(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪酸金属塩及び金属水酸化物から選択される一種以上の金属化合物と、多塩基酸と多価アルコールとを必須原料とするポリエステルを含むポリエステル系添加剤とを併用して用いられるセルロースエステル樹脂用添加剤。
前記金属化合物の金属が、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛及びバリウムからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のセルロースエステル樹脂用添加剤。
前記ポリエステル系添加剤が、多塩基酸とモノアルコールもしくは多価アルコールとモノカルボン酸を必須原料とするエステル化合物をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用添加剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
〔セルロースエステル樹脂用添加剤〕
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、脂肪酸金属塩、金属水酸化物及び炭酸金属塩から選択される一種以上の金属化合物を含む。
【0012】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、金属の脂肪酸塩、金属の水酸化物、及び金属の炭酸塩から選択される金属化合物を含む。
【0013】
[金属]
本発明の一実施形態において、金属化合物に含まれる金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マンガン、ジルコニウム、鉛、ビスマスから選択される一種以上の金属を用いることができる。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウムなどが挙げられる。本実施形態においては、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛及びバリウムが好適に用いられ、カルシウム及びバリウムが特に好適に用いられる。
【0014】
[脂肪酸]
本発明の一実施形態における脂肪酸金属塩は、炭素原子数2〜30の脂肪酸と金属との塩であることが好ましく、炭素原子数4〜28の脂肪酸と金属との塩であることがより好ましく、炭素原子数6〜22の脂肪酸と金属との塩であることがさらに好ましい。また、脂肪酸として、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、およびこれらの誘導体を用いることができるが、飽和脂肪酸を用いることが好ましい。脂肪酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、アジピン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、セバシン酸、ネオデカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル酸、トリコシル酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸およびこれらの誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
[金属水酸化物]
本発明の一実施形態において、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、などの金属水酸化物を金属化合物として用いることができる。
【0016】
[炭酸金属塩]
本発明の一実施形態において、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸金属塩を金属化合物として用いることができる。
【0017】
〔ポリエステル系添加剤〕
本発明の一実施形態において、セルロースエステル樹脂用添加剤は、多塩基酸と多価アルコールとを必須原料とするポリエステル系添加剤と併用して用いられる。本実施形態において、ポリエステル系添加剤は、ポリエステルを主成分とする添加剤であり、ポリエステル系添加剤100質量部に対してポリエステルを少なくとも50質量部、好ましくは少なくとも60質量部、より好ましくは少なくとも65質量部含有する添加剤である。
【0018】
[ポリエステル]
本実施形態におけるポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを必須原料とする。
【0019】
(多塩基酸)
本実施形態で用いられる多塩基酸としては、芳香族多価カルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、オキシ多価カルボン酸、またはその誘導体などが挙げられる。
芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、強度に優れる組成物が得られる観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
脂肪族多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、デカンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2−ジカルボキシシクロヘキサン、1,2−ジカルボキシシクロヘキセンなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、セルロース樹脂との相溶性に優れる観点から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンであることが好ましい。
オキシ多価カルボン酸としては、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0020】
多塩基酸のカルボキシル基に含まれる炭素を除いた炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
【0021】
(多価アルコール)
本実施形態で用いられる多価アルコールとしては、例えば、鎖状の脂肪族多価アルコールや環式脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコールなどが挙げられる。
鎖状の脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの2価の脂肪族アルコール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘプタトリオール、1,2,4−ヘプタトリオール、1,2,5−ヘプタトリオール、2,3,4−ヘプタトリオール、トリメチロールプロパンなどの3価の脂肪族アルコール;ペンタエリトリトール、エリトリトールなどの4価の脂肪族アルコール;キシリトールなどの5価の脂肪族アルコール;ジペンタエリトリトール、ソルビトールなどの6価の脂肪族アルコールなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、セルロース樹脂との相溶性に優れる観点から、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールであることが好ましい。
環式脂肪族多価アルコールとしては、例えば、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオール、シクロヘプタンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
芳香族多価アルコールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールF、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビフェノール、ビフェノールのエチレンオキサイド付加物、1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0022】
多価アルコールの炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態におけるポリエステル系添加剤の数平均分子量(Mn)は、200〜2000の範囲が好ましく、250〜1500の範囲がより好ましく、300〜1200の範囲がさらに好ましい。
【0024】
ここで、数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0025】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0026】
本実施形態のポリエステルは、末端がモノカルボン酸の残基又はモノアルコールの残基で封止されていてもよい。
【0027】
(モノカルボン酸)
本実施形態で用いられるモノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキシル酸、ノナン酸や、これらの誘導体が挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、セルロース樹脂との相溶性に優れる観点から、酢酸であることが好ましい。
脂環族モノカルボン酸としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸や、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、クミン酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、フロ酸、アニス酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸(パラヒドロキシ安息香酸)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸等のモノヒドロキシ安息香酸;2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2−ピロカテク酸)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(β−レゾルシン酸)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γ−レゾルシン酸)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レゾルシン酸)などのジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸などのトリヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのモノヒドロキシナフタレンカルボン酸などの安息香酸のベンゼン環にヒドロキシル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、セルロース樹脂との相溶性に優れる観点から、安息香酸、パラトルイル酸であることが好ましい。
モノカルボン酸のカルボキシル基の炭素を除く炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。
【0028】
(モノアルコール)
本実施形態で用いられるモノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソノニルアルコール、1−ノニルアルコール、アミルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、原料の入手や合成が容易である観点から、1−ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソノニルアルコールであることが好ましい。
モノアルコールの炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、1〜18が好ましく、2〜12がより好ましく、4〜10がさらに好ましい。
【0029】
[エステル化合物]
本発明の一実施形態において、ポリエステル系添加剤は、多塩基酸とモノアルコールもしくは多価アルコールとモノカルボン酸を必須原料とするエステル化合物をさらに含む。本実施形態のエステル化合物は、二塩基酸とモノアルコールとを必須原料とするジエステルや、モノカルボン酸とグリコールを必須原料とするジエステルであってもよい。ここで、多塩基酸、多価アルコール、モノカルボン酸及びモノアルコールについては、ポリエステルにおける多塩基酸、多価アルコール、モノカルボン酸及びモノアルコールと同じであるので、説明を省略する。
【0030】
(二塩基酸)
本発明の一実施形態で用いられる二塩基酸としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸を用いることができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
二塩基酸のカルボキシル基を除く炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、1〜12が好ましく、2〜8がより好ましい。
【0031】
(グリコール)
本発明の一実施形態で用いられるグリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチルプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ビスフェノールA、ダイマージオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
グリコールの炭素原子数としては、特に限定されるものではないが、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
【0032】
ポリエステル系添加剤中のエステル化合物の含有量は、ポリエステル系添加剤中50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
[エステル化反応]
本発明の一実施形態において、ポリエステル系添加剤やエステル化合物は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で原料を、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間、エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。モノカルボン酸やジカルボン酸については、原料として酸そのものを使用してもよく、あるいは、そのエステル化合物、酸塩化物、ジカルボン酸の無水物等を原料としても良い。
エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、原料の全量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0034】
〔セルロースエステル樹脂組成物〕
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂用添加剤及びセルロースエステル樹脂を含む。
【0035】
[セルロースエステル樹脂]
セルロースエステル樹脂としては、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部、又は全部がエステル化されたものが挙げられる。
【0036】
前記セルロースエステル樹脂の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロース等のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート及び硝酸セルロース等が挙げられる。これらのセルロースエステル樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明のセルロースエステル樹脂組成物からなるフィルムを光学フィルム、特に偏光板保護フィルムとして使用する場合には、セルロースアセテートを使用することが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。
【0037】
前記セルロースアセテートとしては、平均酢化度(結合酢酸量)が50.0〜62.5質量%の範囲のものであると、得られるセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムは機械的物性及び透明性に優れたフィルムとなるため好ましい。
【0038】
また、光学フィルムの耐透湿性を向上させるためには、セルロースアセテートの平均酢化度が54〜62.5質量%の範囲であることが好ましい。平均酢化度がより高いトリアセチルセルロースを用いることで、耐透湿性に優れるセルロースエステル樹脂フィルムを得ることが出来る。また、光学フィルムを高い位相差値に調整するためには、セルロースアセテートの平均酢化度が50.0〜58質量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
なお、平均酢化度は、セルロースアセテートの質量を基準として、該セルロースアセテートをケン化することによって生成する酢酸の質量割合である。
【0040】
前記セルロースエステル樹脂は、数平均分子量が70,000〜300,000の範囲のものであると、フィルムの機械的物性を向上することができるため好ましい。また、より高い機械的物性が必要な場合は、80,000〜200,000の範囲のものを用いるとより好ましい。
【0041】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物中の金属化合物の含有量としては、セルロースエステル樹脂100質量部に対して、10〜3000ppmであることが好ましく、50〜2000ppmであることがより好ましく、200〜1000ppmであることがさらに好ましい。
また、金属含有量としては、0.1〜1000ppmであることが好ましく、1〜500ppmであることがより好ましく、10〜100ppmであることがさらに好ましい。ここでいう金属含有量は、セルロースエステル樹脂に元来含まれている金属含有量は含まない。
【0042】
本実施形態のセルロースエステル樹脂組成物中のポリエステル系添加剤の含有量は、セルロースエステル樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、3〜20質量部であることがさらに好ましい。
【0043】
本実施形態のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明の金属化合物およびポリエステル系添加剤とセルロースエステル樹脂等の光学材料用樹脂を含むものであり、必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなる樹脂組成物であってもよい。
【0044】
前記添加剤としては、例えば、本発明の金属化合物、ポリエステル系添加剤以外のその他の改質剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、マット剤、安定剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤等)、染料などが挙げられる。
【0045】
前記その他の改質剤としては、本発明で規定するポリエステル化合物、ジエステル化合物以外のエステル樹脂や、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチル等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0046】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定しないが、例えば、本発明のエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0047】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定しないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0048】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。前記マット剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0049】
前記染料としては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、種類や配合量など特に限定しない。
【0050】
〔セルロースエステル樹脂組成物の成形品〕
本発明のセルロースエステル樹脂組成物を成形することにより、成形品が得られる。本発明のセルロースエステル樹脂組成物の成形品は、透明性に優れることから光学フィルムとして使用することができる。
【0051】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、本発明のセルロースエステル樹脂組成物を成形することにより得られるフィルムである。本発明の光学フィルムの膜厚は、使用される用途により異なるが、一般に10〜300μmの範囲が好ましい。
本発明の光学フィルムは、光学異方性あるいは光学等方性等の特性を有していてもよいが、前記光学フィルムを偏光板用保護フィルムに使用する場合には、光の透過を阻害しない光学等方性のフィルムを使用することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、種々の用途で用いることができる。最も有効な用途としては、例えば、液晶ディスプレイの光学等方性を必要とする偏光板用保護フィルムがあるが、光学補償機能を必要とする偏光板用保護フィルムの支持体にも使用することができる。
本発明の光学フィルムは、種々の表示モードの液晶セルに用いることができる。例えばIPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)等が例示できる。
その他にも、紫外線や眩輝防止に用いられるサングラスやゴーグルにおける偏光膜を保護するためのフィルムとしても用いられる。
【0052】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムは、例えば、溶融押出法により製造することができる。具体的には、前記セルロースエステル樹脂、セルロースエステル樹脂用改質剤、及び必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなるセルロースエステル樹脂組成物を、例えば、押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いてフィルム状に成形することにより得ることができる。
また、本発明の光学フィルムは、前記成形方法の他に、例えば、前記セルロースエステル樹脂と前記セルロースエステル樹脂用改質剤とを有機溶剤中溶解して得られた樹脂溶液を、金属支持体上に流延させ、次いで、前記有機溶剤を留去し乾燥させる、いわゆる溶液流延法(ソルベントキャスト法)で成形することによって得ることができる。
前記溶液流延法によれば、表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れるフィルムが得られる。その為、該溶液流延法により得られるフィルムは光学用途に好ましく用いることが出来、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等の液晶ディスプレイの部材や偏光サングラスなどの防眩用品における偏光膜保護フィルムとして好ましく使用できる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0054】
〔ポリエステル系添加剤の合成〕
[合成例1:ポリエステル系添加剤1]
グリコール成分としてプロピレングリコール(以下「PG」と略す)107.6g、ジカルボン酸成分として無水フタル酸(以下「PA」と略す)361.6g、アルコール成分としてイソノニルアルコール(以下「INA」と略す)412.2g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート(TIPT)0.06gを、温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温し、その後230℃で反応を継続させ、合計19時間脱水縮合反応させてポリエステル系添加剤1(酸価0.4、数平均分子量560)を得た。
【0055】
[合成例2:ポリエステル系添加剤2]
グリコール成分としてPG405g、ジカルボン酸としてアジピン酸(AA)79g、PA240g、モノカルボン酸として安息香酸(BzA)586g及びエステル化触媒としてTIPT0.08gを、温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、その後230℃で反応を継続させ、合計19時間脱水縮合反応させてポリエステル系添加剤2(酸価0.2、数平均分子量410)を得た。
【0056】
[合成例3:ポリエステル系添加剤3]
グリコール成分としてPG401g、ジカルボン酸としてAA327g、モノカルボン酸としてBzA545g及びエステル化触媒としてTIPT0.08gを、温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、その後230℃で反応を継続させ、合計19時間脱水縮合反応させてポリエステル系添加剤3(酸価0.4、数平均分子量400)を得た。
【0057】
[合成例4:ポリエステル系添加剤4]
グリコール成分としてエチレングリコール(以下EGと略す)448g、ジカルボン酸としてAA812g、及びエステル化触媒としてTIPT0.04gを、温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら225℃まで段階的に昇温し、その後225℃で反応を継続させ、合計19時間脱水縮合反応させてポリエステル系添加剤4(酸価0.2、数平均分子量1350)を得た。
【0058】
[合成例5:ポリエステル5]
グリコール成分としてPG383g、ジカルボン酸としてAA381g、PA129g、及びエステル化触媒としてTIPT0.05gを、温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら210℃まで段階的に昇温し、その後210℃で反応を継続させ、合計19時間脱水縮合反応させてポリエステル5(酸価0.4、数平均分子量760)を得た。
【0059】
[合成例6:エステル化合物1]
グリコール成分としてPG648g、ジプロピレングリコール109g、モノカルボン酸成分として安息香酸1980g、及び、テトライソプロピルチタネート0.2gを温度計、攪拌器、還流冷却器を付した内容積3リットルの四ツ口フラスコに仕込み、240℃まで8時間かけて昇温した。その後、240℃で10時間反応させた。反応後、190℃にて未反応原料を減圧除去し、常温液体のジエステルであるエステル化合物1(酸価0.1、数平均分子量290)を得た。
【0060】
[ポリエステル系添加剤5]
上記ポリエステル5とエステル化合物1を重量比で7/3となるように配合したものを、ポリエステル系添加剤5とした。
【0061】
〔光学フィルムの調製〕
上記ポリエステル系添加剤1〜5と、以下に記載の市販のセルロースエステル樹脂及び金属化合物とを用いて、光学フィルムを調製した。
[セルロースエステル樹脂]
トリアセチルセルロース(酢化度60.7%)
ジアセチルセルロース(酢化度55.5%)
[金属化合物]
水酸化カルシウム(和光純薬(株)製)
リチウムステアレート(Li-St、日東化成工業(株)製)
ナトリウムステアレート(Na-St、日東化成工業(株)製)
アルミニウムステアレート(Al-St、日東化成工業(株)製)
カルシウムステアレート(Ca-St、日東化成工業(株)製)
ジンクステアレート(Zn-St、日東化成工業(株)製)
バリウムステアレート(Ba-St、日東化成工業(株)製)
2−エチルヘキサン酸カルシウム(DIC−OCTOATE、DIC(株)製)
2−エチルヘキサン酸/ネオデカン酸カルシウム(DICNATE、DIC(株)製)
ラウリン酸カルシウム(CS-3、日東化成工業(株)製)
モンタン酸カルシウム(CS-8CP、日東化成工業(株)製)
12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(CS-6、日東化成工業(株)製)
【0062】
[実施例1〜18、20]
トリアセチルセルロース(TAC)樹脂100部、ポリエステル系添加剤10部、金属化合物20〜1000ppmを、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、ドープ液を調製した。このドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、セルロースエステルフィルムを得た。得られたフィルムの保存安定性に関する下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例19]
トリアセチルセルロース樹脂の代わりに、ジアセチルセルロース(DAC)樹脂を使用した以外は、実施例16と同様にしてセルロースエステルフィルムを得た。得られたフィルムの保存安定性に関する下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
トリアセチルセルロース(TAC)樹脂100部を、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、ドープ液を調製した。このドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、セルロースエステルフィルムを得た。得られたフィルムの保存安定性に関する下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2〜4]
トリアセチルセルロース(TAC)樹脂100部、ポリエステル系添加剤またはトリフェニルホスフェート(TPP)10部を、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、ドープ液を調製した。このドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、セルロースエステルフィルムを得た。得られたフィルムの保存安定性に関する下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例5]
トリアセチルセルロース(TAC)樹脂100部、TPP10部、金属化合物500ppmを、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、ドープ液を調製した。このドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、セルロースエステルフィルムを得た。得られたフィルムの保存安定性に関する下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0067】
〔保存安定性の評価〕
[酢酸発生量]
得られたフィルム1.2gを、25mlのサンプル瓶に入れ、85℃×湿度90%の条件下に336時間存在させたときに発生する酢酸量を検知管(北川式ガス検知管 酢酸用)で調べた。
酢酸発生量が25ppm以下を◎、50ppm以下を○、それより多いものを×とした。
[透明性]
フィルムの透明性はHAZE値を測定することにより判断した。HAZE値は濁度計(日本電色工業株式会社製「NDH 5000」)を用いて、JIS K 7105に準じて測定した。得られる値が0%に近い程、透明であること表す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示す通り、金属化合物とポリエステル系添加剤とを組み合わせて用いた場合に、酢酸の発生量が少なく、優れた耐加水分解性を示した。ポリエステル系添加剤のみや、TPPと金属化合物との組み合わせでは、安定化効果は確認できなかった。