(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、レターデーションとは、別に断らない限り、面内レターデーションを表す。また、あるフィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、前記フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記フィルムの面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。dは、前記フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0013】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0014】
以下の説明において、「1/4波長板」及び「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
以下の説明において、「長尺形状を有する」フィルムとは、幅に対して、通常5倍以上、好ましくは10倍以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬されうる程度の長さを有するフィルムをいう。
【0016】
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0017】
[1.光学積層体]
[1.1.光学積層体の概要]
本発明の光学積層体は、基材層及び第一表面層を備える複層構造のフィルムである。また、本発明の光学積層体は、基材層の第一表面層とは反対側に、第二表面層を備えることが好ましい。したがって、本発明の光学積層体は、第一表面層、基材層及び第二表面層をこの順に備えることが好ましい。
【0018】
[1.2.基材層]
基材層は、非晶性の脂環式構造を含有する重合体を含む。したがって、基材層は、通常、非晶性の脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂からなる樹脂層である。以下、非晶性の脂環式構造を含有する重合体を、適宜、「非晶性脂環構造重合体」ということがある。また、非晶性脂環構造重合体を含む樹脂を、適宜、「非晶性樹脂」ということがある。前記の非晶性樹脂は、通常、熱可塑性樹脂である。本発明に使用する非晶性脂環構造重合体は、非晶性の、融点を有さない重合体〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができない〕である。
【0019】
非晶性脂環構造重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する非晶性の重合体である。非晶性脂環構造重合体は、通常、耐湿熱性に優れる。そのため、非晶性脂環構造重合体を用いることにより、光学積層体の耐湿熱性を良好にできる。
【0020】
非晶性脂環構造重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0021】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0022】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、非晶性樹脂の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0023】
非晶性脂環構造重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。非晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。非晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、非晶性脂環構造重合体を含む非晶性樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0024】
非晶性脂環構造重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0025】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0026】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0027】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0028】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0030】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0032】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0033】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む基材層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0034】
非晶性脂環構造重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、非晶性脂環構造重合体を含む基材層の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
【0035】
非晶性脂環構造重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、非晶性脂環構造重合体を含む基材層の安定性を高めることができる。
【0036】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いた(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量として測定しうる。
【0037】
非晶性脂環構造重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。非晶性脂環構造重合体のガラス転移温度を、前記範囲の下限値以上にすることにより高温環境下における光学積層体の耐久性を高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることにより光学積層体の延伸処理を容易に行える。
【0038】
非晶性脂環構造重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、非晶性脂環構造重合体を含む基材層のレターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。また、光学積層体を備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的に液晶表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。
【0039】
飽和吸水率は、試料を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体の飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。よって、飽和吸水率をより低くする観点から、非晶性脂環構造重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
【0040】
非晶性樹脂における非晶性脂環構造重合体の量は、好ましくは80.0重量%以上、より好ましくは85.0重量%以上、特に好ましくは90.0重量%以上であり、好ましくは99.0重量%以下、より好ましくは97.0重量%以下、特に好ましくは95.0重量%以下である。非晶性脂環構造重合体の量を前記範囲に収めることにより、光学積層体を備える偏光板の加湿条件下での耐久性を高めることができる。
【0041】
基材層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。したがって、基材層を形成する非晶性樹脂は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤を用いることにより、光学積層体を備える偏光板に含まれる有機成分の紫外線による劣化を抑制できるので、偏光板の耐久性を向上させることができる。さらに、液晶表示装置の液晶パネルの紫外線による劣化を抑制できる。例えば、光学積層体により、外光に含まれる紫外線による液晶パネルの劣化を抑制できる。また、例えば、液晶表示装置の製造方法が、紫外線硬化性の接着剤で任意の部材を接着する工程を含むことがある。この際、光学積層体により、接着剤を硬化させるための紫外線による液晶パネルの劣化を抑制することができる。
【0042】
紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収しうる化合物を用いうる。紫外線球種剤の例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いうる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0044】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0045】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
非晶性樹脂における紫外線吸収剤の量は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは3.0重量%以上、特に好ましくは5.0重量%以上であり、好ましくは20.0重量%以下、より好ましくは15.0重量%以下、特に好ましくは10.0重量%以下である。紫外線吸収剤の量を、前記範囲の下限値以上にすることにより光学積層体を備える偏光板の紫外線等の光に対する耐久性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることにより光学積層体を備える偏光板の透過率を高めることができる。光学積層体の波長380nmにおける透過率を適切な範囲にするために、紫外線吸収剤の量を基材層の厚みに応じて適宜調整してもよい。
【0047】
紫外線吸収剤を含む非晶性樹脂の製造方法は、任意であり、例えば、溶融押出法による積層体の製造時より前に紫外線吸収剤を非晶性脂環構造重合体に配合する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含むマスターバッチを用いる方法;溶融押出法による積層体の製造時に紫外線吸収剤を非晶性脂環構造重合体に配合する方法、などが挙げられる。
【0048】
非晶性樹脂は、非晶性脂環構造重合体及び紫外線吸収剤に加えて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;帯電防止剤;酸化防止剤;界面活性剤等の配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
基材層の厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、特に好ましくは7.0μm以上であり、好ましくは45μm以下、より好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。基材層の厚みを、前記範囲の下限値以上にすることにより基材層に対する紫外線吸収剤の割合を低く設計することができ、前記範囲の上限値以下にすることにより、光学積層体の機械特性を高くすることができる。
【0050】
ここで、光学積層体に含まれる基材層及び表面層(第一表面層及び第二表面層)等の各層の厚みは、次の方法で測定しうる。
光学積層体をエポキシ樹脂で包埋して、試料片を用意する。この試料片を、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスする。その後、スライスにより現れた断面を顕微鏡を用いて観察することで、光学積層体に含まれる各層の厚みを測定しうる。
【0051】
また、光学積層体が長尺形状であり、且つ、基材層が遅相軸を有する場合、当該基材層の遅相軸は、光学積層体の長手方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向にあることが好ましい。特に、光学積層体の長手方向に対する基材層の配向角θは、45°±5°であることが好ましい。ここで、前記の配向角θは、光学積層体の長手方向に対して遅相軸がなす角度を表す。前記の基材層の配向角θは、より詳しくは、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。これにより、光学積層体と偏光子とを貼り合わせて偏光板を製造する場合に、光学積層体の遅相軸と偏光子の偏光透過軸との角度を容易に調整できる。
【0052】
[1.3.第一表面層]
第一表面層は、結晶性の脂環式構造を含有する重合体を含む。したがって、第一表面層は、通常、結晶性の脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂からなる樹脂層である。以下、結晶性の脂環式構造を含有する重合体を、適宜、「結晶性脂環構造重合体」ということがある。また、結晶性脂環構造重合体を含む樹脂を、適宜、「結晶性樹脂」ということがある。前記の結晶性樹脂は、通常、熱可塑性樹脂である。
【0053】
結晶性脂環構造重合体は、分子内に脂環式構造を有する結晶性の重合体であり、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物が挙げられる。結晶性脂環構造重合体は、耐薬品性及び機械的強度に優れ、更に通常は耐熱性に優れる。
結晶性脂環構造重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
結晶性脂環構造重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学積層体が得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0055】
結晶性脂環構造重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。結晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、結晶性脂環構造重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0056】
結晶性脂環構造重合体は、結晶性を有する重合体である。ここで、「結晶性を有する重合体」とは、融点を有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕重合体をいう。結晶性脂環構造重合体の融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点を有する結晶性脂環構造重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学積層体を得ることができる。
【0057】
結晶性脂環構造重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性脂環構造重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0058】
結晶性脂環構造重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。このような分子量分布を有する結晶性脂環構造重合体は、成形加工性に優れる。
結晶性脂環構造重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0059】
結晶性脂環構造重合体のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、170℃以下の範囲である。
【0060】
前記の結晶性脂環構造重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学積層体が得られ易いことから、結晶性脂環構造重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
【0061】
具体的には、結晶性脂環構造重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0062】
以下、重合体(α)及び重合体(β)の製造方法を説明する。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
【0063】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
【0064】
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン−2−イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
【0065】
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0066】
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0067】
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、結晶性脂環構造重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れる光学積層体が得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0068】
重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0069】
ラセモ・ダイアッドの割合は、
13C−NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン−d
4を溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体試料の
13C−NMR測定を行う。この
13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−d
4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
【0070】
重合体(α)の合成には、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような重合体(α)の合成用の開環重合触媒としては、環状オレフィン単量体を開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるものが好ましい。好ましい開環重合触媒としては、下記式(1)で示される金属化合物を含むものが挙げられる。
【0071】
M(NR
1)X
4−a(OR
2)
a・L
b (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
R
1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH
2R
3(R
3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
R
2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは、0〜2の整数を示す。)
【0072】
式(1)において、Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示す。このMとしては、クロム、モリブデン及びタングステンが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0073】
式(1)において、R
1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH
2R
3で表される基を示す。
R
1の、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、R
1において、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0074】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;等が挙げられる。
【0075】
R
1の、−CH
2R
3で表される基において、R
3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
R
3の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R
3の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0076】
R
3の、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R
3の、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、R
3で表される基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0078】
式(1)において、R
2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。R
2の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R
3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0079】
式(1)において、Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示す。
Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R
3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
Xのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のXを有する場合、それらのXは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のXが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0080】
式(1)において、Lは、電子供与性の中性配位子を示す。
Lの電子供与性の中性配位子としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0081】
式(1)で示される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)において、Mがタングステン原子であり、且つ、R
1がフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0082】
式(1)で示される金属化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5−345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。
【0083】
前記の製造方法では、式(1)で示される金属化合物は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。金属化合物の製造後、前記の反応液をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。また、結晶化等の精製処理により、金属化合物を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物を開環重合反応に供してもよい。
【0084】
開環重合触媒は、式(1)で示される金属化合物を単独で用いてもよく、式(1)で示される金属化合物を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、式(1)で示される金属化合物と有機金属還元剤とを組み合わせて用いることで、重合活性を向上させることができる。
【0085】
有機金属還元剤としては、例えば、炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。このような有機金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム;ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等の有機アルミニウム;テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ;等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム又は有機スズが好ましい。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0086】
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、開環重合体及びその水素添加物を、所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、かつ、開環重合反応及び水素化反応を阻害しないものを用いうる。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が好ましい。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0087】
開環重合反応は、例えば、環状オレフィン単量体と、式(1)で示される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより、開始させることができる。これらの成分を混合する順序は、特に限定されない。例えば、環状オレフィン単量体を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物及び有機金属還元剤を含む溶液を混合してもよい。また、有機金属還元剤を含む溶液に、環状オレフィン単量体及び式(1)で示される金属化合物を含む溶液を混合してもよい。さらに、環状オレフィン単量体及び有機金属還元剤を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物の溶液を混合してもよい。各成分を混合する際は、それぞれの成分の全量を一度に混合してもよいし、複数回に分けて混合してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0088】
開環重合反応の開始時における反応液中の環状オレフィン単量体の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。環状オレフィン単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0089】
開環重合反応に用いる式(1)で示される金属化合物の量は、「金属化合物:環状オレフィン単量体」のモル比が、所定の範囲の収まるように設定することが望ましい。具体的には、前記のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000、より好ましくは1:500〜1,000,000、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。金属化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な重合活性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、反応後に金属化合物を容易に除去できる。
【0090】
有機金属還元剤の量は、式(1)で示される金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下、特に好ましくは20モル以下である。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0091】
重合体(α)の重合反応系は、活性調整剤を含んでいてもよい。活性調整剤を用いることで、開環重合触媒を安定化したり、開環重合反応の反応速度を調整したり、重合体の分子量分布を調整したりできる。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含リン有機化合物等が挙げられる。
【0092】
含酸素化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
【0093】
活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)の重合反応系における活性調整剤の量は、式(1)で示される金属化合物100モル%に対して、好ましくは0.01モル%〜100モル%である。
【0094】
重合体(α)の重合反応系は、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を含んでいてもよい。分子量調整剤としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
【0095】
分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)を重合するための重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、環状オレフィン単量体100モル%に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%の範囲である。
【0096】
重合温度は、好ましくは−78℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、好ましくは+200℃以下、より好ましくは+180℃以下である。
重合時間は、反応規模に依存しうる。具体的な重合時間は、好ましくは1分間から1000時間の範囲である。
【0097】
上述した製造方法により、重合体(α)が得られる。この重合体(α)を水素化することにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素化は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することによって行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0098】
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化触媒として公知の均一系触媒及び不均一触媒を用いうる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、前記金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0099】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素化反応を行ってもよい。
【0100】
水素化反応の反応条件は、通常、用いる水素化触媒によって異なる。
水素化反応の反応温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、好ましくは+250℃以下、より好ましくは+220℃以下、特に好ましくは+200℃以下である。反応温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
【0101】
水素圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。水素圧力を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
【0102】
水素化反応の反応時間は、所望の水素添加率が達成される任意の時間に設定してもよく、好ましくは0.1時間〜10時間である。
水素化反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0103】
水素化反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、結晶性脂環構造重合体の耐熱性を良好にできる。
ここで、重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−d
4を溶媒として、145℃で、
1H−NMR測定により測定しうる。
【0104】
次に、重合体(γ)及び重合体(δ)の製造方法を説明する。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0105】
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0106】
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70〜99:1、より好ましくは50:50〜97:3、特に好ましくは70:30〜95:5である。
【0107】
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0108】
重合体(γ)の合成には、通常、付加重合触媒を用いる。このような付加重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム触媒、チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒等が挙げられる。また、付加重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0109】
付加重合触媒の量は、単量体1モルに対して、好ましくは0.000001モル以上、より好ましくは0.00001モル以上であり、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下である。
【0110】
環状オレフィン単量体の付加重合は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、環状オレフィン単量体の開環重合に用いうる有機溶媒として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0111】
重合体(γ)を製造するための重合における重合温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、重合時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0112】
上述した製造方法により、重合体(γ)が得られる。この重合体(γ)を水素化することにより、重合体(δ)を製造することができる。
重合体(γ)の水素化は、重合体(α)を水素化する方法として先に示したものと同様の方法により、行いうる。
【0113】
第一表面層において、結晶性樹脂における結晶性脂環構造重合体の量は、好ましくは90.0重量%〜100重量%、より好ましくは95.0重量%〜100重量%である。結晶性脂環構造重合体の量を前記範囲にすることにより、光学積層体の耐薬品性及び耐折れ曲げ性を効果的に高めることができる。
【0114】
第一表面層を形成する結晶性樹脂は、結晶性脂環構造重合体に加えて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;核剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;帯電防止剤;酸化防止剤;界面活性剤等の配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0115】
第一表面層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、特に好ましくは3.0μm以下である。第一表面層の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、光学積層体の耐薬品性及び耐折れ曲げ性を良好にでき、更に通常は光学積層体の耐熱性及び耐擦り傷性を向上させることができる。また、第一表面層の厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、光学積層体を備える液晶表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、その液晶表示装置の表示品位を良好にできる。
【0116】
基材層の厚みと第一表面層の厚みとの比(第一表面層/基材層)は、好ましくは1/200以上、より好ましくは1/150以上、特に好ましくは1/100以上であり、好ましくは1/1.5以下、より好ましくは1/2.0以下、特に好ましくは1/2.5以下である。基材層と第一表面層との間の厚み比を前記範囲の下限値以上にすることにより、光学積層体の耐薬品性及び耐折れ曲げ性を良好にでき、更に通常は光学積層体の耐熱性及び耐擦り傷性を向上させることができる。また、厚み比を前記範囲の上限値以下にすることにより、光学積層体を備える液晶表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、その液晶表示装置の表示品位を良好にできる。
【0117】
また、光学積層体が長尺形状であり、且つ、第一表面層が遅相軸を有する場合、当該第一表面層の遅相軸は、光学積層体の長手方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向にあることが好ましい。特に、光学積層体の長手方向に対する第一表面層の配向角θは、45°±5°であることが好ましい。前記の第一表面層の配向角θは、より詳しくは、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。これにより、光学積層体と偏光子とを貼り合わせて偏光板を製造する場合に、光学積層体の遅相軸と偏光子の偏光透過軸との角度を容易に調整できる。
【0118】
[1.4.第二表面層]
第二表面層は、結晶性脂環構造重合体を含む。したがって、第二表面層は、通常、結晶性樹脂からなる樹脂層である。第一表面層に組み合わせて第二表面層を備えることにより、光学積層体は、当該光学積層体の両面において耐薬品性、耐擦り傷性等の優れた特性を発揮することができ、さらに光学積層体の耐折れ曲げ性及び耐熱性を顕著に高めることができる。
【0119】
第二表面層を形成する結晶性樹脂としては、第一表面層を形成する結晶性樹脂として説明した範囲のものを任意に用いうる。第二表面層を形成する結晶性樹脂と第一表面層を形成する結晶性樹脂とは、異なっていてもよいが、光学積層体の製造コストの抑制及びカールの抑制の観点から同じであることが好ましい。
【0120】
第二表面層の厚みは、第一表面層の厚みとして説明した範囲の厚みに任意に設定しうる。第二表面層の厚みと第一表面層の厚みとは、異なっていてもよいが、光学積層体のカールを抑制する観点から同じであることが好ましい。
【0121】
また、光学積層体が長尺形状であり、且つ、第二表面層が遅相軸を有する場合、当該第二表面層の遅相軸は、光学積層体の長手方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向にあることが好ましい。特に、光学積層体の長手方向に対する第二表面層の配向角θは、第一表面層の配向角θと同様の範囲に設定することが好ましい。これにより、光学積層体と偏光子とを貼り合わせて偏光板を製造する場合に、光学積層体の遅相軸と偏光子の偏光透過軸との角度を容易に調整できる。
【0122】
[1.5.任意の層]
光学積層体は、必要に応じて、上述した基材層、第一表面層及び第二表面層に組み合わせて、任意の層を備えうる。例えば、光学積層体は、基材層と第一表面層との間に任意の樹脂層を備えていてもよく、基材層と第二表面層との間に任意の樹脂層を備えていてもよい。また、例えば、光学積層体は、第一表面層の基材層とは反対側にハードコート層、導電層、又はこれらの組み合わせを備えていてもよい。又は、ハードコート層の機能と導電層の機能の両方を備えた層を備えていてもよい。前記導電層としては、可視光領域において透過度を有し、かつ導電性を有する層を採用しうる。導電層を構成する材料の例としては、導電性ポリマー、導電性ペースト、金属酸化物等が挙げられる。より具体的な材料の例としては、銀ペースト、ポリマーペースト、錫をドープしたインジウム酸化物(ITO)、アンチモンまたはフッ素をドープした錫酸化物(ATOまたはFTO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウムと錫の酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅などの金属酸化物、または金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属、金及び銅等の金属を含む金属コロイド、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブ(以下、CNT)の無機系又は有機系のナノ材料等が挙げられる。したがって、光学積層体は、基材層及び第一表面層を備える2層構造のフィルムであるか、第一表面層、基材層及び第二表面層をこの順に備える3層構造のフィルムであるか、又はこれらに加えて任意の層を備えたフィルムとしうる。
【0123】
[1.6.光学積層体の物性及び厚み]
光学積層体のレターデーションReは、好ましくは400nm以下、より好ましくは250nm以下、特に好ましくは180nm以下である。光学積層体のレターデーションが前記の範囲に収まることにより、当該光学積層体を備える液晶表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、液晶表示装置の表示品位を効果的に高めることができる。具体的には、その液晶表装置の虹状の色ムラ及び暗化を効果的に抑制できる。光学積層体のレターデーションの下限値は、好ましくは80nm以上、より好ましくは85nm以上、特に好ましくは90nm以上である。光学積層体のレターデーションを前記の下限値以上にすることにより、その光学積層体を1/4波長板として機能させることができる。そのため、この光学積層体を用いれば、直線偏光を円偏光に変換することが可能であるので、前記の光学積層体を適用した液晶表示装置が画像を円偏光で表示できる。したがって、偏光サングラスを着用して前記の液晶表示装置が表示する画像を見た場合に、画像の明るさを良好にして、表示品位を更に高めることができる。
【0124】
光学積層体の遅相軸方向は、光学積層体の用途に応じて任意に設定しうる。光学積層体が長尺形状を有する場合、当該光学積層体の遅相軸は、光学積層体の長手方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向にあることが好ましい。特に、光学積層体の長手方向に対する光学積層体の配向角θは、45°±5°であることが好ましい。前記の光学積層体の配向角θは、より詳しくは、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。通常、偏光板を製造する場合には、長尺形状を有する偏光子と長尺形状を有する光学積層体とを、長手方向を平行にして貼り合わせる。また、偏光子の偏光透過軸は、通常、偏光子の長手方向に平行又は垂直である。したがって、前記のように光学積層体が前記の配向角θを有する場合には、偏光子の偏光透過軸と光学積層体の遅相軸とが45°±5°の角度をなすように、容易に貼り合わせることができる。このようにして製造された偏光板では、偏光子を透過した直線偏光は、光学積層体によって円偏光に変換されうる。よって、この偏光板を液晶表示装置に設ければ、偏光サングラスを着用した場合でも画像の明るさを良好にできる液晶表示装置を容易に実現できる。
【0125】
光学積層体の全光線透過率は、好ましくは85%〜100%、より好ましくは87%〜100%、特に好ましくは90%〜100%である。全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計を用いて測定しうる。
【0126】
波長380nmにおける光学積層体の光線透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは8.0%以下、特に好ましくは5.0%以下である。波長380nmにおいてこのように低い光線透過率を有する光学積層体は、紫外線を遮断する能力に優れる。そのため、このような光学積層体は、当該光学積層体を備える偏光板の耐久性を向上させたり、当該光学積層体を適用した液晶表示装置の液晶パネルの紫外線による劣化を抑制したりできる。
【0127】
光学積層体が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、光学積層体の寸法安定性が向上し、レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。さらには、光学積層体を備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的に液晶表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。ここで、揮発性成分は、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量しうる。
【0128】
光学積層体の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。光学積層体の厚みを、前記範囲の下限値以上にすることにより光学積層体に所望の範囲のレターデーションを発現させることができ、前記範囲の上限値以下にすることにより光学積層体を薄くできる。
【0129】
一般に、結晶性脂環構造重合体は、配向性の制御が困難である。そのため、結晶性脂環構造重合体を含む従来のフィルムを備える液晶表示装置は、偏光サングラスの着用時の表示品位に劣る傾向があった。具体的には、従来のフィルムを備える液晶表示装置を偏光サングラスの着用して見た場合、前記の不均一なレターデーションに起因して、虹状の色ムラ及び局所的な暗化が生じることがあった。これに対し、上述した光学積層体は、結晶性脂環構造重合体を含む表面層(第一表面層又は第二表面層)を備えながら、当該光学積層体を備える液晶表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、その液晶表示装置の表示品位を良好にできる。
【0130】
また、上述した光学積層体は、耐薬品性に優れた結晶性脂環構造重合体を含む表面層を備えるので、優れた耐薬品性を有する。具体的には、光学積層体は、溶媒であるリモネンに接触しても変形を生じ難い。
【0131】
さらに、上述した光学積層体は、機械的強度に優れ、応力を加えても破損し難い結晶性脂環構造重合体を含む表面層を備えるので、優れた耐折り曲げ性を有する。具体的には、光学積層体は、折り曲げても破断を生じ難い。
【0132】
また、光学積層体は、通常、機械的強度及び耐熱性に優れる結晶性脂環構造重合体を含む表面層を備えるので、耐擦り傷性及び耐熱性に優れる。
【0133】
[1.7.光学積層体の製造方法]
光学積層体の製造方法に制限は無い。光学積層体は、例えば、非晶性樹脂及び結晶性樹脂をフィルム状に成形する工程を含む製造方法により、製造し得る。
【0134】
樹脂の成形方法としては、例えば、共押出法及び共流延法などが挙げられる。これらの成形方法の中でも、共押出法は、製造効率に優れ、光学積層体中に揮発性成分を残留させ難いので、好ましい。
【0135】
共押出法は、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を共押し出しする押出工程を含む。押出工程において非晶性樹脂及び結晶性樹脂は、それぞれ溶融状態で層状に押し出される。この際、樹脂の押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法には、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式があり、厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
【0136】
押出工程において、押し出される樹脂の溶融温度は、好ましくは(Tg+80℃)以上、より好ましくは(Tg+100℃)以上であり、好ましくは(Tg+180℃)以下、より好ましくは(Tg+170℃)以下である。ここで「Tg」は、非晶性樹脂又は結晶性樹脂に含まれる重合体(例えば、非晶性脂環構造重合体及び結晶性脂環構造重合体)のガラス転移温度のうち、最も高い温度を表す。押し出される樹脂の溶融温度を、前記範囲の下限値以上にすることにより樹脂の流動性を十分に高めて成型性を良好にでき、また、上限値以下にすることにより樹脂の劣化を抑制できる。
【0137】
押出工程において、押出機における樹脂の温度は、樹脂投入口では好ましくはTg〜(Tg+100℃)、押出機出口では好ましくは(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)、ダイス温度は好ましくは(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)である。
【0138】
さらに、押出工程において用いるダイのダイスリップの算術平均粗さは、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.7μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ダイスリップの算術平均粗さを前記範囲に収めることにより、光学積層体のスジ状の欠陥を抑制することが容易となる。
【0139】
共押出法では、通常、ダイスリップから押し出されたフィルム状の溶融樹脂を冷却ロールに密着させて冷却し、硬化させる。この際、溶融樹脂を冷却ロールに密着させる方法としては、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
【0140】
冷却ロールの数は、特に制限されず、通常は2本以上である。冷却ロールの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられる。この際、ダイスリップから押出された溶融樹脂の冷却ロールへの通し方は特に制限されない。
【0141】
前記のようにして非晶性樹脂及び結晶性樹脂をフィルム状に成形することにより、非晶性樹脂からなる基材層及び結晶性樹脂からなる第一表面層を備える複層フィルムが得られる。この複層フィルムをそのまま光学積層体として用いてもよい。また、この複層フィルムを延伸して光学積層体を得てもよい。通常、延伸によって複層フィルムにレターデーションが発現するので、延伸を行うことによって所望のレターデーションを有する光学積層体が得られる。さらに、通常は、延伸を行うことで、結晶性樹脂に含まれる結晶性脂環構造重合体を配向させながら、当該結晶性脂環構造重合体の結晶化を促進することができるため、耐薬品性及び耐折り曲げ性を更に向上させることができる。以下の説明において、延伸を施される複層フィルムを、適宜「延伸前積層体」ということがある。
【0142】
延伸は、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸処理を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸処理を行った後で別の方向に延伸処理を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸は、延伸前積層体の長手方向に延伸処理を行う縦延伸処理、延伸前積層体の幅方向に延伸処理を行う横延伸処理、延伸前積層体の幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸処理を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。これらの延伸処理の中でも、光学積層体の配向角を所望の範囲に容易に収めることができるので、斜め延伸処理が好ましい。延伸処理の方式は、例えば、ロール方式、フロート方式、テンター方式などが挙げられる。
【0143】
延伸温度及び延伸倍率は、所望のレターデーションを有する光学積層体が得られる範囲で任意に設定しうる。具体的な範囲を挙げると、延伸温度は、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。また、延伸倍率は、好ましくは1.01倍〜30倍、好ましくは1.01倍〜10倍、より好ましくは1.01倍〜5倍である。
【0144】
また、光学積層体の製造方法は、前述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、延伸された複層フィルムに対し、加熱工程を行ってもよい。これにより、結晶性樹脂の結晶化が更に促進され、光学積層体の耐薬品性及び耐折り曲げ性がさらに向上する。
【0145】
加熱工程においては、通常、結晶性樹脂がその配向状態を維持したまま、結晶化が進行する。加熱工程における加熱温度は、特定の範囲内の温度であることが好ましい。具体的には、加熱温度は、光学積層体に含まれる結晶性樹脂のガラス転移温度Tg以上であり、融点Tm以下であることが好ましい。これにより、結晶性樹脂の結晶化を効果的に進行させることができる。さらに、前記の特定の温度範囲の中でも、結晶化の速度が大きくなるような温度に設定することが好ましい。例えば、結晶性樹脂としてジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を用いる場合、加熱工程における加熱温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下である。
【0146】
複層フィルムを加熱するための加熱装置としては、加熱装置と複層フィルムとの接触が不要であることから、複層フィルムの雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
【0147】
さらに、加熱工程において複層フィルムの加熱は、複層フィルムの二辺以上を保持して緊張させた状態で行うことが好ましい。ここで、複層フィルムを緊張させた状態とは、複層フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、複層フィルムを緊張させた状態には、複層フィルムが実質的に延伸される状態を含まない。また、実質的に延伸されるとは、複層フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0148】
複層フィルムの二辺以上を保持されて緊張した状態において加熱を行うことにより、保持された辺の間の領域において複層フィルムの熱収縮による変形を妨げることができる。この際、複層フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、対向する二辺を含む辺を保持して、その保持された辺の間の領域を緊張した状態にすることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の複層フィルムでは、対向する二辺(例えば、長辺同士、又は、短辺同士)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その枚葉の複層フィルムの全面において変形を妨げることが好ましい。また、長尺形状の複層フィルムでは、幅方向の端部にある二辺(即ち、長辺)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その長尺形状の複層フィルムの全面において変形を妨げることが好ましい。このように変形を妨げられた複層フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。そのため、加熱によって複層フィルムの平滑性が損なわれることを抑制できるので、波打ち及びシワの少ない平滑な複層フィルムを得ることができる。
【0149】
さらに、加熱時の変形をより確実に抑制するためには、より多くの辺を保持することが好ましい。よって、例えば、枚葉の複層フィルムでは、その全ての辺を保持することが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の複層フィルムでは、四辺を保持することが好ましい。
【0150】
複層フィルムを保持する場合、適切な保持具によって複層フィルムの辺を保持しうる。保持具は、複層フィルムの辺の全長を連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって複層フィルムの辺を間欠的に保持してもよい。
【0151】
また、保持具としては、複層フィルムの辺以外の部分では複層フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れる光学積層体を得ることができる。
【0152】
さらに、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を加熱工程においては固定しうるものが好ましい。このような保持具は、加熱工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、加熱時における複層フィルムの実質的な延伸を抑制しやすい。
【0153】
好適な保持具としては、例えば、矩形の複層フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ複層フィルムの辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺形状の複層フィルムの幅方向の端部にある二辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ複層フィルムの辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0154】
長尺形状の複層フィルムを用いる場合、その複層フィルムの長手方向の端部にある辺(即ち、短辺)を保持してもよいが、前記の辺を保持する代わりに複層フィルムの特定の温度範囲に加熱される領域の長手方向の両側を保持してもよい。例えば、複層フィルムの特定の温度範囲に加熱される領域の長手方向の両側に、複層フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせによって複層フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、特定の温度範囲に加熱される領域において当該複層フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、複層フィルムを長手方向に搬送しながら当該複層フィルムを保持できるので、光学積層体の効率的な製造ができる。
【0155】
加熱工程において、複層フィルムを前記の特定の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上であり、好ましくは1時間以下である。これにより、結晶性樹脂の結晶化を十分に進行させることができるので、光学積層体の耐熱性、耐薬品性および耐折り曲げ性を特に高めることができる。
【0156】
[2.偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、当該偏光子の少なくとも片側に設けられた光学積層体を備える。
【0157】
偏光子としては、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。また、偏光子の厚さは、通常、5μm〜80μmである。
【0158】
光学積層体がレターデーションを有する場合、偏光板において、偏光子の偏光透過軸と、光学積層体の遅相軸とは、45°±5°の角度をなすことが好ましい。これにより、偏光子を透過した直線偏光を、光学積層体によって円偏光に変換できる。
【0159】
偏光板は、偏光子の片側に光学積層体を貼り合わせることにより、製造できる。貼り合わせに際しては、必要に応じて接着剤を用いてもよい。また、基材層及び第一表面層を備える2層構造の光学積層体と偏光子とを貼り合わせて偏光板を得る場合、通常は、偏光子、基材層及び第一表面層がこの順になるように貼り合わせを行う。
【0160】
偏光板は、上述した偏光子、光学積層体に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。例えば、偏光板は、光学積層体以外の任意の保護フィルム層を、偏光子の保護のために備えていてもよい。このような保護フィルム層は、通常、光学積層体とは反対側の偏光子の面に設けられる。
【0161】
[3.液晶表示装置]
液晶表示装置は、本発明の偏光板を備える。通常、液晶表示装置は、光源、光源側偏光板、液晶セル及び偏光板を、この順に備える。また、偏光板は、偏光子及び光学積層体が光源側からこの順に並ぶように設けられる。
【0162】
本発明の液晶表示装置は、上述した光学積層体を備えるので、偏光サングラスの着用時における表示品位が良好である。また、光学積層体が適切なレターデーションを有する場合、このような液晶表示装置は、円偏光によって画像を表示できる。そのため、偏光サングラスの着用時でも画像の明るさを明るくできる。
【0163】
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げられる。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0165】
[評価方法]
(積層体の厚みの測定方法)
積層体の厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製ダイヤルゲージ)で測定した。
また、積層体に含まれる各層の厚みは、積層体をエポキシ樹脂で包埋した後に、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスし、顕微鏡を用い断面観察を行うことで測定した。
【0166】
(光学積層体の光線透過率の測定方法)
光学積層体の波長380nmにおける光線透過率は、JIS K 0115(吸光光度分析通則)に準拠して、分光光度計(日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計「V−650」)を用いて測定した。
【0167】
(光学積層体のヘイズの測定方法)
JIS K 7136に準拠して、光学積層体を50mm×50mmに切り出したフィルム片のヘイズを算出した。
【0168】
(光学積層体の面内レターデーションの測定方法)
光学積層体の波長550nmのおける面内レターデーションは、ポラリメータ(Axiometric社製「Axoscan」)を用いて測定した。
【0169】
(光学積層体の配向角θの測定方法)
光学積層体の長手方向に対する光学積層体の配向角θは、ポラリメータ(Axiometric社製「Axoscan」)を用いて、波長550nmで測定した。
【0170】
(光学積層体の耐折り曲げ性の評価方法)
光学積層体の耐折り曲げ性は、JIS P 8115「紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法」に準拠したMIT耐折試験により、下記の手順で測定した。
試料としての光学積層体から、幅15mm±0.1mm、長さ110mmの試験片を切り出した。この際、光学積層体が延伸工程を経て製造されたものである場合は、当該光学積層体に含まれる重合体分子の配向方向が試験片の長さ110mmの辺と平行になるように、試験片を製造した。また、光学積層体が延伸工程を経ないで製造されたものである場合は、押出工程の流れ方向(即ち、押出工程で得られるフィルムの長手方向)を試験片の長さ110mmの辺と平行になるように、試験片を製造した。
【0171】
MIT耐折度試験機(安田精機製作所製「No.307」)を用いて、荷重9.8N、屈曲部の曲率0.38±0.02mm、折り曲げ角度135°±2°、折り曲げ速度175回/分の条件で、試験片の幅方向に折れ目が現れるように前記の試験片を折り曲げた。いずれの試験片でも、結晶性樹脂からなる表面層が外側になるように折り曲げた。この折り曲げを継続し、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。
【0172】
10枚の試験片を製造して、前記の方法により、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を10回測定した。こうして測定された10回の測定値の平均を、当該光学積層体の耐折度(MIT耐折回数)とした。
耐折度が2000回以上であれば、耐折り曲げ性が最も良好であるとして、「4」と評価した。また、耐折度が2000回未満1000回以上であれば、耐折り曲げ性が特に良好として「3」と評価した。また、耐折度が1000回未満500回以上であれば、耐折り曲げ性が良好として「2」と判定した。さらに、耐折度が500回未満であれば、耐折り曲げ性が不良として「1」と判定した。
【0173】
(光学積層体の耐薬品性の評価方法)
光学積層体を、結晶性樹脂からなる表面層が外側になるように、曲げ直径φ10mmで湾曲させた。湾曲させた部分の外側の表面にリモネンを1cc滴下して、30秒後にふき取った。
表面に変形が無い場合は、耐薬品性が特に良好として「3」と判定した。
また、表面がわずかに変形している場合は、耐薬品性が良好として「2」と判定した。さらに、表面にクラックが発生した場合は、耐薬品性が不良として「1」と判定した。
また、変形が無かったものについては、さらに、ふき取り面を外側にして、曲げ直径φ3mmで湾曲させた。その際に、割れが発生しないものを、耐薬品性がもっとも良好であるとして、「4」とした。
【0174】
(偏光板の耐久性試験の方法)
紫外線フェードメーターU48(スガ試験機株式会社製)を用いて、偏光板を、放射照度:500W/m
2、温度:63±3℃、湿度:50%RH以下の条件で、紫外線に500時間さらした後、変色の有無を目視観察した。変色が無いものは、耐久性が特に良好であるとして「3」と判定した。また、わずかに変色しているものは、耐久性が良好として「2」と判定した。さらに、著しく変色しているものは、耐久性不良として「1」と判定した。
【0175】
(液晶表示装置の表示品位の評価方法)
液晶表示装置の表示面を、偏光サングラスを使用した状態で、液晶表示装置の位置を変えて観察した。虹状の色ムラが無く、画像を鮮明に視認できる場合、表示品位が特に良好であるとして「3」と判定した。また、虹状の色むらがうっすら見えるか、画像が若干暗く見えた場合、表示品位が良好として「2」と判定した。さらに、虹状の色ムラがはっきり見えるか、画像が著しく暗くなった場合、画像の鮮明性が不良であるとして「1」と判定した。
【0176】
[製造例1:非晶性脂環構造重合体A1の製造]
トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン。以下、適宜「DCP」と略記する。)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン。以下、適宜「MTF」と略記する。)、及び、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン。以下、適宜「TCD」と略記する。)を、重量比DCP/MTF/TCD=60/10/30で混合した混合物を用意した。この混合物を、公知の方法により開環重合し、次いで水素化して、非晶性脂環構造重合体を得た。得られた非晶性脂環構造重合体中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の反応溶液中に残留したノルボルネン系単量体の組成をガスクロマトグラフィー法による分析で計算することにより、求めた。その結果、非晶性脂環構造重合体中の共重合比率は、DCP/MTF/TCD=60/10/30で、ほぼ仕込み組成に等しかった。また、非晶性脂環構造重合体の、重量平均分子量(Mw)は35,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、水素化率は99.9%、ガラス転移温度Tgは125℃、25℃における屈折率は1.53であった。
【0177】
[製造例2:結晶性脂環構造重合体の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0178】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0179】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0180】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素添加物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0181】
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性脂環構造重合体28.5部を得た。この結晶性脂環構造重合体の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0182】
[製造例3:非晶性脂環構造重合体A2の製造]
MTF及びTCD」を、重量比 MTF/TCD=60/40で混合した混合物を用意した。この混合物を、公知の方法により開環重合し、次いで水素化して、非晶性脂環構造重合体を得た。得られた非晶性脂環構造重合体中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の反応溶液中に残留したノルボルネン系単量体の組成をガスクロマトグラフィー法による分析で計算することにより、求めた。その結果、非晶性脂環構造重合体中の共重合比率は、MTF/TCD=60/40で、ほぼ仕込み組成に等しかった。また、非晶性脂環構造重合体の、重量平均分子量(Mw)は40,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9、水素化率は99.9%、ガラス転移温度Tgは163℃、25℃における屈折率は1.53であった。
【0183】
[実施例1]
(1−1.非晶性樹脂H1の製造)
製造例1で製造された非晶性脂環構造重合体A1、92部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)7.0部と、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.0部とを、二軸押出機により混合して混合物を得た。次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して、非晶性樹脂H1を得た。非晶性樹脂H1における紫外線吸収剤の量は、7.0重量%であった。
【0184】
(1−2.結晶性樹脂K1の製造)
製造例2で製造された結晶性脂環構造重合体100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、結晶性樹脂K1を得た。
【0185】
(1−3.押出工程)
非晶性樹脂H1を、ホッパーへ投入した。そして、投入された非晶性樹脂H1をマルチマニホールドダイに供給した。
【0186】
他方、結晶性樹脂K1を、別のホッパーへ投入した。そして、投入された結晶性樹脂K1を、前記のマルチマニホールドダイに供給した。
【0187】
次いで、マルチマニホールドダイから非晶性樹脂H1及び結晶性樹脂K1をフィルム状に吐出させ、冷却ロールにキャストした。このような共押出成形法によって、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み4.0μm)/非晶性樹脂H1からなる基材層(厚み32.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み4.0μm)をこの順に備える、長尺形状を有する延伸前積層体1を得た。この延伸前積層体1は、2種3層からなるフィルム(即ち、2種類の樹脂からなる3層構造のフィルム)であり、その幅は1400mm、その厚みは40μmであった。その後、延伸前積層体1の両端50mmずつをトリミングして、幅を1300mmとした。
【0188】
(1−4.延伸工程)
延伸前積層体1を、当該延伸前積層体1の幅方向の両端を把持しうるクリップ及び前記クリップを案内しうるレールを備えたテンター装置に供給し、このテンター装置で延伸した。延伸の際、テンター装置のレールは、延伸後に長手方向に対して45°の角度をなす遅相軸が発現するように設定した。また、延伸条件は、延伸温度130℃、フィルム搬送速度20m/minとした。これにより、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み2.5μm)/非晶性樹脂H1からなる基材層(厚み20μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み2.5μm)をこの順に備える、長尺形状を有する光学積層体1を得た。この光学積層体1は、2種3層からなるフィルムであり、その幅は1330mm、その厚みは25μmであった。
光学積層体1の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0189】
(1−5.偏光板の製造)
原料フィルムにヨウ素をドープして一方向に延伸して製造された偏光子を用意した。この偏光子の片面に光学積層体1を紫外線硬化型アクリル接着剤で貼り合わせ、偏光子のもう片面に横一軸延伸を施されたシクロオレフィンフィルムを紫外線硬化型アクリル接着剤で貼り合わせ、紫外線を照射して、偏光板1を得た。この際、光学積層体1の遅相軸は、偏光子の偏光透過軸に対して45°の角度をなすように設定した。また、シクロオレフィンフィルムの遅層軸は、偏光子の偏光透過軸に対して平行に設定した。得られた偏光板1について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0190】
(1−6.液晶表示装置の製造)
公知のインセルタイプのタッチセンサーを備える液晶パネルの視認側偏光板を取り外し、その代わりに偏光板1を組み込んで、液晶表示装置1を製造した。この際、偏光板1の向きは、第一表面層側の面が視認側に向くように設定した。得られた液晶表示装置1について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0191】
[実施例2]
(2−1.非晶性樹脂H2の製造)
紫外線吸収剤の配合量を0重量%としたこと以外は、実施例1の工程(1−1)と同様にして、非晶性樹脂H2を製造した。
【0192】
(2−2.押出工程及び延伸工程)
非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)及び工程(1−4)と同様にして、光学積層体2を製造した。光学積層体2の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0193】
(2−3.偏光板2の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板2を製造した。得られた偏光板2について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0194】
(2−4.液晶表示装置2の製造)
偏光板1の代わりに偏光板2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置2を製造した。得られた液晶表示装置1について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0195】
[実施例3]
(3−1.押出工程)
押し出される樹脂の厚みを変更したこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み2.5μm)/非晶性樹脂H1からなる基材層(厚み20.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み2.5μm)をこの順に備える延伸前積層体を得た。この延伸工程を施されていない延伸前積層体を、光学積層体3とした。光学積層体3の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0196】
(3−2.偏光板3の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体3を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板3を製造した。得られた偏光板3について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0197】
(3−3.液晶表示装置3の製造)
偏光板1の代わりに偏光板3を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置3を製造した。得られた液晶表示装置3について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0198】
[実施例4]
(4−1.押出工程)
結晶性樹脂K1を2層ではなく1層だけ押し出すように変更したこと、及び、非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み4.0μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み32.0μm)を備える延伸前積層体4を得た。
【0199】
(4−2.延伸工程)
延伸前積層体1の代わりに延伸前積層体4を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み2.5μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み20.0μm)を備える光学積層体4を得た。光学積層体4の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0200】
(4−3.偏光板4の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体4を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板4を製造した。また、ここでは、光学積層体4は、基材層側の面で偏光子と貼り合わせを行った。得られた偏光板4について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0201】
(4−4.液晶表示装置4の製造)
偏光板1の代わりに偏光板4を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置4を製造した。得られた液晶表示装置4について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0202】
[実施例5]
(5−1.押出工程)
押し出される樹脂の厚みを変更したこと、及び、非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み12.0μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み16.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み12.0μm)をこの順に備える延伸前積層体5を得た。
【0203】
(5−2.延伸工程)
延伸前積層体1の代わりに延伸前積層体5を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み7.5μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み10.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み7.5μm)をこの順に備える光学積層体5を得た。光学積層体5の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0204】
(5−3.偏光板5の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体5を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板5を製造した。得られた偏光板5について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0205】
(5−4.液晶表示装置5の製造)
偏光板1の代わりに偏光板5を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置5を製造した。得られた液晶表示装置5について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0206】
[実施例6]
(6−1.押出工程)
押し出される樹脂の厚みを変更したこと、及び、非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み0.08μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み40.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み0.08μm)をこの順に備える延伸前積層体6を得た。
【0207】
(6−2.延伸工程)
延伸前積層体1の代わりに延伸前積層体6を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み0.05μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み25.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み0.05μm)をこの順に備える光学積層体6を得た。光学積層体6の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0208】
(6−3.偏光板6の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体6を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板6を製造した。得られた偏光板6について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0209】
(6−4.液晶表示装置6の製造)
偏光板1の代わりに偏光板6を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置6を製造した。得られた液晶表示装置6について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0210】
[実施例7]
(7−1.非晶性樹脂H3の製造)
非晶性樹脂重合体A1の代わりに、製造例3で製造された非晶性樹脂重合体A2を使用した以外は、実施例1の工程(1−1)と同様にして、非晶性樹脂H3を製造した。
【0211】
(7−2.押出工程)
非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H3を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、延伸前積層体7を得た。
【0212】
(7−3.延伸工程)
延伸温度を165℃とした以外は、実施例1の工程(1−4)における光学積層体1の製造と同様にして、延伸された積層体7を製造した。
【0213】
(7−4.加熱工程)
(7−3)で得られた延伸された積層体を長尺のフィルムの両端の二辺を担持しうるクリップを備えたテンター延伸機のクリップに両端を保持し、緊張させた状態で延伸された積層体7を搬送しながら、延伸された積層体7に加熱処理を施した。この際の加熱条件は、175℃、処理時間20分であった。これにより、結晶性樹脂で形成された第一表面層の結晶化が進行し、光学積層体7を得た。得られた光学積層体7の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0214】
(7−5.偏光板7の製造)
光学積層体1の代わりに、(7−4)で得られた光学積層体7を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板7を製造した。得られた偏光板7について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0215】
(7−6.液晶表示装置7の製造)
偏光板1の代わりに偏光板7を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置7を製造した。得られた液晶表示装置7について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0216】
[比較例1]
(C1−1.押出工程)
非晶性樹脂H1の代わりに結晶性樹脂K1を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み4.0μm)/結晶性樹脂K1からなる基材層(厚み32.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み4.0μm)をこの順に備える延伸前積層体8を得た。
【0217】
(C1−2.延伸工程)
延伸前積層体1の代わりに延伸前積層体8を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、結晶性樹脂K1からなる第一表面層(厚み2.5μm)/結晶性樹脂K1からなる基材層(厚み20.0μm)/結晶性樹脂K1からなる第二表面層(厚み2.5μm)をこの順に備える光学積層体8を得た。光学積層体7の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0218】
(C1−3.偏光板8の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体8を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板8を製造した。得られた偏光板8について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0219】
(C1−4.液晶表示装置8の製造)
偏光板1の代わりに偏光板8を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置8を製造した。得られた液晶表示装置8について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0220】
[比較例2]
(C2−1.押出工程)
結晶性樹脂K1及び非晶性樹脂H1の代わりに非晶性樹脂H2を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして、非晶性樹脂H2からなる第一表面層(厚み4.0μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み32.0μm)/非晶性樹脂H2からなる第二表面層(厚み4.0μm)をこの順に備える延伸前積層体9を得た。
【0221】
(C2−2.延伸工程)
延伸前積層体1の代わりに延伸前積層体9を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−4)と同様にして、非晶性樹脂H2からなる第一表面層(厚み2.5μm)/非晶性樹脂H2からなる基材層(厚み20.0μm)/非晶性樹脂H2からなる第二表面層(厚み2.5μm)をこの順に備える光学積層体9を得た。光学積層体9の面内レターデーション、配向角θ、ヘイズ、波長380nmにおける光線透過率、耐折り曲げ性及び耐薬品性を、上述した方法によって評価した。
【0222】
(C2−3.偏光板9の製造)
光学積層体1の代わりに光学積層体9を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−5)と同様にして、偏光板9を製造した。得られた偏光板9について、上記方法で耐久性試験を実施した。
【0223】
(C2−4.液晶表示装置9の製造)
偏光板1の代わりに偏光板9を用いたこと以外は、実施例1の工程(1−6)と同様にして、液晶表示装置9を製造した。得られた液晶表示装置9について、上述した方法で、表示品位を評価した。
【0224】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
H1:非晶性樹脂H1。
H2:非晶性樹脂H2。
H3:非晶性樹脂H3。
K1:結晶性樹脂K1。
Re:光学積層体の面内レターデーション。
θ:光学積層体の長手方向に対する光学積層体の配向角。
透過率:波長380nmにおける光学積層体の光線透過率。
ヘイズ:光学積層体のヘイズ。
表示品位:液晶表示装置の表示品位。
耐折曲性:光学積層体の耐折れ曲げ性。
耐薬品性:光学積層体の耐薬品性。
耐久性:偏光板の耐久性。
【0225】
【表1】
【0226】
[検討]
表1から分かるように、実施例においては、光学積層体の耐折れ曲げ性及び耐薬品性、並びに液晶表示装置の表示品位のいずれにおいても良好な結果が得られている。耐折曲性、耐薬品性については、延伸工程後の加熱工程があるとさらに高くなる。これらのことから、本発明により、光サングラスを着用して見た場合の液晶表示装置の表示品位を良好にでき、且つ、耐薬品性及び耐折り曲げ性に優れる光学積層体を実現できることが確認された。