特許第6897675号(P6897675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6897675-自己粘着性層 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897675
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】自己粘着性層
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210628BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20210628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210628BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09J133/14
   B32B27/00 M
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-514549(P2018-514549)
(86)(22)【出願日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2017015904
(87)【国際公開番号】WO2017188120
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-91426(P2016-91426)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】曽根 篤
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−176693(JP,A)
【文献】 特開平01−115982(JP,A)
【文献】 特開2015−086339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、並びに、架橋剤及び/又は開始剤を含む樹脂組成物の発泡体からなる自己粘着性層であって、
前記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤であり、
光沢度が34.4より大きく56.5以下であり、
ホルムアルデヒド発生量が2ppm以下である、自己粘着性層。
【請求項2】
前記樹脂が(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂である、請求項1に記載の自己粘着性層。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度が−10℃以下である、請求項2に記載の自己粘着性層。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂がN−メチロール基を有し、且つ、ゲル分率が70%以下である、請求項2又は3に記載の自己粘着性層。
【請求項5】
前記発泡体の発泡倍率が1.1倍以上4倍以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自己粘着性層。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂100質量部と、前記カルボジイミド系架橋剤0.1〜20質量部と、を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の自己粘着性層。
【請求項7】
厚みが0.005mm以上0.5mm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の自己粘着性層。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の自己粘着性層と、基材からなる支持体層と、を有する自己粘着性積層体。
【請求項9】
前記基材がプラスチックシート又は紙基材である、請求項に記載の自己粘着性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着性層及び自己粘着性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窓ガラス等の平滑な被着体に貼り付けて使用する貼着シートとして、自己粘着性を有するシート状の部材(以下、「自己粘着性シート」又は「自己粘着性層」という。)が利用されている。自己粘着性シートの粘着様式には、大別してシートの材質自体の粘着性を利用した糊粘着と、シートに形成される微細な空孔を利用した吸盤効果による被着体への吸着とがあり、両者の粘着様式を組み合わせて粘着する自己粘着性シートも利用されている。自己粘着性シートは、壁紙等の室内装飾材料をはじめとする建築用装飾材料、ポスターやステッカー等の広告宣伝用貼付材料等、種々の用途に好適に使用される。これらの用途に用いるため、通常、自己粘着性層には樹脂フィルム等の基材が積層され、該基材に印刷等の装飾が施される。以下、自己粘着性層と、基材からなる支持体層と、を有する積層体を「自己粘着性積層体」という。
【0003】
自己粘着性積層体として、例えば特許文献1には、分子中にN−メチロール基を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、及び、オキサゾリン架橋剤を含有してなる樹脂組成物を発泡させた発泡体を、基材上にコーティングし、次いで加熱乾燥することにより発泡体を固化させることにより得られるシートが開示されている。また、特許文献1には、当該シートがホルムアルデヒドを全く又は殆ど発生しないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−176693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己粘着性層には、平滑な被着体に貼り付けた際に空気溜まりが発生し難い性質、いわゆる「エア抜け性」が要求される。特許文献1に記載のシートでは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を使用していることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のゲル分率が上昇してシートの表面に不規則な凹凸が形成され易く、エア抜け性が不十分となる場合があった。
【0006】
他方、自己粘着性層には、従来、使用時にシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを発生させる材料が使用されることが多く、その発生量の低減が強く求められている。特許文献1に記載のシートによれば、ホルムアルデヒドを全く又は殆ど発生させないことが可能であるが、後発の自己粘着性層にも、同様にホルムアルデヒド発生量の低減が求められている。
【0007】
そこで本発明は、エア抜け性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量が低減された自己粘着性層及び自己粘着性積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、自己粘着性層の平滑性の指標であるシート表面の光沢度が所定の範囲内にあることにより、エア抜け性を高めることができ、且つ、これをホルムアルデヒドの発生量を低減しつつ実現可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の態様は、樹脂、並びに、架橋剤及び/又は開始剤を含む樹脂組成物の反応体からなる自己粘着性層であって、光沢度が33以上90以下であり、ホルムアルデヒド発生量が2ppm以下である、自己粘着性層である。
【0010】
本発明において、「樹脂組成物の反応体」とは、少なくとも、樹脂組成物中に含まれる樹脂を構成する重合体の分子内又は分子間に結合構造が形成されている結合体を意味する。
【0011】
本発明において、「光沢度」とは、JIS Z 8741に準拠して、入射角60°で測定される光沢度を意味する。
【0012】
本発明において、「ホルムアルデヒド発生量」とは、以下の方法により測定されるホルムアルデヒド濃度を意味する。
本発明の自己粘着性層にセパレーターフィルムを貼り付けた後、200mm×200mmのサイズに切り出した試験片を用意する。試験片を容積5Lのテドラーバッグに入れ、密閉する。その中に2Lの空気を封入し、23℃,50%RHに設定した恒温槽内で6時間放置した後、検知管(ガステック社製、No.91L)にてバッグ内のホルムアルデヒド濃度(ppm)を測定する。
【0013】
本発明の第1の態様において、上記樹脂が(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂であることが好ましい。本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。
【0014】
本発明の第1の態様において、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度が−10℃以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の態様において、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂がN−メチロール基を有し、且つ、ゲル分率が70%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様において、上記樹脂組成物が発泡体であることが好ましい。
【0017】
本発明の第1の態様において、上記発泡体の発泡倍率が1.1倍以上4倍以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、上記架橋剤がカルボジイミド系架橋剤であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様において、上記樹脂組成物が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂100質量部と、カルボジイミド系架橋剤0.1〜20質量部と、を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の第1の態様に係る自己粘着性層は、厚みが0.005mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様に係る自己粘着性層と、基材からなる支持体層と、を有する自己粘着性積層体である。
【0022】
本発明の第2の態様において、上記基材がプラスチックシート又は紙基材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エア抜け性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量が低減された自己粘着性層及び自己粘着性積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の自己粘着性層の製造方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
図2】実施例及び比較例で用いた塗工機、上部乾燥炉及び架橋炉の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0026】
1.自己粘着性層
本発明の自己粘着性層は、樹脂、並びに、架橋剤及び/又は開始剤を含む樹脂組成物の反応体からなる自己粘着性層であって、光沢度が33以上90以下であり、ホルムアルデヒド発生量が2ppm以下である。
【0027】
<諸特性>
本発明の自己粘着性層の光沢度は、33以上90以下であり、37以上90以下であることが好ましく、45以上90以下であることがより好ましい。光沢度が上記範囲内にあることにより、エア抜け性に優れたものとすることができる。
【0028】
本発明の自己粘着性層のホルムアルデヒド発生量は2ppm以下であり、1ppm以下であることが好ましく、0.5ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。ホルムアルデヒド発生量が上記上限値以下であることにより、本発明の自己粘着性層をホルムアルデヒドの発生が好ましくない場所や用途に好適に使用することができる。
【0029】
<樹脂>
本発明に用いる樹脂は、本発明の自己粘着性層の光沢度及びホルムアルデヒド発生量を上記適切な範囲内とすることができるものであれば特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、UV/EB硬化性樹脂、オレフィン系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられ、中でも各種機械的強度や耐候性が優れる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましい。
【0030】
((メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂)
本発明に用いることができる(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度は−10℃以下であることが好ましく、−13℃以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度を上記上限値以下とすることによって、後述する(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のゲル分率を所定の上限値以下とし易くなり、結果として適切な自着力を有し、且つ、平滑性に優れた自己粘着性層及び自己粘着性積層体を作製し易くなる。特に下限はないが−40℃以上であることが好ましい。これ以下になると、粘着性が増し、自着力が増し、層強度が弱くなる。なお、本発明において、「自着力」とは、自己粘着性層と被着体との剥離強度のことであり、「層強度」とは、自己粘着性層自身の破壊強度のことである。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体からの単量体単位50質量%以上とこれと共重合可能な単量体からの単量体単位50質量%以下とからなり、(メタ)アクリル酸エステル単量体からの単量体単位70質量%以上とこれと共重合可能な単量体からの単量体単位30質量%以下とからなることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体からの単量体単位80質量%以上とこれと共重合可能な単量体からの単量体単位20質量%以下とからなることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体からの単量体単位の含有量を上記範囲内とすることによって、適度な粘着性を付与することが可能となる。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、N−メチロール基を有することが好ましい。かかる形態において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂が有するN−メチロール基は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な単量体単位に含まれることが好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に含まれていてもよい。
【0032】
本発明に用いることができる(メタ)アクリル酸エステル単量体は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度を−10℃以下にし易くする観点から、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位を含有することが好ましい。
【0033】
上記ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体は特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸n−プロピル(同−37℃)、アクリル酸n−ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸n−ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸n−ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸n−オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、メタクリル酸n−オクチル(同−25℃)、メタクリル酸n−デシル(同−49℃)などの、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸エトキシメチル(同−50℃)などの、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;などを挙げることができる。中でも、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度を−10℃以下に調整可能であれば、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸n−プロピル(同25℃)、メタクリル酸n−ブチル(同20℃)などを用いてもよい。
【0034】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な単量体(以下、「共重合用単量体」という。)には、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のN−メチロール基を有する単量体を使用することが好ましい。N−メチロール基を有する単量体を使用することにより、層強度が増し、基材との密着性も上昇する。結果として適切な自着力を有し、且つ、平滑性に優れた自己粘着性層及び自己粘着性積層体を作製し易くなる。かかる観点から、N−メチロール基を有する単量体の使用割合は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を100質量%として、N−メチロール基を有する単量体から導入される単量体単位が、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
共重合用単量体には、上記N−メチロール基を有する単量体に代えて、又はN−メチロール基を有する単量体に加えて、他の単量体を使用してもよい。N−メチロール基を有する単量体以外に使用される単量体は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度を−10℃以下にできるものであれば特に限定されないが、その具体例として、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体、その他官能基を有する単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0038】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、及びビニルトルエンなどを挙げることができる。
【0039】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0040】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0041】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0042】
共重合用単量体には、共重合体内部間又は共重合体間の架橋を効率的に行わせることを目的として、官能基を有する単量体を使用してもよい。
ここでいう官能基としては、有機酸基、水酸基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、エポキシ基等を挙げることができる。
【0043】
有機酸基を有する単量体は特に限定されないが、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができる。また、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0044】
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
【0045】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
【0046】
有機酸基を有する単量体を使用する場合、それから導かれる単量体単位が(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を100質量%として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に供する。有機酸基を有する単量体の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、共重合体の架橋が過度に進行して自己粘着性層及び自己粘着性積層体の自己粘着性が損なわれることを防止し易くなる。
【0047】
なお、有機酸基を有する単量体単位は、有機酸基を有する単量体の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0048】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0049】
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
【0050】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
【0051】
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0052】
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体を使用する場合、それから導かれる単量体単位が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を100質量%として、10質量%以下となるような量で重合に使用することが好ましい。有機酸基以外の官能基の使用量が10質量%以下であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、共重合体の架橋が過度に進行して自己粘着性層及び自己粘着性積層体の自己粘着性が損なわれることを防止し易くなる。
【0053】
また、共重合用単量体として、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体を併用してもよい。多官能性単量体は、該不飽和結合を末端に有することが好ましい。このような多官能性単量体を用いることによって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂に分子内及び/又は分子間架橋を導入し、凝集力を高めることができる。
【0054】
多官能性単量体としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。多官能性単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合用単量体とを共重合することによって得ることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を得る際の重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。重合に用いる重合開始剤、乳化剤、分散剤等の種類や量にも特に制限はない。重合に際して、単量体、重合開始剤、乳化剤、分散剤等の添加方法にも特に制限はない。また、重合温度や圧力、撹拌条件等にも制限はない。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂の性状は、固体状であっても分散体状であってもよいが、乳化重合や分散重合でエマルション又はディスパージョンとして得たものをそのまま使用すると、架橋剤や導電性化合物と混合する上で操作が容易であり、また、得られたエマルション又はディスパージョンを発泡させるにも都合がよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のゲル分率は70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましい。ゲル分率が上記範囲であることにより、適切な自着力を有し、且つ、平滑性に優れた自己粘着性層及び自己粘着性積層体を作製し易くなる。
本発明におけるゲル分率とは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂のサンプル500mgを酢酸エチル100ml中に常温で3日間浸漬した後、不溶解分を80メッシュの金網で濾過し、15時間常温下で風乾し、その後100℃で2時間乾燥させ、不溶解分の乾燥質量を測定し、次式により求められる値である。
ゲル分率(質量%)=((酢酸エチル浸漬後の不溶解分の乾燥質量)/(酢酸エチル浸漬前のサンプル質量))×100
【0057】
<架橋剤又は開始剤>
本発明に用いる架橋剤又は開始剤は、本発明の自己粘着性層の光沢度及びホルムアルデヒド発生量を上記適切な範囲内とすることができるものであれば、特に限定されず、使用する樹脂や架橋方法に応じて適宜選択することができる。例えば、カルボジイミド系架橋剤;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂;アルデヒドやアクロレイン等のエチレンイミン誘導体等のアジリジン系化合物;トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;オキサゾリン系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、スルホニウム系、ヨードニウム系等の光開始剤等が挙げられる。これらは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。なお、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂等のホルムアルデヒドを発生する原因となる架橋剤は使用しないことが好ましい。
中でも、上記樹脂としてN−メチロール基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を用いる場合には、優れた強度を発現させるとともに、使用時のホルムアルデヒドの発生量を低減させる観点から、カルボジイミド系架橋剤を用いることが好ましい。
【0058】
(カルボジイミド系架橋剤)
本発明に用いることができるカルボジイミド系架橋剤は、特に限定されないが、2以上のカルボジイミド基を一分子内に有する化合物が好ましく用いられる。このような化合物としては、公知のカルボジイミド化合物を用いることができる。
【0059】
上記公知のカルボジイミド化合物は、合成してもよく、市販品を使用してもよい。市販品のカルボジイミド化合物としては、例えば、DIC社製の「DICNAL HX」、日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(登録商標)」などが挙げられる。カルボジイミド化合物を合成する場合には、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、ポリイソシアネートを脱炭酸縮合反応によりカルボジイミド化したポリカルボジイミド化合物を使用することができる。
【0060】
原料ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12−ジイソシアネートデカン(DDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、及び2,4−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)などが使用でき、0〜200℃の範囲内で不活性気体の気流下または、バブリング下、任意の時間攪拌、混合しておき、その後カルボジイミド化触媒とともに加え、攪拌、混合することにより合成することができる。
【0061】
ここで、上記カルボジイミド化触媒としては有機リン系化合物が好ましく、特に活性の面からホスホレンオキシド類が好ましい。具体的には3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド及びこれらの二重結合異性体などが挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂とカルボジイミド系架橋剤とを併用する形態において、カルボジイミド系架橋剤は、それが有するカルボジイミド基と上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂中の官能基との反応により、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の分子内又は分子間に架橋構造を形成する。カルボジイミド系架橋剤は、特に低温での架橋効果に優れ、強度や自己粘着性に優れた自己粘着性層を形成することができるので好ましい。
従来、強度を高める目的で、N−メチロール基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂とメラミン系架橋剤とを併用することが多かった。しかしながら、N−メチロール基を有するアクリル酸エステル共重合とメラミン系架橋剤とを併用する場合、架橋反応時に多量のホルムアルデヒドが発生し、自己粘着性層にも残留するため、自己粘着性層の使用時に、ホルムアルデヒドが発生する原因となっていた。カルボジイミド系架橋剤を用いることにより、N−メチロール基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂を用いる場合でも、優れた強度を発現させるとともに、使用時のホルムアルデヒドの発生量を極めて少なくすることが可能である。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂とカルボジイミド系架橋剤とを併用する形態において、カルボジイミド系架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂100質量部に対して、固形分として、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。カルボジイミド系架橋剤の使用量が上記範囲内であることにより、適度な自着力を有し、且つ、架橋後の樹脂強度を高めることができる。
【0064】
(その他の添加剤)
樹脂組成物は、さらにホルムアルデヒド捕捉剤を含有していてもよい。
本発明で使用し得るホルムアルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒドを物理的に吸着し又はホルムアルデヒドと化学的に反応し得る化合物であれば特に限定されず、無機化合物であっても、重合体をも含む有機化合物であってもよい。
ホルムアルデヒド捕捉剤の具体例としては、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、酢酸アンモニウム、尿素、エチレン尿素、ジシアンジアミド、ポリアミド樹脂、トリアジン化合物、ヒドラジド化合物等の含窒素化合物;安定化二酸化塩素等のハロゲン酸化物;リン酸水素二ナトリウム、硫酸亜鉛、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩;等が挙げられる。これらのうち、入手容易性、取扱い性及びホルムアルヒド捕捉性の観点から、含窒素化合物が好ましく、硫酸ヒドロキシルアミンが特に好ましい。
これらのホルムアルデヒド捕捉剤は1種類を単独で使用し、又は2種類以上を併用することができる。
【0065】
樹脂組成物には、必要により、自己粘着性層及び自己粘着性積層体の製造工程における加工性向上や、得られる自己粘着性層及び自己粘着性積層体の性能向上のために、各種添加剤を含有させることができる。
添加剤の例としては、整泡剤、発泡助剤、増粘剤、充填材、防腐剤、防かび剤、ゲル化剤、難燃剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着付与剤、光増感剤、導電性化合物等を挙げることができる。
【0066】
整泡剤としては、ステアリン酸アンモニウム等の脂肪酸アンモニウム、アルキルスルホサクシネート等のスルホン酸型アニオン界面活性剤、四級アルキルアンモニウムクロライド、アルキルベタイン両性化物、脂肪酸アルカノールアミン等が使用できる。
【0067】
発泡助剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等が使用できる。
【0068】
増粘剤としては、アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカ等の無機化合物微粒子、酸化マグネシウム等のような反応性無機化合物を使用することできる。
【0069】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、クレー、カオリン、ガラス粉等を使用することができる。
【0070】
防腐剤、防かび剤としては、例えばジヒドロキシジクロロフェニルメタン、ナトリウムペンタクロロフェネート、2,3,4,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、ビス(トリブチル錫)オキサイド、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、銀錯体、亜鉛錯体等が使用できる。
【0071】
ゲル化剤としては、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルポリホルマール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シリコーン系感熱化剤等が使用できる。
【0072】
難燃剤としては、リン酸エステル系化合物、ハロゲンリン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、錫化合物、有機リン系化合物、赤リン系化合物、シリコーン系難燃剤等が使用できる。
【0073】
酸化防止剤としては、ポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤を使用することができる。
【0074】
粘着付与剤としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジン・グリセリンエステル、水添ロジン・グリセリンエステル等のロジン系樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等の石油系樹脂;クマロンインデン樹脂;テルペンフェノール系樹脂;フェノール系樹脂;水添ロジンエステル;不均化ロジンエステル;キシレン樹脂等から選ばれる化合物が使用できる。
【0075】
光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミン類、O−トリルチオウレアのような尿素系化合物、s−ベンジル−イソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等の硫黄化合物、N,N−ジメチル−p−アミノベンゾニトリル等のニトリル類、ナトリウムジエチルチオフォスフェート等のリン化合物等が使用できる。光増感剤とは、それ自身単独では紫外線等の照射によって活性化しないが、光重合開始剤と併用すると、光重合開始剤単独の場合よりも、ラジカル重合を進行しやすくさせる機能を有する添加剤である。
【0076】
<発泡体>
本発明において、樹脂組成物は発泡体であることが好ましい。樹脂組成物が発泡体であることにより、樹脂組成物の架橋体が発泡構造を有し、該架橋体からなる自己粘着性層が微細な空孔を利用した吸盤効果による吸着性を示すことができる。樹脂組成物を発泡させる方法については、後述する製造方法の発泡工程S12において詳述する。吸着により接着する自己粘着性層は、糊粘着のみにより接着する自己粘着性層よりも剥離性に優れ、糊残りが発生し難い。また、発泡セルが連通しているため、エア抜け性が良好でだれでもきれいに貼付できる。
【0077】
2.自己粘着性積層体
本発明の自己粘着性積層体は、本発明の自己粘着性層と、基材からなる支持体層と、を有するものである。
【0078】
自己粘着性積層体に用いる基材の具体例としては、例えば、紙基材、プラスチックシート等を用いることができる。
ここで、紙基材としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、カートン紙、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
一方、プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ(エチレン―ビニルアルコール共重合)系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるシートを用いることができる。
基材からなる支持体層の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜200μmである。
基材として、剥離性を有するものを用いれば、後述するようにして基材上に自己粘着性層を形成後、基材を剥離して、自己粘着性層として使用することができる。
【0079】
3.製造方法
以下、自己粘着性層及び自己粘着性積層体の製造方法について説明する。図1は、本発明の自己粘着性層の製造方法S10(以下、「本製造方法S10」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。図1に示すように本製造方法S10は、樹脂組成物作製工程S1と、成形工程S2と、硬化工程S3とをこの順に有し、樹脂組成物作製工程S1と成形工程S2との間に発泡工程S12を有することが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0080】
3.1.樹脂組成物作製工程S1
樹脂組成物作製工程S1は、樹脂と架橋剤及び/又は開始剤とを含む樹脂組成物を作製する工程である。
【0081】
樹脂組成物作製工程S1において、上述した必須成分である樹脂、架橋剤及び/又は開始剤、並びに、所望により用いられるその他の成分を、任意の方法で混合することにより、樹脂組成物を作製することができる。
【0082】
樹脂がエマルション又はディスパージョンである場合には、これに架橋剤及び/又は開始剤、その他の成分を、水分散体、水溶液等の状態で、撹拌下に添加するだけで、容易に混合することができる。
【0083】
樹脂が固体状の場合も、混合の方法に特に限定はなく、例えば、ロール、ヘンシェルミキサー、ニーダー等を用いて混合すればよい。混合は、バッチ式でも連続式でもよい。
バッチ式混合機としては、擂潰機、ニーダー、インターナルミキサー、プラネタリーミキサー等の高粘度原料用混練機や攪拌機が挙げられる。連続式混合機としては、ローターとスクリューを組み合わせたファレル型連続混練機等やスクリュー式の特殊な構造の混練機が挙げられる。また、押出し加工に使用されている単軸押出機や二軸押出機が挙げられる。これらの押出機や混練機は、二種類以上組み合わせてもよいし、同型の機械を複数連結して使用してもよい。
【0084】
樹脂組成物の形態は、特に限定されないが、エマルション又はディスパージョンの形態であると、自己粘着性層を得るのに好都合である。
エマルション又はディスパージョンの粘度は、2,000〜10,000mPa・sとするのが好ましく、3,500〜5,500mPa・sとするのがより好ましい。
【0085】
3.2.成形工程S2
成形工程S2は、樹脂組成物を層状に成形する工程である。
【0086】
成形工程S2において、樹脂組成物を層状に成形する方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、離型処理されたポリエステルフィルムなどの工程紙の上に上記樹脂組成物をコーティングして層状に成形する方法などが挙げられる。
【0087】
工程紙上に樹脂組成物をコーティングする方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、スクリーンコーター、ドクターナイフコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター等の一般に知られているコーティング装置が使用でき、特にドクターナイフコーターを使用すると均一な塗布厚みを得ることができる。
【0088】
光沢度を高めるためには、樹脂組成物が均一に塗布されることが好ましく、塗布の均一性の指標であるコーティング時の厚み精度が±10%であることが好ましく、±5%であることがより好ましい。ここで厚み精度とは、(作製された自己粘着性積層体の厚み−支持体層の厚み=作製された自己粘着性層の厚み)により測定される数値を意味する。また、本発明の自己粘着性層が示す光沢度を実現するためのコーティング時の塗工速度は、一定であることが重要で、塗工方法によって好適な速度は異なる。
【0089】
3.3.硬化工程S3
硬化工程S3は、層状に成形された樹脂組成物中において硬化反応を行う工程である。
【0090】
層状に成形された樹脂組成物中において硬化反応を行うことにより、工程紙上に、層状の樹脂組成物が固化してなる自己粘着性層を形成することができる。このとき、工程紙として剥離性を有するものを使用していれば、工程紙から自己粘着性層を容易に分離することができる。
【0091】
硬化工程S3において、樹脂の架橋反応を行う際には、加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥の方法としては、工程紙上にコーティングされた樹脂組成物を乾燥、架橋させることができる方法であれば特に限定されず、通常の熱風循環型のオーブン、熱油循環熱風チャンバー、遠赤外線ヒーターチャンバー等を使用することができる。乾燥温度は60℃〜180℃が適当であり、樹脂組成物の性質、塗布量、塗布厚み等により乾燥の条件を適宜選定することができる。乾燥を一定温度で実施するのではなく、初期にはなるべく低温(好ましくは60℃)で乾燥させ、徐々に昇温して、後期に高温且つ一定の温度(好ましくは120℃以上180℃以下、より好ましくは140℃以上180℃以下)で十分乾燥させるような多段階乾燥を行うことが好ましい。このような多段階乾燥を行うことにより、硬化工程の前半には、塗工液の表面に膜を形成せずに内部の溶媒を効率よく乾燥させ、硬化工程の後半には、架橋反応を促進し、塗工液を十分に固化させることができる。乾燥炉又は架橋炉内を連続的に通過させることにより加熱乾燥を行う場合、ラインスピードは、通常5〜100m/minであり、10〜80m/minであることが好ましい。ラインスピードを下げることにより、熱量が多く掛かるので、層強度は上昇するが、生産性が落ちるため好ましくない。また、樹脂組成物をUV等の光でも硬化することができる。光硬化の場合、光硬化性樹脂と光開始剤とを含有した樹脂組成物に高圧水銀灯(メイン波長365nm)等のランプによって所定量光を照射することによって硬化物が得られる。硬化工程S3において光硬化を行う形態によれば、硬化時間を短くすることができるので、生産性が上がる。
【0092】
得られる自己粘着性層の密度、厚さ、硬度等は、樹脂組成物の組成、固形分濃度、加熱乾燥固化の条件、後述する発泡工程S12を有する形態における気泡の混入比率等により調整する。自己粘着性層の厚みは、0.003〜3mmが好ましく、より好ましくは0.005〜1mm、さらに好ましくは0.005〜0.5mmであり、特に好ましくは0.005〜0.2mmである。厚みが0.003mmより薄いと、本発明の自己粘着性層を物品保持材料や物品表面保護材料として用いる場合に、衝撃吸収性に劣り、物品保持力や物品表面保護機能が十分でなく、3mmより厚いと自己粘着性層の強度に劣るので、やはり好ましくない。また、光沢度を高める観点から、自己粘着性層の厚みは薄い方が好ましい。自己粘着性層の密度は、特に限定されるものではないが、衝撃吸収性の観点から0.1〜1.0g/cmが好ましい。
【0093】
硬化工程S3により得られた自己粘着性層又は自己粘着性積層体は、通常、自己粘着性を有する面にセパレーターフィルムが貼られた後、巻取機によって巻き取られ、プレス裁断、スリッター等により裁断されて使いやすいサイズに加工される。
【0094】
自己粘着性積層体を製造する場合には、成形工程S2において、工程紙として基材を用いることにより、硬化工程S3において、基材上に自己粘着性層を形成することができ、自己粘着性層からなる吸着層と、基材からなる支持体層と、を有する自己粘着性積層体を製造することができる。
【0095】
3.4.発泡工程S12
上述した通り、樹脂組成物作製工程S1と成形工程S2との間に、発泡工程S12を有することが好ましい。発泡工程S12を有することにより、発泡構造を有し、微細な空孔を利用した吸盤効果による吸着性を示す自己粘着性層を製造することができる。
発泡工程S12は、樹脂組成物を発泡させ、樹脂組成物の発泡体を得る工程である。
【0096】
発泡工程S12において、樹脂組成物作製工程S1で作製した樹脂組成物を発泡させることにより、未固化状態の発泡体を得ることができる。樹脂組成物がエマルション又はディスパージョンの形態である場合には、発泡エマルション又は発泡ディスパージョンが得られる。
【0097】
発泡の方法としては、通常、機械発泡を採用する。発泡倍率は、適宜、調整すればよいが、通常1.1〜5倍であり、光沢度を高める観点から、好ましくは1.1〜4倍であり、より好ましくは1.2〜3倍であり、さらに好ましくは1.5〜2倍である。機械発泡の方法は、特に限定されないが、樹脂組成物のエマルジョン中に一定量の空気を混入しオークスミキサー、ホイッパー等により連続的又はバッチ式に撹拌することにより行うことができる。こうして得られた発泡エマルジョンはクリーム状になる。
なお、上記機械発泡の代わりに、例えば塩化ビニリデン共重合体等の適当な合成樹脂を殻壁とし、低沸点炭化水素系化合物を内包する熱膨張性マイクロカプセルを、アクリル樹脂エマルジョンやブタジエン系合成ゴムエマルジョンに添加する方法等により、発泡体を調製することもできる。
【0098】
4.用途
本発明の自己粘着性積層体は、その基材面に、たとえば、オフセット印刷、シール印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、レーザープリンター、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等による印刷を施すことができる。
基材面に印刷を施した自己粘着性積層体は、建築用装飾材料、広告宣伝用貼付材料、文具又は玩具用材料としての使用が可能である。例えば、販売促進カード、いわゆるPOPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用等)、ハンバーガー、寿司、焼ソバ等のファースト・フード店のメニュー、カタログ、パネル、プレート(金属板の代替え)、ブロマイド、店頭価格表、案内板(売り場案内、方向・行き先案内、お菓子・食品等)、園芸用POP(差しラベル等)、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、コースター、ラベルライターの代替え印刷物、粘着ラベル等として利用することが可能である。
また、本発明の自己粘着性層及び自己粘着性積層体は、各種光学部品、精密部品等を対象とする物品表面保護材料や物品保持材料として好適に使用できる。
また、何回でも貼って、剥がすことができるので、様々な箱、袋等の基材に自己粘着性層を形成することによって、開口部を閉じる際の仮止めやシール材としても使用できる。特に、食品や嗜好品や日用品等の細かいカスが外に散らばり易いものの開口後の一時仮止めとして、カスが自己粘着性層に付着し難いので好適である。更に、自己粘着性層は箱や袋等の容器内の気密性を増すことができるため、傷みやすい食品や嗜好品の容器を一度開けた後でも再度自己粘着性層を介して閉じることによって、フレッシュな状態を保ち、酸素や水分等による傷みから内容物を防ぐことができる。
したがって、上記のように、開閉を繰り返すことがある用途や、内容物をフレッシュな状態に保つ必要がある用途として、例えば、菓子、コーヒー、茶、たばこ、洗剤等のパッケージに使用することができる。
【0099】
本発明の自己粘着性層及び自己粘着性積層体は、高温高湿環境下で使用した際にも、糊残りが発生し難い。例えば、本発明の自己粘着性層及び自己粘着性積層体は、気温60℃以上、湿度80%以上の環境下に2週間置かれた後にも、糊残りの発生を防止することが可能である。従って、夏場の屋外等、高温かつ高湿度の過酷な環境下においても好適に使用可能である。また、高温かつ高湿度の過酷な環境下においても糊残りし難いことから、空調の効いた室内等、通常の環境下で使用した際に糊残りし難い効果も、従来よりも高くなっているといえる。
【0100】
本発明の自己粘着性層及び自己粘着性積層体は、ホルムアルデヒド発生量を低減させることができ、樹脂組成物の組成を適切に設定することによって、ホルムアルデヒドの発生量を検出限界未満(例えば、0.1ppm未満)とすることもできる。従って、ホルムアルデヒドの発生が禁止されているか又は好ましくない場所や用途に好適に使用することができる。即ち、本発明の自己粘着性層及び自己粘着性積層体は、建築用室内装飾材料、文具、玩具用材料等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0102】
[材料特性]
<アクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
後述する自己粘着性積層体の材料として用いるアクリル酸エステル共重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)を、以下の方法で測定した。アクリル酸エステル共重合体樹脂含有水分散体を厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に250μmのアプリケーターで塗布し、常温下で24時間乾燥させて、樹脂フィルムを得た。このフィルムをサンプルとして、JIS K 7121に準じて、測定温度−50℃〜160℃、昇温速度10℃/分、示差走査熱量分析計(SIIナノテクノロジー社製、DSC6220)を用いて熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)を行い、ガラス転移温度(℃)(中間点ガラス転移温度(Tmg))を測定した。
【0103】
<アクリル酸エステル共重合体樹脂のゲル分率の測定>
後述する自己粘着性積層体の材料として用いるアクリル酸エステル共重合体樹脂含有水分散体のゲル分率を、以下の方法で測定した。アクリル酸エステル共重合体樹脂を厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に200μmのアプリケーターで塗布し、常温下で24時間乾燥させて、樹脂フィルムを得た。このフィルムをサンプルとして、所定量(X)(約500mg)を精秤し、これを酢酸エチル100ml中に常温で3日間浸漬した後、不溶解分を80メッシュの金網で濾過し、15時間常温下で風乾し、その後100℃で2時間乾燥させ、常温下で冷却した後に試料の質量(Y)を測定した。X及びYを次式に代入することにより、ゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(Y)/(X)×100
【0104】
[評価項目]
<光沢度(60°グロス)>
後に説明するようにして作製した自己粘着性積層体の自己粘着性層表面の光沢度を、JIS Z 8741に準じて、光沢度計(東京電色社製、GP−60A)を用いて測定した。結果を表3に示す。この評価による結果が33以上であれば、シート表面の平滑性に優れると言える。
【0105】
<ホルムアルデヒド発生量>
後に説明するようにして自己粘着性積層体を作製し、さらに、自己粘着性層表面にセパレーターフィルムを貼り付けた後、200mm×200mmのサイズに切り出した試験片を用意した。試験片を容積5Lのテドラーバッグに入れ、密閉した。その中に2Lの空気を封入し、23℃、50%RHに設定した恒温槽内で6時間放置した後、検知管(ガステック社製、No.91L)にてバッグ内のホルムアルデヒド濃度を測定した。その結果を表3に示す。なお、ホルムアルデヒド濃度が本測定方法の検出限界である0.1ppmを下回り、ホルムアルデヒドが検出されなかった場合を「<0.1」で示した。本測定結果が2ppm以下であれば、ホルムアルデヒドの発生量が少ないと言える。
【0106】
<貼り付け時のエア抜け性>
後に説明するようにして自己粘着性積層体を作製後、100mm×100mmの正方形にカットし、自己粘着性層側の面が接するようにガラス板に載せ、支持体層側の面から荷重0.5gfのローラーを1往復させてガラス板に貼りつけた。このとき、下記により算出される面積が10mm以上となるエア溜まりが存在するか否かで評価した。下記により算出される面積が10mm以上となるエア溜まりが存在しない場合を「○」、存在する場合を「×」として、その結果を表3に示した。この評価が「○」であれば、噛み込まれるエアが少なく、エア抜け性に優れていると言える。
エア溜まりの面積の算出は、最も大きなエア溜まりを囲むことができる最も面積の小さい長方形を作図し、その長方形の面積を測定することにより算出した。
【0107】
[自己粘着性積層体の作製]
(実施例1)
混合容器に、アクリル酸エステル共重合体樹脂(I)(組成:アクリル酸エチル45/アクリル酸ブチル46/アクリロニトリル10/N−メチロールアクリルアミド1.8、ガラス転移温度:−15.3℃、ゲル分率:41.5%)含有水分散体(固形分濃度55%)100部と、カルボジイミド系架橋剤(DIC社製、DICNAL HX:固形分濃度40%)5部、酸化チタン水分散体(DIC社製、DISPERSE WHITE HG−701:固形分濃度66%)3.5部を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亞合成社製、アロンB−300K:固形分濃度44%)を5部、及び整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M−20:固形分濃度40%)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M−40:固形分濃度35%)の1/1混合物〕6部をこの順に添加し、最後にアンモニア水溶液(大盛化工社製:濃度28%)約0.6部を添加して粘度を4500mPa・sに調整して樹脂組成物Z1を得た。樹脂組成物Z1の組成をまとめたものを表1に示す。
この樹脂組成物Z1を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が2倍になるように泡立て、更に撹拌速度を落として5分間撹拌を続行した。
得られた発泡体を基材(厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の上に、0.3mmのアプリケーターを用いて塗布した。これを乾燥炉に入れ、80℃で1.33分間、120℃で1.33分間、140℃で1.33分間保持して、乾燥架橋を行わせて基材上に自己粘着性層180μmを積層した実施例1に係る自己粘着性積層体を得た。
【0108】
(実施例2)
混合容器に、アクリル酸エステル共重合体樹脂(II)(組成:アクリル酸エチル45/アクリル酸ブチル46/アクリロニトリル10/N−メチロールアクリルアミド1.8の共重合体樹脂、ガラス転移温度:−14.5℃、ゲル分率:51.8%)含有水分散体(固形分濃度55%)100部と、カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル社製、カルボジライト(登録商標)E−02:固形分濃度40%)3部、酸化チタン水分散体(DIC社製、DISPERSE WHITE HG−701:固形分濃度66%)3.5部を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M−20:固形分濃度40%)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M−40:固形分濃度35%)の1/1混合物〕6部、アンモニア水溶液(大盛化工社製:濃度28%)0.6部、最後に増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亞合成社製、アロンB−300K:固形分濃度44%)を約4.5部添加して粘度を5000mPa・sに調整して樹脂組成物Z2を得た。樹脂組成物Z2の組成をまとめたものを表1に示す。
この樹脂組成物Z2を発泡機で発泡倍率が1.6倍になるように発泡し、発泡体を得た

図2に、以下で用いる塗工機(コーティングヘッド)、及び、基材上に塗布された発泡体が通過する上部乾燥炉(F1〜F6)及び架橋炉(K1、K2)の概略図を示す。
得られた発泡体を塗工機で基材(厚み110μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に成膜後180μm厚になるように塗布し、ラインスピード15m/minで、表2にAで示す炉内温度パターン(乾燥炉F1:60℃、乾燥炉F2:80℃、乾燥炉F3:100℃、乾燥炉F4:130℃、乾燥炉F5:135℃、乾燥炉F6:140℃、架橋炉K1:140℃、架橋炉K2:140℃)で炉内を流し、基材上に自己粘着性層180μmを積層した実施例2に係る自己粘着性積層体を得た。
【0109】
(実施例3)
アクリル酸エステル共重合体樹脂(III)(組成:アクリル酸エチル45/アクリル酸ブチル46/アクリロニトリル10/N−メチロールアクリルアミド1.8の共重合体樹脂、ガラス転移温度:−14.9℃、ゲル分率:47.8%)含有水分散体(固形分濃度55%)を100部含む樹脂組成物Z3(組成をまとめたものを表1に示す。)を使用した以外は実施例2と同様にして、実施例3に係る自己粘着性積層体を得た。
【0110】
(実施例4)
表2にBで示す炉内温度パターンに変更し、基材(厚み80μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に成膜後100μm厚になるように塗布した以外は実施例3と同様にして、基材上に自己粘着性層100μmを積層した実施例4に係る自己粘着性積層体を得た。
【0111】
(比較例1)
混合容器に、アクリル酸エステル共重合体樹脂(IV)(組成:アクリル酸エチル48/アクリル酸ブチル47/アクリロニトリル6/N−メチロールアクリルアミド1.4の共重合体樹脂、ガラス転移温度:−25.9℃、ゲル分率:43.1%)含有水分散体(固形分濃度55%)100部と、メラミン系架橋剤(DIC社製、BECKAMINE M−3:固形分濃度80%)5部、及び架橋促進剤(DIC社製、CATALYST ACX:固形分濃度35%)0.5部、酸化チタン水分散体(DIC社製、DISPERSE WHITE HG−701:固形分濃度66%)3.5部を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M−20)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M−40)の1/1混合物〕6部、アンモニア水溶液(大盛化工社製:濃度28%)0.6部、最後に増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亞合成社製、アロンB−300K:固形分濃度44%)を約4.5部添加して粘度を5000mPa・sに調整して樹脂組成物Z4を得た。樹脂組成物Z4の組成をまとめたものを表1に示す。
この樹脂組成物Z4を発泡機で発泡倍率が2倍になるように発泡し、発泡体を得た。
得られた発泡体を上記塗工機で基材(厚み110μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に成膜後180μm厚になるように塗布し、ラインスピード15m/minで、表2にCで示す炉内温度パターンで炉内を流した。基材上に自己粘着性層180μmを積層した比較例1に係る自己粘着性積層体を得た。
【0112】
(比較例2)
表2にDで示す炉内温度パターンに変更し、基材(厚み80μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に成膜後100μm厚になるように塗布した以外は比較例1と同様にして、基材上に自己粘着性層100μmを積層した比較例2に係る自己粘着性積層体を得た。
【0113】
(比較例3)
アクリル酸エステル共重合体樹脂(V)(組成:アクリル酸エチル45/アクリル酸ブチル45/アクリロニトリル8/イタコン酸2の共重合体樹脂、ガラス転移温度:−20.2℃、ゲル分率:89.6%)含有水分散体(固形分濃度55%)を100部含む樹脂組成物Z5(組成をまとめたものを表1に示す。)を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る自己粘着性積層体を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表3に示したように、光沢度が本発明の範囲内にある実施例1〜4に係るシートは、エア抜け性が良好であり、ホルムアルデヒドの発生量が少なかった。一方、比較例1、2に係るシートは、光沢度が本発明の範囲内にあることによりエア抜け性は良好であったが、ホルムアルデヒドの発生量が多かった。また、比較例3に係るシートは、ホルムアルデヒドの発生量は少なかったが、光沢度が低いためエア抜け性に劣っていた。
図1
図2