(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<光学フィルムの搬送方法>
本発明の光学フィルムの搬送方法は、長尺のフィルムを、搬送装置によって構築された少なくとも一対のニップロールを含む搬送経路に沿って(搬送経路に通して)連続的に搬送する方法に関する。
【0020】
本発明では、光学フィルムを上記搬送経路に沿って連続的に搬送する工程において、光学フィルムが上記一対のニップロールの間を通過するときに、前記光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力は、前記光学フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さい。
【0021】
上述のように、光学フィルムの幅方向端部は、波打ちやカール等の多少の凹凸を有しているため、光学フィルムがニップロール間を通過するとき、凹凸部に圧力がかかって、光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を生じることがある。本発明の方法によれば、光学フィルムが上記一対のニップロールの間を通過するときに、光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力が小さく、凹凸部に押圧負荷がかからないか、又は凹凸部への押圧負荷が低減されるため、上記のような不具合を効果的に防止することができる。
【0022】
本発明に係るフィルムの搬送方法の一実施形態について
図1及び
図9を用いて説明する。
図1及び
図9は、それぞれ、本発明に係るフィルムの搬送方法に用いる搬送装置の一例を示す模式図である。
【0023】
図1は、長尺の光学フィルム10が搬送装置Aの搬送経路に沿って連続的に搬送されている様子を示している。
図1に示される搬送装置Aにおいて搬送経路は、光学フィルムをその回転によって連続的に繰り出す繰り出し装置50;走行する光学フィルムを支持するガイドロール60;一対のロールで構成されるニップロール40を含む。図示されていないが、搬送経路の下流末端には通常、光学フィルムを巻き取るための巻き取り装置が備えられており、搬送経路を通過し終えた光学フィルムは順次巻き取られ、フィルムロールとされる。
図1において実線矢印は、フィルムの搬送方向又は繰り出し装置の回転方向を示す。
【0024】
光学フィルムの搬送は例えば次のようにして行うことができる。まず、長尺の光学フィルム10を搬送経路に通して連続搬送を開始する。長尺の光学フィルム10は通常、ロール状に巻回されたフィルムロールとして用意される。このフィルムロールを繰り出し装置(繰り出し装置50又はこれとは別の繰り出し装置)にセットし、当該繰り出し装置から光学フィルム10を連続的に繰り出しつつ、
図1の実線矢印方向に連続搬送を行う。
【0025】
光学フィルムがニップロール40,40の間を通過するときに、光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力は、光学フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さい。ここでニップロール40,40間を通過するときに、光学フィルムにかかる圧力は、感圧紙又は圧力センサーを一対のニップロール間に挟むことによって測定される値である。例えば、幅方向端部にかかる圧力は、幅方向中央部にかかる圧力の30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。幅方向端部にかかる圧力は、0kPaであることがもっとも好ましい。
【0026】
本発明に係るフィルムの搬送方法の他の実施形態について
図9を用いて説明する。
図9は、本発明に係るフィルムの搬送方法に用いる搬送装置Bの一例を示す模式図である。
【0027】
図9は、長尺の光学フィルム10が搬送装置Bの搬送経路に沿って連続的に搬送されている様子を示している。
図9に示される搬送装置Bは、基本的な構成は
図1に示される搬送装置Aと同一である。搬送装置Aと異なる点は、光学フィルム10が一対のニップロール40a,40bのうちニップロール40aに巻掛けられた状態で搬送されている点である。搬送装置Bに備えられている一対のニップロール40a,40bは、例えば光学フィルムの搬送の方向転換を行う位置等に配置される。なお、
図9中、
図1と同一の符号を付した部材については、
図1に基づいて説明した内容と同一であるのでその説明を省略し、以下では、
図1に示される搬送装置Aとは異なる点について説明する。
【0028】
搬送装置Bは、
図9に示されるように、ニップロール40aが抱き角θを有するように光学フィルム10を搬送する。ここで、抱き角θとは、
図9に示すように、光学フィルム10と接触しているニップロールの外周面の円弧で形成される中心角をいう。具体的には、抱き角θは、抱き角θ[°]=(光学フィルム10がニップロールと接触する位置から離れる位置までのニップロールの円周方向の長さ/ニップロールの円周長さ)×360[°]の式で表される。
【0029】
より詳細には、搬送装置Bは、一対のニップロール40,40における光学フィルム10の抱き角が実質的に同じである搬送装置A(
図1)とは異なり、一対のニップロール40a,40bのうち、ニップロール40aにおける光学フィルム10の抱き角が、ニップロール40bにおける光学フィルム10の抱き角よりも大きくなるような状態で光学フィルム10を搬送する。搬送装置Bのようにニップロール40aに巻掛けて光学フィルム10を搬送する場合、ニップロール40aの径方向中心側に光学フィルム10が押付けられる圧力は、搬送装置Aにおけるニップロール40のそれよりも大きくなる。
【0030】
本実施の形態では、上述のように、光学フィルム10がニップロール40a,40bの間を通過するときに光学フィルム10の幅方向端部にかかる圧力が、光学フィルム10の幅方向中央部にかかる圧力よりも小さくなっている。例えば、幅方向端部にかかる圧力は、幅方向中央部にかかる圧力の30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。幅方向端部にかかる圧力は、0kPaであることがもっとも好ましい。
【0031】
したがって、光学フィルム10が一対のニップロール40a、40bの間を通過するときに、光学フィルム10がニップロール40aの径方向中心側に相対的に強く押付けられることになっても、光学フィルム10の幅方向端部にかかる圧力を小さくすることができる。これにより、光学フィルム10がその幅方向端部に波打ちやカール等の多少の凹凸を有していても、光学フィルム10の幅方向端部の凹凸部に押圧負荷がかからないか、又は凹凸部への押圧負荷が低減されるため、光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断が生じることを抑制することができる。
【0032】
搬送装置Bでは、光学フィルム10がニップロール40aの外周面に接して搬送される距離が、他方のニップロール40bの外周面に接して搬送される距離よりも相対的に長くなる。そのため、ニップロール40a,40bのニップ部分からの押圧負荷のみならず、ニップロール40aと光学フィルム10との接触により、光学フィルム10の幅方向端部の凹凸部に押圧負荷がかかりやすくなるおそれがある。また、光学フィルム10がニップロール40aの外周面に接して搬送される距離は、搬送装置A(
図1)のニップロール40の外周面に接して搬送される距離よりも相対的に長くなる。そのため、搬送装置Bを用いた場合には、搬送装置Aを用いた場合に比較して、ニップロール40aと光学フィルム10との接触により、光学フィルム10の幅方向端部の凹凸部に押圧負荷がかかりやすくなるおそれがある。
【0033】
このような場合にも、本実施の形態では、幅方向端部にかかる圧力が、光学フィルム10の幅方向中央部にかかる圧力よりも小さくなっているため、光学フィルム10の幅方向端部に押圧負荷がかかることを抑制することができる。これにより、光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断が生じることを抑制することができる。
【0034】
本発明の光学フィルムの搬送方法は、ニップロールを構成する一方のロールにおける光学フィルムの抱き角θが20°以上160°以下である場合に用いるとより一層効果的であり、60°以上120°以下である場合に用いるとさらに効果的である。
【0035】
光学フィルムを搬送する搬送経路は、2以上のニップロール対を含んでいてもよい。この場合、すべてのニップロール対について、光学フィルムがニップロール40,40又はニップロール40a,40bの間を通過するときに、光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力は、光学フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さいことが好ましい。
【0036】
光学フィルムを搬送経路に沿って連続的に搬送するときのフィルム搬送速度は、例えば2〜120m/minの範囲であり、好ましくは10〜50m/minの範囲である。
【0037】
本発明の光学フィルムの搬送方法は、光学フィルムを連続的に搬送する工程及び当該搬送工程を含む光学フィルムを用いたあらゆる製造工程に適用することができる。この製造工程の具体例を挙げれば、光学フィルムに何らかの処理(例えばコーティング処理や延伸処理)を施す工程、光学フィルムを他の部材(フィルム等)に貼合する工程などであり、本発明の光学フィルムの搬送方法は、これら製造工程の前後における光学フィルムの搬送に用いることができる。
【0038】
<ニップロール>
ニップロール40,40,40a,40bは、搬送されるフィルムの上下に配置される一対のロールであり、上下から挟んでフィルムを押圧できるものである。ニップロール40,40,40a,40bは、搬送されるフィルムの張力の調整・制御、フィルム搬送のための駆動力、フィルム搬送速度の制御、フィルムへの押圧、フィルム搬送の方向転換などの役割を担い得る。
【0039】
ニップロール40,40,40a,40bについて、
図2〜
図6を用いて説明する。
図2〜
図4は、それぞれ、ニップロールに用いられるロールの構成の一例を示す図である。
図5及び
図6は、それぞれ、光学フィルムの幅方向断面図の一例を示す図である。
【0040】
図2に示されるように、ロール42は、ロール部32と軸20とを含む。軸20は、ニップロールを回転自在に支持するため、ロール部32の両端面に結合された軸である。ロール部32は、第1ロール部32aと、第1ロール部32aのロール軸方向両端部に配置された第2ロール部32bとからなる。第1ロール部32a及び第2ロール部32bは、それぞれ一定の径を有する円柱形状であり、回転軸を共有している。第2ロール部32bの径D2は、第1ロール部32aの径D1よりも小さい。
【0041】
図5及び
図6に示されるように、光学フィルム10は、幅方向中央部10aは平坦であり、幅方向端部10bに波打ち又はカールを有している。光学フィルム10がニップロールを通過する際には、ロール42の第1ロール部32aに挟まれる部分を光学フィルムの幅方向中央部10aが通過し、第2ロール部32bに挟まれる部分を光学フィルムの幅方向端部10bが通過する。すなわち、第1ロール部32aは、光学フィルムの幅方向中央部10aに対応する領域であり、第2ロール部32bは、光学フィルムの幅方向端部10bに対応する領域である。
【0042】
第1ロール部32aのロール軸方向に沿った長さL3は、搬送される光学フィルム10の幅W3よりも短く、好ましくは、光学フィルムの幅方向中央部10aの幅W1よりも短い。これにより、光学フィルム10が一対のロール42で構成されるニップロール間を通過する際に、光学フィルム10の幅方向端部10bが、第1ロール部32aよりもロール軸方向外側に位置するため、光学フィルム10の幅方向端部10bには、第1ロール部32aからの圧力がかからず、第2ロール部32bからの圧力がかかることになる。第2ロール部32bの方が、第1ロール部32aよりも径が小さいため、第2ロール部32bに挟まれる光学フィルム10の幅方向端部10bにかかる圧力は、第1ロール部32aに挟まれる光学フィルム10の幅方向中央部10aにかかる圧力よりも小さくなる。よって、光学フィルム10の幅方向端部10bに波打ちやカール等の凹凸が存在していても、ニップロールを通過する際に、凹凸部にかかる圧力が小さく、凹凸部がニップロールに挟み込まれることにより生じる、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を抑制することができる。第1ロール部32aのロール軸方向に沿った長さL3は、例えば、300mm以上2300mm以下とすることができる。
【0043】
第2ロール部32bのロール軸方向に沿った長さL2は、搬送される光学フィルム10の幅方向端部10bの幅W2よりも長いことが好ましい。光学フィルム10の幅方向端部10bの幅W2とは、波打ちやカール等の凹凸の存在する状態における、幅方向端部10bの幅方向に沿った距離を意味する。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bは、一対の第2ロール部32b間に形成される空隙内に収容されるため、光学フィルム10の厚み方向への変形が抑制される。よって、光学フィルム10がニップロールを通過する際に、過度の波打ちやカールの発生を抑制でき、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を効果的に抑制することができる。第2ロール部32bのロール軸方向に沿った長さL2は、例えば、30mm以上200mm以下とすることができる。
【0044】
第1ロール部32aの径D1と、第2ロール部32bの径D2との差(L1×2)は、20mm以下が好ましく、10mm以下がさらに好ましい。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bの過度の波打ちやカールの発生を抑制できる。一方、第1ロール部32aの径D1と、第2ロール部32bの径D2との差は、2mm以上が好ましく、5mm以上がさらに好ましい。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bへかかる圧力を十分に小さくでき、幅方向端部10bの凹凸部がニップロールに挟み込まれることにより生じる、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を抑制することができる。
【0045】
ニップロールに用いられるロールの他の構成について、
図3を用いて説明する。
図3に示されるロール44は、ロール部34と軸20とを含み、ロール部34は、第1ロール部34aと、第1ロール部34aのロール軸方向両端部に配置された第2ロール部34bとからなる。
図3に示されるロール44は、基本的な構成は
図2に示されるロール42と同一である。ロール42と異なる点は、第2ロール部34bは第1ロール部34aに接する部分から、ロール44の軸方向端部側に向かって径が小さくなるテーパー形状である点である。なお、
図3では、テーパー形状の第1ロール部34aに接する部分から、ロール44の軸方向端部までは、ロール回転軸を通過する断面において直線となっているが、これに限定されない。例えば、第1ロール部34aに接する部分から、ロール44の軸方向端部までは、ロール回転軸を通過する断面において曲線であり、テーパー形状の外形が曲面で構成されていてもよい。
【0046】
第1ロール部34aのロール軸方向に沿った長さL3は、搬送される光学フィルム10の幅W3よりも短く、光学フィルムの幅方向中央部10aの幅W1よりも短いことが好ましい。これにより、光学フィルム10が一対のロール44で構成されるニップロール間を通過する際に、光学フィルム10の幅方向端部10bが、第1ロール部34aよりもロール軸方向外側に位置するため、光学フィルム10の幅方向端部には、第1ロール部34aからの圧力がかからず、第2ロール部34bからの圧力がかかることになる。第2ロール部34bの方が、第1ロール部34aよりも径が小さいため、第2ロール部34bに挟まれる光学フィルム10の幅方向端部10bにかかる圧力は、第1ロール部34aに挟まれる光学フィルム10の幅方向中央部10aにかかる圧力よりも小さくなる。よって、光学フィルム10の幅方向端部10bに波打ちやカール等の凹凸が存在していても、ニップロールを通過する際に、凹凸部にかかる圧力が小さく、凹凸部がニップロールに挟み込まれることにより生じる、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を抑制することができる。第1ロール部34aのロール軸方向に沿った長さL3は、例えば、300mm以上2300mm以下とすることができる。
【0047】
第2ロール部34bのロール軸方向に沿った長さL2は、搬送される光学フィルム10の幅方向端部10bの幅W2よりも長いことが好ましい。光学フィルム10の幅方向端部10bの幅W2とは、波打ちやカール等の凹凸の存在する状態における、幅方向端部10bの幅方向に沿った距離を意味する。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bは、一対の第2ロール部34b間に形成される空隙内に収容されるため、光学フィルム10の厚み方向への変形が抑制される。よって、光学フィルム10がニップロールを通過する際に、過度の波打ちやカールの発生を抑制でき、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を効果的に抑制することができる。第2ロール部34bのロール軸方向に沿った長さL2は、例えば、30mm以上200mm以下とすることができる。
【0048】
第1ロール部34aの径D1と、第2ロール部34bの軸方向端部の径D2との差(L1×2)は、20mm以下が好ましく、10mm以下がさらに好ましい。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bの過度の波打ちやカールの発生を抑制できる。一方、第1ロール部34aの径D1と、第2ロール部34bの軸方向端部の径D2との差は、2mm以上が好ましく、5mm以上がさらに好ましい。これによると、光学フィルム10の幅方向端部10bへかかる圧力を十分に小さくでき、幅方向端部10bの凹凸部がニップロールに挟み込まれることにより生じる、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を抑制することができる。
【0049】
ニップロールに用いられるロールの他の構成について、
図4を用いて説明する。
図4に示されるロール46は、ロール部36と軸20とを含み、ロール部36は、一定の径を有する円柱状の第1ロール部36aからなる。すなわち、ロール46は、第1ロール部36aのみからなり、第1ロール部36aよりも径の小さい第2ロール部を含まない。
【0050】
第1ロール部36aのロール軸方向に沿った長さL3は、搬送される光学フィルム10の幅W3よりも短く、好ましくは光学フィルムの幅方向中央部10aの幅W1よりも短い。これにより、光学フィルム10が一対のロール46で構成されるニップロール間を通過する際に、光学フィルム10の幅方向端部10bが、第1ロール部36aよりもロール軸方向外側に位置するため、フィルム10の幅方向端部10bに波打ちやカール等の凹凸が存在していても、ニップロールを通過する際に、凹凸部に圧力がかからず、凹凸部がニップロールに挟み込まれることにより生じる、光学フィルムの折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断を抑制することができる。
【0051】
上記では、一対のロールで構成されるニップロールにおいて、ロールの両方が、
図2〜
図4で示されるロールである場合を説明したが、少なくとも一方のロールが、
図2〜
図4に示される形状のロールであれば、光学フィルムが一対のロール間を通過するときに、光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力を、前記光学フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さくすることができる。好ましくは、一対のロールで構成されるニップロールにおいて、両方のロールが
図2〜
図4に示される形状のロールである。また、一対のロールにおいて、
図2〜
図4のロールを組み合わせて用いることもできる。
【0052】
上記した搬送装置B(
図9)のように、一対のニップロール40a,40bそれぞれの抱き角が異なる状態で光学フィルム10が搬送される場合には、抱き角が相対的に大きい側のニップロール40aの径方向中心に向けて光学フィルム10が押付けられた状態で搬送される。そのため、光学フィルム10の幅方向端部にかかる圧力を小さくするために、一対のニップロールのうち、少なくとも抱き角が相対的に大きいニップロールに、
図2〜
図4に示される形状のロールを用いることが好ましい。
【0053】
ニップロール40,40,40a,40bの材質は、金属やゴムであることができる。一対のニップロール40,40,40a,40bは互いに同じ材質からなっていてもよいし、異なる材質からなっていてもよい。ニップロール40,40,40a,40bの径は特に制限されないが、通常100〜700mmφの範囲であり、好ましくは150〜400mmφの範囲である。
【0054】
ニップロール40,40a,40bがゴムロールである場合、表面に配置されるゴム層は、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Si)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FPM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)などであることができる。ゴムロールの表面硬度は、好ましくは20〜95度であり、より好ましくは40〜90度である。
【0055】
一対のニップロール40,40,40a,40bの少なくとも一方が金属ロール又は高硬度のゴムロールである場合、光学フィルム10の幅方向端部10bに折れ込み、割れ、亀裂、破断が発生しやすくなる。従って本発明の方法は、このような場合にとりわけ有効である。
【0056】
<光学フィルム>
本発明において使用し得る光学フィルムとしては、偏光子(偏光フィルム);保護フィルム;位相差フィルム;基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム;ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム;表面反射防止機能付きフィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルムなどが挙げられる。
【0057】
偏光子としては、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素が吸着配向しているものが挙げられる。
【0058】
保護フィルムとしては、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなるフィルムが挙げられる。
【0059】
環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、「アートンフィルム」(JSR(株)製)、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
【0060】
光学補償フィルムに相当する市販品としては、「WVフィルム」(富士フイルム(株)製)、「NHフィルム」(新日本石油(株)製)、「NRフィルム」(新日本石油(株)製)などが挙げられる。
【0061】
反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、たとえば、「DBEF」(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、「APF」(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。
【0062】
視野角補償フィルムとしては、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。
【0063】
光学フィルムは、上記のいずれかの光学フィルムのみからなる単層光学フィルムであってもよいし、2層、3層又はそれ以上の多層構造からなる積層光学フィルムであってもよい。
【0064】
積層光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルムに水系接着剤を介して保護フィルムを貼合したものが挙げられる。この場合、各フィルムの水分による膨張率の差により、積層フィルムの幅方向端部に波打ちやカールが発生しやすい。この不具合は、特に偏光フィルムの両面に、それぞれ異なる保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂(COP)フィルム)を水系接着剤を介して貼合した場合に顕著である。本発明は、このような不具合の生じやすい光学フィルムに好適に適用される。
【0065】
また、積層光学フィルムとして、接着剤や粘着剤を介して複数のフィルムを貼合したものを用いる場合においても、本発明の光学フィルムの搬送方法を好適に用いることができる。このような積層光学フィルムは、接着剤や粘着剤が乾燥、硬化等される前の変形しやすい状態では特に、搬送時にかかる圧力によって積層光学フィルムの端部から接着剤や粘着剤がはみ出すことがある。このような接着剤や粘着剤のはみ出しは、積層光学フィルムの搬送経路や製造経路の汚染や、積層光学フィルムの外表面の汚染を引き起こす。
【0066】
そこで、このような積層光学フィルムを搬送経路に沿って連続的に搬送する工程において、本発明のニップロールを用いることにより、積層光学フィルムの幅方向端部にかかる圧力を、積層光学フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さくすることができる。これにより、積層光学フィルムの端部から接着剤や粘着剤が、積層光学フィルムの幅方向外側に押出されることを抑制し、接着剤や粘着剤が積層光学フィルムの端部からはみ出すことを抑制することができる。その結果、接着剤や粘着剤のはみ出しによる積層光学フィルムの搬送経路や製造経路の汚染や、積層光学フィルムの外表面の汚染を抑制することができる。
【0067】
後述する偏光板の製造方法においては、偏光子と保護フィルムとを接着剤を介して貼合する。そのため、特に接着剤が硬化する前の搬送工程において本発明の光学フィルムの搬送方法を用いることにより、偏光板の端部から接着剤がはみ出すことを防止して、偏光板の製造経路の汚染や偏光板の外表面の汚染を抑制することができる。
【0068】
<偏光板の製造方法>
本発明の偏光板の製造方法は、一対のロールで構成されるニップロールを含む搬送経路に沿って原料フィルムを搬送させる搬送工程と、搬送された原料フィルムを用いて偏光板を製造する製造工程とを含む。搬送工程において、原料フィルムが一対のロール間を通過するときに、原料フィルムの幅方向端部にかかる圧力は、原料フィルムの幅方向中央部にかかる圧力よりも小さい。
【0069】
搬送工程において用いるロールは、上記の光学フィルムの搬送方法で用いるロールと同様のものを用いることができる。これにより、原料フィルムが上記一対のニップロールの間を通過するときに、原料フィルムの幅方向端部にかかる圧力が小さく、凹凸部に押圧負荷がかからないか、又は凹凸部への押圧負荷が低減されるため、凹凸部に圧力がかかることにより、原料フィルムに折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断が生じることを効果的に防止することができる。
【0070】
本発明の他の偏光板の製造方法は、原料フィルムを用いて偏光板を製造する製造工程と、一対のロールで構成されるニップロールを含む搬送経路に沿って偏光板を搬送させる搬送工程とを含む。搬送工程において、偏光板が一対のロール間を通過するときに、偏光板の幅方向端部にかかる圧力は、偏光板の幅方向中央部にかかる圧力よりも小さい。
【0071】
搬送工程において用いるロールは、上記の光学フィルムの搬送方法で用いるロールと同様のものを用いることができる。これにより、偏光板が上記一対のニップロールの間を通過するときに、偏光板の幅方向端部にかかる圧力が小さく、凹凸部に押圧負荷がかからないか、又は凹凸部への押圧負荷が低減されるため、凹凸部に圧力がかかることにより、偏光板に折れ込み、割れ、亀裂(ヒビ)、破断が生じることを効果的に防止することができる。
【0072】
<偏光板>
(1)偏光板の構成
図7は、本発明の偏光板の製造方法により作製される偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
図7に示されるように、偏光板1は、偏光子(偏光フィルム)5と、その一方の面に第1接着剤層15を介して積層される第1保護フィルム110と、他方の面に第2接着剤層25を介して積層される第2保護フィルム120とを備える両面保護フィルム付偏光板であることができる。偏光板1は、第1保護フィルム110及び/又は第2保護フィルム120上に積層される他の光学層や粘着剤層等をさらに有していてもよい。
【0073】
また偏光板は、
図8に示される偏光板2のように、偏光子5と、その一方の面に第1接着剤層15を介して積層される第1保護フィルム110とを備える片面保護フィルム付偏光板であってもよい。偏光板2は、第1保護フィルム110及び/又は偏光子5上に積層される他の光学層(又は光学フィルム)や粘着剤層等をさらに有していてもよい。他の光学層としては、上述の種々の光学フィルムが挙げられる。
【0074】
以下に、偏光板の原料フィルムである偏光子、保護フィルム及び偏光子の片面又は両面に保護フィルムを貼合した積層光学フィルムについて説明する。
【0075】
(2)偏光子
偏光子5としては、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素が吸着配向しているものが用いられる。かかる偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素で染色することにより、ヨウ素を吸着させる工程;ヨウ素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる偏光フィルムを用いることができる。
【0076】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
【0077】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0078】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子5(偏光フィルム)の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば10〜150μm程度である。
【0079】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、ヨウ素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0080】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
【0081】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素で染色する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素が含有された水溶液(染色浴)に浸漬する方法が採用される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0082】
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する染色浴に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この染色浴におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度であることができる。また染色浴の温度は、20〜40℃程度であることができる。
【0083】
ヨウ素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液(架橋浴)に浸漬する方法が採用される。この架橋浴は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。架橋浴におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり1〜15重量部程度であることができ、ヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり0.1〜15重量部程度であることができる。架橋浴の温度は、50℃以上であることができ、例えば50〜85℃である。
【0084】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5〜40℃程度である。浸漬時間は通常、1〜120秒程度である。
【0085】
水洗後に乾燥処理を施して、偏光子5が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。偏光子5の厚みは15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。偏光子5の厚みを15μm以下とすることにより偏光板1,2の薄膜化を実現できる。偏光子5の厚みは通常、5μm以上である。
【0086】
(3)第1及び第2保護フィルム
第1及び第2保護フィルム110,120はそれぞれ、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなるフィルムであることができる。第1保護フィルム110と第2保護フィルム120は、互いに同種の保護フィルムであってもよいし、異種の保護フィルムであってもよい。中でも、第1保護フィルム110と第2保護フィルム120とが異種の保護フィルムの場合、偏光子にこれらの保護フィルムを貼り合せた積層光学フィルムにおいて、各フィルムの水分による膨張率の差により、積層光学フィルムの幅方向端部に波打ちやカールが発生しやすい。また、第1保護フィルム110と第2保護フィルム120は、偏光子との貼合前に加湿処理を行ってもよいが、この場合にも、保護フィルムの幅方向端部に波打ちやカールが発生しやすい。本発明は、このような不具合の生じやすいフィルムに好適に適用される。
【0087】
第1及び/又は第2保護フィルム110,120は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0088】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0089】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0090】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でもTACが特に好ましい。
【0091】
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロースエステル系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としてはジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしてはジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0092】
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
【0093】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
【0094】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C
1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0095】
第1及び/又は第2保護フィルム110,120の偏光子5とは反対側の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。
【0096】
第1及び第2保護フィルム110,120の厚みは、偏光板1,2の薄型化の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。当該厚みは、強度及び取扱性の観点から、通常5μm以上である。
【0097】
(4)積層光学フィルム
積層光学フィルムは、偏光子の片面又は両面に、接着剤層を介して保護フィルムが貼合されたもので、その後、乾燥工程、さらに必要に応じて切断工程を得て、偏光板が製造される。第1及び第2接着剤層15,25を形成する接着剤としては、水系接着剤又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることができる。第1接着剤層15を形成する接着剤と第2接着剤層25を形成する接着剤とは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0098】
水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤が好適に用いられる。
【0099】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体、又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等を用いることができる。水系接着剤は、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物等の添加剤を含むことができる。
【0100】
水系接着剤を使用する場合は、偏光子5と保護フィルムとを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するために乾燥させる乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程後、例えば20〜45℃程度の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
【0101】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線のような活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤をいい、例えば、重合性化合物及び光重合開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むもの等を挙げることができる。重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマーのような光重合性モノマーや、光重合性モノマーに由来するオリゴマーを挙げることができる。光重合開始剤としては、紫外線のような活性エネルギー線の照射により中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルのような活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。重合性化合物及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性接着剤として、光硬化性エポキシ系モノマー及び光カチオン重合開始剤を含むものを好ましく用いることができる。
【0102】
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子5と保護フィルムとを貼合した後、必要に応じて乾燥工程を行い、次いで活性エネルギー線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0103】
(5)粘着剤層
図7に示される偏光板1における第1保護フィルム110又は第2保護フィルム120上、
図8に示される偏光板2における偏光子5上に、偏光板を他の部材(例えば液晶表示装置に適用する場合における液晶セル)に貼合するための粘着剤層を積層してもよい。粘着剤層を形成する粘着剤は通常、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のような架橋剤を加えた粘着剤組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。粘着剤層の厚みは1〜40μmであることができるが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で薄く形成することが好ましく、具体的には3〜25μmであることが好ましい。
【0104】
粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、保護フィルム面又は偏光子面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む粘着剤組成物(粘着剤溶液)を塗工し、乾燥して粘着剤層を形成してもよいし、セパレーター(剥離フィルム)上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を保護フィルム面又は偏光フィルム面に転写してもよい。粘着剤層を保護フィルム面又は偏光子面に形成する際には、必要に応じて保護フィルム面若しくは偏光子面、又は粘着剤層の片面若しくは両面に表面処理、例えばコロナ処理等を施してもよい。
【0105】
(6)偏光板の製造方法
上述の偏光子5(偏光フィルム)の片面に第1接着剤層15を介して第1保護フィルム110を常法に従って貼合することにより、片面保護フィルム付偏光板用原料フィルムを得ることができる。この片面保護フィルム付偏光板用原料フィルムを用いて、
図8に示される片面保護フィルム付の偏光板2を得ることができる。また、偏光子5の他面に第2接着剤層25を介して第2保護フィルム120を貼合すれば、両面保護フィルム付偏光板用原料フィルムを得ることができる。この両面保護フィルム付偏光板用原料フィルムを用いて、
図7に示される両面保護フィルム付の偏光板1を得ることができる。両面保護フィルム付の偏光板1を得る場合において、第1及び第2保護フィルム110,120は同時に貼合されてもよいし、逐次的に貼合されてもよい。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0107】
<実施例1>
(A)偏光フィルムの作製
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:30μm)を連続的に搬送しながら、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/5.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された長尺の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの厚みは11.1μm、幅は1280mmであった。
【0108】
(B)積層光学フィルムの作製
上記(A)で得られた偏光フィルムを連続的に搬送するとともに、長尺の第1熱可塑性樹脂フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」にハードコート層が形成されたフィルム、厚み:32.4μm、幅:1330mm〕及び長尺の第2熱可塑性樹脂フィルム〔JSR(株)製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「FEKB015D3」、厚み:15.1μm、幅:1330mm〕を連続的に搬送し、偏光フィルムと第1熱可塑性樹脂フィルムとの間、及び偏光フィルムと第2熱可塑性樹脂フィルムとの間に水系接着剤を注入しながら、貼合ロール間に通して第1熱可塑性樹脂フィルム/水系接着剤層/偏光フィルム/水系接着剤層/第2熱可塑性樹脂フィルムからなる積層光学フィルムを得た。上記の水系接着剤には、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー」、平均重合度1100〕を95℃の熱水に溶解して得られた濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液に架橋剤〔日本合成化学工業(株)製のグリオキシル酸ナトリウム〕をポリビニルアルコール粉末10重量部に対して1重量部の割合で混合した水溶液を用いた。得られた積層光学フィルムの幅方向端部には、幅約30mmの範囲に波打ちが生じていた。
【0109】
(C)積層光学フィルムの搬送
得られた積層光学フィルムをゴムロールからなるニップロールを含む搬送経路に通して、搬送速度1〜40m/minで連続的に搬送させた。ニップロールを構成する一対のロールは、いずれも
図2に示す形状である(第1ロール部の長さL3:1260mm、第2ロール部の長さL2:70mm、第1ロール部の径D1:150mm、第2ロール部の径D2:145mm)。積層光学フィルムがニップロールを通過するときに、偏光板の幅方向端部が第2ロール部間の空隙を通過するように、積層光学フィルムとニップロールの位置関係を調整したところ、積層光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂、破断は生じず、積層光学フィルムを連続的に問題なく搬送することができた。また、ニップロールを通過した後の積層光学フィルムの端部からの水系接着剤のはみ出しも見られなかった。
【0110】
<実施例2>
実施例1の(C)で用いるニップロールとして、
図3に示す形状(第1ロール部の長さL3:1260mm、第2ロール部の長さL2:70mm、第1ロール部の径D1:150mm、第2ロール部の径D2:140mm)のものを用いること以外は、実施例1と同様にして積層光学フィルムの連続搬送を行った。積層光学フィルムがニップロールを通過するときに、積層光学フィルムの幅方向端部が第2ロール部間の空隙を通過するように、積層光学フィルムとニップロールの位置関係を調整したところ、積層光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂、破断は生じず、積層光学フィルムを連続的に問題なく搬送することができた。また、ニップロールを通過した後の積層光学フィルムの端部からの水系接着剤のはみ出しも見られなかった。
【0111】
<実施例3>
実施例1の(C)で用いるニップロールとして、
図4に示す形状(第1ロール部の長さL3:1260mm、第1ロール部の径D1:150mm)のものを用いること以外は、実施例1と同様にして積層光学フィルムの連続搬送を行った。積層光学フィルムがニップロールを通過するときに、積層光学フィルムの幅方向端部が第1ロール部の外側を通過するように、積層光学フィルムとニップロールの位置関係を調整したところ、積層光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂、破断は生じず、積層光学フィルムを連続的に問題なく搬送することができた。また、ニップロールを通過した後の積層光学フィルムの端部からの水系接着剤のはみ出しも見られなかった。
【0112】
<比較例1>
実施例1の(C)で用いるニップロールとして、
図4に示す形状(第1ロール部の長さL3:1400mm、第1ロール部の径D1:150mm)のものを用いること以外は、実施例1と同様にして積層光学フィルムの連続搬送を行った。積層光学フィルムがニップロールを通過するときに、積層光学フィルムの幅方向端部が第1ロール部間を通過し、積層光学フィルムに折れ込み、割れ、亀裂、破断が生じた。また、ニップロールを通過した後の積層光学フィルムの端部から水系接着剤がはみ出ていた。