(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0012】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
また、「基材」及び「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0013】
以下の説明において、フィルムの面内方向の位相差は、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。これらのレターデーションは、市販の位相差測定装置あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
【0014】
以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語である。また、以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
〔1.光学フィルム用転写体〕
本発明の光学フィルム用転写体は、基材フィルムと、基材フィルム上に形成された特定の光学異方性層とを含む。
【0016】
本発明において、「光学フィルム用転写体」とは、複数の層を含む部材であって、かかる複数の層のうち一部の層を転写して、かかる一部の層を含む光学フィルムの製造に供するものである。本発明の光学フィルム用転写体においては、光学異方性層が、光学フィルムの製造に供される。
【0017】
〔1.1.基材フィルム:材料〕
基材フィルムとしては、光学的な積層体の基材として用いうるフィルムを、適宜選択して用いうる。
【0018】
基材フィルムの材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
【0019】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する非晶性の重合体であり、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは6〜15個である。
【0020】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
脂環式構造を有する繰り返し単位が過度に少ないと、フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
【0021】
脂環式構造含有重合体は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。
これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
【0022】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0023】
脂環式構造含有重合体は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。
ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0024】
脂環式構造含有重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは25,000〜80,000、さらにより好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0025】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0026】
基材フィルムの材質として脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いた場合の、基材フィルムの厚みは特に制限されないが、生産性の向上、薄型化及び軽量化を容易にする観点から、その厚みは、所定の範囲であることが好ましい。そのような観点から好ましい厚みは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜300μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0027】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア1420、ゼオノア1420R」を挙げうる。
【0028】
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)やセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
【0029】
セルロースアセテートの酢化度は、50〜70%が好ましく、特に55〜65%が好ましい。重量平均分子量70000〜120000が好ましく、特に80000〜100000が好ましい。また、上記セルロースアセテートは、酢酸だけでなく上記酢化度を満足する限り、一部プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸でエステル化されていても良い。また、基材フィルムを構成する樹脂は、セルロースアセテートと、セルロースアセテート以外のセルロースエステル(セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート等)とを組み合わせて含んでも良い。その場合、これらのセルロースエステルの全体が、上記酢化度を満足することが好ましい。
【0030】
基材フィルムとして、トリアセチルセルロースのフィルムを用いる場合、かかるフィルムとしては、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶媒に溶解することで調製されたトリアセチルセルロースドープを用いて作成されたトリアセチルセルロースフィルムが、環境保全の観点から特に好ましい。トリアセチルセルロースのフィルムは、共流延法により作製しうる。共流延法は、トリアセチルセルロースの原料フレークを溶媒に溶解し、これに必要に応じて任意の添加剤を添加し溶液(ドープ)を調製し、当該ドープをドープ供給装置(ダイ)から支持体の上に流延し、流延物をある程度乾燥して剛性が付与された時点でフィルムとして支持体から剥離し、当該フィルムをさらに乾燥して溶媒を除去することにより行いうる。原料フレークを溶解する溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等が挙げられる。ドープに添加する添加剤の例としては、レターデーション上昇剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等が挙げられる。ドープを流延する支持体の例としては、水平式のエンドレスの金属ベルト、及び回転するドラムが挙げられる。流延に際しては、単一のドープを単層流延することもできるが、複数の層を共流延することもできる。複数の層を共流延する場合、例えば、低濃度のセルロースエステルドープの層と、そのおもて面及び裏面に接して設けられた高濃度のセルロースエステルドープの層が形成されるよう、複数のドープを順次流延しうる。フィルムを乾燥して溶媒を除去する装置の例としては、フィルムを搬送して、内部を乾燥に適した条件に設定した乾燥部を通過させる装置が挙げられる。
【0031】
トリアセチルセルロースのフィルムの好ましい例としては、TAC−TD80U(富士写真フィルム(株)製)等の公知のもの、及び発明協会公開技報公技番号2001−1745号にて公開されたものが挙げられる。トリアセチルセルロースのフィルムの厚みは特に限定されないが、20〜150μmが好ましく、40〜130μmがより好ましく、70〜120μmが更に好ましい。
【0032】
〔1.2.基材フィルム:配向規制力〕
基材フィルムとしては、配向規制力を有するものを用いうる。基材フィルムの配向規制力とは、基材フィルムの上に塗布された液晶組成物中の光重合性液晶化合物を配向させうる、基材フィルムの性質をいう。
【0033】
配向規制力は、基材フィルムの材料となるフィルムに、配向規制力を付与する処理を施すことにより付与しうる。かかる処理の例としては、延伸処理及びラビング処理が挙げられる。
【0034】
好ましい態様において、基材フィルムは延伸フィルムである。かかる延伸フィルムとすることにより、延伸方向に応じた配向規制力を有するフィルムとしうる。
【0035】
さらに好ましい態様において、基材フィルムは斜め延伸フィルムである。即ち、基材フィルムは、長尺のフィルムであり、且つフィルムの長尺方向及び短尺方向のいずれとも非平行な方向に延伸されたフィルムである。
【0036】
基材フィルムが斜め延伸フィルムである場合の、延伸方向と基材フィルムの短尺方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。このような斜め延伸フィルムを用いることにより、長尺状の偏光子に光学異方性層をロールツーロールで転写、積層し、円偏光板等の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0037】
また、ある態様において、延伸方向と基材フィルムの短尺方向とがなす角度を、好ましくは15°±5°、22.5±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、本発明の光学フィルム用転写体を、特定の円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0038】
〔1.3.光学異方性層:形成方法〕
光学異方性層は、基材フィルム上に形成された層であり、光重合性液晶化合物を含む組成物を硬化してなる。本願においては、光重合性液晶化合物を含む組成物を、単に「液晶組成物」と呼ぶ場合がある。
【0039】
基材フィルム上で、液晶組成物を硬化し光学異方性層を形成する操作は、典型的には、
工程(I):基材フィルム上に、液晶組成物を塗布し、液晶組成物の層を形成する工程、
工程(II):液晶組成物の層における光重合性液晶化合物を配向させる工程、及び
工程(III):光重合性液晶化合物を重合させ、硬化液晶分子を形成する工程
を含む方法により行いうる。
【0040】
工程(I)は、例えば、連続的に搬送される長尺状の基材フィルムの一方の面上に、液晶組成物を直接塗布することにより行いうる。塗布の方法の例としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。塗布される液晶組成物の層の厚みは、光学異方性層に求められる所望の厚さに応じて適宜設定しうる。
【0041】
工程(II)は、塗布により直ちに達成される場合もあるが、必要に応じて、塗布の後に、加温などの配向処理を施すことにより達成される場合もある。配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適宜設定しうるが、例えば、50〜160℃の温度条件において30秒間〜5分間処理する条件としうる。
【0042】
工程(II)の後直ちに工程(III)を行ってもよいが、工程(II)の後工程(III)の前等の任意の段階で、必要に応じて液晶組成物の層を乾燥させる工程を行なってもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0043】
工程(III)は、重合性化合物及び重合開始剤等の、液晶組成物の成分の性質に適合した方法を適宜選択しうる。例えば、光を照射する方法が好ましい。ここで、照射される光には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光が含まれうる。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線を照射する方法が好ましい。
【0044】
工程(III)において紫外線を照射する場合の紫外線照射強度は、通常、0.1mW/cm
2〜1000mW/cm
2の範囲、好ましくは0.5mW/cm
2〜600mW/cm
2の範囲である。紫外線照射時間は、1秒〜300秒の範囲、好ましくは5秒〜100秒の範囲である。紫外線積算光量(mJ/cm
2)=紫外線照射強度(mW/cm
2)×照射時間(秒)で求められる。紫外線照射光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀灯を用いることができる。
【0045】
〔1.4.光学異方性層の残留モノマー割合〕
本発明の光学フィルム転写体の光学異方性層においては、光重合性液晶化合物の割合が25重量%以下である。即ち、光学異方性層の重量を100重量%とした場合において、当該異方性層に含まれる光重合性液晶化合物の割合が25重量%以下である。本願においては、このような光学異方性層における光重合性液晶化合物の割合を、単に「残留モノマー割合」と呼ぶことがある。
【0046】
残留モノマー割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらにより好ましくは6重量%以下である。残留モノマー割合の下限は、理想的には0重量%であるが、現実的な反応速度及び製造の容易さの観点より2重量%以上となりうる。
【0047】
残留モノマー割合は、光学異方性層から光重合性液晶化合物を抽出し抽出溶液を得て、当該抽出溶液中の光重合性液晶化合物の量を定量することにより求めうる。抽出溶液中の光重合性液晶化合物の定量は、ガスクロマトグラフィー等の定量方法により行いうる。
【0048】
残留モノマーは、光学異方性層の形成において重合しなかった光重合性液晶化合物である。したがって、残留モノマー割合は、光学異方性層の形成における重合の条件を変更することにより、所望の低い値としうる。例えば、上に述べた工程(I)〜(III)を含む光学異方性層の形成方法の工程(III)において、液晶組成物の層の温度を調節することにより、残留モノマー割合を低減することができる。
【0049】
工程(III)における液晶組成物の層の温度の調節は、基材フィルムをバックロールにより支持した状態で工程(III)を行い、バックロールの温度を調節することにより行いうる。
【0050】
バックロールとは、光の照射に際して、基材フィルムを被照射面の裏側から支持するロールである。
図1は、そのようなバックロールを用いた温度の調節を伴う工程(III)の実施の例を、模式的に示す概略図である。
図1において、基材フィルム11及びその上に設けられた液晶組成物の層12を含む積層体10は、矢印A1の方向に搬送される。積層体10は、位置Lにおいて、矢印A3方向に回転するバックロール21に、基材フィルム11側の面が接する状態で支持されて搬送される。この位置Lにおいて、液晶組成物の層12は、光源22から矢印A2方向に紫外線照射を受け、硬化する。これにより液晶組成物の層が硬化し、光学異方性層が形成される。ここで、バックロールの温度を様々に調節することにより、残留モノマー割合の低い硬化を達成しうる。概して、バックロールの温度が高いほど、残留モノマー割合は低減する傾向があるが、至適な温度は他の条件によっても異なるので、残留モノマー割合が低減される温度は、実験的に定めることが好ましい。他に、光の照射量を増量したり、重合開始剤を増量したりすることによっても、残留モノマー割合を低減しうる。
【0051】
バックロールの温度の上限は、基材フィルムの変形を防ぐ観点から、基材のガラス転移温度(Tg)以下とすることが好ましい。通常、150℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下の範囲である。バックロールの温度の下限は、15℃以上としうる。したがって好ましくは、この温度範囲内で、残留モノマー割合が低減される温度を実験的に定めうる。
【0052】
また、工程(III)を空気下で行うよりは、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下で行ったほうが、残留モノマー割合が低減される傾向にあるので、工程(III)は、そのような不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0053】
〔1.5.光学異方性層の位相差低下率〕
本発明者の見出したところによれば、残留モノマー割合を前記上限以下の低い値とすることにより、光学異方性層に接着剤を接触させた際の位相差低下率を、少ない値に抑制することができる。
【0054】
光学異方性層の位相差低下率は、接着剤を塗布する前の面内方向の位相差Re
0及び接着剤を塗布した後の面内方向の位相差Re
1を測定することにより求めうる。具体的には、光学フィルム用転写体の光学異方性層を、適切な位相差測定用の基材に転写し、そこで550nmにおける面内方向の位相差Re
0を測定し、さらに、光学異方性層の表面に接着剤を塗布し、10分経過後の位相差Re
1を測定し、これらから式((Re
0−Re
1)/Re
0)×100により、位相差低下率(%)を求めうる。位相差測定用の基材としては、ガラス板等の、位相差の測定に適した基材を適宜選択しうる。位相差を測定する装置としては、位相差計(Axometrics社製、商品名「AxoScan」等)を用いうる。
【0055】
光学異方性層の位相差低下率を評価するための接着剤としては、本発明の光学フィルムの製造に用いるものと同一のものを用いうる。また、接着剤の塗布厚みは、位相差の低下を十分観察できる厚み、具体的には1mmとしうる。
【0056】
〔1.6.光学異方性層の光学的性質等〕
光学異方性層は、通常、光重合性液晶化合物により形成された硬化液晶分子を含む。本願においては、「硬化液晶分子」とは、液晶相を呈しうる化合物を、液晶相を呈した状態のまま固体とした際の当該化合物の分子を意味する。硬化液晶分子の例としては、光重合性液晶化合物を重合させてなる重合体が挙げられる。
【0057】
硬化液晶分子は、好ましくは、基材フィルムに対して水平配向した配向規則性を有しうる。ここで、硬化液晶分子が基材フィルムに対して「水平配向」するとは、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向の平均方向が、フィルム面と平行又は平行に近い(例えばフィルム面となす角度が5°以内)、ある一の方向に整列することをいう。硬化液晶分子が水平配向しているか否か、及びその整列方向は、AxoScan(Axometrics社製)等の位相差計を用いた測定により確認しうる。
【0058】
ここで、硬化液晶分子が、棒状の分子構造を有する光重合性液晶化合物を重合させてなるものである場合は、通常は、当該光重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向が、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向となる。また、光重合性液晶化合物として逆波長分散光重合性液晶化合物(後述)を用いた場合のように、光学異方性層中に、配向方向の異なる複数種類のメソゲンが存在する場合は、それらのうち最も長い種類のメソゲンの長軸方向が整列する方向が、当該整列方向となる。
【0059】
基材フィルムとして配向規制力を有するものを用い、さらに光学異方性層の材料を適宜選択することにより、光学異方性層において硬化液晶分子を水平配向させることができる。
【0060】
光学異方性層の厚さは、特に限定されず、面内方向の位相差などの特性を所望の範囲とできるよう適宜調整することができる。具体的には、厚さの下限は0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、一方厚さの上限は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらにより好ましい。
【0061】
光学異方性層は、逆波長分散性を有することが好ましい。即ち、光学異方性層は、短波長より長波長の透過光について高い面内位相差を示す波長分散を有することが好ましい。光学異方性層は、少なくとも可視光の帯域の一部、好ましくは全部においてそのような逆波長分散性を有することが好ましい。光学異方性層が逆波長分散性を有することにより、λ/4波長板又はλ/2波長板といった光学用途において、広い帯域において均一に機能を発現しうる。
【0062】
光学異方性層は、光学異方性を有するので、光学異方性層を透過する光に位相差を生じさせる。好ましい態様として、光学異方性層は、λ/4波長板又はλ/2波長板である。具体的には、測定波長550nmで測定した面内方向の位相差Reが、108nm〜168nmの範囲である場合、λ/4波長板として使用しうる。また測定波長550nmで測定した面内方向の位相差Reが245nm〜305nmの範囲である場合、λ/2波長板として使用しうる。より具体的には、λ/4波長板の場合、測定波長550nmで測定した面内方向の位相差Reは、好ましくは110〜170nm(即ち140±30nm)、より好ましくは128nm〜148nm、さらにより好ましくは135nm〜145nm(即ち140±5nm)の範囲である。またλ/2波長板の場合、測定波長550nmで測定した面内方向の位相差Reは、好ましくは265nm〜285nm、より好ましくは270nm〜280nmの範囲である。光学異方性層が、このようなλ/4波長板又はλ/2波長板である場合、それを利用して、λ/4波長板又はλ/2波長板を有する円偏光板等の光学素子を容易に製造しうる。
【0063】
好ましい態様において基材フィルムは長尺のフィルムであり、従って、その面上に形成される光学異方性層も長尺の形状としうる。光学異方性層が長尺の形状である場合、光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の短尺方向とがなす角度は、基材フィルムの配向規制力の方向と基材フィルムの短尺方向とがなす角度と同様としうる。具体的には、基材フィルムが斜め延伸フィルムであり、当該延伸方向に沿った配向規制力を有する場合、光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の短尺方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。また、ある態様において、光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の短尺方向とがなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5°±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、本発明の光学フィルム用転写体を、特定の円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0064】
〔1.7.光学異方性層の材料:液晶組成物〕
光学異方性層の形成に用いうる液晶組成物(以下において、当該組成物を「組成物(A)」と略称する場合がある。)について説明する。
【0065】
本願において、組成物(A)の成分としての液晶化合物とは、組成物(A)に配合し配向させた際に、液晶相を呈しうる化合物である。光重合性液晶化合物とは、かかる液晶相を呈した状態で組成物(A)中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。さらに、逆波長分散光重合性液晶化合物とは、そのように重合体とした場合、得られた重合体が逆波長分散性を示す光重合性液晶化合物である。
また、本願において、組成物(A)の成分であって、重合性を有する化合物(光重合性液晶化合物及びその他の重合性を有する化合物等)を総称して単に「重合性化合物」ということがある。
【0066】
〔1.7.1.光重合性液晶化合物〕
光重合性液晶化合物としては、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマーを形成しうる化合物、円盤状液晶性化合物などの化合物であって、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光を照射することによって重合しうる化合物が挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。円盤状液晶性化合物の具体例としては、特開平8−50206号公報、文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。これらの液晶化合物及び以下に説明する逆波長分散光重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
〔1.7.2.逆波長分散光重合性液晶化合物〕
光重合性液晶化合物の一部又は全部として、逆波長分散光重合性液晶化合物を用いうる。逆波長分散光重合性液晶化合物を用いることにより、逆波長分散性を有する光学異方性層を容易に得ることができる。
【0068】
逆波長分散光重合性液晶化合物の例としては、その分子中に主鎖メソゲンと、主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを有する化合物が挙げられる。このような逆波長分散光重合性液晶化合物が配向した状態において、側鎖メソゲンは、主鎖メソゲンと異なる方向に配向しうる。したがって、光学異方性層において、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンは異なる方向に配向しうる。そのような配向により、光学異方性層が逆波長分散特性を呈しうる。
【0069】
〔1.7.2.1.化合物(I)〕
逆波長分散光重合性液晶化合物の例としては、下記式(I)で示される化合物(以下において「化合物(I)」という場合がある。)を挙げることができる。
【0071】
逆波長分散光重合性液晶化合物が化合物(I)である場合、基−Y
5−A
4−Y
3−A
2−Y
1−A
1−Y
2−A
3−Y
4−A
5−Y
6−が主鎖メソゲンとなり、一方基>A
1−C(Q
1)=N−N(A
x)A
yが側鎖メソゲンとなり、基A
1は、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンの両方の性質に影響する。
【0072】
式中、Y
1〜Y
8はそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
【0073】
ここで、R
1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
R
1の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
R
1としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0074】
化合物(I)においては、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であるのが好ましい。
【0075】
G
1、G
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の二価の脂肪族基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基;炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数4〜20のシクロアルケンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等の二価の脂肪族基;等が挙げられる。
【0076】
G
1、G
2の二価の脂肪族基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0077】
また、前記脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2は、前記R
1と同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
【0078】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
2−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
2−CH
2−、−CH
2−NR
2−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1、G
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)
4−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕、オクタメチレン基〔−(CH
2)
8−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕が特に好ましい。
【0080】
Z
1、Z
2はそれぞれ独立して、無置換又はハロゲン原子で置換された炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z
1及びZ
2のアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0081】
Z
1及びZ
2の炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
3−CH=CH−CH
2−等が挙げられる。
【0082】
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z
1及びZ
2としては、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−であるのが好ましく、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−であるのがより好ましく、CH
2=CH−であるのが特に好ましい。
【0083】
A
xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
本発明において、「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示すものを意味する。
【0084】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
【0085】
前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チアゾロピリジン環、オキサゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、オキサゾロピラジン環、チアゾロピリダジン環、オキサゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、オキサゾロピリミジン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
【0086】
A
xが有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
5;−C(=O)−OR
5;−SO
2R
6;等が挙げられる。ここで、R
5は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は、炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、R
6は後述するR
4と同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0087】
また、A
xが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよく、不飽和環であっても、飽和環であってもよい。
なお、A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
yにて同じである。)。
【0088】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
【0089】
A
xの好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明においては、A
xは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の任意の位置からのびる結合手を表す(以下にて同じである。)。
【0096】
上記式中、Eは、NR
6a、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R
6aは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0098】
上記式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、NR
7、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R
7は、前記R
6aと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0100】
(上記式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
(3)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
【0102】
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
【0104】
(5)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
【0106】
上記したA
xの中でも、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、又は炭素数4〜30の芳香族複素環基であることが好ましく、下記に示すいずれかの基であることがより好ましく、
【0109】
下記に示すいずれかの基であることが更に好ましい。
【0111】
A
xが有する環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
8;−C(=O)−OR
8;−SO
2R
6;等が挙げられる。ここでR
8は、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。なかでも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0112】
また、A
xが有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
yにて同じである。)。
【0113】
A
yは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4、−C(=S)NH−R
9又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表し、R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表し、R
9は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。
【0114】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
【0115】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
【0116】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0117】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の炭素数2〜20のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基等が挙げられる。
【0118】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、少なくとも1個がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルコキシ基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−C(=O)−R
7a;−C(=O)−OR
7a;−SO
2R
8a;−SR
10;−SR
10で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。ここで、R
7a及びR
10はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基を表し、R
8aは前記R
4と同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0119】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
7a;−C(=O)−OR
7a;−SO
2R
8a;水酸基;等が挙げられる。ここでR
7a、R
8aは前記と同じ意味を表す。
【0120】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基と同様な置換基が挙げられる。
【0121】
A
yの、−C(=O)−R
3で表される基において、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。これらの具体例は、前記A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0122】
A
yの、−SO
2−R
4で表される基において、R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
R
4の、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数2〜20のアルケニル基の具体例は、前記A
yの、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0123】
A
yの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記A
xで例示したのと同様のものが挙げられる。
【0124】
これらの中でも、A
yとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基で表される基が好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4で表される基が更に好ましい。ここで、R
3、R
4は前記と同じ意味を表す。
【0125】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10が好ましい。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基の置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい。
【0126】
また、A
xとA
yは一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が挙げられる。
【0127】
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
【0129】
として表される部分を示すものである。
【0133】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、A
xが有する芳香環の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0134】
A
xとA
yに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上20以下であるのがより好ましく、6以上18以下であるのが更により好ましい。
【0135】
A
xとA
yの好ましい組み合わせとしては、
(α)A
xが炭素数4〜30の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基であり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10のいずれかである組み合わせ、及び、
(β)A
xとA
yが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成しているもの、
が挙げられる。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0136】
A
xとA
yのより好ましい組み合わせとしては、
(γ)A
xが下記構造を有する基のいずれかであり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10のいずれかである組み合わせである。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0139】
(式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。)
A
xとA
yの特に好ましい組み合わせとしては、
(δ)A
xが下記構造を有する基のいずれかであり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10のいずれかである組合せである。下記式中、Xは前記と同じ意味を表す。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0141】
A
1は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。
なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1、Y
2を便宜上記載している(Y
1、Y
2は、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0143】
これらの中でも、A
1としては、下記に示す式(A11)〜(A25)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A19)、(A23)で表される基がさらに好ましく、式(A11)、(A23)で表される基が特に好ましい。
【0145】
A
1の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記A
Xの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。A
1としては、置換基を有さないものが好ましい。
【0146】
A
2、A
3はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等が挙げられる。
【0147】
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;等が挙げられる。
【0148】
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7-ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5-ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;等が挙げられる。
【0149】
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記A
Xの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0150】
これらの中でも、A
2、A
3としては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A31)〜(A34)
【0152】
で表される基がさらに好ましく、前記式(A32)で表される基が特に好ましい。
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y
1、Y
3(又はY
2、Y
4)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型、トランス型の立体異性体が存在し得る。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A32a)とトランス型の異性体(A32b)が存在し得る。
【0154】
本発明においては、シス型であってもトランス型であっても、あるいはシス型とトランス型の異性体混合物であってもよいが、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0155】
A
4、A
5はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
A
4、A
5の芳香族基は単環のものであっても、多環のものであってもよい。
A
4、A
5の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0157】
上記A
4、A
5の二価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR
8b基;等が挙げられる。ここでR
8bは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0158】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A
4、A
5は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A41)、(A42)及び(A43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A41)で表される基が特に好ましい。
【0160】
Q
1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記A
Xで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Q
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0161】
化合物(I)は、例えば、国際公開第WO2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0162】
〔1.7.3.重合性モノマー〕
組成物(A)は、任意の成分として、重合性モノマーを含有しうる。本願において、「重合性モノマー」とは、重合能を有しモノマーとして働きうる化合物のうち、特に、逆波長分散光重合性液晶化合物以外の化合物をいう。
重合性モノマーとしては、例えば、1分子当たり1以上の重合性基を有するものを用いうる。そのような重合性基を有することにより、光学異方性層の形成に際し重合を達成することができる。重合性モノマーが1分子当たり2以上の重合性基を有する架橋性モノマーである場合、架橋的な重合を達成することができる。かかる重合性基の例としては、化合物(I)中の基Z
1−Y
7−及びZ
2−Y
8−と同様の基を挙げることができ、より具体的には例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基を挙げることができる。
【0163】
重合性モノマーは、それ自体が液晶性のものであってもよく、非液晶性のものであってもよい。ここで、それ自体が「非液晶性」であるとは、当該重合性モノマーそのものを、室温から200℃のいずれの温度に置いた場合にも、配向処理をした基材フィルム上で配向を示さないものをいう。配向を示すかどうかは、偏光顕微鏡のクロスニコル透過観察にてラビング方向を面相で回転させた場合に、明暗のコントラストがあるかどうかで判断する。
【0164】
組成物(A)において、重合性モノマーの配合割合は、逆波長分散光重合性液晶化合物100重量部に対し、通常、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。当該範囲内で、重合性モノマーの配合割合を、所望の逆波長分散特性を示すように適宜調整することにより、逆波長分散特性の精密な制御が容易となる。
重合性モノマーは、既知の製造方法により製造することができる。または、化合物(I)と類似の構造を持つものについては、化合物(I)の製造方法に準じて製造することができる。
【0165】
〔1.7.4.組成物(A)のその他の成分〕
組成物(A)は、光重合性液晶化合物及び重合性モノマーに加えて、必要に応じて、以下に例示するもの等の任意の成分を含みうる。
【0166】
組成物(A)は、光重合開始剤を含みうる。重合開始剤としては、組成物(A)中の、光重合性液晶化合物、重合性モノマー及びその他の重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用しうる。
【0167】
ラジカル重合開始剤の例としては、光照射により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤が挙げられる。
【0168】
光ラジカル発生剤としては、例えば、国際公開第WO2012/147904号に記載される、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
【0169】
前記アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0170】
また、前記カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0171】
市販の光重合開始剤の具体的な例としては、商品名「Irgacure379EG」(BASF社製)等が挙げられる。
【0172】
これらの重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を組合せて用いることができる。
組成物(A)において、重合開始剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0173】
組成物(A)は、表面張力を調整するための、界面活性剤を含みうる。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いうる。例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤を用いうる。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社PolyFoxの「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−3320」、「PF−651」、「PF−652」;ネオス社フタージェントの「FTX−209F」、「FTX−208G」、「FTX−204D」、「601AD」;セイミケミカル社サーフロンの「KH−40」、「S−420」等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。組成物(A)において、界面活性剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0174】
組成物(A)は、有機溶媒等の溶媒を含みうる。かかる有機溶媒の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60〜250℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましい。溶媒の使用量は、重合性化合物100重量部に対し、通常、100〜1000重量部である。
【0175】
組成物(A)は、さらに、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。本発明の重合性組成物において、かかる任意の添加剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、各々0.1〜20重量部である。
【0176】
組成物(A)は、通常、上に述べた成分を混合することにより、調製することができる。
【0177】
〔2.光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、被着体、接着層、及び光学異方性層をこの順に備える。即ち、本発明の光学フィルムは、被着体の層と、光学異方性層と、それらを接着する接着層との三つの層が、この順に重なった構造を備える。
【0178】
本発明の光学フィルムは、1層の被着体、1層の接着層、及び1層の光学異方性層のみからなり、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)の層構成を有するものであってもよく、それより多い層を有していてもよい。例えば、本発明の光学フィルムは、1層の被着体、2層の接着層、及び2層の光学異方性層からなり、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)/(接着層)/(光学異方性層)の層構成を有するものであってもよい。
【0179】
〔2.1.被着体〕
被着体は、光学異方性層と共に光学的な効果を発現しうる任意の材料としうる。好ましい例において、被着体は偏光フィルムである。被着体として偏光フィルムを備え、且つ特定の位相差を有する光学異方性層を備えることにより、本発明の光学フィルムは円偏光板として機能しうる。
【0180】
偏光フィルムは、偏光機能を発現する偏光子を備え、さらに必要に応じて偏光子を保護する保護フィルム等を備えうる。偏光フィルムの偏光子としては、通常直線偏光子を用いうる。直線偏光子としては、液晶表示装置、及びその他の光学装置等の装置に用いられている既知の偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、及びポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものが挙げられる。直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0181】
本発明に用いる偏光子に自然光を入射させると一方の偏光だけが透過する。本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
【0182】
被着体の他の例としては、等方性のフィルムが挙げられる。このような等方性のフィルムの材料の例としては、上に述べた基材フィルムの材料と同様のものが挙げられる。
【0183】
被着体のさらに他の例としては、光学異方性を有するフィルムが挙げられる。より具体的には、ポジティブCプレート、及びネガティブCプレートが挙げられる。ポジティブCプレートとしては、例えば、特許2818983号公報や特開平6−88909号公報等に記載の延伸フィルムや、特開2010−126583号公報等に記載のポリ(N−ビニルカルバゾール)とポリスチレンの共重合体を用いうる。また、ネガティブCプレートとしては、例えば、特開2006−285208号公報等に記載のセルロース系樹脂フィルム、延伸フィルムや液晶化合物を用いうる。
【0184】
〔2.2.接着層〕
本発明の光学フィルムにおいて、接着層は、光硬化性接着剤を硬化させてなる層である。光硬化性接着剤としては、重合体又は反応性の単量体を含んだものを用いうる。光硬化性接着剤はさらに、必要に応じて溶媒、光重合開始剤、その他の添加剤等の一以上を含みうる。
【0185】
光硬化性接着剤は、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光を照射すると硬化しうる接着剤である。中でも、操作が簡便なことから、紫外線で硬化しうる接着剤が好ましい。
【0186】
好ましい態様において、光硬化性接着剤は、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを50重量%以上、より好ましくは70重量%以上含む。本願において、「接着剤が、ある割合で単量体を含む」という場合、当該単量体の割合は、当該単量体が単量体のまま存在しているもの、当該単量体が既に重合して重合体の一部となっているものの両方の合計の割合である。水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100重量%以下としうる。
【0187】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種類で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせて使用する場合の含有量は、合計の割合である。
【0188】
光硬化性接着剤が含みうる、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー以外の単量体の例としては、単官能、又は多官能の水酸基を有しない(メタ)アクリレートモノマー、及び1分子あたり1以上のエポキシ基を含有する化合物が挙げられる。前記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー以外の単量体の割合は、特に制限されないが、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0189】
光硬化性接着剤は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例としては、光重合開始剤、架橋剤、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー(不活性重合体)、粘度調整剤、近赤外線吸収材等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0190】
光重合開始剤の例としては、ラジカル開始剤及びカチオン開始剤が挙げられる。カチオン開始剤の例としてはIrgacure250(ジアリルヨードニウム塩、BASF社製)が挙げられる。ラジカル開始剤の例としてIrgacure184、Irgacure819、Irgacure2959、(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0191】
接着層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。接着層の厚みを前記範囲内とすることにより、光学フィルムの光学的性質を損ねずに、良好な接着を達成しうる。
【0192】
〔2.3.光学フィルムの光学異方性層〕
本発明の光学フィルムにおける光学異方性層は、光重合性液晶化合物を含む組成物を硬化してなる層であり、光重合性液晶化合物の割合が25重量%以下である。このような光学異方性層は、上に述べた、本発明の光学フィルム用転写体の光学異方性層を転写することにより、得ることができる。したがって、本発明の光学フィルムにおける光学異方性層の好ましい形成方法、光学的性質、形状、材料等の特徴は、上に述べた、本発明の光学フィルム用転写体の光学異方性層のそれと同様である。
【0193】
〔2.4.円偏光板の具体的な態様〕
本発明の光学フィルムが円偏光板として機能しうるものである場合、かかる円偏光板のより具体的な態様としては、下記の2つの態様が挙げられる。
円偏光板(i):被着体が直線偏光子であり、光学異方性層がλ/4波長板であり、直線偏光子の透過軸または吸収軸に対するλ/4波長板の遅相軸の方向が45°またはそれに近い角度(例えば45°±5°、好ましくは45°±4°、より好ましくは45°±3°)である、円偏光板。
円偏光板(ii):長尺状のλ/4波長板と、長尺状のλ/2波長板と、長尺状の直線偏光子とを、ロールツーロールで貼合してなる円偏光板であって、長尺状のλ/4波長板、長尺状のλ/2波長板、またはこれらの両方が、前記本発明の光学フィルム用転写体から剥離した光学異方性層である、円偏光板。
【0194】
円偏光板(ii)において、λ/4波長板の遅相軸と、λ/2波長板の遅相軸と、直線偏光子の吸収軸との関係は、既知の様々な関係としうる。例えば、λ/4波長板及びλ/2波長板の両方として本発明の光学フィルム用転写体の光学異方性層を用いる場合、偏光子の吸収軸の方向に対するλ/2波長板の遅相軸の方向が15°またはそれに近い角度(例えば15°±5°、好ましくは15°±°4、より好ましくは15°±3°)であり、偏光子の吸収軸の方向に対するλ/4波長板の遅相軸の方向が75°またはそれに近い角度(例えば75°±5°、好ましくは75°±°4、より好ましくは75°±3°)である関係としうる。このような態様を有することにより、円偏光板を、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用の広帯域反射防止フィルムとして用いることができる。
【0195】
本発明の光学フィルムを円偏光板とし、表示装置に適用した場合、接着剤による位相差の変化が少ないため、位相差の値が最適値から外れることが少なく、したがって、位相差変化による色味の変化(表示面が青く見えたり、赤く見えたりする現象)を低減しうる。
【0196】
本発明にかかるある製品(光学フィルム用転写体、円偏光板、表示装置等)において、面内の光学軸(遅相軸、吸収軸等)の方向及び幾何学的方向(フィルムの長尺方向及び短尺方向等)の角度関係は、ある方向のシフトを正、他の方向のシフトを負として規定され、当該正及び負の方向は、当該製品内の構成要素において共通に規定される。例えば、ある円偏光板において、「直線偏光子の吸収軸の方向に対するλ/2波長板の遅相軸の方向が15°であり直線偏光子の吸収軸の方向に対するλ/4波長板の遅相軸の方向が75°である」とは、下記の2通りの場合を表す:
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の吸収軸の方向から時計周りに15°シフトし、且つλ/4波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の吸収軸の方向から時計周りに75°シフトしている。
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の吸収軸の方向から反時計周りに15°シフトし、且つλ/4波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の吸収軸の方向から反時計周りに75°シフトしている。
【0197】
〔2.5.光学フィルムの任意の構成要素〕
本発明の光学フィルムは、必要に応じてその他の任意の層を有していてもよい。任意の層の例としては、他の部材と接着するための接着層、フィルムの滑り性を良くするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
【0198】
〔3.有機エレクトロルミネッセンス表示装置〕
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記本発明の光学フィルムを備える。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、光学フィルムは好ましくは、上に述べた円偏光板(i)(ii)等の、円偏光板として機能しうるフィルムである。かかる円偏光板の用途の例としては、有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置の反射防止フィルムとしての用途が挙げられる。即ち、表示装置の表面に、上に述べた円偏光板(i)(ii)等の構成を有する円偏光板を、直線偏光子側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきなどの不所望な減少を抑制しうる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが光学異方性層を通過することにより円偏光となる。ここでいう円偏光としては、実質的に反射防止機能を発現する範囲であれば楕円偏光も包含される。円偏光は、装置内の光を反射する構成要素(有機エレクトロルミネッセンス素子中の反射電極等)により反射され、再び光学異方性層を通過することにより、入射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に偏光軸を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される。特に、光学異方性層が逆波長分散性を有する場合、及び円偏光板が上に述べた円偏光板(ii)である場合においては、広帯域での反射防止の機能が達成される。
【0199】
〔4.光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムは、好ましくは下記工程(A)〜(E)を含む製造方法により製造しうる。
工程(A):基材フィルムと、基材フィルム上に形成された光重合性液晶化合物を含む組成物を硬化してなる光学異方性層とを含む光学フィルム用転写体を調製する工程。
工程(B):被着体に光硬化性接着剤を塗布し、光硬化性接着剤の層を形成する。
工程(C):光硬化性接着剤の層に、光学フィルム用転写体を貼合する。
工程(D):光硬化性接着剤の層に光を照射し、光硬化性接着剤の層を硬化させ接着層とし、被着体、接着層、光学異方性層及び基材フィルムをこの順に有する積層体を得る。
工程(E):積層体から基材フィルムを剥離する。
以下において、この方法を、本発明の製造方法として説明する。
【0200】
工程(A)は、上に述べた本発明の光学フィルム用転写体を製造することにより行いうる。
【0201】
工程(B)は、上に述べた被着体に、上に述べた光硬化性接着剤を塗布することにより行いうる。被着体は、好ましくは偏光フィルムである。被着体として偏光フィルムを用い、且つ光学異方性層として特定の位相差を有するものを用いることにより、円偏光板として機能しうる光学フィルムを製造することができる。光硬化性接着剤の塗布厚みは、硬化後の接着層の厚みが所望の厚さとなるよう適宜調整しうる。
【0202】
工程(C)は、工程(B)で得られた光硬化性接着剤の層に、工程(A)で得られた光学フィルム用転写体を貼合することにより行いうる。工程(C)では、光硬化性接着剤の層と、光学フィルム用転写体の光学異方性層側の面が接するよう、貼合を行う。
【0203】
工程(D)は、工程(C)の貼合が完了した後直ちに行うことが好ましい。工程(C)の貼合が完了してから工程(D)を行うまでの時間を短くすることにより、光硬化性接着剤と光学異方性層との接触による、光学異方性層の位相差の低下の量を少なくすることができる。具体的には、工程(C)の貼合が完了してから工程(D)を行うまでの時間は、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下としうる。但し、本発明の光学フィルムの製造方法では、上に述べた特定の光学異方性層を用いるため、工程(C)の貼合が完了してから工程(D)を行うまでの時間が長くても、光学異方性層の位相差の低下が少ない製造を行いうる。
【0204】
工程(D)において照射する光の種類及びその照射量並びに温度等の条件は、光硬化性接着剤の層が硬化し接着層となるよう適宜選択及び調節しうる。具体的には例えば、光硬化性接着剤が紫外線硬化性接着剤の場合、照射する光の種類は紫外線としうる。より具体的な例として、照射は、高圧水銀灯を用い、室温にて、300mW/cm
2、200mJ/cm
2の条件で行いうる。
【0205】
工程(D)において、光の照射は、被着体側から行ってもよく、基材フィルム側から行ってもよい。被着体が偏光フィルムである場合のように、被着体の光透過率が低い場合であっても効率的に光照射を行う観点からは、光の照射は、基材フィルム側から行うことが好ましい。
【0206】
工程(D)を行うことにより、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)/(基材フィルム)の層構成を有する積層体を得る。工程(E)においてこの積層体から基材フィルムを剥離することにより、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)の層構成を有する積層体が得られる。工程(E)で得られた積層体は、そのまま、本発明の光学フィルムとしてもよい。または例えば、工程(E)で得られた積層体に、必要に応じて任意の層を貼合して、それを本発明の光学フィルムとしてもよい。より具体的には例えば、接着層を介して光学異方性層をさらに貼合し、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)/(接着層)/(光学異方性層)の層構成を有する積層体を得て、これを本発明の光学フィルムとしうる。
【実施例】
【0207】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0208】
[測定方法]
〔残留モノマー割合の測定方法〕
各実施例及び比較例で用いた光重合性液晶化合物を溶媒(1,3−ジオキソラン)に溶解し、様々な濃度の検量線作製用の溶液を得た。これらの溶液をHPLCに供し、検量線を作成した。
各実施例及び比較例で得られた光学フィルム用転写体から、光学異方性層の10cm×10cm分を、スパチュラで削り取り、バイアルに入れ秤量した。さらに、溶媒(1,3−ジオキソラン)1gを入れ、24時間静置し、0.45μmフィルターで1回濾過することにより未反応モノマーを抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液をHPLCにて分析し、測定結果を検量線と対照することにより、残留モノマー割合を求めた。
【0209】
HPLCの条件は下記の通りとした。
カラム:LC1200(Agilent Technologies社製)
カラム温度:40℃
キャリア(水:アセトニトリル)
0min(水:アセトニトリル=5:95)から5min(水:アセトニトリル=0:100)まで直線濃度勾配、その後25min(水:アセトニトリル=0:100)
残留モノマーの流出時間:13.2min付近
【0210】
〔位相差低下率の測定〕
各実施例及び比較例で得られた光学フィルム用転写体の光学異方性層側の面にコロナ処理を施した。また、ガラス板の面にコロナ処理を施した。これらのコロナ処理面を貼合し、さらに基材フィルムを剥離することにより、光学異方性層を基材フィルムからガラス板に転写し、光学異方性層及びガラス板を有する積層体を得た。
得られた積層体上の光学異方性層の550nmにおける面内方向の位相差Re
0を測定した。測定には、位相差計(商品名「AxoScan」、Axometrics社製)を用いた。
その後、積層体の光学異方性層側の面に、各実施例及び比較例で用いた接着剤を塗布した。接着剤の塗布厚みは、1mmとした。塗布10分間経過後に、再び、光学異方性層の550nmにおける面内方向の位相差Re
1を測定した。式((Re
0−Re
1)/Re
0)×100により、位相差低下率(%)を求めた。
【0211】
〔製造例1〕
〔紫外線硬化性接着剤(A)の配合〕
分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーである「2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート」(商品名:共栄社化学株式会社製ライトエステルG−201P)を70部、水酸基を含まないアクリレートモノマーである「3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート」(商品名:共栄社化学株式会社製ライトアクリレートMPD−A)を27部、及び光重合開始剤Irgacure2959(商品名:BASF社製)を3部仕込み、十分に撹拌を行い、十分に脱泡を行った。これにより、紫外線硬化性接着剤(A)を得た。
【0212】
〔製造例2〕
〔紫外線硬化性接着剤(B)の配合〕
分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーである「2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート」を7部、水酸基を含まないアクリレートモノマーである「3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート」を90部、及び光重合開始剤Irgacure2959を3部仕込み、十分に撹拌を行い、十分に脱泡を行った。これにより、紫外線硬化性接着剤(B)を得た。
【0213】
〔実施例1〕
(1−1.液晶組成物の調製)
下記式で表される構造を有する光重合性液晶化合物(B1)を100部、光重合開始剤(商品名「Irgacure379EG」BASF社製)を3部、及び界面活性剤(商品名「フタージェント601AD」ネオス社製)を0.3部量り取り、さらに、希釈溶媒(シクロペンタノン:1,3−ジオキソラン=1:1)を、固形分が22%になるように加え、50℃に加温し溶解させた。得られた混合物を、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、液晶組成物を調製した。
【0214】
【化27】
【0215】
(1−2.光学フィルム用転写体の製造)
基材フィルムとして、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の、斜め延伸された長尺のフィルム(製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム、Tg126℃」、日本ゼオン株式会社製、厚さ47μm、波長550nmにおける面内方向の位相差Re141nm、延伸方向は短尺方向に対して45°の方向)を用意した。
基材フィルム上に、(1−1)で得られた液晶組成物を、ダイで塗布し、液晶組成物の層を形成した。液晶組成物の層の厚みは、得られる光学異方性層の厚みが2.3μm程度になるように調整した。その後、110℃オーブンで2分ほど乾燥させて、液晶組成物中の溶媒を蒸発させて、同時に光重合性液晶化合物を基材延伸軸方向に配向させた。乾燥された液晶組成物の層に、紫外線照射装置により紫外線を照射した。照射は、窒素雰囲気下で行い、基材フィルムを、60℃のバックロールに密着させることにより、バックロールに密着させた状態で行った。これにより光重合性液晶化合物を硬化させ、光学異方性層を形成し、基材フィルム及び光学異方性層を有する光学フィルム用転写体を製造した。
【0216】
(1−3.光学フィルム用転写体の評価)
得られた光学フィルム用転写体について、光学異方性層中の残留モノマー割合及び位相差低下率を測定した。結果を表1に示す。
位相差低下率測定用の接着剤としては、製造例1で調製した紫外線硬化性接着剤(A)を用いた。
【0217】
(1−4.光学フィルムの製造)
被着体として偏光フィルム(サンリッツ社製、商品名「HLC2−5618S」、厚さ180μm、短尺方向に対して0°の方向に透過軸を有する)を用意した。偏光フィルムの塗布側の面にコロナ処理を施した。また、(1−2)で得た光学フィルム用転写体の、光学異方性層側の面にコロナ処理を施した。偏光フィルムのコロナ処理面に、製造例1で得られた紫外線硬化性接着剤(A)をバーコーターで塗布し、接着剤(A)の層を形成した。塗布厚みは、約5μmとした。その後、接着剤(A)の層上に、(1−2)で得た光学フィルム用転写体の、コロナ処理をした光学異方性層側の面を載せ、ラミネーターにより貼合した。貼合の際の加圧により、接着剤(A)の層の厚みを1〜2μm程度とした。その後直ちに、空気環境下にて、基材フィルム側から、メタルハライド光源により、ピーク照度100mW/cm
2、積算光量3000mJ/cm
2の条件で紫外線を照射した。これにより、接着剤(A)の層が硬化してなる接着層を形成し、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)/(基材フィルム)の層構成を有する積層体を得た。
【0218】
続いて、前記積層体から、基材フィルムを剥離した。これにより、(被着体)/(接着層)/(光学異方性層)の層構成を有する光学フィルムを得た。得られた光学フィルムにおける光学異方性層は、逆波長分散性を有しており、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0219】
〔実施例2〕
(1−2)の光学フィルム用転写体の製造において、下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。
・ダイに代えて塗工バーを用いて塗布を行なった。
・紫外線照射に際して、基材フィルムをバックロールに密着させる代わりに、基材フィルムをSUS板(60℃に加熱)にテープで固定し、その状態で紫外線照射を行った。
光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。基材フィルムをバックロールに密着させる態様を変更したことにより、紫外線照射時の温度条件が異なり、その結果、得られた光学異方性層中の残留モノマー割合は、実施例1のそれと異なっていた。
得られた光学フィルムにおける光学異方性層は、逆波長分散性を有しており、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0220】
〔実施例3〕
(1−2)の光学フィルム用転写体の製造において、バックロールの温度を25℃に変更した他は実施例1と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。バックロールの温度を変更したことにより、紫外線照射時の温度条件が異なり、その結果、得られた光学異方性層中の残留モノマー割合は、実施例1のそれと異なっていた。
得られた光学フィルムに光学異方性層は、逆波長分散性を有しており、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0221】
〔比較例1〕
(1−2)の光学フィルム用転写体の製造において、下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。
・ダイに代えて塗工バーを用いて塗布を行った。
・紫外線照射に際して、基材フィルムをバックロールに密着させる代わりに、基材フィルムの面に水を塗布し、SUS板(25℃に加熱)に水貼りし、重合熱が速やかに逃げていき液晶組成物の層の温度が上がらなくなる状態とし、その状態で紫外線照射を行った。
・紫外線の照射を、窒素雰囲気ではなく空気中で行った。
光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。光重合性液晶化合物の硬化の条件を変更したことにより、得られた光学異方性層中の残留モノマー割合は、実施例1のそれと異なっていた。
【0222】
〔実施例4〕
接着剤として、紫外線硬化性接着剤(A)に代えて製造例2で得られた紫外線硬化性接着剤(B)を用いた他は実施例1と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。
得られた光学フィルムにおける光学異方性層は、逆波長分散性を有しており、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0223】
〔実施例5〕
(1−1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物として、(B1)に代えて、下記式で表される構造を有する光重合性液晶化合物(A1)(商品名「LC242」BASF社製)を用いた他は実施例1と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。
【0224】
【化28】
【0225】
得られた光学フィルムにおける光学異方性層は、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0226】
〔実施例6〕
接着剤として、接着剤Aに代えて接着剤Bを用いた他は実施例5と同様にして、光学フィルム用転写体を製造し評価し、さらに光学フィルムを製造した。光学フィルム用転写体の評価結果を表1に示す。
得られた光学フィルムにおける光学異方性層は、硬化液晶分子が水平方向に配向していた。
【0227】
〔比較例2〕
比較例1において、紫外線の照射を、空気中ではなく窒素雰囲気で行ない、残留モノマー量は27%であった。その場合、位相差低下率は47%であった。
【0228】
実施例及び比較例の評価結果を、表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
※OHモノマー割合:接着剤中の重合体を構成する単量体単位のうちの、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの割合。
【0231】
[検討]
以上の実施例及び比較例の結果から明らかな通り、光学異方性層の残留モノマー割合が本願に規定する範囲内であった本願実施例の場合、位相差低下率を低減し、有用な光学フィルム用転写体及び光学フィルムを製造できた。
【0232】
また、光硬化性接着剤として、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを多く含むものを用いた場合、残留モノマー割合が比較的高い場合であっても、位相差低下率を比較的低い値に抑制することができた。