(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[樹脂含浸装置]
本発明の樹脂含浸装置は、長尺の複数の強化繊維が束ねられた1本もしくは2本以上の強化繊維束に樹脂組成物を含浸させる樹脂含浸装置である。本発明の樹脂含浸装置は、強化繊維束に樹脂組成物が含浸されたトウプリプレグの製造の他、該トウプリプレグを樹脂製のライナーの外側にFW法により巻き付けて硬化させる圧力容器の製造、該トウプリプレグを引き抜き成型金型に通して硬化させる引き抜き成型体の製造等に利用することができる。
【0013】
本発明の樹脂含浸装置は、内部に樹脂組成物が収容される収容部が形成された樹脂含浸部を備えている。樹脂含浸部には、強化繊維束が導入される導入側開口部と、強化繊維束が導出される導出側開口部とが形成されており、前記導入側開口部の開口面積(mm
2)をS
A、前記導出側開口部の開口面積(mm
2)をS
Bとしたとき、S
B/S
Aが0.5〜1.2である。
本発明の樹脂含浸装置では、導入側開口部から導入された強化繊維束に樹脂組成物が含浸され、樹脂組成物が含浸された強化繊維束が前記導出側開口部から導出されるようになっている。
【0014】
以下、本発明の樹脂含浸装置の一例を示して詳細に説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本実施形態の樹脂含浸装置1は、
図1に示すように、樹脂含浸部10と、樹脂循環部12と、開繊部14とを備えている。
【0015】
この例の樹脂含浸部10は、直方体状になっており、内部に樹脂組成物Xが収容される収容部11が形成されている。樹脂含浸部10の形状は、直方体状には限定されず、適宜設定でき、例えば、立方体状、円柱状、台形状等であってもよい。収容部11の形状は、樹脂含浸部10の形状に合わせて適宜設定すればよく、本実施形態では直方体状を例示する。
樹脂含浸部10の大きさは、特に限定されず、樹脂含浸部10の形状や、樹脂組成物Xの粘度や強化繊維束Fの本数等に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
樹脂含浸部10の上流側の側壁部分10aには、強化繊維束Fが導入される導入側開口部16が形成されている。また、樹脂含浸部10の下流側の側壁部分10bには、強化繊維束Fが導出される導出側開口部18が形成されている。
樹脂含浸部10においては、長尺の強化繊維束Fが導入側開口部16から樹脂含浸部10内の収容部11へと連続的に導入され、その強化繊維束Fが導出側開口部18を通じて樹脂含浸部10の外側に連続的に導出されるようになっている。そして、導入側開口部16から収容部11に導入された強化繊維束Fには樹脂組成物Xが塗布および含浸され、樹脂組成物Xが含浸された状態の強化繊維束Fが導出側開口部18から導出される。
導入側開口部16から導入される強化繊維束Fは1本でも2本以上の複数本でも構わない。
【0017】
樹脂含浸部10に形成される導入側開口部16と導出側開口部18の数は、1つには限定されず、2つ以上であってもよい。樹脂含浸部10においては、導入側開口部16の数と導出側開口部18の数が同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、導出側開口部18の数が導入側開口部16の数よりも少なくし、それら導入側開口部16と導出側開口部18の少なくとも一部において、複数の導入側開口部16から導入した強化繊維束をまとめて同一の導出側開口部18を通じて導出してもよい。また他の事例としては、導出側開口部18の数を導入側開口部16の数より多くし、樹脂含浸部10内部で導入側開口部16から導入した1本もしくは複数の強化繊維束Fを分割し、導出側開口部18から分割した強化繊維束Fを導出してもよい。
樹脂含浸部10における導入側開口部16と導出側開口部18の数は、使用する強化繊維束の必要本数に応じ適宜設定できる。
【0018】
導入側開口部16および導出側開口部18の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、三角形状、台形状等が挙げられる。該断面形状は、生産性の点から、矩形状が好ましいがこれに限定するものではない。また、矩形型ではあるが、角の部分に丸みを持たせた断面形状を採用することは、作業およびメンテナンスの観点からより好ましい。
導入側開口部16および導出側開口部18の断面形状は、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
【0019】
導入側開口部16の開口面積(mm
2)をS
A、導出側開口部18の開口面積(mm
2)をS
Bとしたとき、導出側開口部18の開口面積に対する導入側開口部16の開口面積の比であるS
B/S
Aは、0.5〜1.2であり、0.6〜1.1が好ましい。S
B/S
Aが前記範囲内であれば、導出側開口部18を通じて導出される際に強化繊維束Fに付着している余分な樹脂組成物が削ぎ落とされるため、得られるトウプリプレグにおける樹脂含有率を高精度に制御できる。S
B/S
Aが前記範囲の下限値未満であれば、強化繊維束Fが導出側開口部18で擦過され、毛羽の発生や得られる繊維強化複合材料の強度低下が起きる恐れがある。S
B/S
Aが前記範囲の上限値を超えると、強化繊維束Fに付着した樹脂量を適性に調整できないばかりか、導出側開口部18等から収容部11内の樹脂組成物が漏れ出す恐れがある。
本発明ではこのように、樹脂含浸部が、導出側開口部により、収容部を通過する強化繊維束への樹脂組成物の付着量を調整する機能を備えている。
【0020】
樹脂含浸装置で樹脂組成物を含浸した強化繊維束を一旦巻き取ってトウプリプレグとして使用する場合、S
B/S
Aは、0.70〜1.05がより好ましい。
樹脂含浸装置で形成されたトウプリプレグをそのままFW法に使用する場合、S
B/S
Aは、0.6〜1.1がより好ましく、0.65〜1.05がさらに好ましい。
樹脂含浸装置で形成されたトウプリプレグをそのまま引き抜き成型に使用する場合、S
B/S
Aは、0.5〜1.05がより好ましい。
【0021】
なお、導入側開口部の開口面積(S
A)とは、強化繊維束Fを導入する導入側開口部の穴のもっとも狭い部分における、導入される強化繊維束Fの導入軸に対して垂直な断面(以下、断面Aともいう。)の面積を意味する。同様に、導出側開口部の開口面積(S
B)は、強化繊維束Fを導出する導出側開口部の穴のもっとも狭い部分における、導出される強化繊維束Fの導出軸に対して垂直な断面の面積を意味する。
また、S
B/S
Aは、同一の強化繊維束の導入および導出に関わる対応する導入側開口部と導出側開口部との間の開口面積の比率である。対応する導入側開口部および導出側開口部が複数ある場合、それら各々の導入側開口部および導出側開口部について、S
B/S
Aが前記範囲を満たす。複数の導入側開口部から導入した強化繊維束をまとめて1つの導出側開口部から導出している場合のS
B/S
Aは、複数の導入側開口部の開口面積の合計に対する導出側開口部の開口面積の比とする。また、一つの導入側開口部に複数の強化繊維束Fを導入し、複数の導出側開口部から強化繊維束を導出する場合は、S
Bとして複数の導出側開口部の開口面積の合計を用いる。
【0022】
導入側開口部16を通じて導入される強化繊維束Fの長さ方向に対して垂直な断面積S
F(mm
2)と、導入側開口部16の開口面積S
A(mm
2)の比であるS
F/S
Aは、適用する樹脂の粘度や製造速度により適正値が変化するため特に規定しないが、0.20〜1.00が好ましく、0.65〜0.95がより好ましい。S
F/S
Aが前記範囲の上限値以下であれば、導入される強化繊維束Fに接触による毛羽立ち等が生じることを抑制しやすい。S
F/S
Aが前記範囲の下限値以上であれば、収容部11に収容されている樹脂組成物が導入側開口部16から漏れ出すことを抑制しやすい。
【0023】
強化繊維束Fは、導入側開口部16に対し、導入側開口部16の壁面に接していることが好ましい。強化繊維束Fの長手方向に対して垂直の断面の外周長さをLf(mm)とした場合、導入側開口部16の開口面積(S
A)を算出する際に用いた断面Aの外周における、強化繊維束Fが導入側開口部16の壁面に接している部分の長さL
SA(mm)は、Lfの長さの10%以上100%以下が好ましく、Lfの長さの20%以上から100%以下であることがより好ましい。強化繊維束Fが導入側開口部16の壁面に接している部分の長さL
SAの割合が規定量未満であると、樹脂付着量の制御の精度が低下する。また長さL
SAの割合が規定量超となることは強化繊維束Fの断面周長より長い長さとなることを意味するため、現実にはその状態は存在しない。
【0024】
導入側開口部16には、収容部11に収容された樹脂組成物Xが導入側開口部16を通じて樹脂含浸部10の外側に漏れ出すことを抑制するために逆止弁を設けてもよい。導出側開口部18にも導入側開口部16と同様に、収容部11に収容された樹脂組成物Xが導出側開口部18を通じて樹脂含浸部10の外側に漏れ出すことを抑制するために逆止弁を設けてもよい。
【0025】
導出側開口部18に逆止弁を設けることで、得られるトウプリプレグの樹脂含有率を制御することがより容易になる。また、導入側開口部16と導出側開口部18の両方に逆止弁を設けて収容部11を密閉することで、強化繊維束Fの搬送速度を高めても樹脂組成物Xが樹脂含浸部10から漏れ出しにくくなるため、強化繊維束Fへの樹脂組成物Xの含浸をより高速化できる。
【0026】
逆止弁としては、収容部11に収容された樹脂組成物Xが漏れ出すことを抑制できるものであればよく、公知の逆止弁を利用することができる。逆止弁を形成する材料としては、強化繊維束Fに毛羽立ち等が生じることを抑制しやすい点から、弾性を有する材料が好ましく、ゴムがより好ましく、シリコンゴムがさらに好ましい。また擦過しても強化繊維束Fを毛羽立たさない鏡面などの表面を有した薄い板ばね等の金属板を使用することもできる。
【0027】
導出側開口部18に逆止弁を設ける場合、導出側開口部18に設けた逆止弁が強化繊維束Fを押さえつける圧力は、0.1〜4kg/cm
2が好ましく、0.5〜2.0kg/cm
2がより好ましい。前記圧力が前記範囲内の下限値以上であれば、強化繊維束Fに付着している余分な樹脂組成物を削ぎ落としやすいため、得られるトウプリプレグの樹脂含有率を制御することが容易になる。前記圧力が前記範囲内の上限値以下であれば、強化繊維束Fに毛羽立ち等が生じることを抑制しやすい。
【0028】
導入側開口部16に逆止弁を設ける場合、導入側開口部16に設けた逆止弁が強化繊維束Fを押さえつける圧力は、接圧程度でよく、例えば、0.05〜2.0kg/cm
2とすることができる。
【0029】
樹脂含浸部10の上部には、樹脂組成物を供給する樹脂供給部20と、樹脂組成物を排出する樹脂排出部22とが設けられている。樹脂含浸部10においては、樹脂供給部20から樹脂含浸部10内の収容部11に樹脂組成物Xが供給され、収容部11から樹脂排出部22を通じて樹脂組成物Xが排出されるようになっている。
樹脂供給部20および樹脂排出部22における流路の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形状、矩形状、三角形状等が挙げられるが、市販の液状体輸送用のパイプもしくはチューブが適用できるため円形状が好ましい。
【0030】
なお、樹脂含浸部10における樹脂供給部20および樹脂排出部22を設ける位置は、樹脂含浸部10の上部には限定されず、例えば、側壁部分や底部に樹脂供給部20および樹脂排出部22を設けてもよい。樹脂排出部22は、強化繊維束Fの内部に包含され、含浸により樹脂と置換された空気が収容部から循環される樹脂とともに排出されやすい位置に設けることが好ましい。
【0031】
樹脂循環部12は、送液ポンプ24と、樹脂貯留槽26と、第1経路28と、第2経路30、第3経路32とを備えている。第1経路28は、一端が送液ポンプ24と接続され、他端が樹脂貯留槽26と接続されている。第2経路30は、一端が樹脂貯留槽26に接続され、他端が樹脂含浸部10の樹脂排出部22に接続されている。第3経路32は、一端が送液ポンプ24に接続され、他端が樹脂含浸部10の樹脂供給部20に接続されている。このように、樹脂循環部12は樹脂含浸部10に設けられた樹脂供給部20および樹脂排出部22と連通している。
【0032】
送液ポンプ24としては、樹脂組成物を送液できるものであればよく、公知の送液ポンプを使用することができる。
樹脂貯留槽26としては、樹脂組成物を貯留できる貯留槽であればよく、公知のタンク等を使用することができる。樹脂貯留槽26としては、樹脂組成物に混入している空気が排出されやすい開放系の貯留槽であることが好ましい。また、樹脂組成物に混入した空気を積極的に排出するため、樹脂貯留槽26が撹拌翼と減圧装置を具備することがさらに好ましい。また樹脂貯留槽26は、樹脂組成物を送液や循環しやすくするために、加温する設備を具備しても構わない。
第1経路28、第2経路30および第3経路32としては、特に限定されず、例えば、公知の配管やパイプ、チューブを使用することができる。
【0033】
本実施形態では、樹脂循環部12により、樹脂含浸部10内の収容部11に収容する樹脂組成物Xを循環させることができるようになっている。具体的には、送液ポンプ24が作動することで、樹脂貯留槽26に貯留されている樹脂組成物Xが第1経路28、送液ポンプ24、第3経路32を通じて樹脂供給部20から収容部11に供給され、樹脂排出部22を通じて収容部11から排出され、第2経路30を通じて樹脂貯留槽26へと到達して循環する。
本発明の樹脂含浸装置は、このように、樹脂含浸部に、樹脂組成物を供給する樹脂供給部と、樹脂組成物を排出する樹脂排出部とが設けられ、さらに樹脂供給部および樹脂排出部と連通し、樹脂含浸部内の収容部に樹脂組成物を循環させる樹脂循環部を備えていることが好ましい。
【0034】
収容部11において導入される強化繊維束Fには、通常、各強化繊維の間に空気が抱き込まれている。この強化繊維束Fの繊維間に抱き込まれた空気は、収容部11において強化繊維束Fに樹脂組成物Xが含浸されるとともに強化繊維束Fから排出される。樹脂循環部12により収容部11に収容される樹脂組成物Xを循環させることで、強化繊維束Fから排出され空気が樹脂組成物Xと共に樹脂排出部22を通じて収容部11から排出される。そのため、収容部11に空気が多量に充満して強化繊維束Fへの樹脂組成物Xの含浸効率が低下することが抑制することができる。
【0035】
樹脂含浸部10の収容部11において強化繊維束Fに含浸されることで、収容部11から導出される強化繊維束Fと共に収容部11から樹脂組成物Xが排出される。収容部11から樹脂排出部22を通じて排出される樹脂組成物Xの量をW
1(g/分)、樹脂供給部20を通じて収容部11に供給される樹脂組成物Xの量をW
2(g/分)とする。このとき、(W
1+W
2)/W
2は、1.03〜2.00が好ましく、1.10〜1.95が好ましく、1.15〜1.90がより好ましい。(W
1+W
2)/W
2が前記範囲の下限値以上であれば、収容部11に空気が多量に充満して強化繊維束Fへの樹脂組成物Xの含浸効率が低下することが抑制されやすくなる。(W
1+W
2)/W
2が前記範囲の上限値以下であれば、効率的に樹脂組成物Xを樹脂循環部12で循環させることができる。
【0036】
この例の樹脂含浸部10の収容部11には、収容部11を通過する強化繊維束Fを開繊により幅方向に拡幅する開繊部14が備えられている。開繊部14としては、例えば、複数本の開繊バーを備える公知の開繊部を採用することができる。
【0037】
この例の開繊部14は、第1開繊バー15a、第2開繊バー15bおよび第3開繊バー15cを備えている。第1開繊バー15a、第2開繊バー15bおよび第3開繊バー15cは、いずれも断面形状が半円形状になっている。第1開繊バー15a、第2開繊バー15bおよび第3開繊バー15cは、樹脂含浸部10の上流側から下流側に向かって順に設けられている。第1開繊バー15aおよび第3開繊バー15cは凸状の円弧部分を上に向けて配置され、第2開繊バー15bは凸状の円弧部分を下に向けて配置されている。第1開繊バー15a、第2開繊バー15bおよび第3開繊バー15cのそれぞれの円弧部分に沿って強化繊維束Fがジグザグに蛇行するように通過することで、各開繊バーによる加熱、擦過、揺動等により強化繊維束Fが幅方向に拡幅される。
【0038】
本発明の樹脂含浸装置では、このように収容部に開繊部が設けられていることが好ましいが、強化繊維束Fのトウ形状を樹脂含浸部内で変形させればよく、その方法を限定するものではない。この開繊部14の開繊バーにより強化繊維束Fに抱き込まれていた空気が強化繊維束F内部から効率良く排出し、強化繊維束Fの内部まで樹脂組成物の含浸を促進できる。
【0039】
上記に例示されるような強化繊維束に樹脂組成物を含浸する機能、もしくは含浸を促進する機能により、導入側開口部を通過した強化繊維束Fの軸方向に対して垂直な断面積は、樹脂組成物を包含することで導入側開口部への導入前に比べて大きくなる。例えば、その樹脂組成物を包含した強化繊維束Fを導出側開口部で扱くことで、強化繊維束内に含浸した樹脂量を制御することが容易になる。
【0040】
樹脂組成物を包含した強化繊維束の導出側開口部直前の幅および厚みを含んだ全長、すなわち強化繊維束の導出側開口部直前の外周長さをL
F(mm)とする。また、導出側開口部のもっとも狭い部分の幅および厚みを含んだ全長、すなわち導出側開口部のもっとも狭い部分の内周の長さをL
sb(mm)としたとき、L
F/L
sbが0.9〜3.0である関係にあることが好ましく、1.0〜2.0である関係にあることがより好ましい。
【0041】
開繊部14の開繊バーの長さ方向に垂直な断面形状は、半円形状には限定されず、例えば、円形状であってもよい。
【0042】
開繊部14は、樹脂含浸部10内に存在する強化繊維束Fの断面積S
fR(mm
2)が導出側開口部の開口面積S
B(mm
2)に対しS
fR>S
Bとなる開繊機能を有していれば、開繊バーの本数は限定されない。この例の開繊部14の開繊バーは3本であるが、開繊部14の開繊バーの本数は3本には限定されず、1本以上であれば構わない。
S
fR/S
Bは、2〜1であることが好ましく、1.5〜1であることがより好ましく、1.3〜1.0であることがさらに好ましい。この範囲の上限を超えると、樹脂を包含した強化繊維束Fに、導出側開口部を通過する際に強い摩擦力が生じ、強化繊維束Fに毛羽や強度発現に影響する傷が生じる可能性がある。この範囲の下限未満であると、強化繊維束Fに付与する樹脂含有量を制御することが難しくなる可能性がある。
【0043】
前述した特許文献1、2のような従来の樹脂含浸装置では、強化繊維束に余分に付着した樹脂組成物を取り除くことができず、得られるトウプリプレグの樹脂含浸率を高精度に制御することが難しい。
これに対して、本発明の樹脂含浸装置においては、樹脂含浸部に導入側開口部と導出側開口部とが形成され、導出側開口部の開口面積S
Bに対する導入側開口部の開口面積S
Aの比(S
B/S
A)が特定の範囲に制御されている。そのため、導出側開口部を通じて強化繊維束が導出される際に、余分に付着した樹脂組成物が導出側開口部で削ぎ落とされることで、得られるトウプリプレグの樹脂含浸率を高精度に制御することができる。
【0044】
なお、本発明の樹脂含浸装置は、前記した樹脂含浸装置1には限定されない。例えば、本発明の樹脂含浸装置は、樹脂含浸部に樹脂供給部および樹脂排出部が設けられておらず、樹脂循環部を備えていない装置であってもよい。また、本発明の樹脂含浸装置は、樹脂含浸部内の収容部に開繊部を備えていない装置であってもよい。
【0045】
[トウプリプレグの製造方法]
本発明のトウプリプレグの製造方法は、長尺の複数の強化繊維が束ねられた強化繊維束に樹脂組成物を含浸させてトウプリプレグを製造する方法である。本発明のトウプリプレグの製造方法では、本発明の樹脂含浸装置を用い、1本もしくは2本以上の強化繊維束を導入側開口部から樹脂含浸部内の収容部に導入し、導出側開口部から導出して、収容部を通過させながら収容部内に収容された樹脂組成物を強化繊維束に含浸させてトウプリプレグを得る。
以下、本発明のトウプリプレグの製造方法の一例として、前記した樹脂含浸装置1を用いてトウプリプレグを製造する方法について説明する。
【0046】
本実施形態のトウプリプレグの製造方法には、
図2に例示したトウプリプレグの製造装置100(以下、単に「製造装置100」ともいう。)を用いる。
製造装置100は、長尺の強化繊維束Fが巻き回されたボビン110と、樹脂含浸装置1と、複数のガイドロール112と、製造されたトウプリプレグPを巻き取る巻取り機114とを備えている。
【0047】
製造装置100においては、ボビン110の下流側に樹脂含浸装置1が設けられ、ボビン110から巻き出された強化繊維束Fがガイドロール112によって樹脂含浸装置1における樹脂含浸部10の導入側開口部16へと導かれるようになっている。また、巻取り機114が樹脂含浸装置1の下流側に設けられ、樹脂含浸装置1における樹脂含浸部10の導出側開口部18から導出されたトウプリプレグPがガイドロール112により巻取り機114へと導かれるようになっている。
【0048】
製造装置100を用いるトウプリプレグの製造方法では、ボビン110から長尺の強化繊維束Fを連続的に巻き出し、ガイドロール112により樹脂含浸装置1へと導いて、導入側開口部16から樹脂含浸部10内の収容部11に連続的に導入する。収容部11には樹脂循環部12により樹脂組成物Xが循環されており、このように樹脂組成物Xが満たされた収容部11を通過させることで強化繊維束Fに樹脂組成物Xを含浸させる。そして、樹脂組成物Xが含浸された強化繊維束Fを収容部11から導出側開口部18を通じて樹脂含浸部10から導出する。樹脂含浸部10では、S
B/S
Aが0.5〜1.2に制御されているため、導出側開口部18から強化繊維束Fが導出される際に余分な樹脂組成物が削ぎ落とされることで、樹脂含有率が高精度に制御されたトウプリプレグPが形成される。形成したトウプリプレグPは、ガイドロール112により巻取り機114へと導いて巻き取る。
【0049】
トウプリプレグの製造方法は、下記の条件(1)〜(3)を満たすように実施する。
(1)導入側開口部16から収容部11に導入される前の強化繊維束Fの長さ方向に垂直な断面積S
F(mm
2)に対する、導入側開口部16の開口面積S
A(mm
2)の比(S
A/S
F)が0.2〜1.0である。
(2)収容部11から樹脂排出部22を通じて排出される前記樹脂組成物の量(g/分)をW
1、樹脂供給部20を通じて収容部11に供給される前記樹脂組成物の量(g/分)をW
2としたとき、(W
1+W
2)/W
2が1.03〜2.00である。
(3)樹脂組成物Xを包含した強化繊維束Fの導出側開口部18直前の幅および厚みを含んだ全長をL
F(mm)、導出側開口部のもっとも狭い部分の幅および厚みを含んだ全長をL
sb(mm)としたとき、0.9≦L
F/L
sb≦3.0を満たす。
【0050】
強化繊維束Fの搬送速度は、5〜250m/分が好ましく、6〜200m/分がより好ましい。強化繊維束Fの搬送速度が前記範囲の下限値以上であれば、トウプリプレグの生産性が高まる。強化繊維束Fの搬送速度が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂含有率が高精度に制御されたトウプリプレグを得ることが容易になる。
【0051】
収容部11に収容する樹脂組成物の温度は、樹脂組成物の種類および粘度に応じて適宜設定でき、20〜80℃が好ましく、25〜70℃がより好ましい。樹脂組成物の温度が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂組成物の粘度がより低くなるため、強化繊維束への樹脂組成物の含浸効率がより高くなる。樹脂組成物の温度が前記範囲の上限値以下であれば、反応による増粘がない状態で熱硬化性樹脂を取り扱うことができる。
【0052】
強化繊維束を形成する強化繊維としては、特に限定されず、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる。無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。強化繊維としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
強化繊維としては、トウプリプレグを用いて形成される繊維強化複合材料の機械物性に優れる点から、炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が挙げられる。
炭素繊維としては、高い弾性率が得られやすい点ではピッチ系炭素繊維が好ましく、高い強度が得られやすい点ではPAN系炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
強化繊維束のフィラメント数は、1,000〜80,000本が好ましく、3,000〜60,000本がより好ましい。
強化繊維束の目付は限定されない。強化繊維束の目付およびフィラメント数に応じて導入側開口部および導出側開口部の面積、形状を設定することができる。
強化繊維束には、通常、収束性を高める目的でサイズ剤が付与されている。サイズ剤としては、特に限定されず、公知のサイズ剤を使用することができる。
【0055】
強化繊維束の引張弾性率は、145〜800GPaが好ましく、220〜600GPaがより好ましい。
なお、強化繊維束の引張弾性率は、JIS R 7601:1986に準拠して測定される値である。
【0056】
樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
なお、樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂を含む組成物であってもよい。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、BTレジン、尿素性樹脂、メラミン樹脂、イミド系樹脂等が挙げられる。なかでも、機械的特性や取り扱い性から、エポキシ樹脂が好適に使用できるがこれに限定されるのもではない。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、それぞれの樹脂に適した硬化剤を1種類以上用いることができる。さらに、耐衝撃性や樹脂フローを制御する目的で熱可塑性樹脂を適宜添加、併用しても構わない。
【0057】
樹脂組成物には、必要に応じて、内部離型剤、増粘剤、安定剤等の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
この例のように、樹脂組成物が含浸された強化繊維束を一旦巻き取ってトウプリプレグとする場合、使用する樹脂組成物の40℃における粘度は、0.1〜700,000Pa・sが好ましく、1〜20,000Pa・sがより好ましい。前記の樹脂組成物の粘度が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂組成物が樹脂含浸部10の収容部11から漏れ出しにくい。前記の樹脂組成物の粘度が前記範囲の上限値以下であれば、高速での製造速度でも最適な含浸状態が得られやすい。
【0059】
また、強化繊維束に樹脂組成物を含浸して形成したトウプリプレグをそのままFW法や引き抜き成型等に使用する場合も、最適な粘度範囲はトウプレグとする場合と同じである。
なお、樹脂組成物の40℃における粘度は、B型粘度計により測定される。
【0060】
本発明の製造方法で製造するトウプリプレグの樹脂含有率は、15〜45質量%が好ましく、17〜40質量%がより好ましい。本実施形態のようにトウプリプレグを一旦巻き取る場合、トウプリプレグの樹脂含有率は、20〜35質量%がさらに好ましい。また、含浸により形成したトウプリプレグをそのままFW法に使用する場合、トウプリプレグの樹脂含有率は、22〜33質量%がさらに好ましく、23〜30質量%が特に好ましい。また、含浸により形成したトウプリプレグをそのまま引き抜き成型に使用する場合、トウプリプレグの樹脂含有率は、17〜30質量%がさらに好ましい。
【0061】
以上説明したように、本発明のトウプリプレグの製造方法においては、導入側開口部と導出側開口部のS
B/S
Aを特定の範囲に制御した樹脂含浸装置を用い、条件(1)〜(3)を満たした状態でトウプリプレグを製造する。これにより、導出側開口部を通じて強化繊維束が導出される際に、余分に付着した樹脂組成物が削ぎ落とされるため、得られるトウプリプレグの樹脂含浸率を高精度に制御することができる。
【0062】
なお、本発明のトウプリプレグの製造方法は、前記した製造装置100を用いる方法には限定されない。
本発明のトウプリプレグの製造方法においては、樹脂含浸装置における樹脂含浸部の下流側にトウプリプレグを加熱しながら搬送する加熱ロールを備えるトウプリプレグの製造装置を用いる方法であってもよい。加熱ロールを用いることにより、樹脂組成物がより効率的に強化繊維束の内部まで充分に含浸されやすくなる。樹脂含浸装置における樹脂含浸部の下流側に加熱ロールを設ける場合、加熱ロールの数は、特に限定されず、1個であってもよく、2個以上であってもよい。加熱ロールの数は、2個以上が好ましい。
【0063】
トウプリプレグの製造装置に加熱ロールを設ける場合には、加熱ロールの下流側に必要に応じて冷却装置を設けてもよい。冷却装置としては、特に限定されず、例えば、冷風装置、チルロール等が挙げられる。なかでも、結露しにくく、結露水が製品に混入しにくい点から、冷風装置が好ましく、乾燥した冷風(水分量50%以下)を吹き付ける冷風装置がより好ましい。
【0064】
[繊維強化複合材料の製造方法]
本発明の樹脂含浸装置を用い、条件(1)〜(3)を満たした状態で製造したトウプリプレグは、巻取り機等に巻き取らずにそのままFW法や引き抜き成型法による繊維強化複合材料の製造方法に利用してもよい。
例えば、本発明の樹脂含浸装置を用い、条件(1)〜(3)を満たした状態で製造したトウプリプレグをそのままFW法を利用した圧力容器(繊維強化複合材料)の製造方法に利用してもよい。該圧力容器の製造方法の具体例としては、例えば、
図3に例示した圧力容器の製造装置200を用いる方法が挙げられる。
図3における
図2と同じ部分は同符合を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態の圧力容器の製造装置200(以下、単に「製造装置200」ともいう。)は、長尺の強化繊維束Fが巻き回されたボビン110と、樹脂含浸装置1と、複数のガイドロール112と、製造されたトウプリプレグPをライナー120に巻き付けるフィラメントワインディング装置116(以下、「FW装置116」という。)とを備えている。
【0066】
製造装置200においては、ボビン110の下流側に樹脂含浸装置1が設けられ、ボビン110から巻き出された強化繊維束Fがガイドロール112によって樹脂含浸装置1における樹脂含浸部10の導入側開口部16へと導かれるようになっている。また、FW装置116が樹脂含浸装置1の下流側に設けられ、樹脂含浸装置1における樹脂含浸部10の導出側開口部18から導出されたトウプリプレグPがガイドロール112によりFW装置116へと導かれるようになっている。
【0067】
FW装置116としては、公知の装置を使用することができる。FW装置116の具体例としては、例えば、ライナーを中心軸周りに回転可能に保持でき、ライナーを中心軸周り回転させながら、ファイバーアイ118によりトウプリプレグPをライナーの外側に巻き付けてライナーを被覆できる装置が挙げられる。
【0068】
製造装置200を用いる圧力容器の製造方法では、ボビン110から長尺の強化繊維束Fを連続的に巻き出し、ガイドロール112により樹脂含浸装置1へと導いて、導入側開口部16から樹脂含浸部10内の収容部11に連続的に導入する。収容部11において樹脂組成物Xを強化繊維束Fに含浸させ、導出側開口部18を通じて樹脂含浸部10から導出し、得られたトウプリプレグPをFW装置116へと導く。次いで、FW装置116において、ライナー120を中心軸周り回転させ、ファイバーアイ118により巻き付け位置を調整しながらトウプリプレグPをライナー120の外側に巻き付けてライナー120を被覆する。ライナー120の外側にトウプリプレグPを巻き付けた後は、トウプリプレグPを硬化させることで、ライナー120の外側に繊維強化複合材料からなる補強層を有する圧力容器が得られる。
【0069】
また、本発明の樹脂含浸装置を用いて製造したトウプリプレグを、引き抜き成型法を利用した引き抜き成型体(繊維強化複合材料)の製造方法に利用してもよい。該引き抜き成型体の製造方法の具体例としては、例えば、
図4に例示した引き抜き成型体の製造装置300を用いる方法が挙げられる。
図4における
図2と同じ部分は同符合を付して説明を省略する。
本実施形態の引き抜き成型体の製造装置300(以下、単に「製造装置300」ともいう。)は、長尺の強化繊維束Fが巻き回されたボビン110と、樹脂含浸装置1と、複数のガイドロール112と、引き抜き成型金型122と、引取り機124とを備えている。
【0070】
製造装置300においては、ボビン110の下流側に樹脂含浸装置1が設けられ、ボビン110から巻き出された強化繊維束Fがガイドロール112によって樹脂含浸装置1における樹脂含浸部10の導入側開口部16へと導かれるようになっている。また、樹脂含浸装置1の下流側に引き抜き成型金型122が設けられ、引き抜き成型金型122の下流側に引取り機124が設けられている。
引き抜き成型金型122および引取り機124としては、公知の装置を使用することができる。
【0071】
製造装置300を用いる引き抜き成型体の製造方法では、ボビン110から長尺の強化繊維束Fを連続的に巻き出し、ガイドロール112により樹脂含浸装置1へと導いて、導入側開口部16から樹脂含浸部10内の収容部11に連続的に導入する。収容部11において樹脂組成物Xを強化繊維束Fに含浸させ、導出側開口部18を通じて樹脂含浸部10から導出し、得られたトウプリプレグPを引き抜き成型金型122へと導く。次いで、トウプリプレグPを引き抜き成型金型122で加熱して硬化させながら引き抜き、形成された引き抜き成型体Sを引取り機124で引き取る。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[略号]
本実施例で使用した原料の略号は以下のとおりである。
37−800:炭素繊維束(製品名「37−800」、三菱レイヨン カーボンファイバー アンド コンポジッツ社製、引張強度:5500MPa、引張弾性率:255GPa、目付:1675Tex)
TR50S 15K:炭素繊維束(製品名「TR50S 15K」、三菱レイヨン社製、引張強度:4900MPa、引張弾性率:240GPa、目付:1000tex)
TR30S 3K:炭素繊維束(製品名「TR30S 3K」、三菱レイヨン社製、目付:200tex)
【0073】
[含浸状態]
各例で得られたトウプリプレグをメチルエチルケトンに浸漬し、発生する気泡量で含浸状態を判定した。未含浸部がある際に見られる気泡の発生が確認されない場合を「良好」、該気泡の発生が確認される場合を「不良」とした。
【0074】
[工程通過性]
各例のトウプリプレグの製造状況を目視にて確認し工程通過性を評価した。製造過程で強化繊維束から毛羽の発生は認められず、強化繊維束を連続的に安定して走行させることができる場合を「良好」、製造過程で強化繊維束から毛羽の発生は認めるか、強化繊維束を連続的に安定して走行させることができない場合を「不良」とした。
【0075】
[実施例1]
製造装置100を用いて、樹脂循環部12により収容部11に樹脂組成物を循環させつつ強化繊維束Fに該樹脂組成物を塗布し、含浸させてトウプリプレグを製造した。強化繊維束Fとしては37−800の炭素繊維束を用いた。また、製造装置100が備える樹脂含浸装置1においては、導入側開口部16の断面形状を矩形状、開口面積S
Aを2mm
2とし、導出側開口部18の断面形状を矩形状、開口面積S
Bを2mm
2とし、樹脂含浸部10の収容部11内の樹脂容量を100cm
3とした。樹脂組成物としては三菱化学社製エポキシ樹脂「jER828」に日立化学社製酸無水物(硬化剤)NH3500を1:1で混合したエポキシ樹脂組成物を用いた。樹脂循環部12および樹脂含浸部10を40℃に加温し、強化繊維束Fの走行速度を75m/分とした。各パラメーターは、S
B/S
A=1.0、S
F/S
A=0.51、導入側開口部における強化繊維束Fの接触長さL
SAは強化繊維束Fの外周長さLfに対して96%、L
F/L
sbは1.3、樹脂の吐出量比(W
1+W
2)/W
2=1.67であった。
【0076】
[実施例2〜8]
製造条件を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でトウプリプレグを製造した。実施例7、8においては、1本の37−800と1本のTR50S 15Kの合計2本の炭素繊維束を同一の導入側開口部16に導入し、導出側開口部18から導出した。
【0077】
[比較例1〜6]
製造条件を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でトウプリプレグを製造した。実施例1では、37−800の炭素繊維束2本を矩形型の同一の導入側開口部16に導入し、同一の導出側開口部18から導出した。
【0078】
各例の製造条件および評価結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2における「L
SAの割合」は、導入側開口部における強化繊維束Fの接触長さL
SAの強化繊維束Fの外周長さLfに対する割合(%)を意味する。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1に示すように、実施例1〜8では、得られたトウプリプレグの含浸状態は良好であった。また、製造過程で強化繊維束から毛羽の発生は認められず、強化繊維束を連続的に安定して走行させることができ、工程通過性が良好であり、高い生産速度でトウプリプレグを製造できた。また、得られたトウプリプレグをFW法および引き抜き成型に供したところ、良好な成型体が得られることが確認された。
一方、S
F/S
Aが1.00を超える比較例1では、導出側開口部に炭素繊維束がつまり、炭素繊維束を走行させることができなかった。S
F/S
Aが0.20未満である比較例2では、導入側開口部もしくは導出側開口部から樹脂組成物が漏れると共に、得られるトウプリプレグの樹脂含有率が安定しなかった。S
B/S
Aが0.5未満の比較例3では、強化繊維束が導出側開口部につまり、連続的に走行させることが不可能であった。S
B/S
Aが1.2を超える比較例4では、導出側開口部から樹脂組成物が漏れ、得られるトウプリプレグの樹脂含有率が不安定であった。(W
1+W
2)/W
2が1.03未満の比較例5では、炭素繊維束に必要な樹脂量を連続的に付着できず、トウプリプレグには未含浸部があった。L
F/L
sbが0.9未満の比較例6では、炭素繊維束に必要な樹脂量を連続的に付着できず、トウプリプレグには未含浸部があった。