【文献】
服部智哉、他2名,”赤外フェムト秒レーザーによるシリコンの内部加工の試み―空間光位相変調による収差補正―”,2017年度精密工学会春季大会 学術講演会講演論文集,日本,公益社団法人 精密工学会,2017年 3月 1日,p.421−422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態に係るレーザー加工装置の概略を示した構成図である。本実施形態に係るレーザー加工装置10は、コントローラ12と、ステージ14と、加工用レーザー光源16(以下、単に「レーザー光源16」という。)と、光量調整部18と、波面変調部20と、第1レンズ22及び第2レンズ24からなるリレー光学系26と、視野絞り28と、加工用集光レンズ30(以下、単に「集光レンズ30」という。)と、結像レンズ32と、光検出器34と、光トラップ36とを備えている。
【0021】
本実施形態に係るレーザー加工装置10は、レーザー光源16から出射された加工用のレーザー光L1を各種の光学系を介して集光レンズ30に導き、そのレーザー光L1を集光レンズ30にて被加工物Wの内部に集光させて照射するようになっている。そして、レーザー光L1を被加工物Wに照射しつつ、ステージ14を移動させる。これにより、被加工物Wの内部には、被加工物Wの切断予定ラインに沿って改質領域が形成される。すなわち、レーザー加工装置10は、被加工物Wに対してレーザー光L1を相対的に走査することによって、被加工物Wの内部に切断の起点となる改質領域を形成する装置である。
【0022】
また、本実施形態に係るレーザー加工装置10は、レーザー光源16から出射された加工用のレーザー光L1の光量(光強度)を減衰させて、光量が減衰した光(レーザー光L1)を用いて、被加工物Wの内部の改質領域から被加工物Wの厚さ方向に進展した亀裂Kの亀裂深さの測定を行う機能を備えたものである。
【0023】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、レーザー加工装置10を構成する各部の光学的な配置を説明するために、被加工物Wを垂直(縦向き)に配置した構成を便宜的に示したが、言うまでもなく、被加工物Wの向きは限定されるものではない。例えば、被加工物Wは、水平向き(横向き)に配置してもよいし、斜め向きに配置するようにしてもよい。また、レーザー加工装置10を構成する各部の配置は、被加工物Wの向きに応じて適宜変更可能である。
図1においては、被加工物Wの厚さ方向をZ方向とし、Z方向に直交しかつ被加工物Wの加工送り方向をX方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0024】
また、本実施形態においては、亀裂Kの亀裂深さとは、被加工物Wの表面(レーザー光照射面)あるいは裏面を基準位置としたとき、その基準位置から被加工物Wの厚さ方向(Z方向)における亀裂Kの下端位置(
図1において亀裂Kの右端位置)もしくは亀裂Kの上端位置(
図1において亀裂Kの左端位置)までの距離を示すものとする。後述する第2の実施形態においても同様である。
【0025】
ステージ14は、被加工物Wを吸着保持し、不図示のステージ駆動機構により、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向に移動可能であるとともに、θ方向(Z方向を中心とする回転方向)に回転可能に構成される。被加工物Wは、その表面(レーザー光照射面)がデバイス面とは反対側の面となるようにステージ14上に載置される。なお、被加工物Wのデバイス面が被加工物Wの表面(レーザー光照射面)となるようにステージ14上に被加工物Wが載置されてもよい。
【0026】
コントローラ12は、レーザー加工装置10の動作(加工動作、アライメント動作、亀裂検出動作等)を制御する。
【0027】
コントローラ12は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものである。
【0028】
コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェース等を備えている。コントローラ12では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、
図1においてコントローラ12内に示した各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。なお、コントローラ12内の各部の機能については後述する。
【0029】
レーザー光源16は、被加工物Wの内部に改質領域を形成するための加工用のレーザー光L1を出射するものである。本実施形態においては、レーザー光源16としては、パルス光を出射するパルス光源が好ましく用いられる。また、被加工物Wがシリコンウェーハである場合には、レーザー光L1として、波長1100nm以長の赤外光が好ましく用いられる。レーザー光源16から出射されたレーザー光L1は、直接に、あるいは所定の光学系を介して、波面変調部20に入射される。
【0030】
なお、レーザー光源16は、パルス光源に限定されず、連続光を出射する連続光源であってもよい。また、レーザー光源16は、パルス光と連続光とを切り換えて出射することができるように構成されたものであってもよい。この場合、被加工物Wの内部に改質領域を形成する場合には加工用のレーザー光としてパルス光を出射し、被加工物Wの亀裂検出を行う場合には亀裂検出用のレーザー光として連続光を出射するようにしてもよい。
【0031】
光量調整部18は、レーザー光源16と波面変調部20との間におけるレーザー光L1の光路中に配置されている。光量調整部18は、被加工物Wの亀裂検出を行う場合に被加工物Wに照射されるレーザー光L1が所望の光量(光強度)となるように設けられたものである。
【0032】
光量調整部18は、減光フィルタ38と、フィルタ移動機構40とを備えている。減光フィルタ38は、透過する光の光量を減衰させる光学フィルタであり、レーザー光L1の光路上に挿脱自在に設けられている。減光フィルタ38は、フィルタ移動機構40により、レーザー光L1の光路に対して垂直方向に移動可能であり、レーザー光L1の光路に挿入された「挿入位置」と、レーザー光L1の光路から退避した「退避位置」との間で移動される。フィルタ移動機構40は、後述の光量制御部56により制御され、被加工物Wの内部に改質領域を形成する場合には、減光フィルタ38を退避位置に配置する。一方、被加工物Wの亀裂検出を行う場合には、減光フィルタ38を挿入位置に配置する。
【0033】
なお、本実施形態では、1つの減光フィルタ38をレーザー光L1の光路上に挿脱する構成を示したが、これに限らず、透過率が互いに異なる複数の減光フィルタ(すなわち、光量の減光割合がそれぞれ異なる複数の減光フィルタ)を選択的に光路に配置可能な構成を採用することも可能である。また、減光フィルタの切換え方式として、例えば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
【0034】
また、透過率が互いに異なる複数の減光フィルタを選択的に光路に配置可能な構成においては、被加工物Wの内部に改質領域を形成する場合には、複数の減光フィルタのうち、透過率が高い高透過率フィルタをレーザー光L1の光路上に配置し、被加工物Wの内部の亀裂を検出する場合には、複数の減光フィルタのうち、高透過率フィルタの透過率よりも低い低透過率フィルタをレーザー光L1の光路上に配置してもよい。
【0035】
また、減光手段としては、減光フィルタ38を用いた構成に限られず、例えば、ポラライザー、波長板、偏光プリズムなどの組み合わせたものを用いた構成を採用することも可能である。
【0036】
波面変調部20は、レーザー光源16からのレーザー光L1及びその反射光L2の光路中に配置される。波面変調部20は、入射した光の波面を変調する空間光変調器21を備えている。
【0037】
空間光変調器21には、例えば、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)を使用した空間光変調器(LCOS−SLM)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を使用した空間光変調器(MEMS−SLM)を用いることができる。本実施形態においては、一例として、反射型のLCOS−SLMを空間光変調器21として用いている。
【0038】
空間光変調器21は、2次元的に配列された複数の画素(微小変調素子)からなる光変調面21aを備えており、光変調面21aに入射した光の位相を画素毎に変調する位相変調型の空間光変調器である。また、空間光変調器21は、集光レンズ30の瞳位置Eと光学的に共役な位置に配置されている。この空間光変調器21は、空間変調制御部58により設定された所定の変調パターンに基づき、光変調面21aに入射した光の位相を画素毎に変調して、変調後の変調光を所定の方向に向けて出射するようになっている。
【0039】
本実施形態においては、被加工物Wの内部に改質領域を形成する場合には、空間光変調器21には前述した変調パターン(すなわち、被加工物Wの亀裂検出を行うための変調パターン)は設定されないようになっている。この場合、空間光変調器21に入射したレーザー光L1は変調されず、そのまま集光レンズ30に向けて出射される。なお、空間変調器21には、亀裂検出以外の目的(例えば収差補正)で変調パターンが設定される場合がある。
【0040】
一方、被加工物Wの亀裂検出を行う場合には、詳細は後述するが、空間光変調器21には光変調面21aの変調領域毎に互いに異なる変調パターンが設定される。これにより、空間光変調器21に入射したレーザー光L1の一部の光は変調されて集光レンズ30に向けて出射されるとともに、被加工物Wからの反射光L2の一部の光は変調されて光検出器34に向けて出射される。なお、空間光変調器21に入射したレーザー光L1の他の光は光トラップ36に向けて出射され、光トラップ36で捕捉されるようになっている。
【0041】
リレー光学系26は、空間光変調器21と集光レンズ30との間におけるレーザー光L1及びその反射光L2の光路上に配置される。リレー光学系26は、第1レンズ22及び第2レンズ24を有しており、第1レンズ22及び第2レンズ24は4f光学系を構成するように配置されている。リレー光学系26は、空間光変調器21から集光レンズ30に向けて出射されたレーザー光L1を集光レンズ30に導くとともに、集光レンズ30で集光された被加工物Wからの反射光L2を空間光変調器21に導く。
【0042】
視野絞り28は、リレー光学系26(4f光学系)を構成する第1レンズ22と第2レンズ24との間の中間結像位置IMに配置される。中間結像位置IMは、集光レンズ30の集光点と光学的に共役な位置である。視野絞り28は、被加工物Wからの反射光L2を制限する開口28aを有しており、被加工物Wの表面で反射した反射光L2sをカットするものである。これにより、被加工物Wの亀裂検出を行う際に、被加工物Wの表面で反射した反射光L2sが亀裂検出の外乱光となることが防止される。
【0043】
視野絞り28の開口28aの大きさ(開口径)を可変できるように構成されていてもよい。この構成によれば、視野絞り28の開口28aを、被加工物Wと集光レンズ30との間の距離(ワーキングディスタンス)などに応じた大きさとすることにより、亀裂検出の際に外乱光となる被加工物Wの表面で反射した反射光L2sを効果的にカットすることができる。
【0044】
集光レンズ30は、ステージ14に対向する位置に配置される。集光レンズ30は、入射したレーザー光L1をステージ14上の被加工物Wの内部に集光する。また、集光レンズ30は、被加工物Wからの反射光L2を集光する。集光レンズ30で集光された反射光L2は、リレー光学系26を介して空間光変調器21に導かれる。
【0045】
光検出器34は、集光レンズ30の瞳位置Eと光学的に共役な位置となるように配置されている。光検出器34は、フォトディテクタにより構成され、結像レンズ32を介して入射した反射光L2を受光して、その反射光L2の光量(光強度)を示す光強度情報(電気信号)を後述の亀裂検出部60に出力する。
【0046】
光トラップ36は、空間光変調器21に入射したレーザー光L1のうち、集光レンズ30とは異なる方向に出射される光(すなわち、亀裂検出に寄与しない光)が迷光とならないように、その光を捕捉するものである。
【0047】
以上のように構成されたレーザー加工装置10は、コントローラ12によって以下のように制御される。
【0048】
コントローラ12は、主制御部50と、ステージ制御部52と、レーザー制御部54と、光量制御部56と、空間変調制御部58と、亀裂検出部60として機能する。
【0049】
主制御部50は、コントローラ12を構成する各部を統括的に制御する。具体的には、ステージ制御部52、レーザー制御部54、光量制御部56、空間変調制御部58、及び亀裂検出部60を制御する。また、主制御部50は、亀裂検出部60から亀裂検出の結果を受け取り、その結果を図示しない表示装置(モニタ)に表示する。
【0050】
ステージ制御部52は、主制御部50からの指示に従って、集光レンズ30の光軸P(
図7参照)が被加工物Wの加工位置(または亀裂Kが形成された位置)に位置するように、ステージ14のX方向、Y方向、Z方向の移動、及びθ方向の回転を制御する。ステージ14は、ステージ制御部52の制御に従い、集光レンズ30の光軸Pに対して被加工物Wを相対的に移動させる。
【0051】
レーザー制御部54は、主制御部50からの指示に従って、レーザー光源16を制御する。具体的には、レーザー制御部54は、レーザー光源16から出射されるレーザー光L1の波長、パルス幅、強度、出射タイミング、繰り返し周波数などを制御する。
【0052】
光量制御部56は、主制御部50からの指示に従って、光量調整部18を制御する。具体的には、光量制御部56は、フィルタ移動機構40を介して減光フィルタ38をレーザー光L1上に挿脱する制御を行う。これにより、被加工物Wの加工が行われる場合には、減光フィルタ38は退避位置に配置され、被加工物Wの亀裂検出が行われる場合には、減光フィルタ38は挿入位置に配置される。
【0053】
空間変調制御部58は、主制御部50からの指示に従って、波面変調部20を制御する。具体的には、空間変調制御部58は、被加工物Wの亀裂検出が行われる場合には、空間光変調器21に入射した光の位相を変調するための所定の変調パターンを設定する。これにより、空間光変調器21は、空間変調制御部58により設定された変調パターンに従って、光変調面21aに入射した光を画素毎に変調し、変調後の変調光を所定の方向に向けて出射する。なお、変調パターンは、空間光変調器21の光変調面21aを構成する複数の画素のそれぞれに対応する制御値(位相変化量)が2次元的に分布するパターンである。
【0054】
図2は、空間光変調器21の光変調面21aの一例を示した概略図である。
図3は、空間変調制御部58により設定される空間光変調器21の変調パターンの一例を示した図である。
図2に示すように、本実施形態においては、空間光変調器21の光変調面21aは2つの変調領域RA、RBに区画されており、各変調領域RA、RBにはそれぞれ多数の画素62が対応して設けられている(以下、「第1変調領域RA」、「第2変調領域RB」という。)。そして、
図3に示すように、空間変調制御部58は、第1変調領域RA及び第2変調領域RBに対して、互いに異なる第1変調パターン64A及び第2変調パターン64Bをそれぞれ設定するようになっている。
【0055】
具体的には、空間変調制御部58は、レーザー光源16からのレーザー光L1のうち、光変調面21aの第1変調領域RAに入射した光が空間光変調器21で変調されて、変調後の変調光が集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の一方の半分領域(後述する第1半分領域G1に相当、
図7参照)を通る光線となるように、第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aを設定する。これにより、被加工物Wの亀裂検出が行われる場合には、集光レンズ30を通過したレーザー光L1の照射方向は集光レンズ30の光軸Pに対して斜め方向となり、被加工物Wに対してレーザー光L1が斜め方向に照射される偏射照明が行われる。また、このような偏射照明を行いながら、空間変調制御部58は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1(変調光)の集光点が被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に走査されるように、第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aを変化させる制御を行う。
【0056】
また、空間変調制御部58は、被加工物Wからの反射光L2のうち、集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の他方の半分領域(後述する第2半分領域G2に相当、
図7参照)を通過して光変調面21aの第2変調領域RBに入射した光が空間光変調器21で変調されて、変調後の変調光が結像レンズ32を介して光検出器34に入射するように、第2変調領域RBに対応する第2変調パターン64Bを設定する。これにより、被加工物Wの亀裂検出が行われる場合には、光検出器34において被加工物Wからの反射光L2の検出が行われる。なお、被加工物Wからの反射光L2のうち、集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の一方の半分領域を通過して光変調面21aの第1変調領域RAに入射した光は、光検出器34には導かれず、光検出器34では検出されないようになっている。
【0057】
本実施形態においては、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RAには、
図3に示すように、光変調面21aの中心から離された位置であって第1変調領域RAの一部に限定された領域に第1変調パターン64Aが設定されるようになっている。そのため、光変調面21aの第1変調領域RAに入射したレーザー光L1は空間光変調器21で変調されて、変調後の変調光が集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の中心から集光レンズ30の光軸Pに直交する方向にずれた位置、すなわち、集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の一方の半分領域の一部に入射するようになっている。これにより、
図4に示した第1変調パターン64Aに比べて、集光レンズ30を介して被加工物Wに照射されるレーザー光L1の照射方向が集光レンズ30の光軸Pに対して角度がついた状態で行われるので、被加工物Wの亀裂検出の際に被加工物Wの厚さ方向(Z方向)の分解能を高めることが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態においては、第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aは、少なくとも第1変調領域RAに入射したレーザー光L1の変調光が集光レンズ30の瞳位置Eにおける瞳の一方の半分領域に入射するものであればよく、例えば、
図4に示した第1変調パターン64Aであってもよい。
【0059】
亀裂検出部60は、光検出器34から出力された反射光L2の光強度情報を順次取得し、取得した反射光L2の光強度情報に基づいて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂上端位置又は亀裂下端位置)を検出する亀裂検出処理を行う。
【0060】
ここで、本実施形態における亀裂検出処理の原理について説明する。
【0061】
本実施形態では、上述したように、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBにそれぞれ第1変調パターン64A及び第2変調パターン64Bを設定することにより、被加工物Wに対してレーザー光L1が斜め方向に照射される偏射照明が行われ、被加工物Wからの反射光L2が光検出器34で検出されるようになっている。
【0062】
図5及び
図6は、被加工物Wに対してレーザー光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図5は集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点に亀裂Kが存在する場合、
図6は集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点に亀裂Kが存在しない場合をそれぞれ示している。
図7は、被加工物Wからの反射光L2が集光レンズ瞳30aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、レーザー光L1は、集光レンズ瞳30aの一方側(
図7の右側)の第1半分領域G1を通過して、被加工物Wに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0063】
図5に示すように、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点に亀裂Kが存在する場合には、レーザー光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は集光レンズ30の光軸Pに対してレーザー光L1の光路と同じ側の経路をたどって、集光レンズ瞳30aのレーザー光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図7に示すように、レーザー光源16からのレーザー光L1が集光レンズ30を介して被加工物Wに照射されるときのレーザー光L1の経路をR1としたとき、被加工物Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、レーザー光L1の経路R1とは集光レンズ30の光軸Pに対して同じ側(
図7の右側)の経路R2をたどって集光レンズ瞳30aの第1半分領域G1を通過する。この場合、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、空間光変調器21の光変調面21aのうち、第1変調領域RAに入射してしまい、第2変調領域RBには入射しないので、光検出器34では反射光L2は検出されない。
【0064】
一方、
図6に示すように、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、レーザー光L1は被加工物Wの裏面で反射し、その反射光L2は集光レンズ30の光軸Pに対してレーザー光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図7に示すように、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、レーザー光L1の経路R1とは集光レンズ30の光軸Pに対して反対側(
図7の左側)の経路R3をたどって集光レンズ瞳30aの第2半分領域G2を通過する。この場合、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、空間光変調器21の光変調面21aのうち、第2変調領域RBに入射するので、光検出器34では反射光L2が検出される。
【0065】
このように光検出器34で検出される反射光L2の光強度情報は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本実施形態では、このような性質を利用して、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0066】
具体的には、空間変調制御部58は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点が、被加工物Wの裏面から表面(または被加工物Wの表面から裏面)に向かって被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に所定の走査間隔で走査されるように、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aを変化させる制御を行う。
【0067】
このとき、亀裂検出部60は、光検出器34から出力される反射光L2の光強度情報を順次取得し、取得した反射光L2の光強度情報に基づいて、光検出器34において反射光L2が検出される検出領域(光強度が0でない領域)と反射光L2が検出されない非検出領域(光強度が0である領域)との境界位置に対応するレーザー光L1の集光点の深さ位置を求める。そして、その求めたレーザー光L1の集光点の深さ位置を亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)として検出する。
【0068】
例えば、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点を被加工物Wの裏面から表面に向かって変化させる場合を考える。
図6に示すように、レーザー光L1の集光点が亀裂Kの下端位置よりも深い位置にある場合には、光検出器34では反射光L2が検出される検出領域となるので、この集光点の位置には亀裂Kが存在しないと判定することができる。そして、このような状態からレーザー光L1の集光点を徐々に被加工物Wの表面に移動させていくと、レーザー光L1の集光点が亀裂Kの下端位置に到達したところで、光検出器34では反射光L2が検出される検出領域から反射光L2が検出されない非検出領域へと変化する。したがって、反射光L2の検出領域から非検出領域に変化したときのレーザー光L1の集光点の深さ位置を亀裂Kの下端位置とすることができる。
【0069】
また、さらにレーザー光L1の集光点を徐々に被加工物Wの表面に移動させていくと、レーザー光L1の集光点が亀裂Kの上端位置に到達したところで、光検出器34では反射光L2が検出されない非検出領域から反射光L2が検出される検出領域へと変化する。したがって、反射光L2の非検出領域から検出領域に変化したときのレーザー光L1の集光点の深さ位置を亀裂Kの上端位置とすることができる。
【0070】
なお、説明は省略するが、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点を被加工物Wの表面から裏面に向かって変化させる場合においても、反射光L2の検出領域と非検出領域の境界位置を求めることにより亀裂Kの上端位置及び下端位置をそれぞれ検出することができる。
【0071】
次に、本実施形態に係るレーザー加工装置10を用いた亀裂検出方法について
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係るレーザー加工装置10を用いた亀裂検出方法の一例を説明したフローチャートである。なお、
図8に示すフローチャートが開始される前に、本実施形態に係るレーザー加工装置10を用いて被加工物Wの内部に改質領域が形成されているものとする。また、集光レンズ30の光軸Pに対する被加工物Wのアライメントは既になされた状態であるものとする。
【0072】
また、本実施形態においては、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点は被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に予め設定された走査間隔Δzで走査が行われ、その走査範囲における各走査位置をZ
i(i=1、2、・・・n)とする(但し、nは自然数とする)。また、レーザー光L1の集光点の走査範囲は検出対象となる亀裂Kの亀裂深さに応じて設定され、例えば、被加工物Wの厚さ方向の全範囲に設定されていてもよいし、その一部範囲に設定されていてもよい。例えば、亀裂Kの亀裂深さとして亀裂下端位置のみを検出する場合には、被加工物Wの深い位置(裏面に近い側)の一部範囲に走査範囲を限定することで検出効率を向上させることができる。
【0073】
(ステップS10)
まず、レーザー加工装置10において亀裂検出処理の動作開始時に、主制御部50は各部の初期設定を行う。具体的には、光量制御部56は、フィルタ移動機構40を制御して、減光フィルタ38を挿入位置に配置する。
【0074】
(ステップS12)
次に、主制御部50は、変数iを1に設定する(i=1)。
【0075】
(ステップS14)
次に、空間変調制御部58は、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBに対して第1変調パターン64A及び第2変調パターン64B(
図3参照)をそれぞれ設定する。このとき、空間変調制御部58は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点の深さ位置が所望の走査位置となるように、第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aを変化させる制御を行う(空間変調制御工程)。例えば、1回目の走査が行われる場合(i=1の場合)には、レーザー光L1の集光点の深さ位置が走査開始位置Z
1となり、2回目以降の走査が行われる場合(i≧2の場合)には、レーザー光L1の集光点の深さ位置がZ
i=Z
i-1+Δzとなるように、第1変調領域RAに対応する第1変調パターン64Aをレーザー光L1の集光点の深さ位置に応じて変化させる制御を行う。
【0076】
(ステップS16)
次に、レーザー制御部54は、レーザー光源16を制御して、レーザー光源16からレーザー光L1を出射する(出射工程)。レーザー光源16からのレーザー光L1は、亀裂検出に適した光量(光強度)となるように減光フィルタ38で減衰され、光量が減衰したレーザー光L1は空間光変調器21の光変調面21aに入射する(光量調整工程)。
【0077】
このとき、空間光変調器21の光変調面21aに入射したレーザー光L1のうち、第1変調領域RAに入射した光は変調されて、変調後の変調光が集光レンズ瞳30aの第1半分領域G1に入射する。そして、集光レンズ30に導かれたレーザー光L1は、集光レンズ30で被加工物Wの内部に集光される(集光工程)。これにより、被加工物Wには集光レンズ30の光軸Pに対して斜め方向に偏射照明が行われる。
【0078】
被加工物Wからの反射光L2のうち、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、集光レンズ30、リレー光学系26を経由して空間光変調器21に導かれる。このとき、被加工物Wの表面で反射した反射光L2sは、視野絞り28によってカットされる。これにより、被加工物Wの亀裂検出を行う際に、被加工物Wの表面で反射した反射光L2sが亀裂検出の外乱光となることが防止される。
【0079】
また、空間光変調器21に入射した反射光L2のうち、集光レンズ瞳30aの第2半分領域G2を通過して第2変調領域RBに入射した光は空間光変調器21で変調されて、変調後の変調光が光検出器34に向けて出射される。そして、結像レンズ32を介して光検出器34に入射した反射光L2は、光検出器34で検出されて、その光量を示す光強度情報が亀裂検出部60に対して出力される(検出工程)。
【0080】
(ステップS18)
次に、亀裂検出部60は、光検出器34から出力された光強度情報を取得する。
【0081】
(ステップS22)
次に、主制御部50は、変数i=nであるか否かを判断する。i=nでない場合(すなわち、変数iがn未満である場合)にはステップS22に進み、i=nである場合にはステップS24に進む。
【0082】
(ステップS24)
ステップS20においてi=nでない場合には、主制御部50は、iを1つインクリメントして(i=i+1)、ステップS14に戻り、ステップS14からステップS18までの処理を繰り返し行う。
【0083】
(ステップS26)
ステップS20においてi=nである場合には、亀裂検出部60は、ステップS18において走査位置Z
i毎に取得した光強度情報に基づき、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する(亀裂検出工程)。具体的には、上述したとおり、光検出器34において反射光L2が検出される検出領域(光強度が0でない領域)と反射光L2が検出されない非検出領域(光強度が0である領域)との境界位置に対応するレーザー光L1の集光点の深さ位置を、亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)として検出する。
【0084】
また、各走査位置Z
iに対応する光強度情報がいずれも0でない場合には、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点の走査範囲には亀裂Kは存在しないと判定することが可能である。また、各走査位置Z
iに対応する光強度情報がいずれも0である場合には、レーザー光L1の集光点の走査範囲の全てにわたって亀裂Kが存在すると判定することが可能である。
【0085】
以上のようにして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さが検出されると、その検出結果は図示しない表示装置に表示され、亀裂検出処理が終了となる。
【0086】
このように本実施形態によれば、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点を被加工物Wの厚さ方向に変化させながら、被加工物Wに対してレーザー光L1を斜め方向に照射する偏射照明を行い、そのときに光検出器34から出力される光強度情報を順次取得し、取得した光強度情報に基づいて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することが可能となる。したがって、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを非破壊かつ精度よく検出することができる。
【0087】
また、本実施形態では、加工用のレーザー光源16から出射されるレーザー光L1の光路中に光量調整部18及び波面変調部20を備えたので、加工用の光源や光学系を共用することが可能となり、加工時のアライメントをそのまま亀裂検出処理に使用することができる。これによって、亀裂検出用の専用の光源や光学系を別途設けた場合に比べて、亀裂検出時のアライメントを簡略化もしくは不要とすることができ、また、装置を小型化にすることができる。
【0088】
また、本実施形態においては、空間変調制御部58は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点の深さ位置に応じて収差補正が行われるよう変調パターンで空間光変調器21を制御する態様が好ましい。これにより、亀裂検出処理が行われる際にレーザー光L1の集光点を被加工物Wの厚さ方向に変化させても、レーザー光L1の集光点の深さ位置に影響されることなく、所望の集光特性が良好に保たれるので、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの検出精度を向上させることが可能となる。
【0089】
また、本実施形態において、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点を被加工物Wの裏面近傍に固定した状態で(すなわち、レーザー光L1の集光点を被加工物Wの厚さ方向に変化させることなく)検出するようにしてもよい。この場合、被加工物Wの裏面まで亀裂Kが到達しているか否かを簡易に判定することが可能となる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0091】
まず、第2の実施形態における課題について説明する。
【0092】
上述した第1の実施形態では、加工時のアライメントをそのまま亀裂検出処理に使用することができるため、亀裂検出時のアライメントを簡略化もしくは不要とすることができるものであるが、ステージ14の位置再現性の影響などにより、集光レンズ30の光軸Pに対する被加工物Wのアライメント精度が低下する場合が考えられる。この場合、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点と亀裂Kとの間に水平方向(集光レンズ30の光軸Pに直交する方向)の位置ずれが生じ、亀裂検出処理の検出結果に誤差が発生する要因となる。
【0093】
図9〜
図11は、亀裂検出処理の誤差要因を説明するための図である。
図9は、集光レンズ30の光軸Pと亀裂軸(亀裂Kの長手軸)Mとが一致している場合を示している。
図10は、集光レンズ30の光軸Pが亀裂軸Mに対して一方側にずれた場合を示している。
図11は、集光レンズ30の光軸Pが亀裂軸Mに対して他方側にずれた場合を示している。
【0094】
図9に示すように、集光レンズ30の光軸Pと亀裂軸Mとが一致している場合には、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点は亀裂軸M又はその延長線に配置されるため、レーザー光L1の集光点の深さ位置に基づいて亀裂Kの亀裂深さを精度良く検出することができる。すなわち、この場合には、実際の亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)dとレーザー光L1の集光点の深さ位置とが等しくなっており、レーザー光L1の集光点の深さ位置から亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)を正確に検出することが可能である。一方、
図10や
図11に示すように、集光レンズ30の光軸Pが亀裂軸Mに対して水平方向にずれた場合には、レーザー光L1の集光点は亀裂軸M又はその延長線から水平方向に位置ずれした状態となる。このような状態において、レーザー光L1の集光点の深さ位置に基づいて亀裂Kの亀裂深さを検出しようとすると、検出された亀裂Kの深さに検出誤差Δdが発生する。しかも、その検出誤差Δdはレーザー光L1の集光点と亀裂軸Mとの水平方向の位置ずれ量に応じて比例する。例えば、
図10に示すように、集光レンズ30の光軸Pが亀裂軸Mに対して一方側(
図10の右側)にずれた場合には、実際の亀裂Kの下端位置dよりも高い位置であるレーザー光L1の集光点の深さ位置d1が亀裂Kの亀裂深さとして検出される。また、
図11に示すように、集光レンズ30の光軸Pが亀裂軸Mに対して他方側(
図11の左側)にずれた場合には、実際の亀裂Kの下端位置dよりも低い位置であるレーザー光L1の集光点の深さ位置d2が亀裂Kの亀裂深さとして検出される。
【0095】
このように第1の実施形態における亀裂検出処理では、集光レンズ30の光軸Pに対する被加工物Wのアライメント精度が十分でないと、亀裂軸Mに対する集光レンズ30の光軸Pの位置ずれ量に応じた検出誤差Δdが生じる要因となる。
【0096】
第2の実施形態では、集光レンズ30の光軸Pに対する被加工物Wのアライメント精度が十分でない場合でも、上述したような検出誤差Δdによる影響をなくして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを精度良く検出できるようにしたものである。
【0097】
図12は、第2の実施形態に係るレーザー加工装置の概略を示した構成図である。
図12中、
図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
図12に示すように、第2の実施形態に係るレーザー加工装置10Aは、第1の実施形態の構成に加え、さらに、結像レンズ42と、光検出器44と、光トラップ46とを備えている。なお、光検出器44は、本発明の「他の検出器」の一例である。
【0099】
第2の実施形態においては、被加工物Wの亀裂検出が行われる場合、互いに異なる変調モードで少なくとも2回の測定が行われる。このとき、空間変調制御部58は、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBにそれぞれ設定される変調パターンを測定毎に切り替える。具体的には、1回目の測定では、第1変調モードとして、第1変調領域RA及び第2変調領域RBには、
図13に示した第1変調パターン64A及び第2変調パターン64Bがそれぞれ設定される。また、2回目の測定では、第2変調モードとして、第1変調領域RA及び第2変調領域RBには、
図14に示した第3変調パターン64C及び第4変調パターン64Dがそれぞれ設定される。
【0100】
このように第2の実施形態においては、測定回数に応じて変調モードを切り替えながら、被加工物Wの亀裂検出が行われるようになっている。なお、
図14に示した変調パターン(第3変調パターン64C及び第4変調パターン64D)は、第1変調領域RAと第2変調領域RBの境界線を中心として、
図13に示した変調パターン(第1変調パターン64A及び第2変調パターン64B)を反転させたものに相当する。
【0101】
これにより、1回目の測定では、第1の実施形態と同様に、レーザー光源16からのレーザー光L1のうち、光変調面21aの第1変調領域RAに入射した光は変調されて、変調後の変調光が集光レンズ30に向けて出射される。また、被加工物Wからの反射光L2のうち、光変調面21aの第2変調領域RBに入射した光は変調されて、変調後の変調光が結像レンズ32を介して光検出器34で検出される。なお、レーザー光源16からのレーザー光L1のうち、光変調面21aの第2変調領域RBに入射した光は変調されて、変調後の変調光が迷光とならないように光トラップ36で捕捉される。
【0102】
また、2回目の測定では、レーザー光源16からのレーザー光L1のうち、光変調面21aの第2変調領域RBに入射した光は変調されて、変調後の変調光が集光レンズ30に向けて出射される。また、被加工物Wからの反射光L2のうち、光変調面21aの第1変調領域RAに入射した光は変調されて、変調後の変調光が結像レンズ42を介して光検出器44で検出される。なお、レーザー光源16からのレーザー光L1のうち、光変調面21aの第1変調領域RAに入射した光は変調されて、変調後の変調光が迷光とならないように光トラップ46で捕捉される。
【0103】
次に、第2の実施形態における亀裂検出処理の原理について
図15を参照して説明する。
【0104】
図15は、第2の実施形態における亀裂検出処理の原理を説明するための図であり、亀裂軸Mに対して集光レンズ30の光軸Pが水平方向に位置ずれしている場合を示している。
【0105】
図15に示すように、第2の実施形態においては、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBにそれぞれ設定される変調パターンを交互に切り替えることにより、被加工物Wに対して互いに異なる斜め方向からレーザー光L1
A、L1
Aが照射される偏射照明が行われる。
【0106】
ここで、1回目の測定では、被加工物Wに照射されるレーザー光L1
A(
図15の右側から照射される光束)によって検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)は、実際の亀裂Kの下端位置dよりも深い位置であるレーザー光L1
Aの集光点の深さ位置d
Aとなる。一方、2回目の測定では、被加工物Wに照射されるレーザー光L1
B(
図15の左側から照射される光束)によって検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)は、実際の亀裂Kの下端位置dよりも浅い位置であるレーザー光L1
Bの集光点の深さ位置d
Bとなる。この場合、各レーザー光L1
A、L1
Bによりそれぞれ検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)d
A、d
Bよりもこれらの位置の平均値(中間値)を亀裂Kの下端位置とする方が実際の亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)の真値により近い値となる。第2の実施形態では、このような原理を利用して亀裂Kの亀裂深さを検出している。これにより、集光レンズ30と被加工物Wとのアライメント精度が十分でない場合でも、亀裂軸Mに対する集光レンズ30の光軸Pの位置ずれに伴う誤差を取り除くことができ、上述した第1の実施形態に比べて、亀裂検出処理を精度よくかつ安定して行うことができる。
【0107】
次に、第2の実施形態に係るレーザー加工装置10Aを用いた亀裂検出方法について
図16を参照して説明する。
図16は、第2の実施形態に係るレーザー加工装置10Aを用いた亀裂検出方法の一例を説明したフローチャートである。なお、
図16は、
図8に示した処理内容にステップS11、ステップS26、ステップS28、ステップS30を追加したものであり、共通する処理は説明を簡略化または省略する。
【0108】
(ステップS10)
まず、レーザー加工装置10において亀裂検出処理の動作開始時に、主制御部50は各部の初期設定を行う。具体的には、光量制御部56は、フィルタ移動機構40を制御して、減光フィルタ38を挿入位置に配置する。
【0109】
(ステップS11)
次に、主制御部50は、変数kを1に設定する(k=1)。
【0110】
(ステップS12〜ステップS24)
次に、主制御部50は、変数iを1に設定した後(ステップS12)、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点の深さ位置をZ
iに設定し(ステップS14)、被加工物Wに対して偏射照明を実行する(ステップS16)。例えば、k=1である場合には、空間変調制御部58は、第1変調モードとして、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBに対してそれぞれ第1変調パターン64A及び第2変調パターン64B(
図13参照)を設定する。また、k=2である場合には、空間変調制御部58は、第2変調モードとして、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBに対してそれぞれ第3変調パターン64C及び第4変調パターン64D(
図14参照)を設定する。いずれの場合においても、空間変調制御部58は、集光レンズ30で集光されるレーザー光L1の集光点が所望の走査位置となるように、第1変調領域RAに設定される変調パターン(第1変調パターン64A又は第3変調パターン64C)を変化させる制御を行う。
【0111】
次に、亀裂検出部60は、光検出器34から出力された光強度情報を取得する(ステップS18)。その後、主制御部50は、i=nであるか否かを判断し(ステップS20)、i=nでない場合にはiを1つインクリメントして、ステップS12に戻り、ステップS12からステップS18までの処理を繰り返し行う。
【0112】
ステップS20においてi=nである場合には、亀裂検出部60は、ステップS18において走査位置Z
i毎に取得した光強度情報に基づき、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出するを検出する(ステップS24)。
【0113】
(ステップS26)
次に、主制御部50は、k=2であるか否かを判断する。k=2でない場合にはステップS28に進み、k=2である場合にはステップS30に進む。
【0114】
(ステップS28)
ステップS26においてk=2でない場合には、主制御部50は、kを1つインクリメントして(k=k+1)、ステップS11に戻り、ステップS12からステップS24までの処理を繰り返し行う。
【0115】
すなわち、第2の実施形態における亀裂検出方法では、1回目の測定(k=1の場合)では第1変調モードにより変調された変調後のレーザー光L1
Aを用いて被加工物Wに対して偏射照明を行ったときの亀裂Kの亀裂深さd
Aが検出され、2回目の測定(k=2の場合)では第2変調モードにより変調された変調後のレーザー光L1
Bを用いて被加工物Wに対して偏射照明を行ったときの亀裂Kの亀裂深さd
Bが検出される。
【0116】
(ステップS30)
次に、亀裂検出部60は、1回目の測定で検出された亀裂Kの亀裂深さ(第1亀裂深さ)d
Aと、2回目の測定で検出された亀裂Kの亀裂深さ(第2亀裂深さ)d
Bとの平均値d
M(=(d
A+d
B)/2)を真の亀裂深さとして算出する。
【0117】
以上のようにして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さが検出されると、その検出結果は図示しない表示装置に表示され、亀裂検出処理が終了となる。
【0118】
このように第2の実施形態によれば、空間光変調器21の光変調面21aの第1変調領域RA及び第2変調領域RBにそれぞれ設定される変調パターンを交互に切り替えることにより、被加工物Wに対して互いに異なる斜め方向からレーザー光L1
A、L1
Aが照射される偏射照明が行われるので、集光レンズ30の光軸Pに対して一方側から斜めに照射されるレーザー光L1
Aに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さと、集光レンズ30の光軸Pに対して他方側から斜めに照射されるレーザー光L1
Bに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さとの平均値を亀裂Kの亀裂深さ(真の亀裂深さ)として求めることができる。これにより、集光レンズ30の光軸に対する被加工物Wのアライメント精度が十分でない場合でも、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを精度よくかつ安定して検出することが可能となる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。