特許第6901905号(P6901905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901905
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】研磨液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 57/02 20060101AFI20210701BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20210701BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B24B57/02
   B24B37/00 K
   H01L21/304 622C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-94961(P2017-94961)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-187750(P2018-187750A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】早川 晋
(72)【発明者】
【氏名】飯島 悠
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−237952(JP,A)
【文献】 実開昭48−030489(JP,U)
【文献】 特開2004−022804(JP,A)
【文献】 特開2001−150347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/00 − 57/02
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP研磨装置に用いる研磨液の製造方法であって、
薬剤の所定重量がペレット状形成した錠剤型薬剤と、該錠剤型薬剤を溶かす溶媒とを用意し
さらに、該錠剤型薬剤は、少なくとも二種類の成分を備えた薬剤、または、主成分の薬剤と添加剤とからなる薬剤で形成され、
撹拌槽に所定重量の溶媒を供給する溶媒供給工程と、
該錠剤型薬剤を収容するカートリッジを備えた薬剤供給機構を用いて、該撹拌槽に供給した該溶媒に対して該カートリッジから該錠剤型薬剤を落下させて所定数量の該錠剤型薬剤を投入する薬剤投入工程と、
該撹拌槽で該錠剤型薬剤と該溶媒とを撹拌する撹拌工程とを備え、
該溶媒に対する該錠剤型薬剤の投入数量により研磨液濃度を調整することを特徴とする研磨液の製造方法。
【請求項2】
該薬剤供給機構は、該錠剤型薬剤の投入数量をカウントするセンサを備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨加工に使用される研磨液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの製造過程では、インゴットがスライスされて板状物が取り出され、板状物の両面が研削盤又はラッピング装置によって平坦化された後、更に研磨装置で鏡面研磨されることで集積回路が形成可能な表面状態にされている。また、板状物の表面に対する集積回路の形成工程では、多層配線の形成時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み金属配線の形成等において、研磨装置によって研磨加工が実施されている。このように、研磨装置は、半導体ウェーハの加工において欠かすことのできない重要な装置となっている。
【0003】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨では、研磨パッドと板状物に研磨液を供給しながら板状物が研磨される。研磨装置には研磨液が入ったタンクが装着され、タンクからポンプで研磨液が汲み上げられて、板状物と研磨パッドに研磨液が供給される。タンクには研磨加工に適した濃度の研磨液が貯留されているが、タンクの交換作業や運搬作業が作業者の負担になると共に比較的広い貯蔵スペースが必要になっていた。そこで、研磨液の濃縮液(原液)を用意して、濃縮液を薄めて使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−015469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、濃縮液を希釈するので、タンクの交換頻度を少なくすることができるが、タンク自体の重量は変わらないため交換作業は大変である。タンクを小さくして軽くすることで容易に交換できるが、タンクの交換頻度が増えてしまう。さらに、研磨液の濃縮液はアルカリ性又は酸性であり、濃縮液の取扱いに注意が必要である。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、安全性を確保しつつ、作業負担を低減することができる研磨液の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の研磨液の製造方法は、CMP研磨装置に用いる研磨液の製造方法であって、薬剤の所定重量が固形になった錠剤型薬剤と、該錠剤型薬剤を溶かす溶媒とを用い、撹拌槽に所定重量の溶媒を供給する溶媒供給工程と、該撹拌槽に供給した該溶媒に対して所定数量の該錠剤型薬剤を投入する薬剤投入工程と、該撹拌槽で該錠剤型薬剤と該溶媒とを撹拌する撹拌工程とを備え、該溶媒に対する該錠剤型薬剤の投入数量により研磨液濃度を調整することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、研磨液の製造時に固形の錠剤型薬剤を溶媒に投入するため、液状の薬剤を使用する場合と比較して運搬が容易かつ安全であり、さらに研磨液のタンクの交換作業を無くして作業負担を軽減することができる。また、液体や粉体のように量や重さで管理するのではなく、錠剤型薬剤を個数で管理することができるため、管理の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤を固形化して錠剤型薬剤にすることで容易かつ安全に運搬することができ、錠剤型薬剤を個数で管理することで管理負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態の研磨装置の模式図である。
図2】本実施の形態の錠剤型薬剤の斜視図である。
図3】本実施の形態の薬剤供給機構の模式図である。
図4】本実施の形態の研磨液の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本実施の形態の研磨装置について説明する。図1は、本実施の形態の研磨装置の模式図である。なお、研磨装置は、本実施の形態のように、板状物に研磨液を供給可能な構造を備えていればよく、図1に示す構成に限定されない。なお、図1では、説明の便宜上、押し出し式の薬剤供給機構を用いた研磨液の製造装置を例示している。
【0012】
図1に示すように、研磨装置1は、チャックテーブル10上の板状物Wに研磨パッド22を押し当てて、研磨液(スラリー)を供給しながらチャックテーブル10と研磨パッド22を相対回転させるように構成されている。このようなCMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨では、研磨液の化学成分によって板状物Wがエッチングされ、研磨パッド22に分散された砥粒によって板状物Wが機械的に研磨される。これにより、板状物Wの研磨速度を向上させることができると共に、研磨後に残る板状物Wの表面の微細な傷を減らして鏡面を得ることが可能になっている。
【0013】
チャックテーブル10は、ポーラス材によって保持面11が形成されており、保持面11に生じる負圧によって板状物Wを吸引保持している。チャックテーブル10の下部にはモータ12が連結されており、モータ駆動によってチャックテーブル10が回転駆動される。チャックテーブル10の上方にはスピンドル20が位置付けられており、スピンドル20のマウント21に研磨パッド22が貼着されている。スピンドル20にはモータ23及び昇降機構24が連結されており、モータ駆動によって研磨パッド22が回転されると共に昇降機構24によって研磨パッド22が板状物Wに離接される。
【0014】
研磨パッド22は、ウレタン等のパッド面に砥粒を分散させたものであり、砥粒としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、二酸化マンガン、セリア、クロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ベーマイト、バイヤライト、ダイヤモンド等が用いられている。研磨パッド22は、ウレタン素材等に所定の割合で砥粒を混入させて製造されており、研磨パッド22の研磨面全体に砥粒が固定されている。本実施の形態では、砥粒が混合された研磨液を使用する代わりに、砥粒が固定された研磨パッド22を用いて研磨液だけを供給するようにしている。
【0015】
ところで、一般に研磨装置で用いられる研磨液は、液体の状態で運搬や管理がされている。工場に向けて研磨液を運搬する際には、積載重量やタンクの積載スペースによって運搬コストが増大する。このため、研磨液の濃縮液(原液)を希釈して使用することで運搬コストを低減することが考えられているが、研磨液の濃縮液を量(体積)や重さで管理しなければならない。さらに、タンクの交換作業の作業負担に加えて、薬液取扱いによる労災リスクがある。
【0016】
そこで、本実施の形態では、研磨液を取り扱う際の作業負担、安全性、管理のし難さに着目して、研磨液の主成分(エッチング成分)を固形化した錠剤型薬剤を溶媒に投入して研磨液を製造している。溶媒に錠剤型薬剤を投入することで研磨液が製造されるため、タンクの交換作業を無くしてオペレータの作業負担を軽減することができる。また、薬剤の固形化によって持ち運び易くなると共に、錠剤型薬剤の分量を個数管理することが可能になっている。さらに、液状の薬剤と比較して取扱いが容易になるため、運搬作業等の安全性が高められている。
【0017】
なお、一般的な研磨装置では、砥粒が加えられた研磨液が研磨加工に使用されており、この研磨液で砥粒ごと固形化させようとすると、砥粒が凝集した状態で固形化されて錠剤型薬剤として使用することができない。このため、本実施の形態では、砥粒が入った研磨液を使用せずに、上記したように研磨パッド22に砥粒を固定して、研磨パッド22に研磨液だけを供給するようにしている。研磨液に砥粒が含まれないため、錠剤型薬剤の成形時に砥粒が凝集することがなく、研磨液の主成分を固形化させて錠剤型薬剤を生成することが可能になっている。
【0018】
図1に戻り、チャックテーブル10の上方には、研磨液を製造する製造装置30が設けられている。製造装置30には、溶媒(例えば、純水)が貯留された溶媒タンク31と、錠剤型薬剤39を溶媒に供給する薬剤供給機構40と、溶媒に錠剤型薬剤39を混合する撹拌槽32とが設けられている。溶媒タンク31には溶媒として純水が貯留されており、開閉バルブ33を介して溶媒タンク31から撹拌槽32に定期的に溶媒が供給される。薬剤供給機構40には複数の錠剤型薬剤39がストックされており、薬剤供給機構40から錠剤型薬剤39が1つずつ順番に撹拌槽32に供給される。なお、薬剤供給機構40の詳細は後述する。
【0019】
撹拌槽32にはプロペラ式の撹拌機34が取り付けられており、溶媒タンク31から供給された溶媒と薬剤供給機構40から供給された錠剤型薬剤39が撹拌機34によって撹拌槽32内で混合される。このとき、錠剤型薬剤39は所定重量の溶媒に対応した所定重量毎に固形化されており、撹拌槽32内で錠剤型薬剤39が所定重量の溶媒に溶解することで所定濃度の研磨液が生成される。撹拌槽32の下部には供給ノズル35が取り付けられており、研磨加工に撹拌槽32内の研磨液が供給ノズル35からチャックテーブル10上の板状物Wの上面に少しずつ供給される。
【0020】
このように構成された研磨装置1では、チャックテーブル10上の板状物Wに研磨パッド22が押し当てられ、供給ノズル35から研磨液が供給されながら板状物Wと研磨パッド22が相対回転されることでCMP研磨される。また、撹拌槽32で溶媒に錠剤型薬剤39を溶かして研磨液が生成されているため、研磨液の薬剤を液体の状態で保管しておく必要がない。錠剤型薬剤39は、小さく且つ軽く成形されているため持ち運びが容易であり、さらに所定重量毎に薬剤が固形化されているため錠剤型薬剤の投入数で研磨液の濃度を調整することが可能になっている。
【0021】
ここで、図2を参照して、錠剤型薬剤について説明する。図2は、本実施の形態の錠剤型薬剤の斜視図である。
【0022】
図2に示すように、錠剤型薬剤39は、例えば、常温で固体の薬剤としてアルカリ性の粉体を圧縮成形して扁平形状に形成されている。錠剤型薬剤39が溶媒に投入されると、錠剤型薬剤39が溶媒に溶解される。このとき、錠剤型薬剤39が扁平形状であるため、表面積が大きく溶媒に溶け易くなっていると共に、水に触れることで崩れ易くなっている。よって、溶媒に対して錠剤型薬剤39を良好に溶かすことができ、短時間で研磨液を生成することが可能になっている。錠剤型薬剤39は、単に固形化して運搬や管理の利便性を考慮するだけでなく、生産性を考慮して溶媒に溶け易い形状に成形されている。
【0023】
このように、錠剤型薬剤39は厚みよりも幅を優先させた扁平形状に成形されている。錠剤型薬剤39の厚みよりも幅(面積)を広げることで強度は低下するが、少なくとも運搬中に崩れない程度の強度を持つように押し固められている。また、錠剤型薬剤39は、運搬中に錠剤型薬剤39を衝撃等から保護できるように、専用のカートリッジに収容された状態で運搬されることが好ましい。
【0024】
なお、錠剤型薬剤39は、上記した扁平形状に限らず、レンズ形状や顆粒状のように厚みを持たせて形成されてもよい。この場合、錠剤型薬剤39に炭酸水素ナトリウム等の炭酸ガスを発生させる粉体を加えてもよい。溶媒内で錠剤型薬剤39から炭酸ガスが発泡することで、錠剤型薬剤39が溶媒内で崩れて錠剤型薬剤39が溶媒に溶け易くなっている。これによって、錠剤型薬剤39に厚みを持たせて強度を確保する一方で、炭酸ガスの発泡によって錠剤型薬剤39を崩れ易くして、溶媒に対する錠剤型薬剤39の溶け易さを向上させている。
【0025】
また、錠剤型薬剤39は外面が水溶性樹脂等によってコーティングされてもよい。錠剤型薬剤39の外面をコーティングすることで、錠剤型薬剤39の強度を高めることができる。錠剤型薬剤39を扁平形状にして薄く形成しても、コーティングによって十分な強度を確保することができる。また、錠剤型薬剤39を溶媒に投入してコーティング膜を溶かすことで、錠剤型薬剤39が溶媒内で崩れて溶媒に溶け易くなっている。なお、コーティング剤は、溶媒に溶けるものであればよく、上記した水溶性樹脂に限らず、溶媒の種類に応じて適宜変更されてもよい。
【0026】
また、錠剤型薬剤39を成形する粉体は、溶媒に溶けたときにアルカリ性を示すものであればよく、例えば、酢酸カリウム、塩化カリウム、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、1,4−エチレンピペラジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジンが用いられてもよい。錠剤型薬剤39は、1種類のアルカリ性の粉体から形成される構成に限らず、2種類以上のアルカリ性の粉体から形成されてもよい。
【0027】
また、錠剤型薬剤39には、主成分であるアルカリ性の粉体だけでなく、粉状の添加剤を加えられてもよい。添加剤は、例えば、界面活性剤、キレート剤、崩壊剤、結合剤、賦型剤が用いられてもよい。錠剤型薬剤39には、1種類の添加剤だけでなく、2種類以上の添加剤が加えられてもよい。
【0028】
溶媒は、錠剤型薬剤39と混合されてアルカリ性を示すものであればよく、純水の他、アルコール等の極性溶媒が用いられてもよい。溶媒と錠剤型薬剤の割合は、研磨液がpH10−pH12.5になるように調整されていることが好ましく、pH12.5になるように調整されていることがさらに好ましい。また、溶媒は、溶媒タンク31から撹拌槽32に供給される構成にしたが、この構成に限定されない。溶媒が純水の場合には、工場内の純水設備から配管を通じて直に撹拌槽32に供給されてもよい。
【0029】
さらに、錠剤型薬剤39は、アルカリ性の粉体を圧縮成形することでペレット状に形成される構成にしたが、この構成に限定されない。錠剤型薬剤39は、アルカリ性の粉体を集塊して形成される構成であればよく、例えば、造粒成形で顆粒状に形成されてもよい。このように、アルカリ性の乾燥した粉体だけで錠剤型薬剤39を形成する場合には、圧縮成形でペレット状に形成してもよいし、乾式造粒成形で顆粒状に形成してもよい。また、錠剤型薬剤39は、アルカリ性の粉体を錠剤状のカプセルに収容して形成されてもよい。
また、液体成分を含んでペレット状に成形した後に乾燥させてもよい。
【0030】
また、錠剤型薬剤39は、固形の粉体だけで乾燥して形成される構成に限らず、液体成分を含んで成形されてもよい。例えば、アルカリ性の粉体とアルカリ性・中性(純水)の液体によって湿式造粒成形で錠剤型薬剤39を顆粒状に形成してもよいし、湿式造粒成形後に圧縮成形して錠剤型薬剤39をペレット状に形成してもよい。なお、湿式造粒成形では、錠剤型薬剤39に対する液体の含有量は30%以下であることが好ましい。また、アルカリ性の液体の種類は特に限定されず、錠剤型薬剤39に2種類以上のアルカリ性の液体が含まれていてもよい。
【0031】
さらに、本実施の形態では、錠剤型薬剤39がアルカリ性の粉体で成形される構成にしたが、酸性の粉体で成形されてもよい。また、錠剤型薬剤39は、界面活性剤、キレート剤、崩壊剤、結合剤、賦型剤等の粉状の添加剤を加えて成形されてもよい。溶媒は、錠剤型薬剤39と混合されて酸性を示すものが使用される。さらに、錠剤型薬剤39は、アルカリ性の粉体と同様に酸性の粉体を集塊して成形される構成であればよく、上記した圧縮成形、乾式造粒成形、湿式造粒成形、湿式造粒成形後の圧縮成形のいずれかにて成形されてもよい。
【0032】
図3を参照して、薬剤供給機構について説明する。図3は、本実施の形態の薬剤供給機構の模式図である。なお、薬剤供給機構は、錠剤型薬剤を溶媒に対して投入可能な構成であれば、どのように構成されていてもよい。例えば、本実施の形態の研磨液の製造装置では、図3Aに示す押し出し式の薬剤供給機構、図3Bに示すレボルバー式の薬剤供給機構、図3Cに示すスクリュー式の薬剤供給機構、図3Dに示すコンベア式の薬剤供給機構のいずれが用いられてもよい。
【0033】
図3Aに示すように、押し出し式の薬剤供給機構40は、円筒状のカートリッジ41に錠剤型薬剤39が縦積みされており、カートリッジ41の下端から落下した錠剤型薬剤39を押し出し機構42で1つずつ押し出している。カートリッジ41の下方には、錠剤型薬剤39を受ける受け皿43が設けられており、受け皿43に落ちた錠剤型薬剤39が押し出し機構42に押し出され、スロープ44に沿って撹拌槽32の真上に送り出されている。スロープ44の出口には、錠剤型薬剤39の数量をカウントするフォトセンサ45が設けられており、フォトセンサ45が遮光される度に錠剤型薬剤39の投入数がカウントされる。
【0034】
このように、錠剤型薬剤39の投入数をフォトセンサ45でカウントすることで、撹拌槽32内に対する錠剤型薬剤39の投入量を管理することができると共に、カートリッジ41の錠剤型薬剤39の残数を管理することができる。また、押し出し機構42が受け皿43から錠剤型薬剤39を押し出す度に、錠剤型薬剤39が自然落下によって受け皿43に供給されるため、薬剤供給機構40の構造を簡略化することができる。なお、押し出し機構42の押し出し速度は、押し出し時の衝撃によって錠剤型薬剤39を崩壊させない程度に抑えられていることが好ましい。
【0035】
図3Bに示すように、レボルバー式の薬剤供給機構50は、円筒状のカートリッジ51に錠剤型薬剤39が縦積みされており、カートリッジ51の下端から落下した錠剤型薬剤39を円板状のレボルバー52によって1つずつ送り出している。レボルバー52の上面には複数の凹部が周方向に形成されており、レボルバー52の下面にはモータ54が連結されている。レボルバー52の凹部に錠剤型薬剤39が載置される度に、レボルバー52が所定角度で間欠回転して投入口56に錠剤型薬剤39が送り出されている。投入口56の下方にはフォトセンサ55が設けられており、撹拌槽32への錠剤型薬剤39の投入数がカウントされる。
【0036】
このような構成でも、撹拌槽32内に対する錠剤型薬剤39の投入数を管理することができると共に、カートリッジ51の錠剤型薬剤39の残数を管理することができる。また、レボルバー52が間欠回転する度に、錠剤型薬剤39が自然落下によって凹部に供給されるため、薬剤供給機構50の構造を簡略化することができる。レボルバー52が所定角度で間欠回転する度に錠剤型薬剤39が投入されるため、フォトセンサ55の代わりにモータ54のステップ数を監視するようにしてもよい。なお、レボルバー52の回転速度は、凹部から錠剤型薬剤39が飛び出さない程度に抑えられていることが好ましい。
【0037】
図3Cに示すように、スクリュー式の薬剤供給機構60は、円筒状のカートリッジ61に錠剤型薬剤39が収容されており、カートリッジ61の下端から落下した錠剤型薬剤39をスクリュー板63によって1つずつ送り出している。カートリッジ61の下端には搬送カートリッジ62が接続されており、搬送カートリッジ62の内側にスクリュー板63が収容されている。スクリュー板63の一端にはモータ64が連結されており、スクリュー板63の回転によって搬送カートリッジ62内の錠剤型薬剤39が押し出されている。搬送カートリッジ62の出口の下方にはフォトセンサ65が設けられており、撹拌槽32への錠剤型薬剤39の投入数がカウントされる。
【0038】
このような構成でも、撹拌槽32内に対する錠剤型薬剤39の投入数を管理することができると共に、カートリッジ61の錠剤型薬剤39の残数を管理することができる。また、スクリュー板63が回転するのに合わせて、錠剤型薬剤39が自然落下によってスクリュー板63に供給されるため、薬剤供給機構60の構造を簡略化することができる。スクリュー板63の回転によって搬送カートリッジ62内を錠剤型薬剤39が低速で搬送されている。よって、錠剤型薬剤39の摩耗や崩壊が抑えられて、撹拌槽32に適切な重量で錠剤型薬剤39を供給することができる。
【0039】
図3Dに示すように、コンベア式の薬剤供給機構70は、円筒状のカートリッジ71に錠剤型薬剤39が縦積みされており、カートリッジ71の下端から落下した錠剤型薬剤39をコンベア72によって1つずつ送り出している。コンベア72は一対のプーリ73にベルト74が架け渡されており、ベルト74の外面に多数のトレイ76が取り付けられている。片側のプーリ73にはモータが連結されており、ベルト74の周回移動によってトレイ76に収容された錠剤型薬剤39が撹拌槽32の真上に送り出されている。コンベア72の下方にはフォトセンサ75が設けられており、撹拌槽32への錠剤型薬剤39の投入数がカウントされる。
【0040】
このような構成でも、撹拌槽32内に対する錠剤型薬剤39の投入数を管理することができると共に、カートリッジ71の錠剤型薬剤39の残数を管理することができる。また、コンベア72によるトレイ76の移動に合わせて、錠剤型薬剤39が自然落下によってトレイ76に供給されるため、薬剤供給機構70の構造を簡略化することができる。トレイ76に錠剤型薬剤39が載せられたまま搬送されるため、搬送中に錠剤型薬剤39に外力が加わることがない。よって、錠剤型薬剤39の摩耗や崩壊が抑えられて、撹拌槽32に適切な重量で錠剤型薬剤39を供給することができる。
【0041】
続いて、図4を参照して、研磨液の製造方法について説明する。図4は、本実施の形態の研磨液の製造方法の一例を示す図である。なお、ここでは、押し出し式の薬剤供給機構を用いて研磨液を製造する構成を例示するが、上記した他の薬剤供給機構でも同様な方法で研磨液を製造することができる。
【0042】
図4Aに示すように、先ず溶媒供給工程が実施される。溶媒供給工程では、開閉バルブ33が開かれて溶媒タンク31から撹拌槽32に所定重量の溶媒が供給される。この場合、所定時間だけ開閉バルブ33が開かれて溶媒タンク31から撹拌槽32に所定流量の溶媒が供給されてもよいし、撹拌槽32内の溶媒の重量をロードセル等で測定して所定重量に達した時点で溶媒の供給が停止されてもよい。また、溶媒タンク31から撹拌槽32に溶媒が供給される構成に限らず、工場内の給水配管等から開閉バルブ33を介して撹拌槽32に所定重量の溶媒が供給されてもよい。
【0043】
次に、図4Bに示すように、溶媒供給工程の後に薬剤投入工程が実施される。薬剤投入工程では、撹拌槽32に供給した溶媒に対して所定数量の錠剤型薬剤39が投入される。この場合、カートリッジ41から落下した錠剤型薬剤39が押し出し機構42によって押し出されて、溶媒が供給された撹拌槽32に錠剤型薬剤が1つずつ投入される。錠剤型薬剤39が撹拌槽32に投入される度に、フォトセンサ45によって錠剤型薬剤39の投入数がカウントされ、カウント数が所定数量に達した時点で押し出し機構42による錠剤型薬剤39の押し出しが停止される。
【0044】
次に、図4Cに示すように、薬剤投入工程の後に撹拌工程が実施される。撹拌工程では、撹拌機34によって撹拌槽32で錠剤型薬剤39と溶媒とが撹拌される。撹拌槽32内の撹拌機34によって溶媒が撹拌され、錠剤型薬剤39が所定量の溶媒に溶解されて所定濃度の研磨液が製造される。この場合、錠剤型薬剤39が扁平形状に形成されているため、溶媒の撹拌によって錠剤型薬剤39が崩れて短時間で溶けて所定濃度の研磨液が製造される。撹拌機34が停止されて研磨液が製造されると、投入数のカウントがリセットされて投入数量がゼロに設定される。
【0045】
このように、固形化された錠剤型薬剤39の溶媒への投入によって研磨液が製造されるため、錠剤型薬剤39の投入数量によって研磨液の濃度を調整することが可能である。よって、錠剤型薬剤39の重量を測定することなく、錠剤型薬剤39の投入数によって研磨液を適切な濃度に調整することができる。なお、錠剤型薬剤39が所定重量で固形化されているため、錠剤型薬剤39は所定重量毎しか投入することができないが、溶媒の供給量を調整することで研磨液の濃度を微調整することができる。研磨液の濃度は、例えば、次式(1)によって調整される。
【数1】
【0046】
以上のように、本実施の形態の研磨装置1によれば、研磨液の製造時に固形の錠剤型薬剤39を溶媒に投入するため、液状の薬剤を使用する場合と比較して運搬が容易かつ安全であり、さらに研磨液のタンクの交換作業を無くして作業負担を軽減することができる。また、液体や粉体のように量や重さで管理するのではなく、錠剤型薬剤39を個数で管理することができるため、管理の負担を軽減することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、溶媒供給工程の後に薬剤投入工程が実施される構成にしたが、この構成に限定されない。溶媒供給工程の前に薬剤投入工程が実施されてもよいし、溶媒供給工程と薬剤投入工程が同時に実施されてもよい。
【0048】
また、本実施の形態の撹拌工程では、撹拌機で溶媒を撹拌することによって、溶媒に錠剤型薬剤を溶解させる構成にしたが、この構成に限定されない。撹拌工程では、溶媒に錠剤型薬剤を溶解させることができればよく、例えば、溶媒の超音波振動によって溶媒に錠剤型薬剤を溶解させるようにしてもよい。
【0049】
また、本実施の形態の撹拌工程では、錠剤型薬剤の投入数量をフォトセンサでカウントする構成にしたが、この構成に限定されない。錠剤型薬剤の投入数量は、錠剤型薬剤の投入数を検出可能な構成であれば、どのように構成されてもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、研磨液としてスラリーを例示して説明したが、この構成に限定されない。研磨液は、研磨加工時に板状物に供給される液体であればよく、例えば、金属の付着防止や洗浄能力を向上させるための液体であってよい。すなわち、本実施の研磨加工はCMP研磨に限られず、他のウェット研磨を含んでいる。
【0051】
また、本実施の形態では、加工装置として被加工物を個片化する研磨装置を例示して説明したが、この構成に限定されない。本発明は、研磨処理を実施する他の加工装置に適用可能であり、研磨装置を備えたクラスター装置等の他の加工装置に適用されてもよい。
【0052】
また、加工対象の板状物として、加工の種類に応じて、例えば、半導体デバイスウェーハ、光デバイスウェーハ、パッケージ基板、半導体基板、無機材料基板、酸化物ウェーハ、生セラミックス基板、圧電基板等の各種ワークが用いられてもよい。半導体デバイスウェーハとしては、デバイス形成後のシリコンウェーハや化合物半導体ウェーハが用いられてもよい。光デバイスウェーハとしては、デバイス形成後のサファイアウェーハやシリコンカーバイドウェーハが用いられてもよい。また、パッケージ基板としてはCSP(Chip Size Package)基板、半導体基板としてはシリコンやガリウム砒素等、無機材料基板としてはサファイア、セラミックス、ガラス等が用いられてもよい。さらに、酸化物ウェーハとしては、デバイス形成後又はデバイス形成前のリチウムタンタレート、リチウムナイオベートが用いられてもよい。
【0053】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0054】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0055】
また、本実施の形態では、本発明を研磨装置に適用した構成について説明したが、研磨液の供給が必要な他の加工装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、安全性を確保しつつ、作業負担を低減することができるという効果を有し、特に、CMP研磨装置に用いられる研磨液の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 研磨装置(CMP研磨装置)
30 製造装置
31 溶媒タンク
32 撹拌槽
34 撹拌機
39 錠剤型薬剤
40、50、60、70 薬剤供給機構
45、55、65、75 フォトセンサ
図1
図2
図3
図4