特許第6899791号(P6899791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6899791ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899791
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/08 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   C08B11/08
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-67787(P2018-67787)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-172675(P2018-172675A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-71442(P2017-71442)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】北村 彰
(72)【発明者】
【氏名】成田 光男
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−512421(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/093296(WO,A1)
【文献】 特開2003−096102(JP,A)
【文献】 特開2004−059922(JP,A)
【文献】 特表2014−503004(JP,A)
【文献】 特表2009−522394(JP,A)
【文献】 特公平07−051601(JP,B2)
【文献】 特公昭59−025802(JP,B1)
【文献】 特表2013−539815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 11/08
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物溶液を混合してアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースに、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を反応させて第一の反応混合物を得る工程と、
前記第一の反応混合物に、更に前記アルキル化剤及び前記ヒドロキシアルキル化剤を配合することなく、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加して第二の反応混合物を得る工程であって、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加が、開始から添加終了まで、反応機内温を一定速度で昇温させながら行われる工程と、
前記第二の反応混合物を精製してヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と
を少なくとも含んでなるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法であって、
前記第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、前記セルロースパルプ中のセルロースのモル比(第一のアルカリ金属水酸化物/セルロース)が3.7〜4.7であり、且つ、
前記第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物との合計質量に対する前記第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が、75〜93%であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項2】
前記反応機内温の一定速度での昇温が、昇温速度10.0〜40℃/hrで行われる請求項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項3】
反応機内の前記第一の反応混合物に、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を開始する時の前記反応機内温が、65〜90℃である請求項1又は請求項2に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項4】
第一の反応混合物に、セルロースパルプ中のセルロース1モルにつき単位時間に添加する第二のアルカリ金属水酸化物のモル量を前記第二のアルカリ金属水酸化物の配合速度とした場合の前記第二のアルカリ金属水酸化物の添加速度が、2.8〜7.5[mol/mol・hr]である請求項1〜のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項5】
前記セルロースパルプが、固有粘度600〜2,500ml/gを有する請求項1〜のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキル化剤の前記セルロースパルプ中のセルロースに対するモル比が0.5〜2.0である請求項1〜のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ゲル化温度を低下させずに、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテルは、加熱時にゲル化する熱可逆ゲル化性を利用して、加熱した食品の保形性を高めるため、加工食品に利用される。
しかし、メチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースよりも熱ゲル強度は優れているが、熱ゲル化温度(2質量%水溶液)が50〜60℃と低いため、食する際の食品の品温(50〜65℃)においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える恐れがある。また、メチルセルロースは、その溶液調製において、一度15℃以下に冷却しなければ完全に溶解することができないため、調整に手間がかかる。
【0003】
一方、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、熱ゲル化温度が60〜80℃とメチルセルロースよりも相対的に高く、固い食感を与える恐れが低い。また、その溶液調製においても25℃以上で溶解可能であるため、冷却操作を必要とせず、調製に手間がかからない。このような理由から、加熱時の食品の保形性を高めて、かつ固い食感を与えないようにするためには、熱ゲル化温度の高いヒドロキシプロピルメチルセルロースが好まれる。
しかし、食品に添加されるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メチルセルロースに比べて熱ゲル強度が劣っているため、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースが求められていた。
【0004】
高い熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る方法として、アルカリ金属水酸化物溶液によるセルロースパルプのアルカリ化工程、エーテル化反応工程を複数の段階に分ける方法に関して、様々な方法が提案されている。
例えば一段階目のアルカリ化後に、メチル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を添加しエーテル化反応させ、その後に二段階目のアルカリ化剤をゆっくり添加してエーテル化反応させ、セルロースエーテルを得る方法がある(特許文献1)。
一方、アルキル化剤を含む懸濁溶媒の存在下で一段階目のアルカリ化を行い、その後にヒドロキシアルキル化剤の添加を行い、十分に反応させた後で、二段階目のアルカリ金属水酸化物溶液を添加し、十分混合させることにより、アルキルヒドロキシアルキルセルロースを得る方法がある(特許文献2)。
また、一段階目のアルカリ化後にハロゲン化アルキル及びアルキレンオキシドを添加してエーテル化を行い、十分に反応を進行させ、その後に二段階目のアルカリ金属水酸化物溶液を添加し、引き続いて再度ハロゲン化アルキルを添加してエーテル化反応させることによって、高いエーテル化剤の反応効率でヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る方法がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015−512421号公報
【特許文献2】特開2003−96102号公報
【特許文献3】特表2009−522394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で開示される製法で得られるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、高い熱ゲル強度を有しているが、熱ゲル化温度は約60℃と低くなってしまい、メチルセルロースと同程度の熱ゲル化温度となり、食する際の食品の品温(50〜65℃)においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える恐れがある。
一方、特許文献2のようなアルカリ化工程を分割する方法において、メトキシ基の置換度(DS)が1.8を超えるヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造する場合、熱ゲル強度は向上するが、特許文献1と同様に熱ゲル化温度は低下してしまう。
また、特許文献3で開示されるようなアルカリ化工程及びエーテル化工程を各々2段階に分割する方法で得られるヒドロキシプロピルメチルセルロースに関しても、特許文献1と同様に熱ゲル化温度が低下してしまうことは避けられない。
このように、特許文献1〜3で得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースは、一旦熱ゲル化した後に自然冷却した場合に、再び溶液状に戻るまでに時間がかるため、食する際にゲル化したままとなり、固すぎて食感が悪くなる。
これらのことから、熱ゲル化温度の低下を抑制しつつ、高い熱ゲル強度を得るヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アルカリ金属水酸化物を2段階に分けて配合するときの1段階目のアルカリ金属水酸化物配合量及び比率を調整し、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を1段階で配合し反応することにより、熱ゲル化温度の低下を抑制しつつ、高い熱ゲル強度を得るヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られることを見出し本発明を成すに至った。
本発明の一つの態様によれば、セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物溶液を混合してアルカリセルロースを得る工程と、前記アルカリセルロースに、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を反応させて第一の反応混合物を得る工程と、前記第一の反応混合物に、更に前記アルキル化剤及び前記ヒドロキシアルキル化剤を配合することなく、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加して第二の反応混合物を得る工程であって、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加が、開始から添加終了まで、反応機内温を一定速度で昇温させながら行われる工程と、前記第二の反応混合物を精製してヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程とを少なくとも含んでなるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法であって、前記第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、前記セルロースパルプ中のセルロースのモル比(第一のアルカリ金属水酸化物/セルロース)が3.7〜4.7であり、且つ、前記第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物との合計質量に対する前記第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が、75〜93%であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法が提供できる。
【発明の効果】
【0008】
熱ゲル化温度の低下を抑制しつつ、高い熱ゲル強度を得るヒドロキシアルキルアルキルセルロースを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
セルロースパルプは、木材パルプ、リンターパルプ等、通常のセルロースエーテルの材料となるものである。また、セルロースパルプの重合度の指標である固有粘度は、目標とするセルロースエーテルの水溶液粘度に応じて適宜選択することができるが、25℃において、好ましくは600〜2,500ml/gであり、より好ましくは600〜1600ml/gである。セルロースパルプの固有粘度は、JIS P8215のA法に準拠の方法で測定することができる。
セルロースパルプ中には、セルロース及び水分が含まれ、本明細書において「セルロースパルプ中のセルロース」の量は、水分を除いたセルロースパルプ中の固形分の量を意味し、JIS P8215 A法準拠の方法で測定することができる。本明細書中、特に断らない限り、「セルロースパルプ中のセルロース」は原料であるセルロースパルプ中のセルロースを意味する。また、n個の無水グルコース単位(C10を有するセルロースをnモルのセルロースとする。
【0010】
セルロースパルプは、粉砕機で粉砕した粉末セルロースパルプであることが好ましい。パルプ粉砕機は、セルロースパルプを粉末状とすることが可能であれば、特に制限される
ことはないが、ナイフミル、カッティングミル、ハンマーミル、ボールミル及び竪型ローラーミル等の粉砕機を利用することができる。粉末セルロースパルプの重量平均粒子径D50は、好ましくは30〜400μmである。粉末セルロースパルプの重量平均粒子径D50は、ロータップ式篩しんとう機に、JIS Z8801に準拠する目開きの異なる複数の試験用篩を設置し、トップの篩の上に粉末パルプを入れ、振動もしくはタッピングさせることで篩い分けを行った後、各篩上及び篩下質量を測定し質量分布を求め、積算値50%での平均粒子径として測定して求める。
【0011】
セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物溶液を混合して、アルカリセルロースを得る工程について説明する。
アルカリ金属水酸化物溶液は、第一のアルカリ金属水酸化物溶液及び第二のアルカリ金属水酸化物溶液のように二段階に分割して配合する。ここで、アルカリ金属水酸化物溶液に特に制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の溶液が挙げられるが、経済的な観点から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物は、例えばいずれも水酸化ナトリウムを用いるように同一種類とすることが好ましいが、例えば前者として水酸化ナトリウムを用い、後者として水酸化カリウムを用いるように異なる種類の組合せとすることも可能である。
アルカリ金属水酸化物溶液の配合方法は、好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液をセルロースパルプに添加するものであり、例えば、アルカリ金属水酸化物溶液を直接滴下する方法、アルカリ金属水酸化物溶液をスプレー状に噴霧する方法があるが、得られたアルカリセルロースの均一性が良い点で、スプレー状に噴霧する方法が好ましい。
アルカリ金属水酸化物溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、エーテル化反応効率及び取扱いの観点から、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。第一のアルカリ金属水酸化物と第二のアルカリ金属水酸化物は、同一濃度であることが好ましいが、異なる濃度とすることも可能である。
【0012】
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を混合する工程は、内部撹拌構造を有する反応機内で行うことが好ましい。反応機は、内部の温度を測定できるような測定器具が装着されていることが好ましい。
また、第一のアルカリ金属水酸化物溶液とセルロースパルプを混合する以前に、反応機内の酸素を真空ポンプ等で除去し、不活性ガス、好ましくは窒素で置換することで、アルカリ金属水酸化物と酸素が存在下で生じる解重合を抑制することが好ましい。
【0013】
第一のアルカリ金属水酸化物溶液の使用量は、好ましくは第一のアルカリ金属水酸化物とセルロープパルプ中のセルロースのモル比(第一のアルカリ金属水酸化物/セルロース)として3.7〜4.7であり、好ましくは3.7〜4.6であり、より好ましくは3.7〜4.5である。第一のアルカリ金属水酸化物とセルロースのモル比が3,7未満であると、熱ゲル化温度が過度に低下して、食する際の食品の品温においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える。一方、4.7を超えると、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られない。
【0014】
第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合は、75〜93%であり、好ましくは75〜91%であり、より好ましくは75〜90%である。第一と第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が75%未満であると、熱ゲル化温度が低下して、食する際の食品の品温においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える一方、第一と第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が93%を超えると、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られない。
【0015】
セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物の配合時の反応機の内温、好ましくはセルロースパルプに第一のアルカリ金属水酸化物溶液を添加時の反応機の内温は、均一なアルカリセルロースを得る点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは30〜70℃である。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物の添加速度は、セルロースパルプ中のセルロース1モルにつき単位時間に添加される第一のアルカリ金属水酸化物のモル量で示され、第一のアルカリ金属水酸化物溶液が系内で均一に混合されるようにする観点から、好ましくは1.5〜48.0[mol/mol・hr]であり、より好ましくは4.8〜30.0[mol/mol・hr]、更に好ましくは8〜20.0[mol/mol・hr]である。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液添加後、更に5〜30分間撹拌混合を続けて、アルカリセルロースをより均一な状態とすることも可能である。
【0016】
反応機内における局所的な発熱を抑制の目的で、第一のアルカリ金属水酸化物溶液の添加前、添加中、もしくは添加後に、アルキル化反応に供さない有機溶媒、例えばジメチルエーテルを系内に添加することができる。有機溶媒の添加量は、セルロースパルプ中のセルロースに対して、好ましくは0.1〜0.8(質量比)である。
【0017】
その後、得られたアルカリセルロースに、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を反応させて、第一の反応混合物を得る。
アルキル化剤としては、例えば塩化メチル、硫酸ジメチル、ヨウ化メチル等のメチル化剤、塩化エチル、硫酸ジエチル、ヨウ化エチル等のエチル化剤が挙げられ、得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースの熱ゲル強度及び経済的な観点から、塩化メチルが好ましい。
ヒドロキシアルキル化剤としては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンが挙げられ、得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースの熱ゲル強度及び経済的な観点から、酸化プロピレンが好ましい。
【0018】
アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を反応させるときの反応機内温は、反応制御の観点から、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。
アルキル化剤の配合モル量は、第一及び第二のアルカリ金属水酸化物の合計モル量に対するアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/合計アルカリ金属水酸化物)として、好ましくは0.8〜1.5であり、より好ましくは、1.0〜1.3である。当該モル比(アルキル化剤/合計アルカリ金属水酸化物)が0.8未満であると、アルキル基が必要量置換されない場合がある。一方、1.5を超えて過剰にアルキル化剤を配合することは経済的に不利となる場合がある。
【0019】
ヒドロキシアルキル化剤の配合モル量は、セルロースパルプ中のセルロースに対するヒドロキシアルキル化剤のモル比(ヒドロキシアルキル化剤/セルロース)として、好ましくは0.5〜2.0であり、より好ましくは、0.5〜1.7である。当該モル比(ヒドロキシアルキル化剤/セルロース)が0.5未満であると、熱ゲル化温度が過度に低下する場合がある。一方、2.0を超えて過剰にアルキル化剤を配合することは熱ゲル強度の低下、及び経済的に不利となる場合がある。
【0020】
アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の配合方法は、好ましくはアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤をアルカリセルロースに添加する。アルキル化剤とヒドロキシアルキル化剤の添加順序は、アルキル化剤の添加開始時期は、ヒドロキシアルキル化剤の添加開始以前、添加開始中、添加開始後とすることが可能だが、生産性の観点からヒドロキシアルキル化剤の添加開始以前、添加開始中にアルキル化剤を添加開始することが好ましい。
アルキル化剤の添加時間は、反応制御及び生産性の観点から、好ましくは30〜120分間、より好ましくは40〜90分間である。
また、ヒドロキシアルキル化剤の添加時間は、反応制御及び生産性の観点から、好ましくは5〜30分間、より好ましくは10〜30分間である。
【0021】
得られた第一の反応混合物は、そのまま第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加の対象としてもよいが、前もって必要に応じて通常の粗ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの精製方法と同様に精製してヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしてもよい。精製方法としては、例えば、第一の反応混合物と60〜100℃の水を撹拌容器で混合し、撹拌容器中で反応の際に副反応物として発生した塩を溶解し、撹拌容器から出る懸濁液を分離操作にかけ、塩を除去する方法が挙げられる。
【0022】
第一の反応混合物中におけるヒドロキシアルキルアルキルセルロースのアルキル基の置換度(DS)は、所望の熱ゲル強度及び熱ゲル化温度を得る観点から、好ましくは0.75〜1.68であり、より好ましくは0.81〜1.68であり、更に好ましくは、0.99〜1.37である。また、ヒドロキシアルキル基(MS)は、所望の熱ゲル強度及び熱ゲル化温度を得る観点から、好ましくは0.03〜0.28であり、より好ましくは0.05〜0.25である。ここで、DS(Degree of substitution)は、セルロースのグルコース環単位当たり、その水素原子がアルコキシ基で置換された水酸基の平均個数を示し、MS(Molar substitution)は、セルロースのグルコース環単位当たり、その水素原子がヒドロキシアルコキシ基で置換された水酸基の平均モル数を示す。
【0023】
続いて、アルキル化及びヒドロキシアルキル化した第一の反応混合物に、更にアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を配合することなく、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加して撹拌混合により第二の反応混合物を得る。
第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加するとき、すなわち第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を開始する時期は、好ましくは添加するアルキル化剤の全量の80質量%以上、かつ添加するヒドロキシアルキル化剤の添加が完了した後、より好ましくはアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の添加が完了した後である。第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を開始する時期が、添加するアルキル化剤の全量の80質量%以上が完了する前である場合、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られない場合がある。
ここで、前記アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の添加が完了した後に、第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加する場合には、添加したアルキル化剤の反応率が好ましくは25〜75質量%、より好ましくは35〜65質量%であって、添加したヒドロキシアルキル化剤の反応率が好ましくは40〜95質量%、より好ましくは45〜95質量%の時点において、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加する。
反応率は、反応中の第一の反応混合物を全量回収し、ガスクロマトグラフィ―(GC)分析に基づき、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の残存質量を測定し、下記式により求めることができる。
反応率(%)={1−(残存質量/仕込み量)}×100
第一のアルカリ金属水酸化物とセルロースのモル比、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の添加量並びに反応中の内温を変化させ、上記式に基づいて一定時間毎の反応率を求めることにより、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の化学反応速度式を算出し、得られた化学反応速度式によるシミュレーション行い、所望の反応率になるように第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加の時期を決定する。
【0024】
第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の使用量は、セルロースパルプ中のセルロースに対するモル比(第二のアルカリ金属水酸化物/セルロース)として、好ましくは0.15〜1.85であり、より好ましくは0.20〜1.6である。当該モル比(アルカリ金属水酸化物/セルロース)が0.15未満であると、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースは製造できない場合があり、1.85を超えると、熱ゲル化温度が過度に低下して、食する際の食品の品温においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える場合がある。
【0025】
反応機内の第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を開始するときの添加開始時の反応機内温は、好ましくは65〜90℃、より好ましくは70〜85℃、更に好ましくは75〜85℃である。第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加開始時の反応機の内温が65℃未満であると、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られない場合がある。また、添加開始時の反応機の内温が90℃を超えると、アルカリ金属水酸化物によるマーセル化反応による発熱、アルキル化及びヒドロキシアルキル化による発熱反応を制御できなくなる場合がある。更に、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る観点から、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加が完了するときの反応機内温は、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは85〜95℃である。なお、好ましくは、添加開始時を添加完了時よりも低い温度とし、その温度差は好ましくは3〜20℃、より好ましくは4〜15℃である。
【0026】
第一の反応混合物に、セルロースパルプ中のセルロース1モルにつき単位時間に添加する第二のアルカリ金属水酸化物のモル量を前記第二のアルカリ金属水酸化物の配合速度とした場合の第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の添加速度は、第一の反応混合物に、セルロースパルプ中のセルロース1モルにつき単位時間に添加する第二のアルカリ金属水酸化物のモル量を示し、好ましくは2.8〜7.5[mol/mol・hr]、より好ましくは2.8〜5.0[mol/mol・hr] 、更に好ましくは2.8〜4.0[mol/mol・hr]である。第二のアルカリ金属水酸化物の添加速度が2.8[mol/mol・hr]未満であると、第二のアルカリ金属水酸化物の添加時間が長くなることから、反応時間の延長につながる場合があり、更に、熱ゲル化温度が過度に低下して、食する際の食品の品温においてはゲル化したままとなり、固い食感を与える場合がある。一方、第二のアルカリ金属水酸化物の添加速度が7.5[mol/mol・hr]を超えても、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られない場合がある。
【0027】
第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加する工程において、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加開始から添加完了するまでの間、反応機内温を一定速度で昇温しながら配合することが好ましい。この場合の昇温速度は、好ましくは10.0〜40℃/hr、より好ましくは、15.0〜40℃/hr、更に好ましくは、20.0〜40℃/hrである。昇温速度が10.0℃/hr未満であると、熱ゲル化温度が低下して、食する際の食品の品温においてゲル化したままとなり、固い食感を与える場合がある。一方、昇温速度が40℃/hrを超えると、アルカリ金属水酸化物によるマーセル化反応による発熱、エーテル化による発熱を制御できなくなる場合がある。
【0028】
一般に、セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液とを混合して得られるアルカリセルロースは、アルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤とエーテル化反応することによりヒドロキシアルキルアルキルセルロースとなる。
この場合、反応系内のアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤は、このエーテル化反応に伴い徐々に消費されていく。反応機内温が一定である場合、反応系内のアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の消費に伴って、エーテル化反応の反応速度は徐々に低下する。そこで、反応機内温を一定速度で昇温しながら第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を行うことにより、反応系内のアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤の消費の結果生じるエーテル化反応の反応速度の低下を抑えて、相対的に第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加に伴うエーテル化反応速度を高くする。これにより、熱ゲル化温度の低下を抑制しつつ、高い熱ゲル強度のヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得ることができる。
【0029】
第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加した後、エーテル化反応を完了させるために、撹拌混合を続けることが好ましい。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加後に行う撹拌混合時の反応機内温は、反応制御性の点から、好ましくは80〜120℃、より好ましくは85〜100℃である。反応を終了させるためには、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加後に加熱することが好ましい。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加後の混合時間は、生産性の点から、好ましくは10〜60分間、より好ましくは20〜40分間である。
【0030】
得られた第二の反応混合物は、通常の粗ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの精製方法と同様に精製してヒドロキシアルキルアルキルセルロースとすることができる。精製方法は、例えば、第二の反応混合物と60〜100℃の水を撹拌容器で混合し、撹拌容器中で反応の際に副反応物として発生した塩を溶解し、次いで所望の精製されたヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得るため、撹拌容器から出る懸濁液を分離操作にかけ、塩を除去する方法で行われる。分離操作には、例えば加圧回転式フィルターを使用することができる。分離操作後は、乾燥機を用いて乾燥を行う。乾燥機には、例えば、伝導伝熱式溝型撹拌乾燥機を使用することができる。
得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、必要であれば、例えばボールミル、ローラーミル、衝撃粉砕機のような通常の粉砕装置を用いて粉砕することができ、続いて篩で分級することで、粒度を調整することができる。
【0031】
このようにして得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースが挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのアルキル基の置換度(DS)は、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る観点及び生産性の観点から、好ましくは1.70〜2.1であり、より好ましくは1.75〜2.03である。
また、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのヒドロキシアルキル基のモル置換度(MS)は、所望の熱ゲル強度及び熱ゲル化温度を得る観点から、好ましくは0.08〜0.35であり、より好ましくは0.10〜0.30である。
一般的に、DSは、置換度を表し、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシ基又はエトキシ基で置換された水酸基の平均個数であり、MSは、モル置換度を表し、セルロースのグルコース環単位当たり、ヒドロキシエトキシ基又はヒドロキシプロポキシ基で置換された水酸基の平均モル数を示す。
また、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのアルコキシ基の置換度及びヒドロキシアルコキシ基のモル置換度は、J.G.Gobler,E.P.Samscl,and G.H.Beaber,Talanta,9,474(1962)に記載された、Zeisel−GCによる手法によって測定することができる。
【0032】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は、高い熱ゲル強度のヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る観点から、好ましくは400〜100,000mPa・s、より好ましくは1,000〜50,000mPa・sであり、更に好ましくは1,000〜30,000mPa・sである。
B型粘度計による粘度は、第十七改正日本薬局方のヒドロキシプロピルメチルセルロースに関する分析方法によって測定することができる。
【0033】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの熱ゲル強度は、80℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)で表す。一般に貯蔵弾性率は、溶液の弾性成分、つまり物体に力を加えているときに生じた変形が、力を除くと元に戻る性質の成分を表し、熱ゲル強度の指標となる。
80℃におけるヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)は、食品に添加した際に高い保形成が得られる観点及び食する際に過度に固い食感を与えない観点から、好ましくは10〜1,000Pa、より好ましくは10〜300Pa、更に好ましくは10〜100Paである
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)は、例えばAnton Paar社のレオメータであるMCR500、MCR501又はMCR502を用いて測定できる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の調製は、以下のようにして行う。アルキルセルロースの換算した乾燥物6.00gに対応する量を広口瓶(直径65mm及び高さ120mmの体積350mlの容器)に正確に量り、熱湯(98℃)を加えて300.0gとし、容器に蓋をした後、かき混ぜ機を用いて均一な分散液となるまで毎分350〜450回転で20分間かき混ぜる。その後、5℃以下の水浴中で40分間かき混ぜながら溶解し、試料溶液とする。
レオメータの試料測定部を、予め30℃に温調しておき、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液をCC27測定カップ(直径30mm及び高さ80mmの円筒状容器)の標線(25ml)まで注ぎ入れ、周波数を1Hzとし、振幅0.5%のひずみをかけ測定を開始する。試料測定部は毎分2℃ずつ80℃まで昇温させる。データは毎分2点収集する。
この測定で得られる貯蔵弾性率G'は測定系の温度が上昇するに従い値が変化し、測定系の温度が80℃となったときの貯蔵弾性率を本発明の貯蔵弾性率G'(80℃)とした。
【0034】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの熱ゲル化温度は、貯蔵弾性率G'と損失弾性率G’’の関係を用いて評価する。一般に損失弾性率とは溶液の粘性成分、つまり流体の運動にともなって、流体が変形され抵抗を生じる性質の成分を表し、熱ゲル化温度の指標となる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の熱ゲル化温度は、食する際に過度に固い食感を与えない観点から、好ましくは65〜80℃、より好ましくは65〜75℃である。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の熱ゲル化温度は、例えばAnton Paar社のレオメータであるMCR500、MCR501又はMCR502を用いて測定できる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液の調製は、上記貯蔵弾性率G'(80℃)の試料溶液と同様に調製する。
貯蔵弾性率G'(30→80℃)及び損失弾性率G’’の測定は、上記貯蔵弾性率G'(80℃)の測定と同様の手法で、レオメータの試料測定部を予め30℃に温調しておき、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース2.0質量%水溶液をCC27測定カップ(直径30mm及び高さ80mmの円筒状容器)の標線(25ml)まで注ぎ入れ、周波数を1Hzとし、振幅0.5%のひずみをかけ測定を開始する。試料測定部は、30℃から毎分2℃ずつ80℃まで昇温させる。データは毎分2点収集する。
この測定で得られる貯蔵弾性率G'(30→80℃)及び損失弾性率G’’は、測定系の温度
が上昇するに従い値が変化し、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G'が等しい値、つまりG’’/G'(30→80℃)=1となるときの温度を熱ゲル化温度とした。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
固有粘度が790ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕し、粉末セルロースパルプを得た。この粉末セルロースパルプのうち、セルロース分で6.0kgに相当する量のセルロースパルプを、ジャケット付き内部撹拌式耐圧反応機に仕込み、真空窒素置換を行い、十分に反応機内の酸素を除去した。
次に、反応機内温を60℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.70となるように、添加速度14.8[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、ジメチルエーテルを2.4kg添加し、反応機内温が60℃を保持するように温調した。ジメチルエーテル添加後、反応機内温を60℃から80℃に昇温しながら、第一及び第二の水酸化ナトリウムの合計量に対する塩化メチル量のモル比(塩化メチル/合計水酸化ナトリウム)が1.1となるように60分間かけて塩化メチルを添加し、塩化メチルの添加開始と同時に、酸化プロピレン2.93kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.36)を10分間かけて添加し、第一の反応混合物とした。塩化メチルの添加完了に続いて、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.20となるように、添加速度2.88[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温は80.0℃であり、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加完了までの間、反応機内温を21.60℃/hrで昇温させた。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は89℃であった。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了後、撹拌を30分間継続して行ってエーテル化反応を完了させた。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は75.5%であった。
得られた第二の反応混合物を95℃の熱水を添加してスラリー化した後、ロータリープレッシャーフィルターを用いて洗浄し、続いて、送風乾燥機で乾燥し、更に衝撃粉砕機あるビクトリーミルで粉砕し、篩で分級を行った後、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.90、MSは0.259であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,900mPa・sであった。Anton Paar社のレオメータであるMCR502(他の実施例及び比較例も同様)を用いて、80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、24.0Paであり、熱ゲル化温度は66.5℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が4.00となるように、添加速度16.0[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を3.10kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.44)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を79.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を27.00℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.00となるように、添加速度3.00[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は88℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は80.0%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.89、MSは0.259であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,850mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、22.0Paであり、熱ゲル化温度は66.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が4.50となるように、添加速度18.0[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を3.08kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.43)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81.5℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を33.00℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.55となるように、添加速度3.30[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は87℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は89.1%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.89、MSは0.265であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,125mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、14.0Paであり、熱ゲル化温度は67.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0038】
実施例4
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が4.50となるように、添加速度18.0[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を3.22kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.50)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を79.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を24.00℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.20となるように、添加速度3.60[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は87℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は78.9%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.98、MSは0.254であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,900mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、35.0Paであり、熱ゲル化温度は66.5℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0039】
実施例5
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.70となるように、添加速度14.8[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を1.90kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:0.88)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を82.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を30.00℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.50となるように、添加速度3.00[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は87℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は88.1%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.84、MSは0.230であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,800mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、17.0Paであり、熱ゲル化温度は67.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0040】
実施例6
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.70となるように、添加速度14.8[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を1.59kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:0.74)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を20.00℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.75となるように、添加速度3.00[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は86℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は83.1%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.86、MSは0.170であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,350mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、45.0Paであり、熱ゲル化温度は66.5℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0041】
実施例7
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.74となるように、添加速度14.96[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を1.12kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:0.52)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を38.18℃/hrで昇温させ、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.66となるように、添加速度3.60[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は88℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は85.0%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.84、MSは0.125であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,300mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、73.7Paであり、熱ゲル化温度は66.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温60℃となるように温調しながら内部を撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液は分割せずに一括で、セルロースに対する水酸化ナトリウムのモル比(水酸化ナトリウム/セルロース)が5.00となるように、添加速度20.0[mol/mol・hr]で49質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してアルカリセルロースとした。
続いて、ジメチルエーテルを2.4kg添加し、反応機内温が60℃を保持するように温調した。その後、反応機内温を60から80℃に昇温しながら、水酸化ナトリウムに対する塩化メチルのモル比(塩化メチル/水酸化ナトリウム)が1.1となるように塩化メチルを60分間かけて添加し、塩化メチルの添加開始と同時に、酸化プロピレンを2.99kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.39)を10分間かけて添加し、第一の反応混合物とした。塩化メチルの添加完了に続いて、反応機内温を80℃から95℃まで昇温しながら70分間エーテル化反応させ粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースとした。
その後、得られた粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.86、MSは0.250であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,700mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、1.5Paであり、熱ゲル化温度は67.5℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0043】
比較例2
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.50となるように、添加速度14.0 [mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を3.02kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.40)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81.0℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を81.0℃に保ちながら、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.50となるように、添加速度3.60[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は89℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は70.0%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.93、MSは0.260であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,900mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、40.0Paであり、熱ゲル化温度は61.5℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0044】
比較例3
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.00となるように、添加速度12.0 [mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を1.72kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:0.80)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た。
塩化メチルの添加完了後、反応機の内温を80℃に保ちながら、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.00となるように、添加速度1.00[mol/mol・hr]で49質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第二の水酸化ナトリウム水溶液添加時の反応機内温は80℃であった。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は、75.0%であった。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.86、MSは0.200であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は6,050mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、30.0Paであり、熱ゲル化温度は61.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0045】
比較例4
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.90となるように、添加速度3.6 [mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、第一のアルカリセルロースとした。
続いて、酸化プロピレンの添加量を2.43kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.13)とする以外は、実施例1と同様の方法を用いて第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81.0℃に保ちながら、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.40となるように、添加速度6.80[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、実施例1と同様に行った。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は89℃であった。また、第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は20.9%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.80、MSは0.260であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,700mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、750.0Paであり、熱ゲル化温度は44.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0046】
比較例5
実施例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を30℃となるように温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.80となるように、添加速度15.2[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、添加終了後、更に10分間撹拌を続けた。
続いて、ジメチルエーテルを4.8kg添加し、反応機内温は40℃を保持するように温調した。塩化メチルは、水酸化ナトリウム溶液と同様に二段階に分割して、酸化プロピレンは一段階で添加した。第一の塩化メチルは、ジメチルエーテル添加後、第一の水酸化ナトリウムに対する第一の塩化メチルとのモル比(第一の塩化メチル/第一の水酸化ナトリウム)が1.1となるように20分間かけて添加し、第一の塩化メチル添加開始と同時に酸化プロピレン1.92kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:0.89)を5分間かけて添加し、第一の反応混合物とした。第一の塩化メチルの添加完了後、反応機内温を40℃から90℃まで40分間かけて温調し、90℃に達した後、更に60分間撹拌混合を継続した。
続いて、反応機の内温を15分間かけて50℃まで冷却させる。その後、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を50.0℃に保ちながら、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.90となるように、添加速度5.70[mol/mol・hr]で49質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は、66.7%であり、第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了時の反応機内温は55℃であった。
第二の水酸化ナトリウムの添加に続いて、第二の塩化メチルを、第二の水酸化ナトリウムに対する第二の塩化メチルのモル比(第二の塩化メチル/第二の水酸化ナトリウム)が1.1となるように20分間かけて添加した。第二の塩化メチル添加後、反応機の内温を40分間かけて90℃に昇温させ、更に反応機の内温を90℃に保ちながら30分間撹拌混合し、粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースとした。
その後、得られた粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを実施例1と同様に精製、粉砕してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.97、MSは0.250であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,900mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、18.0Paであり、熱ゲル化温度は62.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0047】
比較例6
固有粘度が790ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕し、粉末セルロースパルプを得た。この粉末セルロースパルプのうち、セルロース分で6.0kgに相当する量のセルロースパルプを、ジャケット付き内部撹拌式耐圧反応機に仕込み、真空窒素置換を行い、十分に反応機内の酸素を除去した。
次に、反応機内温を40℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第一の水酸化ナトリウムのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.00となるように、添加速度8.0[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その後20分間撹拌混合し。第一のアルカリセルロースとした。
続いて、ジメチルエーテルを4.8kg添加し、反応機内温が40℃を保持するように温調した。塩化メチルは、水酸化ナトリウム溶液と同様に2段階に分割して、酸化プロピレンは1段階で添加した。第一の塩化メチルは、ジメチルエーテル添加後、第一の水酸化ナトリウムに対する第一の塩化メチルのモル比(塩化メチル/第一の水酸化ナトリウム)が1.25となるように5分間かけて塩化メチルを添加し、塩化メチルの添加開始と同時に、酸化プロピレン2.93kg(セルロースに対する酸化プロピレンのモル比:1.36)を5分間かけて添加し、第一の反応混合物とした。塩化メチル及び酸化プロピレン添加完了後、反応機内温を60分間かけて40℃から80℃に昇温した後、80℃を30分間保持する。
引き続き内温を80℃に保持したまま、第二の塩化メチルを、第二の塩化メチルに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の塩化メチル/第二の水酸化ナトリウム)が1.22となるように10分間かけて塩化メチルを添加した。塩化メチルの添加完了に続いて、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、セルロースに対する第二の水酸化ナトリウムのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.30となるように、添加速度1.53[mol/mol・hr]で内温80℃を保持したまま第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温は80.0℃であった。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了後、反応機内温を80℃に保持したまま撹拌を120分間継続して行ってエーテル化反応を完了させた。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は46.5%であった。
得られた第二の反応混合物を95℃の熱水を添加してスラリー化した後、ロータリープレッシャーフィルターを用いて洗浄し、続いて、送風乾燥機で乾燥し、更に衝撃粉砕機あるビクトリーミルで粉砕し、篩で分級を行った後、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのDSは1.84、MSは0.270であり、20℃における2質量%水溶液のB型粘度計による粘度は6,150mPa・sであった。80℃におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(80℃)を測定したところ、550.0Paであり、熱ゲル化温度は56.0℃であった。得られた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】