(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の電極を有する第一の回路部材と、前記第一の電極に対応する第二の電極を有する第二の回路部材との間に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の異方導電フィルムを前記第一の接着剤層側が前記第二の回路部材側に向かうように介在させ、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを熱圧着するステップを有する、接続構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る異方導電フィルム、接続構造体及び接続構造体の製造方法の好適な実施形態について詳細を説明する。
【0028】
[異方導電フィルムの構成]
本実施形態に係る異方導電フィルムは、第一の接着剤層と、フィルムであってフィルムの厚み方向に延びる貫通孔を有する絶縁性フィルムと、第二の接着剤層と、をこの順に備え、上記貫通孔内に配されている導電粒子を有する。この異方導電フィルムは、フィルムであってフィルムの厚み方向に延びる貫通孔を有する絶縁性フィルム及び貫通孔内に配されている導電粒子を含み、この絶縁性フィルム及び導電粒子と、異方導電フィルムの両主面との間に接着剤が含まれる領域を有するものであってもよい。以下で説明する異方導電フィルムの一実施形態における第一の接着剤層及び第二の接着剤層の条件は、上記の接着剤が含まれる2つの領域の条件とすることができ、第一の接着剤層及び第二の接着剤層の厚みの条件は、異方導電フィルムの主面と、絶縁性フィルム又は導電粒子との最短距離として読み替えることができる。
【0029】
図1は、本発明に係る異方導電フィルムの一実施形態を示す模式的断面図である。
図1に示す異方導電フィルム10は、剥離フィルム12上に設けられた異方導電フィルムを示すものであり、本実施形態に係る異方導電フィルムは積層体11から構成されている。積層体11は、第一の接着剤層22と、フィルムであってフィルムの厚み方向に延びる貫通孔21を有する絶縁性フィルム20と、第二の接着剤層23と、がこの順に積層されてなり、貫通孔21内に配されている導電粒子Pを含む。積層体11は、絶縁性フィルム20の厚み方向と垂直な面で切断したときの断面に導電粒子Pが含まれていない領域13,15と、導電粒子Pが含まれている領域14とを有している。
【0030】
貫通孔21内には導電粒子Pが充填されており、導電粒子Pと、絶縁性フィルム20の貫通孔21を囲む壁面との間には接着剤が充填されていてもよい。本実施形態においては、第二の接着剤層23を構成する接着剤が貫通孔21に充填されている。
【0031】
図1に示される積層体11は、全ての貫通孔21に導電粒子Pが充填されているが、導電粒子Pが充填されていない貫通孔21を有していてもよい。導電粒子Pが充填されていない貫通孔21には、第二の接着剤層23を構成する接着剤が充填されていてもよい。
【0032】
剥離フィルム12は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等によって形成されている。剥離フィルム12には、任意の充填剤を含有させてもよい。また、剥離フィルム12の表面には、離型処理又はプラズマ処理等が施されていてもよい。
【0033】
第一の接着剤層22及び第二の接着剤層23は、接着剤成分及びフィルム形成剤を含有することができる。
【0034】
接着剤成分としては、モノマー(主剤)及び硬化剤が挙げられる。モノマーは、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物又はラジカル重合性化合物を用いることができる。カチオン重合性化合物又はアニオン重合性化合物としては、エポキシ系化合物が挙げられる。
【0035】
エポキシ系化合物としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD等のビスフェノール化合物とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック又はクレゾールノボラック等のノボラック樹脂とから誘導されるエポキシノボラック樹脂、並びに、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などを用いることができる。エポキシ系化合物はオリゴマーであってもよい。
【0036】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、(メタ)アクリレート等のアクリル系化合物、マレイミド化合物、スチレン誘導体などが挙げられる。ラジカル重合性化合物はモノマー又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。すなわち、本明細書においてモノマーとはオリゴマーも包含する。
【0037】
モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
エポキシ系化合物を用いる場合は、硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド、酸無水物等が挙げられる。これらの硬化剤は、ポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化されていることが、可使時間が延長される点で好適である。
【0039】
エポキシ系化合物と併用される硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性の点から、エポキシ系化合物及び硬化剤が含まれる組成物としたときに、そのゲルタイムが所定の温度で10秒以内となることが好ましく、保存安定性の点から、40℃で10日間恒温槽に保管後の組成物とのゲルタイムに差がないことが好ましい。このような点から、硬化剤はスルホニウム塩であることが好ましい。
【0040】
アクリル系化合物を用いる場合は、硬化剤として、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものが挙げられる。
【0041】
アクリル系化合物と併用される硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましい。
【0042】
硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第一の接着剤層22及び第二の接着剤層23には、分解促進剤、抑制剤等を更に含有させてもよい。
【0043】
硬化剤の配合量は、エポキシ系化合物及びアクリル系化合物のいずれのモノマーを用いた場合においても、接続時間を10秒以下としたときに充分な反応率を得る観点から、モノマーと後述のフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下とすることが好ましく、1質量部以上35質量部以下とすることがより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部以上であると、充分な反応率を得ることができ、良好な接着強度及び小さな接続抵抗が得られやすくなり、40質量部以下であると、接着剤層の流動性が低下して接続抵抗が上昇することを防止しやすくなり、また、異方導電フィルムの保存安定性を確保しやすくなる。
【0044】
フィルム形成材としては、上記のモノマー及び硬化剤が含まれる粘度の低い組成物の取り扱いを容易にする作用を有するポリマーであることが好ましい。フィルム形成材を用いることによって、フィルムが容易に裂けたり、割れたり、べたついたりすることを抑制でき、取り扱いが容易な異方導電フィルムを得ることができる。
【0045】
フィルム形成材としては、熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。これらのポリマー中には、シロキサン結合又はフッ素置換基が含まれていてもよい。上記の樹脂の中でも、接着強度、相溶性、耐熱性、及び機械強度の観点から、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
上記の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂は、分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また、接着剤層の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000以上150000以下であることが好ましく、10000以上80000以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると良好なフィルム形成性が得られやすく、150000以下であると他の成分との良好な相溶性が得られやすくなる。
【0048】
なお、本発明において、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC−8020
検出器:東ソー株式会社製 RI−8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm
2)
流量:1.00mL/min
【0049】
フィルム形成材の配合量は、モノマー、硬化剤及びフィルム形成材の総量を基準として5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。フィルム形成材の配合量を5質量%以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすくなり、80質量%以下とすることで接着剤層が良好な流動性を示す傾向にある。
【0050】
また、第一の接着剤層22及び第二の接着剤層23には、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。接着剤層が充填剤を含有する場合、接続信頼性の向上が更に期待できる。
【0051】
絶縁性フィルム20は、例えば、モノマー(主剤)及び硬化剤が含まれる組成物を硬化させてなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等のポリマーを含むフィルムなどが挙げられる。
【0052】
貫通孔の形成が容易である点で、モノマー及び硬化剤が含まれる組成物を硬化させてなるフィルムが好適に用いられる。
【0053】
モノマーとしては、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0054】
カチオン重合性化合物又はアニオン重合性化合物としては、エポキシ系化合物が挙げられる。エポキシ系化合物としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD等のビスフェノール化合物とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック又はクレゾールノボラック等のノボラック樹脂とから誘導されるエポキシノボラック樹脂、並びに、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などを用いることができる。エポキシ系化合物はオリゴマーであってもよい。
【0055】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、(メタ)アクリレート等のアクリル系化合物、マレイミド化合物、スチレン誘導体などが挙げられる。ラジカル重合性化合物はオリゴマーであってもよい。
【0056】
モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
カチオン重合性化合物又はアニオン重合性化合物としてエポキシ系化合物を用いる場合は、硬化剤として、紫外線の照射によって酸が発生する光酸発生剤、紫外線の照射によって塩基が発生する光塩基発生剤等が挙げられる。一方、ラジカル重合性化合物を用いる場合は、硬化剤として、紫外線の照射によって遊離ラジカルが発生する光ラジカル発生剤が挙げられる。
【0058】
いずれの硬化剤を用いる場合も、フィルム形成温度、乾燥時間、保存安定性により、硬化剤の種類と配合量が適宜選定される。反応性の点からは、25℃において波長365nmの紫外線によって照射量2000mJ/mm
2以下で硬化が完了することが好ましい。また、貫通孔を形成する点からも、25℃において波長365nmの紫外線によって照射量2000mJ/mm
2以下で硬化が完了するように、硬化剤の種類と配合量を選択することが好ましい。
【0059】
絶縁性フィルム20は、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、離型剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。離型剤を含有する場合、導電粒子の充填性及び後述する貫通孔の形成が良好となる傾向にある。
【0060】
絶縁性フィルム20は、接続構造体の製造時の加熱、加圧によっても形状が変化しにくいことが好ましい。また、絶縁性フィルム20は、接続構造体の製造時に破断しにくいことが好ましい。このような観点から、絶縁性フィルム20は、150℃における弾性率が1MPa以上であることが好ましく、変形を防止する点で、10MPa以上であることがより好ましい。
【0061】
上記の150℃における弾性率は、貫通孔が設けられていない厚み100μmの絶縁性フィルムを作製し、動的粘弾性装置(例えば、TAインスツルメントジャパン(株)RSA−3)を用いて、引張りモードにて昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で測定した値をいう。
【0062】
絶縁性フィルム20は、1mm
2あたりの貫通孔数が5000個以上30000個以下であることが好ましく、6000個以上29000個以下であることがより好ましく、8000個以上25000個以下であることが更に好ましい。このような絶縁性フィルム20を有する異方導電フィルムは、上記の貫通孔数に対応した密度で導電粒子を含有することができ、対向する電極間の接続信頼性の確保と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより好適に両立することができる。
【0063】
絶縁性フィルム20の厚みは、第一の電極と第二の電極の接続時の低抵抗化の観点から、導電粒子径の1.0倍以下が好ましく、導電粒子径の1.0倍未満であることがより好ましい。
【0064】
導電粒子Pとしては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、ハンダ等の金属粒子、カーボン粒子、ガラス、セラミック、プラスチック等の非導電性粒子を金属等の導電物質で被覆した導電被覆粒子などが挙げられる。非導電性粒子を被覆する金属としては、金、銀、ニッケル、銅、ハンダ等が挙げられ、多層構造を有していてもよい。
【0065】
保存安定性の観点から、導電粒子は、金、銀等の白金族の貴金属類を含む表層を有していることが好ましく、金を含む表層を有していることがより好ましい。貴金属類を含む表層はニッケルの表面上に設けられていてもよい。
【0066】
金属粒子のうちのはんだ等の熱溶融金属粒子、及びプラスチック等を金属等の導電物質で被覆した導電被覆粒子は、加熱加圧によって導電粒子が容易に変形するため、接続時の電極との接触面積が増加するとともに、回路部材側の厚みのばらつきを吸収することができ、接続信頼性を一層向上させることができる。
【0067】
導電粒子Pは表面に突起が設けられていてもよい。この場合、接続抵抗を低下させることが容易となる。
【0068】
導電粒子Pの平均粒径は2.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。導電粒子の平均粒径が2.5μm以上であると、圧着時の導電粒子の視認性が向上し、対向回路間に捕捉された導電粒子の状態を確認しやすくなる。導電粒子の平均粒径が6.0μm以下であると、隣り合う回路電極の間隔が15μm以下の高精細回路を有する回路部材を接続する場合であっても、良好な絶縁特性を得ることが容易となる。
【0069】
対向する電極間の接続抵抗を小さくする観点からは、導電粒子の平均粒径が2.7μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。一方、隣り合う回路電極間での絶縁性を確保する観点からは、導電粒子の平均粒径が5.5μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0070】
導電粒子の平均粒径は、任意の導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、それらの平均値を取ることにより得られる。なお、導電粒子が突起を有するなどの球形ではない場合、導電粒子の粒径は、SEMの画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0071】
本実施形態の異方導電フィルムにおいて、導電粒子Pは積層体11の両主面の一方面側に偏在していることが好ましい。
図1に示すように、導電粒子Pが積層体11の離型フィルム12が設けられている一方面側に偏在している場合、導電粒子Pと一方面との最短距離は0.1μm以上1.0μm以下であってもよい。最短距離、即ち導電粒子Pが含まれていない領域15の厚みを上記範囲内にすることにより、回路部材への密着性を確保しつつ、圧着時の導電粒子Pの流動を抑制することが容易となり、導電粒子Pの捕捉性能を向上させることができる。
【0072】
本実施形態においては、第一の接着剤層22の厚みを0.1μm以上1.0μm以下としてもよい。第一の接着剤層22の厚みを0.1μm以上とすることで、異方導電フィルムを回路部材に貼り付けるときに良好な密着性が得られやすくなり、1.0μm以下とすることで圧着時における導電粒子の流動を抑制することが容易となる。また、接続する回路部材の対向する電極間に捕捉される導電粒子の捕捉性を向上する観点から、第一の接着剤層22の厚みは0.8μm以下であってもよく、0.5μm以下であってもよい。特に、接続する回路部材の一方がバンプ電極を有する回路部材であり、他方がバンプ電極に対応する回路電極(バンプを有しない電極)を有する回路部材である場合、第一の接着剤層側が第二の回路部材側に向かうように回路部材間に介在させることにより、上記の効果をより有効に得ることができる。
【0073】
第二の接着剤層23の厚みは適宜設定可能であり、例えば12μm以上30μm以下とすることができる。導電粒子Pが含まれていない領域13の厚みは、例えば10μm以上28μm以下とすることができる。更に、第二の接着剤層23の厚みは、接続する回路部材のそれぞれが有する電極の高さの合計の1.2倍以下の厚さの場合は、導電粒子の捕捉性を向上することが容易となる。
【0074】
第二の接着剤層23は多層構成にすることも可能である。
【0075】
本実施形態においては、導電粒子の補足性向上の観点から、第一の接着剤層22の厚みDaと、第二の接着剤層23の厚みDbとの比Da/Dbを、0.1/10〜10/10としてもよく、0.5/10〜5/10としてもよい。また、同様の観点から、導電粒子Pが含まれていない領域15の厚みDcと、導電粒子Pが含まれていない領域13の厚みDdとの比Dc/Ddを0.05/10〜8/10としてもよく、0.25/10〜4/10としてもよい。
【0076】
異方導電フィルムの厚みは、例えば5μm以上30μm以下であってもよい。本実施形態においては、第一の接着剤層22の厚み、絶縁性フィルム20の厚み及び第二の接着剤層23の厚みの合計、即ち積層体の厚みが、例えば5μm以上30μm以下であってもよい。
【0077】
異方導電フィルムの厚みは、回路部材同士を接続したときの接続構造体における回路部材の実装面の間隔よりも0μm以上10μm以下大きくなるように設定することが好ましい。異方導電フィルムの厚みを上記間隔よりも0μm以上大きくなるように設定することで、回路部材間を異方導電フィルムの硬化物で充填しやすくなり、剥離の発生、耐湿試験後の接続信頼性の低下を抑制しやすくなる。一方、異方導電フィルムの厚みを上記間隔よりも10μm以下大きくなるように設定することで、回路部材同士を圧着したときの樹脂の流動性を維持することができるため、対向する電極間における樹脂の排除性と隣り合う電極間における樹脂の充填性とを高水準で両立することが可能となり、耐湿試験等の信頼性試験後も対向する電極間の電気的接続が得られやすくなる。これらの観点からは、異方導電フィルムの厚みは、上記間隔よりも0.5μm以上8.0μm以下大きくなるように設定することがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下大きくなるように設定することが更に好ましい。
【0078】
第一の接着剤層22の厚み、絶縁性フィルム20の厚み及び第二の接着剤層23の厚みについては、例えば、イオンミリングを用いて、異方導電フィルムの断面を切削し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察及び測定することが可能である。具体的には、異方導電フィルムを、導電性のカーボンテープを用いて、試料加工・観察用の冶具に固定する。その後、イオンミリングを用いて、異方導電フィルムの第二の接着剤層23側から加工を実施し、加工断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。
【0079】
図2は異方導電フィルムの要部拡大模式図である。絶縁性フィルム20の厚みTは、導電粒子Pの粒径Dの0.4倍以上1.0倍以下であることが好ましく、0.4倍以上1.0倍未満であることがより好ましい。例えば、異方導電フィルムを用いて回路部材同士を接続した接続構造体中においては、対向する電極間に介在する導電粒子Pは扁平し、それぞれの電極と接触することによって電気的な接続が確保される。絶縁性フィルム20の厚みTが導電粒子の粒径Dの0.4倍以上であると、回路部材同士を圧着したとき導電粒子が過剰に変形することを抑制することができるとともに、導電粒子の流動を抑制して隣り合う回路電極間の絶縁性を確保することが容易となる。一方、絶縁性フィルム20の厚みTが導電粒子の粒径Dの1.0倍以下であると、導電粒子による電気的な接続を確保しやすくなる。対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを高水準で両立する観点から、絶縁性フィルム20の厚みTが導電粒子の粒径Dの0.5倍以上0.8倍以下であることが好ましい。
【0080】
図3は、
図2のI−I線断面図である。
図3に示される絶縁性フィルム20は、その厚み方向に延びる貫通孔21が設けられており、貫通孔21を囲む壁面は円筒形状を有している。すなわち、絶縁性フィルム20には、フィルムの厚み方向と垂直な面で切断したときの断面形状が円形である貫通孔が設けられている。
【0081】
絶縁性フィルム20の主面と貫通孔21を囲む壁面とがなす角度は、90°〜85°とすることができ、貫通孔の作成しやすさの点で、89°〜87°とすることができる。
【0082】
絶縁性フィルム20の貫通孔の直径Wは、導電粒子の粒径Dの1.0倍以上1.2倍以下であることが好ましい。この場合、一つの貫通孔に一つの導電粒子を充填することができるため、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性を確保しやすくなる。また、接続構造体中における導電粒子が観察しやすくなり、対向する電極間に捕捉された導電粒子の特定が容易となる利点もある。
【0083】
絶縁性フィルム20には、断面形状が円形以外の貫通孔を形成することができる。例えば、断面形状が正方形、ひし形、六角形等の貫通孔を設けてもよい。貫通孔の形状は任意であり、その貫通孔の大きさは、導電粒子を貫通孔内で移動させたときに、貫通孔の軸(即ち、絶縁性フィルム20の厚み方向)と直交する方向に移動可能な最大距離が導電粒子の粒径Dの0倍以上0.2倍以下となることが好ましく、0倍以上0.1倍以下となることがより好ましい。
【0084】
絶縁性フィルム20は規則的に配列された貫通孔を有することが好ましい。配列パターンとしては、正方配列、六方配列等が挙げられる。高精細回路の接続に対応するために貫通孔数を増やす観点から、六方配列のパターンで貫通孔を設けることが好ましい。
【0085】
本実施形態の異方導電フィルムにおいて、導電粒子の粒子密度は、5000個/mm
2以上30000個/mm
2以下であることが好ましい。この条件を満たすことにより、対向する電極間の接続信頼性の確保と、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより好適に両立できる。
【0086】
本実施形態の異方導電フィルムにおいて、絶縁性フィルム20の1mm
2あたりの貫通孔の数及び導電粒子の数をそれぞれMN
H及びMN
pとしたときに、MN
pが0.9MN
H以上1.0MN
H以下であってもよく、0.95MN
H以上1.0MN
H以下であってもよい。
【0087】
本実施形態の異方導電フィルムにおいて、導電粒子における他の導電粒子と離間して存在する導電粒子の割合が97%以上であってもよく、99%以上であってもよい。
【0088】
[貫通孔を有する絶縁性フィルムの製造方法]
上述した絶縁性フィルム20を製造する方法について説明する。
図4は、貫通孔を有する絶縁性フィルムの製造工程を示す模式的断面図である。
【0089】
本実施形態の製造方法は、
易接着フィルム30と、易接着フィルム30上に設けられた樹脂層31と、樹脂層31上に設けられた転写樹脂層32とを有する積層体を用意するステップ1(
図4の(a))と、
規則的に配列された凸型パターンを有する型40を、積層体の転写樹脂層32側から押しつけるステップ2(
図4の(b))と、
転写樹脂層32を硬化させた後、型40を剥離して、易接着フィルム30上に樹脂層31及び貫通孔21を有する絶縁性フィルム20が設けられたエレメントを得るステップ3(
図4の(c))と、
を備える。
【0090】
易接着フィルム30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどから形成されているフィルムを用いることができる。易接着フィルム30には、任意の充填剤を含有させてもよい。また、易接着フィルム30の表面には、易接着処理等が施されていることが好ましい。
【0091】
樹脂層31は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等によって形成することができる。上記の樹脂は、2つ以上を組み合わせて用いることができる。有機溶剤への可溶性の観点から、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
【0092】
樹脂層31は、上記の樹脂を含む樹脂ペーストを易接着フィルム30上に塗布することにより作製することができる。樹脂ペーストには有機溶剤等の溶剤を含有させることができ、溶剤の割合によって樹脂ペーストの厚みを適宜調整することができる。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
樹脂ペーストの塗工方法は、公知の方法を利用することができる。例えばスピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ディップコート法、マイクログラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法、フローコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法等が挙げられる。樹脂層31の作製には、スピンコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等が適しており、樹脂層31を1μm以下の薄膜にする点からは、スピンコート法が特に好適である。
【0094】
樹脂層31の厚みは、例えば、0.1μm以上10.0μm以下とすることができ、凸型パターンの転写性向上の観点から、0.5μm以上5.0μm以下が好ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
【0095】
転写樹脂層32は、絶縁性フィルム20の材料として例示したモノマー(主剤)、硬化剤及び必要に応じてその他の成分が含まれる組成物を転写樹脂ペーストとし、これを樹脂層31上に塗布することにより設けることができる。
【0096】
転写樹脂ペーストの粘度は、塗布方法に応じて変動させることができるが、凸型パターンの転写性を向上させる観点から、10mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましい。転写樹脂ペーストの粘度が上記範囲であると、流動性が高すぎること又は低すぎることに起因して凸型パターンを有する型40への充填が不充分となることを抑制することができ、パターン欠損を防止しやすくなる。凸型パターンの転写性を更に向上する観点から、転写樹脂ペーストの粘度は、50mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0097】
なお、本明細書においてペーストの粘度は、E型粘度計を用いて20℃で測定された値を意味する。
【0098】
粘度を調整するために、転写樹脂ペーストは有機溶剤で希釈することもできる。転写樹脂ペーストを有機溶剤で希釈した場合は、型40を転写樹脂層32に押し付ける前に、有機溶剤を乾燥により除去することが好ましい。有機溶剤を除去することにより、転写樹脂層32から発生する気泡を抑制することができ、転写面の外観が良好となる。
【0099】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。転写樹脂層32に残存する有機溶剤量を低減する観点から、上記の有機溶剤が好ましく、特にメチルエチルケトンが好ましい。
【0100】
凸型パターンを有する型40は、例えば、ニッケル、シリコン、プラスチック等の各種材質からなる型を公知の方法で作製して用いることができる。ニッケルの場合は電鋳法、シリコンの場合はエッチング法により、それぞれ凸型パターンを有する型を形成することが可能である。プラスチックの場合は、ニッケル又はシリコンに凹型パターンを作製したものをプラスチックに転写することにより、凸型パターンを有する型を形成することができる。
【0101】
凸型パターンは、上述した貫通孔が形成されるように設けられる。例えば、断面形状が円形である貫通孔を設ける場合、円柱(ピラー)のパターンを有する型を用いることができる。このときのピラーの高さ、直径、配列は、上述した絶縁性フィルム20の厚み、貫通孔の直径、貫通孔の配列が得られるように設定される。ステップ2では、凸型パターンが転写樹脂層32を貫通し、樹脂層31まで到達させることができる。
【0102】
凸型パターンが貫通した転写樹脂層32の硬化は、例えば、波長200〜400nmの紫外線を500〜2000mJ/cm
2照射することで行うことができる。
【0103】
[異方導電フィルムの製造方法]
次に、本発明に係る異方導電フィルムの製造方法の一実施形態について、
図5〜
図6を参照しながら説明する。
【0104】
図5〜
図6に示される本実施形態の異方導電フィルムの製造方法は、
剥離フィルム12と、第一の接着剤層22と、貫通孔21を有する絶縁性フィルム20とがこの順に積層された積層体を用意するステップ1(
図5の(a))と、
絶縁性フィルム20の貫通孔21に導電粒子Pを充填するステップ2(
図5(b))と、
絶縁性フィルム20の第一の接着剤層22とは反対側の面上に、第二の接着剤層23を積層するステップ3(
図6の(a))と、
を備える。
【0105】
ステップ1における積層体は、例えば、離型フィルム12上に設けられた第一の接着剤層22上に、上記と同様の方法で作製した、易接着フィルム30、樹脂層31及び絶縁性フィルム20がこの順で積層されたエレメントを、絶縁性フィルム20が第一の接着剤層22と接するようにラミネートし、その後、易接着フィルム30及び樹脂層31を剥離することにより得ることができる。
【0106】
ラミネートは、例えばホットロールラミネーター等を用いることができる。
【0107】
絶縁性フィルム20の貫通孔21に導電粒子を充填する方法としては、例えば、導電粒子を絶縁性フィルム20上に散布した後、刷毛、ブラシ、ブレードなどによって擦り切り、貫通孔21に導電粒子Pを充填する方法が挙げられる。貫通孔21に充填されなかった導電粒子は、エアブロー、粘着ロール、静電ロールなどを用いて取り除くことができるが、貫通孔21に充填されていない導電粒子のみを選択的に除去する観点で、静電ロールを用いること好ましい。
【0108】
本実施形態においては、絶縁性フィルム20の厚みTが、導電粒子Pの粒径Dの0.4倍以上1.0倍以下、0.4倍以上1.0倍未満、又は0.5倍以上0.8倍以下となる関係を満たす絶縁性フィルム20及び導電粒子Pを用いることが好ましい。これにより、絶縁性フィルム20の1mm
2あたりの貫通孔の数及び導電粒子の数をそれぞれMN
H及びMN
pとしたときに、MN
pを0.9MN
H以上1.0MN
H以下とすることが容易となる。
【0109】
また、断面形状が円形である貫通孔を有する絶縁性フィルム20を用いる場合、貫通孔の直径Wが、導電粒子の粒径Dの1.0倍以上1.2倍以下となる関係を満たす絶縁性フィルム20及び導電粒子Pを用いることが好ましい。これにより、一つの貫通孔に一つの導電粒子を充填することが容易となり、導電粒子における他の導電粒子と離間して存在する導電粒子の割合を97%以上とすることができる。なお、断面形状が円形以外の貫通孔を有する絶縁性フィルム20を用いる場合、導電粒子が貫通孔内で、その軸(即ち、絶縁性フィルム20の厚み方向)と直交する方向に移動可能な最大距離が、導電粒子の粒径Dの0倍以上0.2倍以下となる関係を満たす絶縁性フィルム20及び導電粒子Pを用いることで、上記の効果を得ることができる。
【0110】
ステップ3では、例えば、離型フィルム上に設けた第二の接着剤層23を、例えばホットロールラミネーター等を用いてラミネートすることができる。
【0111】
剥離フィルム上に第一の接着剤層22又は第二の接着剤層23を設ける方法としては、第一の接着剤層22及び第二の接着剤層23の材料として例示した接着剤成分、フィルム形成剤及び必要に応じてその他の成分が含まれる組成物を接着剤ペーストとし、これを離型フィルム上に塗布することにより設けることができる。
【0112】
接着剤ペーストの粘度は、用途、塗布方法に応じて変動させることができるが、配合物の分離の抑制及び相溶性向上の観点から、10mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましく、50mPa・s以上30000mPa・s以下とすることがより好ましい。また、異方導電フィルムの外観向上の観点から、接着剤ペーストの粘度は、100mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましい。この範囲であると、接着剤ペーストにおける配合物の分離を抑制できるとともに、塗工面に気泡、スジ等が発生して外観が悪化することを抑制しやすくなる。
【0113】
接着剤ペーストの塗工方法は、公知の方法を利用することができる。例えば、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ディップコート法、マイクログラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法、フローコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法等が挙げられる。これらのうち、層厚の精度の観点からは、ダイコート法が特に好適である。
【0114】
接着剤ペーストには有機溶剤等の溶剤を含有させることができ、溶剤の割合によって樹脂ペーストの厚みを適宜調整することができる。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
接着剤ペーストの乾燥温度は、例えば、20℃以上100℃以下が好ましい。乾燥温度が20℃以上であれば、第一の接着剤層22又は第二の接着剤層23に溶剤が残存しにくくなり、圧着時に残存溶剤による気泡によって接続外観が悪化することを抑制することができる。一方、乾燥温度が100℃以下であれば、接着剤成分であるモノマー及び硬化剤の反応が生じにくく、第一の接着剤層22又は第二の接着剤層23の硬化が進行することを抑制しやすい。接着剤ペーストに含まれる溶剤を揮発させる観点からは、乾燥温度は、40℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
【0116】
本発明に係る異方導電フィルムは上述した方法を適宜変更又は上記方法以外の方法で製造することができる。例えば、上記実施形態の方法において、第二の接着剤層を塗布により形成してもよい。また、第二の接着剤層を形成し、第二の接着剤層上に絶縁性フィルム及び第一の接着剤層を設けることにより異方導電フィルムを製造することもできる。
【0117】
[接続構造体の構成]
図7は、本発明に係る接続構造体の一実施形態を示す模式的断面図である。同図に示すように、接続構造体1は、互いに対向する第一の回路部材2及び第二の回路部材3と、これらの回路部材2,3を接続する異方導電フィルムの硬化物4とを備えて構成されている。
【0118】
第一の回路部材2は、例えばテープキャリアパッケージ(TCP)、プリント配線板、半導体シリコンチップ等である。第一の回路部材2は、本体部5の実装面5a側に複数のバンプ電極6を有している。バンプ電極6は、例えば平面視で矩形状をなしており、厚みは例えば3μm以上18μm未満となっている。バンプ電極6の形成材料には、例えばAu等が用いられ、異方導電フィルムの硬化物4に含まれる導電粒子Pよりも変形し易くなっている。なお、実装面5aにおいて、バンプ電極6が形成されていない部分には、絶縁層が形成されていてもよい。
【0119】
第二の回路部材3は、例えば液晶ディスプレイに用いられるITO、IZO、若しくは金属等で回路が形成されたガラス基板又はプラスチック基板、フレキシブルプリント基板(FPC)、セラミック配線板などである。第二の回路部材3は、
図7に示すように、本体部7の実装面7a側にバンプ電極6に対応する複数の回路電極8を有している。回路電極8は、バンプ電極6と同様に、例えば平面視で矩形状をなしており、厚みは例えば100nm程度となっている。回路電極8の表面は、例えば金、銀、銅、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、インジウム錫酸化物(ITO)、及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)から選ばれる1種或いは2種以上の材料で構成されている。なお、実装面7aにおいても、回路電極8が形成されていない部分に絶縁層が形成されていてもよい。
【0120】
硬化物4は、例えば、
図1に示される異方導電フィルムを、第一の接着剤層22側が第二の回路部材3側に向かうように用いて形成され、異方導電フィルムの硬化物とすることができる。この硬化物は、貫通孔を有する絶縁性フィルム20と、貫通孔内に配されており、バンプ電極6と回路電極8との間に介在して両電極を電気的に接続する導電粒子Pとを含むことができる。
【0121】
導電粒子Pは、第二の回路部材3側に偏在した状態となっていてもよく、圧着によって僅かに扁平に変形した状態でバンプ電極6と回路電極8との間に介在している。これにより、バンプ電極6と回路電極8との間の電気的な接続が実現されている。また、隣接するバンプ電極6,6間及び隣接する回路電極8,8間では、導電粒子Pが絶縁性フィルム20によって離間されており、隣接するバンプ電極6,6間及び隣接する回路電極8,8間の電気的な絶縁が実現されている。
【0122】
[接続構造体の製造方法]
図8及び
図9は、
図7に示した接続構造体の製造工程を示す模式的断面図である。接続構造体1の形成にあたっては、まず、剥離フィルム12が剥離された異方導電フィルム11を、実装面7aと対向するようにして第一の接着剤層22を第二の回路部材3上にラミネートする。次に、
図9に示すように、バンプ電極6と回路電極8とが対向するように、異方導電フィルム11がラミネートされた第二の回路部材3上に第一の回路部材2を配置する。そして、異方導電フィルム11を加熱しながら第一の回路部材2と第二の回路部材3とを厚み方向に加圧する。
【0123】
これにより、異方導電フィルム11に含まれる接着剤成分が流動し、バンプ電極6と回路電極8との距離が縮まって導電粒子Pが噛合した状態で、異方導電フィルム11に含まれる接着剤成分が硬化する。接着剤成分の硬化により、バンプ電極6と回路電極8とが電気的に接続され、かつ隣接するバンプ電極6,6同士及び隣接する回路電極8,8同士が電気的に絶縁された状態で異方導電フィルム11の硬化物4が形成され、
図7に示した接続構造体1が得られる。得られた接続構造体1では、異方導電フィルム11の硬化物4によってバンプ電極6と回路電極8との間の距離の経時的変化が充分に防止されると共に、電気的特性の長期信頼性も確保できる。
【0124】
なお、接続時の加熱温度は、硬化剤において重合活性種が発生し、重合モノマーの重合が開始される温度以上であることが好ましい。この加熱温度は、例えば80℃〜200℃であり、好ましくは100℃〜180℃である。また、加熱時間は、例えば0.1秒〜30秒、好ましくは1秒〜20秒である。加熱温度が80℃未満であると硬化速度が遅くなり、200℃を超えると望まない副反応が進行しやすい。また、加熱時間が0.1秒未満では硬化反応が充分に進行せず、30秒を超えると硬化物4の生産性が低下し、さらに、望まない副反応も進みやすい。
【0125】
本実施形態の接続構造体の製造方法によれば、異方導電フィルム11を用いることにより、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立できる接続構造体を得ることができる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0127】
[接着剤層の形成]
以下に示す方法で接着剤層をそれぞれ形成した。
【0128】
(接着剤層1)
ジムロート冷却管、塩化カルシウム管、及び攪拌モーターに接続されたポリテトラフルオロエチレン製の攪拌棒を装着した3000mLの3つ口フラスコ中で、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジフェノール45g(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)、及び3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50g(三菱化学株式会社製:YX−4000H)を、N−メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。これに炭酸カリウム21gを加え、マントルヒーターで110℃に加熱しながら攪拌した。3時間攪拌後、1000mLのメタノールが入ったビーカーに反応液を滴下し、生成した沈殿物を吸引ろ過することによってろ取した。ろ取した沈殿物を300mLのメタノールで3回洗浄して、フェノキシ樹脂aを75g得た。
【0129】
なお、フェノキシ樹脂aの分子量及び分散度について、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より測定したところ、標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算で、Mn=15769、Mw=38045、Mw/Mn=2.413であった。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC−8020
検出器:東ソー株式会社製 RI−8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm
2)
流量:1.00mL/min
【0130】
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製:jER828)を50質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを5質量部、及びフィルム形成材としてフェノキシ樹脂aを50質量部、をメチルエチルケトンに溶解、混合し、接着剤ペーストを調製した。
【0131】
得られた接着剤ペーストを、厚み50μmのPET樹脂フィルム上に、コータを用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、厚みが0.8μmの接着剤層1を形成した。
【0132】
(接着剤層2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製:jER807)を45質量部、硬化剤として4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを5質量部、フィルム形成材としてビスフェノールA・ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製:YP−70)を55質量部、をメチルエチルケトンに溶解、混合し、接着剤ペーストを調製した。
【0133】
得られた接着剤ペーストを、厚み50μmのPET樹脂フィルム上に、コータを用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、厚みが15μmの接着剤層2を形成した。
【0134】
(接着剤層3)
厚みを0.3μmに変更したこと以外は接着剤層1と同様にして、接着剤層3を形成した。
【0135】
[絶縁性フィルムの形成]
以下に示す方法で絶縁性フィルムをそれぞれ形成した。
【0136】
(絶縁性フィルムA)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製:BL−10)をメチルエチルケトンに溶解した溶液を、易接着フィルムである厚み100μmの易接着処理済みのPET樹脂フィルム(東洋紡績社製;コスモシャインA4100)上に、コータを用いて塗布し、70℃で5分熱風乾燥することにより、厚み2μmの樹脂層を形成した。
【0137】
アクリレートとして、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート(大阪有機化学社製;TPGDA)を100質量部、光ラジカル発生剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを52質量部、離型剤として、無溶剤UV硬化型離型剤(信越化学工業社製:KF−2005)を0.5質量部混合し、転写樹脂ペーストを調製した。
【0138】
得られた転写樹脂ペーストを、樹脂層上にコータを用いて塗布し、厚み3μmの転写樹脂層を形成した。この転写樹脂層に、直径3.5μm、高さ4.0μmの円柱状のピラーを、ピッチ6.2μmの六方配列で有するニッケルモールドを樹脂層に押し付けた。次に、波長365nmの紫外線を500mJ照射した後、モールドを離型することで、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を29000個/mm
2の密度で有する厚さ2.5μmの絶縁性フィルムAを有するエレメントを得た。
【0139】
(絶縁性フィルムB)
転写樹脂層の厚みを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を29000個/mm
2の密度で有する厚さ2.0μmの絶縁性フィルムBを有するエレメントを得た。
【0140】
(絶縁性フィルムC)
転写樹脂層の厚みを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を29000個/mm
2の密度で有する厚さ1.5μmの絶縁性フィルムCを有するエレメントを得た。
【0141】
(絶縁性フィルムD)
転写樹脂層の厚み及びニッケルモールドの凸パターンを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径4.5μmの円形である貫通孔を25000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ1.5μmの絶縁性フィルムDを有するエレメントを得た。
【0142】
(絶縁性フィルムE)
転写樹脂層の厚み及びニッケルモールドの凸パターンを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を10000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ1.5μmの絶縁性フィルムEを有するエレメントを得た。
【0143】
(絶縁性フィルムF)
転写樹脂層の厚み及びニッケルモールドの凸パターンを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を5000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ1.5μmの絶縁性フィルムFを有するエレメントを得た。
【0144】
(絶縁性フィルムG)
転写樹脂層の厚みを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を29000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ1.0μmの絶縁性フィルムGを有するエレメントを得た。
【0145】
(絶縁性フィルムH)
転写樹脂層の厚みを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径3.5μmの円形である貫通孔を29000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ3.5μmの絶縁性フィルムHを有するエレメントを得た。
【0146】
(絶縁性フィルムI)
転写樹脂層の厚み及びニッケルモールドの凸パターンを変更したこと以外は絶縁性フィルムAの形成と同様にして、断面形状が直径5.0μmの円形である貫通孔を25000個/mm
2の密度で六方配列した、厚さ1.5μmの絶縁性フィルムIを有するエレメントを得た。
【0147】
[異方導電フィルムの作製]
【0148】
(
参考例1)
第一の接着剤層として接着剤層1と、絶縁性フィルムAを有するエレメントとを、ホットロールラミネーターを用いて40℃にて貼り合せた後、絶縁性フィルムAから易接着フィルム及び樹脂層を剥離した。
【0149】
次に、絶縁性フィルムA上に、導電粒子として、ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設けた導電粒子(平均粒径3.3μm、比重2.5)を散布し、スキージを用いて擦り切りを行い、貫通孔に導電粒子を充填した。続いて、静電クリーナーを用いて貫通孔に充填されなかった導電粒子を取り除いた。
【0150】
次に、絶縁性フィルムA上に、接着剤層2をホットロールラミネーターを用いて40℃にて貼り合せることにより、異方導電フィルム1を得た。
【0151】
(
参考例2〜6)
絶縁性フィルムAを有するエレメントに代えて絶縁性フィルムB〜Fを有するエレメントをそれぞれ用いたこと以外は
参考例1と同様にして、異方導電フィルム2〜6をそれぞれ得た。
【0152】
(実施例7)
接着剤層1に代えて接着剤層3を用いたこと以外は
参考例1と同様にして、異方導電フィルム7を得た。
【0153】
(比較例1)
導電粒子を充填した後に絶縁性フィルムAを取り除いたこと以外は
参考例1と同様にして、異方導電フィルム8を得た。
【0154】
(比較例2〜4)
絶縁性フィルムAを有するエレメントに代えて絶縁性フィルムG〜Iを有するエレメントをそれぞれ用いたこと以外は
参考例1と同様にして、異方導電フィルム9〜11をそれぞれ得た。
【0155】
[異方導電フィルムの評価]
(充填率)
異方導電フィルム1〜11について、50000μm
2の範囲の導電粒子数を20か所で実測し、それらの平均値を1mm
2あたりの導電粒子数に換算した。この1mm
2あたりの導電粒子数MN
pと、絶縁性フィルムにおける1mm
2あたりの貫通孔数MN
Hとから、下記式で表される充填率を計算した。
充填率(%)=(MN
p/MN
H)×100
【0156】
(単分散率)
異方導電フィルム1〜11について、2500μm
2の範囲を観察し、導電粒子の総数Ntと、他の導電粒子と離間して存在する導電粒子(単分散状態の導電粒子)の数Nmとを求めた。これらの値から、導電粒子における他の導電粒子と離間して存在する導電粒子の割合(単分散率)を下記式から計算した。
単分散率(%)=(Nm/Nt)×100
【0157】
なお、導電粒子の実測には金属顕微鏡を用いた。結果を以下の表にまとめる。
【0158】
【表1】
【0159】
[接続構造体の作製]
第一の回路部材として、バンプ電極を二列で千鳥状に配列したICチップ(外形2mm×20mm、厚み0.3mm、バンプ電極の大きさ70μm×15μm、バンプ電極間距離15μm、バンプ電極厚み15μm)を準備した。また、第二の回路部材として、ガラス基板(コーニング社製:#1737、38mm×28mm、厚み0.3mm)の表面にITOの配線パターン(パターン幅20μm、電極間スペース10μm)を形成したものを準備した。
【0160】
参考例1〜
6、実施例7及び比較例1〜4に係る異方導電フィルム(2.5mm×25mm)の第一の接着剤層側のPET樹脂フィルムを剥離し、第一の接着剤層側の面をガラス基板上に、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いて、80℃、0.98MPa(10kgf/cm
2)の条件で2秒間加熱及び加圧して貼り付けた。
【0161】
次に、異方導電フィルムの他方のPET樹脂フィルムを剥離し、ICチップのバンプ電極とガラス基板の回路電極との位置合わせを行った後、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いて、異方導電フィルムの実測最高到達温度170℃、及びバンプ電極での面積換算圧力70MPaの条件で5秒間加熱及び加圧して、接続構造体を得た。
【0162】
[接続構造体の評価]
参考例1〜
6、実施例7及び比較例1〜4の各異方導電フィルムを用いて得られた接続構造体において、バンプ電極と回路電極との間の導電粒子の捕捉率、バンプ電極と回路電極との間の接続抵抗、及び隣接する回路電極間の絶縁抵抗を評価した。
【0163】
(捕捉率)
異方導電フィルム中の1mm
2あたりの導電粒子数MN
pと、バンプ電極上の導電粒子数の平均値N
b(200箇所を測定)及びバンプ電極の面積Sとを求め、下記式で表される補足率を計算した。
捕捉率(%)=[(N
b/S)/MN
p]×100
【0164】
(接続抵抗及び絶縁抵抗)
接続抵抗の測定は、四端子測定法にて実施し、14箇所の測定の平均値を求めた。測定にはマルチメータ(ETAC社製:MLR21)を用いた。
接続抵抗の評価は、1.0Ωより小さい場合をA判定、1.0Ω以上2.0Ω未満の場合をB判定、2.0Ω以上の場合をC判定、接続不良が発生した場合をD判定とした。
絶縁抵抗は、得られた接続構造体に50Vの電圧を印加し、計1440か所の回路電極間の絶縁抵抗を一括で測定した。
絶縁抵抗の評価は、10
9Ωより大きい場合をA判定、10
8Ω以上10
9Ω未満の場合をB判定、10
8Ω未満の場合をC判定、短絡が発生した場合をD判定とした。
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【表2】