(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、分散調整剤、相溶化剤又は分散調整剤と相溶化剤との混合物と、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、
前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成しており、
前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であることを特徴とする包装材。
さらに、前記低密度ポリエチレンを含む最外層と前記ガスバリア性を有する樹脂層との間、及び前記ガスバリア性を有する樹脂層と前記最内層との間に接着層を備える、請求項10に記載の包装材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された包装容器の最内層に高級脂肪酸化合物を添加した包装容器は、付着性を抑えることができるが、高級脂肪酸自体が内容物に入り込み、内容物の特性の変化や内容物中に不純物が混入する恐れがあった。
また、特許文献2に開示された内層にポリエステル、エチレン酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いる方法では、内層にポリエステル等の樹脂を使用すると内容物の吸着は少なくなるが、内容物の転落性は向上しないことが分かっている。
【0010】
また、特許文献3に開示されたフッ素やシリコーン樹脂やフッ素などの撥油及び撥水樹脂を用いた方法や、これら撥油及び撥水樹脂を練り込んだ混合組成物では、おかゆ等の比較的水分が多く低粘性の内容物に対して、良好な排出性が得ることができるが、油分が含まれ、高粘性の内容物になるにつれて、排出機能が低下し、さらなる特性の向上が求められている。
また、特許文献4に開示された樹脂成形物表面に、凹凸を形成する方法では、さらに樹脂成形物表面を加工する工程が必要となり、作業効率の低下を招く恐れがある。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高粘性の内容物の粘着を抑制し、内容物の排出性を向上させた包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の態様を含む。
[1]主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、分散調整剤、相溶化剤又は分散調整剤と相溶化剤との混合物と、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成して
おり、前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であることを特徴とする包装材。
[2]最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が0.5重量%以上60重量%以下である、[1]に記載の包装材。
[3]主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成しており、
前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であり、最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする包装材。
[4]前記最内層を形成する樹脂中に分散調整剤、相溶化剤又は分散調整剤と相溶化剤との混合物を含む、[3]に記載の包装材。
[5]前記最内層表面に存在する前記樹脂Bに油分が吸着、吸油又は溶解することにより、油膜潤滑層が形成されている、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の包装材。
[6]前記相分離構造が海島状、針状又はマトリックス状である、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の包装材。
[7]
前記樹脂Bが親油性粒子又は親油性無機物を添加した樹脂、ゼオライト、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリ環状オレフィン、環状オレフィン系共重合体、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、又はこれらの混合物である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の包装材。
[8]前記樹脂Bがポリスチレンである、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の包装材。
[9]さらに、ガスバリア性を有する樹脂層を備える、[1]〜[8]のいずれか一つに記載の包装材。
[10]包装材の最外面から、低密度ポリエチレンを含む最外層、前記ガスバリア性を有する樹脂層及び前記最内層の順に層構造が形成された、[9]に記載の包装材。
[11]さらに、前記低密度ポリエチレンを含む樹脂層と前記ガスバリア性を有する樹脂層との間、及び前記ガスバリア性を有する樹脂層と前記最内層との間に接着層を備える、[10]に記載の包装材。
[12][1]〜[11]のいずれか一つに記載の包装材に収容されたことを特徴とする食品。
[13]前記食品がマヨネーズ類である、[12]に記載の食品。
[14]前記マヨネーズ類の油含有量が5重量%以上45重量%以下である、[13]に記載の食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、油分を含む内容物の排出性、移動性又は滑落性を向上させた包装材を提供することができる。また、内容物から吸着、吸油又は溶解される油分の量を低減させ、内容物の組成変化や特性変化を抑えることができる。さらに、本発明の包装材がチューブや配管である場合、内面の潤滑性が向上され、管内抵抗が低減された医療用又は食品用チューブを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
<包装材>
一実施形態として、本発明は、主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成している、包装材を提供する。
【0017】
本実施形態の包装材によれば、油分を含む内容物から、油分を吸着、吸油又は溶解させ、油膜潤滑層を形成することによって、内容物の排出性、移動性又は滑落性を向上させることができる。また、内容物から吸着、吸油又は溶解される油分の量を低減させ、内容物の組成変化や特性変化を抑えることができる。
【0018】
本明細書において、「相溶性」とは、2種類以上の物質が相互に親和性を有し、溶液又は混和物を形成する性質を意味する。本明細書においては、油分に対する相溶性について言及している。また、本明細書において、油分に対する相溶性は、親油性、吸油性又は油分の溶解性も包含する。
本明細書において、「油分に対する高い相溶性」又は「油分に対して、相溶性が高い」とは、油分に対して親和性が高く、油分に溶解又は混和し、溶液又は混合物を形成しやすいことを意味する。一方、「油分に対する低い相溶性」又は「油分に対して、相溶性が低い」とは、油分に対して親和性が低く、油分に溶解又は混和しにくく、分離しやすいことを意味する。
本明細書において、「最内層」とは、内容物と接触する面を形成する層を意味する。
【0019】
[樹脂A]
本実施形態において、樹脂Aは樹脂層の主材料であり、一般的な包装容器の主材料として用いられている材料であれば特別な限定はなく、中でも、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらの混合物等が挙げられる。中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であることが好ましい。
【0020】
[樹脂B]
本実施形態において、樹脂Bとしては、上記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂、つまり、樹脂Aよりも油分に対する親和性が高く、油分に溶解又は混和しやすい樹脂であれば特別な限定はない。樹脂Bとしては、例えば、親油性粒子又は親油性無機物(例えば、ガラス、石英、シリカ、アルミナ、酸化チタン等)を添加した樹脂、ゼオライト、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリ環状オレフィン、環状オレフィン系共重合体、環状オレフィン系共重合体、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン) ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS) 、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体 、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体等が挙げられ、又は、これらの混合物でもよい。中でも、樹脂Bとしては、ポリスチレンが好ましい。
【0021】
[相分離構造]
図1(A)は、本実施形態における包装材の最内層の断面を示す概念図である。
図1(A)において、樹脂A(1)と樹脂B(2)とが相分離構造を形成した樹脂層を最内層に備えており、樹脂B(2)が樹脂層の深さ方向に対して非連続的に存在する。
【0022】
本明細書において、「相分離」とは、混合物の温度、圧力等を変えること等により、混合物中の物質の相溶性が変化し、一相状態から二相以上の複数の相に変化することを意味する。上記樹脂Aと上記樹脂Bとによる相分離構造は、海島状、針状又はマトリックス状であってよい。
本明細書において、「海島状の相分離構造」とは、2種類以上の成分を混合した際に、ある1成分とその他の成分との相溶性が低く、ある1成分又はその他の成分のいずれかの量がかなり多い場合に生じる状態で、表面部分に島のように少ない方の成分が散らばる状態を意味する。例えば、
図1においては、樹脂Aと樹脂Bとの相溶性が低く、樹脂Aの含有量が多いため、樹脂Bが島状に散らばっている。
本明細書において、「針状の相分離構造」とは、2種類以上の成分を混合した際に、ある1成分とその他の成分との相溶性が低く、ある1成分又はその他の成分のいずれかの量がかなり多く、さらに、含有量の少ない方の成分が針のように細い棒状の構造を有する場合に生じる状態で、表面部分に、針のように少ない方の成分が散らばる状態を意味する。
本明細書において、「マトリックス状の相分離構造」とは、2種類以上の成分を混合した際に、ある1成分とその他の成分との相溶性が低く、各成分が繊維状の細長い構造を有する場合に生じる状態で、各成分が格子状に絡み合った状態を意味する。
【0023】
図1(B)は、本実施形態における包装材の最内層(10)と内容物(20)とが接触している様子を示す概念図であり、
図1(C)は、本実施形態において包装材の最内層(10)表面に存在する樹脂Bに内容物中の油分が吸着、吸油又は溶解し、油膜層を形成する様子を示す概念図である。
図1(C)において、内容物(20)中の油分C(3)は、内容物(20)が接する最内層(10)表面に存在する樹脂B(2)に吸着、吸油又は溶解することにより、油膜層を形成する。この油膜層により、内容物の排出、移動性等の滑落性を向上させることができる。
また、上述の通り、樹脂B(2)が樹脂層の深さ方向に対して非連続的に存在することにより、深さ方向への油分の浸透を防ぐことができる。このため、内容物から分離される油分量を減少することができ、表面の油膜層を制御することができる。また、本実施形態の包装材をヒートシールしてパウチ等の袋を成形した場合において、表面の油膜層が制御されていることから、ヒートシール性を維持することができ、包装材としての機能又は内容物の保存性を維持することができる。
【0024】
また、内容物(20)中の油分C(3)は、内容物が接する最内層表面に存在する樹脂B(2)にのみ、吸着、吸油又は溶解するため、内容物の組成変化や特性変化を低減でき、容器を傾斜や倒立させて使用する際の内容物の転落性を長期間(多数回)維持することが可能となる。特に、内容物中に含まれる油分が5重量%以上45重量%以下である場合、上記転落性の向上が顕著である。
【0025】
また、本実施形態において、
図2(A)〜(C)に示すように、本実施形態における包装材の最内層は、表面に凹凸構造を有していてもよい。樹脂A(1)と樹脂B(2)とを含む樹脂層からなる最内層(10)の表面粗さは、0.5μm以下であればよい。上記範囲内である場合、内容物の転落性の向上が顕著である。
【0026】
また、内容物の表面積1mm
2あたりに接する最内層表面に存在する樹脂Bの表面積は0.005mm
2以上0.6mm
2以下であることが好ましく、0.03mm
2以上0.3mm
2以下であることがより好ましく、0.05mm
2以上0.2mm
2以下であることがさらに好ましい。樹脂Bの表面積が上記範囲内であることにより、樹脂Aと樹脂Bとの油分に対する相溶性の差の影響が保たれ、内容物の転落性の向上が顕著である。
【0027】
従来、樹脂Bのみを用いた包装材では、樹脂Bは油分を吸着、吸油又は溶解するため膨潤又は変質等が起こり、包装材としての機械的な強度が低減してしまう問題があった。本実施形態の包装材においては、樹脂Aと樹脂Bとが相分離構造を形成しており、樹脂Bの含有量が樹脂Bのみを用いた包装材よりも少ないため、上記の膨潤又は変質等が起こる樹脂層中の樹脂Bの体積が低減されて、強度が保たれ、包装容器としての機能を維持することができる。
【0028】
本実施形態において、最内層を形成する樹脂中の樹脂Bの含有量が0.5重量%以上60重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上15重量%以下であることがさらに好ましい。樹脂Bの含有量が上記範囲内にある場合、内容物の転落性の向上が顕著であり、長期間に渡って良好な転落性の維持が可能である。
【0029】
本実施形態において、樹脂層は、分散調整剤、相溶化剤又は分散調整剤と相溶化剤との混合物を含んでいてもよい。分散調整剤としては、樹脂Bを樹脂A中に分散できるものであれば、特別な限定はなく、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、又は、これらの混合物でもよい。また、相溶化剤としては、樹脂Bを樹脂A中に分散できるものであれば、特別な限定はなく、例えば、ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン) ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS) 、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体 、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体等が挙げられ、又は、これらの混合物でもよい。
また、最内層を形成する樹脂中の分散調整剤、相溶化剤又は分散調整剤と相溶化剤との混合物の含有量は、0.05重量%以上10重量%以下であってよく、0.1重量%以上5重量%以下であってよく、0.1重量%以上1重量%以下であってよい。
【0030】
[その他層構造]
本実施形態の包装材は、上記最内層以外に、ガスバリア層、中間層、又は必要に応じて接着層を有していてもよい。
【0031】
ガスバリア層は、ガスバリア性を有する樹脂を用いて形成すればよい。
本明細書において、「ガスバリア性」とは、水蒸気、酸素、二酸化炭素、窒素等の空気を遮断する性質を意味する。ガスバリア性を有する樹脂としては、特別な限定はなく、例えば、エチレン−ビニルアアルコール共重合体(EVOH)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリグリコール酢酸等を挙げることができる。例えば、エチレン−ビニルアアルコール共重合体(EVOH)をガスバリア層として用いる場合において、エチレンの含有量が20モル%以上60モル%以下(好ましくは、25モル%以上50モル%以下)であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上(好ましくは、99モル%以上)となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物を使用することができる。
【0032】
中間層は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から、その使用能様や要求される機能により適宜選択できる。例えば、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、上述したものと同様のもの等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)又はこれらの共重合ポリエステル、若しくはこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
接着層は、接着剤樹脂を用いて形成することができる。接着剤樹脂としては、例えば、カルボキシ基又はカルボン酸無水物を有する樹脂等が挙げられる。
【0034】
[内容物]
本実施形態の包装材に収容される内容物としては、油分を有するものであって、水中油型又は油中水型乳化物、水中油型、油中水型が多層構造に構成された乳化物、水分と油分との混合物等が挙げられる。
【0035】
水中油型乳化物としては、ドレッシング、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、サラダドレッシング、フレンチドレッシング等が挙げられ、特にこれらに限定されるものでなく、広くマヨネーズ類、ドレッシング類と言われる水中油型乳化物が含まれる。また、化粧品や医薬類等も含まれる。中でも、マヨネーズ類が好ましく、本実施形態の包装材にマヨネーズ類を収容する場合、内容物の転落性の向上が顕著である。
【0036】
本明細書において、「マヨネーズ類」とは、主として日本農林規格(JAS規格;Japanese Agricultural Standard)でいう乳化型ドレッシングであり、乳化液の粘度の高い(30,000CP以上)半固体状ドレッシングのことを意味する。マヨネーズ類の具体例としては、マヨネーズ、サラダドレッシング、タルタルソース、その他の半固体状のドレッシング等を挙げることができる。また、類似の性状を有しながら成分組成がJAS規格に合致しないマヨネーズに類似の商品群及び乳化タイプのソース類もマヨネーズ類に含まれる。
本明細書において、「ドレッシング類」とは、主として日本農林規格(JAS規格)のひとつである「ドレッシングの日本農林規格」に記載の、マヨネーズ以外の半固体状ドレッシング、サラダクリーミードレッシング等の食品を意味し、これらに限定されない。また、本明細書におけるドレッシング類には、野菜や果物等、他の固体成分や液体成分を含んだ食品も含まれる。
【0037】
油中水型乳化物としては、例えば、バター、マーガリン類等が挙げられ、特にこれらに限定されるものでない。また、化粧品や医薬類等も含まれる。
【0038】
水中油型又は油中水型乳化化合物に含まれる油分成分としては、例えば、蜜蝋、木蝋、カルナバ蝋、カカオ油、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、パーム油、菜種油、綿実油、大豆油、マッコウ鯨油、豚脂、牛脂、ロジン等の植物及び動物性の油脂又は蝋;これらの油脂を加水分解又はエステル交換したモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の合成又は天然の飽和及び不飽和脂肪酸;さらに、ウラリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、等の飽和又は不飽和アルコール;上述の脂肪酸と上述のアルコールからなるエステル;固形パラフィン、ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動パラフィン、シリコーンオイル等の鉱物系の油性化合物等が挙げられる。これらは単独でもよく、2種以上を混合してもよい。
【0039】
水中油型又は油中水型乳化物において、油含有量が5重量%以上45重量%以下であることが好ましく、10重量%以上45重量%以下であることがより好ましく、10重量%以上30重量%以下であることがさらに好ましい。油含有量が上記範囲内である場合、内容物の転落性の向上が顕著である。
【0040】
[製造方法]
本実施形態の包装材は、公知の成形法を用いて製造することができる。例えば、以下に示す製造方法等が挙げられる。
まず、樹脂Aと樹脂Bとを混合した混合樹脂、又は、樹脂Aと樹脂Bとを混練機等を用いて混合した混合樹脂を作製する。続いて、作製した混合樹脂を、積層する樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層ダイにより押出成形を行い、多層フィルム、多層シート、多層パリソン又は多層パイプを成形する。また、樹脂の種類に応じた射出成形機等を用いて、同時射出法や逐次射出法等の共射出成形によりボトル成形用の多層プリフォームを製造する。
また、上述の多層フィルム、多層パリソン、多層プリフォーム等をさらに加工することにより、多層構造容器を得る。
【0041】
本実施形態の包装材は、上述の樹脂Aと樹脂Bとを含む樹脂を用いて、既存の製造方法のみにより包装材を製造することができるため、低コストで、量産性に優れており、且つ、機能性が向上されている。
【0042】
本明細書において、「包装材」とは、内容物を収容するための資材を意味し、例えば、フィルム、シート等の平面状のもの、パリソン、パイプ等円筒状のもの、ボトル、チューブ等の容器、又は上述の容器を成形するためのプリフォーム等が挙げられる。大きさ、形状等に制限はなく、適宜設計することができる。
【0043】
フィルム等の平面状のものは、種々の形態のパウチやトレイ又はカップの蓋材として用いることができる。パウチとしては、例えば、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は、公知の製袋法を用いて行うことができる。また、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段を用いることにより、カップ状、トレイ状等の包装容器を得ることができる。
【0044】
多層フィルムや多層シートの製造には、例えば、押出コート法や、サンドイッチラミネーション法等を用いることができる。また、予め形成された単層及び多層フィルムを用いて、ドライラミネーション法により積層することもできる。
【0045】
また、パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルやチューブを成形することができる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延押すると共に、流体圧によって円周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等を得ることができる。
【0046】
[包装材の用途]
本実施形態の包装材は、上述の油分を含む内容物を収容するために使用することができ、食品用、化粧品用又は医薬品用等として広く活用することができる。また、用途に応じて、包装材に使用する樹脂の種類、グレード、添加剤等を適宜選択することができる。本実施形態の包装材は、内容物として食品を収容することが好ましく、マヨネーズ類を収容することが特に好ましい。本実施形態の包装材にマヨネーズ類を収容する場合、内容物の転落性の向上が顕著である。
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
本実施例における各種評価項目は、以下の方法により行った。
[内容物転落速度の測定方法]
[1]試験片を用いた評価
樹脂A及び樹脂Bの混合樹脂を材料として、射出成形法を用いて35mm×35mmの平坦な試験片を成形した。続いて、得られた試験片の水平方向に、一直線上に太さ1mmのマヨネーズを配置し、試験片を垂直に立てて、滑落速度を測定した。使用したマヨネーズは、油分含有量約25%であった。傾斜角90°、室温24℃、湿度50%RHの条件で、滑落状態を経時時間毎(サンプリングタイプ10秒)に測定することにより、経時毎の画像を取得した。続いて、取得した画像中において、移動距離を算出して滑落速度を計算した。
[2]マヨネーズ容器を用いた評価
次に、上記滑落速度を計算した試験片の中から、特に滑落速度の数値が大きい樹脂A及び樹脂Bの配合条件を用いて、ブロー成形法で
図3に示すマヨネーズ用の容器を作製した。容器は、外側からバリア層、接着層、中間層、接着層、最内層の5層構造を構成するように成形した。使用したマヨネーズは、油分含有量約25%であった。食品容器を垂直に立てて、室温5℃の冷蔵庫内という条件で、滑落状態を確認し、結果を判断した。
【0049】
[内容物油分吸着状態の判別方法]
材料Aと材料Bの混合樹脂の分散状態(特に、材料Bの材料Aの内の結合状態(材料Bのマトリックス状態)を判断するために、樹脂A及び樹脂Bの混合樹脂を材料として、射出成形法を用いて35mm×35mmの平坦な試験片を成形した。または、樹脂A及び樹脂Bの混合樹脂を材料として成形したブローボトルの最内層を切り出して、35mm×35mmの試験片を作製した。
試験方法としては、得られた試験片中央に5μLのごま油を滴下し、ごま油のぬれ広がり速度を観察した。測定条件は、室温24℃、湿度50%RHの条件で、経時時間毎(サンプリングタイプ10秒)に測定することにより、経時毎の画像を取得し、ぬれ広がりを評価した。
【0050】
[実施例1]
(1)試験片の作製
樹脂Aとして、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mを、樹脂Bとして、PSジャパン株式会社製のポリスチレン樹脂 HX220又は475Dを用いた。樹脂Aと樹脂Bとの重量比を100:0、97:3、95:5、90:10、80:20、60:40、40:60、20:80、10:90、0:100と変えて、射出成形法にて35mm×35mmの平坦な試験片を成形した。
【0051】
(2)試験片を用いた内容物転落速度の評価
上述した測定方法により、滑落性を評価した。
図4(A)は、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220)との重量比を変えた試験片でのマヨネーズの滑落状態を示す画像であり、
図4(B)は、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)との重量比を変えた試験片でのマヨネーズの滑落状態を示す画像である。また、表1は、各重量比での滑落速度を示したものである。
【0052】
【表1】
【0053】
低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mが100重量%である場合には、マヨネーズは滑落しなかった。詳しいデータは示さないが、油分を50%以上含むマヨネーズを用いた場合においては、低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mが100重量%の試験片でも滑落することが確認できたが、今回の試験で使用した油分が25%である低脂肪のマヨネーズにおいては、滑落しないことが明らかとなった。
また、ポリスチレン樹脂 HX220を用いた場合においては、配合量が40重量%以上となると、滑落速度が減少することが明らかとなった。また、ポリスチレン樹脂 475Dを用いた場合においては、配合量が20重量%以上となると、滑落速度が減少することが明らかとなった。
【0054】
(3)内容物油分吸着状態の判別
上述した判別方法により、内容物油分の吸着状態を評価した。
図5(A)は、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220)との重量比を変えた試験片でのごま油のぬれ広がりを示す画像であり、
図5(B)は樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)との重量比を変えた試験片でのごま油のぬれ広がりを示す画像である。
図5(A)から、樹脂Bがポリスチレン樹脂 HX220である場合においては、配合量が40重量%以上と40重量%未満とで、ぬれ広がりが大きく変化することが明らかとなった。また、
図5(B)から、樹脂Bがポリスチレン樹脂 475Dである場合においては、配合量が20重量%以上と20重量%未満とで、ぬれ広がりが大きく変化することが明らかとなった。
これは、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)に相分離した樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220又は475D)の分散状態の違いを示しており、針状又は海島状に配置された樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220又は475D)同士の接触確率が低いため、油分の濡れ広がりが抑えられたと推察できる。
よって、樹脂Bがポリスチレン樹脂 HX220である場合においては、配合量が40重量%未満、又は、樹脂Bがポリスチレン樹脂 475Dである場合においては、配合量が20重量%未満では、樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220又は475D)同士の接触確率が低いため、相溶性を有する樹脂B(ポリスチレン樹脂 HX220又は475D)を通して、樹脂内部まで油分が吸着、吸油又は溶解する量を低減することができ、結果として、内容物に含まれる少量の油分だけで油膜層を形成できることが確かめられた。
【0055】
また、樹脂Bがポリスチレン樹脂 HX220である場合においては、配合量が40重量%以上と40重量%未満とで、樹脂Bがポリスチレン樹脂 475Dである場合においては、20重量%以上と20重量%未満とで、ぬれ広がりが大きく変化した。この結果から、HX220と475Dとでは、ポリスチレン樹脂のグレードが異なり、油分の濡れ広がりを抑えるのに必要とする配合量が異なることが明らかとなった。これは、ポリスチレン樹脂のグレードによって、ブタンなどの含有量が変化するためであると推察できる。
【0056】
(4)マヨネーズ容器の作製
最外層及び中間層として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M、接着層として、三井化学(株)社製のADMER LB540、ガスバリア層として、(株)クラレ社製のEVAL F101B、最内層として、樹脂A(日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)との重量比を95:5で混合した樹脂を用いた。最内層として、成形はブロー成形機を用いて、マヨネーズ形状の5層多層容器を作製した。また、対照として、樹脂A(日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)のみを最内層に使用したマヨネーズ形状の5層多層容器を作製した。作製した容器の層構成及び層の厚さは下記の通りである。
(外側)最外層 350μm/接着層 30μm/ガスバリア層 40μm/接着層 30μm/最内層 150μm(内側)
【0057】
(5)マヨネーズ容器を用いた内容物転落速度の評価
(4)で成形したマヨネーズ容器を用いて、上述した測定方法により、滑落性を評価した。結果を
図6に示す。
図6から、マヨネーズの滑落性が向上されていることが確かめられた。
【0058】
[実施例2]
(1)試験片の作製
樹脂Aとして、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mを、樹脂Bとして、PSジャパン株式会社製のポリスチレン樹脂 475D、相溶化剤として、旭化成ケミカルズ株式会社製の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043を用いた。樹脂Aと樹脂Bとの重量比を100:0と90:10とで固定し、樹脂Bと相溶化剤とを、99.75:0.25、99.5:0.5、99:1、97:3、95:5、90:10、80:20、70:30と混合比を変えて、射出成形法にて35mm×35mmの平坦な試験片を成形した。
【0059】
(2)試験片を用いた内容物転落速度の評価
上述した測定方法により、滑落性を評価した。表2は、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と、樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)と、相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)との重量比を変えた試験片でのマヨネーズの滑落速度を示したものである。
【0060】
【表2】
【0061】
低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mが100重量%である場合には、マヨネーズは滑落しなかった。詳しいデータは示さないが、油分を50%以上含むマヨネーズを用いた場合においては、低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420Mが100重量%の試験片でも滑落することが確認できたが、今回の試験で使用した油分が25%である低脂肪のマヨネーズにおいては、滑落しないことが明らかとなった。
また、樹脂Bとして、ポリスチレン樹脂 475Dを、相溶化剤として、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043を用いた場合、相溶化剤の配合量の増加に伴い、滑落速度の増加が見られた。しかしながら、相溶化剤の配合量が1重量%(樹脂Bと相溶化剤との合計重量中10重量%)以上となると、滑落速度が減少することが明らかとなった。
【0062】
(3)内容物油分吸着状態の判別
上述した判別方法により、内容物油分の吸着状態を評価した。
図7は、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)と相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)との重量比を変えた試験片でのごま油のぬれ広がりを示す画像である。
図7から、樹脂Bがポリスチレン樹脂 475Dであり、相溶化剤が水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043である場合においては、樹脂Bの配合量が9重量%以上と9重量%未満とで、ぬれ広がりが大きく変化することが明らかとなった。
また、相溶化剤として、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043を添加した場合でも、油分のぬれ広がりに変化ないことが明らかとなった。これは、樹脂A(低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)に相分離した樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)中の相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)添加による分散状態の違いを示しており、針状又は海島状に配置された樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)同士の接触確率が低いため、油分の濡れ広がり性を抑制できたと推察できる。
よって、樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)の配合比が9重量%以下であり、相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)の配合比が1重量%(樹脂Bと相溶化剤との合計重量中10重量%)である場合では、相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)同士の接触確率が高いため、樹脂内部まで油分が吸着、吸油又は溶解する量を低減することができ、結果として、内容物に含まれる少量の油分だけで油膜層を形成できることが確かめられた。
【0063】
また、詳細なデータは示さないが、その他の相溶性を有する樹脂を樹脂Bとして使用した場合では、グレード又は種類によって、油分の濡れ広がりを抑えるのに必要とする配合量が異なることが明らかとなった。
【0064】
(4)マヨネーズ容器の作製
最外層及び中間層として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M、接着層として、三井化学(株)社製のADMER LB540、ガスバリア層として、(株)クラレ社製のEVAL F101B、最内層として、樹脂A(日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバッテック LB420M)と樹脂B(ポリスチレン樹脂 475D)と樹脂Bに添加される相溶化剤(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック H1043)との重量比を90:9:1で混合した樹脂を用いた。
成形はブロー成形機を用いて、マヨネーズ形状の5層多層容器を作製した。作製した容器の層構成及び層の厚さは下記の通りである。
(外側)最外層 350μm/接着層 30μm/ガスバリア層 40μm/接着層 30μm/最内層 150μm(内側)
【0065】
(5)マヨネーズ容器を用いた内容物転落速度の評価
(4)で成形したマヨネーズ容器を用いて、上述した測定方法により、滑落性を評価した。結果を
図8に示す。
図8から、マヨネーズの滑落性が向上されていることが確かめられた。