスフィルタ110の通過特性は、励起光より長い波長〜900nm、例えば励起光を690nmとすると、690nm〜900nmの波長の光を通過させる通過特性を持つことが好ましい。
【0028】
ステップ808で、蛍光寿命Lcを測定する。具体的には、蛍光検出部108は、バンドパスフィルタ110を介して測定した蛍光の強度を検出する。蛍光寿命測定部402は、蛍光検出部108により検出された蛍光の強度の時間変化に基づいて蛍光寿命Lcを測定する。
【0029】
ここで、
図11を参照して、蛍光寿命Lcを説明する。
図11(1)に示すように、励起光の照射を停止したとき(時間0)から、『IR700』504からの蛍光は、最初はS1の強度であったものが時間の経過とともに徐々に減衰する。光の強度がS1であったものが、例えば、強度S1の約37%(1/e(e:自然対数の底))の強度S2になるまでの時間Lc
1が蛍光寿命Lcである。がん細胞155が破壊されていない場合には、蛍光寿命はLc
1である。これに対し、がん細胞155が破壊されると、蛍光寿命は、
図11(2)に示すように、Lc
1よりも短い所定の蛍光寿命Lc
2になる。
【0030】
ステップ810で、蛍光寿命測定部402は、変数Cが、予め定められた数nに等しいか否かを判断する。変数Cがnに等しくないと判断された場合には、繰り返し処理がn回行われていないので、本処理は、ステップ804に戻る。
【0031】
変数Cがnに等しい場合には、繰り返し処理がn回行われたので、ステップ812で、蛍光寿命測定部402は、各回で測定された蛍光寿命Lcの平均値を蛍光寿命Lとして算出する。その後、本光強度調整処理は
図7のステップ710に進む。
図7のステップ710で、ステップ708で測定された蛍光寿命LをLtにセットする。
【0032】
各回で測定された蛍光寿命Lcの平均値を蛍光寿命Lとして算出するのは、蛍光寿命に誤差があることを考慮して、精度よく蛍光寿命を測定するためである。
【0033】
ステップ712で、ステップ706の処理と同様に、第1の時間T1、線量Pで光を照射し、ステップ714で、ステップ708の処理(詳細には、
図8と同様の処理)と同様に、蛍光寿命測定部402は、蛍光寿命Lを測定する。ステップ716で、ステップ714で測定された蛍光寿命LをLt+1にセットする。
【0034】
ステップ718で、Lt+1<Ltか否かを判断することにより、蛍光寿命が減少しているか否かを判断する。Lt+1<Ltでないと判断した場合には、ステップ720で、F=0か否かを判断する。F=0と判断した場合には、ステップ722で、PにΔP1を加算した値をPにセットし、ステップ724で、Lt+1をLtにセットして、ステップ712に戻って、ステップ712〜718を再度実行する。
【0035】
ステップ718の判断が否定判定であり、ステップ720〜724、712〜718の処理が繰り返し実行されている状態は、
図9に示す時間0〜時間t1の間である。具体的には、照射する線量PはP0からP10へと徐々に増加するが、測定された蛍光寿命LはL0のままで変化していない状態である。このように照射する線量Pは徐々に増加するが、測定された蛍光寿命Lに変化していない状態では、がん細胞が破壊されていない状態である。
【0036】
一方、ステップ718で、Lt+1<Ltである、即ち、蛍光寿命が減少したと判断した場合には、ステップ726で、フラグFに1をセットし、ステップ728で、PにΔP2を加算した値をPにセットして、ステップ712に進む。ステップ712〜ステップ718の処理が再度実行される。なお、ΔP1とΔP2との関係は特に限定されず、ΔP1=ΔP2でも、ΔP1<ΔP2でも、ΔP1>ΔP2でもよい。なお、
図9に示す例では、ΔP1>ΔP2である。つまり、蛍光寿命の減少を見出すまでの期間を短時間にするためパワーの増加分を大きく(ΔP1>ΔP2)している。
【0037】
ステップ718の判断が肯定判定であり、ステップ726、728、712〜718の処理が繰り返し実行されている状態は、
図9に示す時間t1〜時間t2の間である。具体的には、照射する線量Pが徐々に増加し(P10→P20に増加)且つ測定された蛍光寿命Lが徐々に減少している状態である。このように照射する線量Pが徐々に増加し且つ測定された蛍光寿命Lが徐々に減少している状態(L0→L1へ減少)では、がん細胞が破壊され続けている状態である。しかしながら線量を増加すると蛍光寿命が減るので、最適な線量で照射をしていない状態でもある。
【0038】
ステップ718で、今度はLt+1<Ltでないと判断した場合、ステップ720で、F=0か否かを判断するが、今度はF=0と判断されないので、ステップ730で、第2の時間T2(
図9の時刻t2〜t3参照)、線量Pで光を照射する。この第2の時間T2間は、最適な線量P20にて所定時間(例えばがん細胞155を完全に死滅させるのに充分と思われる1分間)照射を行う期間である。線量をP20以上に上げても蛍光寿命LはL1で一定となり、L1以下に下がらなくなる。これは、線量P20ががん細胞155を破壊するのに最も効率の良い線量であることを示している。
第2の時間T2は、上記のように、1分である。第2の時間T2は1分に限定されない。
【0039】
以上説明したように、第1の実施の形態では、光の線量を徐々に増加しながら蛍光寿命が減少しているかを判断し、蛍光寿命が減少しなくなった時の線量を、適切な線量として、がん細胞に照射して治療している。よって、がん細胞へ照射する光の適切な線量をリアルタイムに判断する事ができる。
【0040】
第1の実施の形態では、がん細胞に照射した光の線量が適切でない、即ち、光強度が小さい場合には、光の線量を、蛍光寿命が減少しなくなるまで、所定量(△P2)増加させて、増加した線量の光が照射されるようにしている。よって、適切な治療、即ち適切な線量の光をがん細胞155に照射し、がん細胞155を破壊させることができる。
【0041】
また、第1の実施の形態では、がん細胞に光を照射するための光学系(ホモジナイザ112、ビーム径可変レンズ114)を、蛍光測定のための光学系として共用する(光学系の共用)。治療が適切であったかを判断するために蛍光寿命を測定するための光源部として、治療のためにがん細胞に光を照射するための光源部を利用している(光源の共用)。
【0042】
よって、人体に光照射装置100Aの照射窓118をセッティングし固定したままで照射治療と蛍光寿命の測定とができる。蛍光寿命は3n秒程度と短いが、同一の装置(光学系の共用、光源の共用)にすることで蛍光寿命の測定のタイミングが取りやすくなる。
【0043】
ところで、光照射装置100Aが照射する光の光強度が、がん細胞からなる腫瘍部の中央が大きく、当該中央から離れるに従って小さくなるようなガウシャン分布の場合、当該中央から離れた部分に、がん細胞を破壊させるだけの圧力波を生じる光強度の光を照射すると、当該中央には、がん細胞を破壊させるだけの圧力波を生じる光強度よりも大きい強度の光を照射することにより、必要以上のエネルギーを消費したり、皮膚に害を及ぼしたり、することになる。
【0044】
これに対し、ホモジナイザ112により、ホモジナイザ112の光軸に重要な平面において均一な光強度にし、ビーム径可変レンズ114により、がん細胞155の全領域をカバーする大きさのビーム径の光ビームにして、皮膚に照射するので、必要十分なエネルギーの光を照射することができ、皮膚に害のない範囲での最大の光強度の光を照射することができる。このことは、特に、深い腫瘍、大きな腫瘍に有効である。また、散乱した光も利用可能になる。
【0045】
第1の実施の形態では、測定した蛍光寿命Ltより次に測定した蛍光寿命Lt+1のほうが小さいか否かを判断している。本開示の技術は、これに限定されず、(Lt)−(Lt+1)、即ち、蛍光寿命の減少が第1の閾値以上か否かを判断するようにしてもよい。なお、第1の閾値として0を採用すると第1の実施の形態と同様となる。よって、第1の閾値は0より大きい値である。
【0046】
また、第1の実施の形態では、測定した蛍光寿命Ltと、次に測定した蛍光寿命Lt+1とを比較している。本開示の技術は、これに限定されず、次の例のようにしてもよい。まず、蛍光寿命を連続して測定する。蛍光寿命を古い順にL0、L1、L2、・・・、Ln−2、Ln−1、Lnとする。第1の例としては、今回測定した蛍光寿命Lnと、今回測定した蛍光寿命Lnより前の、直前の蛍光寿命Ln−1以外の複数の蛍光寿命L0、L1、L2、・・・、Ln−2の中から選択した1つの蛍光寿命と比較する。第2の例として、今回測定した蛍光寿命Lnと、今回測定した蛍光寿命Lnより前の複数の蛍光寿命L0、L1、L2、・・・、Ln−1の平均値と比較する。第3の例としては、蛍光寿命L0、L1、L2、・・・、Ln−2、Ln−1、Lnの中の前半の複数の蛍光寿命の平均値と後半の複数の蛍光寿命の平均値とを比較する。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態の構成は、第1の実施の形態の構成とほぼ同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図12に示すように、光照射装置100Bは、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度を検出する温度検出部1102を更に備えている。
なお、温度検出部1102は、本開示の技術の温度検出部の1例である。
【0048】
図13には、光照射装置100Bの要部の電気系の構成の1例が示されている。
図13に示すように、コンピュータ300の入出力(I/O)ポート308には更に、温度検出部1102が接続されている。
【0049】
図14には、光照射装置100Bの要部の機能の構成の1例が示されている。
図14に示すように、光照射装置100Bは更に、温度測定部1302を備えている。CPU302が光強度調整処理プログラムを実行すると、CPU302は、温度測定部1302として更に機能する。
【0050】
次に、第2の実施の形態の作用を説明する。
第2の実施の形態の作用は、第1の実施の形態の作用とほぼ同様であるので、異なる部分のみを説明する。
【0051】
図15には、第2の実施の形態における光照射装置、蛍光測定、温度計測のタイミングチャートが示されている。
図15(1)、
図15(2)、
図15(4)、及び
図15(5)はそれぞれ、
図10(1)〜
図10(4)に対応する。
【0052】
第1の実施の形態では、蛍光寿命が、がん細胞155が破壊された場合の蛍光寿命となるまで、徐々に光強度を増加させ、増加した光強度の光を皮膚の表面に照射している。よって、当該皮膚の表面の温度が、やけどになる温度に到達する可能性がある。
【0053】
これに対し、第2の実施の形態では、当該皮膚の表面の温度が、やけどになる温度に到達しないように、次のようにしている。
【0054】
第2の実施の形態における光強度調整処理では、
図7のステップ706とステップ708との間で、温度測定部1302は、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度を、屈折率マッチング部材120を介して検出する処理を実行する。
図15(3)に示すように、第1の時間T1の光照射(
図15(1)参照)が終了した後、蛍光寿命の測定(
図15(2)参照)の前のタイミングTPにおいて、温度測定部1302は、温度検出部1102により、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度を検出する。
【0055】
そして、温度測定部1302は、測定した温度Thが、所定の温度Th0(例えば、皮膚の表面がやけどしない温度、例えば42℃)以下か否かを判断する。測定された温度Thが、所定の温度Th0以下であると判断した場合には、ステップ708に進む。
【0056】
温度Thが所定の温度Th0以下でないと判断された場合、即ち、測定された温度Thが所定の温度Th0(例えば42℃)より大きいと判断された場合には、皮膚の表面がやけどしないようにするため、本処理を終了することにより、光を照射しないようにしている。
【0057】
第2の実施の形態では、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度が所定の温度Th0(例えば42℃)より大きいと判断された場合には、光強度調整処理を終了して、皮膚の表面がやけどしないようにすることができる。
【0058】
以上説明したように、第2の実施の形態では、がん細胞155に対応する皮膚の表面に照射する光の線量を、当該皮膚の表面および当該皮膚の表面とがん細胞との間にある正常な細胞にダメージを与えない光の線量にし、かつ、より深い、厚いがん細胞155の腫瘍部で上記圧力波が起こるのに必要な光の線量にすることができる。
【0059】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態の構成と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分の説明をする。
【0060】
図16には、第3の実施の光照射装置100Cが示されている。
図16に示すように、光照射装置100Cは、筐体106の照射窓118の周囲に、皮膚の表面を冷却するための冷却部1602が設けられている。冷却部1602としては、例えば、リング状のペルチュ素子を用いることができる。
なお、冷却部1602は、本開示の技術の冷却部の1例である。
【0061】
図17には、光照射装置100Cの要部の電気系の構成の1例が示されている。
図17に示すように、光照射装置100Cは、コンピュータ300の入出力(I/O)ポート308には更に、冷却部1602が接続されている。
【0062】
図18には、本実施の形態の要部の機能の構成の1例が示されている。
図18に示すように、光照射装置100Cは更に、冷却処理部1802を更に備えている。CPU302が光強度調整処理プログラムを実行すると、CPU302は、冷却処理部1802として更に機能する。
【0063】
次に、第3の実施の形態の作用を説明する。第3の実施の形態の作用は、第2の実施の形態の作用と同様であるので、異なる部分のみを説明する。
【0064】
第3の実施の形態の光強度調整処理では、第2の実施の形態で説明した、測定された温度Thが所定の温度Th0(例えば42℃)より小さいか否かの判断が、否定判定の場合には、冷却処理部1802は、冷却部1602を駆動させて、皮膚の表面を冷却して、温度Thを再度測定する。
【0065】
本第2の実施の形態では、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度が所定の温度Th0(例えば42℃)より大きいと判断された場合には、光強度調整処理を終了している。
【0066】
これに対し、第3の実施の形態では、がん細胞155に対応する皮膚の表面の温度が所定の温度Th0(例えば42℃)より大きいと判断された場合には、皮膚の表面を冷却する。よって、第3の実施の形態では、皮膚の表面がやけどをさせないで、がん細胞155に照射する光の光強度を上げることができる。
【0067】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態の構成は、第3の実施の形態の構成とほぼ同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して、異なる部分のみを説明する。
【0068】
図19には、第4の実施の形態の光照射装置100Dと、光照射装置100Dを移動させる移動部2000とを備えた光調整システムが備えている。
【0069】
移動部2000は、手術台2002の一端側にZ方向に沿って配置されたレール2014、レール2014に沿って移動可能に配置された保持基台2016、保持基台2016をレール2014に沿って移動させる第1のモータ2018、および保持基台2016に取り付けられた支柱2004を備えている。移動部2000は、第1のアーム2008と、支柱2004とに取り付けられた第1の接続部2006、および、第1のアーム2008を回動させる第2のモータ2007を備えている。第1のアーム2008の一端は、第1の接続部2006にXY軸平面内を第1のアーム2008が当該一端を中心に回動可能に取り付けられている。
【0070】
移動部2000は、光照射装置100Dが固定された第2のアーム2012、第2のアーム2012の一端が、XY軸平面内を第2のアームが当該一端を中心に回動可能に取り付けられた第2の接続部2010、および、第2のアームを回動させる第2のモータ2011を備えている。
【0071】
図20には、第4の実施の形態の光照射装置100Dの要部の電気系の構成の1例が示されている。
図21に示すように、第4の実施の形態の光照射装置100Dは、コンピュータ300の入出力(I/O)ポート308に、第1のモータ2018、第2のモータ2007、および第3のモータ2011を選択的に制御する保持駆動部2102が更に接続されている。なお、ROM304には、光強度調整処理プログラム(位置決め処理プログラムを含む)が記憶されている。
【0072】
図21には、第4の実施の形態の光照射装置100Dの要部の機能の構成の1例が示されている。
図21に示されているように、第4の実施の形態の光照射装置100Dは、位置決め部2202を更に備えている。CPU302が位置決め処理プログラムを実行すると、CPU302は、位置決め部2202として機能する。位置決め部2202が、保持駆動部2102を制御して、第1のモータ2018、第2のモータ2007、および第3のモータ2011を選択的に駆動することにより、光照射装置100Dを、手術台2002上の空間内の所望の位置に位置させることができる。
【0073】
次に、第4の実施の形態の作用を説明する。本実施の形態の作用は、第3の実施の形態の作用とほぼ同様であるので、異なる部分のみを説明する。
【0074】
第4の実施の形態では、
図7のステップ702の前に、位置決め部2202は、光照射装置100Dを位置決めする。詳細には、
図22に示すように、ステップ2402で、位置決め部2202は、光照射装置100Dを、別の手段により見付けられたがん細胞155の位置に対応する皮膚の表面の位置に配置し、ステップ2404で、位置決め部2202は、光強度として光の線量Pを初期値P0に設定し、ステップ2406で、位置決め部2202は、レンズ駆動部312によりビーム径可変レンズ114を移動させて、ビーム径を、がん細胞をカバーする大きさに設定する。ステップ2408で、位置決め部2202は、所定時間光を照射し、ステップ2410で、位置決め部2202は、蛍光の強度を測定する。
【0075】
ステップ2412で、位置決め部2202は、予め見付けられたがん細胞155の位置に対応する皮膚の表面の位置を中心にした所定領域をカバーするように、光照射装置100Dを移動させるための予め定められたルートの全ルートを光照射装置100Dが移動したか否かを判断する。
【0076】
光照射装置100Dを全ルートに沿って移動していないと判断した場合には、ステップ2416で、位置決め部2202は、保持駆動部2102により第1のモータ2018は、第2のモータ2007、および第3のモータ2011を駆動させて、光照射装置100Dをルートに沿って所定距離移動させ、本処理は、ステップ2408に戻る。
【0077】
ステップ2412で、光照射装置100Dを全ルートに沿って移動したと判断した場合には、ステップ2418で、位置決め部2202は、蛍光の強度が最大値となったときの光照射装置100Dの位置に、光照射装置100Dを移動させ固定し、
図7のステップ702に進む。
【0078】
ところで、予め見付けられたがん細胞155の位置が正確ではない場合もある。第4の実施の形態は、予め見付けられたがん細胞155の位置に対応する皮膚の表面の位置を中心にした所定領域をカバーするように、光照射装置100Dを移動させるための予め定められたルートの全ルートを光照射装置100Dが移動するようにさせ、全ルートの中で蛍光の強度が最大値となったときの光照射装置100Dの位置に、光照射装置100Dを固定する。よって、光照射装置100Dをがん細胞155の現在の位置に対応するように配置することができる。
【0079】
第4の実施の形態では、位置決め部2202が、保持駆動部2102を制御して、光照射装置100Dを、手術台2002上の空間内の所望の位置に自動的に移動させ固定しているが、マニュアルで移動するようにしてもよい。この場合、所望の位置において図示しないアタッチメントにより光照射装置100Dを患者に固定する。
【0080】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態を説明する。第5の実施の形態の構成は、第3の実施の形態の構成とほぼ同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して、異なる部分のみを説明する。なお、ROM304(
図17も参照)には、光強度調整処理プログラム(ビーム径設定処理プログラムを含む)が記憶されている。
【0081】
図23には、第5の実施の形態の要部の機能の構成の1例が示されている。
図23に示すように、光照射装置は、ビーム径設定部2502を更に備えている。CPU302がビーム径設定処理プログラムを実行すると、CPU302は、ビーム径設定部2502として更に機能する。
【0082】
次に、第5の実施の形態の作用を説明する。
図7のステップ702の前に、ビーム径設定部2502は、ビーム径を設定する。具体的には、
図24のステップ2702で、ビーム径設定部2502は、初期の光強度としての光の線量Pを初期値P0に設定する。
【0083】
ステップ2704、ビーム径設定部2502は、ビーム径が最小となる位置にビーム径可変レンズ114を位置決めする。ステップ2706で、ビーム径設定部2502は、所定期間光照射し、ステップ2708で、蛍光の強度を測定する。
【0084】
ステップ2710で、ビーム径設定部2502は、ビーム径を所定量拡大し、ステップ2712で、ビーム径設定部2502は、ビーム径を拡大しても、皮膚の表面に照射する光ビームの光強度が、ビーム径を拡大する前と同じになるように、光強度として光の線量PをPn増加させる。
【0085】
ステップ2714で、ビーム径設定部2502は、光の線量Pで所定期間光照射し、ステップ2716で、蛍光の強度を測定する。
【0086】
ところで、別の手段により、がん細胞155の位置およびがん細胞155の大きさを予め得ることができる。しかし、予め得たがん細胞155の大きさが現実の大きさと異なる場合がある、よって、照射する光ビームのビーム径を、現実の大きさに対応させることが必要となる。しかし、皮膚の表面からは、がん細胞155の現実の大きさを得ることができない。
【0087】
一方、ビーム径、例えば、
図25に示すように、B1、B2、B3、B4、・・・のように拡大すると、拡大したビーム径でカバーされる領域に存在する『抗体−IR700分子』500の数は増えると共に、
図26に示すように、蛍光の強度も増大する。よって、ビーム径を増やして蛍光の強度を測定し、蛍光の強度が増加する傾向にある場合には、ビーム径はがん細胞155の大きさよりも小さいと判断できる。
【0088】
そこで、ステップ2718で、ビーム径設定部2502は、蛍光の強度が増加した否かを判断する。蛍光の強度が増加したと判断した場合には、現在のビーム径は、がん細胞155の現実の大きさよりも小さい、即ち、このビーム径を拡大した領域に、『抗体−IR700分子』500がまだ存在する可能性があるので、本処理は、ステップ2710に戻る。
【0089】
ステップ2718で、蛍光の強度が増加したと判断されなかった場合には、現在のビーム径は、がん細胞155の全領域をカバーしていると判断することが出来るので、本処理を終了し、
図7のステップ702に進む。
【0090】
第5の実施の形態では、ビーム径の大きさをがん細胞155の全領域の現実の大きさをカバーする大きさにすることができる。より詳細には、別の手段により、がん細胞155の位置およびがん細胞155の大きさを予め得ることができる。しかし、予め得たがん細胞155の大きさが現実の大きさと異なる場合がある、よって、照射する光ビームのビーム径を、現実の大きさに対応させることが必要となる。しかし、皮膚の表面からは、がん細胞155の現実の大きさを得ることができない。よって、蛍光寿命イメージングで細胞を検出する従来の技術では、ビーム径の大きさをがん細胞155の全領域の現実の大きさをカバーする大きさにすることができないという課題があった。しかし、第5の実施の形態では、ビーム径を増やして蛍光の強度を測定し、蛍光の強度が増加する傾向にある場合には、ビーム径はがん細胞155の大きさよりも小さいと判断でき、ビーム径を拡大し、蛍光の強度が増加したと判断されなかった場合には、現在のビーム径は、がん細胞155の全領域をカバーしていると判断する。第5の実施の形態では、ビーム径の大きさをがん細胞155の全領域の現実の大きさをカバーする大きさにすることができる。
【0091】
(変形例)
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、表面にタンパク質を含む細胞としてがん細胞を破壊しているが、がん細胞以外の腫瘍細胞でもよい。また、細胞は標的タンパク質が局在する細胞であればよく、細胞表面に標的タンパク質が局在する細胞ばかりでなく、細胞内に標的タンパク質が局在する細胞でもよい。
【0092】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、『抗体−IR700分子』500(
図5参照)は、『抗体』502と、1つの『IR700』504とが結合されているが、『抗体』502には複数の『IR700』504が結合してもよい。
【0093】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態における『抗体−IR700分子』500は、パニツムマブ−IR700分子、トラスツズマブ−IR700分子、バシリキシマブ(Basilitumab)−IR700分子、ゼナパックス−IR700分子、Simitect−IR700分子、またはJ591−IR700分子を含むようにしてもよい。
【0094】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態における『抗体−IR700分子』500は、少なくとも2つの異なる『抗体−IR700分子』500を含み、第1の『抗体−IR700分子』500が、第1の抗原に対して特異的であり、第2の『抗体−IR700分子』500が、該第1の抗原の異なるエピトープに対して特異的であるか、または第2の抗原に対して特異的であるとしてもよい。
【0095】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態におけるモノクローナル抗体としては、キメラ抗体、完全ヒト化抗体でもよい。モノクローナル抗体は、抗腫瘍抗体であり、ヒト抗体である。
【0096】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、蛍光寿命を用いているが、励起光の照射を停止したとき(時間0)からの蛍光の変化率を用いてもよい。蛍光の変化率を用いる場合には、求めた蛍光の変化率が、所定値、即ち、がん細胞155が破壊された場合の蛍光の変化率と比較する。更に、蛍光寿命と上記蛍光の変化率との双方を求めて、少なくとも何れかまたは両方における比較結果から、光強度が適正か否かを判断してもよい、
【0097】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、光強度を制御しているが、光強度に代えてまたは光強度と共に照射する時間を変更することにより光のエネルギーを変更するようにしてもよい。
【0098】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、光源部102を制御しているが、光ファイバ104に絞りを設け、光源部102の制御に代えてまたは光源部102の制御と共に、絞りを制御して、光源部102から発せられた後の光ファイバ104を透過する光の量を変更するようにしてもよい。
【0099】
第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、ROM304に光強度調整処理プログラムが記憶され、CPU302は、光強度調整処理プログラムを、ROM304から読み出しRAM306に展開し、実行する。しかし、光強度調整処理プログラムを、ROM304ではなく、図示しない2次記憶装置に記録して、2次記憶装置に記録された光強度調整処理プログラムを読み出し、実行するようにしてもよい。光強度調整処理プログラムをROM304や2次記憶装置から、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他の装置に伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、光強度調整処理プログラムは、上記光強度調整処理の一部を実現するためのものであってもよい。この場合、他のプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0100】
光強度調整処理プログラムをROM304または2次記憶装置から読み出すことに限定されない。
図20には、光強度調整処理プログラムが記憶された記憶媒体から光照射装置100にインストールされる態様の1例を示す。
図20に示すように、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、またはUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの任意の可搬型の記憶媒体3300に先ずは光強度調整処理プログラムを記憶させておいてもよい。この場合、記憶媒体3300の光強度調整処理プログラムが光照射装置100にインストールされ、インストールされた光強度調整処理プログラムがCPU302によって実行される。光強度調整処理プログラムがCPU302によって実行されると、CPU302は、上記各部(
図4、
図14、
図18、
図21、23)として機能する。