(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝幅検出ステップで検出された前記溝幅が許容値を下回った場合に、前記切削ブレードを新品と交換する切削ブレード交換ステップを更に備えた、請求項1または2に記載の板状物の加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題に対処するために、実際に被加工物を加工する際の条件と同条件で切削加工を実施し、チップの寸法差が規格外とならない切削ブレードの総加工距離を実験で見つけ、実験で見出した総加工距離に余裕を持たせた距離、すなわち、総加工距離よりも所定距離短い距離被加工物を切削した切削ブレードについては新品の切削ブレードに交換している。
【0007】
しかし、切削ブレードは個体によって磨耗具合にばらつきがあることから、寸法規格外の不良チップを生産しないようにするために、実際はさらに過度な余裕を持ってブレード交換までの総加工距離を設定している。そのため、切削ブレードの交換が頻発して作業性が悪くなる上、切削ブレードのコストが嵩むという問題がある。
【0008】
よって、板状の被加工物を切削ブレードで切断する場合には、被加工物の下面側における切削溝の溝幅を容易に検出できるようにし、不良チップを生産することなく、また、切削ブレードの適切な交換のタイミングを管理して、切削加工時の作業効率を上げ、ブレード交換に伴うコストの増加を抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、切断予定ラインが設定された板状物を切削ブレードで切断する板状物の加工方法であって、回転する該切削ブレードの刃先先端を
ブレード逃げ溝を備える治具テーブルで直に吸引保持した板状物の下面の高さ位置から第一の距離下に位置づけるとともに該切削ブレードと板状物とを相対移動させ、該切削ブレードで該切断予定ラインに沿って板状物を切断する切断ステップと、板状物を切断した後の該切削ブレードの該刃先先端を検査用板状物の上面の高さ位置から該第一の距離下に位置づけるとともに該切削ブレードと該検査用板状物とを相対移動させて確認用切削溝を形成する確認用切削溝形成ステップと、該確認用切削溝形成ステップを実施した後、該検査用板状物の上面の該確認用切削溝の溝幅を検出する
ことで、該切断ステップで形成された板状物の下面における切削溝の溝幅を検出する溝幅検出ステップと、を備えた板状物の加工方法である。
【0010】
前記検査用板状物は、前記切断ステップで切断される板状物で兼用され、前記確認用切削溝形成ステップでは、該板状物の切断予定ラインまたは該板状物の端材部分を前記切削ブレードで切削して前記確認用切削溝を形成するものとすると好ましい。
【0011】
本発明に係る板状物の加工方法においては、前記溝幅検出ステップで検出された前記溝幅が許容値を下回った場合に、前記切削ブレードを新品と交換する切削ブレード交換ステップを更に備えるものとすると好ましい。
また、本発明に係る板状物の加工方法において、前記溝幅検出ステップでは、前記切断ステップで形成された板状物の下面における切削溝の溝幅を検出することに加えて、前記切断ステップで形成された板状物の上面における該切削溝の溝幅を検出し、検出した板状物の下面における該切削溝の溝幅と板状物の上面における該切削溝の溝幅とから、作製されたチップの側面の公差を算出すると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る板状物の加工方法は、回転する切削ブレードの刃先先端を
ブレード逃げ溝を備える治具テーブルで直に吸引保持した板状物の下面の高さ位置から第一の距離下に位置づけるとともに切削ブレードと板状物とを相対移動させ、切削ブレードで切断予定ラインに沿って板状物を切断する切断ステップと、板状物を切断した後の切削ブレードの刃先先端を検査用板状物の上面の高さ位置から第一の距離下に位置づけるとともに切削ブレードと検査用板状物とを相対移動させて確認用切削溝を形成する確認用切削溝形成ステップと、確認用切削溝形成ステップを実施した後、検査用板状物の上面の確認用切削溝の溝幅を検出する
ことで、切断ステップで形成された板状物の下面における切削溝の溝幅を検出する溝幅検出ステップと、を備えているため、被加工物である板状物の下面からさらに切り込む深さ分だけ検査用板状物の上面から切削ブレードで切り込んで確認用切削溝を形成することで、被加工物の下面側における切削溝の溝幅を確認用切削溝を利用して検査用板状物の上面側から容易に検出することができる。
【0013】
また、本発明に係る板状物の加工方法は、溝幅検出ステップで検出された溝幅が許容値を下回った場合に、切削ブレードを新品と交換する切削ブレード交換ステップを更に備えることで、総切削距離について過度な余裕を持たせて切削ブレードの交換をする必要がなくなり、より適切なタイミングで切削ブレードの交換を行うことができるようになる。そのため、切削加工の作業効率を上げ、また、ブレード交換に伴うコスト増加を抑制できる。
また、本発明に係る板状物の加工方法において、溝幅検出ステップでは、切断ステップで形成された板状物の下面における切削溝の溝幅を検出することに加えて、切断ステップで形成された板状物の上面における切削溝の溝幅を検出することで、検出した板状物の下面における切削溝の溝幅と板状物の上面における切削溝の溝幅とから、作製されたチップの側面の公差を算出することが可能となり、公差が許容値から外れてしまった不良チップの作製を最低限に留めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)、(B)に示す切削加工が施される板状物Wは、例えば、QFN(Quad Flat Non−leaded package)基板等のパッケージ基板である。板状物Wは、合金等からなり外形が矩形状であるフレームW1を有している。
図1(A)に示す板状物Wの上面Wa上には、分割されることでデバイスを備える個々のチップCとなるデバイス領域Wa1が複数(図示の例においては、3つ)形成されている。各デバイス領域Wa1は、小片化され廃棄される端材部分Wa2によってその周囲を囲まれている。デバイス領域Wa1は、互いに直交する複数の切断予定ラインSで区画されており、切断予定ラインS上には、図示しない各デバイスに繋がる複数の電極S1が配設されている。各電極S1同士はフレームW1にモールドされた樹脂Jにより絶縁されている。
図1(B)は板状物Wの下面Wbを示しており、
図1(A)に示す各デバイス領域Wa1の下面側は、デバイスを保護するモールド樹脂Jによりそれぞれ封止されている。そして、板状物Wは、切断予定ラインSに沿って複数の電極S1が中央で切断されることで、図示しないデバイスを封止したモールド樹脂Jと、複数の切断された電極S1とを備えたチップCに分割される。
【0016】
図2に示す切削装置1は、板状物Wに切削加工を施すことができる装置であり、板状物Wを保持する保持手段3と、回転可能な切削ブレード60で板状物Wを切削する切削手段6とを少なくとも備えている。なお、
図2においては板状物Wの構造を簡略化して示している。
【0017】
保持手段3は、例えば、板状物Wを保持する保持面30aを備える治具テーブル30と、治具テーブル30が搭載される治具ベース31とを備えている。保持手段3は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心周りに回転可能であるとともに、図示しない切削送り手段によってX軸方向に往復移動可能となっている。
【0018】
治具テーブル30はSUS等の金属材料からなる矩形状の平板であり、その上面である保持面30aで板状物Wを吸引保持することができる。保持面30aには、
図1(A)に示す板状物Wの3つのデバイス領域Wa1にそれぞれ対応するように、複数のブレード逃げ溝300e及び複数の吸引孔300cからなる3つの吸引領域がX軸方向に均等な距離離れて並んで形成されている。
【0019】
治具テーブル30の3つの吸引領域は、それぞれ直交するブレード逃げ溝300eによって区画されている。各ブレード逃げ溝300eは、切削ブレード60で板状物Wを切断する際に治具テーブル30と切削ブレード60との接触を避けるために形成されており、板状物Wを治具テーブル30で保持した状態における
図1(A)に示す各切断予定ラインSの直下に位置するように保持面30aに形成されている。ブレード逃げ溝300eの両端は、例えば治具テーブル30の外周をそれぞれ通り抜けるように開口している。ブレード逃げ溝300eの幅は、切削ブレード60の刃厚よりも広くなっている。したがって、回転させた状態の切削ブレード60を板状物Wを切断する切り込み高さ位置まで下降させ、この切削ブレード60に向かって板状物Wを保持する保持手段3を切削送りし、板状物Wを外周端から反対の外周端まで切削した場合であっても、治具テーブル30と切削ブレード60とが接触することはない。
【0020】
ブレード逃げ溝300eで区画された各領域の中央部には、治具テーブル30を厚さ方向に貫通するように吸引孔300cがそれぞれ形成されている。各吸引孔300cは、分割により作製される
図1(A)に示すチップCを一対一で吸引することができる。
【0021】
図2に示すように、治具ベース31の上面は、治具テーブル30が載置される2重環状の載置面31aとなっている。治具ベース31の中央部分には治具テーブル30の各吸引孔300cの下端と連通する第一の吸引路311が形成されている。
【0022】
治具ベース31の外周側には、治具ベース31の載置面31aに治具テーブル30を載置した場合に治具テーブル30の下面の外側領域に向かい合う第二の吸引路312が形成されている。なお第一の吸引路311と第二の吸引路312とは互いに独立している。
【0023】
第一の吸引路311の下端側には、配管320の一端が接続されている。配管320のもう一端には、真空発生装置等からなる吸引源32が接続されている。配管320上には、例えば第一のソレノイドバルブ321が配設されており、第一のソレノイドバルブ321は、配管320、治具ベース31の第一の吸引路311及び治具テーブル30の吸引孔300cまでの経路が吸引源32に連通する状態と大気に開放された状態とを切り替える機能を有している。
【0024】
例えば、配管320からは分岐管322が分岐して延びており、分岐管322の一端は、治具ベース31の第二の吸引路312に連通している。分岐管322上には、例えば第二のソレノイドバルブ323が配設されており、第二のソレノイドバルブ323は、分岐管322及び治具ベース31の第二の吸引路312までの経路が吸引源32に連通する状態と大気に開放された状態とを切り替える機能を有している。
【0025】
切削手段6は、Y軸方向への割り出し送り及びZ軸方向への切り込み送りが可能となっており、例えば、板状物Wに回転しながら切り込む切削ブレード60と、先端に装着された切削ブレード60を支持する回転可能なスピンドル61と、を少なくとも備えている。
【0026】
切削ブレード60は、例えば、外形が環状のワッシャー型の切削ブレードであり、ダイヤモンド砥粒が適宜のバインダーで固定されたものである。切削ブレード60の刃厚は例えば0.25mmとなっている。スピンドル61は、その軸方向が保持手段3の移動方向(X軸方向)に対し水平方向に直交する方向(Y軸方向)であり、その前端側(紙面における手前側)に、着脱フランジ63及び固定ナット64によって切削ブレード60が固定されている。そして、図示しないモータによりスピンドル61が回転駆動されることに伴って、切削ブレード60も高速回転する。なお、切削ブレード60は、例えばアルミニウムからなる台金(ハブ)と台金から径方向外側に向かって突出するように形成された切り刃とを備えるハブブレードであってもよい。
【0027】
例えば、切削手段6の近傍には、保持手段3に保持された板状物Wの切断予定ラインSを検出するアライメント手段7が配設されている。アライメント手段7は、撮像手段70を備えており、撮像手段70により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって板状物Wの上面Waの切断予定ラインSを検出することができる。例えば、アライメント手段7と切削手段6とは一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。
【0028】
例えば、撮像手段70には、CPUとメモリ等の記憶素子とから構成され切削ブレード60の交換のタイミングを判断する判断手段8が接続されている。判断手段8は、撮像手段70が撮像した画像を二値化処理する二値化処理部80を備えている。また、判断手段8のメモリには、切削によって板状物Wに形成される切削溝の溝幅の許容値が予め記憶されている。切削溝の溝幅の許容値は、主に切削ブレード60の刃厚の値や板状物Wを切断して形成するチップCの寸法公差に応じて定められる。切削溝の溝幅の許容値は例えば切削ブレード60の設定刃厚±50μmに設定され、本実施形態のように切削ブレード60の刃厚の値が0.25mmである場合においては、切削ブレード60に側面やせ等の異常磨耗が発生して切削溝の溝幅が0.2mmを下回った際に、判断手段8は切削溝の溝幅が許容値外であると判断する。
【0029】
以下に、
図2に示す切削装置1を用いて板状物Wを切断する加工方法について説明する。
【0030】
(1)切断ステップ
まず、
図2に示す第二のソレノイドバルブ323を連通位置に設定し吸引源32を作動させることで、吸引源32により生み出された吸引力が第二の吸引路312に伝達され、治具テーブル30が治具ベース31上で吸引保持された状態にセットされる。そして、板状物Wが、その上面Waが上側になるようにして、治具テーブル30の保持面30a上に載置される。第一のソレノイドバルブ321を連通位置に設定することで、吸引源32により生み出された吸引力が各吸引孔300cに伝達され、板状物Wは保持面30a上で吸引保持される。
【0031】
例えば、板状物Wの長手方向がX軸方向となるように、板状物Wを保持する保持手段3が鉛直方向の軸心周りに回転する。次いで、板状物Wを保持する保持手段3が−X方向に送られるとともに、撮像手段70により板状物Wの加工すべき領域が撮像される。アライメント手段7は、撮像手段70により形成された撮像画像を用いて、切削ブレード60を切り込ませるX軸方向に延びる切断予定ラインSのY軸座標位置を検出する。
【0032】
次いで、切削すべき切断予定ラインSと切削ブレード60とのY軸方向における位置合わせがなされるとともに、切削ブレード60が−Y方向側(紙面における手前側)から見て時計回り方向に高速回転する。さらに、切削ブレード60が−Z方向に向かって切り込み送りされ、その刃先先端が
図3に示す板状物Wの下面Wbの高さ位置Z1から第一の距離H1(例えば、100μm)下になるように切削ブレード60が位置づけられる。なお、第一の距離H1は、主に切削ブレード60の刃厚の値(本実施形態においては、0.25mm)によって決定される距離であり、切削ブレード60の刃厚の半分程度の値に定められる。
【0033】
図2に示す板状物Wがさらに所定の切削送り速度で−X方向に送り出されることで、切削ブレード60と板状物WとがX軸方向において相対的に移動して、切削ブレード60が切断予定ラインSに沿って板状物Wに切り込み、
図3に示す切削溝M0を形成しつつ板状物Wを切断していく。同時に切削ブレード60の刃先先端も、例えば当初断面が矩形であったものが、断面がR形状(円弧状)になるように磨耗していく。
【0034】
切削ブレード60が、一本の切断予定ラインSを切削し終える−X方向側の所定の位置まで板状物Wが送られると、板状物Wの切削送りを一度停止し、切削ブレード60を板状物Wから離間させ、次いで、板状物Wを+X方向に移動させ原点位置に戻す。そして、隣り合う切断予定ラインSの間隔ずつ切削ブレード60を+Y方向に割り出し送りしながら順次同様の切削を行うことにより、板状物WをX軸方向の全ての切断予定ラインSに沿って切断する。
【0035】
(2)確認用切削溝形成ステップ
例えば、上記のように板状物WをX軸方向の全ての切断予定ラインSに沿って切断した後、切削ブレード60の刃先先端を
図4に示す検査用板状物(本実施形態においては、板状物W)の上面Waの高さ位置Z2から第一の距離H1下に位置づけるとともに切削ブレード60と検査用板状物とを相対移動させて確認用切削溝を形成する。なお、確認用切削溝形成ステップは、本実施形態のように板状物WをX軸方向の全ての切断予定ラインSに沿って切断した後に実施する以外にも、例えば、(1)切断ステップにおいて、板状物WをX軸方向の複数本の切断予定ラインSに沿って切断した後、残りのX軸方向の複数本の切断予定ラインSを切削する前に実施してもよい。または、例えば一枚の板状物Wを縦横全ての切断予定ラインSに沿って切断した後、次いで、もう一枚の別の板状物Wの切断予定ラインSの切断を開始する前に実施してもよい。
【0036】
本実施形態においては、上記のように確認用切削溝を形成する検査用板状物は、板状物Wで兼用するが、これに限定されるものではない。例えば、保持手段3に近接する位置にサブチャックテーブルを配設し、このサブチャックテーブルにカーボン板片や樹脂板片を検査用板状物として保持し、この検査用板状物に確認用切削溝を形成するものとしてもよい。
【0037】
図4に示すように、確認用切削溝形成ステップにおいては、例えば、−Y方向側から見て時計回り方向に回転する切削ブレード60が+Y方向に移動し、板状物Wの端材部分Wa2の上方に位置づけられる。さらに、切削ブレード60が−Z方向に向かって切り込み送りされ、その刃先先端が板状物Wの上面Waの高さ位置Z2から第一の距離H1下になるように、切削ブレード60が位置づけられる。そして、板状物Wが−X方向側(紙面奥側)に送り出されることで、切削ブレード60と板状物WとがX軸方向において相対的に移動して、切削ブレード60が端材部分Wa2を切削していく。−X方向側の所定の位置まで板状物Wが送られると、板状物Wの切削送りが一度停止され、切削ブレード60が板状物Wから離間する。その結果、端材部分Wa2に深さがH1となり例えば断面がR状の所定長さの確認用切削溝M1が形成される。
本実施形態においては、上記のように板状物Wの端材部分Wa2を切削ブレード60で切削して確認用切削溝を形成するが、板状物Wの切断予定ラインSを切削して確認用切削溝を形成するものとしてもよい。また、どの程度の長さの確認用切削溝M1を形成するかは任意に定めることができ、例えば、板状物Wの切断予定ラインSを切削して確認用切削溝を形成する場合においては、一本の切断予定ラインSの一端から他端まで延びる確認用切削溝を形成してもよいし、一本の切断予定ラインSの途中まで延びる確認用切削溝を形成するものとしてもよい。
【0038】
(3)溝幅検出ステップ
例えば、
図4に示す撮像手段70が端材部分Wa2に形成された確認用切削溝M1の上方まで移動して、撮像手段70の撮像領域内に確認用切削溝M1が収まるように位置づけられる。そして、撮像手段70により確認用切削溝M1が写った撮像画像が形成される。撮像手段70は、確認用切削溝M1が写った撮像画像のデータを判断手段8の二値化処理部80に対して転送する。二値化処理部80は、送られてきた撮像画像に対して、例えば、鮮鋭化フィルタを用いたフィルタ処理を行い、フィルタ処理後の処理画像にさらに二値化処理を行う。二値化処理は、例えば、1画素の輝度が0〜255により表示されている撮像画像を、スライスレベルより輝度値の小さい画素を0とし、スライスレベルより輝度値の大きい画素を255として、
図5に示す二値化画像G1に変換する処理である。
【0039】
図5に示すように、二値化画像G1において、確認用切削溝M1は、スライスレベル未満の輝度値を有する画素の集合として黒色の線で表示され、端材部分Wa2の上面Waは、スライスレベル以上の輝度値を有する画素として、画像中で白色として表示される。判断手段8は、二値化画像G1中の黒色の線を構成する画素の任意のX座標位置におけるY軸方向の総和を算出し、この総和を確認用切削溝M1の溝幅B1として検出する。検出できる確認用切削溝M1の溝幅B1は、すなわち、
図4に示す板状物Wの下面Wbにおける切削溝M0の溝幅B0と同一視できる。次いで、判断手段8は、二値化画像G1における確認用切削溝M1の溝幅B1とメモリに予め記憶されている切削溝の溝幅の許容値とを比較して、確認用切削溝M1の溝幅B1が許容値を下回るか否かを判断する。
【0040】
判断手段8が確認用切削溝M1の溝幅B1が記憶している溝幅の許容値を下回っていないと判断した場合には、板状物WのY軸方向に延びる切断予定ラインSの切削が次いで実行される。すなわち、
図4に示す保持手段3が90度回転されてから、板状物WのY軸方向に延びる全ての切断予定ラインSに沿って先の切削と同様の切削加工が行われることで、板状物Wが全ての切断予定ラインSに沿って縦横に切断され、板状物Wをデバイスを備える個々のチップCへと分割することができる。
【0041】
一方、確認用切削溝M1の溝幅B1が記憶している溝幅の許容値を下回っている場合には、切削ブレード60に側面やせ等の異常磨耗が発生していることで上面側と下面側との寸法差が許容外となるチップが作製されるおそれがあるため、判断手段8は切削ブレード60を新品に交換する必要があると判断する。そのため、判断手段8は、この判断結果を図示しないモニターに警告として表示したり、アラームから警告として発報したりする。
【0042】
(4)切削ブレード交換ステップ
上記(3)溝幅検出ステップで検出された確認用切削溝M1の溝幅B1が許容値を下回った場合には、例えば判断手段8による判断を認識した作業者が、切削ブレード60を新品の切削ブレードと交換する切削ブレード交換ステップを実施する。まず、回転しているスピンドル61を停止させ、
図6に示すスピンドル61に挿嵌された固定フランジ65のボス部に螺合している状態の固定ナット64を、固定フランジ65から取り外す。次いで、固定フランジ65と共に切削ブレード60を挟みこんでいた着脱フランジ63を固定フランジ65のボス部から取り外すことで、切削ブレード60をスピンドル61から取り外すことができる状態にする。さらに、使用済みとなった切削ブレード60をスピンドル61から取り外し、新品の切削ブレードを破損しないようにスピンドル61に取り付けて、再び着脱フランジ63及び固定ナット64で固定する。
なお、切削ブレード60を新品の切削ブレードに交換する代わりに、切削ブレード60をドレッサーボードに切り込ませる等して、切削ブレード60の刃先先端の刃厚の修正を行ってもよい。
【0043】
上記のように、本発明に係る板状物の加工方法は、(1)切断ステップ、(2)確認用切削溝形成ステップ、及び(3)溝幅検出ステップを備えているため、板状物Wの下面Wbからさらに切り込む深さ分だけ検査用板状物(本実施形態においては板状物W)の上面Waから切削ブレード60で切り込んで確認用切削溝M1を形成することができ、確認用切削溝M1の溝幅B1を検出することで、板状物Wの下面Wb側における切削溝M0の溝幅B0を検査用板状物の上面Wa側から容易に検出することが可能となる。
【0044】
本実施形態のように、板状物Wを
図4に示す治具テーブル30で吸引保持して切削加工を行う場合には、下面Wb側が保護テープまたはサブストレートで支持された板状物Wをポーラスチャック等で吸引保持して切削加工を行う場合に比べて、切削ブレード60に側面やせ等の異常摩耗がより発生しやすい。これは、以下に示す理由による。
一般的に新品の切削ブレード60の断面形状は矩形である。そして、保護テープ等で支持された板状物を切削ブレード60で完全切断していくと、切削に伴い切削ブレード60の刃先先端は刃厚方向の左右において均等に磨耗してゆき、その断面形状はRが刃厚の約1/2となるR形状へと変化する。これは、板状物を完全切断するために、切削ブレード60をその刃先先端が保護テープ等に僅かに切り込む高さ位置に位置づけて切削加工を行っていくためである。すなわち、板状物に切り込んだ状態の切削ブレード60の側面と刃先先端とは、両方とも常に板状物又は保護テープに接した状態になっている。これに対して、本実施形態のように、板状物Wを治具テーブル30で吸引保持して切削加工を行う場合には、
図3に示すように、回転する切削ブレード60の刃先先端をブレード逃げ溝300eに収容した状態で切削を行っていくため、切削ブレード60の刃先先端と異なり常に板状物Wに接している状態の切削ブレード60の側面は刃先先端よりも磨耗しやすい。その結果、切削ブレード60の刃先先端に刃厚の約1/2未満のRが形成されるような側面やせ等の異常摩耗が発生しやすくなる。
したがって、本実施形態のように、板状物Wを
図4に示す治具テーブル30で吸引保持して切削加工を行う場合において、本発明に係る板状物の加工方法は特に好適となる。
また、切削ブレード60の代わりに刃厚がより厚い切削ブレードを用い、かつ、下面Wb側が薄い保護テープで支持された板状物Wをポーラスチャック等で吸引保持して切削加工を行う場合には、切削ブレードを板状物Wの下面Wbから刃厚の1/2以上の距離さらに切り込ませることが難しく切削ブレードの異常磨耗が起こりやすくなるが、このような場合においても、本発明に係る板状物の加工方法は特に好適となる。
【0045】
また、本発明に係る板状物の加工方法においては、(3)溝幅検出ステップで検出された溝幅が許容値を下回った場合に、切削ブレード60を新品と交換する切削ブレード交換ステップを更に備えることで、切削ブレード60の総切削距離について過度な余裕を持たせて切削ブレード60の交換をする必要がなくなり、より適切なタイミングで切削ブレード60の交換を行うことができるようになる。そのため、切削加工の作業効率を上げることができ、また、ブレード交換に伴うコスト増加を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明に係る板状物の加工方法は本実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている切削装置1の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
例えば、本発明に係る板状物の加工方法は、従来のカーフチェック(例えば、特許文献1参照)等と組み合わせるものとしてもよい。すなわち、溝幅検出ステップにおいて、確認用切削溝M1の溝幅B1を検出することに加えて、切削溝M0を撮像して板状物Wの上面Waにおける切削溝M0の溝幅を検出し、検出した2つの溝幅の値から作製されたチップCの側面の公差を算出する等してもよい。