(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N又はNの倍数個の前記センサは、複数の前記ガス供給ノズルよりも下の高さ又は同一の高さに設けられ、前記処理容器の径方向の内側に向けて水平方向、斜め方向又は垂直方向に突出する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
N又はNの倍数個の前記センサは、複数の前記ガス供給ノズルよりも上の高さに設けられ、前記処理容器の径方向の内側に向けて水平方向に突出する又は前記処理容器の壁面に埋め込まれた状態で配置される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
N又はNの倍数個の前記センサは、前記処理容器内にて被処理体を載置する載置台の表面から垂直方向に−10mm〜80mmの範囲の高さであって同一の高さに設けられる、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
N又はNの倍数個の前記センサは、前記処理容器の天板に等間隔に配置されたN個のマイクロ波導入モジュールの位置に対して、前記処理容器の中心軸を基軸として対称性を有する位置に配置される、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
処理容器の壁面に設けられ、該処理容器の径方向の内側に向けて処理ガスを供給する複数のガス供給ノズルと、前記処理容器の天板の周方向に配置され、プラズマを生成するためのマイクロ波を該処理容器内に導入するN(N≧2)個のマイクロ波導入モジュールと、前記処理容器の壁面にN又はNの倍数個設けられ、前記処理容器内にて生成されたプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teをモニタするセンサと、を有するプラズマ処理装置を使用して、プラズマを制御する制御方法であって、
前記センサによりモニタしたプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teの少なくともいずれか一方に基づき、前記マイクロ波導入モジュールから導入されるマイクロ波のパワー及び該マイクロ波導入モジュールから導入されるマイクロ波の位相の少なくともいずれかを制御する、制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[マイクロ波プラズマ処理装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100の断面図の一例を示す。マイクロ波プラズマ処理装置100は、ウェハWを収容するチャンバ1を有する。マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波によってチャンバ1側の表面に形成される表面波プラズマにより、半導体ウェハW(以下、「ウェハW」と称呼する)に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一例である。所定のプラズマ処理の一例としては、成膜処理またはエッチング処理が例示される。
【0012】
チャンバ1は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の処理容器であり、接地されている。マイクロ波プラズマ源2は、チャンバ1の天板の内壁に形成された開口部1aからチャンバ1の内部に臨むように設けられている。マイクロ波プラズマ源2から開口部1aを通ってチャンバ1内にマイクロ波が導入されると、チャンバ1内にて表面波プラズマが形成される。
【0013】
チャンバ1内にはウェハWを載置する載置台11が設けられている。載置台11は、チャンバ1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11および支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁部材(セラミックス等)が例示される。載置台11には、ウェハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウェハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。
【0014】
載置台11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が電気的に接続されている。高周波バイアス電源14から載置台11に高周波電力が供給されることにより、ウェハW側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0015】
チャンバ1の底部には排気管15が接続されており、この排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させるとチャンバ1内が排気され、これにより、チャンバ1内が所定の真空度まで高速に減圧される。チャンバ1の側壁には、ウェハWの搬入出を行うための搬入出口17と、搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0016】
マイクロ波プラズマ源2は、マイクロ波出力部30とマイクロ波伝送部40とマイクロ波放射部材50とを有する。マイクロ波出力部30は、複数経路に分配してマイクロ波を出力する。
【0017】
マイクロ波伝送部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送する。マイクロ波伝送部40に設けられた周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bは、アンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射部材50に導入する機能およびインピーダンスを整合する機能を有する。
【0018】
周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bは、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53を同軸状に配置する。外側導体52と内側導体53の間には、マイクロ波電力が給電され、マイクロ波放射部材50に向かってマイクロ波が伝播するマイクロ波伝送路44となっている。
【0019】
周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bには、スラグ61と、その先端部に位置するインピーダンス調整部材140とが設けられている。スラグ61を移動させることにより、チャンバ1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる機能を有する。インピーダンス調整部材140は、誘電体で形成され、その比誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。
【0020】
マイクロ波放射部材50は、チャンバ1の上部に設けられた支持リング129に気密にシールされた状態で設けられ、マイクロ波出力部30から出力され、マイクロ波伝送部40から伝送されたマイクロ波をチャンバ1内に放射する。マイクロ波放射部材50は、チャンバ1の天井部を構成している。
【0021】
マイクロ波放射部材50は、本体部120、遅波材121,131、マイクロ波透過部材122,132、スロット123,133及び誘電体層124を有する。本体部120は、金属から構成される。
【0022】
本体部120は、6つの周縁マイクロ波導入機構43aと1つの中央マイクロ波導入機構43bとを有している。
図2に示すように、6つの周縁マイクロ波導入機構43aは、チャンバ1の天板の周方向に配置される。1つの中央マイクロ波導入機構43bは、チャンバ1の天板の中央に配置される。
【0023】
図1に戻り、遅波材121は、周縁マイクロ波導入機構43aに対応して本体部120に嵌め込まれ、遅波材131は、中央マイクロ波導入機構43bに対応して本体部120に嵌め込まれている。遅波材121,131は、マイクロ波を透過させる円盤状の誘電体から形成されている。遅波材121,131は、真空よりも大きい比誘電率を有しており、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成され得る。真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、遅波材121,131は、比誘電率が真空よりも大きい材料で構成されることにより、マイクロ波の波長を短くしてスロット123,133を含むアンテナを小さくする機能を有する。
【0024】
遅波材121,131の下方では、円盤状のマイクロ波透過部材122,132が本体部120に嵌め込まれている。遅波材121とマイクロ波透過部材122との間の部分にはスロット123および誘電体層124が、上から遅波材121、スロット123、誘電体層124、マイクロ波透過部材122の順に形成されている。本体部120の遅波材131とマイクロ波透過部材132との間の部分にはスロット133が形成されている。
【0025】
マイクロ波透過部材122,132は、マイクロ波を透過する材料である誘電体材料で構成されている。
図2に、一実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100の天板の内壁の一例を示す。
図2では、ガスの供給孔は省略している。
【0026】
本実施形態では、6つの周縁マイクロ波導入機構43aに対応する6つのマイクロ波透過部材122が、本体部120において周方向に等間隔に配置され、チャンバ1の内部に円形に露出する。また、中央マイクロ波導入機構43bに対応する1つのマイクロ波透過部材132が、チャンバ1の中央にて内部に向けて円形に露出する。
【0027】
マイクロ波透過部材122,132は、周方向に均一な表面波プラズマを形成するための誘電体窓としての機能を有する。マイクロ波透過部材122,132は、遅波材121,131と同様、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成されてもよい。
【0028】
本実施形態では、周縁マイクロ波導入機構43aの数は6つであるが、これに限らず、N個配置される。Nは、2以上であればよいが、3以上が好ましく、例えば3〜6であってもよい。なお、マイクロ波放射部材50は、チャンバ1の天板の周方向に配置され、プラズマを生成するためのマイクロ波を該処理容器内に導入するN(N≧2)個のマイクロ波導入モジュールの一例である。
【0029】
図1に戻り、マイクロ波放射部材50にはシャワー構造の第1のガス導入部21が設けられており、第1のガス導入部21には、ガス供給配管111を介して第1のガス供給源22が接続されている。第1のガス供給源22から供給される第1のガスは、第1のガス導入部21を通ってチャンバ1内にシャワー状に供給される。第1のガス導入部21は、チャンバ1の天井部に形成された複数のガス孔から第1の高さで第1のガスを供給する第1のガスシャワーヘッドの一例である。第1のガスの一例としては、例えばArガス等のプラズマ生成用のガスや、例えばO
2ガスやN
2ガス等の高エネルギーで分解させたいガスが挙げられる。
【0030】
チャンバ1内の載置台11とマイクロ波放射部材50との間の位置には、第2のガス導入部の一例であるガス供給ノズル27がチャンバ1に水平に設けられている。ガス供給ノズル27は、チャンバ1の側壁に嵌め込まれたリング状部材28に形成されたガス供給管28aに接続され、ガス供給管28aには第2のガス供給源29が接続されている。第2のガス供給源29から、成膜処理やエッチング処理等のプラズマ処理の際に、極力分解させずに供給したい処理ガス、例えばSiH
4ガスやC
5F
8ガス等の第2のガスが供給されるようになっている。ガス供給ノズル27は、第1のガス供給源22から供給される第1のガスを供給する複数のガス孔の高さよりも低い高さで複数のガス孔から第2のガスを供給する。なお、第1のガス供給源22および第2のガス供給源29から供給されるガスとしては、プラズマ処理の内容に応じた種々のガスを用いることができる。
【0031】
マイクロ波プラズマ処理装置100の各部は、制御装置3により制御される。制御装置3は、マイクロプロセッサ4、ROM(Read Only Memory)5、RAM(Random Access Memory)6を有している。ROM5やRAM6にはマイクロ波プラズマ処理装置100のプロセスシーケンス及び制御パラメータであるプロセスレシピが記憶されている。マイクロプロセッサ4は、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに基づき、マイクロ波プラズマ処理装置100の各部を制御する制御部の一例である。また、制御装置3は、タッチパネル7及びディスプレイ8を有し、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに従って所定の制御を行う際の入力や結果の表示等が可能になっている。
【0032】
かかる構成のマイクロ波プラズマ処理装置100においてプラズマ処理を行う際には、まず、ウェハWが、搬送アーム上に保持された状態で、開口したゲートバルブ18から搬入出口17を通りチャンバ1内に搬入される。ゲートバルブ18はウェハWを搬入後に閉じられる。ウェハWは、載置台11の上方まで搬送されると、搬送アームからプッシャーピンに移され、プッシャーピンが降下することにより載置台11に載置される。チャンバ1の内部の圧力は、排気装置16により所定の真空度に保持される。第1のガスが第1のガス導入部21からシャワー状にチャンバ1内に導入され、第2のガスがガス供給ノズル27からシャワー状にチャンバ1内に導入される。周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bを介してマイクロ波放射部材50から放射されたマイクロ波により、第1及び第2のガスが分解され、チャンバ1側の表面に生成される表面波プラズマによってウェハWにプラズマ処理が施される。
【0033】
[マイクロ波プラズマ源]
マイクロ波プラズマ源2のマイクロ波出力部30は、
図3に示すように、マイクロ波電源31と、マイクロ波発振器32と、発振されたマイクロ波を増幅するアンプ33と、増幅されたマイクロ波を複数に分配する分配器34とを有する。
【0034】
マイクロ波発振器32は、所定周波数のマイクロ波を例えばPLL(Phase Locked Loop)発振させる。分配器34では、マイクロ波の損失を極力抑えるように、入力側と出力側のインピーダンス整合を取りながらアンプ33で増幅されたマイクロ波を分配する。なお、マイクロ波の周波数としては、700MHzから3GHzの範囲の種々の周波数を用いることができる。
【0035】
マイクロ波伝送部40は、複数のアンプ部42と、アンプ部42に対応して設けられた周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bとを有する。アンプ部42は、分配器34にて分配されたマイクロ波を周縁マイクロ波導入機構43a及び中央マイクロ波導入機構43bに導く。アンプ部42は、位相器46と、可変ゲインアンプ47と、ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48と、アイソレータ49とを有している。
【0036】
位相器46は、マイクロ波の位相を変化させることにより放射特性を変調させることができる。例えば、周縁マイクロ波導入機構43a及び中央マイクロ波導入機構43bのそれぞれに導入されるマイクロ波の位相を調整することにより指向性を制御してプラズマ分布を変化させることができる。また、隣り合うマイクロ波導入機構において90°ずつ位相をずらすようにして円偏波を得ることができる。また、位相器46は、アンプ内の部品間の遅延特性を調整し、チューナ内での空間合成を目的として使用することができる。ただし、このような放射特性の変調やアンプ内の部品間の遅延特性の調整が不要な場合には位相器46は設けなくてもよい。
【0037】
可変ゲインアンプ47は、メインアンプ48へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整し、プラズマ強度を調整する。可変ゲインアンプ47をアンテナモジュール毎に変化させることによって、発生するプラズマに分布を生じさせることができる。
【0038】
ソリッドステートアンプを構成するメインアンプ48は、例えば、入力整合回路と、半導体増幅素子と、出力整合回路と、高Q共振回路とを有する。アイソレータ49は、スロットアンテナ部で反射してメインアンプ48に向かう反射マイクロ波を分離するものであり、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、反射したマイクロ波をダミーロードへ導き、ダミーロードはサーキュレータによって導かれた反射マイクロ波を熱に変換する。周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bは、アンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射部材50に導入する。
【0039】
[プローブ]
図1に示すように、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100には、ガス供給ノズル27と同一の高さにプローブ80が設けられている。
図4は、一実施形態に係るプローブ80及びガス供給ノズル27の配置構成の一部を示す斜視図である。
【0040】
プローブ80は、チャンバ1の壁面に設けられ、チャンバ1の壁面からチャンバ1の径方向の内側に突出する。プローブ80は、6又は6の倍数個設けられる。
【0041】
本実施形態では、チャンバ1の天板に等間隔に配置された6つの周縁マイクロ波導入機構43a及び
図2に示す6つのマイクロ波透過部材122に対して、6つのプローブが周縁マイクロ波導入機構43aと一対一に配置される。
【0042】
ただし、プローブ80の個数はこれに限らず、周縁マイクロ波導入機構43aの個数をNとしたときに、N又はNの倍数個のプローブ80が、チャンバ1の天板に等間隔に配置されたN個のマイクロ波放射部材50(N個のマイクロ波透過部材122)の位置に対して、チャンバ1の中心軸Oを基軸として対称性を有する位置に配置されていればよい。
【0043】
なお、ガス供給ノズル27の数は、特に限定されない。本実施形態では、ガス供給ノズル27の数は18本であり、2つのプローブ80の間に周方向に等間隔で配置されている。このように、プローブ80及びガス供給ノズル27は、同じ高さに配置されてもよい。ただし、異なる高さに配置されてもよい。また、プローブ80及びガス供給ノズル27は、N個のマイクロ波放射部材50(N個のマイクロ波透過部材122)の位置に対して、チャンバ1の中心軸Oを基軸として対称性を有する位置であって、チャンバ1の周方向に配置されることが好ましい。
【0044】
各プローブ80は、プラズマの電子密度Ne又はプラズマの電子温度Teをモニタする。プローブ80は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)等の絶縁材料にて金属部分がコーティングされていることが好ましい。これにより、プラズマ処理中にプローブ80によるチャンバ1内の金属汚染の発生を回避し、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0045】
制御装置3の制御によりプローブ80に正弦波の電圧が印加されると、測定器81は、プラズマ処理中にプローブ80に流れる電流を測定する。プローブ80に流れる電流は、チャンバ1内において生成されるプラズマに流れる電流と等価である。測定器81は、測定した電流の波形を示す信号を制御装置3に送信する。信号を受信した制御装置3のマイクロプロセッサ4は、信号に含まれる電流の波形をフーリエ変換して解析し、プラズマの電子密度Ne及び電子温度Teを算出する。これにより、6つの周縁マイクロ波導入機構43aの下方における周方向のプラズマの分布を6つのプローブ80により夫々モニタすることができる。
【0046】
マイクロプロセッサ4は、プローブ80を用いた測定結果に基づき算出したプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teに応じて、算出に使用したプローブ80に対応する周縁マイクロ波導入機構43aからチャンバ1に導入されるマイクロ波のパワーをプラズマ処理中にリアルタイムに制御する。具体的には、マイクロプロセッサ4は、算出したプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teに応じて、対応する周縁マイクロ波導入機構43aにマイクロ波を出力するアンプ部42の可変ゲインアンプ47を制御し、メインアンプ48へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整する。これにより、対応する周縁マイクロ波導入機構43aに導入されるマイクロ波のプラズマ強度を調整することによりプラズマ分布を変化させる。
【0047】
また、マイクロプロセッサ4は、算出したプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teに応じて、算出に使用したプローブ80に対応する周縁マイクロ波導入機構43aを伝播するマイクロ波の位相をリアルタイムに制御する。具体的には、マイクロプロセッサ4は、算出したプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teに応じて、対応する周縁マイクロ波導入機構43aにマイクロ波を出力するアンプ部42の位相器46を制御し、マイクロ波の位相を変化させることにより放射特性を変調させる。これにより、対応する周縁マイクロ波導入機構43aに導入されるマイクロ波の位相を調整することにより指向性を制御してプラズマ分布を変化させる。
【0048】
このように、本実施形態では、マイクロ波のパワー及びマイクロ波の位相を制御するが、マイクロ波のパワー及びマイクロ波の位相の少なくともいずれかを制御すればよい。ただし、マイクロ波のパワー及びマイクロ波の位相の両方を制御することが好ましい。
【0049】
図5のグラフは、本実施形態に係るプローブ80により測定したプラズマの電子密度Neと、比較例のラングミュアプローブにより測定した電子密度Neの電力依存性を比較した結果の一例である。本グラフによれば、本実施形態に係るプローブ80により測定した場合と、ラングミュアプローブにて測定した場合とでは、プラズマの電子密度Neの電力依存性はほぼ一致することがわかる。
【0050】
図6のグラフは、本実施形態に係るプローブ80により測定したプラズマの電子温度Teと、比較例のラングミュアプローブにより測定した電子温度Teの電力依存性を比較した結果の一例である。本グラフによれば、本実施形態に係るプローブ80により測定した場合と、ラングミュアプローブにて測定した場合とでは、プラズマの電子温度Teの電力依存性はほぼ一致することがわかる。
【0051】
つまり、プラズマの電気的特定の測定結果は、本実施形態に係るプローブ80とラングミュアプローブとでほぼ同一の特性を示し、本実施形態に係るプローブ80は、ラングミュアプローブと同じように機能することが確認できた。なお、ラングミュアプローブによるプラズマの電気的特定の測定の一例が、特開2009−194032号公報に示されている。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、チャンバ1内に設けられたN個のプローブ80によりプラズマを電気的に測定し、これにより、プラズマの分布及びプラズマの特性をモニタすることができる。これにより、プラズマの分布又はプラズマの均一性を制御することができ、プロセスの最適化に要する時間及びコストを低減できる。
【0053】
[プローブの取り付け位置]
次に、プローブ80の取り付け位置について、
図7〜
図10を参照しながら説明する。
図7は、一実施形態に係るプローブ80の取り付け位置の一例を示す。
図8は、
図7のプローブ80の取り付け位置におけるプローブ80による測定結果の一例を示す。
【0054】
図7(A)は、載置台11の表面を0mmとして、載置台11の表面から高さH1=53mmの位置に、チャンバ1の側壁から突出させてプローブ80を取り付けた場合を示す。
図7(B)は、載置台11の表面から高さH2=33mmの位置に、チャンバ1の側壁から突出させてプローブ80を取り付けた場合を示す。
【0055】
図7(C)は、載置台11の表面から高さH3=13mmの位置に、チャンバ1の側壁から突出させてプローブ80を取り付けた場合を示す。
図7(D)は、載置台11の表面から高さH4=−7mm(すなわち、載置台11の表面よりもわずかに下側)の位置に、チャンバ1の側壁から突出させてプローブ80を取り付けた場合を示す。
【0056】
図7(A)〜(D)のいずれも、ガス供給ノズル27とプローブ80は同一の高さに設けられている。
【0057】
図7(A)〜(D)の取り付け位置にて、プローブ80を用いて測定した電流の波形に基づき算出した、ウェハW表面のプラズマの電子密度Neの径方向の分布を
図8に示す。横軸はウェハWの径を示し、横軸の左端(R=0mm)はウェハの中央を示し、右端(R=150mm)はウェハWの端部を示す。縦軸は、プラズマの電子密度Neを示す。
【0058】
これによれば、
図7(A)〜(D)の取り付け位置のいずれのプローブ80も同じような振舞いをしており、プラズマの分布が測定できていることがわかる。つまり、高さ方向のプローブ80の取り付け位置は、いずれであってもよいことがわかる。ただし、プローブ80の取り付け位置が低くなる程、ウェハWの端部におけるプラズマの電子密度Neが高くなっていて、実際のプラズマの分布状態に合致している。よって、プローブ80の取り付け位置が低くなる程、プローブ80による測定結果は好ましい結果となった。
【0059】
ガス供給ノズル27とプローブ80を同一の高さに設ける場合、及びガス供給ノズル27とプローブ80を異なる高さに設ける場合のいずれも、ガスをプラズマ生成空間に供給するためには、ガスの拡散やウェハWの位置を考慮してガスの供給位置を定める必要がある。以上から、上記いずれの場合であっても、プローブ80の高さは、載置台11の表面を0mmとして−10mm〜80mmの範囲に設ける必要がある。
【0060】
ただし、ガス供給ノズル27とプローブ80の高さを同一にすると、以下の利点がある。すなわち、プローブ80をガス供給ノズル27の下方に設けると、プローブ80に流れる電流がプラズマに流れる電流よりも小さくなり、測定結果として得られるプラズマ密度Neが低くなってしまい、測定の精度が低下する場合があるが、ガス供給ノズル27とプローブ80の高さを同一にするとそのような懸念はなくなる。
【0061】
また、本実施形態のように、ガス供給ノズル27とプローブ80とマイクロ波放射部材50が、構造的に対称性を有することにより、プローブ80によるモニタの精度をより高くすることができる。
【0062】
図9は、一実施形態に係るプローブ80の取り付け位置の他の例を示す。
図10は、
図9のプローブ80の取り付け位置におけるプローブ80による測定結果の一例を示す。
図9(A)は、
図7(A)と同じ条件であり、ガス供給ノズル27とプローブ80の高さは、同一である。
【0063】
図9(B)は、プローブ80をチャンバ1の底面の角から斜め方向に突出させて取り付けた場合を示す。ガス供給ノズル27は、プローブ80と同一の高さ及び同一の方向に取り付けられる。
図9(C)は、プローブ80をチャンバ1の底面から垂直方向に突出させて取り付けた場合を示す。ガス供給ノズル27は、プローブ80と同一の位置から同一の方向に取り付けられる。
【0064】
図9(A)〜(C)の取り付け位置にて、プローブ80を用いて測定した電流の波形に基づき算出した、ウェハW表面のプラズマの電子密度Neの径方向の分布を
図10に示す。横軸及び縦軸は、
図8と同じである。
【0065】
これによれば、いずれのプローブ80も同じような振舞いをしており、ウェハWの端部に行くほどプラズマの電子密度Neが下がる傾向にあるものの、プラズマの分布が測定できている。以上の結果から、プローブ80の取り付け位置及び取り付け角度は、
図9(A)〜(C)のいずれであってもよいことがわかる。
【0066】
以上から、プローブ80は、ガス供給ノズル27と同一の高さ又はガス供給ノズル27よりも下の高さに設ける場合、チャンバ1の径方向の内側に向けて水平方向、斜め方向又は垂直方向に、チャンバ1の側面又は底面から突出させることが可能である。この場合、6つのプローブ80の先端が、載置台11の表面(0mm)から垂直方向に−10mm〜80mmの範囲の高さになるように、同一の高さに設けられる。
【0067】
図9(D)は、プローブ80をガス供給ノズル27と異なる高さに、水平に設ける場合のバリエーションを示す。この場合、プローブ80は、ガス供給ノズル27よりも低い位置にプローブ80を取り付けてもよい。ただし、6つのプローブ80は、載置台11の表面(0mm)から垂直方向に−10mm〜80mmの範囲の高さであって同一の高さに設けられる。
【0068】
プローブ80'は、複数のガス供給ノズル27よりも高い位置に取り付けられる場合のプローブ80であり、その他の位置に取り付けるプローブ80と区別するために便宜的にダッシュを付けている。プローブ80'はプラズマPが概ね存在していない部分に配置することが好ましい。このため、複数のガス供給ノズル27よりも上に取り付けるプローブ80'は、複数のガス供給ノズル27よりも径方向の長さが短く形成される。プローブ80'は、高い位置に配置されるほど、プラズマPに干渉しないように径方向の長さを短くすることが好ましい。
【0069】
たとえば、センサ80''は、チャンバ1の壁面に埋設された状態で、先端がチャンバ1の壁面と同一面にて露出し、チャンバ1の壁面から突出していない。このように、本実施形態において、チャンバ1内にて生成されたプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teをモニタするセンサは、プローブ80及びプローブ80'に限らず、センサ80''であってもよい。
【0070】
[リアルタイム制御]
最後に、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100のプローブ80を用いた測定結果に応じたマイクロ波のリアルタイム制御処理の一例を、
図11のフローチャートを参照して説明する。本処理は、主に制御装置3のマイクロプロセッサ4により実行される。
【0071】
本処理が開始されると、マイクロプロセッサ4は、マイクロ波の出力及びガスの供給が開始されたかを判定する(ステップS10)。
【0072】
マイクロプロセッサ4は、マイクロ波の出力及びガスの供給が開始されたと判定すると、6つのプローブ80に電圧を印加する(ステップS12)。次に、マイクロプロセッサ4は、変数Nに「0」を設定する(ステップS14)。
【0073】
次に、マイクロプロセッサ4は、変数Nに「1」を加算する(ステップS16)。測定器81は、第Nのプローブ80に流れる電流を測定し、測定結果を示す信号を制御装置3に送信する(ステップS18)。
【0074】
マイクロプロセッサ4は、測定器81から信号を受信し、信号が示す電流の波形を取得する。マイクロプロセッサ4は、取得した電流の波形をフーリエ変換して解析し、プラズマの電子密度Ne及びプラズマの電子温度Teを算出する(ステップS20)。これにより、6つの周縁マイクロ波導入機構43aのうちの、使用したプローバ80により特定される一の周縁マイクロ波導入機構43aの下方における周方向のプラズマの分布をモニタすることができる。
【0075】
次に、マイクロプロセッサ4は、算出したプラズマの電子密度Ne及び電子温度Teに基づき、計測したプローブ80に対応する周縁マイクロ波導入機構43aからチャンバ1に導入されるマイクロ波のパワーをリアルタイムに制御してもよい。また、対応する周縁マイクロ波導入機構43aを伝播するマイクロ波の位相をリアルタイムに制御してもよい。
【0076】
次に、マイクロプロセッサ4は、変数Nが6以上かを判定する(ステップS24)。マイクロプロセッサ4は、変数Nが6未満の場合、全てのプローブ80についての測定が終わっていないと判定し、ステップS16に戻り、ステップS16〜S24の処理を繰り返す。一方、マイクロプロセッサ4は、変数Nが6以上の場合、全てのプローブ80についての測定が終わっていると判定し、マイクロ波の出力及びガスの供給が停止されたか否かを判定する(ステップS26)。マイクロプロセッサ4は、マイクロ波の出力及びガスの供給が停止されていないと判定すると、ステップS14に戻り、変数Nを初期化し(ステップS14)、以降の処理を繰り返す。一方、マイクロプロセッサ4は、マイクロ波の出力及びガスの供給が停止されたと判定すると、本処理を終了する。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置100によれば、複数のプローブ80によりプラズマの電子密度Ne及びプラズマの電子温度Teをモニタして、プラズマの分布及びプラズマの特性を把握することができる。
【0078】
これにより、プラズマの電子密度Ne及びプラズマの電子温度Teに基づき、導入されるマイクロ波のパワー及びマイクロ波の位相の制御の少なくともいずれかをリアルタイムに制御することができる。この結果、プラズマの均一性を高めることができる。
【0079】
なお、プラズマの電子密度Ne又はプラズマの電子温度Teのいずれかに基づき、導入されるマイクロ波のパワー及びマイクロ波の位相の制御の少なくともいずれかをリアルタイムに制御してもよい。これによっても、プラズマの均一性を高めることができる。
【0080】
以上、プラズマ処理装置及び制御方法を上記実施形態により説明したが、本発明にかかるプラズマ処理装置及び制御方法は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0081】
例えば、本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、膜厚のモニタリングを行うことができる。具体的には、プラズマ処理中にプローブに膜が付くことで、測定器が測定する、各プローブに流れる電流の波形が変わる。よって、本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置の制御装置は、各プローブから取得する信号の強度の変化を解析することで、プローブに付着した膜厚を推定することができる。これにより、チャンバ1の内部の状態を把握することができる。
【0082】
また、本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、EEDF(electric energy distribution function)を用いて、電子の運動エネルギーのエネルギー分布を見ることができる。
【0083】
本明細書では、被処理体の一例として半導体ウェハWを挙げて説明した。しかし、被処理体は、これに限らず、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であっても良い。