特許第6900632号(P6900632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6900632ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900632
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   C08G63/183
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-47126(P2016-47126)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-160359(P2017-160359A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】松園 真一郎
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−166441(JP,A)
【文献】 特開2004−323837(JP,A)
【文献】 特開2015−174998(JP,A)
【文献】 特開2004−277719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールとを含むジオール成分を含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、
下記(1)から()を満足することを特徴とするポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
(1)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が650〜2000である
(2)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対してポリテトラメチレングリコールの含有量が8〜35質量%である
(3)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中に含まれる環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量が2500質量ppm以下である(ただし、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量は、環状2量体と環状3量体の合計量である。)
(4)ジオール成分中の1,4−ブタンジオールに由来する構成単位及びポリテトラメチレングリコールに由来する構成単位が70モル%以上である
【請求項2】
MVRが50cm/10分以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項3】
チタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含む、請求項1又は2に記載のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性であるPBT(以下、PBTと表すことがある)をハードセグメントとして、ソフトセグメントであるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと表すことがある)を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、その優れた機械的性質と化学的性質から、工業的に重要な位置を占めている。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート(PBT)などの芳香族ポリエステル樹脂は、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂で、成形加工の容易さと経済性から、繊維、フィルム、シート、ボトル、電気電子部品、自動車部品、精密機器部品などの押出成形用途、射出成型用途等の分野で広く使用されている。しかし、近年、ポリエステルの基本特性をそのままに、柔軟性や低温特性、そして耐衝撃性といった新たな機能を付与したポリエステルが求められるとともに、さらにはそのようなポリエステルを効率的に製造することが望まれている。
【0003】
PBTにおいては、その物性改良のため、これまで数多くの共重合の検討がなされてきたが、実用化に至るケースは極めて限定的であった。共重合成分がPBT鎖中にランダム的に組み込まれやすく、PBTの融点降下や結晶化速度の低下を引き起こし、PBTの耐熱性、成形性等の長所を打ち消す方向に作用するためである。
共重合成分がPBT鎖に長鎖ブロック的に組み込まれた場合、導入した重量に対応する融点降下が小さいため、PBTの耐熱性を低下させずに物性改質を行うことができる。その代表的な共重合成分例として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を用いることは公知である(特許文献1;実施例)。
【0004】
結晶性であるPBTをハードセグメントとして、ソフトセグメントであるPTMGを共重合することで、PBTに柔軟性を付与することができ、現在ではフィルム分野などで広く使用されている。特許文献2には、PTMGの含有量が10重量%であるPTMG共重合体を積層フィルムの一層として使用した例が記載され、衛生性が良好であることも記載されている(特許文献2; 段落0037など)。
【0005】
しかしながら、特許文献2は、最外層の微細粒状滑材の含有量や滑材と層の厚さの比を特定の範囲とし、インフレーション法により製造された熱可塑性樹脂積層フィルムに関するもので、そのようなフィルムであることによって、該フィルムで作成された包装袋にエタノールと水の混合液を特定条件で長期間保持した場合の滑材の溶出や脱落が少ない、即ち、衛生性に優れるというものであって、低分子量成分の溶出に着目したものではなく、また該文献が出願された当時の技術常識からは、比較的オリゴマー成分等の低分子量成分が多いものと考えられる。
【0006】
一方、特許文献3には、ポリブチレンテレフタレートが熱分解反応を起こした結果生じるブチレンテレフタレートオリゴマー量を低減させる例が記載されている(請求項1など)。しかしながら、該文献は、ポリブチレンテレフタレートに関するもので、PTMGとの共重合体ではなく、また、ブチレンテレフタレートオリゴマー量を低減することで、光ファイバーとした時の耐加水分解性を改善するものであって、低分子量成分の溶出に着目したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭49−31795号公報
【特許文献2】特開2007−307708号公報
【特許文献3】特開2000−111768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、結晶性であるPBTをハードセグメントとして、ソフトセグメントであるPTMGを共重合することで、PBTに柔軟性を付与した共重合体について、柔軟性や低温特性、そして耐衝撃性が良好であるとともに、低分子量成分の溶媒、水等への溶出が少なく、結果、衛生性や保香性に優れることにより、食品包装、医療用包装袋等に用いられるのに好適な共重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題について検討した結果、熱湯、溶媒などへの溶出物の主成分が環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーであることを初めて見出し、本発明に到達した。即ち本発明の要旨は以下である。
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールを含むジオール成分とを含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、
下記(1)から(3)を満足することを特徴とするポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
(1)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメ
チレングリコールの数平均分子量が650〜2000である
(2)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対してポリテ
トラメチレングリコールの含有量が8〜35質量%である
(3)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中に含まれる環
状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量が2500質量ppm以下である(ただし、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量は、環状2量体と環状3量体の合計量である。)
(2)MVRが50cm/10分以下であることを特徴とする、上記(1)に記載のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
(3)チタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含む、上記(1)又は(2)に記載のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリテトラメチレン共重合ポリブチレンテレフタレート(以下、PTMG共重合PBTと略することがある)体は、柔軟性や低温特性、そして耐衝撃性が大幅に改善されるとともに、低分子量成分の溶媒、水等への溶出が少ないことから、衛生性や保香性に優れるため、食品包装、医療用包装袋等に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書における、下限値又は上限値は、その下限値又は上限値の値を含む範囲を意味する。また、本明細書において「主成分とする」とは、当該成分の70モル%以上を占めることを意味する。例えば、「テレフタル酸を主成分として含むジカルボン酸成分」とは、ポリエステルを構成する全酸成分の70モル%以上がテレフタル酸成分であることを意味する。本明細書においてエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行う工程をエステル化反応工程と称する。
【0012】
本発明のPTMG共重合PBTは、PTMGを含まないPBTと混合した組成物であってもよい。
[1]PTMG共重合PBTの原料
本発明におけるPTMG共重合PBTは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸類と、1,4−ブタンジオール(以下1,4−BGと表わすことがある)及びPTMGを含むジオール類、更に必要に応じて用いられるその他成分とをエステル化反応及び/又はエステル交換反応させた後、重縮合反応、及び好ましくは固相重縮合反応することにより得られる。エステル化反応及び/又はエステル交換反応、重縮合反応においては反応触媒を使用することができる。
【0013】
<ジカルボン酸成分>
本発明において、ジカルボン酸成分とは、後述のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はその他成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応により形成される、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する構成単位である。本発明における、ジカルボン酸類としては、テレフタル酸及び下記に記載するジカルボン酸並びにそれらのエステル形成性誘導体があげられるが、得られるポリエステルの機械的強度、耐熱性、保香性等の観点からテレフタル酸を主成分とすることが好ましい。本発明に用いるジカルボン酸類は、石化法及び/又はバイオマス資源由来の発酵工程を有する製法によって製造されたジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体である。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としてはジカルボン酸の低級アルコールエステルの他、酸無水物や酸塩化物等のエステル形成性誘導体が好ましい。ここで、低級アルコールとは、通常、炭素数1〜4の直鎖式もしくは分岐鎖式のアルコールのことを指す。
【0014】
(テレフタル酸成分)
本発明において、全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分の含有量は、80モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのが更に好ましい。該テレフタル酸成分の割合が上記下限値以上であると、電気部品等に成形する際の結晶化しやすい点やフィルム、繊維などに成形する際の延伸による分子鎖の配向結晶化の点から、成形体としての機械的強度、耐熱性、保香性等が良好になりやすい。
【0015】
(テレフタル酸以外のジカルボン酸類)
本発明で用いるジカルボン酸類には、テレフタル酸以外のジカルボン酸類が含まれていてもよい。
本発明で用いるテレフタル酸以外のジカルボン酸類としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族鎖式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が挙げられる。また、前記エステル形成性誘導体としては、例えば無水コハク酸、無水アジピン酸等の無水物もしくは低級アルコールエステルが好ましい。
【0016】
中でも得られるポリエステルの物性の面から、その他のジカルボン酸としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。これらのジカルボン
酸は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0017】
<ジオール成分>
本発明において、ジオール成分とは、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はその他成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応により形成される、ジオールに由来する構成単位である。
本発明におけるジオール類は、1,4−BG及びPTMGを含み、本発明におけるジオール成分は1,4−BGに由来する構成単位及びPTMGに由来する構成単位が全体として主成分を構成する、即ち、70モル%以上であるのが好ましく、80モル%以上が更に好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
【0018】
尚、1,4−BGに由来する構成単位及びPTMGに由来する構成単位の合計に対するPTMGに由来する構成単位の割合は、通常、0.5モル%以上、好ましくは、1.0モル%以上であり、一方、20モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。この範囲であることにより、柔軟性と衝撃強度のバランスがよい共重合PBTが得られる。
本発明において1,4−BG及びPTMG以外のジオール類としては以下があげられる。
【0019】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの直鎖式脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シ
クロヘキサンジメチロールなどの環式脂肪族ジオール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4
−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール;イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、エリトリタンなどの植物原料由来のジオール等を挙げることができる。尚、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4-ブタンジオールなどもバイ
オマス資源由来のものを使用することができる。これらの中で得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサン
ジメチロールが好ましい。これらのジオール成分は単独でも二種以上の混合物としても使用することができる。
【0020】
(PTMG共重合量)
本発明のPTMG共重合PBTに於いて、PTMG成分の共重合量の下限は8質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは15質量%、上限は35質量%、好ましくは30質量%、より好ましくは25質量%である。
なお、ここでPTMGの共重合量(含有量)とはPTMG共重合PBT中のジオール成分としてのPTMG単位の割合、即ちPTMGからエステル結合生成による水分子分を控除した成分の量のPTMG共重合PBTに対する割合を質量%で表したものである。PTMGの共重合の割合がこの範囲であることにより、柔軟性と衝撃強度のバランスがよい共重合PBTが得られる。尚、PTMG共重合量は共重合PBT製造時のPTMGの仕込み量で制御できる。
【0021】
(PTMG分子量)
本発明においてPTMGの数平均分子量は650〜2000であるが、好ましくは800以上であり、一方、好ましくは1500以下である。分子量がこの範囲であると共重合体製造時の反応性が良好であり、共重合による融点降下の程度が小さく、機械物性などが良好な共重合PBTが得られる。PTMGの分子量はPTMG製造時の反応温度、反応時間、触媒量などにより制御される。
【0022】
<その他の共重合可能な成分>
本発明のPTMG共重合PBTは、上記ジオール成分及びジカルボン酸成分に加えて、更に、その他の共重合可能な化合物に由来する構成単位(成分)を含んでもよい。本発明でポリエステルの原料として使用可能なその他の共重合可能な化合物としては、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸;ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能カルボン酸;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸等の三官能以上の多官能カルボン酸;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能アルコール等が挙げられる。これらのその他の共重合可能な成分は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0023】
<触媒及び添加剤>
(エステル化反応又はエステル交換反応触媒)
本発明において、PTMG共重合PBTを製造する際に用いられるエステル化反応又はエステル交換反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物や、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等の周期表第2族金属の化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等が挙げられる。本発明における、周期表第2族金属とは、Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005の長周期型周期表の第2族元素である。中でも、チタン原子及び周期表第2族金属化合物が好ましく、特に、チタン化合物、スズ化合物が好ましく、テトラブチルチタネートが特に好ましい。これらの触媒は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0024】
本発明においては、PTMG共重合PBTに含まれる該反応触媒由来の金属濃度が下記の範囲内となるように触媒を添加するのが好ましい。
エステル化反応の場合、該金属濃度の下限値は、通常1質量ppm以上、好ましくは5質量ppm以上、更に好ましくは10質量ppm以上、特に好ましくは20質量ppm以上、最も好ましくは30質量ppm以上である。一方、該金属濃度の上限値は、通常300質量ppm以下、好ましくは200質量ppm以下、より好ましくは150質量ppm以下、更に好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは90質量ppm以下、最も好ましくは60質量ppm以下である。該金属濃度が上記上限値以下であると、異物の原因になりにくい上、得られるPTMG共重合PBTの熱滞留時の劣化反応やガス発生が起こりにくい傾向があり、上記下限値以上であると、副反応が起こりにくい傾向がある。
【0025】
エステル交換反応の場合、該金属濃度の下限値は、通常1質量ppm以上、好ましくは5質量ppm以上、更に好ましくは10質量ppm以上、特に好ましくは20質量ppm以上、最も好ましくは25質量ppm以上である。一方、該金属濃度の上限値は、通常3
00質量ppm以下、好ましくは250質量ppm以下、より好ましくは225質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、特に好ましくは175質量ppm以下、最も好ましくは150質量ppm以下である。
【0026】
(重縮合反応触媒)
本発明においてPTMG共重合PBTを製造する際に用いられる重縮合反応触媒としては、エステル化反応又はエステル交換反応の触媒をそのまま重縮合反応触媒として用いても良いし、前記触媒を更に添加しても良い。重縮合反応触媒は、特には限定されないが、得られるPTMG共重合PBTに含まれる重縮合反応触媒由来の金属濃度が下記の範囲内となるように添加されるのが好ましい。
【0027】
エステル化反応についで重縮合する場合、上記のエステル化反応の触媒と同様の理由から、該金属濃度の下限値は、通常0.5質量ppm以上、好ましくは1質量ppm以上、更に好ましくは3質量ppm以上、特に好ましくは5質量ppm以上、最も好ましくは10質量ppm以上である。該金属濃度の上限値は、通常300質量ppm以下、好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下、最も好ましくは30質量ppm以下である。
【0028】
エステル交換反応についで重縮合する場合、上記のエステル交換反応の触媒と同様の理由から、該金属濃度の下限値は、通常5質量ppm以上、好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは15質量ppm以上、特に好ましくは20質量ppm以上、最も好ましくは30質量ppm以上である。該金属濃度の上限値は、通常300質量ppm以下、好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは150質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下、最も好ましくは50質量ppm以下である。
【0029】
また、エステル化反応触媒としてチタン化合物を用いる場合には、異物抑制の観点から、最終的には得られるPTMG共重合PBTに含まれるチタンの金属濃度は、250質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることが更に好ましく、60質量ppm以下であることが特に好ましく、50質量ppm以下であることが最も好ましい。
PTMG共重合PBT中の金属濃度(質量)は、湿式灰化等の方法でPTMG共重合PBTに含まれる金属を回収した後、原子発光、Induced Coupled Plasma(ICP)法等を用いて測定することができる。
【0030】
(反応助剤)
後述のエステル化反応、エステル交換反応及び重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸及びそれらのエステルや金属塩等の燐化合物;酢酸ナトリウムや安息香酸ナトリウム等のナトリウム化合物、酢酸リチウム、酢酸カリウム等のカリウム化合物等の周期表第1A族の金属元素の化合物;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の周期表第2A族の金属元素の化合物などを反応助剤として添加することができる。
【0031】
(その他の添加剤)
また、後述のエステル化反応、エステル交換反応及び重縮合反応において、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール化合物;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤;パラフィンワックス、マイクロクリスタリン
ワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル;シリコーンオイル等の離型剤等を使用することもできる。
【0032】
[2]PTMG共重合PBTの製造方法
本発明のPTMG共重合PBTは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸類と、1、4−BGを主たる成分としPTMGを含有するジオール類とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行うエステル化工程、及びエステル化工程により得られたオリゴマーを重縮合反応する重縮合反応、及び好ましくは固相重縮合を行う重縮合工程を経てポリエステルを得る方法で行う。
【0033】
ジカルボン酸類とジオール類の使用割合は、通常、前者の1モルに対して、後者を1.1〜3.0であることが好ましく、さらには1.1〜2.0が好ましい。この値が少なすぎると、エステル化反応が遅くなる傾向があり、多すぎると1,4−BG分解によるテトラヒドロフランの生成が増える傾向がある。また、その他の成分を共重合させる場合のその使用量は、ジカルボン酸類の1モルに対して、通常、0.5モル以下、好ましくは0.3モル以下である。
【0034】
本発明では、上記反応の際、得られるPTMG共重合PBTが以下の物性(1)〜(3)を満足するような条件で製造することが重要である。
(1)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が650〜2000である
(2)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対してポリテトラメチレングリコールの含有量が8〜35質量%である
(3)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中に含まれる環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量が2500質量ppm以下である(ただし環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量は、環状2量体と環状3量体の合計量である。)
【0035】
具体的には、(1)の制御については、通常、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメチレングリコールの分子量は、原料として用いるポリテトラメチレングリコールの分子量がそのまま維持されるため、原料として用いるポリテトラメチレングリコールとして、上記本願発明の範囲を満足するものを選択することにより、行われる。また、(2)の制御は、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートの製造において、PTMG添加量を調整することによって行い、(3)については、固相重縮合、薄膜溶融重縮合、助剤(ジ亜リン酸Na)の添加などの方法が挙げられるが、中も、固相重縮合を比較的長時間行うことにより行われる。
【0036】
本発明のPTMG共重合PBTは、ジオール成分の一部としてPTMGを用いる以外は公知のPBTの製造方法、即ち、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸類と、1、4BGを主たる成分としPTMGを含有するジオール類とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行うエステル化工程、及びエステル化工程により得られたオリゴマーを重縮合反応する重縮合反応、更に、好ましくは、固相重縮合を行う重縮合工程を経てポリエステルを得る方法に準じて行うことが出来、 上記
以外の操作は一般的なポリエステルの製造条件を採用することができる。すなわち、PTMG共重合PBTの製造方法としては、主原料としてテレフタル酸を用いてエステル化反応を行ういわゆる直接重合法と、主原料としてテレフタル酸ジアルキルエステルを用いてエステル交換反応を行うエステル交換法とに大別されるが、特に制限されるものではない。
【0037】
上記のエステル化工程の反応条件は、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を進
行させることができる限り任意であり、反応温度は120℃以上、好ましくは150℃以上、一方、245℃以下、好ましくは230℃以下である。また、反応時間は2〜8時間、好ましくは2〜6時間、更に好ましくは2〜4時間である。
エステル化工程により、1、4BGを主たる成分とするジオール類と、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸類が反応したオリゴマーが生成する。そして、後述する重縮合工程においては、このオリゴマーの重縮合反応を行なう。
【0038】
重縮合反応は、通常溶融重縮合反応で行う。溶融重縮合反応における条件は、重縮合反応を進行させることができる限り任意である。重縮合反応時における反応温度は好ましくは250℃以下、更に好ましくは245℃以下、一方230℃以上が好ましく、更に好ましくは235℃以上である。反応温度が上限値以下であると、製造時の熱分解反応を抑制し、色調が良化する傾向にある。反応温度が下限値以上であると効率的に重縮合反応を進行させやすい。
【0039】
重縮合反応時の反応槽内圧力は低いほど反応は進みやすいが、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下の状態をとることが好ましい。重縮合反応に要する時間は、得られるPBTの溶融粘度や固有粘度を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常2〜12時間、好ましくは2〜10時間である。重縮合反応を連続式で行う場合、重縮合反応槽での平均滞留時間を重縮合反応に要する時間とみなす。
【0040】
本発明において、PTMGの反応系への添加時期は、エステル化反応時、及び/又は、エステル交換反応開始以降、重縮合反応終了までの間である。この間に添加することにより共重合成分としてのブロック性が保持しやすく、融点低下の少ないPTMG共重合PBTが得られる。好ましくは添加時期としてはエステル化反応時、及び/又は、エステル交換終了後から、重縮合反応開始前迄の間が、添加操作上及びブロック性確保上好ましい。
【0041】
重縮合反応終了後反応槽からストランド状に抜き出し水冷下又は水冷後カッティングしてペレットとする。ペレットは必要に応じて固相重縮合して更に高重合度化したり、ペレット中に含まれる環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー(以下環状オリゴマーと称することがある)、THFなどの夾雑物を低減することができるので、本発明において固相重縮合は好ましく採用される。
【0042】
固相重縮反応は窒素などの不活性ガス雰囲気下減圧にて、又は不活性ガス流通下行われる。反応温度は180℃以上、好ましくは190℃以上、一方、210℃以下、好ましくは200℃以下である。また、反応時間は所望のMVR、所望の環状オリゴマー、テトラヒドロフランなどの含有量になるまで、比較的長時間行われる。
反応時間は通常5.5〜20時間、好ましくは6〜15時間である。
固相重縮合は回分式または連続式で行うことができる。
【0043】
[3]PTMG共重合PBTの物性
(PTMG共重合PBTのMVR)
本発明のPTMG共重合PBTの250℃におけるMVR(melt volume flow rate 単
位:cm/10分、ISO1133記載の試験法準拠)は、100cm/10分以下が好ましく、より好ましくは50cm/10分以下、更に好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。下限はフィルム成形が可能ならばよろしいが通常5cm/10分である。MVRがこの範囲であることにより成形性良好で成形品にしたときの物性が良好な共重合PBTが得られる。
【0044】
(PTMG共重合PBTの末端カルボキシル基量)
本発明のPTMG共重合PBTの末端カルボキシル基量(AV:当量/トン)は好ましくは3〜50当量/トンでありより好ましくは3〜35当量/トン、更に好ましくは5〜20である。末端カルボキシル基量がこの範囲であると耐熱性、耐加水分解性の良好となる。
【0045】
(PTMG共重合PBTの固有粘度)
本発明のPTMG共重合PBTの固有粘度(IV:dl/g)は0.90〜1.50であり好ましくは1.00〜1.50、更に好ましくは1.20〜1.50である。
固有粘度がこの範囲であることにより成形性良好で成形品にしたときの物性が良好な共重合PBTが得られる。
【0046】
(PTMG共重合PBT中のPTMG成分の分子量)
本発明においてPTMGの数平均分子量は650〜2000であり、好ましくは800〜1500である。分子量がこの範囲であると共重合による融点降下の程度が小さく、機械物性などが良好な共重合PBTが得られる。PTMG共重合PBT中のPTMG成分の分子量分布、分子量の測定法は実施例に詳述する。
【0047】
(環状PBTオリゴマー量)
本発明におけるPTMG共重合PBT中の環状PBTオリゴマー量は2500質量ppm以下であり、好ましくは2000質量ppm以下 更に好ましくは1600ppm以下である。下限は水、溶剤などによる抽出物が少なくなるので低いほどよいが通常500ppmである。
【0048】
本発明における「環状PBTオリゴマー量」とは、二量体及び三量体の合計量であると定義する。環状PBTオリゴマーは二量体から七量体ぐらいまで存在が確認されるが、大部分は二量体及び三量体であり、四量体以上のオリゴマーは実質的に無視できる程度の存在量である。上記環状PBTオリゴマーが上記範囲であるとPTMG共重合PBTをフィルムに成形し或いは積層フィルムに成形したものは、水(熱湯)、溶媒(アルコールなど)などへの抽出物が少なく食品包装、医療用包装袋等に好適に使用できる。
【0049】
共重合PBT中の環状オリゴマーを減少させる方法としては、前述の通り、固相重縮合、薄膜溶融重縮合、助剤(ジ亜リン酸Na)の添加などの方法があるが、中でも、固相重縮合を比較的長時間行うことが望ましい。なお前述した特許文献1(特開昭49−31795公報)は、樹脂の成型性に着目したものであり、フィルムとした時の成分の溶出に着目したものではなく、また、エステル交換及び重縮合反応して得られたポリマーをストランド状に押し出し、カットして得たペレットを乾燥して射出成型しており、固相重合は行われていない。したがって、環状PBTオリゴマー量は多いと考えるのが妥当である。
【0050】
(触媒由来金属成分)
本発明のPTMG共重合PBTは、上述の触媒に由来する金属成分を含有し、好ましくはチタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含有する。その含有量は、上述の触媒の使用量に記載の量に準じる。
【0051】
[4]組成物
本発明のPTMG共重合PBTに、必要に応じて安定剤、充填剤、難燃剤などの各種添加剤やPBTやそれ以外の樹脂を配合してポリエステル組成物とすることができる。又、該樹脂組成物を用いて成形体にすることができる。
【0052】
(配合方法)
前記の種々の添加剤や樹脂の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給することができ、あるいは、順次供給することもできる。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておくこともできる。
【0053】
(成形方法)
本発明のPTMG共重合PBT及びその組成物は、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形、延伸成形、インフレ成形などの成形法によって成形体とすることができる。
【0054】
(用途)
本発明のPTMG共重合PBTは、柔軟性や低温特性、そして耐衝撃性が良好であるとともに、低分子量成分の溶媒、水等への溶出が少なく、結果、衛生性や保香性に優れるため、食品包装、医療用包装袋等用の樹脂として好適である。
【実施例】
【0055】
以下施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
【0056】
<PTMG数平均分子量 SEC(GPC)測定>
PTMG分子量のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定は東ソー株式会社製高速GPC装置HLC-8120 GPCを使用して行った。
試料は移動相液である試薬1級THF(酸化防止剤ジブチルヒドロキシトルエン含有)で溶解し、0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターでろ過したも
のを測定に供した。
数平均分子量(Mn)の計算は、測定データから東ソー株式会社製高速GPC装置Tosoh GPC-8020 modelIIを用いて解析し、ポリスチレン換算値として算出した。
【0057】
SEC条件を以下に示す。
高速GPC装置:HLC-8120 GPC(東ソー株式会社製)
解析ソフト:GPC-8020 modelII(東ソー株式会社製)
検出器:RI(装置内蔵)
移動相:試薬1級THF(酸化防止剤ジブチルヒドロキシトルエン含有)
流速:0.6ml/分
注入:0.1wt%×20μL
カラム:TSKgel SuperHM-L(6.0mm I.D.×15cmL×2) (東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式。
【0058】
<PTMG共重合PBT中のPTMG成分の数平均分子量 SEC測定>
微粉末状に粉砕したPTMG共重合PBT約10gに20質量%の水酸化ナトリウム水溶液50mlを加え、ジムロートコンデンサー付還流装置で溶解するまで加熱還流する。その後、冷却し、過剰の水酸化ナトリウムをテレフタル酸で中和する。その溶液をろ過する。ろ液には共重合体を構成していたPTMGが含まれる。ろ液を上記<PTMG数平均分子量 SEC(GPC)測定>に記載の方法で分析、計算し分子量を算出した。
【0059】
<MVR melt volume flow rate 単位:cm/10分 >
測定前に試料を120℃で8時間真空乾燥した。MVRは立山科学製メルトインデクサ型式L242−4531を使用してISO1133記載の試験法に準拠し、2.16kgの荷重で245℃で測定した。具体的には試料6gを245℃に設定したメルトインデクサーのシリンダーに入れピストンをセットし、245℃に加熱した樹脂に2.16kgの荷重を掛けてオリフィス2.095mmを通過させて、所定の時間に流れ出た樹脂の容量から10分間に流れ出た容量に換算しMVR(cm/10分)を求めた。
【0060】
<PTMG共重合PBT中の環状PBTオリゴマー 含有量 (質量ppm)>
試料0.10gを 精秤量し、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)/クロロ
ホルム=2/3(vol)3mLを加え、室温で溶解後、クロロホルム 20mLを加え、メタノール10mLを攪拌しながら滴下し、ポリマー成分を沈殿させた。3時間静置分離を行った。次いで、上澄み液を2mLを0.45μmPTFEフィルターでろ過した。ろ過液1mLを室温で窒素ブローにて濃縮乾固した後、DMSO(ジメチルスルホキシド) 1mLに再溶解後、測定試料とした。定量用の試料はテレフタル酸ジメチル(DMT)を約5mg採取、精秤した後、DMSOを加えて溶解させ、10mLにメスアップした。その液を、約10倍にDMSOで希釈した溶液を標準試料とした。
【0061】
LC条件は、装置はAcilent1100シリーズを用いて、移動相をA:2%酢酸水、B:アセトニトリルとし、0分(B=20%)→22分(B=100%)→35分(B=100%)のグラジエント条件とした。流速は1.0mL/分、カラム温度は40℃、UV検出波長は254nmである。カラムは三菱化学社製「MCI−GEL ODS−1LU」を用いて定量した。
【0062】
<末端カルボキシル基濃度 (AV:当量/トン)>
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間、乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
【0063】
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/w
(ここで、aは、滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、bは、無試料で滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、wはポリエステル樹脂の試料の量(g)、fは、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
【0064】
<固有粘度(IV:dL/g)>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合液を溶媒として使用し、30℃において、濃度1.0g/dLの試料溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式より求めた。
【0065】
IV=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC)
(但し、ηSP=η/η0−1であり、ηは試料溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
【0066】
<曲げ弾性率 MPa >
ぺレットを120℃で8時間空気乾燥機にて乾燥し、日精樹脂工業製FE80S12ASEを用いて以下の条件で下記の機械物性測定に使用する成形片を射出成型した。
成形温度:250℃(シリンダー設定)
金型温度:80℃(表面温度)
射出速度:200mm±100mm/s(射出時間約2秒)
保圧時間:20秒
冷却時間:10秒
【0067】
得られた試験片について 株式会社東洋精機製作所製 曲げ試験機:製品名:ベンドグ
ラフII 型式:B を用いて使用してJIS K7171の方法で曲げ試験を実施し、曲げ弾性率を測定した。
ベンドグラフII、ロードセル2kN
試験速度=2mm/min
試験片:80×10×4mm
支点間距離:64mm
圧子=5R、支持台=5R
弾性率算出:P1=0.05%, P2=0.25%
【0068】
<溶出量 mg>
ペレット20gに水100mLを充填し、温度120 ℃ にて1時間加熱処理した。その後、溶出液を蒸発乾固し、蒸発残留物を精秤した( 単位: m g ) 。溶出量が少な
いほど衛生性が優れていることを意味し、1 . 0 m g 未満であると衛生性に優れて
いると判定できる。
[実施例1]
【0069】
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル交換反応槽に、ジメチルテレフタレートを80.0質量部、1,4−BGを44.2質量部、数平均分子量1000のPTMGを10.2質量部、触媒としてテトラブチルチタネートを金属チタン換算で、生成するポリマー(PTMG共重合PBT)に対して33質量ppmとなるように1,4−BG溶液として添加した。ついで槽内液温を150℃に60分保持した後90分かけて210度まで昇温し210℃で30分保持した。この間、生成するメタノールを留出させつつ、トータル180分エステル交換反応を行った。
【0070】
エステル交換反応終了の15分前に、酢酸マグネシウム・四水塩をマグネシウム金属として生成するポリマーに対して48質量ppmとなるように、1,4−BGに溶解して添加し、さらに生成するポリマーに対して0.15質量部となる、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔チバ・ガイギー(株)製,Irganox1010:テトラキス〔メチレン−3(3,
5−ジ第3ブチル−4−ヒドロオキシ−フェニル)プロピオネート〕メタンを1,4−BGのスラリー状態で加え、引き続き、テトラブチルチタネートを生成するポリマーに対してチタン金属として25質量ppmとなる量を1,4−BGの溶液として添加した後、攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた重縮合反応槽に移送し減圧を付加して、重縮合反応を行った。
【0071】
重縮合反応は槽内圧力を常圧から0.4KPaまで85分かけて徐々に減圧し、0.4KPa以下で継続した。反応温度は減圧開始から15分間210℃に保持し、以後、240℃まで45分間で昇温してこの温度で保持した。所定の撹拌トルク(250℃でのMVRが57cm/10分に相当)に到達した時点で反応を終了した。重縮合反応に要した時間は180分であった(重縮合反応時間は減圧開始から窒素で復圧までの時間とした)。次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いでポリマー抜出しのため加圧状態にした。
抜出しの際の口金の熱媒温度を235℃としてポリマーを口金からストランド状にして押出し、次いで冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングし、ペレット化した。得られたポリブチレンテレフタレート共重合体組成物の固有粘度は、0.85であり、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメチレングリコールの数平均分子量は1000であった。次に、該ポリブチレンテレフタレート共重合体組成物ペレットを、195℃、減圧下(0.133Kpa以下)で固相重縮合を8時間行って、固有粘度1.22、MVR18cm/10分、環状PBTオリゴマー1700質量ppm、溶出量0.8mg、曲げ弾性率760MPaのポリブチレンテレフタレート共重合体組成物を得た。
結果を表−1に示す。
[実施例2]
【0072】
実施例1において、固相重縮合時間を14時間に変更した以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表−1に示す。
[実施例3]
【0073】
実施例1においてジメチルテレフタレートを71.8質量部、1,4−BGを39.3質量部、数平均分子量1000のPTMGを20.2質量部に変更した以外は実施例1と
同様に行った。結果を表−1に示す。
[実施例4]
【0074】
実施例1において、ジメチルテレフタレートを63.6質量部、1,4−BGを34.6質量部、数平均分子量1000のPTMGを30.2質量部に変更した以外は実施例1
と同様に行った。結果を表−1に示す。
[比較例1]
【0075】
実施例1において、固相重縮合時間を5時間に変更した以外は実施例1と同様に行った
。結果を表−1に示す。
[比較例2]
【0076】
実施例1において固相重縮合を無しに変更した以外は実施例1と同様に行った。
結果を表−1に示す。
[比較例3]
【0077】
実施例1においてジメチルテレフタレートを88.2質量部、1,4−BGを49.1質量部、PTMGを無しとし、固相重縮合を無しに変更した以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表−1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
上記実施例及び比較例から明らかなように、PTMGを共重合成分として含有する比較例1及び2のPTMG共重合PBTは、柔軟性が良好であるものの、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーの量が多く、結果、水中での加熱処理による溶出物が多い。また、PTMGを共重合成分として含有しない比較例2のPBTは曲げ弾性率が大きく柔軟性に劣ると共に、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーの量が多く、結果、水中での加熱処理による溶出物が多い。従って、比較例1〜3のPTMG共重合PBTやPBTは、衛生性や保香性に劣り、食品包装、医療用包装袋等に不適である、
これに対して実施例のPTMG共重合PBTは、柔軟性が良好であると共に、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴ マーの量が少なく、結果、水中での加熱処理による溶出物が少ないことから、衛生性や保香性に優れるため、食品包装、医療用包装袋等に好適である。