特許第6899080号(P6899080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899080
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ウェーハ形状データ化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20210628BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20210628BHJP
【FI】
   H01L21/66 P
   !H01L21/304 601Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-165807(P2018-165807)
(22)【出願日】2018年9月5日
(65)【公開番号】特開2020-38920(P2020-38920A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】大西 理
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0114597(US,A1)
【文献】 特表2014−509070(JP,A)
【文献】 特表2012−501553(JP,A)
【文献】 特開2004−20286(JP,A)
【文献】 特開2017−204609(JP,A)
【文献】 特開2012−146581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/304
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの形状を関数によりデータ化する方法であって、ウェーハの中心から円周360度を所定の数に分割した角度毎に半径方向の各位置の厚み形状を測定し、6次以上の多項式近似により前記角度毎に半径方向の位置に対するウェーハ厚さの関数化を行い、測定機から出力された厚み形状と前記関数によって出力された厚み形状との比較を行い、ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認したのち、前記角度毎の関数をウェーハ形状を表すデータとすることを特徴とするウェーハ形状データ化方法。
【請求項2】
前記角度が10度以下であることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ形状データ化方法。
【請求項3】
前記角度が1度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハ形状データ化方法。
【請求項4】
前記測定機から出力される前記角度毎の厚み形状を平均化して、この平均化した厚み形状を多次多項式で近似したときの相関係数に基づいて、前記関数化するときの多項式の次数を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェーハ形状データ化方法。
【請求項5】
前記相関係数が0.95以上となる次数の多項式で前記関数化を行うことを特徴とする請求項4に記載のウェーハ形状データ化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハの形状を関数によりデータ化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等のウェーハをユーザーに出荷する際には、ウェーハのフラットネス情報としてSFQR(Site Frontside ref. least sQuare Range)やSBIR(Site Backside ref. Ideal Range)、ESFQR(Edge Site Frontside ref. least sQuare Range)といったフラットネスパラメーターが個々のウェーハに添付される。これらのパラメーターはウェーハのフラットネスを分類するには一定の基準として用を足しているが、ウェーハの形状をイメージすることが出来ない代用的なパラメーターと言える。そのため、ステッパー工程では、デバイスパターンをウェーハに焼く前にプレステージでステージ上でのウェーハ形状を予め計測する必要がある。
【0003】
ここで、ウェーハ形状の計測に関連して下記特許文献1〜3がある。特許文献1には、シリコンウェーハなどのワークの断面形状を測定する方法が記載されている。具体的には、引用文献1には、回転可能な定盤によって研磨されていくワークの厚さを厚さ測定手段により測定し、該厚さ測定手段が測定する厚さと、該厚さ測定手段が厚さを測定したワークの面内位置とをそれぞれ複数取得していき、各面内位置における厚さを、ワークの中心から各面内位置までの径方向距離に対応するワークの所定の径方向の各位置における厚さに変換処理して、所定の径方向のワークの断面形状を求める方法が記載されている。また、ワークの断面形状を多項式近似曲線により求めることも記載されている。
【0004】
引用文献2には、透光性基板の一方の主表面に転写パターン形成用の薄膜が設けられたマスクブランクの製造に用いられるマスクブランク用基板であって、主表面における算出領域で、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成されたゼルニケ多項式で表現した仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、主表面と仮想基準面との差分データの前記算出領域内での最高高さと最低高さとの差が所定値以下となる表面形状を有したマスクブランク用基板が記載されている。
【0005】
引用文献3には、基板の被検査面上に光を照射し、その被検査面上に映る光照射部の画像を取得し、この画像の輪郭線を多項式で近似し、この輪郭線よりも外側に形成された散乱像を検出することで、被検査面の検査を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−204609号公報
【特許文献2】国際公開第2014/203961号
【特許文献3】特開2016−20824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プレステージでの計測を省くには、個々のウェーハにウェーハ計測時の全形状データを添付すれば良いが、フラットネス測定機の高分解能化に伴い、1枚のウェーハ形状データ容量は増大し、全形状データを個々のウェーハに添付することは現実的ではない。
【0008】
また、引用文献1の方法では、所定の径方向(例えばX軸方向、Y軸方向)の断面形状を得る方法であるので、ウェーハ全面の形状を得るには適さない。また、引用文献1の方法では、所定の径方向の断面形状を得るために、各面内位置における厚さを所定の径方向の位置における厚さに変換処理するので、所定の径方向における実際の断面形状との誤差が生じる。つまり、引用文献1の方法では高精度なウェーハ形状を得ることができない。
【0009】
また、引用文献2の技術は、透光性基板から構成されたマスクブランク用基板に関する技術であり、シリコン等の半導体材料を薄く円盤状に加工してできた板であるウェーハの形状表現に関する技術とは異なる。
【0010】
また、引用文献3の方法では、被検査面上に映る光照射部の画像の輪郭線の形状を得ることはできるが、ウェーハ全面の形状を得るには適さない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ウェーハの形状データの容量を低減でき、かつ、高精度な形状データを得ることができ、かつ、ウェーハ全面の形状を得るのに適した方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、ウェーハの形状を関数によりデータ化する方法であって、ウェーハの中心から円周360度を所定の数に分割した角度毎に半径方向の各位置の厚み形状を測定し、6次以上の多項式近似により前記角度毎に半径方向の位置に対するウェーハ厚さの関数化を行い、測定機から出力された厚み形状と前記関数によって出力された厚み形状との比較を行い、ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認したのち、前記角度毎の関数をウェーハ形状を表すデータとすることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、円周方向の角度毎に半径方向の位置に対するウェーハ厚さの関数化を行い、得られた関数をウェーハ形状を表すデータとするので、測定機から出力される厚み形状のデータに比べて容量を低減できる。また、前記関数における多項式の次数を6次以上とすることで、測定機から出力される実際の厚み形状との誤差を小さくでき、高精度な形状データを得ることができる。さらに、測定機から出力された厚み形状と前記関数によって出力された厚み形状との比較を行い、ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認するので、より一層、高精度な形状データを得ることができる。また、本発明は、円周360度の分割数を多くすれば、ウェーハ全面の形状データを得ることができるので、ウェーハ全面の形状を得るのに適した方法であるといえる。
【0014】
また、本発明において前記角度が10度以下とすることができ、好ましくは1度以下とすることができる。これによれば、ウェーハ全面の厚み形状を高精度に表現できる。
【0015】
本発明において、前記測定機から出力される前記角度毎の厚み形状を平均化して、この平均化した厚み形状を多次多項式で近似したときの相関係数に基づいて、前記関数化するときの多項式の次数を決定するとしてもよい。
【0016】
これによれば、相関係数を考慮して関数化するときの多項式の次数を決定するので、高精度な形状データを得やすくできる。また、測定機から出力された厚み形状と前記関数によって出力された厚み形状との比較を行ったときに、ウェーハ全面で所定の誤差以内にしやすくできる。また、多項式の次数の決定は、測定により得られた角度毎の厚み形状を平均化したデータを用いて行うので、ウェーハ形状を表現するに当たって必要な次数を簡単に得ることができる。
【0017】
また、本発明において前記相関係数が0.95以上となる次数の多項式で前記関数化を行うとしてもよい。これによって、高精度な形状データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ウェーハの形状を関数によりデータ化する手順を示したフローチャートである。
図2】ウェーハ中心を原点とした極座標系において、ある角度における厚みデータを点で示した図である。
図3】実施例1において、ウェーハの厚み形状に対して多次多項式を当てはめた際の多項式次数と相関係数との関係を示した図である。
図4】実施例2の1〜5枚目のウェーハにおける、測定機から出力された厚みマップを上段に示し、関数から出力された厚みマップを下段に示した図である。
図5】実施例2の6〜10枚目のウェーハにおける、測定機から出力された厚みマップを上段に示し、関数から出力された厚みマップを下段に示した図である。
図6】実施例2の11〜15枚目のウェーハにおける、測定機から出力された厚みマップを上段に示し、関数から出力された厚みマップを下段に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1を参照して、発明の実施形態を説明する。先ず、厚み形状を関数により表現する対象となるシリコンウェーハ(以下、単にウェーハという)を準備する(S1)。
【0020】
次に、準備したウェーハの厚み形状をKLA−Tencor社製のフラットネス測定機「WaferSight2」等の測定機により測定する(S2)。この際、測定機による厚み測定の走査(スキャン)範囲はウェーハ全面とする。なお、ウェーハにおける厚み測定の走査はどのように行ってもよく、ウェーハの円周方向における位置(角度)θ毎にウェーハの半径方向に沿って走査してもよいし、ウェーハの半径方向における位置r毎にウェーハの円周方向に沿って走査してもよいし、XY座標系(直交座標系)におけるX座標軸に平行な方向又はY座標軸に平行な方向に沿って走査してもよい。測定機はウェーハにおける各厚み測定点の座標を、厚み測定値に対応付けて記録している。この座標は、ウェーハ中心を原点とした極座標とは異なる座標系(例えばXY座標系)における座標であってもよいし、ウェーハ中心を原点とした極座標であってもよい。また、測定機における厚み測定の原理はどのようなものであってもよい。
【0021】
測定機による厚み測定の刻み幅(分解能)は、ウェーハの円周方向においては例えば10度以下の刻み幅、ウェーハの径方向においては例えばウェーハの直径の10分の1(例えば直径が300mmの場合は30mm)以下の刻み幅又はウェーハ直径に関わらず10mm以下の刻み幅とすることができる。
【0022】
次に、測定機による測定結果(各点の厚み測定値及び各点の座標)のテキストデータ(例えばcsvファイル)をウェーハの形状データとして出力する(S3)。この際、測定機の座標系がウェーハ中心を原点とした極座標と異なっている場合には、座標変換ソフトによって、測定点の座標を、ウェーハ中心を原点とした極座標(r−theta座標)に変換したうえで、ウェーハの形状データを出力する。
【0023】
次に、S3の工程で得た形状データ(以下、測定形状データという)に対して、ウェーハ中心から円周360度を等間隔に所定の数に分割した角度(以下、分割角度θ1という)毎に、6次以上の多項式近似により半径方向の位置r(ウェーハ中心からの距離)に対するウェーハ厚さzの関数化を行う(S4)。分割角度θ1は例えば10度以下(例えば1度)とすることができ、好ましくは、1度以下とするのがよい。また、分割角度θ1は、測定形状データにおけるθ方向の刻み幅と同じであってもよいし、該刻み幅が非常に小さい値(例えば0.1度以下の刻み幅)の場合には、データ容量の削減の観点又は関数化の負担低減の観点で、該刻み幅よりも大きい角度としてもよい。
【0024】
より詳しくは、分割角度θ1毎に、厚みzを、z=ar+brn−1+crn−2+・・・+constの形式の多項式で表現する。この多項式において、rはウェーハ中心からの距離(つまり半径方向における位置)を示している。nは、多項式の次数(多項式を構成する各項の半径rに係る次数のうち最高次数)であって6以上の整数である。a、b、c、constは係数である。多項式における係数は例えば最小二乗法により決定すればよい。上記多項式は、空間の次元に係る変数が半径rのみである1次元多項式(1変数多項式)である。なお、上記特許文献2で使用しているゼルニケ多項式は、次元に係る変数が半径rと、角度θとの2変数である2次元多項式(2変数多項式)である。
【0025】
また、例えば、図2に示すように、θ=αにおける近似多項式は、測定形状データのうちのθ=αの座標を持つ厚みデータ100に基づいて得るようにする。すなわち、上記特許文献1では、θ=α以外の座標の厚みデータを、θ=αにおける厚みデータに変換処理したうえで多項式近似を行うが、本実施形態ではそのようなことは行わない。
【0026】
また、図2において、β=α+180°としたとき、θ=βにおける近似多項式は、測定形状データのうちのθ=βの座標を持つ厚みデータ101に基づいて、θ=αにおける近似多項式とは別個に得るようにする。このように、S4の工程では、360度÷分割角度θ1=N個の多項式を別個に得る。
【0027】
多項式の次数は例えば以下のようにして決定する。すなわち、測定形状データにおいて、ウェーハ中心からの距離r毎に、円周方向の各データの平均化を行う。例えば半径方向の厚み測定の刻み幅が1mmとした場合、r=1mmの座標を持つ円周方向の各データの平均化を行い、r=2mmの座標を持つ円周方向の各データの平均化を行い、このような平均化を各距離r毎に行う。そして、平均化した形状データを多次多項式(z=ar+brn−1+crn−2+・・・+const)に当てはめたときの相関係数Rを確認する。相関係数Rが、ウェーハ形状を表現するに当たって必要な精度を確保できる値(例えば0.90以上)となる多項式の次数を求める。S4の工程では、このようにして得られた次数の多項式で関数化を行う。本発明者は、多項式の次数が6次以上であれば相関係数Rが0.95以上となるという知見を得ている(後述の実施例1参照)。
【0028】
また、多項式の次数の決定に用いる測定形状データは、S4の工程で形状の関数化を行うウェーハ(出荷対象となるウェーハ)そのものから得られたデータであってもよいし、別のウェーハ(例えば出荷対象とはならないサンプルウェーハ)から得られたデータであってもよい。また、多項式の次数は、複数のウェーハの測定形状データから決定してもよい。この場合、各測定形状データに対して上記手順で相関係数Rを確認し、全ての相関係数Rが所定値以上(例えば0.90以上)となる次数を、S4の工程で関数化を行う際の多項式の次数として決定する。
【0029】
S4の工程では、分割角度θ1毎の関数(多項式)の情報として、多項式の各項の係数を出力する。
【0030】
次に、測定機から出力された厚み形状(測定形状データ)と、S4の工程で得た関数によって出力された厚み形状である関数形状データとを比較して、ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認する(S5)。具体的には、例えば、S4の工程で得られた関数から得られる分割角度θ1毎の厚み形状z(r)をコンパイル(統合)して、1枚のウェーハの厚みマップとして出力する。この際、半径方向における厚み出力の刻み幅は、測定形状データにおける半径方向の刻み幅と同じとする。この刻み幅は、例えばウェーハの直径の10分の1(例えば直径が300mmの場合は30mm)以下の刻み幅又はウェーハ直径に関わらず10mm以下の刻み幅とすることができる。そして、例えば、関数形状データから求まる厚みマップと、測定形状データから求まる厚みマップとの差分をとることで、差分マップを求める。この差分マップにおいて所定の誤差を超える箇所が無いことを確認する。
【0031】
ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認したのち、S4の工程で得られた関数情報(多項式の各項の係数データ)を、ウェーハ形状を表すデータとしてウェーハに添付してユーザーに供給する(S6)。1枚のウェーハ当たりの多項式の個数Nは360度/分割角度θ1となり、1つの多項式当たりの係数の個数は、多項式の次数をnとすると、(n+1)個となる。したがって、関数情報は、1枚のウェーハ当たり、N×(n+1)個の係数データを含んで構成される。
【0032】
なお、S5の工程において、所定の誤差を超える箇所があった場合には、関数形状データは低精度であるとして、ウェーハに添付する形状データとして採用しない。この場合、例えば、多項式の次数を大きくして、再度、S4の工程における関数化を行い、S5の工程でウェーハ全面で所定の誤差以内になったか否かを確認する。そして、ウェーハ全面で所定の誤差以内であることを確認できた場合に、関数情報をウェーハに添付してユーザーに供給する(S6)。
【0033】
ユーザー側では、分割角度θ1毎のz=ar+brn−1+crn−2+・・・+const)に、関数情報として添付された多項式の各係数と半径rとを当てはめることで、分割角度θ1毎の厚み形状を得ることができる。これら分割角度θ1毎の厚み形状を1つに統合することで、ウェーハ全面の厚み形状(厚みマップ)を得ることができる。
【0034】
このように、本実施形態では、ウェーハの測定形状データをr−theta座標に対応付けて表すことができる。よって、ある角度におけるウェーハの形状を一次元的に抽出することができ、厚みzを半径rで一次元的に表現することができる。この関係に対して、多項式によるフィッティングを行い、各々の角度方向に対して関数で形状を表現することでウェーハ全面の形状を関数で表現することができる。角度毎の関数から得られるウェーハ形状は、ウェーハの面内位置(r、θ)及び厚みzから構成される3次元的な形状である。また、例として、分割角度θ1を1度とした場合、ウェーハ全面の情報は、360×(n+1)個の係数データで表現することができ、大幅なデータの圧縮となる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0036】
(実施例1)
多項式次数と相関係数との関係を調べた。具体的には、直径300mmのシリコンウェーハ(以下、ウェーハという)を3枚準備して、各ウェーハの厚み形状を、KLA−Tencor社製のフラットネス測定機「WaferSight2」により測定した。なお、WaferSight2は、ウェーハに光を入射し、ウェーハからの反射光と基準面からの反射光との光学干渉によって生じる干渉縞の数と幅から、ウェーハ表面の変位量を計測することを原理とする測定機である。
【0037】
WaferSight2から出力される測定結果のファイル(wntファイル)を、KLA−Tencor社製のオフライン解析ソフト「OASys」を用いて、ウェーハ中心を原点とした極座標に対する厚み測定値に変換し、変換後の測定形状データをcsvファイルとして出力した。出力した測定形状データにおけるθ方向の刻み幅(分割角度θ1)は1度とし、r方向の刻み幅は0.2mmとした。
【0038】
次いで、得られた測定形状データに対して、ウェーハ中心からの距離r毎に、円周方向の各データの平均化を行った。この平均化を、各ウェーハの測定形状データに対して行った。
【0039】
そして、ウェーハ毎の平均化形状データに対して、多次多項式(z=ar+brn−1+crn−2+・・・+const)を当てはめたときの相関係数Rと、多次多項式の次数との関係を調べた。多項式の係数は最小二乗法により求めた。図3はこの関係を示している。
【0040】
図3に示すように、次数が6次の場合には、3枚のウェーハ毎の相関係数Rの全てが0.97以上となった。また、次数が7次の場合には、全ての相関係数Rが0.98以上となった。また、次数が8次以上の場合には、全ての相関係数Rが0.99以上となった。特に、次数が10次の場合には、全ての相関係数Rがほぼ1となった。
【0041】
以上より、関数化する際の多項式の次数は6次以上が好ましく、より好ましくは相関係数Rが0.99以上となる8次以上がよく、より好ましくは相関係数Rがほぼ1となる10次以上がよいことが分かった。
【0042】
(実施例2)
直径300mmのシリコンウェーハ(以下、ウェーハという)を15枚準備して、各ウェーハに対して図1の手順にしたがって関数化を行い、得られた関数から求まる厚みマップと、測定機から出力された厚みマップとを比較した。具体的には、各ウェーハの厚み形状を、KLA−Tencor社製のフラットネス測定機「WaferSight2」により測定した。
【0043】
WaferSight2から出力される測定結果のファイル(wntファイル)を、KLA−Tencor社製のオフライン解析ソフト「OASys」を用いて、ウェーハ中心を原点とした極座標に対する厚み測定値に変換し、変換後の測定形状データをcsvファイルとして出力した。出力した測定形状データにおけるθ方向の刻み幅(分割角度θ1)は1度とし、r方向の刻み幅は0.2mmとした。
【0044】
各測定形状データに対して、分割角度θ1毎に、半径方向の位置r(ウェーハ中心からの距離)に対する10次の多項式で近似を行った。多項式の係数は最小二乗法により求めた。得られた分割角度θ1毎の多項式の各係数を出力した。表1は、15枚のウェーハのうちの1つから得られた多項式の各係数を示している。表1に示す関数情報は、多項式の個数が360個であり、多項式1個当たりの係数の個数が11個であり、全体として360×11=3960個の係数データから構成されている。
【0045】
【表1】
【0046】
また、得られた関数(多項式)に基づいて分割角度θ1(=1度)毎の厚みz(r)を出力した。それら厚みz(r)を1つにコンパイル(統合)し、1枚のウェーハの厚みマップとして出力した。この厚みマップの出力を15枚のウェーハのそれぞれに対して行った。
【0047】
図4図6は、15枚のウェーハ毎に、測定機から出力された厚みマップ(「Raw」と示したマップ)を上段に示し、関数から出力された厚みマップ(「Fitting」と示したマップ)を下段に示している。なお、図4図6の各厚みマップの基となる厚みデータの、半径方向の刻み幅は0.2mmとした。図4図6の各厚みマップでは、基準面の変位をゼロとして、この基準面に対する変位量を無彩色の濃淡で示している。
【0048】
図4図6に示すように、いずれのウェーハにおいても、関数から出力された厚みマップは、測定機から出力された厚みマップと同様のマップとなり、ウェーハの厚み形状を精度よく表現できているといえる。実際、ウェーハ毎に上段の厚みマップと下段の厚みマップとを比較したところ、いずれのウェーハにおいても、ウェーハ全面で誤差が±5.5nm(所定の誤差)以内であることが確認できた。
【0049】
また、測定機「WaferSight2」から出力される形状データと、関数情報との容量を比較したところ、測定機から出力される形状データの容量は1枚のウェーハ当たり2〜20Mbであったのに対し、関数情報の容量は1枚のウェーハ当たり63kbとなり、関数化することで容量を大幅に圧縮できた。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであったとしても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6