(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(E)1分子中に1個以上の(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる少なくとも1個の基を有する化合物を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物。
第一基材と、この上に積層された第二基材と、これらの間に介在する請求項1〜5のいずれか1項記載の接着剤組成物を用いてなる接着剤層とを備える積層体の製造方法であって、
接着剤組成物を第一の基材表面に塗布する塗布工程と、
接着剤組成物に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する硬化工程と、
接着剤組成物または接着剤層の上に第二の基材を積層して第一および第二の基材を前記接着剤組成物または接着剤層を介して貼り合わせる貼合工程と
を含む積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
(1)(A)成分
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物における(A)成分は、下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R
1SiO
3/2)
a1(R
13SiO
1/2)
b1(X
1O
1/2)
c1 (1)
【0010】
式(1)において、R
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基を表すが、20モル%以上がメチル基、かつ、0.1〜50モル%がアルケニル基である。
R
1の一価炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル基等の直鎖または分岐のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などの非置換または置換のアルキル基が挙げられ、これらの中でも耐熱性の面からメチル基が好ましい。
【0011】
アリール基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、メシチル基等の非置換またはアルキル置換アリール基;クロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基が好ましい。
アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
アルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル基等が挙げられ、これらの中でもビニル基が好ましい。
【0012】
上述のとおり、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、R
1の20モル%以上がメチル基、かつ、0.1〜50モル%がアルケニル基であるが、メチル基の含有率は、20〜99.9モル%が好ましく、40〜97モル%がより好ましく、60〜95モル%がより一層好ましい。一方、アルケニル基の含有率は、0.1〜40モル%が好ましく、0.1〜30モル%がより好ましく、0.3〜20モル%がより一層好ましい。
メチル基の含有率が20モル%未満であると、得られる硬化物の耐熱性が不十分なものとなり、アルケニル基の含有率が0.1モル%未満であると、組成物の硬化性が不十分となり、50モル%を超えると硬化物が脆くなる。
特に、R
1の80モル%以上がメチル基であり、残りのR
1がビニル基であることが最も好ましい。
【0013】
また、式(1)において、X
1は、水素原子またはアルキル基を表す。
このアルキル基としては、R
1として例示したものと同様の基が挙げられるが、特に、メチル基、エチル基が好ましい。
【0014】
式(1)において、a1は、0.1〜1の数であるが、好ましくは0.15〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8である。a1が0.1未満((R
1SiO
3/2)
a1単位の含有率が10モル%未満)であると、硬化後の硬さ等の機械特性が不十分となる。
b1は、0〜0.75の数であるが、好ましくは0〜0.5、より好ましくは0〜0.4である。
c1は、0〜0.1の数であるが、好ましくは0〜0.05である。
なお、a1+b1+c1は1である。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子量は限定されないが、THF溶媒を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で500〜20,000が好ましく、700〜15,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。
なお、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(2)(B)成分
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物における(B)成分は、下記平均組成式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンである。
(R
23SiO
1/2)
a2(R
22SiO)
b2 (2)
【0017】
式(2)において、R
2は、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基を表すが、20モル%以上がメチル基、かつ、0.01〜25モル%がアルケニル基である。
R
2の一価炭化水素基としては、上記R
1で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0018】
式(2)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、R
2の20モル%以上がメチル基、かつ、0.01〜25モル%がアルケニル基であるが、上記(A)成分との相溶性、硬化物の物性等の点から、メチル基の含有率は、20〜99.9モル%が好ましく、40〜97モル%がより好ましく、50〜97モル%がより一層好ましく、60〜95モル%がさらに好ましい。一方、アルケニル基の含有率は、0.05〜25モル%がより好ましく、0.1〜20モル%がより一層好ましく、0.3〜10モル%がさらに好ましい。
メチル基の含有率が20モル%未満であると、得られる硬化物の耐熱性が不十分なものとなり、アルケニル基の含有率が0.01モル%未満であると、組成物の硬化性が不十分となり、25モル%を超えると硬化物が脆くなる。
【0019】
また、式(2)において、a2は、0.001〜0.67の数であるが、好ましくは0.002〜0.10であり、より好ましくは、0.003〜0.044である。
b2は、0.33〜0.999の数であるが、好ましくは0.90〜0.998であり、より好ましくは0.956〜0.997である。
なお、a2+b2は1である。
【0020】
(B)成分のオルガノポリシロキサンの23℃での粘度は、好ましくは1,000〜50,000mPa・s、より好ましくは5,000〜30,000mPa・sである。なお、本発明において、粘度は回転粘度計を用いた測定値である。
【0021】
(B)成分のオルガノポリシリキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜5,000質量部であるが、好ましくは10〜3,000質量部、より好ましくは20〜1,000質量部である。配合量が5,000質量部を超えると十分な硬度・強度が得られない。
なお、(B)成分のオルガノポリシロキサンは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(3)(C)成分
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物における(C)成分は、下記平均組成式(3)で表される、1分子中に少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のSi−H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
R
3dH
eSiO
[(4-d-e)/2] (3)
【0023】
式(3)において、R
3は、それぞれ独立して、脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換または非置換の一価炭化水素基を表す。
R
3の一価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、またその炭素原子数は特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
この一価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル基等の直鎖または分岐のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基などの脂肪族飽和一価炭化水素基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などの芳香族または芳香族基含有一価炭化水素基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換一価炭化水素基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0024】
また、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいても、上記(A)成分および(B)成分との相溶性や、硬化物の物性等の点から、(C)成分中のR
3とSi−H基の総数のうち20モル%以上はメチル基が好ましく、50モル%以上はメチル基がより好ましい。
【0025】
式(3)において、dは、0.7≦d≦2.5の数であるが、好ましくは0.7≦d≦2.1、より好ましくは1.0≦d≦1.8である。dが0.7未満では硬化時に発泡する懸念があると共に、経時での硬度変化が大きくなりやすく、2.5を超えると十分な硬度が得られない。
eは、0.01≦e≦1.0の数であるが、好ましくは0.02≦e≦1.0、より好ましくは0.1≦e≦1.0である。eが0.01未満では十分な硬度が得られず、1.0を超えると硬化時に発泡する懸念があると共に、経時での硬度変化が大きくなりやすい。
d+eは、0.8≦d+e≦2.7を満たすが、好ましくは1≦d+e≦2.4、より好ましくは1.6≦d+e≦2.2である。d+eが0.8未満では硬化物が硬く、また脆くなりやすいため貼合物中にクラックが入りやすく、2.7を超えると硬化物が柔らかくなり、貼合物の補強性に乏しくなる。
【0026】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの23℃での粘度は、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは2〜20mPa・sである。
【0027】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分および(B)成分に含まれるアルケニル基に対する、(C)成分中に含まれるヒドロシリル基のモル比が、ヒドロシリル基/アルケニル基=0.5〜2となる量であるが、1〜1.5となる量が好ましい。ヒドロシリル基/アルケニル基のモル比が0.5未満では硬化性が不十分となり、2を超えると接着性が不足する。
なお、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(4)(D)成分
(D)成分は、波長200〜500nmの光で活性化される白金族触媒、すなわち遮光下で不活性であり、かつ、波長200〜500nmの光を照射することにより、室温で活性な白金族触媒に変化して(A)成分および(B)成分中のアルケニル基と、(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0029】
このような(D)成分の具体例として、(η
5−シクロペンタジエニル)三脂肪族白金化合物およびその誘導体が挙げられる。これらのうち特に好適なものは、シクロペンタジエニルトリメチル白金、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金およびこれらのシクロペンタジエニル基が修飾された誘導体である。
また、ビス(β−ジケトナト)白金化合物も好適な(D)成分の例として挙げられ、これらのうち特に好適なものは、ビス(アセチルアセトナト)白金化合物、およびそのアセチルアセトナト基が修飾された誘導体である。
【0030】
(D)成分の白金族触媒の配合量は、本組成物の硬化(ヒドロシリル化反応)を促進する量であれば限定されず、本組成物の(A)〜(C)成分の質量の合計に対して、本成分中の金属原子が質量換算で0.01〜500ppmの範囲となる量が好ましく、0.05〜100ppmの範囲がより好ましく、0.01〜50ppmの範囲がより一層好ましい。
なお、(D)成分の白金族触媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(5)(E)成分
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物には、必要に応じて(E)成分として接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、1分子中に(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基からなる官能基群のうち少なくとも1個を含む有機化合物などが挙げられる。
【0032】
アルコキシシリル基を含む接着助剤の具体例として、γ−(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM−503、信越化学工業(株)製)、これらの加水分解縮合物等が挙げられる。
また、上記官能基群のうちの少なくとも1種およびオルガノシロキサン骨格を含む化合物の具体例としては、下記構造式で表されるもの等が挙げられる。
【0033】
【化1】
(式中、Meは、メチル基を意味する。)
【0034】
さらに、オルガノシロキサン骨格を含まない接着助剤の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2−アリルマロン酸ジエチル、安息香酸アリル、フタル酸ジアリル、ピロメリット酸テトラアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0035】
(E)成分の接着助剤の添加量は(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。(E)成分の配合量が上記範囲であれば、適度な接着性が付与できる。
なお、(E)成分は、1成分のみ添加してもよいし、2種以上の複数の成分を同時に添加してもよい。
【0036】
(6)(F)成分
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物には、組成物を調製する際や、組成物を基材に塗工する際等の加熱硬化前に増粘やゲル化を起こさないようにするため、必要に応じて(F)反応制御剤を添加してもよい。
【0037】
反応制御剤の具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられ、好ましくは1−エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3−メチル−1−ブチン−3−オールである。
【0038】
(F)成分の配合量は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。このような範囲であれば反応制御の効果が十分発揮される。
【0039】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物には、上述した(A)〜(F)成分以外にも、本発明の目的を損なわない限り、以下に例示するその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、ヒュームドシリカ等のチクソ性制御剤;結晶性シリカ等の補強剤;酸化防止剤;光安定剤;金属酸化物、金属水酸化物等の耐熱向上剤;酸化チタン等の着色剤;アルミナ、結晶性シリカ等の熱伝導性付与充填剤;反応性官能基を有しない非反応性シリコーンオイル等の粘度調整剤;銀、金等の金属粉等の導電性付与剤;着色のための顔料、染料等が挙げられる。
【0040】
以上説明した本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、光デバイスやディスプレイ、タッチパネル等の積層体を構成する二枚の基材を、接着層を介して貼り合せる際の接着層形成のための組成物として好適に使用できる。
積層体の製造方法は、塗布工程、紫外線照射工程、硬化工程、貼合工程を含み、それぞれの工程は例えば以下に示す方法を用いることができる。
【0041】
(A)塗布工程
塗布工程では、本発明の接着剤組成物を一方の基材に塗布する。
塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スリットコートを利用した塗布や、DAM−Fill法、フィッシュボーン法等による手法が挙げられる。
塗布量は、硬化後の接着剤層の厚さが100〜5,000μmとなる量が好ましい。
【0042】
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物を適用する基材としては、複合材料、金属部材、プラスチック部材、セラミック部材等が挙げられ、特に、電気用途、電子用途、光学用途等のケーシング、部材の被覆、注型、接着、封止等の分野で使用される材料に適用可能である。
また、本発明の接着剤組成物は、プライマー処理、プラズマ処理、エキシマ光処理などの周知の前処理工程によって活性化された基材に対しても用いることができる。
【0043】
(B)紫外線照射工程
紫外線照射工程では、接着剤組成物に紫外線を照射する。
紫外線照射方法としては、紫外光源として365nm UV−LEDランプ、メタルハライドランプ等を使用して、適量の紫外線を照射する方法等が挙げられる。
【0044】
紫外線照射には、好ましくは波長200〜500nm、より好ましくは200〜350nmの光が使用される。
この際、硬化速度と変色防止の観点から、照射温度は20〜80℃が好ましく、照射強度は30〜2,000mW/cm
2が好ましく、照射線量は150〜10,000mJ/cm
2が好ましい。
【0045】
(C)硬化工程
硬化工程では、紫外線照射した接着剤組成物を硬化させる。
硬化方法としては、紫外線照射した接着剤組成物を所定の環境下に静置して硬化させ、接着剤層を形成する手法等が挙げられる。
本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物の硬化温度は、特に限定されないが、大気雰囲気下、20〜60℃で1分間から1日間硬化させることが好ましい。
【0046】
(D)貼合工程
貼合工程では、接着剤組成物または接着剤層の上に他方の基材を積層して、二枚の基材を接着剤組成物または接着剤層を介して貼り合わせた積層体を形成する。
貼合方法としては、塗布工程、紫外線照射工程および硬化工程を経て、液状から半固体状となった接着剤層−基材積層物や、塗布工程後の接着剤組成物、あるいは塗布工程および紫外線照射工程後の接着剤組成物−基材積層物を、真空または大気圧貼り合わせ装置に設置し、もう一方の基材を接着剤組成物または接着剤層の上に積層して貼り合わせて、組成物の場合は残りの工程を行って硬化させて積層体を形成する手法等が挙げられる。
【0047】
本発明の接着剤組成物は、酸素による硬化阻害を受けない点、および紫外線を照射させてからの硬化時間を接着剤組成物の設計や加熱温度により変えられる点から、フラットディスプレイや曲面ディスプレイなど、製造するデバイスの構造に合わせて塗布工程、紫外線照射工程、硬化工程、および貼合工程の手順を自由に選択・変更することができる。
【0048】
本発明の積層体の製造方法の具体例として、カバーパネルおよび画像表示パネルを有する積層体の製造例を挙げる。
まず、本発明の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物を画像表示パネル上に塗布する。その後、波長のピークが365nmにあるUV−LEDランプを用い、365nm光を指標として照射強度100mW/cm
2および線量3,000mJ/cm
2となるように、接着剤組成物に23℃で30秒間紫外線を照射する。続いて、23℃の環境で30分間静置して接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する。その後、真空貼り合わせ装置を用いて接着剤層の上にカバーパネルを積層することで、カバーパネルと画像表示パネルとを接着剤層を介して貼り合わせた積層体を得ることができる。
また、紫外線照射工程後、先に真空貼り合わせ装置を用いて接着剤組成物の上にカバーパネルを積層することで、画像表示パネルとカバーパネルとを接着剤組成物を介して貼り合わせ、次いで60℃の環境で30分間静置して接着剤組成物を硬化させてもよい。あるいは、カバーパネルが透明であるため、塗布工程後、真空貼り合わせを行い、次いでカバーパネル越しに紫外線照射を行い、硬化させてもよい。また、予め紫外線照射を行った接着剤組成物を画像表示パネルに塗布し、カバーパネルと真空貼り合わせ、硬化させてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
(A)成分:
(A−1)下記平均単位式(4)で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=4.0モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合メチル基の含有率=96モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=13,000)
(CH
3SiO
3/2)
0.7((CH
3)
3SiO
1/2)
0.236((CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2)
0.064 (4)
(A−2)下記平均単位式(5)で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=7.4モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合メチル基の含有率=92.6モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=3,600)
(SiO
2)
0.55[(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2]
0.1((CH
3)
3SiO
1/2)
0.35 (5)
【0051】
(B)成分:
(B−1)下記式(6)で表され、23℃における粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
((CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2)
2((CH
3)
2SiO
2/2)
430 (6)
(B−2)下記式(7)で表され、23℃における粘度が10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
((CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2)
2((CH
3)
2SiO
2/2)
530 (7)
(B−3)下記式(8)で表され、23℃における粘度が30,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
((CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2)
2((CH
3)
2SiO
2/2)
730 (8)
【0052】
(C)成分:
(C−1)23℃における粘度が6.3mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.63質量%)
【0053】
(D)成分:
(D−1)トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金錯体のトルエン溶液(白金含有量0.5質量%)
(D−2)ビスアセチルアセトナト白金錯体の酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(白金含有量0.5質量%)
(D−3)白金1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のジメチルシロキサンポリマー溶液(白金含有量1.0質量%)
【0054】
(E)成分:
(E−1)ピロメリット酸テトラアリルエステル(TRIAM805、富士フイルム和光純薬(株))
(E−2)フタル酸ジアリル
【0055】
(E−3)下記式(9)で表される環状シロキサン化合物
【化2】
【0056】
(E−4)下記式(10)で表される環状シロキサン化合物
【化3】
【0057】
(E−5)下記式(11)で表されるシロキサン化合物
【化4】
【0058】
(F)成分:
(F−1)エチニルメチルデシルカルビノール
【0059】
(その他の成分):平均粒子径1.5μmの結晶性シリカ粉末
【0060】
[実施例1〜3および比較例1〜4]
上記各成分を、表1に示す配合量(質量部)にて混合し、シリコーン接着剤組成物を調製した。
【0061】
【表1】
【0062】
上記各実施例および比較例で調製した各シリコーン接着剤組成物について、下記の各試験を実施した。それらの結果を表2に示す。
(1)硬度
上記実施例および比較例で調製した各シリコーン接着剤組成物を、ガラスシャーレ内に流し込み、ピーク波長365nmのUV−LEDランプを用い、365nm光を指標として、23℃で、照射強度100mW/cm
2および線量1,500mJ/cm
2となるように各組成物に紫外線を照射した。照射終了後、23℃で24時間、大気雰囲気下に静置して組成物を硬化させた。
得られた各硬化物について、JIS硬度計デュロメータータイプOOにて硬度を測定した。
(2)引張り強さ、切断時伸び
上記硬化物に対し、ストログラフ((株)東洋製機製作所)を用い、JIS K 6249に基づく手法で引張り強さ、切断時伸びを測定した。
(3)接着試験
被着体となる基材としてアルミニウム(Al)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ガラス製の各板を用い、各被着体の片方に各接着剤組成物を塗布し、ピーク波長が365nmのUV−LEDランプを用い、365nm光を指標として照射強度100mW/cm
2および線量3,000mJ/cm
2となるように各組成物に紫外線を照射した。すぐにもう一方の被着体を組成物上に載せて60℃、30分間の条件で組成物を硬化させ、接着剤の層が25×10×1mm
3となるようにせん断接着試験片を作製し、これを23℃まで放冷した。その後、JIS K 6249に基づく手法でオートグラフ((株)島津製作所製)を用いて引張試験を行い、試験後の破断面の状態を観察した。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されるように、実施例1〜3の紫外線硬化型シリコーン接着剤組成物は、接着力に優れた硬化物を与えることがわかる。
一方、本発明の(A)成分を用いていない比較例1,2、およびヒドロシリル基/アルケニル基のモル比が本発明の範囲を超える比較例3では接着力が不十分であることがわかる。
また、本発明の(D)成分を用いていない比較例4では硬化が起こっていないことがわかる。